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大阪府立大学大学院人間社会学研究科人間科学専攻現代人間社会分野

大学院生学際研究レポート 第1輯
2008 年 8 月 20 日刊行

女性専用車両の学際的研究
性暴力としての痴漢犯罪とアクセス権の保障

居永正宏 川端多津子 寺野朱美 橋爪由紀

大阪府立大学大学院人間社会学研究科人間科学専攻発行
目次
はじめに ...............................................................................................................................1
第一章 性暴力としての痴漢行為と女性専用車両 ........................................................... 3
第一節 性暴力とは ...................................................................................................... 3
第二節 女性を制約する潜在的知識 ............................................................................. 4
第三節 アクセス権と女性専用車両 ............................................................................. 6
第四節 他の「女性専用」サービス ............................................................................. 6
第五節 女性専用車両の必要性 .................................................................................... 8
第二章 痴漢犯罪 ........................................................................................................... 10
第一節 痴漢行為とその法的位置づけ........................................................................ 10
第一項 痴漢被害の実態.......................................................................................... 10
第二項 痴漢行為に適用されるおもな法令 ............................................................. 14
第三項 迷惑防止条例違反と強制わいせつ罪 ......................................................... 15
第四項 痴漢犯罪に対する新たな取り組み ............................................................. 18
第二節 痴漢冤罪........................................................................................................ 27
第一項 痴漢冤罪が生まれる背景 ........................................................................... 27
第二項 痴漢冤罪をどのようにとらえるか ............................................................. 28
第三項 痴漢冤罪はなぜおこるのか―現行犯逮捕・勾留・自白の罠― .................. 30
第四項 腹いせ・示談金目的でおこる冤罪は多発しているのか............................. 32
第五項 痴漢冤罪を防ぐてだて............................................................................... 34
第三章 女性専用車両の導入および普及の経緯 ............................................................. 37
第一節 女性に対する性暴力防止策としての女性専用車両........................................ 37
第二節 女性の人権に関する国際的動向と国政 ......................................................... 37
第三節 車両内における痴漢事件および痴漢冤罪事件............................................... 40
第四節 調査と検討の過程で生まれた女性専用車両 .................................................. 41
第五節 事業者による女性専用車両導入および普及 .................................................. 45
第六節 海外の女性専用車両 ...................................................................................... 46
第四章 女性専用車両に関するアンケート調査 ............................................................. 50
第一節 調査目的........................................................................................................ 50
第二節 調査対象・期間・方法・回答者数................................................................. 50
第三節 回答者の内訳................................................................................................. 51
第四節 結果 ............................................................................................................... 52
第一項 女性専用車両について............................................................................... 52
第二項 電車内における痴漢について .................................................................... 56
第三項 クロス集計................................................................................................. 62
第四項 自由記述から ............................................................................................. 65
第五節 考察 ............................................................................................................... 68
総括 .................................................................................................................................... 71
資料編................................................................................................................................. 73
〈資料 1〉鉄道各社への女性専用車両に関する聴き取り調査(インタヴュー)とアンケー
ト .................................................................................................................... 74
〈資料 2〉鉄道各社アンケートのまとめ ........................................................................ 77
〈資料 3〉大阪市交通局へのインタヴュー..................................................................... 85
〈資料 4〉「性暴力を許さない女の会」とのインタヴュー―概要― ................................. 95
〈資料 5〉大阪府警察本部地域部鉄道警察隊への女性専用車両等に関する調査(依頼書と
調査の質問項目).......................................................................................... 97
〈資料 6〉公的機関による、女性専用車両に関するアンケート調査結果 .................... 101
〈資料 7〉女性専用車両導入に関する年表................................................................... 130
〈資料 8〉女性専用車両に関するアンケート ............................................................... 133
はじめに

本報告書は、女性専用車両を中心軸とし、それに直接関係する痴漢1、さらに近年頓に社
会的な関心を集めている痴漢冤罪を扱ったものである。「女性専用車両」とは、女性のみが
乗車できる電車の車両のことであり、近年日本各地の鉄道会社で痴漢犯罪対策の一環とし
て導入が進んでいる(一般的には小学生以下の男児と男性障害者なども乗車可能となって
いるが、本報告書では、女性専用車両の本義である対痴漢という側面に絞って取り上げる)。
女性専用車両は、私たちが行ったアンケート(第四章参照)でも示されているように、既
にかなりの社会的な認知を得ている。しかし、単に多くの人が女性専用車両のことを知っ
ており、また利用しているということは、同じだけ多くの人が女性専用車両という存在の
意義を理解しているということを意味するものではない。そもそも、女性専用車両は何を
目的としたものなのか。そして、どういう経緯で、これだけ急速に普及することになった
のだろうか。
女性専用車両以外にも、私たちの社会には同じように「女性専用○○(またはレディース○○
など)」と謳うサービスが数多く存在している。しかし、集客を主な目的としたそれらのサ
ービスと、電車内における痴漢犯罪という文脈の中にある女性専用車両は、本質的に異な
るものとして考えなければならない。なぜなら、女性専用車両は単に女性に対する「サー
ビス」といったものではないからである。それは、安全な生活、犯罪や恐怖に脅かされな
い生活を送るという女性の基本的な権利を保障するものなのである。そのことを理解する
には、まず、痴漢という犯罪を女性に対する性暴力という大きな枠組みの中に位置付ける
必要がある。
そのような認識の下、本報告書の第一章では、性暴力の一般理論の中に痴漢を位置付け
る作業を行なう。第二章ではさらに痴漢被害の実態と痴漢冤罪の構図を分析し、女性専用
車両がそれに基づいて理解されるべき基本的な枠組みを提示する。第三章では、日本にお
いて女性専用車両が導入されてきた経緯を時系列的に辿ることで、上の理論的枠組の中で
理解されるべき女性専用車両が現実的にどう位置付けられてきたかを探る。第四章では、
私たちが行なった女性専用車両と電車内における痴漢に関するアンケートの結果を分析す
る。これは、女性専用車両の普及がある程度終了した時点で第三者が信頼のおける方法で
行なったアンケートとしては最初のものだと思われる。そして報告書の最後に、女性専用
車両という存在の意義を改めて確認し、今後の展望を行う。なお、各章毎にある程度テー
マが独立したものであるため、引用・参考文献は各章末もしくは節末に示すかたちをとっ
た。
また、本報告書は、これら本文とは別に資料編として、報告書を執筆するために収集・
整理した資料を添えている。鉄道各社へのアンケートと大阪市交通局へのインタヴュー、
鉄道警察隊へのアンケート、「性暴力を許さない女の会」へのインタヴュー、女性専用車両

1
「痴漢」は、「痴漢という行為」を指す場合と、「その痴漢を行う行為者」を指す場合があるが、基本的に本報告書
では文脈から判断できる場合は単に「痴漢」と表記し、特に区別する場合は「痴漢行為」と表記している。

1
と痴漢に関する先行資料の整理、女性専用車両に関する年表、そして、学生を対象に行な
ったアンケートに関する資料などである。
さてここで、本報告書の成り立ちについて述べておきたい。本報告書は、大阪府立大学
大学院人間社会学研究科人間科学専攻現代人間社会分野の大学院生である居永正宏・川端
多津子・寺野朱美・橋爪由紀(以下「執筆者」
)が共同で作成したものである。報告書の執
筆にあたって、テーマの設定、文献調査、各種データの収集・整理、インタヴュー調査、
アンケート調査は、全て執筆者で行った。
しかし同時に、本報告書は執筆者以外の多くの方々の協力によって成り立っている。ま
ず、アンケート調査に快く応じて下さった関西鉄道各社には大変お世話になった。特に大
阪市交通局はインタヴューにも応じて下さり、駅務管理の金守修さん、中村丈男さん、運
転管理の森本直樹さんに現場の具体的なお話を伺うことができた。
「性暴力を許さない女の
会」の方々にも活動の当事者としての率直なお話を伺うことができ、報告書の作成にあた
り大変参考になった。大阪府警の鉄道警察隊には、鉄道警察についての資料をお送りいた
だいた。大形徹先生、酒井隆史先生、谷村覚先生、山口義久先生、和田安弘先生には、ア
ンケートを実施するにあたって貴重な授業時間を割いてご協力いただいた。和田先生には
アンケート内容についての貴重なアドバイスも頂くことができた。また、萩原弘子先生に
は、私たちの急な訪問にも拘わらず、貴重な資料をいただいた。資料の収集には、大阪府
立大学の図書館職員の方々の迅速なお仕事に大変お世話になった。大学院生の大橋眞由美
さんは議論に参加してくださり、それによって報告書の質を高めることができた。田間泰
子先生、萩原弘子先生には、原稿段階で貴重なアドバイスをしていただいた。最後に、森
岡正博先生には貴重なアドバイスをいただき、また報告書の最終段階でのチェックもして
いただいた。本報告書は、これらのたくさんの方々の力を借りなければ完成させることは
出来なかった。ここに、改めて執筆者から上記の方々に深い感謝の念を捧げたい。なお、
本報告書内に、誤った記述、不正確な記述、不適切な記述などがあったとしても、それら
は全て私たち執筆者の責任である。
最後に、本報告書の文責について述べておきたい。本報告書は各自が分担個所を執筆し
その後それらの原稿を統合するという形で出来上がったものである。ただし、もちろん執
筆者間の話し合いやアドバイスも大きな役割を果たしている。各分担箇所については次の
通りである。本文については、居永が「はじめに」
、第四章、
「総括」、川端が第二章第二節、
寺野が第一章と第三章第六節、橋爪が第二章第一節を担当した。本報告書の資料について
は、川端が資料 1、2、3、寺野が資料 4、橋爪が資料 5 を担当した。資料 8 の「女性専用車
両に関するアンケート」は、居永が原案を作成し、その後メンバーで話し合いを重ねて修
正したものである。また,作業上の事情により,第三章第一節∼第五節および資料 6、7 に
ついては執筆者全員の共同執筆・作成という形をとった。

(はじめに 居永正宏)

2
第一章 性暴力としての痴漢行為と女性専用車両

第一節 性暴力とは

本章では痴漢行為を性暴力として(ジェンダーを軸にした性的な暴力として)論じるこ
とによって、女性専用車両の意義・必要性を明確にすることを試みる。
痴漢行為の加害者には圧倒的に男性が多く、反対に被害者には女性が多いという現実か
ら1、痴漢行為にジェンダーが深く関わっていることは明らかである。では、痴漢行為のジ
ェンダー性とは具体的にはどのようなものだろうか。
フェミニズムは長年にわたって、男性の性欲2の処理、妊娠・出産、子育てというような
性的役割を女性に押しつける社会制度を批判してきた。女性たちはこのような抑圧に抵抗
し、女性個人の意思がより多く反映された行動・生活・人生を選ぶことができるよう、社
会変革を要求し行ってきたのである3。このような変化が進む中、女性を強制的に性的役割
としての存在に押し戻す様々な行為が存在する。痴漢行為はその一つである。
痴漢行為の加害男性は、その犠牲の対象とする女性を彼にとって都合のよい(自我・感
情を持たない、もしくは持っていたとしてもそれを傷つけられることに価値を見出される)
性的存在として扱い、彼女の存在価値を性的部位に収斂する。たとえ一瞬の出来事であっ
たとしても、男性の性的な気晴らし・はけ口・攻撃・支配の対象4として扱われ、人間性を
否定されることは被害者を深く傷つける。痴漢行為に限らず、強かん5、セクシャル・ハラ

1
痴漢行為の加害者・被害者のジェンダー非対称性については、本報告書第四章第四節第二項を参照。また、本
章ではこのジェンダー非対称性に着目することにより、性的不平等という力構造を背景にして行われる痴漢行為を
分析するため、男性間の痴漢行為や女性の男性に対する痴漢行為等の考察は行わない。しかし、ここで提示する
痴漢行為の加害者と被害者の力関係は、揺るぎない原型としてこれ以外の加害者・被害者関係にも影響を及ぼし
ているものと考える。
2
対異性もしくは異性間の「性的」な行為は、生殖本能を主張することにより(つまり、動物的な交尾と
同類のものとして説明することによって)自然化・普遍化されてきた。このことは、性暴力にまつわる言
説の中で加害男性の「性欲」や被害女性の「性的」な服装・行動が度々引き合いに出されることを見ても
わかる。しかしそれが対異性/異性間でさえあれば、生殖とは直接もしくは全く結びつかない行為や生殖を
回避するための行為など、実に様々な行為が私たちの社会では「性的」な行為として認識されており、一
言でいえば、「人間の性行為を、ヒトの性行動と同義とみなすことはできない」 (竹村 2002 58 頁)ので
ある。本章の中でも「性的」等の語を幾度か使用しているが、それらはこのような性の社会性を念頭に置
いて理解されるべきである。また、ここでの「男性」とは、性差別(社会的男性の優位性・女性の劣位性)
の存在する社会において、男性として身体的に範疇化されていることからその優位性を当然のこととし、
それを根拠に(またそのような社会体制を維持するために)女性を搾取する集団を指す。
3
ここでの社会変革を行ってきた女性たちとは、意識的にフェミニズム運動に携わってきた女性だけでなく、性的平
等社会の実現に貢献する行動をとってきた全ての女性を指す(例えば、「男性の職業」と考えられている領域で活
躍する女性、暴力的・搾取的な男性パートナーと別れた女性など)。
4
本章を通して説明するように、性暴力としての痴漢行為はジェンダーを軸とする力関係の上に存在しており、男性
加害者―対―女性被害者という構図の中では、両者の性自認(レズビアン、ゲイ、バイセクシャル、ヘテロセクシャ
ル等)はこの力関係に影響を及ぼさないため考察の対象としない。
5
「強かん」という語は「強姦」と書き記されることがあるが、「姦」という字は「女」三つから成り立
ち、よこしまな・道理に反した・みだらな行いなどを意味することから、特に性的暴行のように女性を深
く傷つける行為を表すのには適当でないと判断し、法的専門用語を除き本報告書では「強かん」と表記し
ている。

3
スメント等すべての性暴力は、その表出の仕方は多様ではあるが、このような特徴を共通
としている。
ところが、強かんのように暴力としての認識が広まってきている性暴力が存在する一方
で、一般的に暴力というものは主に被害者の外傷の有無によって判断されることから、特
に痴漢被害の当事者以外には、痴漢行為の暴力性は理解されにくい。しかし、以下に引用
する女性たちの声が明らかにするように、痴漢の被害者はその後も続く精神的苦痛を経験
する。これらは 1995 年に電車内の痴漢に関して「性暴力を許さない女の会」と「セクシャ
ルハラスメントと斗う労働組合ぱあぷる」が共同で行ったアンケート調査の自由記述部か
らの抜粋である6:

・「痴漢にあった後、電車に乗るのが怖くなり、生活にも支障が出た。」
・「痴漢行為にあい、それからは朝のラッシュ時は恐ろしくて乗ることが出来なくなりまし
た。」

「時々外に出るのがとても怖くて一人で歩いていると電車だけでなくビクビクしています。
そんな自分が情けないと思うけど、あの気分の悪さはなかなか消えないし、たまらなくな
る。」
・「痴漢にあったのは1回だけですが、後ろに立たれただけでビクビクする。」
・「4日連続して通学時に痴漢にあった。その時から通学拒否症のようになってしまってし
ばらく学校に行かなくなった。」

このように、被害を受けた女性たちは、日常生活に支障をきたす程の不安や恐怖に被害後
も悩まされている。目に見える外傷は残さなくとも、このような心的外傷(トラウマ)を
痴漢行為は被害者の心に負わせる、まさに暴力なのである。

第二節 女性を制約する潜在的知識

アドリエンヌ・リッチは、キャンパスでの強かんなど女子学生の安全を脅かす教育環境
を批判する中で、性暴力への不安・恐怖心が女性の社会的あり方に及ぼす影響について鋭
い指摘を行っている7。

6
性暴力を許さない女の会 セクシャルハラスメントと斗う労働組合ぱあぷる (1995) 『痴漢のいない電
車に乗りたい!―STOP 痴漢アンケート報告集―』 性暴力を許さない女の会 セクシャルハラスメントと
斗う労働組合ぱあぷる 24 頁
7
Rich, Adrienne. (1979) Taking Women Students Seriously. On Lies, Secrets, and Silence―Selected Prose
1966-1978. 237-245. NY: W. W. Norton & Company. P.242. (= アドリエンヌ・リッチ 「女の学生と真剣に向
き合う」 『嘘、秘密、沈黙。』 400-414. 大島かおり訳 (1989) 晶文社 408-409 頁) 傍点は引用者。また、
本章の英語文献の引用部は、日本語訳のあるものは適宜参考にしながら原文から筆者が日本語に翻訳した
ものである。

4
女性の自己の基盤が掘りくずされること、世界の中で居場所を持ち自由に安全に歩き回る
権利があるという感覚が侵されることは、女性の教育ととても深い関わりがある。自立的に
思考したり学術的冒険を恐れることなく知的に主張したりする能力は、女性の身体的存在、
自身の健全さが保障されていることを感じられることと不可分である。もし夜遅くに図書館
から帰宅することが、私が女でありレイプされうるがゆえに危険であるのなら、その図書館
で勉強する私はどれだけ冷静で気力を保ったままでいられるだろうか。女であるがために、
.....
私が一人で出歩く度に自分の身体的存在権を試されるという潜在的知識に、私の労力のどれ
ほどが枯渇されていくことだろうか。

教育や就労は女性の社会進出の重要な目安である。そのための通学や通勤で乗る電車内
での痴漢の恐れ―女であるがために、いつ性的に傷つけられるか分らないという不安や
恐怖―が常に女性の頭を支配する社会は、どれほど女性の社会進出を欲していると言え
るだろうか。私たちが行ったアンケート調査では、回答女性の約 4 分の 1 に痴漢被害の経
験があったが、女性全体の実に 9 割近くが電車に乗る際に何らかの痴漢対策を行っている
という結果が出た8。つまり、痴漢被害の経験がなくとも、
「痴漢」という潜在的知識が多く
の女性の中に存在しており、電車に乗るたびに本来なら必要でないはずの行動を女性たち
がとることを余儀なくさせているのである。
この潜在的知識はまた、被害を受けた後の女性の行動をも左右する。あまりにも低い頻
度でしか痴漢行為の被害者がその被害を報告していない9のはなぜか。キャサリン・A・マ
ッキノンはセクシャル・ハラスメントの発生件数と実際に訴訟となった数の差について分
析する中で「セクシャル・ハラスメントの加害者がもつ力には、性的虐待を世間に知らせ
るという脅しが含まれている」10と注意を促しており、このような力の構造は痴漢行為を含
む全ての性暴力に当てはまると考えられる。さらに「性暴力を許さない女の会」は、「痴漢
事件では被害者の素行が問題になることがあるが、これは痴漢以外の性暴力の被害者の扱
いと共通する」11と指摘している。
自分が性的に侵害されたという屈辱的な事実が「乗客全員」12にとどまらず世間に知られ
てしまうかも知れない。被害者であるはずなのに「素行」が問題とされる(彼女には「傷

8
詳しくは本報告書第四章を参照。
9
痴漢犯罪の「暗数」については本報告書第二章第一節第一項を参照。
10
MacKinnon, Catharine A. (1987) Sexual Harassment: Its First Decade in Court. Feminism Unmodified:
Discourses on Life and Law. 103-116. Cambridge, MA: Harvard University Press. p.114 (= キャサリン・A・マ
ッキノン 「セクシャル・ハラスメント―法廷における最初の十年間―」 『フェミニズムと表現の自
由』 167-189. 奥田暁子・加藤春恵子・鈴木みどり・山崎美佳子訳 (1993) 明石書店 187 頁)
11
「性暴力を許さない女の会」へのインタヴューからの抜粋。本報告書の作成に当たり、抗議運動や出版
など対性暴力活動を長年続けてこられた「性暴力を許さない女の会」にインタヴューを申し込んだところ、
快く了解していただき、痴漢行為・女性専用車両に関係する様々な意見を聞かせて頂ける機会に恵まれた。
これはそのインタヴューの概要からの引用である。詳しくは本報告書〈資料4〉を参照。
12
本報告書第三章第六節で取り上げるニューヨーク市の女性たちが語った痴漢被害にまつわる困難(屈辱
的な侵害を受けたことを乗客全員に発表しなければならないのかという問題)より。

5
つくだけの価値があるかどうか」という判断の目で見られる13)かも知れない。性暴力の被
害者が社会的恥辱・非難の対象となりうるという現実―これも、女性を制約する性暴力
にまつわる潜在的知識といえよう。

第三節 アクセス権と女性専用車両

マリリン・フライは男権主義的社会構造(社会的男性の優位性、女性の劣位性を維持す
るような制度・関係・役割・活動など)から女性が自らの意思で分離する行為、
「フェミニ
スト分離主義」について論じる中で、アクセス(access)と権力に関する洞察に満ちた分析
を展開している14。本節ではこれを痴漢問題と女性専用車両との関係の考察に応用すべく紹
介する。
英語の access という単語には、なにかに接近、接触、侵入すること、またそれを利用す
る権利、という意味合いが含まれており、この意味での「アクセス」は権力と不可分であ
る。フライが挙げているいくつかの例を紹介すると、例えば大統領は必要であれば国民の
ほぼ誰にでもアクセスすることができるが、その反対はない。親は子ども部屋へのアクセ
スを有するが、その反対はない。奴隷は主人から無条件にアクセスされるが、その反対は
ない。つまり絶対的権力とは無条件的アクセスの所有であり、絶対的非力とは無条件にア
クセスされる立場にあることである、とフライは主張する。
イコール
奴隷が主人を拒むということは、自らを奴隷でないと宣言することであり、
「アクセス =
権力」の構造の中で社会的弱者が他者からのアクセスを拒むことは、この権力構造に対す
る根本的挑戦である。つまり自身へのアクセスをコントロールすること、またそのような
権利(以下「アクセス権」15)の保障を求めることは力を掌握することなのである。痴漢行
為を女性のアクセス権を犯す行為と考えれば、女性専用車両というものは女性が一時的で
はあるがそのような構造から自らを分離することのできる場であり、たとえ数十分の間で
もアクセス権の保障されている空間に存在できることであると考えられる。

第四節 他の「女性専用」サービス

アクセス権の概念を用いれば、近来様々な分野で見受けられる「女性専用」サービスと
女性専用車両との違いを明らかにすることができる。
電車とは、特に都市部に住む人々にとって移動手段として欠かせないものであり、それ
を利用できないことは大きな社会的損失を意味する。誰もが安心して電車を利用できる環

13
キャサリン・A・マッキノン (p.110:180 頁)、上掲書。
14
Frye, Marilyn. (1983) Some Reflections on Separatism and Power. The Politics of Reality: essays in feminist
theory. 95-109. Berkeley, CA: The Crossing Press.
15
フライは身体上のアクセスだけでなく社会的搾取を含んだ広い意味でのアクセスの分析を行っているが、本章で
は対痴漢としての女性専用車両の意義を論じるために、身体的アクセスに限ったものとしてフライの分析を応用して
いる。

6
境を整備することは、「サービス」というよりは社会的責務といっても過言ではない16。し
たがって、電車内に蔓延する痴漢行為17によって女性がアクセス権を侵害されることなく安
心して電車を利用できるためには、女性専用車両は必要な存在なのである。
これに対し、他の多くの「女性専用」サービスは、女性客に対して割引や優遇を行うだ
けであり、女性の身体への不当なアクセス(とその制限)に影響を及ぼすものではない。
具体的には映画館、居酒屋、パチンコ店などの「レディース・デー」がこれにあたる。こ
れらの施設では、設定されている「レディース・デー」に女性客に対して割引や優遇18・サ
ービス19を行っているが、「レディース・デー」だからといって男性の利用が禁止されてい
るわけではない。つまり、正規の料金を支払えば男性はその空間へのアクセスを購入する
ことができるのであり、
「女性が安心して利用できるように」という観点からではなく、女
性客の導引という商業的な目的から設置されているものであることがわかる。
しかし、電車以外の「女性専用」サービスの中には、いわゆるグレーゾーンに位置する
ものもいくつか存在する。カラオケ店、ホテルなどの「レディース・フロア」、女性限定の
アパート・マンションなどがそれである。これらの施設は、通常不特定多数によるアクセ
スが可能で(匿名性が高い)、尚且つその中には多くの閉鎖された空間が並立する(密室が
存在する)ため、性犯罪に悪用されることがある。このような場所で一人の時に見知らぬ
男性を見かけて不安を感じたことのある女性は多いのではないだろうか。仮にその男性が
一利用客であったとしても、性暴力にまつわる潜在的知識が女性に不安・恐怖心を与える
のである。しかし、電車の場合とは違い、カラオケなどは社会生活上の必要性がさほど高
くはなく20、その設置理由には女性客の導引という商業的意図も存在するだろう。しかし、
上述した映画館・居酒屋・パチンコ店等の例とは違い、これらの女性専用サービスは男性
客をその空間に侵入させないというアクセスの制限を含んでおり、女性客が安心してその
施設の提供するサービスを享受できることを意味する。
総括すると、「女性専用」サービスは大きく、1)電車のように社会生活上必要な施設の
中に女性のアクセス権を保障する空間を作るもの、2)映画館・居酒屋・パチンコ店のよ
うに、女性客のさらなる導引を目的として割引・優遇等を行い、男性客も正規料金を払え
ば利用可能なもの、3)カラオケ・ホテルのように、生活上の必要性は電車ほど高くはな
いが、利用の際に女性客が不安を感じる要素が存在し、女性客のニーズと集客という商業
的目的が上手く一致することから女性限定の空間を設けているもの、という3つに分類す
ることができる21。

16
女性専用車両だけでなく、携帯電話 OFF 区域・車両、優先座席、身体的障がいを持つ人が利用しやすい電車・
駅構内の設備もこれに含まれる。
17
痴漢犯罪に関する数的調査・分析は本報告書第二章第一節第一項を参照。
18
パチンコ店での優先入場等。
19
居酒屋でのデザートの無料提供等。
20
ただし、アパートやマンションは生活空間であり、さらにこのような場所での性犯罪は特に多いことから、女性限
定のアパート・マンションの必要性は高いといえる。
21
また、女性のアクセス権の保障としての女性専用車両は、性暴力を可視化する(従って、性差別を告発する)作

7
このように、一見女性専用車両に類似する「サービス」を提供しているかのように思わ
れる種々の商業活動の中には、その導入の動機やそれが含意する社会的メッセージが女性
専用車両のそれとはかけ離れているものが存在する。このようなものと不当なアクセスに
よって傷つけられることなく安全に生活できる権利を女性に保障する女性専用車両とを混
同して議論を行わないよう注意が必要である。

第五節 女性専用車両の必要性

これまでに見てきたように、性暴力は女性の人間性を否定し、その存在は女性の社会的
あり方を制約し、その犠牲者は被害から来るトラウマだけでなく社会的恥辱・非難に苦し
んでいる。このような被害は未然に防止されることが大切であり、この点で女性専用車両
は、ほぼ確実に痴漢の被害を防ぐことができ、また、つかの間ではあるが痴漢行為の潜在
的知識から女性を解放することのできる画期的な存在である。
「性暴力を許さない女の会」によると、女性専用車両のおかげで外に出歩けるようにな
ったという性暴力のサバイバーは多いという22。また、私たちが行ったアンケート調査では
痴漢被害の有無にかかわらず、多くの女性が「痴漢の心配がない」こと(つまり、自身の
アクセス権を侵される心配がないこと)を女性専用車両のメリットと感じている23。
このように、女性専用車両は性暴力である痴漢行為の存在という社会的文脈を抜きにし
ては、その意義・必要性を的確に理解することはできない。痴漢行為の根絶が何よりも必
要であるのは明らかだが、それが実現するまでの間、電車での移動が生活において大切な
役割を果たしている多くの女性の日々の不安・恐怖を少しでも和らげるものとして、女性
専用車両は必要とされている。

(第一章 寺野朱美)

用を持つ。これに対して、女性のみを対象に割引を行う「レディース・デー」等は性別賃金格差を正常=規範化する
ものとして捉えられる可能性もあり(つまりこのような料金設定は、働けない年齢の子どもは「小児料金」、学業が本
業である学生は「学生料金」、そして「男性ほど稼げない女性」は「女性料金」というイメージを誘起しかねない)、こ
れは女性蔑視的な社会体制を維持し、さらにはそれを強化しかねないものであると理解することができる。
22
「性暴力を許さない女の会」とのインタヴュー―概要―より。本報告書〈資料 4〉、また本章注 11 を参照。
23
本報告書第四章を参照。

8
【引用・参考文献】

Berns, Nancy. (2001) Degendering the Problem and Gendering the Blame: Political Discourse on
Women and Violence. Gender & Society. 15(2): 262-281.
藤田久美子 (2003) 『女性に対する暴力防止対策プロジェクト/なぜ痴漢はなくならないの
か―痴漢を許容する社会メカニズム徹底解剖―』 おうてもんジェンダーフリースタ
イル発信所
Frye, Marilyn. (1983) Some Reflections on Separatism and Power. The Politics of Reality: essays in
feminist theory. 95-109. Berkeley, CA: The Crossing Press.
MacKinnon, Catharine A. (1987) Sexual Harassment: Its First Decade in Court. Feminism
Unmodified: Discourses on Life and Law. 103-116. Cambridge, MA: Harvard University
Press. キャサリン・A・マッキノン 「セクシャル・ハラスメント―法廷における最
初の十年間―」 『フェミニズムと表現の自由』 167-189. 奥田暁子・加藤春恵子・
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のいない電車に乗りたい!―STOP 痴漢アンケート報告集―』 性暴力を許さない女の
会 セクシャルハラスメントと斗う労働組合ぱあぷる
竹村和子 (2002) 『愛について―アイデンティティと欲望の政治学―』 岩波書店

9
第二章 痴漢犯罪

第一節 痴漢行為とその法的位置づけ

痴漢行為は犯罪である。本節では痴漢行為が犯罪として法的にどのように位置づけられ
ているのかをみていく。

第一項 痴漢被害の実態

それに先立って、痴漢被害に関する調査等から、暗数を用いて痴漢被害の実態について
探っていくことにする。暗数とは、認知件数の背景にあるところの「被害者が届出をしな
いことによって事案が顕在化しない部分」1を言う。発生事件すべてが認知されないことを
前提として、この暗数が犯罪調査の分析等に用いられている。痴漢犯罪も、すべてが認知
されているわけではない。痴漢犯罪をふくめた性犯罪は、被害者が捜査機関等に被害届を
出さないまま潜在化しているケースも少なくないようだ。ここでは、法務総合研究所の「犯
罪被害実態(暗数)調査」、警視庁の「電車内における痴漢犯罪の実態調査」、本報告書作
成にあたって私たちが実施した「女性専用車両に関するアンケート調査」、(総理府)内閣
総理大臣官房男女共同参画室(以下、男女共同参画室)の「男女間における暴力に関する
調査」2という四調査の結果から、近年痴漢被害者たちが声を上げることによって顕在化し
てきたかのようにみえる痴漢被害の実態を、暗数を用いることによって、逆にどれくらい
の痴漢被害が顕在化していないのかということに着目し、みていくことにする3。
まさに暗数に着目して犯罪実態を調査したのが法務省の施設等機関4である法務総合研究
所である。法務総合研究所は、痴漢被害に限定していないが、性的被害にあった女性たち

1
本文後段で引用している法務省法務総合研究所 2006 年版『犯罪白書 2006』中の「犯罪被害実態(暗数)
調査」結果報告から引用。「認知件数」については、船山泰範著『刑法がわかった』(2006、法学書院)
において次のように解説されている。すなわち、「認知件数=発生件数−暗数」で、「認知件数というの
は、われわれには本当の発生件数はわからず、かなりの数の暗数(表に出てこない数)があるはずだとい
う認識によります。」(45 頁)とある。
2
この調査は平成 11 年 9 月から 10 月に実施され、平成 12 年 2 月にその報告書が出されたが、平成 13 年 1
月 6 日、中央省庁再編に伴い総理府は内閣府に改組された。
3
痴漢とは、「①おろかな男。ばかもの。しれもの。②女性にみだらないたずらをする男。」(新村出編
(2008)『広辞苑 第六版』岩波書店)である。痴漢は大半が男性である。形容矛盾になるが、女性の痴
漢がいないわけではない。対照的に痴漢被害者は大半が女性だが男性の被害者もいる。本大学での私たち
のアンケート調査において、痴漢被害に遭った男性は 4 人いた。痴漢の女性被害者というマジョリティの
なかで、マイノリティである男性被害者は、女性被害者より声を上げ難く、被害が潜在化していることは
推察できる。だが、私たちの報告書のテーマが女性専用車両ということで、男性の痴漢被害については追
究しない。
4
施設等機関は「国家行政組織法」の第八条の二に規定されている。すなわち、「第三条の国の行政機関
には、法律の定める所掌事務の範囲内で、法律又は政令の定めるところにより、試験研究機関、検査検定
機関、文教研修施設(これらに類する機関及び施設を含む。)、医療更正施設、矯正収容施設及び作業施
設を置くことができる。」(総務省ホームページ(以下、HP)「法令データ提供システム」
<http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S23/S23HO120.html>(2008.03.08 アクセス))。

10
のうちどれくらいの被害者が捜査機関に届けなかったかを調査することで、性的被害者の
実態を明らかにしている。平成 16 年に行った「犯罪被害実態(暗数)調査」結果が同研究
所の 2006 年版『犯罪白書 2006』において報告されているので以下に引用する5。

強姦や強制わいせつをはじめとする性犯罪は、認知件数の背景に被害者が届出をしない
ことによって事案が顕在化しない部分(暗数)がある。法務総合研究所が平成 16 年に行
った第 2 回犯罪被害実態(暗数)調査においては、調査に回答した女性(1,099 人)のう
ち、過去 5 年間に性的暴行(調査票では、性的暴行の説明を「男性は時として性的な目的
のために、むりやり女性に触ったり、暴行を加えたりすることがあり、それはとても赦せ
ない行為です。過去 5 年間に、あなたはこれらの性的な被害に遭われたことがありますか。
家庭内における性的暴行も含めてください。」としている。
)を受けたことがあると回答し
たのは 27 人(回答者の 2.5%)であった。このうち、被害を捜査機関に届け出たと回答し
たのは 4 人(14.8%)であった。

過去 5 年間に性的被害にあったのは、回答した女性 1,099 人中 27 人(回答者の 2.5%)で、


そのうちの 4 人が被害を捜査機関に届けたとある。そうすると、認知件数が 4 件だから暗
数は 27 マイナス 4 で 23 となる。つまり、被害者 27 人のうち 23 人が捜査機関に届け出な
かったためにその被害は明るみに出ることはなく、犯罪として認知されなかったのである。
次に取り上げるのは痴漢の犯罪件数である。警視庁は首都圏の「電車内における痴漢犯
....
罪の実態」を調査し、平成 8 年から平成 16 年までの「電車内における痴漢犯罪発生件数の

推移」6を同HP「痴漢相談所」で公開していた。そこには、 「電車内における痴漢犯罪の発
...
生件数を見ると、平成 16 年中は 2,201 件で、平成 8 年の約 3 倍に増加し、過去最悪の状況
となっています。」7という調査結果についての報告と、平成 8 年から平成 16 年までの調査
結果についてのグラフと表8が掲載され、これらの報告を補足して、
「なお、暗数は、この数
十倍に上ると見込まれる。」9という但し書きが添えられている(本節末掲載の表 1 参照)。
注目したいのは、「暗数は、この数十倍に上ると見込まれる。」という記述である。始め
に引用した 2006 年版『犯罪白書 2006』中の性的被害の実態調査において、被害者数は 27
であり、その認知件数は 4 で暗数は 23 であった。つまり、被害を届け出た人の 6 倍近くの
被害者が届け出なかったということであった。それに対し、上の警視庁のHPには、電車

5
法務省法務総合研究所(2006)『犯罪白書 2006』239 頁。
6
ここに記載されている「発生件数」は便宜的に用いられているようで、実際は、強制わいせつの認知件
数と卑わい行為の検挙件数の合計数を表している。(傍点は引用者。)
7
警視庁HP「電車内における痴漢犯罪の実態」
<http://www.keishicho.metro.tokyo.jp/kouhoushi/no1/koramu/koramu7.htm>(2008.02.07 アクセス Internet
Archive<http://www.archive.org>経由)現在は Internet Archive を経由しなければこのウェブサイトに接続す
ることはできないが、そのサイトには痴漢被害の合計件数 2,201 件の内訳(強制わいせつが 304 件、卑わ
い行為が 1,897 件)が記載されている。
8
同HP。表のみ「表1」として本節末の【参考資料】に掲載。
9
同HP。

11
内の痴漢犯罪の暗数は、認知件数の数十倍に上ると見込まれると記されている。
三番目に取り上げるのが、本大学での学生を対象にした私たちの「女性専用車両に関す
るアンケート調査」結果である。本調査においても、電車内での痴漢被害の経験とそのと
きの痴漢が捕まったかどうかについても尋ねた10。その結果、痴漢の被害に遭った女性は 40
人であり、そのとき痴漢が捕まったと答えたのは 4 人であった。但し、その 40 人のうち、
被害が「1∼2 回」が 27 人、
「10 回未満」が 11 人、
「10 回以上」が 2 人であったから、実際
の被害件数は 40 件以上であり、複数回数の被害が反映されていない。だが、少なくとも暗
数は 36 以上で、検挙件数の 9 倍以上だということは言える。
最後に取り上げるのは、女性の痴漢被害についての調査結果である。男女共同参画室は、
平成 11 年 9 月から 10 月まで、20 歳以上の男女 4,500 人を対象に「男女間における暴力に関
する調査」を行った。有効回収数は 3,405 人(75.7%)で内訳は女性 1,773 人、男性 1,632
人。平成 12 年 2 月に作成された報告書には、女性の痴漢被害についての調査結果が報告さ
れているので以下に引用する11。

女性(1773 人)に、交通機関などの中や路上などで痴漢の被害に遭った経験の有無につ
いて聞いた。
「1 回あった」 (31.7%)を合わせた“あった”は 48.7%とな
(17.0%)と「2 回以上あった」
っており、約半数の人に被害の経験がある。

同調査では、痴漢の被害に遭った場所を電車内に限定していないが、回答した女性の約
半数が、痴漢の被害に遭った経験があるという結果となっている。始めに引用した、法務
総合研究所の調査結果では、性的被害に遭った女性は回答者の 2.5%であったのに対して、
男女共同参画室の調査結果では、女性回答者の約半数が痴漢被害に遭っている。双方とも
性的な被害を尋ねているが、前者の調査の質問では、包括的でありながらどちらかと言え
ば強かんを指すと捉えられる「性的暴行」という表現が使われ、そのため痴漢被害につい
ての回答が出にくかったということが推察される。それと、前者の調査が被害を過去 5 年
と期間を限定していることも性的被害者数が後者の調査に較べて著しく少ない理由に挙げ
られるだろう。「男女間における暴力に関する調査」には痴漢の被害を捜査機関等に届け出
たかどうかについての質問が設定されていないために暗数が不明である。だが、同調査は、
まさに女性の痴漢被害を尋ねた大規模調査なので、痴漢被害の実態を知るためには有効だ
と考える。
以上のような調査結果から、暗数を用いて、痴漢被害のうちの大多数が潜在化している

10
本報告書第四章参照。
11
内閣府男女共同参画局 HP「男女間における暴力に関する調査」
<http://www.gender.go.jp/e-vaw/chousa/images/pdf/h11.pdf>(08.02.01 アクセス)詳しくは本報告書第三章第
四節を参照。

12
ことがわかった。それに較べれば圧倒的に少ない、痴漢被害を訴える女性たちを言挙げす
る人たちもいる。その人たちは、声を上げる痴漢被害女性たちを痴漢冤罪の加害者とみる
のである。
2007 年 1 月 20 日から公開された、周防正行監督・脚本の映画『それでもボクはやってな
い』は、痴漢冤罪を切り口にして司法制度の問題点を描いている。主人公の青年は、込み
合う電車内で女子中学生から痴漢に間違われ、警察に勾留される。一貫して無実を訴える
が青年は起訴され、公判後、有罪判決が下される。
映画のモチーフとなるほどに痴漢冤罪は社会で認知され、痴漢冤罪事件を取材したルポ
ルタージュや痴漢冤罪被害者による手記などが多数刊行されている。痴漢冤罪については
本章第二節で取り上げるが、痴漢冤罪事件は、おもに警察の捜査手法の問題から発生する
と言われている。痴漢冤罪事件に限らず冤罪の問題については、富山県の冤罪事件や鹿児
島県議選をめぐる公職選挙法違反事件の反省から、警察庁が 2008 年 1 月 24 日に「取り調
べ適正化指針」12を公表したこと自体が捜査手法に問題があるということの証左となる。富
山県の冤罪被害者は、この指針について、「『警察は取り組んでいる』と世間に見せかける
ためのものでしかない。警察が警察を監督して意味があるのか」とその効果を疑問視する13。
鹿児島県議選選挙違反の元被告側の弁護人は、指針策定に先立って富山・鹿児島両県警の
調査結果をもとにまとめられた検証報告書について、
「不適切言動と虚偽自白との因果関係
すら認めていない」と批判する14。一方、冤罪被害者が頼りにする弁護士のなかには、頼み
にならない弁護士もいるようだ。富山県の冤罪事件では、逮捕された男性の弁護人による
弁護活動に手抜きがあったのではないかということが指摘されている15。
痴漢冤罪の場合、警察の捜査手法だけでなく痴漢の被害女性にも問題があるという意見
も少なくない。痴漢冤罪被害者の弁護側には、冤罪は痴漢の被害女性の特殊な性格や心理
に起因する場合があると指摘する人たちもいる16。そのような人たちにとって、痴漢被害女
性たちは冤罪の加害者なのである。痴漢冤罪がここ十年ほどでそれ以前と較べて注目され
るようになり、それに応じて、声を上げる痴漢の被害女性たちの方にも眼差しが向けられ
るようになった。上の調査結果から明らかなように、これだけ暗数の多い状況で、その中
でも声を挙げた少数者が、冤罪加害者呼ばわりされている。

12
「取り調べ適正化指針」で原則禁じた行為は以下の通り。「①容疑者の身体に触ること。②暴力をふる
ったり机をたたいたりすること。③不安にさせたり困惑させたりする言動。④一定の動作や姿勢をとるよ
う強く要求すること。⑤便宜を与えたり約束したりすること。⑥尊厳を著しく害するような言動。⑦本部
長や署長の承認を得ずに深夜(午後 10 時∼午前 5 時)や長時間(1 日 8 時間超)の取り調べをすること。」
(朝日新聞 2008.1.24 付夕刊 10 面)
13
「『反省見せかけ』憤り」(同)
14
同。
15
朝日新聞 2008.2.3 付朝刊 3 面社説
16
小口千恵子・浜田薫(2002)「痴漢被害体験者アンケートが語る冤罪の構造」『刑事弁護』NO.31、八
塩弘二(2002)「中学生が痴漢の疑いをかけられた―痴漢狩り(?)のような被害者だった…」『時の
法令』通号 1676、池上正樹(2000)『痴漢「冤罪裁判」』小学館文庫、第 4 章「ハメる女たち」等。

13
第二項 痴漢行為に適用されるおもな法令

大阪府警察本部のHP内にある「ちかん被害相談所」のページの冒頭あたりに、ひとき
わ目立つポスターが載っている。黒地の横長ポスターと、白地で同サイズ同じ図柄のポス
ターが上下に接合されていて、各々の中央には「みんなでチカン追放!!」という文句入
りのレッドカードをもった手のイラストが描かれ、その図柄の右には「チカンはあかんで。」
が、左には「ゼッタイあかんで。」という警告文が配置されている。大阪市営地下鉄駅構内
でおなじみだったこの「列車内チカン追放キャンペーン」ポスターで、レッドカードによ
り表されている痴漢行為は犯罪であるということが強調されている。
では、痴漢行為とはどのような行為なのだろうか。
同HPにおいて、「ちかん(痴漢)行為とは、公共の場所や乗り物の中で、身体を触った
りして、被害を受けた人に恥ずかしい思いや、不安を感じさせることを言います。」17とあ
る。また、警視庁のHPにおいては、「チカン(痴漢)とは、人に対して性的な行動や卑わ
いな行為などの性的嫌がらせをすることです。」18とある。これらの説明は、痴漢行為がお
もに適用される法令である迷惑防止条例の条文に則っている。
いわゆる迷惑防止条例は、都道府県によってその正式名称や規定内容などが異なる。た
とえば大阪府の場合、
「大阪府公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する
条例」19というのが正式名称である。昭和 37 年 12 月 24 日に公布されたこの条例は、第 2
条では乗車券等の不当な売買行為(ダフヤ行為)の禁止が、第 10 条では反復したつきまと
い等の禁止が定められ、時代状況に応じて追加改正や新規制定されている。
第 6 条では痴漢行為が規定されている。上でも言及した大阪府警察HPの「ちかん被害
相談所」には、迷惑防止条例第 6 条や刑法第 176 条(強制わいせつ)、第 174 条(公然わい
せつ)など痴漢行為に適用される法令が掲載されている(本節末掲載の表2・3参照)20。
迷惑防止条例第 6 条の罰則では、常習でない場合は「6 月以下の懲役または 50 万円以下の
罰金」で、常習の場合は「1 年以下の懲役または 100 万円以下の罰金」となっている。東京
都の迷惑防止条例の正式名称は、頭の「大阪府」を除けば大阪府と同じ「公衆に著しく迷
惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例」であり、痴漢犯罪の罰則も同様である。
一方、神奈川県の場合、正式名称は「神奈川県迷惑行為防止条例」であり、常習でない痴
漢犯罪の罰則は「1 年以下の懲役又は 100 万円以下の罰金」で、常習の場合は「2 年以下の

17
大阪府警察本部 HP「ちかん被害相談所」
<http://www.police.pref.osaka.jp/07sodan/chikan_sodan/index.html>(08.02.01 アクセス)
18
警視庁 HP「痴漢相談所」
<http://www.keishicho.metro.tokyo.jp/kouhoushi/no1/koramu/koramu3.htm>(08.02.01 アクセス)
19
大阪府 HP「大阪府公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例」
<http://www.pref.osaka.jp/houbun/reiki/reiki_honbun/k2011067001.html>(08.02.01 アクセス)
20
大阪府警察本部 HP「ちかん相談所」
<http://www.police.pref.osaka.jp/07sodan/chikan_sodan/images/hourei.pdf#search='大阪府迷惑防止条例'>
(08.02.01 アクセス)

14
懲役又は 100 万円以下の罰金」21である。常習でない場合の懲役期間と罰金額は、大阪府と
東京都のちょうど倍となっている。
痴漢行為は、上にも記したように、迷惑防止条例や刑法第 176 条・第 174 条が適用され
るが、これら以外にもさまざまな法令が適用される。警視庁 HP の「痴漢相談所」では、そ
の他、器物損壊罪や軽犯罪法違反でも処罰されると記載されているが、
「痴漢犯罪は、通常、
迷惑防止条例第 5 条第 1 項のいわゆる『卑わい行為』の規定を適用して取り締まることと
なりますが、犯行がエスカレートした場合には、刑法の『強制わいせつ罪』が適用されま
す。」22とある。
刑法第 176 条の強制わいせつ罪は、
「13 歳以上の男女に対し、暴行又は脅迫を用いてわい
せつな行為をした者は、6 月以上 10 年以下の懲役に処する。13 歳未満の男女に対し、わい
せつな行為をした者も、同様とする。
」と規定されている。この罰則内容と、上に引用した、
大阪府や東京都の迷惑防止条例において痴漢行為に適用される罰則内容とを較べてみると、
前者の最短懲役期間と、後者の常習でない場合の最長懲役期間が同じ 6 月なのである。こ
のことについては次項でも取り上げる。
ここまでみてきたように、痴漢行為はおもに迷惑防止条例と刑法の強制わいせつ罪が適
用される。それは本節第一項で取り上げた警視庁の「電車内における痴漢犯罪の実態調査」
結果にも現れている。すなわち、平成 16 年中の首都圏の電車内で起きた痴漢犯罪の総数
2,201 件の内訳は、卑わい行為が 1,897 件で強制わいせつが 304 件であった23。

第三項 迷惑防止条例違反と強制わいせつ罪

では、痴漢行為に対して迷惑防止条例や刑法の強制わいせつ罪等を適用するかどうかを
決めるのは誰なのか。
被告人に対して有罪か無罪かを宣告するのは裁判官である。裁判は起訴された後に行わ
れ、起訴するかどうかを決めるのは検察官である。検察官が裁判所に提出する起訴状には、
刑事訴訟法第 256 条に則って被告人の氏名・公訴事実・罪名が記載される(本節末掲載の表
4参照)。そこに罪名が記載されるから、被告人に対して迷惑防止条例違反や刑法の強制わ
いせつ罪等の処分を決定するのは検察官である。
だが、実質的に処分を決めるのは検察官ではないのではないかと刑事手続の問題点を指
摘する弁護士もいる。升味佐江子は、冤罪被害者である鈴木健夫の手記『ぼくは痴漢じゃ
ない!―冤罪事件 643 日の記録―』の解説において、
「無罪の推定」の原則があっても、

21
神奈川県警察 HP「電車内痴漢等迷惑行為相談所」
<http://www.police.pref.kanagawa.jp/mes/mesg4001.htm>(08.02.01 アクセス)
22
上掲の警視庁 HP アドレス。神奈川県警察 HP においても、「痴漢犯罪は、刑法の『強制わいせつ罪』、
神奈川県迷惑行為防止条例の『卑わい行為の禁止』違反により処罰されます。」とある。東京都や神奈川
県などの条例では、痴漢行為は「卑わい行為」と表されている。
23
注 7 参照。

15
「現実は、逮捕の時点で『有罪行きベルトコンベア』にぽっと乗せられてしまって、あと
は流れ作業みたいなものです。」24と述べて、元検察官の弁護士の、
「日本の刑事事件は、一
番初めに事件を担当する巡査部長が処分を決めている」25というコメントを紹介する。そし
てそのコメントを次のように説明する26。

こいつが犯人だと考えた巡査部長が逮捕状を請求し、その逮捕状の請求に理由や必要が
あるかどうかをチェックするはずの裁判官がノーということは皆無です。事件が検察官の
手にわたっても、そこで事件が被疑者の側から点検されることはなく、起訴に至れば、裁
判官の審理を受けても 100 に一つも無罪にならず、相場の刑を言い渡されるからです。

事件が発生して捜査が開始されると、事情聴取と供述調書作成が開始される。それから
犯人が特定されて、逮捕もしくは任意取調が行われる。その後犯人の確認や供述調書作成
や実況見分の立会い等が行われるが、証拠不十分等で釈放されるケースを除いて、被疑者
はその時点で、上に引用したように、巡査部長によって「有罪行きベルトコンベア」に乗
せられるということになるのだろうか(「刑事司法における手続の流れ」は本節末掲載の図1
参照)。
それでは、例えば迷惑防止条例と刑法の強制わいせつ罪は、どのような基準で振り分け
られるのだろうか。
痴漢冤罪のルポルタージュである池上正樹著『痴漢「冤罪事件」』の解説で、弁護士佐藤
善博は、「基本的には、着衣の中に手を入れて、女性の胸や陰部に直接触れるのが『強制わ
いせつ』、その他が『条例違反』とされている。」27と述べる。「強制わいせつ」と「条例違
反」の違いがそのようであるのか、痴漢事件の判決例から確かめてみることにする。
秋山賢三・荒木伸怡・庭山英雄・生駒巌編『痴漢冤罪の弁護』は、第 1 部が痴漢事件を
第 2 部が判例評釈編、
めぐる裁判や弁護活動における問題点などが論じられている理論編、
第 3 部が判決集という構成になっている。その巻末には「痴漢事件判決一覧表」28が付せら
れ、そこには平成 10 年 3 月 30 日から平成 16 年 7 月 8 日まで合計 34 件の痴漢事件判決の
判決日時や裁判所名や罪名等が掲載されている。それらのうち電車内での痴漢事件であり、
同編第 3 部中に判決文も掲載されている 19 件の判決文をみてみると、被告人が被害者の下
着の中に手や指を差し入れて陰部や臀部などを触った事件 7 件は、たしかに強制わいせつ
罪で判決が下されている。また、被告人が被害者の下着の中に手指を入れたが局部に触る
までに至らなかった強制わいせつ未遂事件も 1 件ある。一方、被告人が被害者の着衣の上
から陰部や臀部などを触った事件は 11 件あって、そのうちの 10 件は迷惑防止条例違反の罪

24
鈴木健夫(2004)『ぼくは痴漢じゃない!―冤罪事件 643 日の記録―』新潮文庫、184 頁。
25
同。
26
同。
27
池上、上掲書、192 頁。
28
秋山賢三・荒木伸怡・庭山英雄・生駒巌編(2004)『痴漢冤罪の弁護』現代人文社、620∼621 頁。

16
名となっている。ところが、残りの 1 件は強制わいせつ罪で判決が下されているのである。
この事件の判決文中の量刑の理由をみると、未成年者に対する犯行であることが始めに挙
げられている29。だが、被害者が未成年者で、迷惑防止条例違反が適用された判決例も同書
に掲載されている30。この事件の場合、被害者が未成年であることの次に、被告人が教職者
だということが量刑の理由に挙げられている31。このことも重くみられたようである。この
強制わいせつ被告事件32は、地方裁判所で有罪判決が下され、被告人側が控訴するが、高等
裁判所で棄却される。
このような例もあるが、通常は、上に引用したように、痴漢行為は「基本的には、着衣
の中に手を入れて、女性の胸や陰部に直接触れるのが『強制わいせつ』、その他が『条例違
反』」33が適用されると言える。
実質的には巡査部長が処分を決めるのだとしても、被疑者の身柄が検察庁に送られる送
致事件は検察官が捜査する。そして、「検察官は、捜査を遂げた上、犯罪の成否、処罰の要
否等を考慮して、事件の起訴・不起訴を決める」34。起訴を決めたら、検察官は起訴状に、
「罪名は、適用すべき罰条を示してこれを記載しなければならない。」35。そこで、起訴状
に、例えば強制わいせつ被告事件で懲役 6 月の求刑と記載されると、地方裁判所で裁判が
行われる。一方、起訴状に、例えば迷惑防止条例違反被告事件で罰金 50 万円の求刑と記載
されると、簡易裁判所で裁判が行われる。だが、迷惑防止条例違反被告事件でも、例えば
懲役 6 月の求刑と記載される場合は、地方裁判所で裁判が行われる。というのは、「地方裁
判所は、第一審の原則的な裁判所であり、罰金以下の刑に当たる罪、家庭裁判所の専属管
轄に属する罪及び高等裁判所が第一審の裁判権を有する罪を除き、第一審の裁判権を有す
る。」36からである。
大阪府の場合、平成 14 年に迷惑防止条例第 6 条の罰則が改正され、それまで常習でない
場合は罰金 5 万円だったのが、
「6 月以下の懲役または 50 万円以下の罰金」となる。大阪府
以外の都道府県においても同じような時期に同じように厳罰化され、迷惑防止条例違反に
懲役刑が加わる。強制わいせつ罪の罰則が「6 月以上 10 年以下の懲役」だから、本節第二
項で言及したように、迷惑防止条例違反の懲役刑と同じということもあり得るのだ。

29
同書、342 頁。
30
同書、540 頁。
31
同書、342 頁。
32
外房線事件。平成 14 年 1 月 15 日、千葉地裁刑事第1部において強制わいせつ罪で有罪判決が出る。被
告人側が控訴するが、平成 14 年 9 月 13 日、東京高裁第 4 刑事部において控訴が棄却される(秋山等編、
上掲書、330∼359 頁。)。
33
池上、上掲書、192 頁。
34
法務省法務総合研究所(2007)『犯罪白書 2007』46 頁。
35
刑事訴訟法 第 256 条第 4 項(本節末掲載の表4参照)。
36
上掲の『犯罪白書 2007』51 頁。引用した箇所に続いて、簡易裁判所についての説明が記載されている。
すなわち、「簡易裁判所は、罰金以下の刑に当たる罪、選択刑として罰金が定められている罪及び常習賭
博罪等の一定の罪について、第一審の裁判権を有する(家庭裁判所の専属管轄に属する罪を除く。)。簡
易裁判所は、原則として禁錮以上の刑を科することはできないが、窃盗等の一定の罪については、3 年以
下の懲役を科することができる。」(同頁)。

17
第四項 痴漢犯罪に対する新たな取り組み

痴漢事件で、実際、刑法第 176 条の強制わいせつ罪を適用する場合、その適用は問題で


あるという法学者もいる。船山泰範は、相手が犯人の言いなりになるおそれのある 13 歳未
満の男女の場合は、わいせつな行為をしさえすれば犯罪が成立するとされているから、痴
漢行為を刑法 176 条に適用しても問題ないが、13 歳以上の男女が相手の場合、暴行・脅迫
が要件とされているために適用が難しいと言う37。船山は、刑法 176 条の暴行・脅迫につい
て力の大小・強弱を問わないとする見解もあるが、その解釈には無理があるとして、刑法
176 条の強制わいせつ罪と 178 条の準強制わいせつ罪を比較検討して、その解釈を問題とす
る理由を以下のように二つ挙げる38(刑法 176 条・178 条の条文については本節末掲載の表2
参照)。

① 強制わいせつ罪が考えている典型例は、部屋に閉じ込めて逃げられないようにした上で、
何度も殴打するなどして、わいせつ行為に及ぶ場合で、電車内での痴漢行為とは類型が
異なります。
② 178 条の準強制わいせつ罪では、被害者の心神喪失・抗拒不能の状態を利用したりする
ことを予定していますが、それは被害者の状態として、まさに反抗が著しく困難な場合
といえますから、この条文とパラレルに(平行的に)考えるとすれば、176 条の暴行・
脅迫だけをゆるやかに解釈するのはバランスを欠きます。

「痴漢行為について 176 条・178 条の適用は相当に困難」


上に引用した理由から、船山は、
39
であることから、
「立法論としては、相手方の同意にもとづかないわいせつ行為について、
176 条より一段軽く処罰される規定を新たに立法するのがよいと思われます。」40という見解
を示すが、
「当面は、条例に処罰規定があれば、それによって対処するのが一つの方策です。」
41
と述べる。つまり、船山は、痴漢行為について刑法 176 条の強制わいせつ罪と 178 条の準
強制わいせつ罪の適用は適当でなく、新しい規定の立法化が適当だとしているのである。
だが、それが実現していない現状において、新法制定までの暫定的な了解だということを
示唆しつつ船山は迷惑防止条例の適用に理解を示す。
それでは、痴漢行為の処罰を規定した新しい法律の制定について、これまで検討されな
かったのだろうか。
本節第一項で取り上げた、男女共同参画室が平成 11 年(1999 年)9 月から 10 月に行った

37
船山、上掲書、256∼259 頁。
38
同書、257 頁。
39
同書、258 頁。
40
同。
41
同。

18
「男女間における暴力に関する調査」をここで再び取り上げることにする。この調査は、
そもそも「平成 9 年 6 月 16 日、内閣総理大臣から男女共同参画審議会に対し、女性に対す
る暴力に関し的確に対応するための基本的方策について諮問がなされ」42たことに始まる。
この諮問に対して平成 11 年 5 月 27 日に出された答申において、「女性に対する暴力の実態
や、それに対する人びとの意識を把握する」43という課題が挙げられ、同調査はその課題を
実現するために行われた。
ここで注目したいのは、(1)「夫婦間での暴行等について」、(2)「つきまとい行為について」、
(3)「痴漢について」、(4)「性的行為の強要について」という同調査の四つの調査項目である
44

「女性に対する暴力に関し的確に対応するための基本的方策について諮問がなされ」45、
女性に対する暴力の実態等が項目ごとに調査された結果、(1)は平成 13 年 4 月 13 日に成立
した「配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護に関する法律」(DV 防止法)46へ、(2)は
平成 12 年 5 月 18 日に成立した「ストーカー行為等の規制等に関する法律」(ストーカー規
制法)47へとつながってゆく。
一方、(3)と (4)については新しい法律が制定されることはなく、(3)に適用されている迷
惑防止条例の罰則が、本節第三項で言及したように、例えば大阪府では、常習でない場合
に罰金 5 万円だったのが、平成 14 年の条例改正で、「6 月以下の懲役又は 50 万円以下の罰
金」というように厳しくなる48。また、平成 16 年の法改正で、(3)も (4)も適用される強制
わいせつ罪(刑法第 176 条)は、6 月以上 7 年以下の懲役だったのが 6 月以上 10 年以下と
(4)が適用されることもある強姦罪(刑法第 177 条)は、2 年以上の有期懲役だった
なり、
のが 3 年以上の有期懲役へと量刑が重くなった49。
平成 16 年中の首都圏における痴漢犯罪のうちの約 77%が電車内で起こったというデータ
がある50。JRの線路は沖縄県を除いて日本中に敷かれ、県境を越える私鉄線路も少なくな
い。痴漢行為がおもに適用される迷惑防止条例の罰則は、都道府県によって異なる場合も
あり、本節第二項で取り上げたように、県境を接する東京都と神奈川県の迷惑防止条例に

42
上掲の内閣府男女共同参画局 HP アドレス。
43
同。
44
同。
45
同。
46
内閣府男女共同参画局 HP「配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護に関する法律」
<http://www.gender.go.jp/main_contents/category/dvhou.pdf>(08.02.20 アクセス)
47
警視庁 HP「ストーカー規制法」
<http://www.keishicho.metro.tokyo.jp/seian/stoka/stoka.htm>(08.02.20 アクセス)
48
大阪府 HP「大阪府例規集」
<http://www.pref.osaka.jp/houbun/reiki/reiki_honbun/ak20110671.html>(08.02.20 アクセス)
49
青山善充、菅野和夫編(2007)『判例六法 平成 20 年版』有斐閣、1772∼1773 頁。
50
本節第一項で引用した警視庁 HP「痴漢相談所」には、電車内における痴漢犯罪の実態が報告されていた
(注 7 に記したように、現在は Internet Archive を経由しなければこのウェブサイトに接続することはでき
ない)。そこには、平成 16 年中、首都圏の「卑わい行為」の検挙率が、電車内が 77.1%、店舗 7.2%、駅・
鉄道施設 7.2%、道路上 5.5%、バス内 0.4%、映画館 0.2%、その他 2.4%と報告されている。

19
おいて、常習でない場合、前者は「6 月以下の懲役または 50 万円以下の罰金」で、後者は
「1 年以下の懲役又は 100 万円以下の罰金」というように懲役期間と罰金額がそれぞれ 2 倍
の開きがある51。県境付近を通過する電車内で痴漢事件が起こった場合、東京都か神奈川県
かどちらの条例を適用するかが問題になるということも考えられるので、統一した法律が
望まれるのではないだろうか52。だが、痴漢行為については新しい規定の立法化には至らな
かった。
痴漢冤罪被害者の夏木栄司は、自著『でっちあげ―痴漢冤罪の発生メカニズム』にお
いて、痴漢冤罪を引き起こすのは「痴漢は大した犯罪ではないという感覚を強く持ってい
る警察官なのです。」53と述べ、続けて警察官の捜査手法のいい加減さを批判する54。

だから、
「認めてさえしまえばスピード違反と同じ罰金ですむぞ、認めなければ裁判にな
ってとても面倒だぞ」と脅したりするのです。この言葉の存在自体が、捜査当局が痴漢と
いう犯罪を軽視している最大の証拠です。ここに大きな問題が生じる素地があります。た
とえ説得の手段だとしても、果たして<殺人犯>に対しても同じようなことを言うでしょ
うか。

殺人と痴漢行為とを同等に論じることはレトリカルなのだがと夏木は断りつつ、
「<痴漢
>は大した犯罪ではないという捜査当局の無意識的な認識が、いい加減な捜査を容認して
いる最大の原因になっている」55と強調する。近年、痴漢行為を罰する迷惑防止条例や強制
わいせつ罪等が厳罰化されたことから、捜査当局も、大した犯罪ではないという認識を改
めるようになったかもしれない56。だが、本節第一項でみたように大多数の痴漢被害者は声
をあげていないのである。やはり、痴漢行為が被害者の精神に苦痛をあたえる暴力である
ということが広く認識されるためには、痴漢行為についての新しい規定の立法化が有効だ
ったのではないだろうか。
DV 防止法やストーカー規制法のように、痴漢行為についても新しい法律が制定されてい

51
近畿地方の二府五県(三重県を含む)の HP に掲載されているそれぞれの迷惑防止条例を照らし合せて
みると、痴漢行為の罰則はすべて東京都に同じ。
52
「管轄区域の境界周辺における事案に関する権限」について、警察法第六十条の二に次のように規定され
ている。「管轄区域が隣接し、又は近接する都道府県警察は、相互に協議して定めたところにより、社会
的経済的一体性の程度、地理的状況等から判断して相互に権限を及ぼす必要があると認められる境界の周
辺の区域(境界から政令で定める距離までの区域に限る。)における事案を処理するため、当該関係都道
府県警察の管轄区域に権限を及ぼすことができる。」(総務省 HP「警察法」
<http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S29/S29HO162.html>(08.02.20 アクセス))。たとえ相互に権限を及ぼせ
る区域を境界周辺に定めたとしても、その区域にも境界が存在する。つまり、このような法律で規定しな
ければいけないほど管轄区域の縄張りは限定されているだろうから、隣接する都県における条例違反の罰
金の相違は、容易な問題でないように思われる。
53
夏木栄司(2000)『でっちあげ―痴漢冤罪の発生メカニズム』角川書店、222 頁。
54
同。
55
同書、223 頁。
56
本章第二節第一項参照。

20
たならば、これまで泣き寝入りをしていた多くの痴漢被害女性たちも、痴漢は性暴力であ
るということを認識し、より多くの被害者たちが声を上げていただろう。それとともに、
捜査当局も本腰を入れて痴漢犯罪に対して取り組むようになっていただろうし、その結果、
痴漢犯罪が今より減少していたかもしれない。しかし、新法制定という新しいルールづく
りは行われず、実際はこれまで適用されていた既定の法令の罰則が強化された。
それに加えて、実現するのがあまり困難でない方策である女性専用車両の導入が検討さ
れたと考えることもできるのではないだろうか57。新法の代替かもしれないその方策が、不
安や恐怖から外に出られなかった性暴力被害女性たちに社会への通路を切り開いた。例え
ばそれは、
「女性専用車両のお陰で出歩けるようになったという性暴力のサバイバーの声も
多く聞く。」という、私たちのインタヴューに答えてくれた「性暴力を許さない女の会」の
メンバーの声にも読み取ることができる58。

(第二章第一節 橋爪由紀)

57
痴漢行為防止対策として日本で初めて女性専用車両を試行したのは京王電鉄である。京王電鉄 HP の「ニ
ュースリリース(2000.12.4)」<http://www.keio.co.jp/news_release/newsr/nr2217.htm>(08.02.20 アクセス)
には、「深夜時間帯の女性のお客様に安心してご乗車いただくため、各臨時列車の進行方向一番後ろの 1
両を女性専用車両とします」と記されている。そこで 2000 年 12 月 7 日(木)、新宿駅 24:05 発、高幡不
動行き急行列車に初めて女性専用車両が試行され、翌年の 2001 年 3 月、京王電鉄は女性専用車両を本格的
に導入することになった。この一年後の 2002 年 2 月に国土交通省(以下国交省)は「女性の視点から見た
交通サービスに関するアンケート調査」を首都圏の男女合わせて約 5,000 人に実施して、おもに女性専用
車両のニーズを測った。その結果が国交省 HP「女性の視点から見た交通サービスについて」
<http://www.mlit.go.jp/kisha/kisha02/15/150813_.html>(08.02.20 アクセス)において報告されている。アン
ケート調査集計の結果、1 番に挙げられているのが「痴漢や迷惑行為対策として女性専用車両の拡充や車
内防犯システムの設置について、利用者のニーズが高い」ということである。また、女性専用車両の「路
線拡大モデル調査の実施の必要性」について、「男女共同参画を目指すこれからの日本社会においては、
日々の通勤通学の面においても女性が安全、快適に社会活動に参加するための環境づくりが必要です。」
とあり、そのために「鉄道事業者の協力を得て、平成 14 年 10 月 1 日(火)から女性専用車両の試験導入」
を実施すると報告されている。そこで協力を求められたのが阪急電鉄と京阪電鉄であり、両社は 2 ヶ月間
「女性専用車両、路線拡大モデル実験」を実施した。
要するに、「痴漢について」という調査項目が含まれた(総理府)「男女間における暴力に関する調査」
が 1999 年の 10 月から 11 月に実施された一年後の 2000 年 12 月に京王電鉄は女性車両を試行し、その翌年
の 2001 年 3 月に本格導入した。その後 2002 年 2 月に、上記のように国交省のアンケート調査「女性の視
点から見た交通サービスに関するアンケート調査」が実施され、女性専用車両のニーズが確認される。そ
の結果、国交省主導の下で女性専用車両が試験導入されたのである。詳しくは本報告書第三章第四節、第
五節を参照。
58
「性暴力を許さない女の会」へのインタヴューは<資料4>。詳しくは本報告書第一章を参照。なお、本章第
二節第二項、第五項でも言及している。

21
【引用・参考文献】

青山善充、菅野和夫編(2007)『判例六法 平成 20 年版』有斐閣
秋山賢三・荒木伸怡・庭山英雄・生駒巌編(2004)『痴漢冤罪の弁護』現代人文社
池上正樹(2000)『痴漢「冤罪裁判」』小学館文庫
石橋英子監修(2003)『なぜ女は男をみると痴漢だと思うのか なぜ男は女の不快感がわか
らないのか』ビーケーシー
小口千恵子・浜田薫(2002)「痴漢被害体験者アンケートが語る冤罪の構造」『刑事弁護』
NO.31:85-89
小澤実(2007)
『左手の証明 記者が追いかけた痴漢冤罪事件 868 日の真実』Nana ブックス
新村出編(2008)『広辞苑 第六版』岩波書店
鈴木健夫(2004)『ぼくは痴漢じゃない!―冤罪事件 643 日の記録―』新潮文庫
夏木栄司(2000)『でっちあげ―痴漢冤罪の発生メカニズム』角川書店
船山泰範(2006)『刑法がわかった』法学書院
法務省法務総合研究所(2006)『犯罪白書 2006』
法務省法務総合研究所(2007)『犯罪白書 2007』
八塩弘二(2002)「中学生が痴漢の疑いをかけられた―痴漢狩り(?)のような被害者だ
った…」『時の法令』通号 1676:47-56
吉田英法(1990)「鉄道警察の仕組と運営(上)」『警察学論集』第 43 巻第 4 号:36-55
大阪府 HP「大阪府公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例」
<http://www.pref.osaka.jp/houbun/reiki/reiki_honbun/k2011067001.html>(08.02.01 アクセ
ス)
大阪府 HP「大阪府例規集」
<http://www.pref.osaka.jp/houbun/reiki/reiki_honbun/ak20110671.html>(08.02.20 アクセ
ス)
大阪府警察本部 HP「ちかん相談所」
<http://www.police.pref.osaka.jp/07sodan/chikan_sodan/images/hourei.pdf#search='大阪府迷
惑防止条例'>(08.02.01 アクセス)
大阪府警察本部 HP「ちかん被害相談所」
<http://www.police.pref.osaka.jp/07sodan/chikan_sodan/index.html>(08.02.01 アクセス)
神奈川県警察 HP「電車内痴漢等迷惑行為相談所」
<http://www.police.pref.kanagawa.jp/mes/mesg4001.htm>(08.02.01 アクセス)
京王電鉄 HP の「ニュースリリース(2000.12.4)」
<http://www.keio.co.jp/news_release/newsr/nr2217.htm>(08.02.20 アクセス)
警視庁 HP「ストーカー規制法」
<http://www.keishicho.metro.tokyo.jp/seian/stoka/stoka.htm>(08.02.20 アクセス)
警視庁 HP「痴漢相談所」
<http://www.keishicho.metro.tokyo.jp/kouhoushi/no1/koramu/koramu3.htm>(08.02.01 アク
セス)
警視庁 HP「電車内における痴漢犯罪の実態」
< http://www.keishicho.metro.tokyo.jp/kouhoushi/no1/koramu/koramu7.htm > ( 2008.02.07

22
アクセス Internet Archive<http://www.archive.org>経由)
国交省 HP「女性の視点から見た交通サービスについて」
<http://www.mlit.go.jp/kisha/kisha02/15/150813_.html>(08.02.20 アクセス)
総務省 HP「警察法」
<http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S29/S29HO162.html>(08.02.20 アクセス)
総務省 HP「法令データ提供システム」
<http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S23/S23HO120.html>(2008.03.08 アクセス))
内閣府男女共同参画局 HP「男女間における暴力に関する調査」
<http://www.gender.go.jp/e-vaw/chousa/images/pdf/h11.pdf>(08.02.01 アクセス)
内閣府男女共同参画局 HP「配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護に関する法律」
<http://www.gender.go.jp/main_contents/category/dvhou.pdf>(08.02.20 アクセス)
兵庫県警察 HP 上の「刑事手続の流れ」図
<http://www.police.pref.hyogo.jp/sodan/hanzai/index3.htm>(2008.03.10 アクセス Internet
Archive<http://www.archive.org>経由)

【参考資料】

表1【強制わいせつ・卑わい行為(電車内)発生状況(平成 8 年∼平成 16 年)】

罪種別 H8 H9 H10 H11 H12 H13 H14 H15 H16

強制わいせつ 96 164 211 259 247 272 255 265 304

卑わい行為 682 1,174 1,496 1,555 1,854 1,734 1,613 1,793 1,897

合計 778 1,338 1,707 1,814 2,101 2,006 1,868 2,058 2,201

「※強制わいせつは認知件数、卑わい行為は検挙件数。なお、暗数は、この数十倍に上ると見込まれる。」

(警視庁 HP「痴漢相談所」からの引用)

23
表2【痴漢行為が適用される刑法のおもな条文】

条項 条文

公然とわいせつな行為をした者は、六月以下の懲役若しくは三十万円以下の罰金又は
百七十四条
拘留若しくは科料に処する。
公然わいせつ

十三歳以上の男女に対し、暴行又は脅迫を用いてわいせつな行為をした者は、六月以
百七十六条
上十年以下の懲役に処する。十三歳未満の男女に対し、わいせつな行為をした者も、
強制わいせつ
同様とする。

1 人の心神喪失若しくは抗拒不能に乗じ、又は心神を喪失させ、若しくは抗拒不能

にさせて、わいせつな行為をした者は、第百七十六条の例による。
百七十八条

準強制わいせつ及 2 女子の心神喪失若しくは抗拒不能に乗じ、又は心神を喪失させ、若しくは抗拒不

び準強姦
能にさせて、姦淫した者は、前条の例による。

(青山、菅野編『判例六法 平成20年版』から抜粋)

表3【大阪府公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例・抜粋】

第六条 何人も、次に掲げる行為をしてはならない。

一 人を著しくしゅう恥させ、又は人に不安を覚えさせるような方法で、公共の場所又

は公共の乗物において、衣服等の上から、又は直接人の身体に触れること。

二 人を著しくしゅう恥させ、又は人に不安を覚えさせるような方法で、公共の場所又

は公共の乗物における衣服等で覆われている人の身体又は下着を見、又は撮影するこ

と。

三 みだりに、写真機等を使用して透かして見る方法により、公共の場所又は公共の乗

物における衣服等で覆われている人の身体又は下着の映像を見、又は撮影すること。

四 みだりに、公衆浴場、公衆便所、公衆が利用することができる更衣室その他公衆が

通常衣服の全部又は一部を着けない状態でいる場所における当該状態にある人の姿態

を撮影すること。

五 前各号に掲げるもののほか、人に対し、公共の場所又は公共の乗物において、人を

著しくしゅう恥させ、又は人に不安を覚えさえるような卑わいな言動をすること。

違反者は、6 月以下の懲役または 50 万円以下の罰金

常習の違反者は、1 年以下の懲役または 100 万円以下の罰金

(大阪府警察本部 HP からの資料などをもとに作成)

24
表4【刑事訴訟法 第 256 条[起訴状、訴因、罰条]】

① 公訴の提起は、起訴状を提出してこれをしなければならない。

② 起訴状には、左[本表では下]の事項を記載しなければならない。

一 被告人の氏名その他被告人を特定するに足りる事項

二 公訴事実

三 罪名

③ 公訴事実は、訴因を明示してこれを記載しなければならない。訴因を明示するには、できる限り

日時、場所及び方法を以て罪となるべき事実を特定してこれをしなければならない。

④ 罪名は、適用すべき罰条を示してこれを記載しなければならない。但し、罰条の記載の誤は、被

告人の防禦に実質的な不利益を生ずる虞がない限り、公訴提起の効力に影響を及ぼさない。

⑤ 数個の訴因及び罰条は、予備的に又は択一的にこれを記載することができる。

⑥ 起訴状には、裁判官に事件につき予断を生ぜしめる虞のある書類その他の物を添附し、又はその

内容を引用してはならない。

(青山、菅野編『判例六法 平成 20 年版』から抜粋)

図1【刑事司法における手続の流れ】(次頁)

「痴漢犯罪 NO! 鉄道利用者の会」リーフレット中の「手続の流れ」図(石橋監修『なぜ女は男をみると

痴漢だと思うのか なぜ男は女の不快感がわからないのか』120 頁において引用)をもとに、兵庫県警察

HP 内にある「刑事手続の流れ」図<http://www.police.pref.hyogo.jp/sodan/hanzai/index3.htm>(2008.03.10 ア
クセス Internet Archive<http://www.archive.org>経由。現在は Internet Archive を経由しなければこのウェブ

サイトに接続することはできない)および『犯罪白書 2007』に掲載されている「刑事司法における犯罪

者〔成人〕に対する手続の流れ」図(45 頁)を参考にして作成。

25
図1【刑事司法における手続の流れ】

・警察への届出 事件の発生

・110 番通報
捜査の開始
現行犯逮捕
・事情聴取

・供述調書作成等 犯人の特定

任意取調 逮 捕
・犯人の確認
・供述調書作成
釈 放 ・実況見分の立会い

・被疑者を拘束し、48 時
身柄送致
書類送致 間以内に検察庁に送る

勾留請求(裁判官の審理を受ける)

・24 時間以内に被疑者の勾留
検察官の調書作成 検察庁で処分決定
を請求(勾留期間 10 日間)

起 訴 不起訴

・嫌疑不十分、証拠不十分な場合等
公判請求 略式命令請求
・起訴猶予

・心神喪失
冒頭手続

・略式手続によることに異議のない
証拠調べ手続 略式請求不相当 場合、書面で簡易裁判所に請求

・裁判官が略式請求不相当と認
弁論手続
めると、正式裁判に付される

判 決 略式命令

・書面審査で罰金、科料のみが言い渡される
有 罪 無 罪
・被告人から正式裁判の申立が有る場合は、正式

裁判の手続となる
刑の執行

26
第二節 痴漢冤罪

第一項 痴漢冤罪が生まれる背景

痴漢冤罪がマスコミ等でとりあげられ、社会的な関心事になってきたのは、この 10 年ぐ
らいのことである。1996 年ごろから、
「痴漢は犯罪である」という認識のもと、警察の方針
が検挙・逮捕に変わり、検挙者数が急増したのである。その背景には、次章第二節で展開
するように、女性に対する暴力の撤廃に関する国際的な動向と国政の対応があると考えら
れる。庭山英雄弁護士は、痴漢冤罪が生まれる背景を次のように述べている59。

1996 年から 97 年にかけて、警察は痴漢事件につき厳格な検挙方針を決めたらしい。痴漢


だと疑われた者は、駅員からの連絡のあり次第、有無を言わさず逮捕・勾留されることとな
った。杜撰な大量起訴がこれに続いた。当然、否認事件が相次いだ。処理に困った裁判所は、
新たな「事実認定基準」を設置して事態を収拾しようとした。すなわち、具体的、自然的、
合理的とか、ことさらに虚偽証言をする動機がないとか、反対尋問に堪えているとかのいわ
ゆる外形的基準に合いさえすれば有罪認定してもよい、との方向を密かに定めた模様である。

その結果、本章第一節第一項の犯罪の実態でも述べられているように、警視庁の報告に
よると、2004 年の東京都の電車内における痴漢犯罪の検挙数は 1996 年の約 3 倍にふくれあ
がっている。被害女性の証言だけを根拠に、痴漢犯人とされ、起訴された被告人の中には、
誤って痴漢犯人とされてしまった人が存在していると考えられる。事実、「痴漢えん罪被害
者救済ネットワーク」60によると、1990 年∼1999 年の 10 年間で、全国の簡易裁判所に「私
は痴漢をしていない」と否認して裁判を闘った人が 203 名いるが、結果は全員有罪であっ
た。また、「犯行」を認めた場合には罰金刑と示談で済ませすぐに釈放されるけれど、「犯
行」を認めない場合には長期に渡り勾留され、裁判によって長期化することなどを、被疑
者に捜査側が諭す方法で取調べがなされる61ことから、無罪であっても屈服してしまうケー

59
庭山英雄(2003)「93 日の未決拘禁を不当とした痴漢事件最高裁決定」『刑事弁護』No.34 101 頁。
60
「痴漢えん罪被害者救済ネットワーク」(「電車の中などで痴漢に間違われ、「何もしていない」とい
うことを言いつづけたために、長期の勾留をされた上で裁判にかけられ、十分な証拠のないまま有罪にさ
れるなど、警察、検察、裁判所によって人権を踏みにじられた者」が 2002 年に結成したネットワーク)
<http://www.rikkyo.ne.jp/univ/araki/chikanenzai/appeal2.htm>(08.02.22 アクセス)
61
高見秀一(2003)「痴漢冤罪逆転無罪事件」『刑事弁護』No.35 62 頁に「(被疑者)M さんが否認する
とわかると、大声を出したり、『認めれば 10 万か 15 万で出られる。認めなければ長くなる』となだめす
かしたり、硬軟織り交ぜて M さんに自白を強要した。」とある。また、さまざまな手記や事例報告の、取
調べについて書かれている部分には必ずこのような場面が出てくる。場合によっては弁護士が「自白」を
すすめるようなこともある。(池上正樹 2000『痴漢「冤罪裁判」男にバンザイ通勤させるのか!』、「痴
漢えん罪被害者救済ネットワーク」T.K さんの事件
<http://www.rikkyo.ne.jp/univ/araki/chikanenzai/case/kocase.htm>(08.02.22 アクセス))

27
スがあると考えられ、それも「冤罪」とみなすと、その数はもっと増えると推測される。
「略
式罰金で終わっている事件のうち、無実の人が少なからず存在するだろうというのが多く
の弁護人の実感であろう。」と高見秀一弁護士はのべている62。

第二項 痴漢冤罪をどのようにとらえるか

ところで、「冤罪」とはなにか。鹿児島県議選買収無罪事件をめぐる法務大臣の発言63以
降、にわかに注目をあびているが、ここでは、小田中聡樹氏の定義64を採用したい。

『冤罪』とは一般に『無実の罪』のことをいい、犯人でない者が嫌疑をかけられ逮捕、起
訴、審理、有罪言渡などを受ける状態をさす。これに対し『誤判』とは、言葉通りには誤っ
た判決をいい、誤った有罪判決だけでなく、誤った無罪判決もふくむ。

この論稿を仕上げるにあたって、私は、何点かの判例や手記を読んだ。そして、痴漢冤
罪という事実を前にした時、自分の立つ位置が定まらないような奇妙な感覚におそわれた。
戦後問題になった、様々な冤罪事件(松川事件、免田事件、狭山事件等)では感じない感
覚である。痴漢冤罪の当事者の苦しみに私は同情する。もし私の息子が冤罪にまきこまれ
たらと想像すると、いてもたってもいられない。しかし同時に、判例や手記は女である私
を責めてくるのである。それは、北原みのりの次のような感覚に近い65。

「痴漢えん罪」という問題は、思いもよらぬ方向からのパンチだったように思う。暗闇
から突然打たれ、思わずうずくまってしまった。アホなことに私は、
「痴漢えん罪」を「男
からの挑戦状」と受けとめてしまったのだった。

そこには、痴漢冤罪という問題がもつ複雑さがある。警察の捜査、司法のシステム、セ
クシュアリティ、ポルノグラフィ、満員の通勤列車等々の問題が複雑にからみあっている。
そして、その複雑さを利用するかのような、意趣返しや示談金目的といわれるような「女

62
高見秀一、前掲書、63 頁。
63
被告12人全員の無罪が確定した鹿児島県議選の公職選挙法違反をめぐる「志布志事件」について、鳩
山法相は 2008 年 2 月 13 日、法務省で開かれた検察長官会同の席上で「私は冤罪と呼ぶべきではないと考
えている」と発言した。鳩山法相は発言の後、省内で会見を開き、「志布志事件では、被告とされた方に
大変ご迷惑をおかけし、社会通念上は冤罪と言われても致し方ない」と釈明した。志布志事件では元県議
らが公選法違反で逮捕、起訴された。鹿児島地裁は昨年 2 月の判決で「客観的な証拠は全くない」として
12 人全員を無罪とし、確定している。
(アサヒコム)<http://www.asahi.com/politics/update/0214/TKY200802130356.html>(08.02.22 アクセス)
64
小田中聡樹(1993)『冤罪はこうして作られる』講談社現代新書、22 頁。
65
北原みのり(2003)「『痴漢』という行為と性の自己決定権について…強者でもなく、被害者でもなく
…」『なぜ女は男をみると痴漢だと思うのか なぜ男は女の不快感がわからないのか』石橋英子監修 ビ
ーケーシー、192 頁。

28
の悪意66」が確かにあるのかもしれない。怒りの矛先を私たちはどこにむけるべきなのか、
その指針になるのではないかと考えられる二つの意見を紹介したい。
「痴漢犯罪 NO!鉄道利用者の会」67は 2000 年、2001 年、2003 年の 3 回にわたり、冤罪
被害者とのシンポジウムを開いている。痴漢犯罪に「No!」をつきつけながら、なおかつ
冤罪被害者とどう連携していけばいいかをさぐる、前向きな企画である。3 回目のシンポジ
ウム「なぜ僕たちは救われないのか、女性たちも救われないうえに」をまとめたテキスト68
の中で、主催の石橋英子はこのように言っている。

痴漢えん罪や一部の痴漢は、利用者自身が容認している“満員電車”というシステムが量産
しているわけです。私は、“陥れる女対陥れられる男”というような、不毛な男女の対立構図
で見ることをやめて、皆さんに社会システムの問題へ目をむけていただきたかったんです。

もうひとつは、私たちが報告書を作成する中で、是非、話を伺いたいと思った、
「性暴力
を許さない女の会」69のメンバーに行ったインタヴューのなかの「冤罪」についての回答70で
ある。

冤罪は痴漢犯罪に限らず昔からあった。痴漢が犯罪として認識されるようになったので結
果的に痴漢にまつわる冤罪も起こってしまっているのではないだろうか。しかし、どの犯罪
にでもおこりうる冤罪を痴漢犯罪と執拗に結び付けるような扱いが各種メディア(週刊誌、
漫画、ドラマ等)でされていることに強い違和感がある。痴漢という犯罪が悪であるのに、
その怒りの矛先が被害女性へ向けられていることが心配。

以下、この二つの指針をたよりに、痴漢冤罪がなぜおこるのか、どうすれば防げるのか

66
「悪意」の一例として以下のような事件があげられる。(ただし、この場合の主犯格は男であったが。)
2008 年 2 月 1 日、大阪市営地下鉄御堂筋線で、示談金目当ての男女に痴漢にでっちあげられ、会社員
の男性が大阪府迷惑防止条例違反容疑で誤って逮捕される事件があった。約 22 時間後の 2 日夕に釈放
され、任意の捜査に切り替えられた。2 月 7 日に女が自首してきたため、男性の容疑が晴れ、大学生
の男は虚偽告訴容疑で府警に逮捕された。「自分の言っていることが信じてもらえず、悔しさと不安
でたまらなかった」と、誤認逮捕された会社員の男性は 13 日、朝日新聞の取材に当時の心境を明かし
た。事件は、被害者の供述に立証を頼る痴漢事件の危うさを浮き彫りにした。
(アサヒコム)<http://www.asahi.com/kansai/news/OSK200803130118.html>(08.03.23 アクセス)
これは、痴漢事件を逆手にとった卑劣な犯行であるが、今後、実際に痴漢被害にあった女性がますます声をあげ
にくくなることも考えられ、彼らが犯した行為は二重の意味で犯罪的である。
67
「痴漢犯罪 NO!鉄道利用者の会」主催石橋英子 2000 年発足。鉄道会社首都圏 25 社への調査、携帯用
冊子『女性のための痴漢犯罪基礎知識』の販売、シンポジウムなどの活動を通して、女性専用車両のきっ
かけを創った。
68
石橋英子監修(2003)『なぜ女は男をみると痴漢だと思うのか なぜ男は女の不快感がわからないのか』
ビーケイシー、7 頁。
69
1988(昭和 63)11 月に大阪市営地下鉄御堂筋線で発生した、「御堂筋線事件」を機に結成された。「御
堂筋線事件」とは、御堂筋線で別の女性に痴漢行為をしていた2人組の男性に注意した女性が、男たちに
連れまわされ強かんの被害にあうという陰惨な事件のことである。
70
本報告書<資料 4>

29
を探って行きたいと思う。

第三項 痴漢冤罪はなぜおこるのか―現行犯逮捕・勾留・自白の罠―

痴漢冤罪のひとつの事例を紹介したい71。

被告人(31 歳)は 2003 年 2 月 26 日午前 7 時 54 分頃から 8 時5分ごろまでの間に、西武


新宿線の電車内において、被害者(14 歳)に対し、その臀部を下着の上から手で触ったと
して、駅事務室から戸塚署に連行され、現行犯逮捕される。
(駅員は被告人および、被告人
を犯人ではないと主張する目撃者の話に耳をかさず、目撃者もかえしてしまう。警察署も
被告人の弁解を一切聴かず、調書に記載しなかった。
)5 ヶ月の勾留。被告人は、
「痴漢冤罪
被害者救済ネットワーク」の支援で、目撃者を探し出し、100 人のエキストラに参加しても
らい「再現ビデオ」を作成した。検察は、
「公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為の防
止に関する条例 8 条1項2号、5条1項」違反を主張したが、2004 年 5 月 10 日、目撃者の
信用性が高いこと、被害者の証言は被告人が犯人であるとの決定的な証拠ではない等の理
由で無罪判決。検察側控訴せず無罪が確定する。弁護側は、冒陳から弁論要旨まで、徹底
的に捜査・公判の違法性・不当性を指摘したが、判決にはその指摘はない。(男性の場合)
誰もが痴漢冤罪の被害者になりうるのであるから、捜査機関の捜査状況に対する裁判所の
チェックは重要である。

「痴漢犯人」として特定されるまでのプロセスを秋山賢三弁護士は次のように述べてい
る72。

電車内の痴漢犯人が被害者により「特定」されるプロセスは、①犯行の現場で「手」
を握られたような場合、②車両内においてなんらかの特定行為がありトラブル化した場
合、③電車を降りた後で、駅のホーム上で特定行為があった場合、の3つがあり、いず
れの場合も両者が駅事務室へ赴いている。痴漢行為を否認する者は、第三者を交えたほ
うが冷静な話し合いが可能だと考えて駅事務室に赴いた旨述べることが多い。しかしこ
のような場合、駅側の担当者は直ちに鉄道警察隊に通報し、その男を引き渡すことがマ
ニュアル化している73。被疑者となった者は、自らが先に立って駅事務室に赴いた場合
......
でも、ホーム上で当該女性により現行犯人逮捕されたことになる。

71
安田隆彦(2004)「誰もが痴漢冤罪被害者になる恐怖」『刑事弁護』No.40 112∼117 頁 を引用者が要約
した。
72
秋山賢三(2003)「痴漢事件(迷惑防止条例ほか)」『刑事弁護』No.36 110 頁。(傍点引用者)
73
本報告書資料 3「大阪市交通局へのインタヴュー」では、「(連れてこられた人の話は)聞かしていた
だいている。警察にはお客様の要請あっての通報ということになっている。」という回答を得ている。ま
た、資料 2「鉄道各社へのアンケートのまとめ」では 5 社中3社がマニュアルはないと回答している。

30
また荒木伸怡立教大学教授は、痴漢事件捜査の特色として以下のように述べている74。

捜査機関の前に現れる痴漢事件のほとんどは、(自称)被害者がその男性を駅事務室など
に同行して痴漢犯人だと告げたことが、私人による現行犯逮捕と扱われている事案である。
それ故、犯人は既に(自称)被害者により特定されていることが、痴漢冤罪事件を生む第一
の落とし穴なのであろう。すなわち、まず被害内容について、(自称)被害者から事情聴取
........................
をして供述録取書を作成すると共に、参考人や重要参考人としてではなく被疑者として、自
...............................
白を迫る取調べを最初から行ってしまっていることが問題なのである。

そして、捜査上の問題点を、次のように指摘している。

..............................
私の見るところでは、痴漢冤罪事件は決して特殊な冤罪事件ではなく、供述録取書を事実
.........................................
認定の中心に据えてしまっている現在の刑事司法過程から必然的に生まれている、むしろ象
..........
徴的な冤罪事件である。すなわち、国家公安委員会規則である犯罪捜査規範が示している基
本に忠実な犯罪捜査を捜査機関が行い、客観的証拠よりも供述録取書の内容を重視した事実
認定を行うことを裁判所がやめさえすれば、痴漢冤罪事件を含めて、冤罪・誤判の発生数は
大幅に減少すると予測されるのである。換言すれば、犯罪捜査規範を遵守しない捜査を行っ
ており、しかも、重大な犯罪ではないし裁判所も有罪と認定してくれるからと、捜査機関が
安易な手抜捜査を行っているために大量に生じているのが、市民生活の安全を脅かしている
痴漢冤罪事件なのである。

現行犯逮捕、それに続く自白の強要、否認した場合における不当な長期の勾留、起訴さ
れた場合の有罪率の高さが冤罪をひきおこしているというのが、冤罪にかかわってきた弁
護士たちの見解である。しかし、その中で被害者をどう見るのかという点(例えば、被告
側の弁護人を勤め、「痴漢えん罪被害者救済ネットワーク」のメンバーでもある、荒木伸怡
立教大学教授が、被害者を「(自称)被害者」と称しているように)で、被害者側の代理人
として活動してきた段林和江弁護士は以下のような疑問をなげかけている75。

しかし、問題は裁判官だけではない。被告人の弁護人あるいは相手方代理人の無理解、無
神経な言動が被害者側に二次被害、三次被害を与える場面に出くわすことも少なくない。誤
った固定観念や偏見に気がつかないで被害者を責めたり、それを武器に反撃したり、まして
や嘘つき呼ばわりすることは、真実発見に役立つとは到底思えず、公正な司法という理念か

74
荒木伸怡(2003)「痴漢冤罪防止と捜査上の諸問題『捜査研究』619 号 54∼59 頁。(傍点引用者)
<http://www.rikkyo.ne.jp/univ/araki/chikanenzai/shiryou/chikansousa.htm>(08.02.22 アクセス)
75
段林和江(2003)「性被害と被害者側代理人からみる問題点―痴漢被害を中心に―」『刑事弁護』No.35
103 頁。

31
らみればいかがなものであろうかとの疑念を抱く。

そして、初動捜査に言及し、次のように述べている。

捜査機関が早期に被害者から詳細に聴き取り、正確に調書化し、裏付けをとることが重要
である。その意味では、痴漢事件に関しての専門の訓練を積んだ捜査官が当たるべきである。
もちろん、調書や捜査の正確性に責任があるのは捜査機関であって被害者の責任ではない。

段林和江のいうような捜査機関の誠実な捜査があれば、加害者のみならず、被害者も救
われるのではないだろうか。上述の事例において正確な初動捜査がおこなわれていれば、
無罪が確定するまでの 1 年 3 ヶ月もの長期間、被告人、被害者双方が苦しむことはなかっ
たと思われる。

第四項 腹いせ・示談金目的でおこる冤罪は多発しているのか

以下は、携帯電話の使用を注意された腹いせで訴えられたとされる事例76である。

沖田光男は、1999 年 9 月 2 日午後 11 時過ぎ、酒を飲んでの帰り道、中央線車内(とくに


混雑した様子ではなかった)で、携帯で会話中の女性に「電車のなかで携帯電話は止めなさ
い」と注意した。最寄駅で下車し、バス停付近を歩いていたところを警官に呼び止められ、
「公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為の防止に関する条例」違反の嫌疑で、現行犯と
して 11 時 43 分逮捕される。4 日、地検に送致。22 日まで身柄を拘束され、同日午後、処分
保留のまま釈放となり、同年 12 月 28 日嫌疑不十分を理由に不起訴処分となった。沖田は、
国および東京都ならびに女性を被告として、国家賠償を東京地裁八王子支部に提起した。こ
の訴訟で明確になった問題点は、(1)女性の言い分の不自然さ (2)逮捕・勾留の違法性 (3)
勾留および勾留延長請求の違法性の 3 点である。検察官のねらいは沖田を仕事や家族から切
り離し、長時間にわたって孤立させること。精神的、肉体的に苦痛を与えることによって、
自白を強い、略式起訴に同意させることであった。

この事例も、安易な逮捕・勾留・自白の強要という捜査の一連の流れが冤罪を生み出す
という典型的な例であるが、この事例の特徴は二つあると鈴木は述べている。

ひとつは、沖田にいわゆる痴漢行為はなく、沖田に車内携帯電話を注意された女性がその
ことに反発し、意趣返しとして虚偽の申告をしたこと、ふたつ目は捜査機関が女性の言い分

76
鈴木亜英(2003)「痴漢事件―沖田事件」『刑事弁』No.35 67∼71 頁を引用者が要約した。

32
を鵜呑みにして、根拠も無く突然沖田を現行犯人として逮捕したことである。

いわゆる「狂言」は、痴漢犯罪にかぎらず、他の犯罪にもおこっていることである。前
出の荒木伸怡は、狂言強盗や狂言誘拐の事案においてそれが狂言であることを見抜く捜査
力を警察は有しているとし、実際、犯罪被害自体が存在しない狂言事件のほとんどは、捜
査段階で見破られていることを指摘している。にもかかわらず、沖田が不当な逮捕、勾留
をされたのは、痴漢犯罪の場合の警察のずさんな捜査に、重大な責任があるとしか思えな
い。
また、示談金目的を疑われる痴漢冤罪であるが、前出の段林和江は、ある「痴漢冤罪事
件」において、被害者が過去にも痴漢を摘発して示談金を受け取っていたことが問題にさ
れ、被告人側から示談金目当てではないかと反撃された事件77について以下のように言及し
ている78。

「STOP 痴漢アンケート」によれば、被害回数のうち一番多いのは 2∼5 回の 892 人で、


57.1%であり、6∼10 回が 213 人、13.6%、11 回以上が 144 人で 9.2%である。…(略)…
先の事例で、東京地裁が認定したところによると、示談金を受け取っている事件はすべて
実際に加害者が認めている事件だというのであるから、過去に示談金を受け取ったことが
痴漢を捏造した根拠になるはずがない。仮に、過去に痴漢被害で示談金を受け取ったこと
が女性に不利になるとしたら、女性は痴漢を摘発することをあきらめねばならない。

ところで、
「示談金目的の喝取や、個人的な怨嗟による冤罪事件が、1990 年代末からマス
コミで頻繁に取り上げられるようになった」79といわれたり、また、私たちが行ったアンケ
ートの自由記述の欄にも書かれているように80、実際に、腹いせや示談金目的の痴漢冤罪は
頻繁におこっているのだろうか。この報告書作成の過程で行った大阪市交通局インタヴュ
ー81では、同交通局は特に御堂筋線(大阪地下鉄における痴漢全届出件数の7割を占める)
に勤務する駅員なら痴漢被害のトラブルに遭遇した者はいないという印象があるほど痴漢
犯罪に頻繁に関わっているにもかかわらず、腹いせ的なトラブルがあったという報告はう
けていないとしている。頻繁におこっているなら、そのような事例に遭遇する駅員がもっ
といてもいいはずである。「性暴力を許さない女の会」のメンバーのいう、「どの犯罪にで

77
段林和江、前掲書、104 頁。「刑事事件では 1 審の東京簡易裁判所が無罪判決を言い渡したところ、男
性が女子高校生と両親を相手に損害賠償を求める。民事事件で1審の東京地方裁判所は刑事判決の認定を
覆し、痴漢行為を認め、原告の請求を棄却した(2002 年9月3日東京地裁判決・損害賠償請求事件)。」
78
同書、104 頁。
79
フリー百科事典 Wikipedia「痴漢冤罪」
<http://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%97%B4%E6%BC%A2%E5%86%A4%E7%BD%AA>(08.02.24 アクセス)
80
本報告書第 4 章第 4 節第 4 項 自由記述から「電車の床に座っている女を善良な市民が注意したら、痴漢
扱いされたという話を聞きました。」
81
本報告書<資料 3>

33
もおこりうる冤罪を痴漢犯罪と執拗に結び付けるような扱い」と同じ構図がここでもみえ
ないだろうか。どの犯罪にでもおこりうる狂言を痴漢冤罪と執拗に結びつけることによっ
て、あたかも、冤罪の原因が女性の側にあるかのように、また、「痴漢犯罪 NO!鉄道利用
者の会」の石橋英子のいう「陥れる女」がいたるところにいるかのように宣伝され、警察、
検察の冤罪を生み出す捜査方法の問題を結果的には見えなくしてしまっているのではない
だろうか。

第五項 痴漢冤罪を防ぐてだて

「冤罪=誤判[冤罪型の誤判]は、捜査、起訴、公判のそれぞれの段階における関係者の判
断や措置の、意識的または無意識的な誤りの集積・連鎖の結果として生ずる。」82ならば、
痴漢冤罪はまさに、典型的な冤罪であるだろう。
冤罪で闘っている人の多くは冤罪がおこりやすい司法のシステムを問題にしている83。
「痴漢冤罪」をマスコミが取り上げるとき84、
ところが、 「痴漢冤罪」の恐ろしさを強調する
あまり、声をあげる女性を攻撃するかのような論調になっていないだろうか。「冤罪」とい
う、本来司法権力と戦うべき問題を、決して女性が痴漢犯罪に対して声をあげはじめたこ
とと対立させてはならない。「痴漢という犯罪が悪であるのに、その怒りの矛先が被害女性
へ向けられていることが心配」と言う「性暴力を許さない女の会」メンバーの声は当然で
あり、「痴漢犯罪 NO!鉄道利用者の会」の石橋英子の言うように痴漢冤罪を「不毛な男女
の対立構図で見ることをやめて」社会システムの問題として捉えていくことが急務である。
そして、もうひとつ考えなければならないのは、異常ともいえる満員状態の通勤・通学
電車の問題である。痴漢犯罪が必ずしも満員電車の中でおこるとは言えないが、交通局へ
のインタヴュー85でも、痴漢届出件数が一番多いのは、混雑度の高い御堂筋線の梅田―難波
―天王寺であるという回答をいただいている。見ず知らずの人間どうしが体を密着しなけ
ればならないという異常な空間が、犯人の匿名性を増し、痴漢犯罪、痴漢冤罪が起こる温
床になっているのは間違いがないだろう。
しかし、朝夕の列車の満員状態の緩和については、各鉄道会社ともぎりぎりの過密ダイヤ

82
小田中、上掲書、226 頁。
83
「痴漢えん罪被害者救済ネットワーク」は、その結成総会の声明文の中で次のように訴えている。 「私た
ちは、無実の者を犯罪者として作り出す、警察、検察、裁判所を、絶対に許すことができません。無実の
者が日々犯罪者とされていっているこの日本の国の司法を、どうしても変えなければならなりません。私
たちは、自分たち自身の無実証明し、この日本の司法のあり方を変えていくために、小さな力ですが全力
を尽くしていきます。無実の者がこれ以上犯罪者とされないために、私たちのこのとりくみへ力を貸して
いただけるよう心からお願いをいたします。」
<http://www.rikkyo.ne.jp/univ/araki/chikanenzai/appeal2.htm>(08.02.22 アクセス)
84
平成 11 年 12 月に、JR 宇都宮線で発生した痴漢冤罪事件(H10.12.2 東京高裁逆転無罪判決)が、ジャー
ナリスト・池上正樹氏により「週刊ポスト」で報道されてから、痴漢冤罪事件が社会的に注目されるよう
になり、さらに JR 総武線で発生した事件の無罪判決が出てからは、テレビでも頻繁に広く報道されるよう
になった。(池上正樹 2000『痴漢「冤罪裁判」男にバンザイ通勤させるのか!』佐藤善博解説より)
85
本報告書<資料 3>

34
で対応していることは、利用者の実感である。安全面との兼ね合いを考えると、鉄道会
社にのみ、満員状態の解決策を期待するのは限界がある。各鉄道会社がアンケートに回
答していただいているように86、女性専用車両の設置とその充実、「痴漢追放キャンペ
ーン」、車両・駅構内の巡視等の実施によって、痴漢行為を犯罪として可視化し、痴漢
発生件数そのものを減らす取り組みを今後とも重視していくことが必要だと考える。そ
して、再度強調したいのは、冤罪を生み出す捜査機関、司法のシステムの変革である。

(第二章第二節 川端多津子)

86
本報告書<資料 2>鉄道各社アンケートのまとめ

35
【引用・参考文献】

秋山賢三(2003)「痴漢事件(迷惑防止条例ほか)」『刑事弁護』No.36: 110-118
荒木伸怡(2003)「痴漢冤罪防止と捜査上の諸問題『捜査研究』619 号: 54-59
<http://www.rikkyo.ne.jp/univ/araki/chikanenzai/shiryou/chikansousa.htm>(08.02.22 アクセス)
池上正樹(2000)『痴漢「冤罪裁判」男にバンザイ通勤させるのか!』
石橋英子監修(2003)『なぜ女は男をみると痴漢だと思うのか なぜ男は女の不快感がわか
らないのか』 ビーケーシー
小田中聡樹(1993)『冤罪はこうして作られる』講談社現代新書
高見秀一(2003)「痴漢冤罪逆転無罪事件」『刑事弁護』No.35: 62-66
段林和江(2003)「性被害と被害者側代理人からみる問題点―痴漢被害を中心に―」『刑事弁護』
No.35:103-108
鈴木亜英(2003)「痴漢事件―沖田事件」『刑事弁』No.35: 67-71
庭山英雄(2003)「93 日の未決拘禁を不当とした痴漢事件最高裁決定」『刑事弁護』No.34:
98-105
安田隆彦(2004)「誰もが痴漢冤罪被害者になる恐怖」『刑事弁護』No.40: 112-117
痴漢えん罪被害者救済ネットワーク HP
<http://www.rikkyo.ne.jp/univ/araki/chikanenzai/appeal2.htm>(08.02.22 アクセス)

36
第三章 女性専用車両の導入および普及の経緯

第一節 女性に対する性暴力防止策としての女性専用車両

日本の交通機関に女性専用車両の類が設置された最初は、1912(明治 45)年の東京・中
央線の「婦人専用車」であるとされているが、それは車両内の男女同席は好ましくないと
いう理由から導入されたもので短期間で廃止された。また同じく中央線では、1947(昭和
22)年に朝の通勤・通学ラッシュ対策として「婦人子供専用車」が設置され、1973(昭和
48)年のシルバーシート設置まで運行されていた1。
これらに比べ、現在の女性専用車両は「痴漢・盗撮・酔客による嫌がらせ等の迷惑行為」
2
、すなわち女性への性暴力防止策として導入されたものであり、それまでの設置理由とし
てあった男女同席忌避や通勤・通学ラッシュ対策とは概念上異なるものである。またその
導入は、女性の人権をめぐる国際的な動向や政府の「男女共同参画社会」政策推進、そし
て女性への性暴力事件およびそのような事件に関連したフェミニズム運動等、複数条件の
連鎖の結果であったと推測できる。
そこで、女性専用車両の導入に関係すると思われる社会的・政治的動きを調査・統合し、
1975(昭和 50)年の第1回世界女性会議の開催を起点とした、
「事件・事故」、
「国政」、
「国
際的動向」、「政党・民間などの運動」、「事業者」の 5 項目でなる年表を作成した3。

第二節 女性の人権に関する国際的動向と国政

その年表に基づき、まず女性の人権に関する国際的動向、次に日本政府による「男女共
同参画社会」政策推進の経緯を辿ることにする。
1975(昭和 50)年、メキシコシティで第1回世界女性会議が開催され、平等、発展、平
和への女性の寄与に関する宣言が行われ(メキシコ宣言)
、この宣言を具体化するための指
針である「世界行動計画」が採択される4。その年の第 30 回国連総会において、1976 年か
ら 1985 年を「国連女性の十年―平等・発展・平和」とすることが宣言される。1979 年の第
34 回国連総会では「女性に対するあらゆる形態の差別の撤廃に関する条約」(略称、「女性
差別撤廃条約」)が決議され、翌年 1980 年にコペンハーゲンでの第 2 回世界女性会議にお
いて女性差別撤廃条約の署名式が行われる。1981 年のジュネーブ ILO(国際労働機関)総
会では、「家族的責任を有する男女労働者の機会及び待遇の均等に関する条約」が採択され
1
兒山真也 2005「女性専用車両が抱える課題」『都市と公共交通』No.30、13 頁。
2
神戸市交通局「女性専用車両のお知らせ」
〈http://www.city.kobe.jp/cityoffice/54/030/josei/josei.htm〉(07.10.18 アクセス)
3
本報告書〈資料7〉
4
内閣府男女共同参画局 HP 「平成 15 年度 男女共同参画社会の形成の状況に関する年次報告」
<http://www.gender.go.jp/whitepaper/h16/danjyo_gaiyou/danjyo/html/honpen/chap01_00_01.html>(08.05.27 アク
セス)。以下、本節の記述は、この年次報告を参照している。

37
る5。1985(昭和 60)年のナイロビ第 3 回世界女性会議で、
「西暦 2000 年に向けての女性の
地位向上のための将来戦略」(略称「ナイロビ将来戦略」)が採択される。コペンハーゲン
第 2 回世界女性会議で署名式が行われた女性差別撤廃条約には暴力に関する項目がないこ
とが指摘されるようになり、1993(平成 5)年に、ウィーン世界人権会議で公的および私的
な生活における女性に対する暴力の撤廃を確認した「ウィーン宣言及び行動計画」が採択
され、同年、第 48 回国連総会で「女性に対する暴力の撤廃に関する宣言」が行われる。1995
(平成 7)年 9 月には北京第 4 回世界女性会議が開催され、1996(平成 8)年末までに自国
の行動計画を開発し終えるとした「北京宣言」「北京行動綱領」が採択される。
国内においては、1975(昭和 50)年の「国際女性年世界会議」の宣言を受けて、政府は
同年に「婦人問題企画推進本部」を設置し、事務局として「婦人問題担当室」を設ける。
1985(昭和 60)年には(西暦 2000 年に向けての)
「女性の地位向上のためのナイロビ将来
戦略」採択を受けて、翌年 1986(昭和 61)年に「婦人問題企画推進本部」が拡充される。
さらに翌年の 1987(昭和 62)年には「西暦 2000 年に向けての新国内行動計画」が策定さ
れる。1992(平成 4)年の宮澤内閣では、官房長官の兼任とはいえ婦人問題担当大臣という
新しいポストが置かれ、その後 1993(平成 5)年の細川内閣では女性問題担当大臣(官房
長官)、1996(平成 8)年の第 2 次橋本内閣では女性問題担当大臣(総務長官)、2001(平成
13)年の第 2 次森改造内閣では男女共同参画担当大臣(内閣官房長官)と、担当大臣の名
称が変遷した。2007(平成 19)年の福田内閣では内閣府特命担当大臣が少子化対策および
男女共同参画の大臣を兼任している6。
またこの間の 1994(平成 6)年 6 月に、総理府に男女共同参画室および男女共同参画審
議会が設置され、上述したように、翌年 1995(平成 7)年に北京世界女性会議開催を迎え
る。同会議で採択された北京行動綱領は、「女性のエンパワーメント(力をつけること)に
関するアジェンダ(予定表)である。」7という一文に始まる。行動綱領の目標が第 2 章 9 に
記載されているので以下に引用する8。

「国際連合憲章」の目的と原則及び国際法に全面的に合致する行動綱領の目標は、すべて
の女性のエンパワーメントである。女性のエンパワーメントのためには、すべての女性のあ
らゆる人権及び基本的自由の完全な実現が不可欠である。国、地域の特殊性及び種々の歴史
的、文化的及び宗教的背景の重要性は考慮されなければならないが、すべての人権及び基本
的自由の促進及び保護は、その政治的、経済的及び文化的制度の如何を問わず、国家の義務
である(注 9)。あらゆる人権及び基本的自由に従って、国内法ならびに戦略、政策、プロ

5
日本政府は 1995(平成 7)年 6 月に批准。
6
首相官邸 HP「内閣制度と歴代内閣」
〈http://www.kantei.go.jp/jp/rekidai/index.html〉(07.12.01 アクセス)
7
内閣府男女共同参画局 HP 「第 4 回世界女性会議 行動綱領(総理府仮訳)」
<http://www.gender.go.jp/kodo/chapter3.html>(08.05.28 アクセス)
8
同。 原注 9 は以下の通り。「『ウィーン宣言及び行動計画』、『世界人権会議報告』、第 3 章パラグラフ5」

38
グラム及び優先開発事項の策定を通じるなどを含む、この行動綱領の実施は、各々の国家の
至上責任であり、個人及びその属する地域社会の様々な宗教的・倫理的価値観、文化的背景
及び哲学的信念の重要性並びにそれらの全面的な尊重は、平等、開発及び平和を達成するた
めの、女性の人権の完全な享受に資するものでなければならない。

上に示したように、同行動綱領の目標はすべての女性のエンパワーメントであると明記
されている。そしてその目標を達成するために優先的に取り組むべきものとして 12 の重大
問題領域が同綱領第 4 章に記されている。その重大問題領域とは、
「A. 女性と貧困」
「B. 女
性の教育と訓練」「C. 女性と健康」「D. 女性に対する暴力」「E. 女性と武力闘争」「F. 女性
「G. 権力及び意思決定における女性」
と経済」 「H. 女性の地位向上のための制度的な仕組み」
「I. 女性の人権」「J. 女性とメディア」「K. 女性と環境」及び「L. 女児」である9。
同行動綱領と、1996(平成 8)年 7 月に男女共同参画審議会から答申された「男女共同参
画ビジョン―21 世紀の新たな価値の創造―」を踏まえて、同年 12 月に男女共同参画推進本
部は「男女共同参画 2000 年プラン―男女共同参画社会の形成の促進に関する平成 12 年(西
暦 2000 年度)までの国内行動計画」を決定した10。1997(平成 9)年には、3 月に男女共同
参画審議会設置法(平成 9 年法律第 7 号)が公布され、6 月に男女共同参画審議会(会長・
岩男壽美子)が開催された。そして同年 7 月に、「男女共同参画の現状と施策−男女共同参
画 2000 年プランに関する報告書(第 1 回)−」11が提出され、その第 1 部に「第 3 章 女
性の人権 1 、第 2 部に「第 3 章
女性に対する暴力」 女性の人権が推進・擁護される
社会の形成 1 女性に対するあらゆる暴力の根絶 」が盛り込まれ、以下毎年同様の報
告書が提出されるようになった。このような議論を経て、1999(平成 11)年 6 月に男女共
同参画社会基本法が公布(平成 11 年法律第 78 号)されて、それを受けて翌 2000(平成 12)
年 12 月に「男女共同参画基本計画(2000)」が策定された12。以上から、日本の国政におい
ては 20 世紀から 21 世紀に移行する 10 年の間にとりわけ女性の人権問題や社会的地位につ
いての議論が展開されたと推察できる13。

9
同。
10
内閣府男女共同参画局 HP「男女共同参画の現状と施策」
<http://www8.cao.go.jp/whitepaper/danjyo/sankaku/index.html>(08.05.28 アクセス)
11
内閣府男女共同参画局「男女共同参画白書」
〈http://www8.cao.go.jp/whitepaper/danjyo/sankaku/index.html〉(07.11.08 アクセス)
12
内閣府男女共同参画局 HP
〈http://www.gender.go.jp/〉(07.11.08 アクセス)
13
このような動きは、上述したように性差別撤廃への国際的動向を受けたことによるものが大きいだろう。だが、それ
ばかりでなく国内の事情、すなわち、少子化対策の一環としての女性労働力の動員という政府の思惑があったとい
う見方も可能である。例えば、厚生労働省 HP「少子化に関する基本的考え方について」には、「人口問題審議会」
の報告書(平成 9 年 10 月)が掲載されている。そこには、少子化の影響への対応として「年齢や性別による垣根を
取り払うあらたな雇用環境の創出等が必要」で、「労働力供給の減少は、女性や高齢者などの労働力に対する需要
を喚起する。」と明記されている。<http://www1.mhlw.go.jp/shingi/s1027-1.html>(08.05.28 アクセス)

39
第三節 車両内における痴漢事件および痴漢冤罪事件

しかし、国際的にも国政においても女性の人権問題に関する議論が展開されていたにも
拘らず、また、半世紀以上にわたり(少なくとも理論上は)両性平等の公教育が実施され
ていたにも拘らず、現実には女性の人権を侵害する事件が起きていた。
その一つとして、1988(昭和 63)11 月に大阪市営地下鉄御堂筋線で発生した、いわゆる
「御堂筋線事件」を挙げることができる。それは、御堂筋線で別の女性に痴漢行為をして
いた2人組の男性に注意したある女性が、男たちに連れまわされ強かんされるという陰惨
な事件であり、都市交通車両内での女性への性暴力のシンボル的事件でもあった。この事
件によって、被害女性たちの間に育ってきていた痴漢を告発する風潮は一時下火となった。
しかし、これを機に結成された「性暴力を許さない女の会」による事業者に対する要望書
の提出14や「痴漢のいない電車に乗りたい!ストップ痴漢アンケート」調査(1993.11 調査、
1995.03 報告書)15などの活動を経て、大阪市営地下鉄では「痴漢アカン」のポスターが貼
られ「痴漢行為は犯罪です」という車内放送が流れるようになった。このようなフェミニ
ズム運動の進展と、前節で概観した国際的動向を受けた政府の「男女共同参画社会」政策
等を背景に、90 年代後半になって女性自身の人権意識の高まりが見られるようになり、被
害者の告発による痴漢の現行犯逮捕が散発するようになった。
しかし、痴漢事件の現行犯逮捕に伴い、痴漢えん罪を訴える事件も発生するようになっ
「痴漢えん罪被害者救済ネットワーク」16によると、1990(平成 2)年からの 10 年間に、
た。
全国の簡易裁判所において「私は痴漢をしていない」と否認して裁判を闘った人が 200 名
以上あり、結果として全員が有罪となった。2000(平成 12)年には、マスコミで痴漢えん
罪報道が盛んになり、えん罪を主張した 8 件が無罪判決となった(うち、高裁での無罪判
決が 4 件)17。また、弁護士などの司法の専門家による痴漢えん罪議論も展開されており、
例えば「長崎事件」18の弁護団による『なぜ痴漢えん罪は起こるのか―検証・長崎事件』
(現
代人文社、2001)が出版されている。
このような痴漢事件および痴漢えん罪事件への社会的注目からか、警視庁は、2004(平
成 16)年度に首都圏の鉄道事業者に対して、女性専用車両の導入率が低いため積極的に導

14
性暴力を許さない女の会 1990『女が視た「地下鉄御堂筋線事件」』
15
性暴力を許さない女の会、セクシャル・ハラスメントと斗う労働組合ぱあぷる 1995『痴漢のいない電車
に乗りたい!STOP 痴漢アンケート調査報告集』
16
痴漢えん罪被害者救済ネットワークとは、「電車の中などで痴漢に間違われ、「何もしていない」とい
うことを言いつづけたために、長期の勾留をされた上で裁判にかけられ、十分な証拠のないまま有罪にさ
れるなど、警察、検察、裁判所によって人権を踏みにじられた者」が 2002 年に結成したネットワークであ
る。その結成報告集会のアピールには、結成目的として「(1)痴漢冤罪被害者とその家族を激励し支援する。
(2)警察・検察の人権を無視した不当な捜査を告発し、証拠に基づいた公正な捜査を求める。(3)裁判所の不
正な裁判の実態を告発し、証拠に基づいた公正な裁判を求める。」の文言が示されている。
〈http://www.rikkyo.ne.jp/univ/araki/chikanenzai/appeal1.htm〉(07.12.30 アクセス)
17
えん罪については本報告書第二章第二節を参照。
18
1997.10 発生、西武池袋線で女性に腕を摑まれ、迷惑防止条例違反で起訴され、東京簡易裁判所と東京高等
裁判所で有罪判決を受けるが、最高裁に上告、2002 年に上告棄却。

40
入・拡大を図るよう要望書を提出した19。このような経過もあったのだが、21 世紀にはいる
と、70 年代から国際的に高揚してきたフェミニズム運動や、90 年代の政府の「男女共同参
画社会」政策に対して、バックラッシュも起きてきた。また女性専用車両導入の普及に伴
い、反対意見が雑誌やブログに掲載されるようになった20。

第四節 調査と検討の過程で生まれた女性専用車両

ここまでにみてきたような流れから、女性専用車両は痴漢など女性に対する性暴力防止
のため、「男女共同参画基本計画(2000)」の一環として導入されたと考えられよう。とこ
ろが、2000 年 12 月に策定されたこの「男女共同参画基本計画(2000)」に挙げられた 11 の
重点目標のうち、7 番目に挙げられた目標である「7 女性に対するあらゆる暴力の根絶」
を実現するための施策において、「女性専用車両」はおろか、女性と交通の問題すら取り上
げておらず、施策を担当する府省のなかに国土交通省の名前は挙げられていない21。また、
この「男女共同参画基本計画(2000)」の前段に策定された 1996 年の「男女共同参画 2000
年プラン―男女共同参画社会の形成の促進に関する平成 12 年(西暦 2000 年)度までの国
「男女共同参画 2000 年プラン」)においても、「女性専用車両」およ
内行動計画―」(以下、
び女性と交通の問題は一切登場していない22。つまり、北京行動綱領(1995 年)を踏まえて
策定された「男女共同参画 2000 年プラン」
(1996 年)および「男女共同参画基本計画(2000)」
(2000 年)において政府は、痴漢などの女性に対する性暴力防止策としての女性専用車両
の導入を公的に推進していないのである。
ところが、国土交通省の「女性専用車両路線拡大モデル調査(2002)
」においては、女性
専用車両は調査名に掲げられるほど公にされている。同調査は、2002 年 10 月に国土交通省
によって「女性専用車両、路線拡大モデル実験」が実施されたあとで行われたものである23。
言い換えると、2002 年 10 月に国土交通省主導の下で公的に女性専用車両が試験導入された
結果、同調査が実施されたのである。女性専用車両の試験導入の前段階で、国土交通省は
「女性の視点から見た交通サービスに関するアンケート調査」を 2002 年 2 月に実施してい

19
朝日新聞 2005.2.8 付朝刊 1 社会面
20
反対意見として、例えば以下の文献がある。
千葉展正 2006「女性専用車両のまやかし(特集 こんなものはいらない)」『正論』通号 410 号、250∼
257 頁。
21
内閣府男女共同参画局 HP 「男女共同参画基本計画」
<http://www.gender.go.jp/kihon-keikaku/2-7h.html>(08.05.28 アクセス) 7 番目の重点目標である「女性に対する
あらゆる暴力の根絶」を実現するための施策を担当する府省として、内閣府、警察庁、法務省、文部科学省、厚生
労働省、および外務省が挙げられているが国土交通省は含まれていない。ただ、担当府省欄の最後に、全府省と
記載されているから、そこに国土交通省が含まれているとも言えるが、実質的には含まれていないと考えられる。
22
内閣府男女共同参画局 HP 「男女共同参画 2000 年プラン―男女共同参画社会の形成の促進に関する平成
12 年(西暦 2000 年)度までの国内行動計画―」
<http://www.gender.go.jp/2000statistics/5-3.html>
23
本報告書第二章第一節、注 57 参照。

41
る24。その調査の結果、「痴漢や迷惑行為対策として女性専用車両の拡充や車内防犯システ
ムの設置について、利用者のニーズが高い」ということが報告されている25。文書よりも早
く、実物の女性専用車両が痴漢対策として初めて登場したのは、2000 年 12 月のことであり、
導入したのは京王電鉄である26。そして、その一年前の 1999 年 10 月から 11 月にかけて、
「痴
漢について」という調査項目が含まれた(総理府)内閣総理大臣官房男女共同参画室「男
女間における暴力に関する調査」が行われている27。
ここで明らかなのは、だれが、いつ、どのような経緯で、痴漢などの女性に対する性暴
力防止策として女性専用車両の導入を決めたのかということでなく、女性専用車両が国土
交通省の調査名として公的に表されるに至る過程に、複数のアンケート調査や鉄道事業者
による女性専用車両導入があったということである。そして、その端緒となったのが男女
共同参画室の「男女間における暴力に関する調査」らしいことが推測される。
さらに、国土交通省の「女性専用車両路線拡大モデル調査(2002)」概要に示された「男
女共同参画を目指す日本社会」28の文言にも明らかなように、政府が「痴漢等迷惑行為対策
として『女性専用車両』の導入」29を促進するために「女性専用車両路線拡大モデル調査」
を実施したことは事実である。数年に渡って複数の調査、検討が重ねられた結果、痴漢等
迷惑行為対策として女性専用車両の導入が公的に推進された。以下では公的推進へ道をつ
けた様々な調査をみていくことにする。
ここでは総理府(現内閣府)の世論調査報告書 2 点を簡単に辿り、続いて国土交通省の
アンケート調査報告書 2 点を検証して、女性専用車両の導入および普及の経緯を辿る。
まず、総理府「男女共同参画社会に関する世論調査(1997)」30の概要を示したい。これ
は、総理府広報室によって、1997 年 9 月に実施された世論調査(調査目的は「女性の社会
参画に関する国民の意識を調査し、今後の施策の参考とする」、調査対象の母集団は全国 20
歳以上の者〈標本数 5,000 人、有効回収数 3,574 人〉、調査方法は調査員による面接聴取)
の結果報告書である。調査項目は、①「男女の社会活動や家庭生活への参画に関する意識」、
②「結婚観・家庭観等に関する意識」
、③「女性に対する暴力などへの対応に関する意識」、
④「政策の企画や方針決定の家庭への女性の参画に関する意識」、⑤「男女共同参画の推進
で行政に対する要望」の 5 項目である。調査項目③の標題から、「男女共同参画」社会の構

24
同。
25
同。
26
同。
27
同。
28
国土交通省 2003「女性専用車両 路線拡大モデル調査 報告書」1 頁。
〈http://www.mlit.go.jp/kisha/kisha03/15/151209_.html〉(07.11.08 アクセス)
29
同。その文言を以下に引用する。「国土交通省では、男女共同参画社会へ向けて女性の社会進出を支え
る環境づくりが必要であること、[…]平成 14 年 1 月にアンケート調査を実施したところ、痴漢等迷惑行
為対策として『女性専用車両』の導入に対するニーズが高いことが判明しました。このため、女性専用車
両の導入を促進する観点から、女性専用車両の導入の効果や導入にあたっての課題及び解決方法等につい
て調査・検討するため、[…]『女性専用車両 路線拡大モデル調査』を実施しました。」
30
総理府 1997「男女共同参画社会に関する世論調査」
〈http://www8.cao.go.jp/survey/h09/danjyo.html〉(07.11.08 アクセス)

42
築に向けて、当時の総理府が女性への暴力問題に関する国民意識を把握しなければならな
いと考えていたことが読み取れる。
次に、総理府「男女間における暴力に関する調査(2000)」31の概要を示したい。これは、
内閣総理大臣官房男女共同参画室によって、1999 年 9 月から 10 月にかけて実施された世論
調査(調査対象の母集団は全国 20 歳以上の男女〈標本数 4,500 人、有効回収数 3,405 人〉、
調査方法は郵送留置訪問または郵送回収)の結果報告書である。調査項目は、①「夫婦間
での暴行等について」、②「つきまとい行為について」、③「痴漢について」、④「性的行為
の強要について」の 4 項目である。またこの報告書の概要には、調査目的として、次のよ
うな内容が記されている32。

1997 年 6 月に、内閣総理大臣が男女共同参画審議会に対して「女性に対する暴力に関し
的確に対応するための基本方策について」を諮問し、その答申書として、1999 年 5 月に、
男女共同参画審議会は「女性に対する暴力のない社会を目指して」を提出した。同答申は、
女性に対する暴力を重大な社会的・構造的問題であり、男女共同参画社会の実現を阻害する
ものと位置づけ、女性に対する暴力の実態や、それに対する人々の意識を把握するための調
査の実施を提言した。したがってこの調査は、女性に対する暴力に関する国民の意識、被害
の経験の態様、程度及び被害の潜在化の程度、理由についてを把握すること、および被害者
が必要としている援助の在り方を検討するための基礎資料を作成することを目的としたも
のである。

なお調査項目③の質問は、回答者を女性に限定した「問 22 あなたはこれまでに、交通機
関などの中や路上などで痴漢の被害に遭ったことはありますか。」であり、車両内に限定し
た質問ではないが、調査結果は痴漢被害経験あり(1回あるいは2回以上)と回答した者
を 48%強としている。
続いて、国土交通省「女性の視点から見た交通サービスに関するアンケート調査(2002)」
33
の概要を示したい。この報告書(2002.03 作成)には、調査目的として、「『女性』という
観点を取り入れた総合的な交通サービス」に対するニーズに対応し、
「交通に対する男女の
意識差について調査し、女性の視点から現在の交通サービスに求められるものを的確に把
握すること」の文言が示されている。この調査は、「鉄道利用者」と「女性団体」をアンケ
ート対象としており、2002 年1月 24 日に首都圏の 6 事業者(帝都高速度交通営団、小田急
電鉄(株)、京王電鉄(株)、東京急行電鉄(株)
、西武鉄道(株)、東武鉄道(株))の主要
駅改札口において、乗降客に計 20,000 枚を無作為配布、後日に郵送回収したものと、同年

31
総理府 2000「男女間における暴力に関する調査」
〈http://www.gender.go.jp/e-vaw/chousa/images/pdf/h11.pdf〉(07.11.08 アクセス)
32
要約筆者。
33
国土交通省 2002「女性の視点から見た交通サービスに関するアンケート調査」
〈http://www.mlit.go.jp/kisha/kisha02/15/150813_.html〉(07.11.08 アクセス)

43
1月 21 日の週に 2 団体(主婦連合会、東京都地域婦人団体連盟)に各 100 枚の配布依頼、
後日に郵送回収したもの、総計 20,200 枚の配布、総計 5,175 件の回収結果によるものであ
る。調査項目は、①「属性」、②「交通機関について、日頃不快や不便さを感じている点に
ついて」、③「「女性専用車両」について」、④「
「女性優先車両」について」、⑤「車内防犯
カメラの設置について」、⑥「痴漢や迷惑行為の防止に関する自由意見」、⑦「タクシーに
ついて」、⑧「宅配サービスについて」、⑨「引越サービスについて」、⑩「女性を意識した
サービスに関する自由意見」の 10 項目である。これらの項目標題から、女性への痴漢や迷
惑行為に関する対策のための交通サービスとして、女性専用車両の導入が調査以前から模
索されていたことが読み取れる。つまりこの調査は、前述した総理府による女性への暴力
対策調査から派生したものと位置づけられ、女性専用車両設置の必要という認識はこのよ
うな調査と議論の過程で発生したと推察される。なお、調査項目③の設問、女性専用車両
「賛成」が女性 50.3%/男性 39.6%、
導入の賛否に関して、 「どちらかといえば賛成」が女性
27.0%/男性 26.2%、
「どちらかといえば反対」が女性 7.1%/男性 14.2%、
「反対」が女性 2.2%
/男性 7.9%であった。概ね賛成が女性 77%/男性 66%、概ね反対が女性 9%/男性 22%で
あり、概ね賛成は多数となっている。
最後に、
「女性専用車両 路線拡大モデル調査 報告書(2003)」34の概要を示したい。こ
の報告書(2003.03 作成)には、調査目的として次のような内容が示されている35。

「女性の視点から見た交通サービスに関するアンケート調査」から、痴漢等迷惑行為対策
としての女性専用車両導入の社会的ニーズが高いことが判明した。鉄道会社も独自調査によ
り同様の結果を得ていたのだが、利用客からのクレームなどの懸念から導入が困難な状況に
あった。しかし「男女共同参画」を目指す日本社会には、日々の通勤通学等の面においても
女性が安全、快適に社会活動に参加するための環境づくりが必要であり、したがってこの調
査は、女性専用車両の導入の効果や導入にあたっての具体的課題及びその解決方法等につい
て調査検討を目的としたものである。

この調査のために女性専用車両を試験導入するモデルとなる鉄道会社が募集され、阪急電
鉄(株)と京阪電気鉄道(株)の 2 社が応募した。両社共に、試験導入前からアンケート
などにより設置ニーズを把握し、導入に向けた対策を講じており、導入の際の混乱を避け
るための案内体制や告知方法の検討段階に入っていたという理由によって、この 2 社がモ
デルとして採用された。試験導入期間は 2002 年 10 月1日からの 2 ヶ月であった。
阪急電鉄(株)は、調査対象者を阪急利用者、調査方法を駅員による手渡配布、回収箱
及び駅員による回収、郵送回収として、アンケート回答者の中から抽選で 10 名に「ラガー
ルカード」(Q15 でインタビューの依頼、Q15「はい」の回答者および希望者に対して、連

34
注 10 と同じ。
35
要約筆者。

44
絡先記入欄設置)の贈呈を提示した。配布年月日は 2002 年 10 月 24 日(木)の朝ラッシュ
時および 10 月 25 日(金)昼間時間帯(午前 10 時∼正午)、配布場所は女性専用車両の停
車駅(梅田、十三、高槻市)および車内、回収は 10 月 31 日(木)回収分までとして、有
効回答は計 627 件(配布総数 2,000 枚)であった。京阪電気鉄道(株)は、調査対象者を京
阪利用者として、調査方法を駅員による手渡配布、回収箱および駅員による回収として、
抽選で「おけいはんスルッと KANASAI K カード」
(Q10 でインタビュー依頼、Q10「はい」
の回答者および希望者に対して、連絡先記入欄設置)の贈呈を提示した。配布年月日は 2002
年 10 月 21 日(月)および 10 月 24 日(木)朝ラッシュ時、配布および回収場所は京阪各
駅、回収は 10 月 31 日(木)回収分までとして、有効回答は計 1,035 件(配布総数 10,000
枚)であった。
調査項目は多岐にわたっているが、導入の賛否に関してだけを示せば、阪急電鉄では、
「賛
成」は女性 87.1%/男性 54.3%、「反対」は女性 5.3%/男性 37.5%、京阪電鉄では、「賛成」
は女性 87.3%/男性 63.9%、「反対」は女性 4.1%/男性 22.4%を示している。いずれの結果
も男女差はあるものの、賛成は多数となっている。この結果を踏まえて、阪急電鉄(株)
と京阪電気鉄道(株)は、試験導入後、2002 年 12 月から本格実施に踏み切った。続くよう
に、神戸市交通局(2002.12∼2003.05 調査実施)と大阪市交通局(2003.05 調査実施)もア
ンケート調査を行い、導入に向かった。

第五節 事業者による女性専用車両導入および普及

ここでは、各事業者 HP36などの情報を基に、女性専用車両が導入された時期を時系列で
辿ってみたい。
まず 2000 年に、首都圏の事業者が導入を開始した。京王電鉄京王線が、12 月に平日夜間
の新宿駅発下り急行・通勤快速・快速に限り最後部車両を女性専用車両として試験導入し、
翌年 3 月から本格実施を開始した。JR 東日本埼京線が、2001 年 7 月に平日深夜に限り試験
導入し、その後本格実施を開始した。
次に 2002 年下半期になると、導入事業者は中部や関西に拡大していった。名古屋市営地
下鉄東山線が 9 月に平日始発から 9 時までの試行導入(2003 年本格実施)、阪急電鉄と京
阪電鉄が 10 月に大阪から京都間の試験導入(2 ヶ月間)、大阪地下鉄御堂筋線が 11 月に時
間限定導入(2004 年9月本格実施)
、12 月になり、阪急電鉄は京都本線の平日の終日で通
勤特急・特急で本格実施、京阪電鉄は朝ラッシュ時に京都から大阪方面行きの特急最後部
36
事業者によっては、HP に女性専用車両の専門サイトを設けている場合もあれば、質問形式で説明してい
る場合もある。JR 西日本は、HP「JR おでかけネット」内の「車両に関するご案内」の中で女性専用車両
を案内しており、設置目的を「車内における迷惑行為防止の観点から、安心してご利用いただける車内空
間を提供することを目的としています。」、設定日時を「平日(月∼金曜日) 始発∼9:00 17:00∼21:
00」、「御乗車いただける方」を「女性のお客様、小学 6 年生以下の男性のお子様、お身体の不自由なお
客様と介護者のどちらかが女性の場合に同伴される男性のお客様」としている。
〈http://www.jr-odekake.net/guide/woman/〉(07.10.18 アクセス)

45
車両で本格実施を開始した。
続いて 2003 年には、多くの事業者が導入を開始した。阪神電鉄が 2 月に試験導入と 8 月
から本格実施、横浜市営地下鉄が 3 月に試験導入とその後の本格実施、JR 西日本が 5 月に
試験導入と 7 月から平日始発から 9 時で本格実施さらに 11 月から夜間にも拡大、九州の西
日本鉄道が 5 月に試験導入と 11 月から本格実施、大阪市営地下鉄谷町線が 12 月に時間限
定導入を開始した。
女性専用車両の導入は、首都圏から開始され、関西に拡大していったのだが、その後関
東では複雑な相互乗り入れを理由として低迷していた。しかし、2004 年 12 月の警視庁によ
る首都圏鉄道事業者への要望書提出、翌年 2 月の公明党による首都圏での導入要請の署名
運動などを経て、2005(平成 17)年になると、関東の事業者の多くが導入を開始した。
最後に 2005 年の状況を示したい。4 月に、JR 埼京線は平日朝ラッシュ時に追加設定、東
京臨海高速鉄道りんかい線は JR 埼京線からの直通列車に導入した。5 月に、京王線、都営
新宿線、西武池袋線・新宿線、 東京メトロ半蔵門線、東急田園都市線、東武伊勢崎線・日
光線・東上線、小田急小田原線・江ノ島線、相鉄本線・いずみ野線が朝通勤時間帯に導入、
6 月に、東武野田線が導入した。7 月に、東急東横線(首都圏初、終日導入)、横浜高速鉄
道みなとみらい線が導入、9 月に、首都圏新都市鉄道つくばエクスプレス線、JR 中央快速
線が導入、10 月に、東京メトロ有楽町線並びに東武東上線と西武池袋線からの直通列車が
導入、12 月に、相鉄本線・いずみ野線が夜間時間帯 18 時からの導入も開始した。
2005 年末の時点で、「日々の通勤通学等の面においても女性が安全、快適に社会活動に
参加するための環境づくり」という意味では、主要都市における鉄道交通への女性専用車
両の導入は一応の終結をみた。しかし 2006(平成 18)年 8 月に JR 西日本北陸線特急サン
ダーバード内で、乗客女性への強かん・傷害事件、いわゆる「サンダーバード事件」が発
生し、翌 2007(平成 19)年 10 月に、JR 西日本の特急(サンダーバード、オーシャンアロ
ー、雷鳥、スーパーくろしお、くろしお)に女性専用席が導入されるに至った。以上、2008
(平成 20)年 1 月現在の女性専用車両の導入および普及の経緯である。

(第三章第一節∼第五節 共同執筆)

第六節 海外の女性専用車両37

インドのデリー、エジプトのカイロ、ブラジルのリオデジャネイロのように、日本以外
でも痴漢対策として女性専用車両を導入している都市がいくつかある。これらの都市でも
女性専用車両に対して日本と同様の賛否が見られるものの、同時に日本とは少し違った反

37
本節は英語を媒体とする海外の新聞や情報発信を行っている団体等のオンライン記事を参考に書いたも
のである。なお引用部の翻訳は筆者が行った。

46
応も見られる。
例えばリオデジャネイロでは、女性グループからの女性専用車両に対する批判が目立つ
ようだ。その内容は主に、ブラジル社会に未だ根強く残る性的不平等を何とかしない限り
女性専用車両は誤った安全意識を与えるだけだと危惧するものであり、これはもっともな
批判である。しかし、リオの議会代表 Jorge Picciani38が、「女性が敬意を持って接してもら
いたいと感じているということに男性の注意を促すことが[女性専用車両に関する]法律の
最大の功績である」39と明言していることから、男性への呼びかけが必要であるという認識
は、導入を決定した議会側にも少なからずあるようだ。ただし、Jessica Valenti が批判する
ように、ブラジルでは女性専用車両をピンクという色で印づけしており40、これが性的ステ
レオタイプに鈍感であるという印象を与え女性専用車両の導入意図までも疑わせてしまう
一因になっているのかも知れない。そして日本の女性専用車両を見たことがある人は、こ
れが日本に無関係の批判でないことが分かるだろう。
カイロでも同様に、性的平等を望む女性の側からの否定的な声が聞かれることがあり、
これは女性を「隔離」する行為が女性を従属的立場に押し戻す考えの復活を助長してしま
うのではないかという不安から来ているようだ41。また、一部の男性からの直接的バックラ
ッシュとも受け取れる行動が問題となったのはインドで、デリーの女性専用車両には嫌が
らせ目的で意図的に乗り込んでくる男性が相次ぎ、遂にこれらの男性を逮捕する事態に至
ったという42。
女性専用車両は存在しないが、地下鉄での痴漢行為が地下鉄文化の一部として受忍され
ている節があるというニューヨーク市に関する記事43で Anemona Hartocollis が報告するに
は、彼女が朝のラッシュ時に地下鉄で聞き取り調査を行った結果、同市でも多くの女性に
痴漢被害の経験があることが分かった。そしてその経験から、女性たちは大きなカバンや
できる限り険しい顔つきというような「鎧」を身につけ、
「偶然にしては意図的なようで長
引く接触」に対して常に備えることを日常化してしまっているという。

38
Suzy Khimm、Anna L. Sussman らによると、Piccianni は国際女性デー(International Women’s Day)に間
に合うよう、通常の手続きを飛ばし女性専用車両に関する法律の承認を進めた。その際に、現地の女性グ
ループに意見を求めるような機会を設けなかったことも、彼が批判される一因になっているようである。
Khimm, Suzy. “Warning: No-Groping Zone.” AlterNet October 23, 2007.
<http://www.alternet.org/story/35753>. (07.10.24 アクセス)
Sussman, Anna L. “In Rio Rush Hour, Women Relax in Single-Sex Trains.” Women’s eNews May 23, 2006.
<http://www.womensenews.org/article.cfm?aid=2750>. (07.10.24 アクセス)
39
Sussman, Anna L.、上掲記事。
40
Valenti, Jessica. “Is segregation the only answer to sexual harassment?.” The Guardian August 3, 2007.
<http://www.guardian.co.uk/women/story/0,,2140903,00.html>. (07.10.24 アクセス)
41
Cowell, Alan. “Cairo Journal; For Women Only: A Train Car Safe From Men.” The New York Times January 15,
1990. <http://query.nytimes.com/gst/fullpage.html?res=9C0CEED91031F936A25752C0A966958260>. (07.10.24
アクセス)
42
Pandey, Geeta. “Delhi police track male train intruders.” BBC NEWS April 16, 2004.
<http://news.bbc.co.uk/2/hi/south_asia/357906/.stm>. (07.10.24 アクセス)
43
Hartocollis, Anemona. “Women Have Seen It All on Subway, Unwillingly.” The New York Times June 24, 2006.
<http://www.nytimes.com/2006/06/24/nyregion/24harass.html>. (07.10.24 アクセス)

47
さらに、被害を受けた女性の多くは、痴漢行為が起こった時、心の中は怒りで埋め尽く
されていたにもかかわらず実際には何も言えなかったという。痴漢犯罪の一番困難な部分
は、手も足も出ないような無力さを感じることだと彼女たちは言う。つまり、屈辱的だが
命の危険にさらされているわけではない状況に対しての正しい反応はどのようなものかと
いうこと―それは車両の乗客全員に対して自分がたった今侵害されたと発表することな
のだろうか、という問題である。痴漢被害を受けた女性が「声を上げない」ことを責める
ような言説は日本にも存在するが、ニューヨーク市の女性たちの証言が示すように、全く
面識のない大勢の人たちの前で自分が性暴力を受けたと「声を上げる」ことはそんなに容
易ではない。それは、性暴力の被害者が非難・恥辱の対象となる社会ではなおさらである。
このように、海外の都市でみられる女性専用車両・痴漢犯罪をめぐる諸議論は、日本に
も十分に当てはまる問題を提起している。

(第三章第六節 寺野朱美)

48
【引用・参考文献】

性暴力を許さない女の会(1990)『女が視た「地下鉄御堂筋線事件」』
性暴力を許さない女の会、セクシャル・ハラスメントと斗う労働組合ぱあぷる(1995)『痴
漢のいない電車に乗りたい!STOP 痴漢アンケート調査報告集』
総理府(1997)「男女共同参画社会に関する世論調査」
〈http://www8.cao.go.jp/survey/h09/danjyo.html〉(07.11.08 アクセス)
総理府(2000)「男女間における暴力に関する調査」
〈http://www.gender.go.jp/e-vaw/chousa/images/pdf/h11.pdf〉(07.11.08 アクセス)
国土交通省(2002)「女性の視点から見た交通サービスに関するアンケート調査」
〈http://www.mlit.go.jp/kisha/kisha02/15/150813_.html〉(07.11.08 アクセス)
大沢真理(2002)『男女共同参画社会をつくる』日本放送出版協会
国土交通省(2003)「女性専用車両 路線拡大モデル調査 報告書」
〈http://www.mlit.go.jp/kisha/kisha03/15/151209_.html〉(07.11.08 アクセス)
坂東眞理子(2004)『男女共同参画社会へ』頸草書房
岡部千鶴(2004)「女性専用車両に関する一考察∼痴漢被害の実態とともに∼」『久留米信
愛女学院短期大学研究紀要』第 27 号 57∼66 頁
兒山真也(2005)「女性専用車両が抱える課題」『都市と公共交通』No.30 13∼32 頁
千葉展正(2006)「女性専用車両のまやかし(特集 こんなものはいらない)」『正論』通号
410 号 250∼257 頁
内閣府 HP 「平成 15 年度 男女共同参画社会の形成の状況に関する年次報告」
<http://www.gender.go.jp/whitepaper/h16/danjyo_gaiyou/danjyo/html/honpen/
chap01_00_01.html>(08.05.27 アクセス)
内閣府 HP「第 4 回世界女性会議 行動綱領(総理府仮訳)」
<http://www.gender.go.jp/kodo/chapter3.html>(08.05.28 アクセス)
内閣府 HP「男女共同参画の現状と施策」
<http://www8.cao.go.jp/whitepaper/danjyo/sankaku/index.html>(08.05.28 アクセ
ス)
内閣府 HP 「男女共同参画基本計画」
<http://www.gender.go.jp/kihon-keikaku/2-7h.html>(08.05.28 アクセス)
内閣府男女共同参画局 HP 「男女共同参画 2000 年プラン―男女共同参画社会の形成の促進に
関する平成 12 年(西暦 2000 年)度までの国内行動計画―」
<http://www.gender.go.jp/2000statistics/5-3.html>
厚生労働省 HP「少子化に関する基本的考え方について」
<http://www1.mhlw.go.jp/shingi/s1027-1.html>(08.05.28 アクセス)

49
第四章 女性専用車両に関するアンケート調査

第一節 調査目的

女性専用車両に関する大規模かつ信頼のおける調査は、現在、前章で紹介した国土交通
省が行った調査のみである。しかし、それは女性専用車両の導入前に、導入を目的として
行われたものであり、女性専用車両を実際に経験した人の声を反映したものではない。ま
た、女性専用車両の導入後に行われた調査もいくつか見られるが、それらは鉄道会社自身
が行ったものか、インターネット上で回答されたものであり、第三者が信頼のおける方法
で行ったものではない1。したがって、私たちは女性専用車両を実際に経験している人の行
動や意見を客観的に信頼のおける方法で調査する必要があると考え、質問紙による調査を
行った。具体的な調査の目的としては、電車を日常的に利用している学生が女性専用車両
をどのように利用し、どのような意見を抱いているのか、また、女性専用車両が設定され
る理由である痴漢犯罪について、彼ら彼女らがどのような経験を持ち、それをどのように
受け止めているのかを明らかにすることとし、それに沿う形で質問紙を作成して調査対象
を選定した。

第二節 調査対象・期間・方法・回答者数

調査対象は、大阪府立大学の学部教養科目に出席している学生で、調査は五科目で実施
した。実施期間は 2007 年 12 月中旬の各授業時間の最後である。実施形態は、質問紙を配
布し、その場で記入してもらい回収する形をとった。質問紙は、大きく女性専用車に関す
るパートと電車内の痴漢に関するパートの二つに分け、それぞれ性別の差異を加味して質
問項目を設定した(本報告書資料編〈資料 8〉「女性専用車両に関するアンケート」参照)。
回答者は全部で 395 名であったが、男女両方の回答欄に記入しているなど回答に矛盾があ
る場合は無効とした(7 名)ため、有効回答数は 388 名となった2。
以下の分析は基本的に質問紙の設問順であるが、記述の都合上、多少前後させた箇所が
ある。なお、回答者によっては未回答の部分もあるため、各項目の合計が総数と合わない
場合や、各選択肢の割合の総計が 100%になっていない箇所もある。

1
これらの先行調査については、本報告書〈資料 6〉参照
2
回答に矛盾はないが欠落等があった場合も集計から省くのが基本であるが,本アンケートでは回答者の意見を
可能な限り汲み取ることを念頭に,特別に以下のように処理した。性別未記入が 17 名あったが、これらは回答欄か
ら性別を判断して集計した。また、1 名だけ性別欄が「男性」で回答欄が「女性」のケースがあったが、集計上は回答
欄を優先させて女性とした。

50
第三節 回答者の内訳

ここではまず回
答者の基本的な属
性を確認する。回答
者は、男性が 222 人
で全体の 57%であり、
女性が 166 人で全体
の 43%である(図 1、
以下の円グラフで

は、基本的
に 円 内 に
「実数、割
合」を示す)。
回答者はす
べて学生で
あり、平均
年齢は 19.65

歳である。学年は、一回生が
279 人(72%)、二回生が 70
人(18%)、三回生が 24 人
(6%)、四回生が 8 人(2%)、
その他、科目等履修生と修士
課程二回生が 1 人ずつ、不明
が 5 人(1%)
であった(図 2)。
およそ 9 割が一、二回生であ
る。学部共通の教養科目で調査を実施したため、回答者の学部はすべての学部にバランス
よく配分された(図 3)。看護学部と総合リハビリテーション学部が少ないのはキャンパス
が違うためである。電車の利用頻度は、「ほぼ毎日」と「週に数回」で 8 割弱を占め、多く
の回答者は日常的に電車を利用している(図 4)。電車の利用時間帯(複数回答)は、いわ
ゆる通勤ラッシュ時がピークを示し、その他は 22 時台が多くなっている(図 5)。

51
第四節 結果

ここからは、各質問とそれに対する回答の集計を挙げていく。各質問に付いている番号
は質問紙に対応しており、質問文は読みやすさを考慮して意味を変じない範囲で質問紙か
............ .............
ら変更したものもある。また、複数回答の質問については、「その選択肢を選んだ数÷すべ
.............. .... ............... ....
ての選択肢の選ばれた数の合計」ではなく、「その選択肢を選んだ数÷回答者数」で割合を
.....
出している。

第一項 女性専用車両について

*男女両方への質問*

〈1.1.女性専用車両という電車の車両があるこ
とをご存じですか〉
「知っている」が 96%(374 人)、
「知らない」が
0%(0 人)未回答が 4%(14 人)であった。
未回答以外の全ての回答者が「知っている」を
選択していることから、女性専用車両の認知度は
極めて高いといえる。

〈3.1.よく利用する路線に女性専用車両はあり
ますか〉
「全路線にある」が 50%(合計
189 人、女性 76 人、男性 113 人)、
「一部の路線にある」が 39.4%(合
計 147 人、女性 69 人、男性 78 人)、
「ない」が 2.3%(合計 9 人、女性 4
人、男性 5 人)、
「知らない」が 5.9%
(合計 28 人、女性 9 人、男性 14 人)
であった。
ほとんどの回答者が女性専用車
両の設定されている路線をよく利
用している。

52
*男性への質問*

〈3.2.女性専用車のメリットは何だと思い
ますか(複数回答可)〉
「痴漢対策になる」が 64.4%(143 人)、
「女性が安心して利用できる」が 73.9%
(164 人)、
「痴漢に間違われる不安が減る」
が 37.8%(84 人)、「メリットはない」が
4.5%、
「その他」が 1.4%(3 人)であった。
多くの男性が女性専用車両のメリット
を認めている。

〈3.3.女性専用車のデメリ
ットは何だと思いますか
(複数回答可)〉
「痴漢対策にはならな
い」が 0.9%(2 人)、「他の
車両が混む」が 58.1%(129
人)、「男性に対する差別で
ある」が 24.3%(54 人)、
「デ
メリットはない」が 7.7%
(17 人)、
「間違って乗りか
ねない」が 57.7%(128 人)、
「女性専用車両内のマナーが悪くなる」が 8.6%(19 人)、
「その他」が 4.5%(10 人)であ
った。
多くの男性がデメリットを指摘しているが、混雑と間違い乗車のデメリットが一、二位
を占めており、また「その他」でも「通り抜けできない」といった利便性に対する意見が
多くみられた。また、おおよそ四分の一の
男性が「男性差別である」という意見を挙
げている。

〈3.3.女性専用車両は必要だと思いますか〉
「はい」が 75%(158 人)、「いいえ」が
25%(54 人)であった。

53
*女性への質問*

〈3.5.あなたにとって女性専用車両の
メリットは何ですか(複数回答可)〉
「痴漢の心配がない」が 59.8%(98
人)、「男性がいないほうがよい」が
31.9%(53 人)、「席が空いている」が
30.7%(51 人)、「メリットはない」が
14.5%(24 人)、「その他」が 4.2%(7
人)であった。
痴漢に対する心配が大きいことが窺
われるが、
「席が空いている」といった
利便性に関する意見も多い。

〈3.6.あなたにとって女性専用
車両のデメリットは何ですか
(複数回答可)〉
「乗り換えの都合」が 16.9%
「混んでいる」が 25.9%
(28 人)、
(43 人)、「乗るのが恥ずかし
い」が 3.6%(6 人)、
「女性とし
て特別視されるのが嫌だ」が
6%(10 人)、
「時間帯が限定さ
れている」が 19.9%(33 人)、
「デ
メリットはない」が 33.1%(55
「その他」が 21.7%(36 人)
人)、
であった。
「その他」では、利便性、マナーに関
するものの他、特に「香水の匂いがきつ
い」という主旨の回答が多かった(13 人)。

〈3.7.女性専用車両の利用頻度はどのく
らいですか〉
「ほとんど毎回」が 25%(41 人)、
「と
きどき」が 28%(47 人)、
「ほとんど乗ら
ない」が 35%(58 人)、
「乗ったことがな

54
い」が 10%(16 人)、
「その他」が 2%(3 人)であった。おおざっぱにいって、利用する人
と利用しない人が半々である。

〈3.7.1.(上で「ほとんど毎回」、「ときど
き」と回答した人にお聞きします)女性専
用車両の乗客のマナーを他の一般車両と
比較してどのように感じますか〉
「よい」が 14%(12 人)、
「悪い」が 17%
(15 人)、「特に変わらない」が 68%(59
人)、「その他」が 1%(1 人)であった。
女性専用車内で特にマナーが悪いとは
いえない。

〈3.8.女性専用車両に対して要望する点
はありますか(複数回答可)〉
「特にない」が 57.8%(96 人)
「女性専用車両がないので設
定してほしい」が 7.2%
(12 人)、
「車両数を増やしてほしい」が
21.7%(36 人)、「車両位置を変
えてほしい」が 5.4%(9 人)、
「運
行時間帯を変えてほしい」が
10.2%(17 人)、「特にない」が
57.8%(96 人)、
「その他」が 6.6%
(11 人)であった。
運 行 時 間 帯 に 関 し て 、「 毎
日・終日」を希望するものが目
立った。

55
第二項 電車内における痴漢について

*男女両方への質問*

〈4.1.今までに電車内で痴漢を目撃したことがありますか〉
「1∼2 回」が 7%
(合計 27 人、女性
14 人、男性 13 人)、
「10 回未満」が 1.3%
(合計 5 人、女性 4
人、男性 1 人)、「10
回以上」が 0.3%(女
性 1 人)、「見たこと
がない」が 91.5%(合
計 355 人、女性 147 人、男性 208 人)で
あった。
ほとんどの人が実際に目撃したこと
がないが、目撃したことがある人の中で
は女性が若干多い。

〈4.1.1.そのなかで痴漢が捕まったケー
スは何回ありますか〉
「1∼2 回」が 38%(13 人)、「10 回未

満」が 2.6%(2 人)、


「ない」が 56%(19
人)であった。

〈4.2.
(目撃したことのある方にお聞き
します)そのときどう対応しましたか
(複数回答可)〉
「捕まえた」
、「注意した」、
「割り込む
などして防いだ」、
「駅員に知らせた」が
それぞれ女性 1 人、「対応する間がなか
った」が 13 人(女性 6 人、男性 7 人)、
「なにもしなかった」が 17 人(女性 11

56
人、男性 6 人)、「その他」が男性 3 人であった。「なにもしなかった」の他には、
「対応す
る間がなかった」が目立つ。

〈4.3.今までに電車内で痴漢の被害にあったことがありますか〉
「1∼2 回」が 8%(女性
16.3%、27 人、男性 8%、4
「10 回未満」が 2.8%(女
人)、
性 6.6%、11 人)、「10 回以
上」が 0.5%(女性 1.2%、2
人)、「ない」が 84.5%(女
性 75.3%、125 人、男性 91.4%、
203 人)であった。
痴漢被害にあったことの
ある人は比較的少ないが、
やはり女性が圧倒的に多い。
ただ、男性も僅かながら被
害にあっている。しかし、
大阪市交通局が、
「男性が電車内で痴漢被害に遭うケースも稀に発生しているが、それらは、
1.男性が女性と間違えて男性に痴漢を行う、2.男性が男性と知って男性に痴漢を行う、
というケースであり、「女性が男性に痴漢を行う」というケースは聞いたことがない」と述
べているところからして、少なくとも電車内においては、痴漢被害における男女の非対称
性はきわめて明瞭である3。

〈4.3.1.その中で痴漢が捕まったケースは何回ありますか〉
「1∼2 回」が女性 4 人、
「ない」が 38 人(女性
35 人、男性 3 人)であっ
た。4.3 の設問において、
一回以上痴漢に遭ったこ
とがある人数は男女合わ
せて 44 人であった(うち
2 名は 4.3.1 には無回答)

回答者によって複数回痴漢に遭っている場合もあるので正確な数字ではないが、44 人が痴
漢にあって、4 人しか犯人が捕まったケースがないということは、一番多く見積もっても痴

3
本報告書〈資料 3〉参照

57
漢犯罪のうち 10 分の 1 しか犯人が捕まっていないことになる。

〈4.4.
(痴漢被害にあった方にお尋ねします)そのときどう対応しましたか(複数回答可)〉
「 自
分 で 捕
まえた」
が女性 2
人(5%)、
「 カ バ
ン な ど
で 防 い
だ」が女
性 17 人
(42.5%
)、
「周り
の人に知らせた」が女性 4 人(10%)、「携帯で誰かに連絡した」が女性 1 人(2.5%)、「対
応する間がなかった」が女性 7 人(17.5%)、「場所を移動した」が女性 10 人(22.5%)と
男性 1 人(25%)、「肘で押したり、足で踏むなどして抵抗した」が女性 13 人(27.5%)と
男性 2 人(50%)、「我慢した」が女性 16 人(35%)と男性 2 人(50%)、
「その他」が女性
6 人(12.5%)と男性 1 人(25%)であった。

〈4.5.あなたの周りで痴漢の被害にあった人はいますか(複数回答可)〉
「家族・親戚」が 7%
(合計 27 人、女性 8.4%、
14 人、男性 5.9%、13
人)、「友人・知人」が
45.6%(合計 177 人、
女性 68.1%、113 人、
男性 28.8%、64 人)、
「恋
人」が 3.9%(合計 15
人、女性 0.6%、1 人、
男性 6.3%、14 人)、
「被
害にあったということ
を聞いたことがない」
が 45.4%
(合計 176 人、
女性 27.1%、45 人、男性 59.0%、131 人)、最後に「その他」が 0.5%(女性 1 人、男性 1 人)

58
であった。
何らかの被害を聞いたことがあるのは女性が多く、その中でも「友人・知人」が多くを
占めている。逆に、「家族・親戚」の場合は男女にあまり差がない。

〈4.6.女性専用車両以外の痴漢対策はどのようなものが必要だと思いますか(複数回答可)〉
「根本的
な混雑の解
消 」 が
43.6%(合計
169 人、女
性 40.4%、
67 人、男性
45.9% 、 67
人)、「車両
内監視カメ
ラの設置」
が 15.7%
(合計 61 人、女性 14.5%、24 人、男性 16.7%、37 人)、「痴漢犯罪の厳罰化」が 55.4%(合
計 215 人、女性 60.2%、100 人、男性 51.8%、115 人)、「駅ホームに駅員や警備員を常駐さ
せる」が 22.2%(合計 86 人、女性 27.7%、46 人、男性 18.0%、40 人)、「痴漢を捕まえた人
に対する報奨金の設定」が 18.8%(合計 73 人、女性 13.9%、23 人、男性 22.5%、50 人)、
「必
「その他」が 6.4%(合計 25 人、女性 4.8%、8 人、
要ない」が 0.8%(女性 1 人、男性 2 人)、
男性 7.7%、17 人)であった。
「その他」では、主に「モラルの向上」に類するものと、
「周囲の協力、見て見ぬふりを
しない」に類するものが挙げられていた。

〈4.7.痴漢行為に対する、あなたのイメージや感情はどのようなものですか(複数回答可)〉
「迷惑・嫌がらせ」が 47.9%(女性 55.4%、92 人、男性 42.3%、94 人)、「出来心・ささ
いなこと」が 15.5%(女性 11.4%、19 人、男性 18.5%、41 人)、
「恐怖・不安」が 30.2%(女
性 43.4%、72 人、20.3%、男性 45 人)、
「怒り・軽蔑」が 42.8%(女性 60.8%、101 人、男性
29.3%、65 人)、
「興味・関心」が 7.5%(女性 4.8%、8 人、男性 9.5%、21 人)、
「性暴力・性
犯罪」が 41.8%(女性 43.4%、72 人、男性 40.5%、90 人)「性倒錯・変態」が 29.1%(女性
30.7%、51 人、男性 27.9%、62 人)、
「不快・嫌悪」が 55.2%(女性 76.5%、127 人、男性 39.2%、
87 人)、「ポルノ」が 5.7%(女性 4.8%、8 人、男性 6.3%、14 人)、「卑劣・卑怯」が 30.9%
(女性 41.0%、68 人、男性 23.4%、52 人)、
「その他」が 2.3%(女性 1.8%、3 人、男性 2.7%、
6 人)であった。

59
目立って女性が多いのは「迷惑・嫌がらせ」、「恐怖・不安」、「怒り・軽蔑」、「不快・嫌
悪」である。逆に、男性が上回っているのは、
「出来心・ささいなこと」、「興味・関心」で
ある。

*女性への質問*

〈4.8.電車を利用するとき、痴漢に対する不安はどれくらいありますか(複数回答可)〉
「混んでいるときは不
安」が 36.7%(61 人)
、「周
りが男性ばかりだと不
安」が 24.7%(41 人)
、「夜
遅い時は不安」が 20.5%
(34 人)、「一人のときは
不安」が 13.3%(22 人)、
「女性専用車両ではない
車両に乗った時は不安」
が 8.4%(14 人)、
「空いて
いるときは不安」が 1.2%
(2 人)、
「いつも不安」が
0.6%(1 人)、「不安はな
い」が 38.6%(64 人)、「その他」が 1.2%(2 人)であった。
6 割強の女性が、何らかの状況の下で痴漢に対する不安を感じている。

〈4.9.その不安を解消するためにしていることは何ですか(複数回答可)〉
「不審な人がいないか目を配る」が 22.9%
「女性専用車両を利用する」が 25.3%(42 人)、

60
(38 人)、「カバンを胸の前で持ったり腕を組むなどして痴漢予防のための姿勢を整える」
が 15.7%(26 人)、「男性の近くに寄らない」が 14.5%(24 人)、「特にない」が 12.7%(21
「服装に気をつける」が 7.2%(12 人)、
人)、 「誰かと一緒に通学する」が 6.6%(11 人)、
「急
行から普通にするなど、電車の種類を変更する」が 4.8%(8 人)、「ドア付近には立たない
など危険な場所を避ける」が 4.8%(8 人)、「その他」が 1.2%(2 人)であった。
9 割近くの女性が、電車を利用するときに何らかの対策を取っていることになる。

61
第三項 クロス集計

ここでは、各質問項目のなかで相互に関連があると思われるものをクロス集計した結果
を示す。

1.男性において、「3.4 女性専
用車両は必要だと思います
か」と、「4.5 あなたの周りで
痴漢の被害にあった人はいま
すか」の二問についてクロス
集計を行った(クロス 1、グラ
フの「痴漢の身近さ」は、
「家
族・親戚」、
「友人・知人」、
「恋
人」、「その他」の四つの関係
性のうちのいくつから痴漢被
害を聞いたかを示している)。
身 近に 痴漢被 害を聞
いたことがある人の方
が、より「女性専用車両
が必要である」と回答し
ている割合が高くなっ
ている。

2.女性における痴漢の
身近さ(上と同様)と、
「3.5 あなたにとって女
性専用車両のメリット
は何ですか」で「痴漢の
心配がない」という選択肢を選んでいるかどうか(以下「対痴漢メリット」とする)につ
いてクロス集計した(クロス 2)。
痴漢の被害を聞いたことがある場合のほうが、対痴漢メリットを感じている割合が若干
高い。

3. 女性における痴漢被害の度合いと、対痴漢メリットについてクロス集計した(クロス 3、
グラフの「痴漢被害度」は、質問 4.3 で、
「痴漢にあったことはない」と答えた場合を 0、
「1

62
∼2 回」を 1、「10 回
未満」を 2、
「10 回以
上」を 3 としたもの
である)。
母数に差があるも
のの、おおよそ痴漢
被害の度合いに比例
して対痴漢メリット
感も増加している。
ただし、10 回以上痴
漢にあっている 2 人
の回答者は女性専用車両のメリットを感じていない。

4.女性専用車のメリッ
トを問う質問 3.5 で、対
痴漢メリットを感じて
いるかどうか、および
「男性がいない方がよ
い」という選択肢を女性
専用車両のメリットと
して挙げているかどう
かと、女性専用車両の利
用度についてそれぞれ
クロス集計を行った(ク
ロス 4、5)。
両者共にメリットを
感じている方が利用度
が高くなっているが、特
に「男性がいない方がよい」を女性専用車両のメリットに挙げている場合の方が、女性専
用車両の利用実態に与える影響が大きくなっている。痴漢という特定の対象だけではなく、
男性がいないということ一般に対するメリット感の方が女性専用車両を利用する動機とし
て強いといえる。

63
5. 「1.2 これまでに一年以上電車通学などをしたことがありますか」において、中学、高
校時代に一年間以上電車通学をしているかどうかと、対痴漢メリットをクロス集計した(ク
ロス 6、グラフの「中学・高校における電車通学」は一年以上の電車通学に限る)。
電車通学の経験
が長いほうが、痴
漢に対するメリッ
トを感じている度
合いが高くなって
いる。警視庁のデ
ータでは中高生が
もっとも痴漢被害
にあっている割合
が高くなっている
が4、それを反映し
ているとも考えら
れる。

4
本報告書第二章の脚注7の警視庁HP「痴漢相談所」を参照

64
第四項 自由記述から

ここでは、回答者が質問紙の自由記述欄に記入した内容について、その内容をカテゴリ
ー毎に分けてまとめた。恣意的な改変を避けるため、誤字や不適切と思われる表現もその
まま掲載している。複数のカテゴリーに亘る内容の場合は、それぞれのカテゴリーに重ね
て記載した。ただし、記述があったもの全てをここに掲載しているわけではない。

1. 男性差別、男性専用車両:「女性専用車は男性に対する差別である」という意見、お
よびそれに付随した「男性専用車両」の設置に関するもの
性別 自由記述の内容
男 男性専用車両はいりません
一回試しに男性専用車両というのもやってみたらどうでしょうかー。意外と新し

い発見があるかも∼。
男 どうせなら男性専用車両も作るべき。痴漢の冤罪が減ると思う。
男 男性差別であることはうたがいない。
女 男性専用車両も作ったらいいと思う。
男 男性専用車両もつくってほしい。
女性も電車で化粧をするなど、マナーの悪い人もいるので男性からすれば男性専

用車両も欲しいのでは?
女性を守るためなら男性がどんなことをされても良いだろうかと、非常に疑問を
男 感じる。女性のために、男性はみな性犯罪を起こす可能性があるという差別、偏
見が社会的に容認されているのではないだろうか。
そのような車両をつくる事に対しては、特にどうかとは思わないが、ある意味男

性に対しての差別というものになりかねないのではないか。

2. 利便性に関するもの:混雑度、不便、わかりにくいなど
他の車両にそのよせがくるのでなくしてほしい。また設置する車両の場所も考え

てほしい。階段を出てすぐとかは不公平である。
男 列車の中央付近に設置するのをやめてほしい。
近鉄線の女性専用車両は乗りたいのに一番うしろなのでいつもたどりつけずに乗

れない。
男 女性専用車両が分かりにくいことがある。
他の車両が込むだけでいらない存在。出口に一番近い車両なのでうっとおしいだ

け。ブサイクがのっていても腹が立つ。

65
男 女性専用である時間帯がわかりにくい。
女性専用車両は主に痴漢対策だと思うが、男としては仕方ないにしても、混雑し
男 たりと迷惑である。痴漢は悪だが、女性も自分で身を守る方法を考えるべきだと
思う。男性としては冤罪も恐いので、痴漢対策をもっと考えてほしい。
予備校に通っていた頃、御堂筋線を利用していて、遅刻しそうな時は駆け込み乗
車で一番後ろの車両に乗り、改札に近い一番前の車両まで電車に乗っている間に
男 歩いていたが、女性専用車両が真ん中にできた為通り抜けができなくなった。女
性専用車両は作ってもいいが、一番前や一番後ろ等に場所を変えて欲しいと思う
ことはある。
男 ない。つか朝混み過ぎ。本数増やしたら
女性専用車両だけ車両の色を変えたりすると、間違って乗ることも減ると思いま

す。
一両だけじゃ乗れる人が少ないし、真ん中にあるので不便という声もきく。これ

をかいぜんすべきではないだろうか。
男 女は混むから普通の車りょうにくるな!!
先頭車両、最後尾に位置してほしい。女性が積極的にのれるようにしてほしい。

年配女性の利用率が高い気がする。
御堂筋線は平日の終日女性専用車両があるので、ラッシュの時間帯以外はその車
女 両だけ空いている場合が多い。それでかわからないが、たまに男性が我が物顔で
乗りこんでくる時があるのですごく嫌だ。
男 設置するからには、普通の車両と同じくらいの乗車率にしてほしい。
女 土日も必要である。
女性専用車両が空いているのに女性専用車両以外の車両に女性がいるのをよく見

かける。女性の認識も少し甘いと思う。
女性専用車両を設けるのはたいへんいいと思うが、間違って乗ってしまうことが

あるので困る。できるなら乗降口を階段の近くなどにおかないでほしい。
利用している電車の女性専用車両によって不便な思いをしたことがないので、設

置し続けていいと思う
男 多くの人が利用しそうな階段の近くの車両を女性専用車両にされると困る
階段の付近だと間違えて乗ることがあるので、もし作るなら階段の付近はやめて

ほしい。
女性専用車両は急いで階段を下りて、電車にとびのろうとするとき、目の前にあ

ることがたまにありビックリしますね

3. マナー:専用車内における化粧、携帯電話など

66
女性のマナー低下の原因。ちかん云々より、ちかんが出てもしっかりと対応でき
女 るような環境を整える 女性ももっと発言できるような社会?べんきょう?必要
と思う。
女性専用車は快適です。化粧している人がたくさんいますが、他車両のおじさん
女 のくしゃみやせきや、1人で2人分座るような不快な行為に比べると全然苦にな
りませんし、比較的すいているのでよく利用します。
女性も電車で化粧をするなど、マナーの悪い人もいるので男性からすれば男性専

用車両も欲しいのでは?
女 女性ばかりだからといって、平気で化粧するのはよくないと思う。
女性専用車両ができてから、女性が座席でメイクを平気でしたり、女性の態度が
女 大きくなっている気がします。携帯電話や大音量で音楽を聴いているなど、そこ
が気になります。

4. 痴漢冤罪に関するもの
男 男性の意見として、痴漢に間違われるのが最も困る。
女性専用車両は主に痴漢対策だと思うが、男としては仕方ないにしても、混雑し
男 たりと迷惑である。痴漢は悪だが、女性も自分で身を守る方法を考えるべきだと
思う。男性としては冤罪も恐いので、痴漢対策をもっと考えてほしい。
痴漢のえん罪報道をなんだかテレビで見たことがあります。基本的に女性がよう
護されるのはとてもりかいできますが、もし間違いで駅員室や、警察に連れて行
男 かれた場合 99%、犯罪者として取調べされるそうです。ですから、男性が痴漢と
間違われないような工夫が欲しいです。むしろ、男・女専用で全車両分けてくれ
た方が安心です。
電車の床に座っている女を善良な市民が注意したら、痴漢扱いされたという話を
男 聞きました。自意識過剰の馬鹿な女による冤罪が減るのは良いことだと思いま
す。
男 どうせなら男性専用車両も作るべき。痴漢の冤罪が減ると思う。
女性を守るためなら男性がどんなことをされても良いだろうかと、非常に疑問を
男 感じる。女性のために、男性はみな性犯罪を起こす可能性があるという差別、偏
見が社会的に容認されているのではないだろうか。
男 かんちがいされると恐いですね

5. 痴漢犯罪、男性忌避:実際の痴漢被害経験、および男性に対する嫌悪感など
女性専用車両よりも痴かんをつかまえても時間かかるだけで何の解決にもなら

なかったのがくやしかった。3 時間くらいけいさつに行って、当人が会って謝罪

67
するかどうかのみ。会うのもいやだし、授業は欠席するはめにあうし、良いこと
なし。ちかんをつかまえるいみが見出せない。

女性専用車両はすばらしい。痴漢から逃れられるだけでなく、おじさんたちの悪

臭から逃れられる。あの悪臭は精神を病ませます。
女性専用車は快適です。化粧している人がたくさんいますが、他車両のおじさん
女 おくしゃみやせきや、1人で2人分座るような不快な行為に比べると全然区にな
りませんし、比較的すいているのでよく利用します。
男性に対して生理的な嫌悪感がある為、女性専用車両を利用している。もし無か

ったら大学に通学できなかったと思う
女 夏とかは変なにおいがしないのでいいと思う

男性の記述は利便性に関するものが多いが,その他に女性の容姿と女性専用車両をつな
げるものや,冤罪に対する恐れが目立つ。女性の記述にも利便性に関するものが多いが,
女性自身のマナーに関するもの,(年配)男性に対する忌避感もみられる。

第五節 考察

最後に、アンケート集計の結果から読み取れると思われる事実とそれについての考察を、
集計結果を改めて引きながら述べていきたい。
まず、本アンケートでは、女性専用車両の認知度は未回答者を除いて 100%であった(質
問番号 1.1、以下同様)ことから、女性専用車両の社会的認知は十分成し遂げられているとい
える。また、男女ともに痴漢対策としての女性専用車両のメリットを十分認めていること
(3.2, 3.5)、逆にデメリットはおもに混雑や乗り換えの都合などの利便性に関するものが中心
であること(3.3, 3.6)、さらに 75%の男性が「女性専用車が必要である」と回答していること
(3.4)などを考慮すると、利便性はともかくとして、女性専用車両の本来の目的である「女性
が安心して利用できる電車」という理念は利用者に受け入れられているといえる。さらに
実際、痴漢の不安を解消するためにしていることとして、25.3%の女性が「女性専用車両を
利用する」と回答しており、選択肢の中で最も高い割合を占めていた(4.9)ことから、利用実
態としても上の理念が想定しているかたちで使われているといえる。
利便性に関しては、まず、女性専用車両が混雑度に与える影響を単純に測ることは難し
いことを確認する必要がある。本アンケートでも、女性専用車両のメリットとして「席が
空いている」と 30.7%の女性が答えているが、同じく 25.9%がデメリットとして「混んでい
る」と答えている(3.5, 3.6)。このように、混雑度に関するメリット感・デメリット感には、
それぞれの利用者の時間帯や利用駅などの要因が大きく作用していると考えられるので、
あまりにも明白な差異が見られるということでなければ、
(主に男性側からの批判として、)

68
女性専用車両が混雑度に与える影響に基づいて女性専用車両の是非を論じるということは
当を得ていないということができるだろう5。反対に、女性からの女性専用車両に対する要
望として、「女性専用車の車両数を増やしてほしい」いうものが 21.7%あったが(3.8)、車両
数に関しては、他の車両に比べて明らかに混んでいるということでなければ実現は難しい
と思われる。また同じ質問に対して「車両位置を変えてほしい」というのが 5.4%あったが、
これも、各利用者のホームにおける乗車位置、乗り換えの通路の方向などに左右されるた
め、一般的に言えば各利用者がある程度妥協せざるを得ないと思われる。
「運行時間帯を変えてほしい」という回答が 10.2%あり、
ただし、また同じ質問に対して、
そのほとんどが「毎日・終日にしてほしい」という意見であった。各鉄道会社が女性専用
車両の運行を主に平日およびラッシュ時に限っているのは、
「混んでいる時間帯に痴漢の被
害に遭いやすい」という認識からだと思われるが、「女性が安心して電車を利用できる」と
いう観点からすれば、痴漢の被害に遭う可能性が客観的に低いとしても、女性に安心感を
持って利用してもらうためには、混んでいない時間帯においてもできるだけ女性専用車両
を運行すべきである。本章第四節第四項で行ったクロス集計においても、「痴漢の心配がな
い」よりも「男性がいない方がよい」というメリットの方が女性専用車両の利用度に対す
る影響が大きいことが読み取れたのであり(クロス 4.5)、その意味でも、実際の痴漢の発
生だけに焦点を絞った運用は望ましくない。さらに、女性専用車両に対するデメリットと
しての意見は混雑度に関するものが多いのであるから、そもそも混雑していない時間帯に
女性専用車両を設定するのは比較的容易だと考えられるので、なおさらである。
痴漢に関しては、目撃、被害共に比較的少数ではあった。例えば、「痴漢犯罪 NO! 鉄道
利用者の会」が東京都内の女子高生に行った調査では、「電車で痴漢に遭ったことがある」
という回答者は 71%、市民団体「痴漢被害実態調査会」がインターネットを利用して行っ
たアンケートでは「あなたは痴漢に遭ったことがありますか」という問いに対して「ある」
と回答したのが 72.5%6、総理府が 2000 年に行った「男女間における暴力に関する調査」で
は、「あなたはこれまでに、交通機関などの中や路上などで痴漢の被害に遭ったことはあり
ますか」という問いに対して一回以上あったと答えたのが 48.7%である。翻って、私たちの
アンケートでは、一回以上痴漢の被害に遭ったことがある女性の回答者はおよそ 25%であ
った。
この違いは、おそらく回答者の違いに起因していると思われる。混んだ電車を毎日利用
していると思われる東京都内の女子高生を回答者に選んだ初めの調査では、高い痴漢被害
度が示されるのは当然である。また、インターネット上での調査は、諸々の要因を考量す
5
しかし実際に、例えば神戸市営地下鉄の女性専用車両は毎日・終日であり、さらに西神・山手線が 6 両
編成、海岸線に至っては 4 両編成の内の一両を女性専用車両に充てている(2008 年 3 月現在)。加えて、
神戸市営地下鉄はこの二路線だけであり、大阪のように複雑に交差した鉄道網があるわけでもない。この
ような場合は各車両の混雑度を客観的に測るということが必要であろう。兒山(2005)「女性専用車両が
抱える問題」『都市と公共交通』No.30 参照
6
石橋英子(2003)『なぜ女は男をみると痴漢だと思うのかなぜ男は女の不快感がわからないのか : 痴漢大
論争!』の巻末資料参照

69
ると、一般的には精度が低いとみなさなければならない。総理府の調査は他に比べればあ
る程度信頼できるものだが、電車内だけではなく路上の被害も含んでいるため、そのまま
他の痴漢アンケートと比べることはできない。
しかし、詰まる所、痴漢の被害に遭ったことのある女性の割合が最も少ない私たちのア
ンケートにおいても、それがおよそ 4 人に1人に上るということ(4.3)、また、その中での犯
人が捕まったことのある回数の少なさ(4.3.1)が第二章第一節第一項で先行調査に見た傾向
と同じであったことを勘案すれば、女性にとって痴漢を未然に防ぐ暫定的な手段としての
女性専用車両が当分のあいだ必要とされることは間違いないであろう。

(第四章 居永正宏)

【引用・参考文献】

石橋英子(2003)『なぜ女は男をみると痴漢だと思うのかなぜ男は女の不快感がわからないの
か : 痴漢大論争!』
兒山真也(2005)「女性専用車両が抱える課題」『都市と公共交通』No.30:13-31

70
総括

本報告書は、全体として、性暴力としての痴漢と女性専用車両について、それらを取り
巻く諸問題を廻りながら、女性専用車両の存在意義を確認することを目指してきた。最後
に、ここまでの議論を改めて整理したい。
まず、そもそも女性専用車両が設けられた目的は痴漢対策であるから、その痴漢という
行為がどのように認識されるべきなのかという問いが問われなければならなかった。そし
て、痴漢は性暴力として認識されるべきだということと、その暴力はジェンダー的非対称
性を持つことを第一章で確認した。つまり、基本的に痴漢とは女性に対して男性が行うあ
る種の暴力なのである。では「ある種の暴力」、つまり性暴力とはどのような暴力なのか。
私たちは、フライの考察に基づき、それを「アクセス権」を侵害する暴力と捉えた。そう
すると、痴漢を「女性のアクセス権を男性が侵害すること」として捉えることができる。
そして、このような認識の下に立つことで、女性専用車両が性暴力としての痴漢行為に対
して持っている意義は「女性が自身の身体へのアクセスをコントロールできる手段を提供
すること」であると理解できる。
第二章では、その痴漢行為の実態を見た。特に、その暗数の多さと、強制わいせつや迷
惑防止条例などの法律の適用における諸問題、さらにそれに密接にかかわる冤罪発生の構
図を分析した。痴漢冤罪については、それが他の種類の冤罪の中の一つに過ぎないこと、
しかしそれは、日本の刑事司法における冤罪発生の図式を典型的に示しているものである
ということを確認した。痴漢冤罪は直接女性専用車両と関係するものではないし、ジェン
ダー間の対立を引き起こすべきものでもない。したがって、性暴力としての痴漢特有の問
題や、女性専用車両を取り巻く論争において、痴漢冤罪という事柄は本質的テーマではな
いということをはっきりと認識し、議論をいたずらに混乱させることは避けられなければ
ならない。それは、警察の捜査や司法の在り方といったまた別の重要な議論の中で取り上
げられるべき事柄である。
性暴力としての痴漢はもちろん犯罪であるから、それにきちんと対応するためには、現
在の迷惑防止条例を軸にした急場しのぎ的な状態から、改めて痴漢対策用の特別の法律が
制定されなければならないと思われる。しかし、第二章第一節第四項でみたように、スト
ーカーや DV に対して独自の法律が制定された一方で、痴漢にはそのような法律は制定さ
れなかった。理由はいくつ考えられるが、そのひとつとして痴漢とストーカーや DV の性
格の違いが考えられる。
ストーカーや DV は継続的な行為であり、被害者は時には生命の危険にさらされている。
そのとき、できる限り早くそのような状態から被害者を救出することが求められるのであ
り、特別の法律を根拠としてその任務を遂行することが望ましいと思われる。反対に、痴
漢は基本的に非継続的であって生命に危険が及ぶことはないのであり、特別のシェルター
や権限を設けて対応する緊急性に乏しいと思われる。また、ストーカーや DV は未然に防
ぐことは不可能であり、事が起こってからいかに対応するのかということが重要であるの

71
に対して、痴漢は基本的に偶発的で単発的なものであるから事後の対応の充実よりも未然
に防ぐことが重視されなければならない。加えて、電車内という特定の場所が多くの痴漢
犯罪の現場となっているのであるから、何らかの未然防止の対策を取ることは比較的容易
である。このような違いから、特別な法律が制定されたストーカーや DV に対して、痴漢
には特別な法律が制定されなかったと考えられる。そして、おそらくそれの代わりとなる
対応策として、第三章第三節でみたように、国土交通省によって女性専用車両の導入が積
極的に進められてきたと考えられるのである。
そして、それは痴漢被害者だけではなく、他の様々な性暴力に苦しめられていた女性た
ちにも肯定的に受け入れられるものとなった。そのことは、「性暴力を許さない女の会」へ
のインタヴューの中、そして第四章で見たように女性専用車両に関する私たちのアンケー
ト結果にも現われていた。その意味で、現在、女性のアクセス権を保障するものとしての
女性専用車両はその役割をかなりの程度果たしているといえる。
しかし、女性専用車両の今後の課題として、利便性との兼ね合いを考えていかなければ
ならない。これは、女性専用車両を利用する女性の利便性と、女性専用車両が設定されて
いることによって影響を受ける男性の利便性の双方を考慮する必要がある。車両位置、車
両数、運行時間帯、運行路線など、考慮すべきことは多いが、男女双方にとってできる限
りリーズナブルな形での運用がなされるべきである。その具体的な形は基本的に各鉄道会
社の現場の判断に委ねるしかなく、常に改善されていくことを望みたいが、関西鉄道各社
は基本的に「今後の改善点は特にない」と考えている(本報告書〈資料 2〉参照)。本報告
書としては、私たちのアンケートの結果に基づき、基本的に毎日・終日運行されるべきで
あるということを、ここで提言しておきたい。
最後になるが、女性専用車両について考えたときに、多くの人はなにか腑に落ちない感
覚を持つのではないだろうか。それは、それが結局痴漢行為を防ぐ手段でありながら,一
方で痴漢行為そのものを根本的になくすものではないということに直面せざるを得ないか
らである。女性専用車両は女性にアクセス権を保障する手段を提供するものに過ぎず、ア
クセス権への脅威そのものに直接効果があるわけではない。いわば、傘をさしても雨がや
むわけではない。そのように考えると、やはり、第二章第一節でもみたように、痴漢に対
する特別の法律がいまだに存在していないことが問題とならざるを得ない。女性専用車両
や痴漢撲滅キャンペーンなどを見ると、ストーカーや DV に比べて痴漢が軽視されている
ということはないと思われるが、迷惑防止条例違反と強制わいせつ罪の運用によって対応
している現在の状況のままでは、女性専用車両の次の段階としての痴漢そのものの根絶に
向かうことはできない。性暴力としての痴漢に対するものとして、さらにより広く性暴力
一般に対抗する存在としての女性専用車両という存在の価値は低くはない。しかし、それ
は私たちの安全を脅かす性暴力としての痴漢そのものに取り組むための過渡的な存在であ
るということを忘れてはならない。本報告書が、その一つの契機となることを私たちは願
っている。
(総括 居永正宏)

72
資料編

73
〈資料 1〉鉄道各社への女性専用車両に関する聴き取り調査(インタヴュー)とアンケート

本報告書を作成するにあたり、私たちは、各鉄道会社がどのような経緯で女性専用車両
を導入していったのか、また、どのような痴漢対策をしているのか等を知りたいと考え、
関西の鉄道会社への聴き取り調査とアンケートを実施することにした。以下はその依頼書
とアンケートの質問項目である。
依頼書を送付したのは、南 海 電 気 鉄 道 株 式 会 社 、 京阪電気鉄道株式会社、近畿日本鉄
道株式会社、阪急電鉄株式会社、阪神電気鉄道株式会社、大阪府都市開発株式会社(泉北
高速鉄道)、大阪市交通局、西日本旅客鉄道株式会社の 8 社である。アンケートに回答して
いただいた 5 社については、「鉄道各社アンケートのまとめ」として、掲載している。阪急
電鉄株式会社は、アンケートに回答していただいたが、公表はひかえてほしいということ
であり、阪神電気鉄道株式会社、京阪電気鉄道株式会社 2 社は、アンケートへの回答はで
きないので、会社のホームページを参照してほしいということであった。
〈資料 3〉
なお大阪市交通局はインタヴューにも応じてくださり、インタビューの内容は、
「大阪市交通局へのインタヴュー」として、掲載している。

74
女性専用車両に関する聴き取り調査もしくはアンケートのお願い
2007 年 12 月 17 日

○○○○様
大阪府立大学人間社会学研究科
学際現代人間社会論演習 I 院生:居永正宏
川端多津子
寺野朱美
橋爪由紀
担当教員:森岡正博
〒599-8531 堺市中区学園
町1番1号 TEL:072-25
突然のお便り、お許しください。
私たちは、大阪府立大学大学院人間社会学研究科の大学院生です。現在、女性専用車両
について様々な意見があります。このたび、私たちは、学術的な視点から女性専用車両に
ついてのデータをあつめ、調査報告書を作成することになりました。つきましては、公共
交通機関各社の取り組みを調査させていただくことを目的に、別紙のような質問項目を考
えました。お忙しいところ誠に恐れ入りますが、聴き取り調査へのご協力または、文書で
のご回答をお願いできないでしょうか。お答えいただいた回答は上記目的以外で使用いた
しません。また、調査報告書は完成後、ホームページで公開する予定です。
誠に勝手ながら、聴き取り調査の是非、または文書でのご回答を 2008 年 1 月中旬までに
いただけたら大変ありがたく存じます。
また、女性専用車両について問い合わせる部署が貴社にあるようでしたら、その連絡先
も合わせて教えていただけるとありがたいです。

以上、よろしくお願いいたします。

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(別紙)
女性専用車両について
1.女性専用車両は導入しておられますか
2.導入を計画し始めた時期、試験的に導入した時期、また正式に導入した時期はいつで
しょうか
3.導入の理由は何でしょうか
4.導入にかかったコストはどのくらいですか
5.路線、時間帯、車両位置、車両数はどのように決めておられますか
6.利用者からの反応はどのようなものですか(女性から、男性から)
7.今後運用を改善していくとすればどのような点が考えられるでしょうか
8.将来的に女性専用車両を廃止することは考えておられますか、またその基準はなんで
しょうか

痴漢対策について
1.貴社で把握されている、車内・駅構内の痴漢発生件数をお教えください
(過去のデータがあれば、可能なかぎり教えていただけるとありがたいです。)
2.痴漢に対してどのような対策をしておられますか
3.痴漢に対応するためのマニュアルはありますか
4.駅員の痴漢への対応はどのように教育しておられますか
5.痴漢を捕まえた人に対する謝礼はありますか
6.痴漢対策における女性専用車両の位置づけはどのようなものですか
7.女専専用車両以外に痴漢対策として行っていることはありますか(車内放送、ポスタ
ーなど)
8.女性専用車両以外の新たな痴漢対策の導入は考えておられますか

以上です。どうもありがとうございました。

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〈資料 2〉鉄道各社アンケートのまとめ
(回答いただいた原文のまま掲載しています)
女性専用車両について
1、女性専用車両は導入しておられますか
南海電気鉄道株式会社 導入しております。

泉北高速鉄道 いいえ

大阪市交通局 御堂筋線および谷町線に導入しております。

現在、奈良線(近鉄奈良→近鉄難波)の朝ラッシュ時間帯の上り快速急行
近畿日本鉄道株式会社
に導入している。

西日本旅客鉄道株式会社 導入しております。

2、導入を計画し始めた時期、試験的に導入した時期、また正式に導入した時期はいつで
しょうか
平成 14 年に検討を開始し、南海線においては平成 15 年 2 月 24 日、高野線
南海電気鉄道株式会社
においては同年 6 月 2 日のダイヤ変更を契機に導入いたしました。

泉北高速鉄道
御堂筋線…平成 14 年 11 月 11 日導入(平日の初発から午前 9 時まで)平成

大阪市交通局 16 年 9 月 6 日時間帯拡大(平日の終日)

谷町線…平成 15 年 12 月 15 日導入(平日の初発から午前 9 時まで)

平成 13 年ごろから計画、平成 15 年 3 月に試験導入、同年 10 月に正式に導


近畿日本鉄道株式会社
入した。

平成 14 年 7 月 1 日 学研都市線・大阪環状線に試行導入
平成 14 年 10 月 1 日 学研都市線・大阪環状線に本格導入

西日本旅客鉄道株式会社 平成 14 年 12 月 2 日 JR 京都線・神戸線・東西線・宝塚線に拡大導入、夕方
の時間にも設定

平成 16 年 10 月 16 日 阪和線・大和路線に拡大導入

3.導入の理由は何でしょうか
お客様より導入に対する要望を多く頂戴したことに加え、先行導入した在
南海電気鉄道株式会社
阪各社での評価も概ね好評であったことから導入を決定いたしました。

泉北高速鉄道
当局では「痴漢は犯罪である」という認識のもと、女性の自立や男女共

同参画社会を目指す社会情勢の中で、痴漢そのものをなくすことが本来と
大阪市交通局
考え、鉄道警察隊などと連携し、「痴漢追放週間」や「痴漢追放キャンペ

ーン」の実施、また、駅職員の巡視等による自主警備や車内及び駅構内で

77
の啓発放送、駅構内掲出の啓発ポスター掲出など様々な取り組みを行なっ

てきました。

しかし、現実に痴漢行為はなくならず、被害に遭われた女性の方に深く

精神的な苦痛を残す行為であることや、女性専用車両の導入を望まれる声

がよせられておりましたので、痴漢行為から女性を保護するという趣旨で

女性専用車両を導入しました。

近畿日本鉄道株式会社 お客様からの要望、在阪他社の導入、警察からの要望等

お客様が利用しやすい鉄道づくりの一環として、痴漢行為をはじめとする

西日本旅客鉄道株式会社 迷惑行為を防止する為、車内が最も混雑する朝のラッシュ時間帯に一部の
線区で導入いたしました。

4.導入にかかったコストはどのくらいですか
導入にかかった費用といたしましては、約 400 万円です。なお、この費用

南海電気鉄道株式会社 には人件費、作業費は含まれておりません。またステッカー等の補修、更

新等によるランニングコストが別途発生いたしております。

泉北高速鉄道
PRポスター、チラシ、乗車位置ステッカー、案内警備業務にかかった経

費としては次のとおり

大阪市交通局 ・御堂筋線導入時(H.14.11.11 導入)…約 1,080 万円

・谷町線導入時(H.15.12.15 導入)…約 980 万円

・御堂筋線時間帯拡大時(H.16.9.6 拡大)…約 1,170 万円

ホームの乗車目標、お知らせ用のポスター、チラシ、駅における自動案内
近畿日本鉄道株式会社
放送等で約 200 万円

西日本旅客鉄道株式会社 コストについては、公表しかねます。

5.路線、時間帯、車両位置、車両数はどのように決めておられますか
列車の混雑状況を勘案し、以下の内容といたしております。

設定区間:(南海線)和歌山市・関西空港から天下茶屋間

(高野線)橋本・林間田園都市から天下茶屋間
南海電気鉄道株式会社
設定時間帯及び種別:平日ダイヤで天下茶屋着 7 時 20 分から 8 時 30 分ま

でに到着する 8 両運転の灘波行急行列車

車両位置:8 両編成の灘波側から 4 両目

泉北高速鉄道
(1)路線、時間帯については、痴漢被害の届出件数や、時間帯を勘案して設
大阪市交通局
定を行なった。

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・御堂筋線…平日の終日

・谷町線…平日の初発から午前 9 時まで

(2)車両位置、車両数については、お客様の安全確保が図れるよう、車両位

置付近のホーム幅員や階段部などとの位置関係や各車両の混雑度合いなど

について、各駅の状況を精査するとともにお客様の流動や滞留状況なども

総合的に勘案して、安全性や他路線への乗り換えなどに比較的影響の少な

い車両位置に設定した。

・御堂筋線…10 両編成中 6 号車

・谷町線…6 両編成中 3 号車

奈良線上り、近鉄奈良駅→近鉄灘波駅

平日ダイヤ日、始発から 9 時 30 分までに近鉄灘波駅に到着する快速急行

10 両編成のうち最後部車両1両
近畿日本鉄道株式会社
理由:この列車については 10 両固定編成で運行することから、各駅での女

性専用車両乗車位置を固定することができ、且つ男性や他の女性のお客様

が乗車していただける車両も 10 両確保できる。

西日本旅客鉄道株式会社 お客様のご利用状況等を勘案し決定しております。

6.利用者からの反応はどのようなものですか(女性から、男性から)
南海電気鉄道株式会社 男性、女性とも概ね好評をいただいております。

泉北高速鉄道
(1)女性から

・痴漢の被害に遭わず安心して乗車できる。

・男性が乗ってくるので注意して欲しい など
大阪市交通局
(2)男性から

・男性差別である。

・前後の車両が混雑する。など

正式導入後のアンケート調査の結果、78%のお客様の賛成を得た。

賛成:安心して乗車できる、迷惑行為の防止に有効、迷惑行為の疑いをか
近畿日本鉄道株式会社
けられずに済む等

反対:不公平、他の車両が混雑する等

西日本旅客鉄道株式会社 導入して数年たっており、お客様にはご理解いただいていると思います。

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7.今後運用を改善していくとすればどのような点が考えられるでしょうか
時間帯・車両数・区間等の改善が考えられますが、現時点で具体的に検討
南海電気鉄道株式会社
しているものではありません。

泉北高速鉄道
現在のところ、特段混乱もなく運営されており、引き続きPRを行い、お
大阪市交通局
客様のご理解ご協力をいただけるように取り組んでいく。

他線区への導入も検討しているが、列車の運転区間や編成がまちまちで、

近畿日本鉄道株式会社 さらに連結等も多くあり、乗車位置の固定や区間設定等、導入が困難な状

況であり、現在のところ計画はない。

西日本旅客鉄道株式会社 現在のところ、特に変更の予定は考えておりません。

8.将来的に女性専用車両を廃止することは考えておられますか、またその基準はなんで
しょうか
現時点では廃止に関する検討は行なっておりません。なお、今後につきま

南海電気鉄道株式会社 してはお客さまのご意見をお聞きし、また他社との調整等も図りながら方

向性を決定して参ります。

泉北高速鉄道
女性専用車両については、導入後、痴漢届出件数が減少するなど、一定の
大阪市交通局
効果をあげており、現在のところ、廃止についてはかんがえていない。

近畿日本鉄道株式会社 現在のところ廃止は考えていない。

西日本旅客鉄道株式会社 現在のところ、女性専用車の廃止は考えておりません。

痴漢対策について
1.貴社で把握されている、車内・駅構内の痴漢発生件数をお教えください
(過去のデータがあれば、可能なかぎり教えていただけるとありがたいです。)
平成 18 年1月 1 日∼12 月 30 日まで 75 件
南海電気鉄道株式会社
平成 19 年 1 月 1 日∼11 月 30 日まで 90 件

平成 19 年度:痴漢 5 件、その他迷惑行為 2 件 (H19.4∼H19.12)


泉北高速鉄道
平成 18 年度:痴漢8件、その他迷惑行為1件

大阪市交通局 ※
平成 15 年 73 件、 平成 16 年 47 件、 平成 17 年 52 件、 平成 18 年 54 件、
近畿日本鉄道株式会社
平成 19 年 82 件

西日本旅客鉄道株式会社 特に把握をしておりません。

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※大阪市交通局
車内 駅構内 合計
平成 14 年度 172 件 42 件 214 件
平成 15 年度 123 件 44 件 167 件
平成 16 年度 104 件 41 件 145 件
平成 17 年度 117 件 50 件 167 件
平成 18 年度 99 件 47 件 146 件

2.痴漢に対してどのような対策をしておられますか
一部時間帯において、女性専用車両を導入いたしております。

車内駅構内における巡回を行っております。

車内駅構内において適宜、迷惑行為防止放送を実施。

南海電気鉄道株式会社 9/1∼9/10 まで列車内痴漢追放キャンペーンを実施。

期間中、PRポスターの掲出、迷惑行為防止放送の強化。

期間中、鉄道警察隊と合同でティッシュ・リーフレットの配布。

マナー向上キャンペーン中ティッシュ・リーフレットの配布。

・車内放送、駅構内でのポスター提出等の啓発活動の実施
泉北高速鉄道
・鉄道警察隊と協力し、「痴漢追放キャンペーン」を実施(毎年9月)

日頃から、鉄道警察隊関係者と連絡を密にし、また、駅職員の巡視等に

よる自主警備に努めており、駅構内においては、毎月期間を定め、痴漢追

放の啓発放送を行っている。

毎年春には、交通局が鉄道警察隊の協力を得て、「痴漢追放週間」を設

定し、チラシの配布、ポスターの掲示、駅構内・車内での啓発放送を実施

しているほか、駅長などがタスキをかけて構内巡視するなど啓発活動に取

り組んでいる。

大阪市交通局 また、秋には鉄道警察隊と府下の鉄道事業者と共同で「痴漢追放キャン

ペーン」として、痴漢防止に取り組んでいる。

平成 13 年度からは、車内及び駅構内での啓発放送の強化を図り、駅構内

掲出の啓発ポスターのデザイン一新・大型化を図るとともに、地下鉄・ニ

ュートラムの全車両の窓ガラスに啓発ステッカーの貼付けを行った。

さらに、平成 15 年 1 月から大阪府において、迷惑防止条例が改正され痴

漢に対する罰則強化が実施されたことから、罰則強化の内容を示したポス

ターも駅構内に掲出し、痴漢に対する啓発強化を図っている。

警察と連携した痴漢防止キャンペーンの実施
近畿日本鉄道株式会社
車内放送による迷惑行為防止の啓蒙

81
車内等で、暴力・痴漢行為に遭ったお客様から駅に申し出があった際に的
西日本旅客鉄道株式会社
確に対応するよう、基本的な対応方についてフローを定めております。

3.痴漢に対応するためのマニュアルはありますか
南海電気鉄道株式会社 迷惑行為(痴漢など)発生時の対応マニュアルを作成いたしております。

・マニュアルはありませんが、以下のように対応しています。

(お客様から痴漢の被害申告があった場合)

・加害者が確保されている場合は警察へ通報します。加害者が不明の場

合はお客さまから警察へ相談していただくとともに、弊社から鉄道警察

泉北高速鉄道 隊にも連絡します。

・なお、お客様と警察の相談により鉄道警察隊による同乗等の対策が可

能であるとのことです。

(弊社係員が加害者)を確保した場合)

・警察へ通報します。

大阪市交通局 特にありません。

近畿日本鉄道株式会社 マニュアル化したものはない。

西日本旅客鉄道株式会社 2と同じ

4.駅員の痴漢への対応はどのように教育しておられますか
南海電気鉄道株式会社 上記マニュアルを活用した教育を実施いたしております。

泉北高速鉄道 上記3の対応を指導・教育しています。

お客さまから被害に遭われたと申し出があったときは
・駅長室にご案内する。

・お客さまの気持ちを考慮して、丁寧な対応を心がける。

・加害者と申告され同行されたお客さまに対しては、犯罪者扱いするよう

な態度や言葉遣いにならないよう注意する。

・未成年者の場合は保護者(学校)へ連絡する。
大阪市交通局
・必要に応じ鉄道警察隊への相談を薦め、ご自身で警察へ届出される場合

は、所轄警察署をご案内する。

・双方の意見が食い違うなど駅で対処できない場合は警察を要請し、事後

を依頼する。

などの対応に心がけるよう指導しておりま

す。

集合教育時に対応法を教育している。特に確実に警察へ引き渡すことを念
近畿日本鉄道株式会社
頭に置くよう教育している。

82
西日本旅客鉄道株式会社 対応を行う社員に対して、フローの取扱いを周知しております。

5.痴漢を捕まえた人に対する謝礼はありますか
南海電気鉄道株式会社 特にございません。

泉北高速鉄道 特にありません。

大阪市交通局 ありません。

近畿日本鉄道株式会社 ない。

西日本旅客鉄道株式会社 謝礼については、特に差し上げておりません。

6.痴漢対策における女性専用車両の位置づけはどのようなものですか
南海電気鉄道株式会社 痴漢防止対策として非常に効果があるものだとかんがえております。

女性専用車両は、現在多くの鉄道会社で導入されており、痴漢対策とし

ては有効な手段であると認識しておりますが、①列車(6・8・10 両)毎に乗

車位置が異なることによる混乱、②相互直通運転している南海高野線の設

定列車(平日朝ラッシュ時間帯の橋本・林間田園都市∼天下茶屋間の急行列
泉北高速鉄道
車のみ)と列車種別が異なる(弊社では急行列車はありません)ことによる

混乱、が生じるおそれがあることから、現在は設定いたしておりません。

弊社においては、列車全体の混雑緩和を優先すべきであると考えており、

結果としてこれが根本的な痴漢対策につながるものと考えております。

大阪市交通局 女性専用車両についての3と同じ

有効な対策のひとつではあるが、根本的な解決策にはならないと考えてい
近畿日本鉄道株式会社
る。

女性専用車両は、痴漢行為をはじめとする迷惑行為を防止することを目的
西日本旅客鉄道株式会社
に導入しております。

7.女専専用車両以外に痴漢対策として行っていることはありますか(車内放送、ポスタ
ーなど)
車内駅構内における巡回を行っております。

車内駅構内において適宜、迷惑行為防止放送を実施。

9/1∼9/10 まで列車内痴漢追放キャンペーンを実施。
南海電気鉄道株式会社
期間中、PRポスターの掲出、迷惑行為防止放送の強化。

期間中、鉄道警察隊と合同でティッシュ・リーフレットの配布。

マナー向上キャンペーン中ティッシュ・リーフレットの配布。

泉北高速鉄道 上記2の対策を実施しております。

大阪市交通局 痴漢対策についての2と同じ

83
車内、駅構内における啓蒙放送の実施。車内、駅構内にポスター、車内刷
近畿日本鉄道株式会社
りの掲出

マナー・迷惑行為の防止の呼びかけは、適宜行っておりますが、痴漢のみ

を目的とした呼びかけは特に行っておりません。しかしながら、車内で何
西日本旅客鉄道株式会社
かございましたら、「車内非常ボタン」を押していただくよう呼びかけを

おこなっております。

8.女性専用車両以外の新たな痴漢対策の導入は考えておられますか
現在のところ新たな痴漢対策の導入は考えておりませんが、女性専用車両

南海電気鉄道株式会社 の拡大等、お客さまのご意見や他社との調整を図りながら今後も検討して

いきます。

泉北高速鉄道 現時点ではありません。

大阪市交通局 今後とも、痴漢行為そのものを無くす取り組みを継続していく。

近畿日本鉄道株式会社 現在のところ、上記対策を継続すること以外、新たな導入策はない。

西日本旅客鉄道株式会社 現在のところ、特に計画はありません。

84
〈資料 3〉大阪市交通局へのインタヴュー

日 時: 2008 年 1 月 30 日 15 時∼16 時
場 所: 大阪市交通局本局7F
回答者: 高速運輸部
金守修さん(駅務管理)中村丈男さん(駅務管理)森本直樹さん(運転管理)
インタヴュアー: 居永 川端 寺野 橋爪

以下は、大阪市交通局で行ったインタヴューを文字おこししたものである。重複してい
る質問は、省いたり、話が前後しているものは同じようなテーマでまとめた。できるだけ
そのままの言葉で再現したが、理解しやすいように、言葉を付け加えたところもある。
1)女性専用車両導入の経緯、2)痴漢犯罪について、3)加害者・被害者への対応、4)冤罪に
ついて、5)鉄道警察隊、6)女性専用車両の仕様、7)苦情やバッシング、8)女性専用車両の今
後の 8 点にわたってインタヴューした。なお、インタヴュー文字おこしの内容は大阪市交
通局金守さん、中村さん、森本さんに事前に確認してもらい、掲載の了解を得ている。

女性専用車両導入の経緯
Q.女性専用車両導入の経緯をもう少し詳しくきかせていただきたい。
交通局の中でどういう話し合いがあったのか。また、どこからか、要請があったのか。
A.痴漢対策ということで、鉄道警察隊と連携して痴漢追放週間とか痴漢そのものをな
くしていこうという取り組みを行っていたが、現実には痴漢件数がなくならないと
いう状況で、女性を保護するという観点から女性専用車両導入を検討した。どの場
所に導入するか、検討して、御堂筋線で導入するという形になった。要請というこ
とでは、お客様から女性専用車両を導入してほしいという要望があって、当局が判
断して導入した。

Q.
「お客様の声」というのは、個人的に交通局に訴えがあったのか、団体のような形で要
望があったのか。
A.団体という記憶はないが、大阪市議会で議論されたし、利用者の方にアンケートを
とった中で導入していった。

Q.利用者が直接出向いてということはなかったのか。
A.大阪市として「市民の声」ということで、お客様の声を聞く方法があるので、その
中に女性専用車両を入れて欲しいという内容があった。直接は少なかった。

85
Q.導入のとき、警察の方が是非ということはなかったのか。
A.警察の方からの要請はとくになかった。導入にあたっては警察のほうともいっしょ
にしていった。

Q.阪急、京阪が、国土交通省のモデルとして試験的に導入したのを参考にして、導入さ
れたのか。
A.状況についてはヒアリングをとおして教えていただいた。

Q.女性専用車両導入の目的は、被害を減らすよりも、女性が安心して乗れるということ
に重点がおかれているのか。
A.導入の目的としてそういうことだ。

痴漢犯罪について
Q.私たちがお願いしたアンケートで、痴漢発生件数を教えていただいたが、平成 14 年か
ら車内の痴漢件数が順調に減ってきているが、女性専用車両が導入されたのが平成 14 年
からだが、大阪市交通局地下鉄全体の数字なのか。
A.地下鉄全体で、駅の方にご申告があったもので、実際に警察にお届けなったかどう
かまではおっていない。

Q.減っているということは、女性専用車両と関係あるか。
A.女性専用車両は、女性を保護するという観点で導入したが、結果的に若干、件数が
減っているということだ。

Q.平成 14 年度から特別に(痴漢撲滅)キャンペーンを強化したとかということはないの
か。
A.キャンペーンについては、ほぼ、同じような形でやっている。女性専用車両を導入
したことで、啓発されて、痴漢が少なくなったのではないかと、一応、効果はあっ
たのではないかと…

Q.構内では、関係ないようだが。
A.数字を見れば、車内が大きく減っているので、女性専用車両の効果はあったのでは
ないか。

Q.路線ごとの数字はあるのか。
A.内部資料としては、当然分析している。

86
Q.
「痴漢」というのをひとつの問題としてデータをとりはじめたのはいつぐらいか。平成
14 年以前ものこっているのか。
A.統計をとりだしたのは、おいかけてみないとわからない。※
「痴漢発生件数」となっているが、これは「届出件数」であることをご理解いただ
きたい。届出件数がふえたから、痴漢発生件数がふえたのかというと、またちがう
ところかなと思う。「被害に遭われた方はご申告ください」ということで、今まで以
上に申告される方が多くなったのかなあと…実際の発生件数は表現がむずかしい。

※後日、以下のような回答をいただきました。
申し訳ありませんが、痴漢のデータですが、痴漢届出報告としてデータを取り始め
たのがいつかは不明です。現在としては、データとしてきっちりあるのは 14 年度か
らとなります。

Q.届けていない被害が水面下にたくさんあるということか。
A.あると思われるが、積極的にご申告いただける女性のお客様が増えているのも実際
なのかなと…届出件数は統計では下がっているが、被害の件数はわからない。

Q.駅で働いておられる方にとって、痴漢行為は身近に(頻繁に)おこることなのか。
A.御堂筋線はそうめずらしくないくらいの感覚がある。件数の6∼7割は御堂筋線で
の件数である。

Q.感覚的には、ここで上がっている数字より多い感じがするか。
A.駅で働いているものからしたら、ない駅とある駅とのかたよりがたいへん大きい。
御堂筋線で勤務している者が、痴漢被害にあわれたお客様とのやりとりを見たこと
がないという者は、ほぼいないと思う。

Q.大きな駅が多いのか。
A.もちろん、混雑しているところでそういうことをされるのが一番多いと思うので、
梅田、難波、天王寺ぐらいの間が多い。

Q.やっぱり、混雑しているところが多いのか。混雑していると逃げにくいので、ある程
度のスペースがある方が、多いというような話もきいたことがあるが。
A.絶対数が多い区間というのは、件数的にも多いのかなあと思っている。たとえば、
程よく混雑している長居駅ぐらいで件数が多いとそういうことが言えるのかもしれ
ないが、そうでもない。

87
Q.大学(府立大)の学生のアンケートで、ごくわずかの男性が痴漢にあっているが、そ
ういう話はきいたことがあるか。
A.それが何件かはいえないが、2 パターンあって、男性が男性とわかって痴漢にあう場
合と、男性が女性と間違われる場合がある。それを目の当たりにしたことがある。
小柄な男の子で女性とまちがわれた。

Q.女性が男性に痴漢をするということは?
A.知っている範囲では、そういう報告はない。

Q.痴漢行為の変化はあるか。たとえば、ネットなどで知らない者同士が連絡をとりあっ
て、集団で被害者を囲むというようなことをご存知ないか。
A.そこまでは、我々に具体的にはつかめていない。俗にはそういうことも聞かれるが。
実際には、警察にそういうことで引き継いだことはない。ただ、カメラに撮られた
とかいうのは、昔にはなかった痴漢行為である。

加害者・被害者への対応
Q.アンケートにお答えいただいた届け出件数は、被害者が「痴漢だ」ということで駅事
務所(駅長室)にきた人の数か。
A.それもあるし、ホームに立っている駅員に申告された場合や、鉄道警察隊が警乗中
に、まれに痴漢被害にあわれたということでこられる。

Q.被害者のみが申告する場合と、加害者も連れて申告する場合とどちらが多いか。
A.そういう統計をとっていないので何とも言えないが、女性が声をあげられて周りの
男性が取り押さえて通報される件数もけっこう多い。いろいろある。

Q.被害にあったあと、被害者だけが届ける場合もあるのか。
A.後日に届けるということもある。

Q.被害者と加害者と、意見が食い違う場合があると思うが、そういうことは多いのか。
A.件数としてとっていないが、ある。

Q.実際にあたられていて、認める場合と認めない場合とどのくらいの割合か。
A.申告があったときに、冤罪ということもあるので、加害者ということで連れてこら
れても、犯人扱いすることなく、事情をお聞きしている。話が食い違って、第三者
として警察を呼ぶ必要があると言う場合については、警察を要請して、事後は警察
におまかせするという形になっている。最終的に警察に行ってどうなっているかと

88
いうことはわからない。

Q.警察に引き渡した時点からはタッチしないのか。
A.連れてこられた状況を警察にお伝えするということはあるが、それ以上は調査しな
い。
Q.被害者の要請があったときだけ、警察に通報するのか。
A.被害者が警察を呼んでほしいという要請があったらお呼びするということになって
いる。

Q.加害者が認めた場合は、示談という形で駅の中で処理されていく場合もあるのか。
A.当人どうしで、その場で話がつく場合もあるかと思うが、納得できない場合は警察
を呼ぶという場合もある。

Q.どちらが多いか。あたられた感じとして。
A.どちらかと言えば、警察をよんでほしいという形でお呼びする場合が多い。

Q.ほとんどか。
A.そうですね。ただ、女性の方が、警察はよびませんというケースもある

Q.被害にあったとき、女性が声をあげやすいように、女性の駅員はいるのか。
A.そのために女性職員を採用しているということは、現状ない。

Q.女性職員がいる駅はあるのか。
A.ある。

Q.痴漢対策ということではないのか。
A.そういうことではない。

Q.被害者の話をきくのは男性職員か。
A.そうだ。女性職員が少ないので、結果的に被害者の話を聞くのはほとんどの場合男
性職員ということになる

Q.「女性の方を呼んでください」というのはできるのか。
A.女性職員が(その駅に)おれば、対応できると思う。いない駅の方が実際多い。鉄
道警察隊なら女性警察官がいるので、そちらの方へ連絡することになるかと思う。

89
冤罪について
Q.冤罪が社会問題になっているが、実際に対応されていて、冤罪ではないかと思うよう
なことはあるか。
A.判断はしない。「冤罪ではないか」と思うと対応できない。犯人扱いしないように接
するようにしている。

Q.数少ない例だと思うが、携帯電話を注意されて腹いせにというような事例があったが、
そのようなことは、経験されていないか。
A.そういう報告はない。

Q.明らかに女性の悪意、腹いせ的なものはあったか。
A.そこまでの詳しい状況は当局では把握できていない。

Q.話しているうちに被害者が勘違いだったと思うようなことはあるか。
A.そこまで当局が、双方の意見を聞くというようなことはない。水掛け論になると警
察の方に間にはいってもらうので。

Q.連れてこられた人の意見は駅ではちゃんと聞いているのか。
A.聞かしていただいている。

Q.冤罪の手記などを読んでいたら、駅では何も聞いてもらえなかったというのが多いの
だが。
A.そんなことはない。警察には、お客様の要請あっての通報ということになっている。

鉄道警察隊
Q.鉄道警察隊を車内でみかけることがあるが、いつも、どこにいるのか。
A.新大阪に鉄道警察隊がある。そちらから各鉄道に警乗しておられる。

Q.被害者が申告されたときに、駅員が鉄道警察隊といっしょに対応するということもあ
るのか。
A.そういう形はとっていない。

Q.(駅と警察の)個々に、独自のマニュアルがあるのか。
A.駅長室に加害者、被害者の両方がこられる場合があるし、申告をうけて、話を聞い
て、要請があった場合は警察にきていただく。事後については、お聞きした内容を
警察にも伝えたあと、加害者、被害者からの事情をきくのは警察におまかせしてい

90
る。警察といっしょに職員が何かを聞くというようなことはやっていない。

Q.その時点で逮捕ということになるのか。
A.まず、事情聴取ということになるかと思う。そのまま、所轄の警察のほうに行かれ
るか、駅長室でスペースをお貸しして、そこで事情聴取ということになる。逮捕と
いうのはない。聞かない。

Q.現行犯逮捕というのは。
A.鉄道警察の警乗のときに現行犯で逮捕されたということはきいたことがある。

Q.鉄道警察隊は独自に活動しておられるのか。自分たちのスケジュールで自分たちで乗
って、自分たちでつかまえて…
A.そうです。当然、移動の区間が多いので、情報提供という形での連携はとっている。

Q.鉄道警察隊がつかまえた数はここ(アンケート資料)にははいっていないのか。
A.駅員に申告があった場合にははいる。

Q.鉄道警察隊が被害者(および容疑者)に事情を聴くために,駅長室を借りた場合もは
いるのか。
A.そうだ。

Q.駅員、駅長室などを通さずにそのまま警察に連行という場合には。
A.その場合ははいらない。それはわからない。

Q.痴漢撲滅キャンペーンは警察のほうが主導でおこなうのか。
A.春と秋にキャンペーンをおこなっているが、春は交通局主導で、秋は鉄道警察隊が
民間鉄道会社を含めてキャンペーンをもつ。大阪市もいっしょにやらせてもらって
いる。

Q.女性専用車両導入前の段階で、何年ぐらいからキャンペーンをやっていたのか。
A.いつからかは、ちょっと調べないとわからない。必要なら調べて後ほどにお知らせ
する。※

※後日、以下のような回答をいただきました。
春の『チカン追放週間』は平成 11 年から、秋の「チカン追放キャンペーン」は平成
7 年から行っております。

91
Q.鉄道警察隊から鉄道会社にキャンペーンの要請はあるが、鉄道会社の方から、鉄道警
察隊に何かお願いするようなことはあるのか。
A.春には当局から協力をお願いして、キャンペーンをいっしょにしている。痴漢被害
以外でも、電車が傷付けられるような被害が多発すれば、協力してもらう。直接、
被害に遭われた方が(鉄道警察隊に)行かれると、通勤時間に合わせて警乗するこ
とがあると思われる。当局からも痴漢件数を鉄道警察隊に渡しているので、警乗の
区間、回数を強化してもらうこともある。

Q.キャンペーンの期間はどれくらいか。
A.春は主要駅で車内放送をしたり、こういうもの(痴漢は犯罪であることを印刷した
クリアファイル)を配らしてもらっている。日を限定して、1 週間ぐらい行う。学校
のはじまり、企業のはじまりに合わせている。秋には鉄道警察隊が主導で数日間、
各鉄道会社を回られる。交通局としては、一日割り当てられている。

女性専用車両の仕様
Q.女性専用車両のラッピングや、ホームの足場のデザインはだれがするのか。
A.ラッピングは広告代理店と広告担当のものが。
足元は、当局の駅の管理で。

Q.男性か。
A.女性もいるので意見を聞く。何通りか作って、わかりやすいものを採用する。他社
さんのものも参考にさせてもらう。

Q.海外の事例も調べたのだが、ブラジルはピンクの縞々を採用している。
「女性はピンク」
というイメージを押し付けているという批判を受けているようだが、そのような意見に
対してはどう思うか。
A.それもふまえて、みどりとか色を考えている。本来の目的は、ここが女性専用車両
であるというのをわかっていただきたいというのがある。JRさんはきみどりだと思
うが、御堂筋線はピンク、谷町線はみどりの縁にきみどり。色はむずかしい。男性、
女性ともにわかりやすいという観点が強い。

苦情やバッシング
Q.間違って乗ったということで、トラブルになったことはあるか。
A.どこまでがトラブルかはむずかしい。トラブルまではいっていないが、まちがって

92
乗って女性に注意されたということで、案内表示がわかりにくいというご意見をい
ただいたことはある。案内、ステッカーなど、どうすればわかりやすくできるか継
続して検討している。

Q.女性専用車両をやめてほしいという声はあるか。
A.ある。

Q.どういうふうに対応しておられるのか。
A.もともとの、痴漢にあわれる方を守るという導入の趣旨を説明して、ご理解いただ
く。

Q.直接的に、苦情の電話などがあるのか。
A.苦情の電話もある。「市民の声」、当局HPのメールなど、いろいろな方法で。

Q.嫌がらせのようなものはあるか。例えば、変な手紙が送られるとか、罵声とか。
A.嫌がらせとはとらないが、男女差別であるとか、同じ料金を払っているのにとか、
なぜ、優遇されるのかとか、身体障害者用の車両をつくりなさい、男性専用車両を
作りなさいとか、当初はたくさんあった。

Q.だんだん減ってきている感じか。
A.導入当初よりはへっている。当初は、まず、知らなかった、乗ってしまって恥ずか
しかった、わかるようにしろ、というのが多かった。世間的に女性専用車両が認知
される中で、女性だけが優遇されるのかという内容に変わってきた。

Q.男性から、
「他の車両は混むやないか」という苦情があったと思うのだが、実際に女性
専用車両以外は混んでいるのか、女性専用車両が混んでいるのか。
A.地下鉄の階段位置で、自分の階段位置をここだと決めたら、移動されない方がいら
っしゃるので、混雑率が違う場合がある。それをご理解いただいて、できるだけ女
性専用車両を設けているという案内をしている。女性専用車両を間に挟んで少し混
んでいるのが見受けられるが、ラッシュ時はどの車両も混んでいる。

女性専用車両の今後
Q.女性専用車両ができて、8 年近くたつが、拡大の予定はあるのか。逆に、痴漢の件数が
下がればなくすという、申告件数のめやすはあるのか。ふやす可能性と、減らす可能性
が見えていたら教えていただきたい。
A.難しい問題だ。女性専用車両を設けない世の中が理想だが。(女性専用車両の)認知

93
をいただいて拡大はひょっとすればあるかもしれないが、今のところ具体的にはも
っていない。世の中の流れ的に、女性専用車両をなくすのはなかなかむずかしい。

Q.増やす予定がないのは、御堂筋線と谷町線が痴漢の件数が多くてそれで、ある程度、
痴漢が多い路線はもうすでに(女性専用車両を)走らせているからか。
A.ほぼ、
(痴漢の発生は)御堂筋線と谷町線なので、他の路線は編成車両数も少ないの
で、女性専用車両を利用されない人に影響が多いことが想定される。すべての可能
性はゼロではない。情勢が変われば変わる場合もある。

質問は以上です。インタヴューに長い時間ご協力いただき、ありがとうございました。

94
〈資料 4〉「性暴力を許さない女の会」とのインタヴュー―概要―

日時: 2008 年 1 月 20 日 18 時∼19 時半


場所: 「セクシャルハラスメントと斗う労働組合ぱあぷる」事務所
回答者: N さん、S さん、A さん、S さん
質問者: 川端 寺野 橋爪

以下は、本報告書作成に当たり電車内における痴漢行為が社会的にあまり問題視されて
いなかった時期から抗議運動・アンケート調査・出版等の活動を続けてきた「性暴力を許
さない女の会」のメンバー4 人に行ったインタヴューの概要である。半構造的な会話形式の
インタヴューであったため、全てを文字起こしすることはせずに要点のみを1)女性専用
車両導入に関わる同会の活動と社会的変化、2)冤罪に関する意見、3)女性専用車両と
これから、の3つに分類して再構成した。また、本概要の内容は同会のメンバーに事前に
確認してもらい、掲載の了解を得ている。

活動・変化:
93−94 年にかけて行ったアンケート結果を持って各鉄道会社を回ったが、消極的な対応
がほとんどだった。しかし、アンケート結果を冊子にして出版したしばらく後に(96 年頃)、
鉄道警察隊から「ぱあぷる」1に突然の電話――これから痴漢対策を強化するのでアンケー
ト結果の冊子を買いたい、話も聞きたい、というような内容であった。会の活動の結果鉄
道警察隊が動いたというよりは、鉄道警察隊が動き出し、当時既にアンケートを行って数
字を示していた同会を見つけたのではという感覚である。鉄道警察隊がその後、各鉄道会
社にポスターの掲示とアナウンスを要請(鉄道警察隊の当時の隊長はとても熱意のある人
だったという印象がある)。しかし、しぶしぶ了解した鉄道会社が 2 週間期間限定で掲示し
たポスターは駅構内・電車車両内の極力目立たないような場所に掲示されていた。
会として女性専用車両の導入を直接鉄道会社に要求したことはない。理由としては会の
中で意見が分かれていた(根本的な解決にはならないのではという反対意見があった)こ
とと、ポスターやアナウンスでさえも渋る鉄道会社に女性専用車両の導入を要求しても余
計に受け入れられないだけだと判断したことが挙げられる。また、女性専用車両に乗らな
い女性が責められてしまうのではという懸念もあった。しかし、要望書等には書かなかっ
たものの、アンケートや出版された冊子の中で言及する形で女性専用車両は潜在していた。

冤罪について:
冤罪は痴漢犯罪に限らず昔からあった。痴漢行為が犯罪として認識されるようになった

1 「セクシャルハラスメントと斗う労働組合ぱあぷる」は、「性暴力を許さない女の会」と『痴漢のいな
い電車に乗りたい!―STOP 痴漢アンケート報告集―』(1995)を共同出版した団体である。

95
ので結果的に痴漢にまつわる冤罪も起こってしまっているのではないだろうか。しかし、
どの犯罪にでもおこりうる冤罪を痴漢犯罪と執拗に結び付けるような扱いが各種メディア
(週刊誌、漫画、ドラマ等)でされていることに強い違和感がある。痴漢という犯罪が悪
であるのに、その怒りの矛先が被害女性へ向けられていることが心配。

女性専用車両、これから:
現在、会の中で女性専用車両に反対するメンバーはいない。もちろん女性専用車両の必
要のない世の中が一番いいが、現状としては必要である。女性専用車両のお陰で出歩ける
ようになったという性暴力のサバイバーの声も多く聞く。痴漢という問題が独立して存在
するのではなく、性暴力を容認する土壌が社会にある。例えば、痴漢事件では被害者の素
行が問題になることがあるが、これは痴漢以外の性暴力の被害者の扱いと共通する。被害
者の「素行」で加害者の罪の重さが変わるべきではない。痴漢を減らす努力を真剣にしな
い限り解決しない問題である。
痴漢対策として理想的なのは、やはり取締りのための人員(特に女性)の増加を行い、
痴漢発生防止とともに痴漢犯罪が起った時に被害者が声を上げやすい環境を作ることであ
る。

96
〈資料 5〉大阪府警察本部地域部鉄道警察隊への女性専用車両等に関する調査(依頼書と調
査の質問項目)

女性専用車両および電車内の痴漢に関する調査報告書を作成するに当たり、私たちは、
関西の鉄道会社 8 社にアンケート調査を実施し、そのうちの一社にインタヴューを行った。
また、性暴力と闘う女性グループに対してもインタヴューを行った。そういう中で、鉄道
会社や女性グループと同様に、私たちのテーマに関連する大阪府警察本部地域部鉄道警察
隊(以下、鉄道警察隊)についても確認したい問題等が浮かび上がったため、質問状を鉄
道警察隊へ郵送して、回答をお願いした。
鉄道警察隊からは、大阪府警察本部の HP やパンフレット等で活動が公開されているので、
それらを文書回答の代わりとする旨の連絡があり、また参考資料として以下のものを送っ
ていただいた:
・ 鉄道警察隊の活動が紹介された 3 件の新聞記事のコピー
・ 鉄道警察隊の活動が記載されている「シティリビング」(サンケイリビング新聞社発
行の情報紙)
・ 大阪府鉄道警察・大阪府鉄道警察連絡協議会∗作成のパンフレット「勇気の一声」
・ 大阪府警察作成のパンフレット「女性のみなさんへ 『もしも』のために…」
・ 痴漢追放キャンペーンのためのティッシュ

次頁に、鉄道警察隊に郵送した依頼書と質問項目を掲載する。


大阪府鉄道警察連絡協議会は、大阪市交通局と 13 の鉄道会社(大阪高速鉄道(株)、大阪府都市開発(株)、
北大阪急行電鉄(株)、近畿日本鉄道(株)、京阪電気鉄道(株)、東海旅客鉄道(株)、南海電気鉄道(株)、西日
本旅客鉄道(株)、能勢電鉄(株)、阪堺電気軌道(株)、阪急電鉄(株)、阪神電気鉄道(株)、水間鉄道(株))により
構成されている(パンフレット「勇気の一声」14 頁)。

97
女性専用車両等に関する調査へのご協力のお願い

2008 年 2 月 14 日
大阪府警察本部地域部 鉄道警察隊御中
大阪府立大学人間社会学研究科
学際現代人間社会論演習Ⅰ院生:居永正宏
川端多津子
寺野朱美
橋爪由紀
担当教員:森岡正博

突然お便り差し上げますことをお許しください。
私たちは、大阪府立大学大学院人間社会学研究科の大学院生です。現在私たちは、痴漢
は性暴力であるという認識のもと、学術的な視点から女性専用車両と電車内の痴漢に関す
る調査報告書を作成しております。つきましては、大阪府警察本部鉄道警察隊の取り組み
を調査させていただくことを目的に、別紙のような質問項目を考えました。お忙しいとこ
ろ誠に恐れ入りますが、質問へのご回答をお願いできませんでしょうか。お答えいただい
た内容は、上記目的以外では使用いたしません。また、調査報告書は完成後、大学のホー
ムページで公開する予定です。
誠に勝手ながら、ご回答を 2008 年 2 月末までに、ファックスもしくは郵送でいただけま
したら大変ありがたく存じます。
以上、よろしくお願いいたします。

98
【質問項目】

<痴漢対策について>
1 貴鉄道警察で把握されている、車内、駅構内の痴漢犯罪の届出件数もしくは検挙件数を
お教え下さい。
(過去のデータがあれば、可能なかぎり教えていただけるとありがたいです。)

1-1 最近、痴漢犯罪に質的変化がみられますか(例えば、ネットで知らない者同士が
連絡を取り合って集団で痴漢をする等)。

2 警視庁は HP で「電車内における痴漢犯罪の実態」を公開していましたが、貴警察本部で
は今後そのような取り組みをされる予定はありますでしょうか。また、同様の内容を知
ることのできる文献や HP などがあればお教え下さい。

3 特に痴漢対策を目的として行われる活動にはどのようなものがありますか。またその中で
特に効果を実感できるものはありますか。

3-1 鉄道警察独自の活動にどのようなものがありますか。

3-2 特に痴漢対策として各鉄道会社と連携を取って活動されていますか。

3-3 女性隊員は何人ほどいらっしゃいますか。

4 1990 年ごろから痴漢冤罪がメディアなどで取り沙汰されることが多くなっていますが、
鉄道警察隊としてどのようなお立場ですか。

5 冤罪容疑者が現行犯逮捕されるのはどのような場合ですか。

<女性専用車両について>
1 女性専用車両は痴漢対策に有効だと考えておられますか。
1-1 有効だとお考えの場合、その理由をお答えください。

1-2 また、有効でないとお考えの場合、その理由をお答えください。

2 女性専用車両は、関西では 2002 年 10 月と 11 月に一部区間・時間限定などの試験導入を


経て、同年 12 月より順次各鉄道会社および交通局で導入されましたが、女性専用車両導

99
入に当たって貴警察本部の方から何らかの働きかけがありましたか。

[働きかけがあった] [働きかけがなかった]

2-1 働きかけがあった場合、それはいつ頃どのような形でなされたのでしょうか。

以上です。どうもありがとうございました。

100
〈資料 6〉公的機関による、女性専用車両に関するアンケート調査結果

はじめに
私たちは、女性専用車両の総合的研究を行うに当たり、既存の女性専用車両に関するア
ンケート調査結果をまとめ、そこから見えてくるものを通して、研究の方向を定めること
にした。
女性専用車両については、国土交通省、大阪市交通局などの公的機関、あるいは京浜急
行電鉄などの事業者によって、主要駅構内での用紙配布やインターネットを利用したアン
ケート調査が行われており、その結果がインターネット上で公開されている。その他にも
私的機関が運営するウェブサイトなどで、インターネットを利用した女性専用車両導入の
賛否調査などがなされ、その結果が公開されている。しかし、後者の調査は、前者よりも
さらに調査対象者の匿名度、限定度を高くして、精査のための信用度を低くすることから、
本研究は、前者のアンケート調査結果のみを検討対象とした。また、私たちは独自に行う
大阪府立大学学部生を対象にしたアンケート調査と比較するために、調査対象事業者の所
在地を関西圏に限っていることから、使用する資料を以下の〈資料Ⅰ∼Ⅳ〉とした。これ
らのデータは図表化され開示されているが、以下の表は、公開されている図表から本研究
に必要と考えられるデータを取り出し、今一度数値化したものである。
また私たちは、女性専用車両について議論する過程で、女性の痴漢被害の問題、および
女性専用車両導入と男女共同参画社会推進の関連を視野に入れ始め、参考資料として〈資
料Ⅴ・Ⅵ・Ⅶ〉も検討したことから、その概要も合わせて報告する。

1.
〈資料Ⅰ〉国土交通省 2002「女性の視点から見た交通サービスに関するアンケート調査」
〈http://www.mlit.go.jp/kisha/kisha02/15/150813_.html〉
2.〈資料Ⅱ〉国土交通省 2003「女性専用車両 路線拡大モデル調査 報告書」
〈http://www.mlit.go.jp/kisha/kisha03/15/151209_.html〉
3.〈資料Ⅲ〉神戸市交通局 HP「女性専用車両に関するアンケート結果について」
〈http://www.city.kobe.jp/cityoffice/54/030/josei/kekka.htm〉
4.〈資料Ⅳ〉大阪市交通局 HP「女性専用車両に関するアンケート結果」
〈http://www.kotsu.city.osaka.jp/eigyou/riyouhouhou/woman_syaryou_2.html〉
5.その他の参考資料
5.1.〈資料Ⅴ〉総理府 1997「男女共同参画社会に関する世論調査」
〈http://www8.cao.go.jp/survey/h09/danjyo.html〉
5.2.〈資料Ⅵ〉総理府 2000「男女間における暴力に関する調査」
〈http://www.gender.go.jp/e-vaw/chousa/images/pdf/h11.pdf〉
5.3.〈資料Ⅶ〉内閣府 2000「男女共同参画社会に関する世論調査」
〈http://www8.cao.go.jp/survey/h11/danjyo/1.html〉

101
5.4.その他の男女共同参画に関する世論調査
〈http://www.gender.go.jp/yoron.html〉
(いずれも、2007.10.18 アクセス)

102
〈資料Ⅰ〉国土交通省 2002「女性の視点から見た交通サービスに関するアンケート調査」
1.
1.1.〈資料Ⅰ〉の概要
(1) 調査者:国土交通省
(2) 報告書作成年月:2002(平成 14)年3月
(3) 調査目的:「「女性」という観点を取り入れた総合的な交通サービス」に対するニーズ
に対応し、
「交通に対する男女の意識差について調査し、女性の視点から現在
の交通サービスに求められるものを的確に把握すること」を目的としている。
(4) 実施要領:①鉄道利用者を対象としたアンケート
②女性団体を対象としたアンケート

調査方法 調査票配布日時 事業者名 配布駅 配布票数

日比谷線・秋葉原
帝都高速度交通営
駅改札口、乗降客 駅、丸ノ内線・東京 6,000 票

に対し1時間 200 2002 年1月 24 日 駅、銀座線・上野駅
票、1駅 2000 票 (木)午前 10 時∼
小田急電鉄(株) 小田原線・新宿駅 2,000 票
(総計 20000 票)、 午後8時
京王線・新宿駅、井
無作為配布、後日 京王電鉄(株) 4,000 票
① の頭線・渋谷駅
郵送回収

東京急行電鉄(株) 東横線・渋谷駅 2,000 票

池袋線・池袋駅、新
西武鉄道(株) 4,000 票
宿線・新宿駅

東武鉄道(株) 東上線・池袋駅 2,000 票

2団体、各 100 票 2002 年1月 21 日の 主婦連合会 100 票

② の配布依頼、後日 週 東京都地域婦人団
100 票
郵送回収 体連盟

(5) アンケート項目:
「1.属性」
、「2.交通機関について、日頃不快や不便さを感じている点について」、
「3.
「女性専用車両」について」、「4.
「女性優先車両」について」、「5.車内防犯カメラの設
置について」、「6.痴漢や迷惑行為の防止に関する自由意見」、「7.タクシーについて」、
「8.宅配サービスについて」、
「9.引越サービスについて」、
「10.女性を意識したサービ
スに関する自由意見」
以上 10 項目でなるアンケート調査であるが、ここでは、「1.属性」、
「3.「女性専用
車両」について」の2項目の調査結果を取り出し、表にまとめることにする。

103
1.2.「1.属性」の結果報告
(1) 回収状況
配布対象 配布票数 回収票数 回収率

鉄道利用者 20,000 票 5,014 票 25.10%

主婦連 100 票 87 票 87.00%

地婦連 100 票 74 票 74.00%

計 20,200 票 5,175 票 25.60%

(2) 属性
①性別
性別 人数 割合

男性 2,613 人 50.50%

女性 2,535 人 49.00%

無回答 27 人 0.50%

計 5,175 人 100%

②年齢
性別 20歳未満 20歳代 30歳代 40歳代 50歳代 60歳代 70歳代 無回答

男性 1.80% 7.50% 12.10% 16.40% 25.60% 25.30% 11.30% 0.10%

女性 2.40% 14.90% 18.60% 16.30% 23.00% 18.30% 6.30% 0.10%

③職業
会社員 アルバイ
性別 主婦 学生 自営業 無職 その他 無回答
公務員 ト

男性 63.00% 0.00% 5.40% 1.70% 9.20% 13.80% 6.70% 0.20%

女性 29.90% 36.40% 6.90% 7.20% 4.80% 6.20% 8.10% 0.40%

④世帯の状況
性別 一人暮らし 家族と同居 その他 無回答

男性 10.90% 87.40% 1.70% 0.00%

女性 14.00% 83.10% 2.50% 0.40%

⑤小学生未満の子供の有無
性別 いる(3才未満) いる(3才∼小学生未満) いない 無回答

男性 3.50% 7.50% 86.80% 2.20%

女性 3.20% 5.30% 88.20% 3.30%

⑥体の不自由な方の介護をした経験の有無
性別 ある ない 無回答

男性 29.80% 69.60% 0.60%

女性 38.70% 60.70% 0.60%

104
1.3.「3.「女性専用車両」について」の結果報告
(1) 設置の賛否
①全体の意見(以下、「全体の意見」の場合、男性 2,613 票、女性 2,535 票)
性別 賛成 どちらかといえば賛成 どちらかといえば反対 反対 どちらともいえない 無回答

男性 39.60% 26.20% 14.20% 7.90% 11.00% 1.00%

女性 50.30% 27.00% 7.10% 2.20% 12.60% 0.70%

②年代別の意見
どちらと
どちらかと どちらかと
年代 性別 賛成 反対 もいえな 無回答 票数
いえば賛成 いえば反対

0∼39 歳 男性 36.10% 28.70% 14.20% 10.20% 10.20% 0.50% 557 票

女性 53.20% 29.10% 6.40% 1.80% 8.80% 0.80% 911 票

40∼59 歳 男性 40.10% 26.30% 14.20% 7.60% 10.90% 0.90% 1,097 票

女性 50.70% 24.10% 8.00% 2.40% 14.50% 0.30% 997 票

60 歳∼ 男性 41.20% 24.80% 14.30% 6.80% 11.60% 1.40% 957 票

女性 45.50% 28.70% 6.90% 2.40% 15.20% 1.30% 624 票

③通勤・通学で利用する人の意見
「通勤・通学」:「会社員・公務員」「学生」「アルバイト」/「その他」:「主婦」「自営業」「無職」「その他」、以下
同様
どちらと
どちらかと どちらかと
利用目的 性別 賛成 反対 もいえな 無回答 票数
いえば賛成 いえば反対

通勤・通学 男性 38.50% 26.50% 14.40% 8.70% 11.10% 0.80% 1,831 票

女性 49.10% 28.60% 7.00% 2.30% 12.20% 0.80% 1,116 票

その他 男性 42.50% 25.60% 13.90% 5.90% 10.60% 1.40% 776 票

女性 51.30% 25.60% 7.20% 2.10% 13.10% 0.60% 1,408 票

(2) 女性専用車両設置に反対する理由(2つまで回答可)
かえって 痴漢問題
一般車両
女性が一 の根本的 男性同伴 利用する
男女差別 がますま 必要性を
性別 般車両を な解決に だと利用 のは気恥 その他 票数
と感じる す混雑す 感じない
使いづら なってい できない ずかしい

い ない

男性 41.90% 14.00% 39.60% 32.70% 12.30% 0.50% 20.60% 8.30% 578 票

女性 17.80% 37.70% 43.60% 16.90% 16.10% 2.10% 27.50% 10.60% 236 票

105
(3) ラッシュ時の導入
①導入の賛否
a.全体の意見
ラッシュ時にはかえって混乱(ダ
ラッシュ時にこそ痴漢が発生す
性別 イヤ遅延など)するので専用車両 どちらともいえない 無回答
るので専用車両を設けるべき
を設けるべきでない

男性 42.60% 35.70% 18.90% 2.80%

女性 50.40% 22.40% 24.60% 2.50%

b.通勤・通学で利用する人の意見
ラッシュ時に ラッシュ時には帰って混乱(ダイ
どちらとも
利用目的 性別 こそ痴漢が発 ヤ遅延など)するので専用車両を 無回答 票数
いえない
生 設けるべきでない

通勤・通学 男性 41.10% 39.30% 17.60% 2.00% 1,831 票

女性 50.20% 23.90% 24.40% 1.50% 1,116 票

その他 男性 46.00% 27.30% 21.80% 4.90% 776 票

女性 50.70% 21.40% 24.60% 3.20% 1,408 票

②男性が間違って乗る点
a.全体の意見
ラッシュ時だからある程度男性が乗車 ラッシュ時といえども男性の乗車は どちらともいえ
性別 無回答
してもやむをえない 極力排除すべきだ ない

男性 39.20% 37.70% 19.80% 3.30%

女性 48.20% 27.80% 21.10% 2.80%

b.通勤・通学で利用する人の意見
ラッシュ時だからある程度 ラッシュ時といえども
どちらとも
利用目的 性別 男性が乗車してもやむをえ 男性の乗車は極力排除 無回答 票数
いえない
ない すべきだ

通勤・通学 男性 40.00% 37.70% 19.60% 2.70% 1,831 票

女性 50.30% 27.90% 19.80% 2.10% 1,116 票

その他 男性 37.40% 37.60% 20.20% 4.80% 776 票

女性 46.60% 27.80% 22.20% 3.40% 1,408 票

106
③混雑率に格差が生じる点
a.全体の意見
ある程度格差が生じることはや 格差が生じることは好ましく
性別 どちらともいえない 無回答
むを得ない ない

男性 58.10% 30.10% 9.00% 2.80%

女性 67.30% 17.30% 12.30% 3.10%

b.通勤・通学で利用する人の意見
ある程度格差が生じる 格差が生じることは どちらともい
利用目的 性別 無回答 票数
ことはやむを得ない 好ましくない えない

通勤・通学 男性 55.70% 33.30% 9.00% 2.10% 1,831 票

女性 66.30% 20.10% 11.40% 2.20% 1,116 票

その他 男性 64.00% 22.40% 9.10% 4.40% 776 票

女性 68.10% 15.10% 13.10% 3.80% 1,408 票

④女性専用車両が改札から遠い場合の利用意向(女性のみ回答、サンプル数 2,525 票)
a.利用意向
性別 改札から遠くても利用する 改札から遠いなら利用しない どちらともいえない 無回答

女性 41.70% 28.10% 27.30% 2.80%

b.通勤・通学とその他の別(女性のみ回答)
改札から遠くても利 改札から遠いなら利用
利用目的 どちらともいえない 無回答 票数
用する しない

通勤・通学 42.70% 31.20% 24.60% 1.50% 1,116 票

その他 41.10% 25.70% 29.30% 3.80% 1,408 票

(4) 「女性専用車両」が導入された場合の利用意向(女性のみ回答、サンプル数 2,535 票)


a.利用意向
性別 必ず利用する 時々利用する あまり利用しない 全く利用しない わからない 無回答

女性 23.40% 47.60% 14.40% 3.00% 10.40% 1.10%

b.通勤・通学とその他の別(女性のみ回答)
利用目的 必ず利用する 時々利用する あまり利用しない 全く利用しない わからない 無回答

通勤・通学 22.50% 50.20% 13.90% 2.30% 10.10% 1.00%

107
その他 24.20% 45.50% 15.00% 3.50% 10.70% 1.20%

c.年代別
年代別 必ず利用する 時々利用する あまり利用しない 全く利用しない わからない 無回答

0∼39 歳 23.90% 54.30% 11.50% 2.50% 7.00% 0.70%

40∼59 歳 22.70% 46.40% 13.90% 2.80% 13.10% 1.00%

60 歳∼ 23.90% 39.70% 19.60% 3.80% 11.10% 1.90%

(5) 導入の望ましい時間帯((4)で利用すると回答した女性のみ回答、複数回答可、サンプ
ル数 1,801 票)
朝のラッシュ時 夕方の帰宅ラッシュ時 終電前の深夜時間帯 どれともいえない

割合 59% 44% 63% 5%

票数 1.060 票 784 票 1,126 票 93 票

108
2.〈資料Ⅱ〉国土交通省 2003「女性専用車両 路線拡大モデル調査 報告書」
2.1.〈資料Ⅱ〉の概要
(1) 調査者:国土交通省
(2) 報告書作成年月:2003(平成 15)年3月
(3) 調査目的:「女性の視点から見た交通サービスに関するアンケート調査」から、「痴漢
等迷惑行為対策として、女性専用車両の導入」について、
「社会のニーズが
高いことが判明した」。鉄道会社も独自調査により同様の結果を得ていたが、
利用客からのクレームなどの懸念から「導入が困難な状況」にあった。そ
のような背景を踏まえて、「男女共同参画を目指す日本社会」においては、
「日々の通勤通学等の面においても女性が安全、快適に社会活動に参加す
るための環境づくりが必要」であるとの考えから、
「女性専用車両の導入の
効果や導入にあたっての具体的課題及びその解決方法等について調査検
討」することを目的としている。
(4) 調査要領:調査実施のためにモデルとなる鉄道会社を募集
阪急電鉄(株)、京阪電気鉄道(株)が応募
採用理由(両社共に、試験導入前からアンケートなどにより設置ニーズを
把握し、導入に向けた対策を講じており、導入の際の混乱を避けるための案
内体制や告知方法の検討段階に入っていた)
試験導入期間…2002(平成 14)年 10 月1日から2ヶ月
2.2.アンケートの概要
(1) 阪急電鉄(株)
①調査対象者:阪急利用者
②調査方法:駅員による手渡配布、回収箱及び駅員による回収、郵送回収
アンケート回答者の中から、抽選で 10 名にラガールカード(1000 円分)
(Q15 より詳しいインタビューに応じる方、および抽選に応募される方は、連絡先記入)
③調査配布回収日時
・配布:2002 年 10 月 24 日(木)朝ラッシュ時及び 10 月 25 日(金)昼間時間帯(午前
10 時∼正午)
女性専用車両の停車駅(梅田、十三、高槻市)及び車内
・回収:2002 年 10 月 31 日(木)回収分まで
④有効回答:配布総数 2,000 枚のうち、有効回答 627 件
(2) 京阪電気鉄道(株)
①調査対象者:京阪利用者
②調査方法:駅員による手渡配布、回収箱及び駅員による回収
抽選で「おけいはんスルッと KANASAIK カード」
(希望の方、および Q10 インタビューに応じる方は、連絡先記入)

109
③調査配布回収日時
・配布:2002 年 10 月 21 日(月)及び 10 月 24 日(木)朝ラッシュ時、京阪各駅
・回収:2002 年 10 月 31 日(木)回収分まで
④有効回答:配布総数 10,000 枚のうち、有効回答 1,035 枚

2.3.アンケート項目集計結果

(1) 阪急電鉄(株)
①基本属性
a.性別
性別 人数 割合

男性 208 33.20%

女性 419 66.80%

計 627 100%

b.年齢
性別 20 歳未満 20 代 30 代 40 代 50 代 60 代 70 歳代 未回答

男性 10.10% 14.90% 12.00% 14.90% 26.00% 11.50% 10.60% O%

女性 8.10% 33.90% 22.90% 12.20% 14.30% 4.80% 2.40% 1.40%

c.職業
会社員 生徒 パート
性別 専業主婦 自営業 無職 その他 未回答
公務員 学生 アルバイト

男性 63.00% 15.90% 0% 7.70% 6.70% 2.40% 4.30% 0%

女性 45.60% 19.30% 13.10% 3.30% 3.10% 11.50% 2.90% 1.20%

d.電車の利用頻度
性別 週5日以上 週3,4日 週1,2日 不定期 未回答

男性 65.40% 15.90% 6.70% 7.20% 4.80%

女性 61.30% 11.20% 10.70% 13.10% 3.60%

e.最寄駅
路線名 男性 女性 合計

阪急京都線 169 302 471

阪急宝塚線 11 33 44

阪急神戸線 10 30 40

阪急千里線 5 8 13

阪急嵐山線 0 7 7

110
阪急今津線 0 7 7

阪急伊丹線 1 2 3

阪急箕面線 1 2 3

阪急神戸高速線 0 1 1

阪急甲陽線 0 1 1

その他 8 23 31

無回答 3 3 6

合計 208 419 627

f.よく利用する区間(発駅)
路線名 男性 女性 合計

阪急京都本線 172 312 484

阪急宝塚本線 11 29 40

阪急神戸本線 9 27 36

阪急千里線 4 7 11

阪急嵐山線 0 6 6

阪急今津線 0 6 6

阪急伊丹線 1 2 3

阪急箕面線 1 2 3

阪急神戸高速線 0 1 1

阪急甲陽線 0 1 1

その他 5 23 28

無回答 5 3 8

合計 208 419 627

g.よく利用する区間(着駅)
路線名 男性 女性 合計

阪急京都本線 175 370 545

阪急神戸本線 7 10 17

阪急宝塚本線 5 8 13

阪急千里線 2 7 9

阪急今津線 2 6 8

阪急伊丹線 0 1 1

その他 11 14 25

無回答 6 3 9

111
合計 208 419 627

②アンケート内容
a.賛否
性別 賛成 わからない 反対 票数

男性 54.30% 8.20% 37.50% 208 票

女性 87.10% 7.60% 5.30% 419 票

・「反対/わからない」の理由(複数回答)
男女差別に 一般車両が混 迷惑行為の根本的解 女性が一般車両を使 便利な車両に
性別 その他
なる 雑する 決にならない いづらくなる 乗れなくなる

男性 24 票 23 票 16 票 2票 10 票 6票

女性 11 票 3票 8票 10 票 1票 0票

b.導入すべき時間帯(2つまで回答可)
性別 朝ラッシュ 夕ラッシュ 深夜 終日 昼間 わからない 票数

男性 42.60% 27.10% 12.80% 10.90% 3.50% 3.10% 258 票

女性 38.40% 24.70% 12.80% 21.00% 2.50% 0.60% 643 票

c.女性専用車両の位置は適当か
性別 はい いいえ 未回答 票数

男性 58.70% 38.90% 2.40% 208 票

女性 78.30% 17.90% 3.80% 419 票

・位置が不適当な理由(複数回答)
階段・改札等に近く、男性の誤乗 階段・改札等に近く、混雑す 階段・改札等が遠く、急いで
性別 その他
車が多いから るから いる時に乗りづらいから

男性 19 票 28 票 12 票 28 票

女性 35 票 14 票 21 票 18 票

・位置が不適当と考える人にとっての適当な位置(複数回答)
梅田方面行き
性別 1両目 2両目 3両目 4両目 5両目 6両目 7両目 8両目

男性 25 票 3票 4票 3票 1票 2票 5票 41 票

女性 22 票 14 票 12 票 5票 3票 5票 6票 19 票

河原町方面行き
性別 1両目 2両目 3両目 4両目 5両目 6両目 7両目 8両目

男性 29 票 3票 3票 4票 0票 2票 5票 34 票

女性 17 票 6票 10 票 8票 1票 8票 14 票 19 票

112
d.女性車導入により一般車両の混雑が増加したか
性別 思わない 思う(好ましくない) 思う(やむを得ない) わからない 未回答

男性 35.60% 25.50% 20.20% 17.80% 1.00%

女性 51.60% 4.30% 15.00% 28.60% 0.50%

e.どの告知で女性車両に関する具体的な内容を知ったか(二つまで回答可)
鉄道事
駅構内 テレビ
新聞報 駅ポス 駅係員 駅チラ 知人友 業者広
性別 社内放 ラジオ その他 未回答
道 ター の誘導 シ 人 報誌
送 報道
HP

男性 140 票 22 票 41 票 28 票 22 票 5票 3票 2票 6票 147 票

女性 258 票 105 票 75 票 72 票 38 票 20 票 20 票 2票 7票 228 票

f.初めて女性専用車両を設定した列車に乗車した時の駅
性別 高槻市 梅田 河原町 十三 茨木市 烏丸 桂 大宮 長岡天神 未回答

男性 67 票 54 票 25 票 13 票 5票 17 票 4票 7票 4票 12 票

女性 78 票 82 票 50 票 49 票 42 票 28 票 35 票 25 票 16 票 14 票

g. 初めて女性専用車両を設定した列車に乗車した時の行き先
性別 梅田方面行き 河原町方面行き 未回答

男性 95 票 101 票 12 票

女性 206 票 197 票 16 票

h. 初めて女性専用車両を設定した列車に乗車した時間帯
性別 朝ラッシュ 昼間 夕ラッシュ 深夜 未回答 票数

男性 70.70% 16.80% 4.30% 1.00% 7.20% 208 票

女性 52.00% 34.60% 8.80% 0.20% 4.30% 419 票

i.女性専用車両設置列車に乗車した時の利用位置
性別 女性専用車両より河原町 女性車両より梅田方 女性専用車両(5 両目) 未回答

男性 45.70% 44.20% 2.40% 7.70%

女性 68.30% 15.30% 11.50% 5.00%

j.女性専用車両を告知する表示内容についてどのように感じたか
情報量が少なす 色やデザイン 情報量が多す 色やデザイン
わかりやす
性別 ぎて内容がわか が派手で見づ ぎて内容がわ が地味で見づ その他 未回答
くてよい
りづらい らい かりづらい らい

男性 60.60% 17.30% 9.10% 2.40% 1.90% 7.70% 1.00%

113
女性 56.60% 19.10% 14.10% 1.70% 0.20% 7.40% 1.00%

k.女性専用車両を告知している表示場所・添付枚数などについてどうかんじたか
適切な位置に程よ 表示場所がわか 表示の貼付枚数が少なく 表示を貼付け
性別 その他 未回答
く表示されている りづらい て分かりづらい すぎでくどい

男性 55.30% 18.30% 14.90% 5.30% 4.80% 1.40%

女性 47.50% 22.40% 22.00% 1.00% 3.80% 3.30%

l.導入当初の係員の配置は適切であったか
適切に配置され特に 人数が少なく 始めから配置する 多すぎるので減
性別 わからない 未回答
混乱はなかった 混雑していた 必要はない らしてもよい

男性 51.00% 27.90% 7.20% 6.30% 5.80% 1.90%

女性 58.50% 24.60% 9.50% 1.00% 2.10% 4.30%

m.女性専用車両の利用状況(女性のみ対象)
専用車両があれ 一定の時間帯だけ、昼だ ほとんど利
性別 ときどき その他 未回答 票数
ばいつも け、夜だけなど 用しない

女性 42.50% 19.10% 16.50% 11.50% 4.30% 6.20% 419 票

n.女性専用車両の利用時間帯(女性のみ対象;複数回答)
性別 ∼9:30 9:30∼17:00 17:00∼21:00 21:00∼

女性 62 16 7 6

o.女性専用車両を一定の時間帯に利用する理由
性別 通勤・通学 その他

女性 61 13

p.イベント時の一時取りやめ
性別 やむを得ない イベントなどの列車が込み合う時こそ実施希望 未回答

男性 77.90% 19.70% 2.40%

女性 67.30% 31.70% 1.00%

(2) 京阪電気鉄道(株)
①基本属性
a.性別
性別 人数 割合

男性 468 44.96%

女性 567 54.47%

未回答 6 0.58%

114
計 1.041 100.01%
b.年齢
性別 20 歳未満 20 代 30 代 40 代 50 代 60 代 70 代以上 未回答

男性 2.10% 9.20% 14.70% 21.80% 35.90% 14.30% 1.70% 0.20%

女性 10.10% 36.50% 25.00% 14.30% 10.80% 2.60% 0.40% 0.40%

c.職業
パート
会社員 生徒
性別 専業主婦 自営業 無職 アルバイ その他 未回答
公務員 学生

男性 87.40% 4.70% 0% 1.50% 0.60% 1.10% 3.80% 0.90%

女性 75.00% 15.00% 0.90% 0.40% 0% 6.20% 1.80% 0.90%

d.電車の利用頻度
性別 週5日以上 週3∼4日 週1回 不定期 未回答

男性 84.40% 7.30% 1.30% 1.90% 5.10%

女性 88.40% 3.20% 0.90% 2.60% 4.90%

e.最寄駅

最寄駅 男性 女性 未回答 合計

出町柳 109 107 2 218

枚方市 72 127 1 200

丹波橋 55 48 1 104

四条 26 37 63

三条 28 28 1 57

牧野 12 24 36

六地蔵 11 15 26

樟葉 8 16 24

中書島 9 14 23

御殿山 10 10 20

その他 76 85 1 162

未回答 13 9 22

合計 468 567 6 1.041

f.よく利用する区間(発駅)
路線名 男性 女性 合計

阪急京都本線 172 312 484

115
阪急宝塚本線 11 29 40

阪急神戸本線 9 27 36

阪急千里線 4 7 11

阪急嵐山線 0 6 6

阪急今津線 0 6 6

阪急伊丹線 1 2 3

阪急箕面線 1 2 3

阪急神戸高速線 0 1 1

阪急甲陽線 0 1 1

その他 5 23 28

無回答 5 3 8

合計 208 419 627

g.よく利用する区間(着駅)

路線名 男性 女性 合計

阪急京都本線 175 370 545

阪急神戸本線 7 10 17

阪急宝塚本線 5 8 13

阪急千里線 2 7 9

阪急今津線 2 6 8

阪急伊丹線 0 1 1

その他 11 14 25

無回答 6 3 9

合計 208 419 627

②アンケート内容
a.賛否
性別 賛成 反対 わからない 未回答 票数

男性 63.90% 22.40% 12.60% 1.10% 468 票

女性 87.30% 4.10% 8.60% 0% 567 票

・「反対/わからない」の理由(複数回答)
一般車両が混雑 迷惑行為の根本的解 男女差別 便利な車両に 女性が一般車両を使
性別 その他
する 決にならない になる 乗れなくなる いづらくなる

男性 40 票 34 票 37 票 24 票 19 票 6票

116
女性 7票 10 票 5票 5票 5票 7票

b.導入すべき時間帯(2つまで回答可)
よくわからな
性別 朝・ラッシュ時 夕・ラッシュ時 深夜 終日 昼間 票数

男性 48.70% 25.00% 14.20% 8.50% 2.30% 1.30% 612 票

女性 50.80% 27.40% 13.00% 7.50% 1.10% 0.20% 942 票

c.女性専用車両の位置が適当かどうか
性別 はい いいえ 未回答

男性 66.50% 25.90% 7.70%

女性 67.50% 28.40% 4.10%

・位置が不適当な理由(複数回答)
階段・改札等から遠く、急いで 階段・改札等に近く混雑するか 階段・改札等に近く男性の
性別 その他
いる時に乗りづらい ら 誤乗車が多いから

男性 49 票 34 票 9票 35 票

女性 126 票 13 票 5票 21 票

・位置が不適当と考える人にとっての適当な位置(複数回答)
性別 1両目 2両目 3両目 4両目 5両目 6両目 7両目 8両目

男性 12 票 7票 8票 42 票 42 票 13 票 8票 7票

女性 21 票 14 票 21 票 50 票 60 票 23 票 13 票 11 票

d.女性車両導入により一般車両の混雑が増加したか
性別 思わない 思う(好ましくない) わからない 思う(やむを得ない) 未回答

男性 47.20% 18.40% 18.40% 14.50% 1.50%

女性 51.90% 4.90% 30.90% 9.50% 2.80%

e.どの告知で女性専用車両に関する具体的な内容を知ったか(複数回答可)
テレビ・
駅構内・ 駅ポスタ 当社広告 駅係員の 知人・友
性別 その他 駅チラシ 新聞報道 ラジオ報
車内放送 ー 誌・HP 誘導 人

男性 350 票 227 票 138 票 52 票 59 票 35 票 33 票 18 票 4票

女性 400 票 325 票 201 票 103 票 71 票 44 票 37 票 24 票 9票

f.初めて女性専用車両を設定した列車に乗車した時の駅
性別 枚方市 出町柳 中書島 丹波橋 三条 四条 七条 その他

男性 33 票 33 票 15 票 18 票 11 票 12 票 1票 10 票

117
女性 151 票 97 票 46 票 39 票 27 票 20 票 13 票 4票

g.女性専用車両の表示方法についてどう感じたか
情報量が少な 情報量が多すぎ 色やデザイン 色やデザイン
わかりやす
性別 くて内容が分 て内容が分かり が地味で見づ が派手で見づ その他 未回答
くてよい
かりづらい づらい らい らい

男性 52.80% 11.80% 3.40% 4.30% 1.30% 7.90% 18.60%

女性 72.50% 7.60% 1.40% 4.90% 0.40% 7.80% 5.50%

h.女性専用車両を告知している表示場所・添付枚数等についてどう感じたか
適切な場所にほどよ 表示場所が見 表示の貼付枚数が少なく 表示が貼付しす
性別 その他 未回答
く表示されている にくい てわかりづらい ぎてくどい

男性 47.60% 11.30% 9.80% 4.70% 5.80% 20.70%

女性 63.80% 9.20% 10.40% 3.00% 5.30% 8.30%

i.導入当初の係員の配置は適切であったか
多すぎるので 人数が少なすぎて混
適切に配置され特に よくわか はじめから配置
性別 減らしてもよ 乱していた(増やすべ 未回答
混乱はなかった らない する必要はない
い き)

男性 49.40% 25.60% 5.30% 3.20% 2.60% 13.90%

女性 68.30% 20.50% 3.40% 1.80% 0.70% 5.50%

j.女性専用車両の利用状況(女性のみ)
性別 専用車両があればいつも 利用しない ほとんど利用しない ときどき その他

女性 53.00% 17.50% 14.50% 12.20% 2.80%

k.イベント時の一時とりやめ
性別 やむを得ない イベントなどの列車が混み合うときこそ実施して欲しい 未回答

男性 60.70% 24.80% 14.50%

女性 55.90% 39.20% 4.90%

118
3.〈資料Ⅲ〉神戸市交通局 HP「女性専用車両に関するアンケート結果について」
3.1.〈資料Ⅲ〉の概要
(1)調査対象者:神戸市交通局地下鉄利用者
(2)調査方法:
1 ホームページ及び各駅にアンケート用紙を設置する方法での調査
・交通局ホームページにアンケート内容を掲載し、E メールにより送付
・西神・山手線及び海岸線の各駅にアンケート用紙を設置し、アンケート回収箱に
投函
2 地下鉄ご利用のお客様に直接アンケート用紙を配布する方法での調査
・主要駅などで地下鉄利用者に直接アンケート用紙を配布・回収
(3)調査日時:
1 2002(平成 14)年 12 月 16 日から 2003(平成 15)年3月 31 日
2 2003(平成 15)年2月 10 日、3月 20 日、5月 26 日、および海岸線利用者(5月中
実施)
(4)調査件数:
1 2,717 件(男性 1,782 件、女性 935 件)
2 1,761 件(男性 807 件、女性 954 件)

3.2.調査結果

1 ホームページ及び各駅にアンケート用紙を設置する方法での調査結果

①賛否
・男女別に見る比率
性別 賛成 どちらともいえない 反対

男性 11.10% 8.90% 80.00%

女性 55.70% 11.70% 32.60%

・調査件数全体における比率
賛成 どちらともいえない 反対

26.40% 9.90% 63.70%

・男女を同数とした場合の比率
賛成 どちらともいえない 反対

33.40% 10.30% 56.30%

119
②「賛成」と答えた者の賛成理由(複数回答)
痴漢などの迷惑行
安心して乗車でき 痴漢に間違われる
性別 為にあわなくてす その他 計
る 心配がなくなる

男性 45 件 29 件 108 件 29 件 211 件

21.30% 13.70% 51.20% 13.80% 100%

女性 376 件 167 件 15 件 36 件 596 件

63.30% 28.10% 2.50% 6.10% 100%

計 421 件 196 件 123 件 65 件 805 件

52.30% 24.30% 15.30% 8.10% 100%

③「反対」と答えた者の反対理由(複数回答)
乗り換えに
迷惑行為の 女性が他の
他の車両が 男女差別に 便利な車両
性別 根本的解決 車両を使い その他 計
混雑する なる に乗れなく
にならない づらくなる
なる

男性 663 件 443 件 287 件 180 件 32 件 174 件 1,779 件

37.30% 24.90% 16.10% 10.10% 1.80% 9.80% 100%

女性 67 件 82 件 106 件 42 件 84 件 18 件 399 件

16.80% 20.60% 26.60% 10.50% 21.10% 4.40% 100%

計 730 件 525 件 393 件 222 件 116 件 192 件 2,178 件

33.50% 24.10% 18.00% 10.20% 5.30% 8.90% 100%

2 地下鉄ご利用のお客様に直接アンケート用紙を配布する方法での調査結果
①賛否
性別 賛成 どちらともいえない 反対

男性 28.10% 26.50% 45.40%

女性 73.80% 18.80% 7.40%

・調査件数全体における比率
賛成 どちらともいえない 反対

52.90% 22.30% 24.80%

・男女を同数とした場合の比率
賛成 どちらともいえない 反対

50.90% 22.70% 26.40%

120
②「賛成」と答えた者の賛成理由(複数回答)
弛緩などの迷惑行
安心して乗車でき 痴漢に間違われる
性別 為にあわなくてす その他 計
る 心配がなくなる

男性 64 件 31 件 118 件 33 件 246 件

26.00% 12.60% 48.00% 13.40% 100%

女性 546 件 161 件 7件 57 件 771 件

70.80% 20.90% 0.90% 7.40% 100%

計 610 件 192 件 125 件 90 件 1,017 件

60.00% 18.90% 12.30% 8.80% 100%

③「反対」と答えた者の反対理由(複数回数)
乗り換えに
迷惑行為の 女性が他の
他の車両が 男女差別に 便利な車両
性別 根本的解決 車両を使い その他 計
混雑する なる に乗れなく
にならない づらくなる
なる

男性 198 件 106 件 97 件 60 件 33 件 46 件 540 件

36.70% 19.60% 18.00% 11.10% 6.10% 8.50% 100%

女性 31 件 27 件 28 件 24 件 23 件 10 件 143 件

21.70% 18.90% 19.60% 16.80% 16.10% 6.90% 100%

計 229 件 133 件 125 件 84 件 56 件 56 件 683 件

33.50% 19.50% 18.30% 12.30% 8.20% 8.20% 100%

121
4.〈資料Ⅳ〉大阪市交通局 HP「女性専用車両に関するアンケート結果」

4.1.〈資料Ⅳ〉の概要
(1)調査対象者:大阪市交通局地下鉄利用者
(2)調査方法:
・交通局ホームページでアンケート実施
・地下鉄全駅におけるアンケート用紙の自然配布
(3)調査日時:2003(平成 15)年5月6日(火)から5月 31 日(土)
(4)調査件数:
男性 女性 性別不明 計

交通局ホームページ 418 名 369 名 17 名 804 名

駅配布アンケート用紙 872 名 1,844 名 17 名 2,733 名

計 1,290 名 2,213 名 34 名 3,537 名

4.2.主なアンケート項目の結果
(1)痴漢防止対策の一環としての効果の有無
性別 有効である 有効でない その他 計

男性 45% 36% 19% 100%

女性 76% 12% 12% 100%

全体 64% 21% 15% 100%

・その理由
女性が安心して乗車 痴漢対策の取り組みが目にみえ
性別 痴漢に間違われずに済む その他
できる て、痴漢に対する警告になる

男性 40% 34% 22% 4%

女性 60% 9% 28% 3%

全体 54% 16% 27% 3%

(2)御堂筋線の女性専用車両について

他の車両が混雑す どの車両かわ 男性の乗車が目立 (女性が)他の車両に ホームが混雑する


特にない
るようになった かりにくい つ 乗りづらくなった ようになった

24% 20% 17% 9% 13% 17%

(3)他の時間帯への導入について
今のままで良 どちらともい 希望する(終 希望する(17 希望する(夕ラ 希望する(その
無回答
い えない 日) 時から 23 時) ッシュ) 他)

122
27% 19% 11% 7% 3% 22% 11%

(4)他路線における必要性について
必要でない 必要 どちらともいえない 無回答

32% 49% 16% 3%

(5)アンケート結果を踏まえた取り組み
谷町線の実施要望が 64%(女性 75%)あったことから、谷町線においてニーズがあると
推測され、また 2002(平成 14)年度の車内における痴漢届出件数が御堂筋線 64%、谷町線
16%であったことから、総合的に勘案し、谷町線における導入(平日初発から9時まで)
の準備を始めた(2007 年現在、実施)。
御堂筋線における他の時間帯の導入を検討し、条件を整備し、実施を目指すことにした
(2007 年現在、終日実施)。

123
5.その他の参考資料

5.1.〈資料Ⅴ〉総理府「男女共同参画社会に関する世論調査」1997
(1) 調査者:総理府広報室
(2) 報告書作成年月:1997(平成9)年9月
(3) 調査目的:この調査は、「女性の社会参画に関する国民の意識を調査し、今後の施策の
参考とする」ことを目的としている。
(4)調査項目:
①男女の社会活動や家庭生活への参画に関する意識
②結婚観・家庭観等に関する意識
③女性に対する暴力などへの対応に関する意識
④政策の企画や方針決定の家庭への女性の参画に関する意識
⑤男女共同参画の推進で行政に対する要望
(5)調査対象:
①母集団 全国 20 歳以上の者
②標本数 5,000 人
③抽出法 層化2段無作為抽出法
(6)調査時期:1997(平成9)年 9 月 11 日から9月 21 日
(7)調査方法:調査員による面接聴取
(8)回収結果:
①有効回収数(率) 3,574 人(71.5%)
②調査不能数(率) 1,426 人(28.5%)

124
5.2.〈資料Ⅵ〉総理府 2000「男女間における暴力に関する調査」
(1) 調査者:(総理府)内閣総理大臣官房男女共同参画室
(2) 報告書作成年月:2000(平成 12)年2月
(3) 調査目的:1997(平成9)年 6 月に、内閣総理大臣が男女共同参画審議会に対し「女
性に対する暴力に関し的確に対応するための基本方策について」を諮問した。その
答申として、1999(平成 11)年5月に、「女性に対する暴力のない社会を目指して」
が提出された。同答申は、女性に対する暴力を、
「重大な社会的・構造的問題であり、
男女共同参画社会の実現を阻害するもの」と位置づけ、
「女性に対する暴力の実態や、
それに対する人々の意識を把握するための調査の実施」を提言した。この調査は、
「女
性に対する暴力に関する国民の意識、被害の経験の態様、程度及び被害の潜在化の
程度、理由について」を把握すること、および「被害者が必要としている援助の在
り方を検討する」ための基礎資料を作成することを目的として、実施されたもので
ある。
(4)調査項目:
①夫婦間での暴行等について
②つきまとい行為について
③痴漢について
④性的行為の強要について
(5)調査対象:
①母集団 全国 20 歳以上の男女
②標本数 4,500 人
③抽出法 層化二段無作為抽出法
(6)調査時期:1999(平成 11)年 9 月から 10 月
(7)調査方法:郵送留置訪問回収法(対象者自身が回収用封筒に回答済みの調査票を密封し
たものを、調査員が回収。また、対象者が希望した場合には郵送回収)
(8)調査期間:社団法人 新情報センター
(9)回収結果:
①有効回収数(率) 3,405 人(75.7%)
(内訳) 女性 1,773 人、男性 1,632 人
②回収不能数(率) 1,095 人(24.3%)
(回収不能理由内訳)
転居 144 人、長期不在 60 人、一時不在 231 人、住所不明 22 人、
拒否 410 人、その他 228 人(死亡、白票回収、代理記入など)

(10)「痴漢について」の調査結果
①質問事項:

125
[女性の方にお聞きします。]
問 22 あなたはこれまでに、交通機関などの中や路上などで痴漢の被害に遭ったこ
とはありますか。

②調査結果:
2回以上あ まったくな
年齢別 件数 1回あった 無回答 計
った い

20 代 278 名 15.80% 43.90% 36.70% 3.60% 100%

30 代 310 名 21.90% 46.80% 30.30% 1.00% 100%

40 代 372 名 19.60% 38.70% 35.80% 5.90% 100%

50 代 374 名 16.60% 28.90% 48.40% 6.10% 100%

60 歳以上 439 名 12.30% 9.80% 71.10% 6.80% 100%

総数 1773 名 17.00% 31.70% 46.40% 5.00% 100%

126
5.3.〈資料Ⅶ〉内閣府 2000「男女共同参画社会に関する世論調査」
(1) 調査者:内閣府大臣官房政府広報室
(2) 調査目的:この調査は、「男女共同参画社会に関する国民の意識を調査し、今後の施策
の参考とする」ことを目的としている。
(3)調査項目:
①男女の地位に関する意識
②女性の社会活動への参画に関する意識
③家庭観等に関する意識
⑤男女共同参画社会の形成に関する意識
(5)調査対象:
①母集団 全国 20 歳以上の者
②標本数 5,000 人
③抽出法 層化2段無作為抽出法
(6)調査時期:2000(平成 12)年1月 27 日から2月6日
(7)調査方法:調査員による面接聴取
(8)回収結果:
①有効回収数(率) 3,378 人(67.6%)
②調査不能数(率) 1,622 人(32.4%)
(回収不能理由内訳)
転居 123 人、長期不在 112 人、一時不在 631 人、住所不明 30 人、
拒否 662 人、その他(病気など)64 人
③性・年齢別回収結果
性別 年齢 標本数 回収数 回収率

男性 20 29 歳 420 198 47.10%

30 39 歳 403 219 54.30%

40 49 歳 432 245 56.70%

50 59 歳 533 328 61.50%

60 69 歳 419 324 77.30%

70 歳以上 254 196 77.20%

計 2,461 1,510 61.40%

女性 20 29 歳 399 208 52.10%

30 39 歳 437 327 74.80%

40 49 歳 449 331 73.70%

50 59 歳 554 438 79.10%

60 69 歳 391 319 81.60%

127
70 歳以上 309 245 79.30%

計 2,539 1,868 73.60%

合計 5,000 3,378 67.60%

128
5.4.その他の「男女共同参画」に関する世論調査
内閣府政府広報室 HP「男女共同参画に関する世論調査」

以下、2007 年 12 月現在に内閣府広報室から公表されている、男女共同参画に関する世論調
査の表題・発表年月日のみを報告する(下線:参考資料としたもの)。

1997.3.20 発表「男女共同参画社会に関する世論調査(平成9年9月)報告概要」
1998.10.12 発表「男女共同参画社会関する有識者アンケート調査(平成 10 年8月∼9月)
報告概要」
2000.5.29 発表「男女共同参画社会に関する世論調査(平成 12 年2月)」
2000.12.4 発表「男女共同参画社会に関する世論調査−男性のライフスタイルを中心に−
(平成 12 年9月)」
2001.8.6 発表「選択的夫婦別氏制度に関する世論調査(平成 13 年5月)」
2002.4.25 発表「配偶者等からの暴力に関する有識者アンケート(平成 14 年2月)」
2002.9.7 発表「男女共同参画社会に関する世論調査(平成 14 年7月)」
2005.2.5 発表「男女共同参画社会に関する世論調査(平成 16 年 11 月)」
2007.9.29 発表「男女共同参画社会に関する世論調査(平成 19 年8月)」
以上

129
〈資料 7〉女性専用車両導入に関する年表
カテゴリー
1.事件・事故 2.国政 3.国際的動向 4.政党・民間などの運動 5.事業者

1975 メキシコシティ第1回世界女性会議の開催、会議で世界行動計画の採択
1979 国連女性差別撤廃条約が総会決議
1980 コペンハーゲン第2回世界女性会議の開催、会議で女性差別撤廃条約署名式の執行
1985 ナイロビ第 3 回世界女性会議「婦人の地位向上のためのナイロビ将来戦略」採択、
「国連婦人の 10 年」最終年
1987 11/竹下内閣 87.11∼89.06
1988 11/御堂筋線事件:大阪地下鉄御堂筋線で、女性に痴漢行為をしていた2人組に注
意した別の女性が、連れまわされ強かんの被害にあう
1989 6/宇野内閣 89.06∼89.08 8/第一次海部内閣 89.08∼90.02
1990 2/第二次海部改造内閣 90.02∼91.11
1991 5/婦人問題企画推進本部:「西暦 2000 年に向けての新国内行動計画(第一次決定)」
決定 11/宮澤内閣 91.11∼93.08
1992 12/宮澤内閣、婦人問題担当大臣(河野洋平官房長官)
1993 6/ウイーン世界人権会議「ウイーン宣言及び行動計画」、公的及び私的な生活にお
ける女性に対する暴力の撤廃 8/細川内閣(日本新党代表、非自民・非共産 8
党派連立)93.08∼94.04 女性問題担当(官房長官) 第 48 回国連総会「女性に
対する暴力の撤廃に関する宣言」採択 11/「性暴力を許さない女の会」「痴漢
のいない電車に乗りたい!ストップ痴漢アンケート」調査(93.11∼94.02)
1994 4/羽田内閣(新生党党首、非自民・非共産・非社会連立)94.04∼94.06 6/村山
内閣 改造内閣(日本社会党委員長、自民・社会・さきがけ連立)94.06∼96.01 6
/総理府に「男女共同参画室」設置、「男女共同参画審議会」設置(政令)
1995 1/阪神大震災 1/第一次橋本内閣(自由民主党総裁、自民・社民・さきがけ連
立)96.01∼96.11 3/地下鉄サリン事件 6/ILO(国際労働機関)「家族的責
任を有する男女労働者の機会及び待遇の均等に関する条約」(第 156 号)批准 9
/北京第 4 回世界女性会議「北京宣言」「行動綱領」採択、96 年末までに自国の行
動計画を開発し終えること
1996 3/女性白書「女性の現状と施策 新国内行動に関する報告書」 6/優生保護法
の改正(母体保護法)[平 8.9 施行] 9/「男女共同参画推進連携会議(えがり
てネットワーク)」発足 11/第 2 次橋本内閣(自民単独)96.11∼98.07、女性問
題担当(総務長官) 12/男女共同参画推進本部「男女共同参画 2000 年プラン-
男女共同参画社会の形成の促進に関する平成 12 年(西暦 2000 年度)までの国内行
動計画-」決定

130
1997 3/男女共同参画審議会設置法(平成 9 年法律第 7 号) 6/男女共同参画審議会
開催(会長・岩男壽美子) 6/男女雇用機会均等法の改正[平 11.4 施行]、労
働基準法の改正[平 11.4 施行]、育児・介護休業法の改正[平 11.4 施行] 7/
「男女共同参画の現状と施策−男女共同参画 2000 年プランに関する報告書(第1
回)−」第1部「第3章 女性の人権1女性に対する暴力」第2部「第 3 章 女性
の人権が推進・擁護される社会の形成1女性に対するあらゆる暴力の根絶 」、以下
毎年同様の報告書 9/第 2 次橋本改造内閣、男女共同参画担当(内閣官房長官)
9/内閣府「男女共同参画社会に関する世論調査」 10/西武池袋線事件:N氏は
西武池袋線の電車で突然女性に腕を摑まれ、迷惑防止条例違反で起訴される(いわ
ゆる「長崎事件」)。東京簡易裁判所(以下簡裁)と東京高等裁判所(以下高裁)
で有罪判決を受け、最高裁に上告するが、2002 年 9 月、棄却される。
1998 4/第 42 回国連女性の地位委員会 7/小渕内閣 改造内閣1 改造内閣2(自
民・自由・公明連立)98.07∼00.04 8/「男女共同参画社会に関する有識者アン
ケート」'98.08∼09
1999 5/「児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律」成
立[平 11.11 施行] 6/「男女共同参画社会基本法」成立[平 11.6 施行] 9
/内閣府「男女間における暴力に関する調査」'99.09∼10 12/警視庁「女性・子
どもを守る施策実施要綱」制定 1990 年−1999 年 全国の簡易裁判所に「私は痴漢
をしていない」と否認して裁判を闘った人が 203 名。結果は全員が有罪。 (痴漢
えん罪被害者救済ネットワーク)
2000 2/内閣府「男女共同参画社会に関する世論調査」 5/「ストーカー行為等の規制
等に関する法律」、「児童虐待の防止等に関する法律」成立[平 12.11 施行] 6
/ニューヨークで国連特別総会「女性 2000 年会議」開催 7/第二次森内閣 改造
内閣再編前 改造内閣再編後 00.07∼01.04 12/「男女共同参画基本計画」策定
12/京王電鉄京王線、平日夜間新宿駅発下り急行・通勤快速・快速、最後部車両、
試験導入 2000 年−2000 年 マスコミで痴漢えん罪報道が盛んになる。8件が無
罪判決を勝ち取る(うち、高裁での無罪が 4 件)。
2001 1/第 2 次森改造内閣、男女共同参画担当大臣(内閣官房長官)以後定着 3/京
王電鉄京王線、本格導入 4/第一次小泉内閣 改造内閣1 改造内閣2 01.04
∼03.11 4/「配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護に関する法律」成立[平
13.10 施行、一部平 14.4 施行] 7/JR 東日本埼京線、平日深夜限定、試験導入 11
/「女性に対する暴力をなくす運動」スタート
2002 1/国土交通省「女性の視点から見た交通サービスに関するアンケート調査」:首都
圏、報告書'02.03 9/名古屋市営地下鉄東山線、 平日始発から 9 時まで、試行導
入。03 年、本格実施。 10/国土交通省「女性専用車両 路線拡大モデル調査」:
阪急・京阪'02.10、報告書'03.03 10/阪急電鉄・京阪電鉄、大阪∼京都、試験導

131
入(2 ヶ月) 11/大阪地下鉄御堂筋線、時間限定導入 12/阪急電鉄(京都本線、
2 ドア車(6300 系)通勤特急・特急の 1 両、平日のみ終日)、京阪電鉄(朝ラッシ
ュ時、京都→大阪方面行特急最後部車両、その後、朝間の K 特急に変更、大阪→京
都方面列車の先頭車両に拡大)、大阪∼京都、本格導入 2001 年−2002 年 マス
コミの痴漢えん罪報道が下火になる。3 件の無罪判決が出る。
2003 2/阪神電鉄、試験導入 3/文部科学省 女性の多様なキャリアを支援するため
の懇談会「多様なキャリアが社会を変える」第 1 次報告(女性研究者への支援) 3
/横浜市営地下鉄、試験導入、本格導入に移行 5/JR 西日本、試験導入、7 月 1
日から平日始発∼9 時の全列車、本格導入 6/男女共同参画推進本部「女性のチ
ャレンジ支援策の推進について」決定 7/女子差別撤廃委員会 女子差別撤廃条約
実施状況第 4 回・5 回報告審議 8/阪神電鉄、本格導入 10/文部科学省 女
性の多様なキャリアを支援するための懇談会「多様なキャリアが社会を変える」第
1 次報告(女性のキャリアと生涯学習の関わりから) 11/第二次小泉内閣 改
造内閣(自民・公明連立)03.11∼05.09 11/JR 西日本、本格導入 12/大阪地
下鉄谷町線、時間限定導入
2004 4/「児童虐待の防止等に関する法律」の改正[平 16.10 施行] 6/「配偶者から
の暴力の防止及び被害者の保護に関する法律」の改正[平 16.12 施行] 9/大阪
地下鉄御堂筋線、終日導入 12/育児・介護休業法の改正[平 17.4 施行]、児童
福祉法の改正、施行 12/警視庁、首都圏の鉄道事業者に、女性専用車両導入に
関する要望書提出
2005 2/首都圏での導入要請に関する、公明党の署名運動 2-3/ニューヨーク国連本部
にて、国連「北京+10」世界閣僚級会合(第 49 回国連婦人の地位委員会)を開催 3
/公明党青年局、北側国交相に導入要請 4/JR 埼京線、平日朝ラッシュ時間帯、
追加設定、東京臨海高速鉄道りんかい線、JR 埼京線からの直通列車に導入 5/
京王線、都営新宿線、西武池袋線・新宿線、 東京メトロ半蔵門線、東急田園都市線、
東武伊勢崎線・日光線・東上線、小田急小田原線・江ノ島線、相鉄本線・いずみ野
線、朝通勤時間帯に導入 6/東武野田線、導入 7/東急東横線(首都圏初、
終日導入)、横浜高速鉄道みなとみらい線、導入 9/第三次小泉内閣 改造内閣
05.09∼06.09 9/首都圏新都市鉄道つくばエクスプレス線、JR 中央快速線、導入
10/東京メトロ有楽町線並びに東武東上線と西武池袋線からの直通列車、導入
12/相鉄本線・いずみ野線、夜間実施時間帯 22 時から 18 時に繰り上げ導入
2006 4/京阪電鉄、朝の一部特急の設定再開 8/サンダーバード事件、JR 西日本北陸
線特急サンダーバード内で女性への強かん・傷害事件 9/安部内閣 改造内閣
06.09∼07.09
2007 9/福田内閣 07.09∼ 10/JR 西日本、特急(サンダーバード、オーシャンアロー、
雷鳥、スーパーくろしお、くろしお)、女性専用席導入

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〈資料 8〉女性専用車両に関するアンケート
2007 年 12 月実施

本アンケートは、女性専用車両に関する報告書を作成するために、本学大学院人間社会
学研究科の大学院生が皆様の意識を調査することを目的にして実施しているものです。ア
ンケートには無記名でお答えください。データは匿名で処理され、上記目的以外で使用さ
れることはありません。調査報告書は完成後、本学ホームページで公開の予定です。ぜひ
ご協力頂きますようお願いします。

性別 年齢 学年 学部
( )
女・男 ( )回生 生命 ・ 工 ・ 理 ・ 経 ・ 人社 ・ 看護・総リ

あてはまるものに○をつけてください。
1 基本質問

1.1 女性専用車両という電車の車両があることをご存じですか
ア.はい イ.いいえ

1.2 これまでに一年以上継続的に電車通学などをしたことがありますか(複数回答可)
通学先など 小学校 中学校 高校 大学 その他(予備校,バイト,通勤など)

2 現在の電車の利用について

2.1 現在よく利用している路線はどこですか(複数回答可)
ア.地下鉄御堂筋線 イ.その他の地下鉄線( ) ウ.南
海高野線 エ.南海本線 オ.泉北高速鉄道 カ.JR 阪和線
キ.JR 環状線 ク.その他の JR 線( ) ケ.
京阪本線 コ.阪急京都線 サ.その他の阪急線
( ) シ.近鉄奈良線 ス.近鉄南大阪線 セ.
阪神電車 ソ.その他( )

2.2 その路線を利用する目的は何ですか
ア.通学 イ.バイト ウ.お出かけ エ.その他
( )

133
2.3 その頻度はどれくらいですか
ア.ほぼ毎日 イ.週に数回 ウ.月に数回
エ.その他( )

2.4 その路線の普段の利用時間帯はいつですか(複数回答可)
7 8 9 16 17 18 19 20 21 22 23 時台
時間 始発~ 10~12 13~15
時 時 時 時 時 時 時 時 時 時 ~
帯 6 時台 時台 時台
台 台 台 台 台 台 台 台 台 台 終電

3 女性専用車両に関する質問(現在よく利用している路線についてのみお答えください)

3.1 「2.1」で選んだ路線に女性専用車両はありますか
ア.全路線にある イ.一部の路線である ウ.ない エ.知らな

女性の方(「3.5」にお進みください)
男性の方(そのままお進みください)

3.2 女性専用車のメリットは何だと思いますか(複数回答可)
ア.痴漢対策になる イ.女性が安心して利用できる
ウ.痴漢に間違われる不安が減る エ.メリットはない
オ.その他( )

3.3 女性専用車のデメリットは何だと思いますか(複数回答可)
ア.痴漢対策にはならない イ.ほかの車両が混む ウ.男性に対する差
別である エ.デメリットはない オ.間違って乗りかねない
カ . 女 性 専 用 車 内 の マ ナ ー が 悪 く な る キ . そ の 他
( )

3.4 女性専用車両は必要だと思いますか
ア.はい イ.いいえ

男性の方(「4」にお進みください)

134
3.5 あなたにとって女性専用車両利用のメリットは何ですか(複数回答可)
ア.痴漢の心配がない イ.男性がいない方がよい ウ.席が空いている
エ.メリットはない オ.その他( )

3.6 あなたにとって女性専用車両利用のデメリットは何ですか(複数回答可)
ア.乗り換えの都合 イ.混んでいる ウ.乗るのが恥ずかしい
エ.女性として特別視されるのが嫌だ オ.時間帯が限定されている
カ.デメリットはない キ.その他( )

3.7 女性専用車両の利用頻度はどのくらいですか
ア.ほとんど毎回 イ.ときどき ウ.ほとんど乗らない エ.乗ったこ
とがない
ウ.その他( )

3.7.1(ア.イ.を選んだ方にお聞きします)女性専用車両の乗客のマナーを他の
一般車両と比較してどのように感じますか
ア.よい イ.悪い ウ.特に変わらない
エ.その他( )

3.8 女性専用車両に対して要望する点はありますか(複数回答可)
ア.女性専用車両がないので設定してほしい イ.車両数を増やしてほしい
ウ.車両位置を変えてほしい(どのように )
エ.運行時間帯を変えてほしい(どのように )
オ.特にない カ.その他( )

4 電車内における痴漢に関する質問

女性・男性の両方(「4.1」∼「4.7」にお答え下さい)

4.1 今までに電車内で痴漢を目撃したことがありますか
ア.1∼2 回 イ.10 回未満 ウ.10 回以上 エ.見たことがない

4.1.1 そのなかで痴漢がつかまったケースは何回ありますか
ア.1∼2 回 イ.10 回未満 ウ.10 回以上 エ.ない

4.2(目撃したことのある方にお尋ねします)そのときどう対応しましたか(複数回答

135
可)
ア.捕まえた イ.注意した ウ.割り込むなどして防いだ エ.駅員に
知らせた オ.対応する間がなかった カ.なにもしなかった
キ.その他( )

4.3 今までに電車内で痴漢の被害にあったことがありますか、またその回数はどのく
らいですか
ア.1∼2 回 イ.10 回未満 ウ.10 回以上 エ.痴漢にあったこと
はない

4.3.1 そのなかで痴漢がつかまったケースは何回ありますか
ア.1∼2 回 イ.10 回未満 ウ.10 回以上 エ.ない

4.4(痴漢被害にあった方にお尋ねします)そのときどう対応しましたか(複数回答可)
ア.場所を移動した イ.肘で押したり、足で踏むなどして抵抗した
ウ.カバンなどで防いだ エ.自分で捕まえた オ.周りの人に知らせ

カ.携帯で誰かに連絡した キ.駅員に知らせた ク.対応する間がな
か っ た ケ . 我 慢 し た コ . そ の 他
( )

4.5 あなたの周りで痴漢の被害にあった人はいますか(複数回答可)
ア.家族・親戚 イ.友人・知人 ウ.恋人 エ.被害にあったというこ
とを
聞いたことがない オ.その他( )

4.6 女性専用車両以外の痴漢対策はどのようなものが必要だと思いますか(複数回答
可)
ア.根本的な混雑の解消 イ.車両監視カメラの設置 ウ.痴漢犯罪の厳
罰化
エ.駅ホームに駅員や警備員を常駐させる オ.痴漢を捕まえた人に対する報
償金の設定
カ.その他( )

4.7 痴漢行為に対する、あなたのイメージや感情はどのようなものですか(複数回答
可)

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ア.迷惑、嫌がらせ イ.出来心、ささいなこと ウ.恐怖、不安 エ.怒り、
軽蔑 オ.興味、関心 カ.性暴力、性犯罪 キ.性倒錯、変態 ク.不快、
嫌悪
ケ.ポルノ コ.卑劣、卑怯 サ.その他( )

男性の方(「5」にお進みください)
女性の方(そのままお進みください)

4.8 電車を利用するとき、痴漢に対する不安はどれくらいありますか(複数回答可)
ア.いつも不安 イ.女性専用車両ではない車両に乗った時は不安
ウ.混んでいるときは不安 エ.空いているときは不安 オ.夜遅いときは
不安
カ.一人のときは不安 キ.周りが男性ばかりだと不安 ク.不安はない
ケ.その他( )

4.9 その不安を解消するためにしていることは何ですか(複数回答可)
ア.誰かと一緒に通学する イ.女性専用車両を利用する ウ.急行か
ら普通にするなど電車の種類を変更する エ.ドア付近には立たないなど危
険な場所を避ける オ.男性の近くに寄らない カ.服装に気をつける キ.
不審な人がいないか目を配る ク.カバンを胸の前で持つや腕を組むなどして
痴漢予防のための姿勢を整える
ケ.その他( )

5 その他、女性専用車両に関するご意見をご自由にお書き下さい

ありがとうございました。

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