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感染性胃腸炎

学習資料
2008 年度版

2008 年10⽉3⽇
勤医協中央病院
ICC (院内感染対策委員会)
2.日常の対応

感染性胃腸炎(疑い含む)の
アウトブレイク(集団感染)予防の徹底
感染性胃腸炎の病原体にはいろいろな種類があるが、特に冬に発生し、流行するものとして、ノロウイルスに
よる感染性胃腸炎がある。ノロウイルスは極めて感染力が強く、便や嘔吐物を不注意に取り扱ったり、排便後の
手指衛生を確実に行わなかったりすると急速に集団感染を引き起こす。
その対策として、特に感染経路の 1 つであるハイタッチ・サーフェス(ドアノブ、手すりなど不特定多数の人が
手を触れる表面)の消毒が重要になる。

日常の対応について(通年)
【スタンダードプリコーション、接触および飛沫感染予防策の徹底】
(これはノロウイルスなど特定の感染症の流行の有無にかかわらず常に注意すべき基本)
1.手指衛生の徹底
①スタンダードプリコーション
ⅰ.処置などの前後には手袋の有無に関わらず手指衛生を徹底する。
ⅱ.血液・体液など湿性生体物質に触れた後は手袋の有無に関わらず手指衛生を徹底する。

②腕時計、指輪外し
ⅰ.手首まで正しい手洗いをするために、勤務中は腕時計を外す。長袖白衣の場合は袖を1~2回折り、
手首を出す。
ⅱ.勤務中は指輪を外す(結婚指輪を外せない場合は、やむを得ない)。

③手洗いと手指消毒の適応
ⅰ.手指衛生の基本はアルコールベースの速乾性擦り込み式手指消毒剤(以下、手指消毒剤という)を使
用する。
ⅱ.目に見える汚れがある場合には液体石けんと流水による手洗いを行う。

④手指衛生の方法
A.手指消毒剤を使用する場合は、片手の手掌にメーカーの推奨する量、すなわちディスペンサーを最後
まで押して出る量(ウエルパス 3.0ml、エタプラス 3.5ml)を取り、手が乾くまで手と指にくまなく塗りながら
手を擦り合わせる。
B.液体石けんと流水で手を洗う場合は、まず水で手を濡らし、メーカーの推奨する量を手に取り、手と指
にくまなく塗りながら、しっかり最低15秒間は手を擦り合わせる。水で手をすすいで、ペーパータオル
(2枚が適当)で完全に手を乾燥させる。蛇口を閉める時は、使用済みのペーパータオルを使用する。
ハンドル式は肘で閉める。手荒れ防止のために、熱い湯の使用を避ける。

⑤スキンケア
手荒れ防止のためにハンドクリームなど積極的なスキンケアに努める。

2.嘔吐物や便の処理
プラスチック手袋、プラスチックエプロン、サージカルマスクを着用し、わずかな飛沫にも暴露されない。処
理に使った雑巾などは再利用せずに二重のビニール袋に入れ、口を縛り、一般ゴミとして廃棄する。処理中
の手でみだりに蛇口、ドアノブ、手すり、ゴミ箱のふたなどに触れてはならない。汚染個所は必ず「次亜塩
0.5%液ヨシダ」で消毒する。

3. 嘔吐、下痢症状のある患者様に対しては「手指衛生の徹底」について指導する。

4.トイレから出るときは必ず液体石けんと流水による手洗いをする。

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2.日常の対応
【ハイタッチ・サーフェスの消毒】
ハイタッチ・サーフェス(ドアノブ、手すり、電話の受話器など不特定多数の人が手を触れる表面)は、明ら
かな汚染がなくても毎日最低1回は消毒剤で清拭する。
時期 清掃職員が清掃する 清掃職員が入らない箇所(自分たちで清拭する)
箇所
4~9月 0.1%次亜塩素酸ナト 消毒用酒精綿(8cm×8cm)で清拭 パソコンなど機械関係は日
リウム(ブリーチ50倍 する。 常の清拭はせず、使用前後
希釈液)で清拭する。 にウエルパスによる手指消
10~3月 0.1%次亜塩素酸ナト 0.1%次亜塩素酸ナトリウム(ブリーチ5 毒をする。汚れが目立つよう
リウム(ブリーチ50倍 0倍希釈液)で清拭する。濃度が不安 なら電源を切って、OAクリー
希釈液)で清拭する。 定なので、48時間で液を交換する。 ナーなどで清拭する。

【嘔吐・下痢症の把握(サーベイランスの実施)】
1.患者様(外来および入院)および職員が感染性胃腸炎を疑う症状(噴出性嘔吐または水様性下痢など)を
呈していることに気がついた人はすみやかにセクション長に集中する。
2.連絡を受けたセクション長は、看護部門は師長室(内線 2220~2222)へ、看護以外の部門は医療安全室
(内線 2205)へ集中する。
1回目報告事項;氏名、発症日、症状(発熱、下痢、軟便、腹痛、嘔吐、嘔気)、受診の有無、職員は勤
務状況、患者は抗菌薬有無など。
2回目報告事項;1回目報告時の氏名、症状消失日、職員は勤務状況、患者は抗菌薬有無など。
セクション長は発症した職員に、症状消失後48時間まで出勤しないよう勤務制限する。
3.ICTにてアウトブレイク(集団発生)の有無を調査する。

【関連施設との事前調整、管理、その他】
1.アウトブレイク(集団発生)している施設から有症状の患者様を受け入れる場合は、事前に連絡をもらうよう、
日頃から下痢や嘔吐の情報をもらうなど、充分な調整をしておく。
2.問診で嘔吐などの症状があり、家族歴で感染性胃腸炎患者様と同居していた人を入院させる場合は、原
則として個室管理とする。個室が確保出来ない場合は、コホートする。
3.PCR 検査は日常では実施しない。臨床的・疫学的状況から迅速に感染予防策を実施する事が重要であ
る。
4.調理の衛生管理、加熱調理、調理従事者の健康管理を徹底する。

【日常の具体的対策】
看護部門を基準に作成した。他セクションはこれに準じた対応をする。0.1%次亜塩素酸Na液の容器はポン
プ式とする。スプレー式は環境を汚染し、人体に有害であるため、使用しない。プラスチック手袋、プラスチック
エプロンは、オムツや汚物処理の時のみ、同じ袋に入れ、一般ゴミとする。それ以外は基本に従って分別する。

次亜塩素酸Na液の用途別濃度一覧表
濃度 用途
0.03% 器具やリネンの浸け置き30分以上
0.1 % ハイタッチ・サーフェスの拭き取り
0.5 % 血液・便・嘔吐物などの拭き取り

1.職員の液体石けんと流水による手洗い
① 仕事の前後(出勤時・退勤時)
② 処置の前後(汚物処理後は必ず。他のケア後は、目に見える汚染が無ければ手指消毒剤使用で可))
③ 食事前、食事介助前 ★これがきちんとできてないと経口からウィルスや細菌が入る。
④ トイレ使用後 ★必ず、液体石けんのある手洗い場を使用する。
⑤ 詰め所に戻ったら必ず手洗いをする。
★液体石けんと流水による手洗いがセクションのフロアのどこでできるか?セクション長は液体石けん、ペー
パータオル、ゴミ箱などの設置をし、手洗いのできる環境を整備する。

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2008 年 10 月改訂 Ver.3
2.日常の対応

2.詰め所内のハイタッチサ-フェス
① 日勤(1 日1回)(4~9月;酒精綿、10~3月;0.1%次亜塩素酸Na液)
0.1%次亜塩素酸Na液で消毒する場合;ブリーチ50倍希釈液(ブリーチ2mlを水道水で全量100
mlにする割合)をボロ布又はペーパータオルなどにしみ込ませて固く絞り、消毒する。
② 場所:ドアノブ(入り口、面談室、器材庫、トイレ、汚物室)、センターテーブル、各机、シャカステンの台
電話機、FAX周り、薬品棚・保冷庫・冷蔵庫などの取手、休憩室のテーブル(縁の裏も)など

3.マスク着用;10月~3月、業務中はマスク着用を推奨する。★無意識に手が触れても感染を防御できる。

4.入浴(ハーバード、シャワー、風呂)
下痢の人は入浴を避ける。やむを得ない場合は、シャワーのみとし、順番を最後にする。

5.便、嘔吐物などの汚物処理
★嘔吐物を素手で受け止めたりしない。★自分が汚染されないようによける。
① 準備するもの;汚物処理ワゴンを使用する。
プラスチック手袋、プラスチックエプロン、「次亜塩 0.5%液ヨシダ」 、ボロ布又はペーパ
ータオル、ウエルパス、ゴミ袋2枚(買い物袋)
★以上の物を必ずワゴンに積んでいると、どんな時にもすぐ対応できる。最低、夜勤者の分を準備する。
② 11ページ「正しい嘔吐物の処理方法」を参照する。
③ 環境の汚染されたところ(思われるところ)を清拭消毒する。
④ 汚物処理室に捨てに行く(不必要なところは触らないようにする)。
★汚物・プラスチック手袋・プラスチックエプロンは同じ袋にまとめて入れ、二重に密閉し、一般ゴミと
する。
★看護部門では汚物処理室のゴミ箱にのみ入れる。他の部門では、その日のうちにゴミ出しする。
⑤ 汚物処理室で液体石けんと流水による手洗いをする。
★手洗いを終えるまでは他の対応をしない。
★廊下などで呼び止められたら、「これを処理したらうかがいます。」と丁寧に断る。
⑥看護師が嘔吐物をかけられ、白衣などが汚染した場合は、着替える。
★ 嘔吐物で汚染した白衣は嘔吐物をペーパーなどで取り除いた後、水色ビニール袋に入れ、感染
リネン扱いとする(白衣がプール制の場合)。個人の白衣はセクション、氏名を明記したメモを貼
る。)

6.トイレ介助 この間に、手袋が汚染されたら脱ぎ、石けんと流
① プラスチック手袋、プラスチックエプロン着用する。 水による手洗いをし、新しい手袋を着用する。
② 排尿、排便前に便座を清拭消毒する。
★通年、壁に設置の消毒剤(アルコール成分)で物理的に除去する。
★トイレットペーパーを使用する。
③ 便座へ移動し、排泄後、(車いすなどへ)移動する。
④ 患者様が液体石せんと流水による手洗いをしている間に、介助者は便座を消毒する。
⑤ プラスチックエプロンを脱ぎ、これをプラスチック手袋の中に丸めて納めるように手袋を脱ぐ。
⑥ 介助者も液体石けんと流水による手洗いをする。
⑦ 患者様を部屋に連れていく。

7.オムツ交換(陰部洗浄)・・・坐薬投与、陰部保清
① 準備するもの
プラスチック手袋、プラスチックエプロン、「次亜塩 0.5%液ヨシダ」、ボロ布又はペーパータオ
ル、ウエルパス、ゴミ袋2枚(買い物袋)
★便で汚染された環境の消毒剤は季節に関わらず、「次亜塩 0.5%液ヨシダ」とする。
★尿や体液などで汚染された環境の消毒剤は酒精綿と「次亜塩 0.5%液ヨシダ」どちらでも良い。
★患者様のお尻は、ぬるま湯で清拭する。
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2.日常の対応
② 12ページ「正しいオムツ交換の方法」を参照する。
③ 汚物処理室に捨てに行く(不必要なところは触らないようにする)。
★オムツ・プラスチック手袋・プラスチックエプロンは同じ袋にまとめて入れ、二重に密閉し、一般ゴミと
する。
④ 汚物処理室で液体石けんと流水による手洗いをする。
★手洗いを終えるまでは他の対応をしない。
★廊下などで呼び止められたら、「これを処理したらうかがいます。」と丁寧に断る。

8.職員休憩室の食器の扱い;食器を使用後は、洗剤で洗う。

9.食事介助;清潔な操作で行う。

10.経管栄養準備場所;清潔な環境を保ち、清潔な操作で行う。

11.患者・家族への手洗い指導・啓蒙;入院時に正しい手洗いのポスターを見せて、説明する。
①トイレ後、食事前の液体石けんと流水による手洗い。部屋の入退室する際のウエルパス使用。
②トイレ後、介助の人にも液体石けんと流水による手洗いをしてもらう。

12.栄養部関連
●入院食の食器に嘔吐した場合、病棟で消毒後、栄養部に下膳する。
【日常の対応について】
2ページの「2.嘔吐物や便の処理」に準ずる。すなわち、
プラスチック手袋、プラスチックエプロン、サージカルマスクを着用し、わずかな飛沫にも暴露されない。処
理に使った雑巾などは再利用せずに二重のビニール袋に入れ、口を縛り、一般ゴミとして廃棄する。処理中
の手でみだりに蛇口、ドアノブ、手すり、ゴミ箱のふたなどに触れてはならない。汚染個所は必ず「次亜塩
0.5%液ヨシダ」で消毒する。

【日常の具体的対策】
★嘔吐物を素手で受け止めたりしない。★自分が汚染されないようによける。
① 準備するもの;汚物処理ワゴンを使用する。
プラスチック手袋、プラスチックエプロン、「次亜塩 0.5%液ヨシダ」、ボロ布又はペーパータオ
ル、ウエルパス、ゴミ袋2枚(買い物袋)
② 12ページ「正しい嘔吐物の処理方法」を参照する。
汚れた手袋で「次亜塩 0.5%液ヨシダ」の容器を触らないようにするために、あらかじめ、ワゴンの上でペー
パータオルなどに消毒液を浸して準備しておく。食器は凹凸があるので、嘔吐物を念入りに拭き取る。その後、
消毒液で浸したペーパータオルなどで拭き、消毒する。
トレイも含め、全ての箇所の拭き残りが無いようにする。消毒後の食器には、「消毒済み」のメモ用紙を貼付
し、他のお膳と一緒に下げる。
★決して、流しで洗ったり、希釈した消毒液に漬けてはいけない。これをすると、汚染が拡大する。
③ 処理した袋は、汚物処理室に捨てに行く(不必要なところは触らないようにする)。
★汚物・プラスチック手袋・プラスチックエプロンは同じ袋にまとめて入れ、二重に密閉し、一般ゴミとする。
④ 汚物処理室で液体石けんと流水による手洗いをする。
★手洗いを終えるまでは他の対応をしない。
★廊下などで呼び止められたら、「これを処理したらうかがいます。」と丁寧に断る。

●栄養部職員の配膳業務について(現在、施行している病棟が対象)
感染性胃腸炎(疑い含む)の患者様が1人でも発生した病棟では(治療目的で個室入院した場合を除
く)、セクション長が栄養部に連絡し、栄養部職員の配膳業務を一時中止する。期限は、症状消失後
一週間までとする。

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9.感染性胃腸炎(疑い含む)発症後の対応

感染性胃腸炎(疑い含む)発症後の対応
【ハイタッチ・サーフェスの頻回消毒】
日常対応している箇所および触ったと思われる箇所を、0.1%次亜塩素酸Na液で1日3回消毒する。これから
発症する人がいるもしれないので、2~3日続ける。

【発症者の報告、勤務制限】
① セクション長は発症者(職員・患者)について、下記報告事項を看護部門は師長室(内線 2220~2222)へ、
看護以外の部門は医療安全室(内線 2205)へ報告する。
1回目報告事項;氏名、発症日、症状(発熱、下痢、軟便、腹痛、嘔吐、嘔気)、受診の有無、職員は勤
務状況、患者は抗菌薬有無など。
2回目報告事項;1回目報告時の氏名、症状消失日、職員は勤務状況、患者は抗菌薬有無など。
②セクション長は発症した職員に、症状消失後48時間まで出勤しないよう勤務制限する。

【下痢・嘔吐有症状者 発生状況表】
セクション長はセクション内で複数名発症してきたら、発症順に時系列で記載し(20ページ参照)、看護部門
は師長室へ、看護以外の部門は医療安全室へ提出する。

【各種検査】
1.レントゲン、心電図など、
①特に症状が激しい場合は放射線室、生理検査室などへの出入りを制限する。
②技師がベッドサイドで実施する際には、担当看護師は担当技師に患者情報を必ず伝える。担当技師は有
症状者の順番は最後にし、プラスチック手袋を着用し、実施後は液体石けんと流水による手洗いをする。
2.リハビリ
①有症状者はリハビリ室への出入りを制限する。制限の期限は症状消失後 48 時間とする。
②技師がベッドサイドで実施する際には、担当看護師は担当技師に患者情報を必ず伝える。担当技師は有
症状者の順番は最後にし、プラスチック手袋、プラスチックエプロンを着用し、実施後は液体石けんと流水
による手洗いをする。

【感染性胃腸炎(疑い含む)発症後の具体的対策】
1.入浴(ハーバード、シャワー、風呂)
①有症状の人は入浴を避ける(清拭をする)。
②症状の治まった人はシャワーのみとし、順番を最後にする。期限は症状消失後48時間までとする。

2.風呂場などの消毒
①セクション内で、誰が消毒するかをあらかじめ決めておく。
②手すり・ドアノブ・椅子・カランなど触ったところを 0.1%次亜塩素酸Na液で清拭消毒する。
③床に 0.1%次亜塩素酸Na液を撒く。
④シャワーで床の次亜塩素酸Na液を洗い流す。

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2008 年 10 月改訂 Ver.3
9.感染性胃腸炎(疑い含む)発症後の対応
3.トイレ介助
①ほぼ日常と同じであるが、排泄後、介助者は便座以外のハイタッチ・サーフェスも消毒する。
手すり、ナースコール、水を流すレバー、トイレットペーパーの触るところ、扉の取手など。他に触れた場所。
②期限は2週間とするが、アウトブレイクにまで発展した場合は、アウトブレイクが終息するまでとする。

4.職員トイレ
①有症状の職員は、使用時、毎回、レバー、便座、トイレットペーパーのホルダーなどを壁に設置の消毒剤
(アルコール成分)で物理的に除去する。トイレ使用後の手洗いを遵守する。
②期限は2週間とするが、アウトブレイクにまで発展した場合は、アウトブレイクが終息するまでとする。

5.医師の回診
①発生していない患者→終息した患者→現在発生している患者の順に回診する。
②手指衛生は日常の対応と同じであるが、これを遵守する。

6.患者・家族への手洗い指導・啓蒙
①正しい手洗いのポスターを有症状者・家族にコピー配布し、説明、指導する。
②患者様向け「感染性胃腸炎について」(Ver.2)を有症状者・家族に配布する。

7.その他;下記は日常の対応と同じであるが、これらを遵守する。
①職員の液体石けんと流水による手洗い
②マスク着用
③便、嘔吐物などの汚物処理
④オムツ交換(陰部洗浄)・・・座薬投与、陰部保清
⑤休憩室の食器の扱い
⑥食事介助
⑦経管栄養準備場所
⑧嘔吐物の付着した食器の取り扱い

【トイレ内掲示物】
① セクション長はマニュアルファイル内にある掲示物の原本を必要数コピーし、掲示する。
② 発症者はこれに従って、毎回消毒する。
【病棟エレベータ前、掲示板の掲示物】
① セクション長はマニュアルファイル内にある掲示物の原本を必要数コピーし、掲示する。
② セクション長は病棟内に感染性胃腸炎の発症者が複数いることを患者様にお知らせし、注意喚起する。
【玄関掲示物】
感染管理担当者(ICP)は掲示物を掲示し、来院者に注意喚起する。

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2008 年 10 月改訂 Ver.3
11.アウトブレイク時の対応

アウトブレイク時の対応
【臨時ICT拡大会議招集、開催】
セクション長からの発生状況をサーベイランスしていく中で、アウトブレイクしたと考えられる場合は、臨時のICT
拡大会議を開催する。ICC委員長の指示のもと、ICC 事務局長がICTメンバーと必要メンバーを招集する。

【病院の危機管理体制発動】
臨時ICT拡大会議を開催し、必要と判断した場合に、病院の危機管理体制を発動する。
委員長;管理部医師
副委員長;ICC委員長、ICC副委員長(医師、看護師)、管理部事務
事務局長;管理部事務
事務局次長;医療安全室課長、医療安全室主任(ICC事務局長)

【保健所への報告】
臨時ICT拡大会議を開催し、必要と判断した場合に、危機管理体制の委員長または事務局長が保健所へ報
告する。

【感染性胃腸炎(疑い含む)アウトブレイク時の具体的対策】
看護部門を基準に作成した。他セクションはこれに準じた対応をする。
1.詰所内のハイタッチサーフェスの消毒
① 危機管理体制のもと、0.1%次亜塩素酸Na液で指示されたレベルに従う。
② 消毒箇所は日常の対応+レベル別に指示された箇所とする。
③ これらを遵守する。

2.コホート(同じ病名または、症状の人をひとまとめにする事)
①有症状の患者様が複数発症している場合は、大部屋を感染性胃腸炎の部屋として、コホートする。
②新規の有症状者は個室またはコホート部屋に入れる。
③個室またはコホート部屋の解除は、症状消失後48時間とする。

3.職員トイレ
職員の有症状者が発生して 1 ヶ月以内は、使用時、全員が毎回、レバー、便座、トイレットペーパーのホルダ
ーなどを壁に設置の消毒剤(アルコール成分)で物理的に除去する。トイレ使用後の手洗いを遵守する。

4.お茶・水配り
実施しているセクションでは、コップを回収して中性洗剤で洗浄、水洗いしてから、お茶・水を入れる。

5.清掃職員との連携
セクション長は、毎朝ホワイトボードに、アウトブレイクしている部屋の箇所に★印を記載して、清掃職員へ清
掃の順番を伝える。

6.患者・家族への手洗い指導・啓蒙
①正しい手洗いのポスターを病棟内患者・家族全員にコピー配布し、説明、指導する。
②患者様向け「感染性胃腸炎について」(Ver.2)を病棟内患者・家族全員に配布する。

【患者・家族へのお知らせ、掲示物、配布物】
①感染管理責任者(ICP)はアウトブレイクの掲示物を、病棟エレベーター前、廊下掲示板に掲示する。
②セクション長は、医療安全室からアウトブレイクのお知らせの用紙を取り寄せ、患者・家族全員に配布する。
③入院患者様の中に精神疾患などにより、パニックが起きると想定される場合には、病棟責任者の判断により、
上記②を省略しても良い。その際は、セクション長が医療安全室にその旨を報告する。

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11.アウトブレイク時の対応
【感染性胃腸炎アウトブレイク時の消毒一覧】
Ⅰ.リヴィノール清掃
対策強化内容 各オプションの1クールを7日間とする
通常清掃を続けて、さらに下記の消毒を追加する。
★発生していない病棟→発生している病棟の順。
★発生していない病室→終息した病室→現在発生している病室の順。
浴室ハイタッチ、
ハイタッチ(詰所 トイレ(普通、 指定病室 全病室 高度汚染
脱衣籠(入浴
内拡大部分含 身障、職員) ベッド柵 ベッド柵 箇所(床、
人数により、1
む)1日3回 1日3回 1日3回 1日1回 壁含む)
日1~2回)
レベル1 ○ ○
レベル2 ○ ○ ○
レベル3 ○ ○ ○ ○
レベル4 ○ ○ ○ ○ ○
臨時 ○

Ⅱ.病院職員清掃
対策強化内容 各オプションの1クールを7日間とする
日常の消毒箇所を「0.1%次亜塩素酸Na液」で、「頻回」に消毒し、更に下記の消毒を追加する。
何を 職員トイレの便座などハ トイレ(普通、身障、ポータブル) 浴室のハイタッチや脱衣かごの
イタッチ消毒を の便座などのハイタッチ消毒を 消毒、床ブリーチ流しを
誰が 使用者(ま
有症状者・既往 有症状者・既 使用者(ま
有症状者、 使用者全 たはその
者(またはその 往者(または たはその介
既往者が 員が毎回 介助者)全
介助者)が毎回 その介助者) 助者)全員
毎回する する 員が毎回
する が毎回する が毎回する
する
A ○ ○ ○
B ○ ○ ○

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8.患者様向け「感染性胃腸炎」
患者様、ご家族の皆様へ

感染性胃腸炎について

下痢や嘔吐などを症状とする病気にはいろいろあります。その中で、何らかの病原体(細菌、ウイルスな
ど)が原因のものを「感染性胃腸炎」といいます。
病原体にはいろいろな種類がありますが、特に、冬に多く発生し、流行するのものとして、ノロウイルス
による感染性胃腸炎があります。

1.ノロウイルスはどのようにしてうつるか
(1) ノロウイルスはカキなど二枚貝に含まれていることが多く、
それらを生や加熱不足で食べるとうつります。これらの鮮度は関係ありません。

(2) ノロウイルスが付着した手や器具で調理された食品を食べたり、食器にノロウイルスが付着していた
りするとうつります。

(3) ノロウイルスによる感染性胃腸炎の患者さんの便、嘔吐物をごくわずかでも触った手、それらがごく
わずかに付いたタオル、衣服、掃除用具、環境(トイレや吐いた場所や器物)などを触った手を介し、
口に入りうつります。

(4) 便や嘔吐物がついて乾いた雑巾や衣服、寝具などのホコリが口に入りうつります。

2.潜伏期間 ノロウイルスに感染してから症状が出るまでは、半日から 2 日です。

3.症状
人によって違いますが、ムカムカ感の後、急に吐いて、下痢や腹痛を来たします。
嘔吐だけ、下痢だけ、腹部不快感だけのこともあります。熱は37℃程度が多いです。
(症状がとれて、治っても、ノロウイルスは 2 週間から 1 ヶ月は便の中に出てきますので、この期間はその
便を介して他の人にうつる可能性があります)

4.経過
激しい症状は 1-2 日が多いです。腹部不快感は残りますが、3 日くらいで治ることが多いです。
乳幼児や高齢者、体の弱い方は症状が強く、脱水になったり、吐いたものを吸い込んで肺炎を併発したりす
ると重症になることがあります。

5.治療
ノロウイルスによる感染性胃腸炎は自然に治るので、特別な治療薬は使用しません。
脱水症状が強い場合は、点滴などが必要になることがあります。

6.健康観察と早めの受診
(1) ご自分やご家族の健康状態(ムカムカ感、嘔吐、下痢、腹痛、発熱の有無)に注意しましょう。
(2) 下痢のある場合、水分補給(スポーツドリンクなど)に努めましょう
(3) 嘔吐の場合は、吐き気が治まってから水分補給しましょう。嘔吐が治まらないときは点滴が必要なこ
ともありますので、早めの受診をしましょう。受診の際は、急に吐く事に備えて、ビニール袋を持参
しましょう。

16 2007.9.5 Ver.2 (2008.9.30 確認)


8.患者様向け「感染性胃腸炎」
7.感染予防
人から人への感染は、便・嘔吐物が原因です。ごくわずかな目に見えない汚染(1 滴の下痢便や嘔吐物の
しぶきや、お尻を紙で拭いた後の一見便のついていない手でも)でも、多くの人にうつる感染力があります
ので、細心の注意が必要です。

(1) 石けんと流水による丁寧な洗い残しのない手洗いが感染予防の基本です。
トイレの後、便、嘔吐物の処理の後、外出後、食事の前、口に手を持っていく前には
必ず手を洗いましょう。 病院内では 0.5%。一般市民向けには、
安全面から低濃度を勧めている。
(2)排泄、嘔吐の片付け
排泄のときや嘔吐のときは、大量のノロウイルスによる汚染が生じます。ウイルスを広げないように、汚れ
た場所を清浄、消毒しましょう。

なるべく使い捨ての手袋を使用します。作業中には、自分の衣服に汚れがつかないようにします。
捨てることが出来るものは、ビニール袋に密閉して燃えるゴミに捨てます。
拭き取りには、トイレットペーパーでふき取ってトイレに流すか、ペーパータオルや使い捨ての雑巾を使い、
周りに触れないようにビニール袋に密閉します。(バケツで雑巾を洗うことは止めましょう)
拭き取るときは、周りから中心に向けて汚れを集めるようにします。
拭き取った後は、0.1%(1000ppm)の次亜塩素酸ナトリウム液でまんべんなく拭き取り、

ハイターまたはブリーチの原液 20ml(キャップ1杯)を水道水で全量1リットルにする

後で水拭きします。(塩素の匂いが出ますので、十分換気しながら)
作業後は十分に手や腕を洗います。

便などが飛び散った便器、便座、床などは、次の人が使う前に、0.1%(1000ppm)の次亜塩素酸ナトリ
ウム液で拭き取りましょう。

(3)汚れ物の洗濯
便や嘔吐物で汚れたものは、他のものと分けて洗濯します。
固形物は、トイレットペーパーなどで、静かに拭き取りトイレに流します。
洗濯機で 10 分以上の洗濯洗剤による本洗いと 8 分以上の流水すすぎをします。
0.03%(300ppm)の次亜塩素酸ナトリウム液に 30 分つけ置きします

ハイターまたはブリーチの原液 18cc(キャップ1杯弱)を水道水で全量 3 リットルにする

ハイターまたはブリーチの原液60cc(キャップ3杯)を水道水で全量 10 リットルにする

すすぎ、乾燥します。
洗濯機周辺に汚れ物が触れた場合は、その箇所を
0.1%(1000ppm)の次亜塩素酸ナトリウム液で拭き、その後水拭します。

ハイターまたはブリーチの原液1mlを水道水で全量 50ml にする

(4)入浴
症状が治まっても 2 週間から 1 ヶ月は便にノロウイルスが出ますので、入浴は一番最後にします。
他の家族との混浴は避けましょう。
肛門はよく洗浄しましょう。
お湯は毎日交換しましょう。
浴室は毎日、流水できれいに掃除しましょう。
勤医協中央病院・伏古10条クリニック 院長

17 2007.9.5 Ver.2 (2008.9.30 確認)


6.ルーチンでノロ検査は不要、7.牡蠣を食べるときの注意

ルーチンでノロウイルス検査は不要
現在、ノロウイルス感染症の検査法には、便や嘔吐物を検体として、ノロウイルス RNA(ウイルス
抗原)を RT-PCR で検出する方法がある。これは、外注検査で可能であるが、保険適応がなく、結
果判明までに 4-6 日を要す。
このため日常診療で使用するというより、食中毒や集団感染の疫学調査のために保健所が行う
のが普通である。

日常的には、消化管感染を疑って便や嘔吐物を調べる際には、通常の便培養検査を行い、他
の感染症を除外診断することが肝要である。カキを食べたとか臨床症状からおよび、他の原因を
除外できればノロウイルス感染を強く疑って、対応してよいと考える。

尚、患者様から「ノロウイルスが出ていないかどうか調べてほしい」と希望されることがある。その
場合は、保険適応がないので、当院では実施できないことを説明して納得してもらう。食品関係な
ど、業務上必要といわれた場合も、同様である。

また、保健所では疫学調査でノロウイルスが検出された方の2回目以降の検査は実施していな
いので、食品業務にいつから就くかの判断は非常に難しい。このような場合は本人が上司に相談
し、上司から保健所に相談するのが適切と考える。

食中毒を疑う場合は、被害を広げないために 24 時間以内に保健所に届け出る義務がある(24
時間年中無休、電話での連絡でもよい)。

院内集団感染を疑う場合は院内での拡大予防策をすぐに行う必要がある(ハイタッチ・サーフェ
スのブリーチによる頻回な消毒)。

尚、ノロウイルス感染では症状が改善しても長期間ウイルスを便に排出するので、症状が改善し
ても、予防策は続ける必要がある。このことからも、日常の便や嘔吐物の正しい処理がいかに重要
かということがわかる。

職員や家族がカキを
食べるときは注意しましょう!

【ノロウイルス食中毒の予防法】
1. カキを生で食べない。(たとえ生食用であっても。加熱用を生で食べるのは論外、ノロウイルス以外の食
中毒を起こす危険もある)
2. 加熱は十分に(たとえば、カキ鍋では 85℃以上 1 分間以上)
3. カキを調理した手指や器具を他の食品につけない
4. 使用後の調理器具は洗剤などを使用し十分に洗浄した後、湯熱消毒(85℃以上 1 分間以上)または 250
倍希釈ブリーチ(200ppm=0.02%)で浸すように拭き、その後水洗。
5. 調理後の手は石けんと水道水で十分に洗い流す(石けん自体に消毒効果は無いが、手の脂肪などの
汚れを落とすことにより、ウイルスを手指からはがれやすくする効果がある)。

15
スタンダード・プリコーション、接触および飛沫感染予防策の徹底
(これは、ノロウイルスなどの特定の感染症の流行の有無に関わらず、常に注意すべき基本です)

腕時計、指輪外し
手首まで正しい手洗いをするために、勤務中は腕時計を外す。長袖白衣の場合は
袖を1~2回折り、手首を出す。職場では指輪を外す(結婚指輪を外せない場合は、やむを得ない)。
液体石けんと流水による手洗い
★セクション長は液体石鹸、ペーパータオル、ゴミ箱などの設置をし、手洗いのできる環境を整備する。
① 仕事の前後(出勤時・退勤時・休憩時)
② 処置の前後(汚物処理後は必ず)
③ 食事前 ★これがきちんとできてないと経口からウィルスや細菌が入る。
★おにぎりやパンを食べる時は要注意!
④ トイレ使用後 ★必ず、液体石けんのある手洗い場を使用する。
スキンケア 手荒れ防止のためにハンドクリームなど積極的なスキンケアに努める。

10月~3月、マスク着用を推奨する。★無意識に手が触れても感染を防御できる。

ハイタッチ・サーフェス(ドアノブ、手すり、電話の受話器など不特定多数の人が手を触れる表面)
は、明らかな汚染がなくても毎日最低1回は消毒剤で清拭する。
時期 清掃職員が清掃する箇所 清掃職員が入らない箇所(自分たちで清拭する)

4~ 0.1% 次 亜 塩 素 酸 ナ ト リ ウ ム 消毒用酒精綿(8cm×8cm)で清拭 パソコンなど機械関係は日常


9月 (ブリーチ50倍希釈液)で清 する。 の清拭はせず、使用前後にウエ
拭する。 ルパスによる手指消毒をする。

1 0 0.1% 次 亜 塩 素 酸 ナ ト リ ウ ム 0.1%次亜塩素酸ナトリウム(ブリーチ 汚れが目立つようなら電源を

~ 3 (ブリーチ50倍希釈液)で清 50倍希釈液)で清拭する。濃度が不 切って、OAクリーナーなどで

月 拭する。 安定なので、48時間で液を交換する。 清拭する。

食器は、使用後、洗剤で洗う。

プラスチック手袋、プラスチックエプロン、サージカルマスクを着用し、わずかな飛沫にも暴露されな
い。処理に使った雑巾などは再利用せずにビニール袋に入れ、口を縛り、燃えるゴミとして廃棄する。処
理中の手でみだりに蛇口、ドアノブ、手すり、ゴミ箱のふたなどに触れてはならない。汚染個所は必ず「次
亜塩 0.5%液ヨシダ」で消毒する。一般ゴミは、その日のうちに(夕方であれば、翌朝に)回収してもら
う。
2007 年 11 月 14 日作成、2008 年 9 月 30 日改訂
勤医協中央病院 ICC(院内感染対策委員会)

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