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96 - 0071- 8

阿部 馨督
機械宇宙学科 2 年

1-b 非定常熱伝導方程式
[1] 実験目的
非定常熱伝導は熱伝導方程式により表わされることを知り、この熱伝導型の偏微分方程
式により表わされる物理現象を理解する。
ある状況の下でこの方程式を解き、実験値と比較検討することにより温度電波率を実験
的に求める。また、2 物体の接触面温度の計測を通して各種固体の熱的特性に対する理解を
深める。

[2] 原理
熱伝導により伝わる熱流束 q はフーリエの法則に従い、
 ∂T ∂T ∂T 
q = −λ gradT = −λ  , , 
 ∂x ∂y ∂z  (1)
と表わされる。この式を用いて、微少体積要素におけるエネルギー収支を考えると、
x 方向に関しては、
 ∂T   ∂T  ∂  ∂T  
dQ x ,in = − λ dydzdt , dQ x ,out = −  λ  + λ dx  dydzdt
 ∂x   ∂x  ∂x  ∂x  
(2)
両者の差は
∂  ∂T 
dQ x ,in − dQ x ,out = λ dxdydzdt
∂x  ∂x  (3)
y 方向や z 方向も同様にしてエネルギーの流入流出の差を求めると
y 方向:
∂  ∂T 
dQ y ,in − dQ y ,out = λ dxdydzdt
∂y  ∂y  (4)
z 方向:
∂  ∂T 
dQ z ,in − dQ z ,out = λ dxdydzdt
∂z  ∂z  (5)

これらを加え合わせたものは時間 dt に六面体に増加する熱量であり、これは六面体の温度
上昇 dT となって現れる。
ρc dT dxdydz (6)
(3) (4) (5) と (6)式を倒置することで、津 g に野非定常熱伝導方程式が得られる。
∂T  ∂ 2T ∂ 2T ∂ 2 T  λ
= a∆T = a 2 + 2 + 2  , a=
∂t  ∂x ∂y ∂z  ρc (7)
Δ
a
ここで はラプラス演算 子、 は温度伝播率、λ は熱伝導率、ρ は密度、c は

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比熱、T は温度、t は時間である。


一次元の熱伝導方程式は(6)式を書き直して、
∂T ∂ 2T
=a 2
∂t ∂x (8)
となる。この場合ある断面xを通る単位時間、単位面積当たりの熱量 q は
∂T
q = −λ
∂x
(9)
となる。以下 4 つの場合について一次元熱伝導方程式を解き、その特徴を調べる。

2・ 1 定常熱伝導
1 図に示すような断面積 S の棒を考え、
xa,xb における温度をそれぞれ Tb とし、
それらが時間的に変わらないとすれば
x = xa ~ xb ま で の 温 度 分 布 は (8) 式 を

くことにより次のように求まる。
Ta − Tb T x − Ta xb 1
T= x+ b a 図
x a − xb x a − xb (10)
これを(9)に代入すれば、
 T − Tb 
q = −λ  a 
x
 a − x b  (11)

で与えられ熱流束 q はxに関わらず一定となる。(10) および (11) 式が成り立つのは。棒の


側面方の熱損失が無い場合である。この時、棒を伝わる全熱量は、
 T − Tb 
Q = Sq = − Sλ  a 
x
 a − x b  (12)

となり、Q ,Ta ,Tb を推定することにより λ を求めることができる。

2・ 2 温度が T0 であった棒 の一端を 、ある瞬 間、温度 T1 とした 時の棒の 温度変化


この場合、1 次元の非定常熱伝導方程式 (8) を次の初期条件および境界条件で解くことに
なる。
t = 0 : T = T0 (13)
x = 0 : T = T1 , x = ∞ : T = T0
(14)十分長い棒の場合、ξ= x 2 at と

変数変換することで(8)式は次の微分方程式になる。

d 2T dT
+ 2ξ =0
dξ 2

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(15)
(13) (14)を用いて、この方程式を解くと、次の温度分布が得られる。
 x 
T = T1 1 − erf  + T0
 2 at  (16)

2・ 3 棒の一端に 制限的な 温度変動 を与えた 場合の温 度変化


棒の一端に正弦的な温度変動を与えたとすると、この温度変動は棒を伝導していく。そこ
で棒の温度分布が x と t の関数として次のような式で与えられる定常振動解を考える。
T = A exp( Iωt + kx ) (17)

ここで I は虚数単位であり、ω は正弦変動の角速度、


k は波数を表わす。(8)式より k の値を
求めると、(17)式は次のようになる。
 ω   ω   ω   ω 
T = A1 exp x  ⋅ exp i ωt + x  + A2 exp − x  ⋅ exp i ωt − x 
 2a    2a   2a    2a  (18)

xが十分大きいところで T は有限値をもつから Tb=0 となり、温度は時間 t と距離 x の関数


として、 
 ω  ω 
T = A2 exp − x  ⋅ exp i ωt − x  (19)
 2 a  
 2 a 

これは温度の波動を示す式である。この正弦波は、振幅が x の増加とともに指数関数的に減
少し、の 2aω 速度で伝播する。
x=xa,x=xbにおける温度変動は(14)式より、
 ω 
Txa=bxa exp iω t- x a 
2 a (20)
  

 ω 
Txb=bxb exp iω t- xb
2a  (21)
 

となる。これより、実験的に両者の振幅の比 bxa/bxb を求めれば、温度伝播率 a は、


2
π  xb − x a 
a=  
τ  (
 log bx bx
a b
)  (22)

また、両者の温度変動の時間差 Δt を求めれば、
2
τ  xb − x a 
a=  
4π  ∆τ  (23)
と求めることが出来る。ここで、τ は温度変動の周期である。
よって 2 通りの測定法により、温度伝播率 a を求めることが出来る。

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2・ 4 2 物体が接触 した時の 接触面温 度


温度 T1∞、T2∞の 2 物体が接触した場合の接触面温度を半無限固体の熱伝導方程式の応用
として解くと、
基礎方程式
∂T1 ∂ 2T1 ∂T1 ∂ 2T1
= a1 = a1
∂T ∂x 2 (24a) ∂T (24b)∂x 2
境界条件
x = ∞ : T1 = T1∞ x = ∞ : T2 = T2∞
x = 0 : T1 = T2 x = 0 : T1 = T2
∂T1 ∂T (25a) ∂T1 (25b)∂T2
x = 0 : λ1 = λ2 2 x = 0 : λ1 = λ2
∂x ∂x ∂x ∂x

変数変換
ξ 1 = x 2 a1t (26a)
ξ 2 = x 2 a2t (26b)
解の仮定
T1 = A1erf (ξ 1 ) + B1 (27a) (ξ 2 ) + B2
T2 = A2 erf(27b)

境界条件を用いて積分定数を求めると、として、 β1 = ρ1c1λ1 , β 2 = ρ 2c2λ2


β 2 ( T1∞ − T2 ∞ ) β T + β 2T2 ∞
T1 = erf ( ξ 1 ) + 1 1∞
β1 + β 2 β1 + β 2 (28a)
β 1 ( T1∞ − T2 ∞ ) β 1T1∞ + β 2T2 ∞
T2 = erf ( ξ 2 ) +
β1 + β 2 β1 + β 2 (28b)
以上からx=0 における接触面の温度 Tm は
β 1T1∞ + β 2T2 ∞
Tm =
β1 + β 2 (29)
これより、接触面温度 Tm は 2 物体の物性値、β1、
β2 により決まり、ベータの大きな物体の持
つ温度に近くなることがわかる。

[3] 実験装置および実験方法
3.1 熱物性 値計測実 験
水道からの水は流量調節バルブを通り、基準温度測定部を通り、測定片の一端に設けた冷
却タンクを通過し、測定片の一部分を冷却する。その後熱交換器に入り加熱され高温水とな
り、測定片の他方に設けた加熱タンクを通り、測定片の他端を加熱した後流出する。測定片
は 12φ の真鍮棒からなり、それには熱電対が埋め込まれており、その点の温度を知ること
が出来る。基準温度を T0[℃](水道水温度)、測定部温度を T[℃]とする。また、本実験
で使用する熱電対のnは 24.3[℃/mV]。測定は熱電対出力を AD 変換器を介しパソコ
ンに取り込み、計測、記録を行う。また、測定値は T-T0[℃]である。

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実験方法
1)バルブを調節し水流量を 40cc/10sec 程度に保つ。
2)水を張った基準温度測定用ビーカーに熱電対の一端を入れ、温度計により基
準点温度 T0 を測る。
3)測定用プログラムを実行して測定をする。
3.2 接触面 温度測定 実験
手と試料を熱電対(n=39.9μV/℃)で挟み、接触面の温度とその時の感覚を記録する。今
回の実験で用いる試料片の種類は、アルミ、ステンレス、ガラス、アクリル、銅、ベークライト
である。

[4] 実験結果と考察
4・1 熱物性値計測実験
実験から得られた3周期分のグラフを図 b-1(最終頁に付す)に示す。振幅や時間差等
は、グラフから読み取った2つ値の平均を取り、次のように求められる。

τ=205[s]
Δτ 1=15.0[s]
Δτ 2=36.0[s]
Δτ 3=21.0[s]

2 bx1=5.35[℃]
2 bx2=3.29[℃]
2 bx3=1.73[℃]

これらの値より温度伝播率 a を求めると 表 b-1 のようになる。

2 2
選択した曲 
x b -x a
 τ  x b -x a 
線の種類 π   a=  
a=
( )
4π  Δτ 
τ  log b b xb

 xa 
1-2 2.58 2.91
1-3 2.99 3.16
2-3 3.32 3.34

(単位×10- [m /s])
5 2
温度伝播率
表 b-1
2
π  xb − x a 
a=  
(22)
( )  式 から求めたものの平均は 2.96[m /s]である。
2
τ  log bx bx
 a b 

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2
τ  xb − x a 
a= 
また、(23)式 から求めたものの平均は  3.14[m2/s]である。
4π  ∆τ 

普通用いられる真鍮の温度伝播率は 3×10-5[m2/s] であるので、今回の実験により


求められた実験値は、実測値にほぼ一致している事がわかる。
中でも、選択した温度曲線として、温度曲線1と3を利用して求めた実験値が最も、実際の
真鍮の温度伝播率と一致している事がわかる。これは、温度を測定している熱電対のお互い
の距離が最も離れているために、外乱の影響が数値に表れにくいからではないかと思われ
る。

4・2 接触面温度測定実験
実験結果を以下に示す。
対象物 熱電対電圧[mV] 接触面温度[℃] 感覚
銅 0.45 11.3 とても冷たい
アルミ 0.35 8.77 とても冷たい
ステンレス 0.45 11.3 とても冷たい

(以下の 3 つの材料
に比べると格段に冷
たい)
ガラス 0.61 15.3 冷たいがすぐに、暖
まる
ベークライト 0.92 23.1 あまり冷たくはない

(アクリルよりは冷
たい)
アクリル 0.98 24.6 あまり冷たくはない

接触面温度測定値
表 b-2
さらに、実際の物性値を以下に示す。
銅 アルミ ステン ガラス ベーク アクリ 手のひ
レス ライト ル ら(水)
ρ[kg/m3] 8930 2690 7860 2500 1290 1190 1000
c [ J / ( kg ・ 385 901 520 700 1590 1470 4200
K)]
λ [ W/ ( m ・ 403 236 15 0.55 0.23 0.20 0 . 56

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K)] 1
β[J・s1/2/(m2・ 3 . 72 2 . 39 7 . 83 9 . 81 6. 868 5. 1 . 53
K)] 2×10 2×10 0×103 1×102 915 5×103
4 4 ×102
×102

物性値
表 b-3

式(29)式及び、材料の物性値を載せた 表 b-3 から接触面の理論値を求めると、以下の表


b-4 ようになる。さらに、接触面温度の理論値と実験値をグラフ化したものを図 b-2 とし
て最終頁に付す。(ただし、手の温度を測っていなかったので、35℃とした)

材料名 銅 アルミ ステンレ ガラス ベークラ アクリル


ス イト
温度(℃) 1.39 2.11 5.74 21.4 24.2 25.26

接触面の温度 (理論値 ) (℃)


表 b-4
表 b-2 と 表 b-4 から、2 物体の接触面温度の実測値と理論値がわかるのだが、理論値
と実測値がずれているのがわかる。特に、金属類に関しては大きくずれている。この原因は、
式(29)では接触面温度が時間に関係ない値で表わされている事にあると思う。実際に、人間
の手の表面は常に血液の循環によって熱が直接送られるので、接触界面での熱流束が連続
しているとは限らないからである。

なお、理論的には銅が最も低い温度になると思われるのに、アルミが低くなってしまった
のは、実験を一度失敗してやり直した際に、銅が十分冷えきっていなかったものと考え
られる。

次に、ガラスと手の接触面付近の温度分布を考える。式(28a)、式(28b)および、表 b―3、表
b―4 を利用すると次のように理論曲線が求まる。

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(ただし、ガラスと手が接触後 1 秒後として計算した。)

(℃)

ガラス 手

接触面温度

(m)

図2(接触面付近の温度分布曲線)
図 2 を見ると、手の方がガラスに比べて温度曲線の傾きが急であり、また、ガラスの方が深
くまで温度変化を生じている事が分かる。

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