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阿部 馨督
機械宇宙学科 2 年
1-b 非定常熱伝導方程式
[1] 実験目的
非定常熱伝導は熱伝導方程式により表わされることを知り、この熱伝導型の偏微分方程
式により表わされる物理現象を理解する。
ある状況の下でこの方程式を解き、実験値と比較検討することにより温度電波率を実験
的に求める。また、2 物体の接触面温度の計測を通して各種固体の熱的特性に対する理解を
深める。
[2] 原理
熱伝導により伝わる熱流束 q はフーリエの法則に従い、
∂T ∂T ∂T
q = −λ gradT = −λ , ,
∂x ∂y ∂z (1)
と表わされる。この式を用いて、微少体積要素におけるエネルギー収支を考えると、
x 方向に関しては、
∂T ∂T ∂ ∂T
dQ x ,in = − λ dydzdt , dQ x ,out = − λ + λ dx dydzdt
∂x ∂x ∂x ∂x
(2)
両者の差は
∂ ∂T
dQ x ,in − dQ x ,out = λ dxdydzdt
∂x ∂x (3)
y 方向や z 方向も同様にしてエネルギーの流入流出の差を求めると
y 方向:
∂ ∂T
dQ y ,in − dQ y ,out = λ dxdydzdt
∂y ∂y (4)
z 方向:
∂ ∂T
dQ z ,in − dQ z ,out = λ dxdydzdt
∂z ∂z (5)
これらを加え合わせたものは時間 dt に六面体に増加する熱量であり、これは六面体の温度
上昇 dT となって現れる。
ρc dT dxdydz (6)
(3) (4) (5) と (6)式を倒置することで、津 g に野非定常熱伝導方程式が得られる。
∂T ∂ 2T ∂ 2T ∂ 2 T λ
= a∆T = a 2 + 2 + 2 , a=
∂t ∂x ∂y ∂z ρc (7)
Δ
a
ここで はラプラス演算 子、 は温度伝播率、λ は熱伝導率、ρ は密度、c は
1
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2・ 1 定常熱伝導
1 図に示すような断面積 S の棒を考え、
xa,xb における温度をそれぞれ Tb とし、
それらが時間的に変わらないとすれば
x = xa ~ xb ま で の 温 度 分 布 は (8) 式 を
解
くことにより次のように求まる。
Ta − Tb T x − Ta xb 1
T= x+ b a 図
x a − xb x a − xb (10)
これを(9)に代入すれば、
T − Tb
q = −λ a
x
a − x b (11)
変数変換することで(8)式は次の微分方程式になる。
d 2T dT
+ 2ξ =0
dξ 2
dξ
2
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(15)
(13) (14)を用いて、この方程式を解くと、次の温度分布が得られる。
x
T = T1 1 − erf + T0
2 at (16)
これは温度の波動を示す式である。この正弦波は、振幅が x の増加とともに指数関数的に減
少し、の 2aω 速度で伝播する。
x=xa,x=xbにおける温度変動は(14)式より、
ω
Txa=bxa exp iω t- x a
2 a (20)
ω
Txb=bxb exp iω t- xb
2a (21)
また、両者の温度変動の時間差 Δt を求めれば、
2
τ xb − x a
a=
4π ∆τ (23)
と求めることが出来る。ここで、τ は温度変動の周期である。
よって 2 通りの測定法により、温度伝播率 a を求めることが出来る。
3
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変数変換
ξ 1 = x 2 a1t (26a)
ξ 2 = x 2 a2t (26b)
解の仮定
T1 = A1erf (ξ 1 ) + B1 (27a) (ξ 2 ) + B2
T2 = A2 erf(27b)
[3] 実験装置および実験方法
3.1 熱物性 値計測実 験
水道からの水は流量調節バルブを通り、基準温度測定部を通り、測定片の一端に設けた冷
却タンクを通過し、測定片の一部分を冷却する。その後熱交換器に入り加熱され高温水とな
り、測定片の他方に設けた加熱タンクを通り、測定片の他端を加熱した後流出する。測定片
は 12φ の真鍮棒からなり、それには熱電対が埋め込まれており、その点の温度を知ること
が出来る。基準温度を T0[℃](水道水温度)、測定部温度を T[℃]とする。また、本実験
で使用する熱電対のnは 24.3[℃/mV]。測定は熱電対出力を AD 変換器を介しパソコ
ンに取り込み、計測、記録を行う。また、測定値は T-T0[℃]である。
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実験方法
1)バルブを調節し水流量を 40cc/10sec 程度に保つ。
2)水を張った基準温度測定用ビーカーに熱電対の一端を入れ、温度計により基
準点温度 T0 を測る。
3)測定用プログラムを実行して測定をする。
3.2 接触面 温度測定 実験
手と試料を熱電対(n=39.9μV/℃)で挟み、接触面の温度とその時の感覚を記録する。今
回の実験で用いる試料片の種類は、アルミ、ステンレス、ガラス、アクリル、銅、ベークライト
である。
[4] 実験結果と考察
4・1 熱物性値計測実験
実験から得られた3周期分のグラフを図 b-1(最終頁に付す)に示す。振幅や時間差等
は、グラフから読み取った2つ値の平均を取り、次のように求められる。
τ=205[s]
Δτ 1=15.0[s]
Δτ 2=36.0[s]
Δτ 3=21.0[s]
2 bx1=5.35[℃]
2 bx2=3.29[℃]
2 bx3=1.73[℃]
2 2
選択した曲
x b -x a
τ x b -x a
線の種類 π a=
a=
( )
4π Δτ
τ log b b xb
xa
1-2 2.58 2.91
1-3 2.99 3.16
2-3 3.32 3.34
(単位×10- [m /s])
5 2
温度伝播率
表 b-1
2
π xb − x a
a=
(22)
( ) 式 から求めたものの平均は 2.96[m /s]である。
2
τ log bx bx
a b
5
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2
τ xb − x a
a=
また、(23)式 から求めたものの平均は 3.14[m2/s]である。
4π ∆τ
4・2 接触面温度測定実験
実験結果を以下に示す。
対象物 熱電対電圧[mV] 接触面温度[℃] 感覚
銅 0.45 11.3 とても冷たい
アルミ 0.35 8.77 とても冷たい
ステンレス 0.45 11.3 とても冷たい
(以下の 3 つの材料
に比べると格段に冷
たい)
ガラス 0.61 15.3 冷たいがすぐに、暖
まる
ベークライト 0.92 23.1 あまり冷たくはない
(アクリルよりは冷
たい)
アクリル 0.98 24.6 あまり冷たくはない
接触面温度測定値
表 b-2
さらに、実際の物性値を以下に示す。
銅 アルミ ステン ガラス ベーク アクリ 手のひ
レス ライト ル ら(水)
ρ[kg/m3] 8930 2690 7860 2500 1290 1190 1000
c [ J / ( kg ・ 385 901 520 700 1590 1470 4200
K)]
λ [ W/ ( m ・ 403 236 15 0.55 0.23 0.20 0 . 56
6
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K)] 1
β[J・s1/2/(m2・ 3 . 72 2 . 39 7 . 83 9 . 81 6. 868 5. 1 . 53
K)] 2×10 2×10 0×103 1×102 915 5×103
4 4 ×102
×102
物性値
表 b-3
なお、理論的には銅が最も低い温度になると思われるのに、アルミが低くなってしまった
のは、実験を一度失敗してやり直した際に、銅が十分冷えきっていなかったものと考え
られる。
次に、ガラスと手の接触面付近の温度分布を考える。式(28a)、式(28b)および、表 b―3、表
b―4 を利用すると次のように理論曲線が求まる。
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(ただし、ガラスと手が接触後 1 秒後として計算した。)
(℃)
ガラス 手
接触面温度
(m)
図2(接触面付近の温度分布曲線)
図 2 を見ると、手の方がガラスに比べて温度曲線の傾きが急であり、また、ガラスの方が深
くまで温度変化を生じている事が分かる。