You are on page 1of 60

朝日新聞社から|アスパラクラブ|クラブA&A|携帯サービス|Web朝日新聞|サイトマッ
プ|文字拡大・音声

!"
!"###
###$%&'
$%&'###
###()*$
()*$###
###+,-
+,-###
###./
./###
###01
01####
####23456
23456####
####789:;<=###
###>?@
>?@
AB
CD
CDEEFGH
FGHEEIJ4KJ
IJ4KJEELMMN
LMMNEEOP
OPEEQR
QRE
EST
STE
EU?VB$
U?VB$E
EW)@X
W)@XE
EYZ[X
YZ[XE
E\]
\]4
4^_
^_E
E!
` 4 aZb
aZbEEcdefBg
cdefBgEEhi

asahi.comトップ > シンポジウム

朝日新聞シンポジウム「中国の台頭と日米同盟」
2005年11月11日(金)東京・赤坂プリンスホ
テル

 経済成長の一方で軍事増強を続ける中国の動向をどう見るか。そ
のなかで日米両国が果たすべき役割は——。アジア太平洋地域の安
全保障や多国間協力のあり方を話し合うシンポジウム「中国の台頭
と日米同盟」(朝日新聞社主催)が、東京の赤坂プリンスホテルで
開かれた。約550人の聴衆を前に、日米中3カ国の専門家3人に
よる討論は、小泉首相の靖国神社参拝や日本の憲法第9条改正にも
及んだ。

【基調講演】
ジョン・ハムレ氏(1) (2)

【討論】
(1)高木教授、朱教授による問題提起
(2)中国は「脅威」か
(3)中国の視点など
(4)憲法9条、靖国問題
(5)日米同盟、中台問題など

【質疑応答】
(1) (2)

パネリスト紹介
パネリスト
ジョン・ハムレ
クリントン政権下の1993年から国防次官、97年から9
9年まで国防副長官を勤める。2000年から現職。55歳
朱 建栄(しゅ・けんえい)
東洋学園大学教授(国際政治)。日中関係に詳しく、メディ
アを通じて盛んに提言を続ける。上海生まれ。48歳

高木誠一郎
青山学院大学教授(国際政治)。防衛庁防衛研究所第2研究
部長などを経て、現職。中国の対外政策と内政を幅広く研
究。62歳

コーディネーター
加藤 洋一
朝日新聞編集委員

次へ>>|インデックスへ戻る

▲このページのトップに戻る
asahi.comトップ|社会|スポーツ|ビジネス|暮らし|政治|国際|文化・芸能|ENGLISH|マイタウン
ニュースの詳細は朝日新聞紙面で。» インターネットで購読申し込み
asahi.comに掲載の記事・写真の無断転載を禁じます。すべての内容は日本の著作権法並びに国際条約により保護されています。
| 朝日新聞社から | サイトポリシー | 個人情報 | 著作権 | リンク| 広告掲載 | お問い合わせ・ヘルプ |

朝日新聞社から|アスパラクラブ|クラブA&A|携帯サービス|Web朝日新聞|サイトマッ
プ|文字拡大・音声

社会 スポーツ ビジネス 暮らし 政治 国際 文化・芸能 ENGLISH マイタ


ウン
天気
天気||住まい
住まい||就職・転職
就職・転職||BOOK
BOOK||健康
健康||愛車
愛車|
|教育
教育|
|サイエンス
サイエンス|
|デジタル
デジタル|
|トラベル
トラベル|
|囲碁
囲碁・
・将棋
将棋|
|社
説 ・ コラム
コラム||ショッピング
ショッピング||be

asahi.comトップ > シンポジウム

朝日新聞シンポジウム「中国の台頭と日米同盟」
【基調講演】ジョン・ハムレ氏(1)

 ハムレ ここにお招きいただいたこ
とを光栄に思います。そしてこの会議
を開催された朝日新聞社に感謝しま
す。今回のテーマは非常に重要なもの
だと思います。中国の台頭、そしてそ
れが日本にとってなにを意味するか、
米国にとってなにを意味するか、同盟
国としてのわれわれになにを意味する
か、という問題は、今後10年間の戦
略的問題の一つであります。ですか
ら、われわれが一緒に集まって、それ
について話し合うのは、非常に重要な ジョン・ハムレ氏
ことだと思います。それで今日ここに
これほど大勢の方がみえたことに感謝します。

 ご承知のように、この会議のテーマは「中国の平和的台頭と日米
同盟」です。このテーマはいま起きている極めて重要な3つの事態
を認識したものだと思いますので、それぞれについて述べます。

 その第1はもちろん、平和的台頭、すなわち中国の台頭です。第
2はここ日本における政治意識の変化、第3は日米安全保障の枠組
みの性質の変化であります。以下、その一つ一つについて別々に話
すことにします。

 第1に、中国で起きている劇的な変化は、われわれのだれもがよ
く知っているところです。先週はずっと北京におりましたが、中国
の変貌は驚くばかりです。実際には、中国の変貌は始まってからす
でに27年になります。私が話をしたトップクラスの政府高官は
「われわれは100年計画の4分の1を終わったにすぎない」と
語っていました。
語っていました。

 これは中国の平和的台頭と呼ばれています。もちろん、われわれ
は、それが中国にとって平和的な台頭となることを望んでいます。
正直にいって、国際政治舞台で大きな変化が起こり、しかもそれが
平和的に実現するというのは、歴史上めったにないことです。まさ
にそれが本日の討議の主題だと思います。

 一方において、中国のこのような平和的台頭は、米国の中国に対
する見方を非常に違ったものにしました。私が20年前に政府で若
手として働いていたころには、率直にいって、米国民の90%は中
国を恐れ、中国と戦争することになりそうだと感じていました。そ
れが劇的に変化したと思います。今日では、米国人の大半は、中国
との戦争が不可避だとか、あるいは有益だとか、そんなことは考え
ていません。これは中国についての考え方の重要な変化です。

 それを知る尺度の一つは、ゼーリック国務副長官の最近の演説で
しょう。彼はそのなかで、「中国には、国際システムを支える当事
国としての責任を共有してもらう」と呼びかけています。

 いま思い出されるのは5年前のことです。当時、クリントン大統
領は中国に戦略的な競争相手になるよう呼びかけました。そして米
国の政界では、中国を戦略的競争相手と呼んだとして、これを厳し
く批判したのでした。ブッシュ政府はいま、基本的には中国に戦略
的パートナーになるよう呼びかけているのです。これは注目すべき
変化です。

 こうしたことが起きたのは、中国政府が劇的なまでに洗練された
ことによるのです。ワシントンにある私の小さなシンクタンクにお
いても、それをみることができます。5年前、私がこのシンクタン
クで仕事を始めた時には、中国大使館から来る平均的な外交官はか
なり粗野な感じでした。

 現在の中国大使館は、ワシントンでもずば抜けて洗練された大使
館になっています。彼らは文化大革命で生じた空白を乗り越えてき
たのです。中国政府の人材の底の深さには計り知れないものがあり
ます。そして彼らはずっと洗練されてきました。それは彼らの対外
政策にみられる通りです。彼らはその経済力を政治力に転換する方
法をみつけました。舞台に登場したのは劇的なまでに新しい中国な
のです。

 次に第2の大きな変化に移ります。それはここ日本における変容
です。この5年間に日本の政治意識が著しい変化を遂げたことは疑
いないと思います。そしてそれは小泉首相の功績としなければなら
いないと思います。そしてそれは小泉首相の功績としなければなら
ないでしょう。それに伴って経済界でも大きな変化がありました。

 周知のように、10年にわたる経済的停滞の時期がありました
が、いまやみなさんはこれをかなりのところまで克服するにいたっ
ています。というのも、経済界がこれを絶望的な時期と受け止め、
変革が必要であると感じたからです。そしていまそれが起きていま
す。

 この5年間にわたって、それは到るところでみることができまし
た。空のオフィスビルがたくさんあった3年前のことを、私はよく
覚えています。それがいまでは、エネルギーに溢れ、生き生きとし
ています。エネルギーがみなぎっているのを感じることができま
す。すばらしいことです。

 小泉首相はまた、改革を日本の中心的な政治課題とすることに
よって、政治意識の巨大な変革をもたらしました。そして前回の選
挙は、正直にいって、選挙ではなくて国民投票でした。日本国民が
改革の推進を望むかどうかを問う国民投票だったのです。そして国
民は圧倒的多数で改革推進に賛成したのです。ここ日本では注目す
べき変化がありました。

 小泉首相はさらに、日本の世論の軍隊に対する見方をも変えてし
まいました。自衛隊のイラク派遣は、日本国民が自分たちの軍隊に
関する考え方を変える上で、それも前向きに変える上で、明らかに
大きな効果を発揮した、というべきではないでしょうか。

 みなさんの感情を害するかもしれませんが、触れなければならな
いことがあります。小泉首相の靖国神社参拝も変化を促す要因とな
り、過去には密室のなかで密かにささやかれていたにすぎない意識
が公然と表明されるようになったことです。それも本日われわれが
話題にする必要のある背景的問題であります。

 最後に日米軍事同盟について一言述べさせていただきます。ご承
知の通り、2週間前に両国の外務および防衛担当閣僚がワシントン
で会議を開き、関係強化のための協定に調印しました。それはこの
新しい関係をいっそう効率的にするものです。われわれの軍事機構
はこれまで以上に緻密かつ能率的に結び付けられることになりまし
た。私はこれを好ましいことだと思います。

 しかし、それが
不安を掻き立てて
いることも事実で
す。私は先週北京
す。私は先週北京
で中国政府当局者
と会って話しまし
たが、どの席でも
例外なく、この合
意の目的はなにな
のか、それを極め
て具体的な形で質問されました。彼らはこのために神経質になって
いるのです。その点については後で話します。

 話を変える前に一言いわせてください。東アジアのナショナリズ
ムの高揚に驚いたことを話さないわけにはいきません。先週、北京
でそれを感じました。この1年ほどは韓国へ行っていませんが、新
聞でそれをみています。率直にいうと、日本でもそれを読んでいま
す。こうした民族的アイデンティティとプライド意識の高まりは、
いまや時として、近隣諸国を不安にさせるような形で溢れ出すまで
になっています。私自身、これに個人的に不安を感じていることを
お伝えします。

 ここで少し時間を遡って、本日の討議に、より広い枠組みを提供
したいと思います。

 20世紀の国際政治には、明確に区別できる三つの体制がありま
した。最初の政治体制は古典的な「力の均衡」の国際体制でした。
それは欧州を拠点とし、その権力構造は欧州の諸帝国を基礎にして
いました。それはグローバルな体制でした。これらの帝国の支配は
世界全体に及んでいました。ところで彼らは日本に進出して植民地
にはしませんでした。しかし、当時の日本は弱体だったため、大い
にその影響を受けました。このグローバル体制は1945年まで続
きました。第2次世界大戦がこの体制を打ち壊したのです。欧州の
諸帝国はこの戦争によって完全に崩壊しました。

 戦争の後に登場したのは、まったく新しい、まったく違った国際
政治体制でした。社会と国民と政府の相互関係はどうあるべきか、
という問題をめぐり相反する2つの見解の対立、すなわち共産主義
世界を一方とし、自由主義の国際民主主義をもう一方とする対立に
特徴づけられる二極構造の政治体制でした。

 この国際体制は89年まで続きました。その終焉の日は89年1
1月9日だということもできるでしょう。それは東ドイツの市民が
ベルリンの鉄のカーテンを越えて自由に行き来できるようになった
日です。その時期が終わって、現在のわれわれは非常に違った国際
体制、質的に違った国際体制のなかに置かれています。それはわれ
われが以前にみたことのなかったものです。
われが以前にみたことのなかったものです。

 この体制はグローバルな超大国—ここでは米国—とそれぞれの大
陸に拠る地域的超大国のグループからなっています。南米ではブラ
ジル、南アジアではインド。西アジアではイランでして、率直にい
うとイラク戦争後の現在、その地位は一段と強まっているでしょ
う。欧州では欧州連合(EU)です。EUは軍事大国ではなく、経
済大国であり、政治大国であります。これらの地域にはそれぞれ2
つの地域超大国がありますが、例外は東アジアです。中国と日本の
2つがあるという意味で、東アジアは特異です。

<<前へ|次へ>>|インデックスへ戻る

▲このページのトップに戻る
asahi.comトップ|社会|スポーツ|ビジネス|暮らし|政治|国際|文化・芸能|ENGLISH|マイタウン
ニュースの詳細は朝日新聞紙面で。» インターネットで購読申し込み
asahi.comに掲載の記事・写真の無断転載を禁じます。すべての内容は日本の著作権法並びに国際条約により保護されています。
| 朝日新聞社から | サイトポリシー | 個人情報 | 著作権 | リンク| 広告掲載 | お問い合わせ・ヘルプ |

朝日新聞社から|アスパラクラブ|クラブA&A|携帯サービス|Web朝日新聞|サイトマッ
プ|文字拡大・音声

社会 スポーツ ビジネス 暮らし 政治 国際 文化・芸能 ENGLISH マイタ


ウン
天気
天気||住まい
住まい||就職・転職
就職・転職||BOOK
BOOK||健康
健康||愛車
愛車|
|教育
教育|
|サイエンス
サイエンス|
|デジタル
デジタル|
|トラベル
トラベル|
|囲碁
囲碁・
・将棋
将棋|
|社
説 ・ コラム
コラム||ショッピング
ショッピング||be

asahi.comトップ > シンポジウム

朝日新聞シンポジウム「中国の台頭と日米同盟」
【基調講演】ジョン・ハムレ氏(2)

 さてグローバル超大国と地域超大国
からなるこの国際体制は、私の見解で
は、本来的に安定した体制です。地域
超大国が1つしかないとすれば、その
限りにおいては、この国際体制が紛争
につながって然るべき理由はなにもあ
りません。しかし、ここに大きな問題
があります。アジアに二つの地域超大
国があるとすれば、それがすなわち紛
争につながる処方なのか、ということ
です。2つの地域超大国がグローバル
超大国との相互関係において互いに競 ジョン・ハムレ氏
合している地域では、戦争が避けられ
ないのでしょうか。私が本日お話したいのはまさにこのことです。

 われわれはこの地域にネガティブな動向が若干あることを正直に
みつめなければならない、と私は思います。先週はずっと中国にお
りましたが、政府当局者との会談—15回ほどありました—では、
どの会談でも例外なく、極めてネガティブな表現で、しかも非常に
本音に近い形で、日本のことが話題になりました。実際のところ、
私はそれに驚いてしまいました。どの会談でも、締めくくりには必
ず、われわれは紛争が起こることを望まない、われわれは協力する
方法をみつけたいと思っている、とのコメントがありました。

 そして政府と関係のない会談では、日本が話題に上ることはあり
ませんでした。そこで次のような疑問を呈せざるをえないのです。
これは実質的な課題というよりも、むしろ政治的な課題なのではな
いだろうか、と。その答えは分かりません。しかし、どの会談で
も、どの会談でも、日本と中国の間の緊張が容易にそれと分かる形
で感じられた、少なくとも中国政府の側ではそうだった、という事
で感じられた、少なくとも中国政府の側ではそうだった、という事
実は、無視するわけにはいきません。

 ここ日本でも、民族主義的感情の高まりがみられます。この前の
日曜日、私は同僚と一緒に靖国神社へ行きました。私は以前にも一
度、靖国神社を訪ねたことがありました。ここで実際に問題にして
いるのは博物館(注・同じ敷地内にある遊就館)のことです。

 私は古い博物館もみています。四年半前のことです。古い博物館
を貫くコンセプトは、国のために尽くすことを選んだ若者たちの個
人的な勇気でした。しかし、新しい博物館はまったく違います。新
しい博物館は、この地域について物語、それも政治的な物語を述べ
ています。

 正直にいいますと、それが歴史を完全に正直に叙述したものと
は、私には信じられません。事実そのものはおそらく間違っていな
いでしょうが、それら事実に関わる描写が非常に狭い構成になって
いることが気になりました。率直にいって、博物館の内容に同意し
ない米国人は少なくないでしょう。不幸なことに、それはいま、中
国が日本との相互関係をどうみるか、その見方の背景になっていま
す。同じことは、日本が相手との関係をみる場合にも、ますます当
てはまるようになっています。

 私は事態がまったくネガティブだとは思っていません。前向きの
動きもあることは明らかです。北朝鮮をめぐる六者協議での相互協
力は非常に好ましいことで、われわれは一緒に努力しています。こ
れは極めて重要な兆候だと思います。テロリズムに関しても、われ
われは非常によく協力していると思います。ですから、注目に値す
る前向きの事態もあると思っています。しかし、現段階では、摩擦
の増大に向かう傾向があります。私の心配はそこにあります。

 ここで中心的な問題に戻りたいと思います。アジアの平和的な将
来をいかにして確保するか、という問題がそれです。われわれが本
来的に不安定な政治環境に置かれているとすれば、いかにしてそれ
が暴力に転じないようにするか、それが中心的な問題だと思いま
す。

 これから一連の命題を提示したいと思います。最初に中国につい
て述べ、次に日本について、それから米国について述べます。

 第1に、中国はグローバルなリーダーとして認められる必要があ
る、と私は考えます。中国は現にグローバルなリーダーであり、将
来はよりいっそうそうなるはずです。ですからその承認を必要とし
ているのです。
ているのです。

 第2に、中国は国際体制の運営において、もっと大きな役割を引
き受ける必要がある、と私は考えます。これはゼーリック副長官が
中国にグローバル・ステークホールダーになるよう求めると述べた
時にいわんとしたことです。その意味は、中国が安定した国際秩序
の消費者になっているだけでは不公平であり、安定した国際秩序の
生産者にもならなければならない、ということです。

 第3に、中国は日本を目下の国ではなく対等の国としてみるよう
な将来の対日関係を承認しなければならない、と私は考えます。私
がいま述べたことは非常に重要なことです。それをもう一度繰り返
したいと思います。中国は日本を下位の、すなわち目下のパート
ナーとしてではなく、この地域における対等のパートナーとしてみ
なければならない、ということです。

 最後に、中国はその安全保障政策とその計画をもっと透明なもの
にしなければなりません。中国の透明性の欠如は大きな緊張を生み
出しています。それはこの地域における単一では最大の緊張の源泉
だといえます。

 では日本の問題に移ります。

 日本は世界のリーダーとみなされなければなりません。その理由
で、日本が国連安全保障理事会の常任理事国になることが絶対必要
だと私は考えます。安定した国際秩序を作るためには、その安定し
た国際秩序を制度化しなければなりません。それを行う場所が安保
理です。

 第二に、日本には、戦争でりっぱに国に仕えた若者たちの犠牲を
誇りとする、あらゆる権利があります。日本はそのようなあらゆる
権利を有します。しかし、それは過激なナショナリズムをかき立て
ることのないような方法で行わなければなりません。率直にいえ
ば、いま靖国神社では、私が目の当たりにみているように、小グ
ループの過激な運動家が—いわなければならないことだと思います
のでいいますが—この歴史に関して、日本全体に代わって日本の声
をわがものにしてしまっているのです。日本の主流がその声を取り
戻すことが必要だと私は思います。

 日本の主流をなす勢力は、戦争で名誉の死を遂げた人々を追悼す
るために新しい記念碑を建てるべきであり、私は個人的にそれを支
持したいと思います。私はまた、日本は憲法第9条を修正すべきだ
と考えます。日本は60年にわたって民主主義を経験してきまし
た。日本が軍に対する文民統制を維持できるものとわれわれは確信
た。日本が軍に対する文民統制を維持できるものとわれわれは確信
しています。

 そして米国についていえば、米国はこの地域に対して真に包括的
な対応策を案出する必要がある、と私は考えます。われわれは日本
の軍隊がこの地域でもっと目立つ形で前面に出ることを奨励してき
ました。私はそれを支持します。それはよいことだと思います。し
かし、それは地域内の近隣諸国を脅かさないように真に統合された
外交戦略のなかで行わなければならないでしょう。現在の時点に到
るまでわれわれには真に統合された外交戦略がなかった、と私は思
います。われわれはそれをいまここで作成する必要があると私は信
じます。

 ほかに提言が二つあります。過去100年の歴史を再生するため
に「真実と和解」に関する4者(中国、日本、韓国、米国)委員会
を設置することができれば、有益ではないかと思います。現在、ど
の国も完全とはいえない形で自分たちの側から歴史を語っていま
す。米国もその例外ではありません。われわれが一緒に集まって、
過去のこの恐ろしい部分を乗り越えられるように、この時代の共通
の歴史を書くことができれば、非常に大きな助けになるでしょう。

 軍と軍が協議する正式の制度を確立する必要があると思います。
正直にいって、私は日本の自衛隊と中国の人民解放軍の間の協議不
在に懸念を抱いています。われわれの政府の間に常設の協議機関が
ないことも懸念しています。もし危機が生じた場合、われわれはそ
れが偶然の事故によって手に負えない事態に発展するのを放置する
わけにはいきません。ですから、われわれのなすべきことは正式の
常設機関を設置することだと思います。それによって、たとえ事故
が起きても、それを単なる事故の域にとどめて危機にならないよう
にする手続きが機能し始めるのです。

 最後に申し上げたいのは、私としては、われわれが制御不可能な
将来を迎える運命にあるとは信じていない、ということです。われ
われには自分たち自身の運命を形づくる機会があると思います。そ
れにはわれわれ全体が極めて意識的かつ決然とした努力を要求され
ます。もしわれわれがいかなる変更をも行わずに今日の力のまま放
置するならば、われわれは将来、潜在的な暴力、ことによったら戦
争に直面するのではないか、と私は懸念します。しかしながら、わ
れわれがこの機会をつかんで将来を形成するならば、われわれの孫
たちに平和と繁栄の生活を与えることになるでしょう。

 いま一度、この会議を開催した朝日新聞社にお祝いと感謝の意を
表明したいと思います。彼らは私を講師として招いたことを除け
ば、あらゆる面で賢明でした。しかし、私はここに招かれたことを
ば、あらゆる面で賢明でした。しかし、私はここに招かれたことを
嬉しく思っています。どうもありがとうございます。

<<前へ|次へ>>|インデックスへ戻る

▲このページのトップに戻る
asahi.comトップ|社会|スポーツ|ビジネス|暮らし|政治|国際|文化・芸能|ENGLISH|マイタウン
ニュースの詳細は朝日新聞紙面で。» インターネットで購読申し込み
asahi.comに掲載の記事・写真の無断転載を禁じます。すべての内容は日本の著作権法並びに国際条約により保護されています。
| 朝日新聞社から | サイトポリシー | 個人情報 | 著作権 | リンク| 広告掲載 | お問い合わせ・ヘルプ |

朝日新聞社から|アスパラクラブ|クラブA&A|携帯サービス|Web朝日新聞|サイトマッ
プ|文字拡大・音声

社会 スポーツ ビジネス 暮らし 政治 国際 文化・芸能 ENGLISH マイタ


ウン
天気
天気||住まい
住まい||就職・転職
就職・転職||BOOK
BOOK||健康
健康||愛車
愛車|
|教育
教育|
|サイエンス
サイエンス|
|デジタル
デジタル|
|トラベル
トラベル|
|囲碁
囲碁・
・将棋
将棋|
|社
説 ・ コラム
コラム||ショッピング
ショッピング||be

asahi.comトップ > シンポジウム

朝日新聞シンポジウム「中国の台頭と日米同盟」
【討論】(1)高木教授、朱教授による問題提起

 加藤 本日は大
変ありがとうござ
います。これほど
お集まりいただい
たということは、
まさにこのテーマ
が日本の国民の間
でも非常に強い関
心を集めている証
左だと思っております。本日は当初予定しました以上のお席を用意
させていただきました。私ども主催者として喜ばしい限りです。

 まず、私のほうから、ディスカッションに入る前に簡単にお三方
につきまして補足的にご説明申し上げたいと思います。

 まず、朱先生ですが、先生は上海のお生まれで、日本でも教育を
受けられました。学習院大学で政治学博士を取られていらっしゃい
ます。専門は国際政治、中国現代史、国際関係論。上海の国際問題
研究所で研究員をなさったほか、日本でも総合研究開発機構(NI
RA)で客員研究員をされたり、京都大学の東南アジア研究セン
ターの客員助教授をされました。皆様もメディアなどではよく先生
のご活躍の様子やご意見はお聞きになっていると思います。著書も
多数ございまして、中国の内政、中国の政治状況、日中関係につき
ましても活発に発言なさっていらっしゃいます。

 つい最近、「胡錦涛政権 対日戦略の本音」という本を出版なさ
いまして、その中では、複雑な中国の対日感、胡錦涛政権の対日戦
略といった本日の会議にも非常に密接に絡むテーマについて、独自
の調査に基づいて本を出版されました。本日は、中国の立場から貴
重なご意見を拝聴できると思います。
重なご意見を拝聴できると思います。

 続きまして、高木先生です。高木先生は、単に中国の専門家とい
うことではなくて、アジア・太平洋という地域、あるいはグローバ
ルな視点から中国の外交、安全保障政策、さらには米中関係、日米
同盟といった点を幅広く、かつ、深く研究されていらっしゃる研究
者の方でいらっしゃいます。まさにきょうのテーマについての日本
の第一人者でいらっしゃいます。いろいろな論文、著書を著してい
らっしゃるほかに、外務大臣が有識者を集めて外交について意見を
聞くという外交懇談会というのがありますが、そこのメンバーでも
あり、アカデミズムの世界だけではなくて、実際の外交政策、立案
というところの分野でも影響力をお持ちの方でいらっしゃいます。

 最後になりましたけれども、CSISのハムレ所長でいらっしゃ
います。CSISは「戦略国際問題研究所」といっていますが、ワ
シントンにある、超党派かつ非営利の戦略問題に関するトップクラ
スのシンクタンクです。米政府や議会に政策提言などをして、ワシ
ントンで非常に影響力のあるシンクタンクです。

 ハムレ所長は先ほどもご紹介させていただきましたけれども、そ
こで2000年から所長を務めていらっしゃいまして、その前には
クリントン政権でコーエン国防長官のもとで副長官を務められる要
職に務めていらっしゃいました。その前は、議会などで安全保障問
題、国防予算などについて深く関わり、アメリカの国防政策、国防
予算といった問題のまさに第一人者、専門家でいらっしゃいます。

 きょうはこういうお三方をお迎えしてお話を聞けるということ
で、日米中、各国からのかなり貴重な意見が聞けるということで、
大変幸いに思っております。

 先ほどのハムレ所長のスピーチ、大変本質をついた分析と、それ
から、日米中、それぞれに対してなかなかプロボカティブな、なか
なか刺激的な提言を含んでおりましたが、そのスピーチを聞いて、
お招きしました2人のコメンテーター、ディスカッサントの先生に
どう思われたかというところをまずお話しいただくところから始め
たいと思います。それでは、まず高木先生、お願いできますでしょ
うか。

 高木 ありがとうございます。私は単なる一
研究者として、中国という巨大な、しかも極め
て魅惑的ななぞに数十年取り組んで、悪戦苦闘
している一介の研究者に過ぎないのでございま
す。本日はこういう晴れがましい場で私のつた
ない研究の一端をご紹介させていただく機会を
ない研究の一端をご紹介させていただく機会を
いただきまして、大変光栄に存じております。
高木誠一郎氏
 先ほどのハムレ所長のスピーチにつきまして
は、実は事前にeメールの添付ファイルとして
概要をいただいておりまして、この壮大な概要をどうやって30分
で話されるんだろうと、ほぼ不可能ではないかと感じておったんで
すが、実に見事にそれをされて感嘆した次第でございます。

 ただ、時間が限られておりましたので、この概要を拝見をして、
もっと深く突っ込んでお聞きできるんではないかと思ったところを
割とさらっと流されたところもあると思いますので、これからの討
論を通じて、そういうところをどんどん深めていくことができれば
と思っております。

 最初の発言の機会には2点だけ申し上げたいと思います。1つは
中国の台頭ということなんですが、ハムレ所長は先ほどのお話の中
で、「中国の台頭、すなわち、平和的台頭」と2つを一緒にしてほ
ぼ同義語としておっしゃいました。私の考えではまさにそこが問題
でありまして、中国の台頭というのは本当に平和的に行われるので
あろうか、行われるのであるとすれば、どのような条件があるから
こそ平和的な台頭が可能であると言えるのか、行われないのだとし
たら、どういう問題があってそれが不可能なのか。この議論をぜひ
これから深めてまいりたいと思います。

 この点につきまして、1点、私も最近研究したこともございます
ので、皆様にご紹介させていただきたいことがございます。それは
一昨年の秋ぐらいから、中国の中で「和平崛起」——クツというの
は掘るという字の土篇のかわりに山を書いた字で、クッキのキは起
きる——という用語が登場しまして、これが国際的に非常に注目を
集めたということがございます。

 この用語を提起したのは、2002年末まで中国共産党の幹部教
育の最高機関である中央党学校の常務副校長をしていた鄭必堅
(チョン・ビーチェン/改革開放フォーラム理事長)という方なん
です。この中央党学校は、かつて胡錦涛現国家主席も校長をしてい
たことがありまして、そういうことからも容易にご想像できると思
いますが、この鄭必堅さんという方は胡錦涛国家主席とも非常に近
い、いわば彼の知恵袋とも言うべき存在の方なんです。この方が2
003年11月のボアオで行われているボアオフォーラムという席
で、「中国和平崛起の新しい道」というテーマで講演された。これ
がこの考え方が世に出るきっかけとなったものなんですね。
 この講演の中で、鄭必堅という方は、中国は確かに巨大な国であ
るけれども、1人当たりの水準で見ればまだ非常に低い、おくれた
発展途上国である。従って、中国は今後とも発展を続けなくてはい
けない。中国のような国にとっては、たとえ小さな問題でも、それ
に13億という数を掛ければ膨大な問題になるのだと。他方、中国
というと、今やアジア・太平洋地域のみならず、世界的にも巨大な
存在となっておりますけれども、この中国に関わる数字を13億で
割れば非常に小さな数字になってしまう。こういう比喩を用いまし
て、中国は今後とも発展を続けていく必要があるし、それができる
ということを強調されたわけであります。

 そして、この時のスピーチ、それ以外の場での発言も総合します
と、鄭必堅さんはなぜ中国が平和的に発展できるか、崛起できる
か、台頭できるかといえば、それは中国は積極的に世界のグローバ
リゼーションの波に乗ろうとしていると。そして、このグローバリ
ゼーションによって、あるいは、グローバリゼーションの波に積極
的に関与していくことによって、中国はその発展に必要な資源、資
金、さまざまノウハウを海外から吸収することができると。それか
ら、この平和的発展を保障するためには、国内体制を徐々により開
かれた民主的なものにしていかなくてはならない。そして、中国は
それができるんだというようなことをおっしゃっているわけです。

 私の考えでは、ここにまさに問題があるわけでありまして、鄭必
堅さんは別のところで、中国が台頭する際には、かつてドイツ、日
本が台頭した時の過ちを繰り返さないんだということをおっしゃっ
ているわけです。日本あるいはドイツの台頭が軍国主義の道にそれ
ていったその要因の重要な1つは、やはり国内の政治体制が極めて
非民主的なものであって、国民の言論、結社の自由に重大な制限が
課されていた。先ほどハムレ先生のお話の中でも、ナショナリズム
のマイナスの側面というのが指摘されましたが、この非常に否定的
な、そして、排外的な、攻撃的なナショナリズムが醸成されていっ
たのも、そういう体制のもとであったと思うんですね。

 中国の現在の政治システムは、かつての毛沢東時代に比べればは
るかにオープンで、抑圧の度合いの低いものになっているとは思い
ますが、依然として民主体制の確立という点から見ると、非常に問
題が多いわけであります。この中で、従って、醸成されるナショナ
リズムも、方向性を誤るとやはり非常に危険なものにならざるを得
ない。

 ひるがえって、日本のことを考えてみますと、確かに日本の一部
には極めて排外的な後ろ向きのナショナリズムがあると思います。
しかし、日本のナショナリズムの全体的な方向性は決してそういう
しかし、日本のナショナリズムの全体的な方向性は決してそういう
ものではない。靖国の問題は外から見ると一部の人が問題の規定の
仕方を独占してるということになるわけですが、国内的に見ると必
ずしもそうでないということは、もちろん、ここにご在籍の皆さ
ん、よくご存じのとおりであります。

 そういう人たちの声ももっと外へ発信していく必要があるという
のはハムレさんのご指摘のとおりだと思いますが、話を中国に戻し
ますと、やはり国内体制の民主化がどの程度これから進んでいくか
ということが、中国が平和的に発展し得るかということを規定する
重要な要因であろうと私は考えております。

 それから、当然、中国が平和的な発展をできないというのは、要
するに、中国脅威論になるわけです。私は中国脅威論をとる者では
ありませんけれども、中国の軍の近代化、あるいは、その能力の増
強のプロセスは、必ずしも外から見ていて安心できるという状態で
はない。と申しますのは、やはりかぎは透明性の欠如にあると思う
んですね。私、ここに持ってまいりましたが、これが我が国の防衛
白書であります。これは中国の国防白書であります。この2つを比
べただけでも、いかにこの軍事力に関する情報の公開が中国におい
て欠落しているかということがはっきりわかると思います。

 なお、中国は私が今ここに持っておりますのは、2002年の防
衛白書なんですが、2004年にも出しております。ただ、私がこ
の冊子の形態で持っているのは2002年版だけで、2004年版
はネットで読んだだけですので、きょうは比較のために両国の20
02年の白書を持ってまいりました。

 こういうものを比べてみると、やはり中国の軍事力の透明性が非
常に低いということを痛感せざるを得ないわけでありまして、これ
については中国側にさらなる努力を期待したいと思います。

 もう1点だけ簡単に申し上げたいと思いますが、先ほどハムレ所
長は日米の安全保障面での協力の進化を語られました。これにつき
ましては、ご在籍の皆様もよくご存じのとおり、先月末に2プラス
2の中間報告が新聞にも掲載されておりました。このような日米の
安全保障上の協力関係の進化というのは、中国にともすると脅威と
とられ、それがまた中国の軍事力の増強に拍車をかけると。そし
て、それがまた日本に、あるいはアメリカにはね返ってきて、中国
に対する脅威感形成の刺激になるというこの悪循環に導きがちなも
のだという問題があると思うんですね。

 これをどうやって克服していくかということを我々は日米関係を
緊密化する中で考えていかなくてはならない。そして、それにつき
緊密化する中で考えていかなくてはならない。そして、それにつき
ましては、先ほどハムレ所長が「日米中韓4カ国の国防関係者の
フォーラム」ということをご提案になりました。これは私は非常に
よいアイデアだと思います。

 そのほかに、私はやはりASEAN地域フォーラムというこの地
域に既に存在する多国間の安全保障対話のメカニズムを強化する上
で、日米が、さらには中国もこれに入っていただいて協力していく
ということが必要であろうと思います。

 このASEAN地域フォーラムに軍事関係者も関与して対話を進
化させていくということにつきましては、防衛庁長官だった中谷さ
んも、ARFということを明示的にはおっしゃいませんでしたけど
提案されましたし、中国ははっきりとARFの中でそういうことを
するということを提案しております。この点についても3者間の協
力の進化、そして、その成果が今後に期待されなくてはいけないだ
ろうと思います。

 加藤 高木先生、どうもありがとうございました。中国の台頭は
平和的たり得るかと。それから日米中が不信の悪循環から脱却でき
るかと。非常にきょうのタイトルの問題を考える上で本質的な基本
的なポイントを指摘していただいたと思います。それでは続きまし
て、朱先生、よろしくお願いいたします。

 朱 このすばらしいシンポジウムにお招きい
ただきまして、心から感謝いたします。私は1
986年、日本に参りまして、その後、主に日
本に研究の拠点を置いて勉強してまいりまし
た。その前に、上海国際問題研究所で84年か
ら5年にかけて、当時のバークレー大学のスカ
ラピノさんたちとの共同研究に参加したことが
あります。その時のアメリカ研究者の中国につ 朱建栄氏
いての見方は、基本的に好奇心に満ちた、この
未知の中国について好奇心を持っていたというような印象を持って
おります。

 2002年、半年間はジョージ・ワシントン大学の研究所に席を
置いて、アメリカの研究者ともいろいろ交流しました。ブッシュ政
権の登場直後ということもあって、その時に、クリントン政権の対
中政策への違いを目立たせるということもあって、当時、中国に対
する厳しい見方、封じ込めるというような強硬な言論が割に多かっ
たように感じられました。
 それに対し、今年に入って、特にこの夏以降、アメリカから出て
きた中国へのメッセージというのは、またかなり変わってきたと思
うんですね。9月のゼーリック国務副長官の米中全国委員会でのス
ピーチ、そして、きょうのハムレ所長のスピーチ。この中国を含め
た東アジアについて、やはりこれからのアジア・太平洋地域、特に
これらの大国関係をどうすればいいのか、未来に向けて建設的な枠
組み構築を真剣に考えているんではないかなと思います。

 そういう中で、今のハムレ所長、ゼーリック国務副長官のお話か
ら、中国の認識について、私は共有することをまず申し上げたいと
思います。

 1つは、中国は旧ソ連ではない、旧ソ連と同じではないというこ
とですね。中国の国内政治はイデオロギー優先ではなく、アメリカ
とイデオロギーで対決しようとも思っていません。確かに今の中国
の政治体制は、アメリカ、日本から見れば、真の民主主義になって
ないということは事実ですね。ただ、どの国にも発展の段階があっ
て、単純に民主主義を複政党制、総選挙というようなもので図ると
すれば、私はちょっと単純過ぎると思います。

 20世紀の初め、その後戦争を起こした国々も、その時点で複政
党制、総選挙が行われていました。そして、現在、世界最大の民主
主義国家と言われるインドについて、確かに民主主義の体制はあり
ますけれども、中国の国民の大半に、我々はインドになりたいかと
聞いたら、おそらく99%の人は首をかしげるでしょう。なぜな
ら、民主主義といっても、インドでは人間の平等を保証することす
ら解決できず、カースト制度がまだ解消されていません。何よりも
中国の国民の生活水準は、20年前はインドと同じレベルだったの
が、今、何倍も増えています。

 これをここで申し上げて何を言いたいかといいますと、中国の民
主化というのは私はすでにそのプロセスに入って、もう逆戻りので
きない段階に入っているが、時間は必要だと思います。本当の国民
の幸せ、その自由、人権を確保できる民主化というのは、経済の発
展、国民生活の向上、平等の分配システム実現、さらに、法治国家
の形成、その上で、真の民主主義が確立できると思います。

 中国は今、社会の底辺で、村のレベルで直接選挙は10年前から
導入されています。温家宝首相は1カ月前、ヨーロッパの記者に対
し、村より高いレベル、4、5万人単位の郷、鎮レベルでの直接選
挙を数年以内に導入するだろうという見通しを述べています。経済
発展に伴って、中国の国内体制ももっと解放され、民主化の方向に
向かっていくんだろうと思います。中国はその努力のプロセスに
あって、現段階で中国の体制が違うから、それを別のもの、自分と
あって、現段階で中国の体制が違うから、それを別のもの、自分と
全く異なる異物と扱ってはならないと思います。

 2点目に私が共有できることは、この中国はこれからの発展方向
は、世界の大きな流れの中に組み込まれていく以外にないという認
識です。中国の経済の対外依存度は、はるか今の通商大国の日本以
上のものがあります。そして、中国の指導部に外国留学組がどんど
んと帰り、現在、大臣クラスにアメリカ留学で帰国した人が少なく
とも2人います。

 日本留学で戻った人が中国の副局長クラス以上では、少なくとも
150人ぐらいいます。もう世界の大勢、流れを知った中国人がこ
れからの中国のリーダーになっていきます。もう一つつけ加えます
けれども、中国のエリート、課長クラス以上のエリートは毎年50
人ずつ、ハーバード大学でずっと研修を毎年重ねてやってきまし
た。

 このような中国、方向について、あらかじめ決めつけるんではな
く、中国の大きい発展の方向というのは私は疑いのないものと考え
ていいんではないかと思います。

 3点目です。それは高木先生のお話と共有するものがあります
が、中国の発展の方向について、アメリカも日本も懸念を持ち、心
配しているところがある、これはよく理解できます。ラムズフェル
ド国防長官が10月に北京を訪問している。今の中国について、軍
事力について心配はしてませんが、これから中国の軍事力は一体ど
こに向かっていくのか、今ちょうどその分かれ目に来ているんでは
ないかという指摘をしたと思いますが、それについて、中国ももっ
と耳を傾けるべきだと思います。

 中国が確かにここまで急速に大きくなったということは、世界も
驚きの目で見ていますし、中国自身、驚いていると思います。なぜ
最近中国の電力事情、電力不足が起きているのか。わずか5年ぐら
い前の朱鎔基首相の時代、中国のこれからの経済発展では、もう三
峡ダムがあれば十分だという見通しで、原子力発電所の建設とか、
相次いでみんなストップしたんですね。しかし、ここ数年、急速電
力エネルギーの需要が伸びて、経済発展、外資の導入なども圧迫す
ることになってしまったんですが、中国自身もここまで自分が伸び
ているということは多分予想してなかったと思います。

 そこで、中国についての認識をもう一点言いたいんですけれど
も、それは外部も中国も1つの学習のプロセスにあると思います。
中国は外部について、毛沢東時代は完全な鎖国政策で、外国のこと
に耳を傾けませんでした。なぜなら、当時、中国の国内政治体制も
に耳を傾けませんでした。なぜなら、当時、中国の国内政治体制も
経済も鎖国状態にありました。{ケ小平が改革開放政策を初めてか
ら、もう外国、海外の声を聞かざるを得なくなったんですけれど
も、その時点では経済優先を{ケ小平自体が強調していました。言っ
てみれば、外の世界でアメリカとロシアとほかの国とけんかしよう
とどうと関係なく、中国は自分の経済発展をすればいいと、{ケ小平
時代はそのような方針でした。

 しかし、97年のアジア通貨危機が中国に勉強の機会を与えまし
た。中国経済はもはや外部の経済から切り離して独自の政策はやれ
なくなって、もっとほかの国と協調してやらないといけないという
認識がありました。これがその後、中国が東アジア共同体を推進す
る出発点にもなりました。

 もう1つ、97年の通貨危機で、中国は初めて5億ドルぐらい、
東南アジアに対して援助をしました。日本の援助に比べれば10分
の1も数十分の1もないものですけれども、中国にとっては現代歴
史上初めての大きな一歩となりました。そして、東南アジアから評
価されました。

 その評価を受けて、その後、中国は責任ある大国になるべきだと
国内で主張されるようになりました。現在、平和の台頭というよう
な表現もありますけれども、その表現は、ブッシュ大統領の登場初
期、中国がまたソ連と同じようになるんではないかという警戒心に
対して出したものです。

 しかし、一昨年から去年にかけて、平和の台頭という、このライ
ジング(rising)という言葉は、アメリカから見れば平和的にという
言葉に理解の重点を置いて理解してくれるかもしれませんけれど
も、周りの国、日本を含めて、中国の台頭に対しておそれる、心配
する、自分の地盤が沈下するんではないかと心配する声があるとい
う指摘を受けて、実は最近、中国国内で「平和の台頭」という表現
すら使わなくなりました。同じ鄭必堅さんが最近打ち出したスロー
ガンというのは、国内では「調和の社会をつくること」、対外的に
は「平和協力を重点に置くこと」、台湾に対しては「平和統一を時
間をかけてやっていくこと」と微妙に表現を変えているわけです
ね。

 中国自身もそのような外部がどのように自分を見ているのか、そ
れを見て反応する学習のプロセスであると思います。現在、アメリ
カから、中国は責任ある大国、責任ある世界の株主になれと、その
ためには国内の人権問題を含めて、情報の公開を含めてもっと改め
なさいと。そのような表現に私は中国はもっと耳を傾けると思いま
す。
す。

 一方、外部についても同じです。今特に日本が、中国の台頭で私
はちょっとパニック状態にあり、かつてのような中国を見る余裕を
失いかけていると思います。中国台頭は、今のハムレ先生がおっ
しゃったように、これから日本と一緒にアジアの大国としてやって
いけるかどうか、中国にとっても試金石ですが、日本にとっても同
じです。

 この100年、むしろ日本がこの地域の大国であり、その実力を
果たしてきた。おそらくそのようなプライドもあったと思います。
急速に台頭する中国とどうつき合うか、日本も同じ問題があると思
いますが、一緒に日本、中国、アメリカが勉強しながら、一緒に大
国同士のプライドを持ち、敬意を表し合って、未来に向けて、世界
に貢献する枠組みをつくっていくべきだと思います。

<<前へ|次へ>>|インデックスへ戻る

▲このページのトップに戻る
asahi.comトップ|社会|スポーツ|ビジネス|暮らし|政治|国際|文化・芸能|ENGLISH|マイタウン
ニュースの詳細は朝日新聞紙面で。» インターネットで購読申し込み
asahi.comに掲載の記事・写真の無断転載を禁じます。すべての内容は日本の著作権法並びに国際条約により保護されています。
| 朝日新聞社から | サイトポリシー | 個人情報 | 著作権 | リンク| 広告掲載 | お問い合わせ・ヘルプ |

朝日新聞社から|アスパラクラブ|クラブA&A|携帯サービス|Web朝日新聞|サイトマッ
プ|文字拡大・音声

社会 スポーツ ビジネス 暮らし 政治 国際 文化・芸能 ENGLISH マイタ


ウン
天気
天気||住まい
住まい||就職・転職
就職・転職||BOOK
BOOK||健康
健康||愛車
愛車|
|教育
教育|
|サイエンス
サイエンス|
|デジタル
デジタル|
|トラベル
トラベル|
|囲碁
囲碁・
・将棋
将棋|
|社
説 ・ コラム
コラム||ショッピング
ショッピング||be

asahi.comトップ > シンポジウム

朝日新聞シンポジウム「中国の台頭と日米同盟」
【討論】(2)中国は「脅威」か

 加藤 3先生からいろいろな中国の台頭につ
いての考え方が示されましたけれども、ディス
カッションの前半では、要するに、この台頭と
いうものをどう見たらいいのかというところを
もう少し議論を深めたいと思います。そのあ
と、今後の対応をめぐる議論をさらに深めてい
きます。
加藤洋一

 それでは、まずハムレ所長にお聞きします。
アメリカは今の中国を一体どう見ているかということなんですが、
朱先生からもご指摘があったように、ラムズフェルド国防長官はか
ねていろいろな機会をとらえて、中国の軍事力の増強に対して非常
に強い警戒感を示しています。

 一方、ブッシュ大統領の来週の訪日に先立って、私ども朝日新聞
は数日前インタビューしたんですけれども、その時、大統領は一度
も軍事力の増強に対する警戒に言及しなかったんですね。知的所有
権の問題とか、通商に関する両国、米中が取り組まなきゃいけない
問題というようなことは言及したんですけど、ラムズフェルド国防
長官が言うような警戒感、軍事力の増強に対する警戒感というのは
一切言及しなかったんですけど、同じ政権の中でもかなりミックス
メッセージといいますか、違った見方が示されているというのが現
状ではないかと思います。

 さらに広げて、野党の民主党、あるいは、それこそワシントンに
CSISをはじめとするたくさんあるシンクタンクの中の研究者の
方々の発言なども含めれば、アメリカの中での対中感というのは非
常に幅が広いと、これが現状だと思います。
 そこがまた私たちにとっても、どう台頭する中国とつき合って、
この地域の秩序をつくっていくかと考える上での難しさの一つとも
なっているのが実態だと思います。ですので、ここでまずハムレ所
長には、一体アメリカの中国観というのは今どうなっているのかと
いうところをご説明いただければありがたいと思います。

 ハムレ まず、おっしゃることはその通りで
す。まったく混乱しているのです。なぜならわ
れわれ自身が混乱しているからです。私は関係
者と会ってはこう話すのですが、米国の政界内
部には中国に関して、5つの有力な党派がある
と思います。最初に申し上げたいのは、米国に
は多数政党がないということです。あるのは3
つの少数政党なのです。すなわち、民主党、宗 ジョン・ハムレ氏
教的共和党、そして伝統的な保守的共和党で
す。

 これらの3つのグループは、中国に関してはさらに5つの異なる
サブグループに分かれているのです。民主党の半分は労働組合とつ
ながっており、中国を大きな脅威とみなしています。なぜなら中国
は米国の労働者から職を奪っているからです。

 民主党のもう半分は、「ハイテク・シリコンバレー・娯楽産業」
派で、彼らは中国を気に入っています。中国はすごいと思っていま
す。宗教的共和党は基本的には中国や中国の人権状況に対してネガ
ティブな態度を抱いています。

 そして伝統的な共和党はさらに2つに分かれる傾向があります。
一つはビジネス派の共和党で、中国で起っていることは願ってもな
いことだと考えています。それを逃す手はないと考えています。

 そしてもうひとつは国防系の共和党で、彼らは中国を将来の敵、
脅威であると見る傾向があります。私はこのように、中国に関する
見方ではおよそ5つの党派があると考えます。いまはそれよりも分
類しづらくなっていて、共和党と見方を共有する民主党などなど、
いろいろあるのですが、この5つが有力だと思います。

 ですから、アメリカ人の混乱した声を耳にされるのは、われわれ
には現在非常に違った意見があるということなのです。15年前、
中国は圧倒的に軍事的脅威とみなされていました。しかし現在、中
国の驚異的な経済開放の結果、経済的な観点から中国に対する関心
は驚くほど大きくなりました。別の観点からは脅威としても捉えら
れています。ですから、我々は中国に対して非常に混乱したイメー
ジを持っているのです。
ジを持っているのです。

 ところで、ラムズフェルド長官は国防の長官なのです。だから、
中国に関して安全保障上の懸念を口にするのは彼の仕事なのです。
ですから、国防長官が中国について(安全保障の問題を)語るのは
まったく当然のことであります。同時に、米国の大統領がこの問題
を強調しないことも悪いことではありません。ということは、この
問題を話すのは国防長官だということです。

 私は、アメリカの今日の立場をもっとも正確に反映しているの
は、ゼーリック国務副長官の演説に含まれていると思います。朱教
授がおっしゃるとおり、それは中国に関する新しい態度でありま
す。われわれは中国を以前とは非常に違った見方で見ているという
ことです。

 すなわち、中国はソ連とは違うということです。これは二つのイ
デオロギーの巨大な闘争ではありません。中国はわれわれにとって
大きな挑戦であり、われわれには中国とは深刻な相違点がありま
す。

 しかし、これらすべてなんとかすることが出来る問題なのです。
対話と討議を通して解決することができるのです。そして軍事的観
点からのわれわれの主要な懸念は、透明性の欠如なのです。また、
経済的観点からのわれわれの主要な懸念は、知的所有権の保護の欠
如であります。それでもわれわれは将来、中国と前向きの協力関係
を築くことができると見ています。

 加藤 どうもありがとうございました。アメリカの中での非常に
多岐にわたる中国観の状況を的確に分析してご説明いただきまし
た。

 次に、高木先生にお聞きします。先ほどコメントの中で、日米中
の中で不信感が高まっていくサイクル、そこをどう克服するかが課
題だという非常に貴重なご指摘をいただきました。そこで尋ねした
いのは、日本として中国の脅威を一体どこまで感じたらいいのかと
いうことです。

 最近行われてきました在日米軍の再編協議の中でも、その前提と
なった2月の2プラス2、日米安全保障協議委員会で合意された共
通戦略目標、その中では、中国、台湾海峡の平和的解決というのが
入ったことによっていろいろ波紋を呼んでいるわけです。けれど
も、やはり在日米軍再編の隠れた主役といいますか、テーマはやは
り中国なわけですね。もちろん、テロとの戦いというのもあるわけ
ですが、中国が1つの大きな要素であるということは否定できない
ですが、中国が1つの大きな要素であるということは否定できない
と思うんですね。

 ただし、一体どこまで日本は中国を——政府は「脅威」という単
語を使いませんけれども、あえてここで使わせていただければ——
脅威と見ていいのか、あるいは、見るべきなのか。ここは非常に重
要なポイントだと思うんですね。高木先生にまずそこを教えていた
だきたいと思います。

 高木 私が考えますのは、中国の特に軍事的な面における危険性
ということについて、一番日本として心配すべきは、やはり不確実
性、不確定性だと思います。だからこそ、これに対する対応が難し
いわけですが、脅威である、危険であると断定し切ってしまうと、
いわゆる自己充足的予言のわなに入ることになってしまって大変危
険だと私は思います。

 つまり、中国を脅威と見なして、そのような対応を積み重ねるこ
とが、中国の脅威としての存在、行動のあり方をより強めてしまう
という問題があります。先ほど朱建栄さんのお話にもありましたよ
うに、現時点で中国が日本にとって危険な存在であるということは
ないわけです。

 しかし問題は、将来に向かっての発展の動向によっては危険な存
在になるかもしれない、そういう不確実性を秘めているというとこ
ろで、これに対する対応を的確にとる上で、危険な存在になるよう
なほうに中国を刺激しない、刺激しないように注意をはらいながら
これに備えていくということが、日本のみならず、この地域におけ
る日米安保体制の基本的な視点であるべきだろうと思います。

 であればこそ、先ほどハムレ先生のおっしゃった日中米韓の国防
関係者の間のコミュニケーションを図るという構想に私はおおいに
賛成したわけです。それと同時に、地域の多国間の安全保障のメカ
ニズムというのをつくり、そこにアメリカも日本も中国も参加して
いくという方向性を追求することが大事なんだろうと思うんです
ね。

 やはり中国はまだ、先ほども国防白書の比較をお見せしましたけ
れども、自分の国の軍事力の近代化についての説明が足りていませ
んし、自分の国の平和的な意図というものを十分に外の世界に説明
し切れていないと思うんですね。

 先ほど朱建栄さんが紹介された鄭必堅さんの最近のスピーチ、実
は私は先週中国に行っておりまして、これは中国で手に入れたもの
なんですが、鄭必堅さんはやはりアメリカの人に中国の平和的発展
なんですが、鄭必堅さんはやはりアメリカの人に中国の平和的発展
ということを説明する上で、現在の中国は70年代のソ連とは違う
んだと。

 この違いは、1970年代の末から、つまり、中国が改革開放の
道に歩みだして以降、中国はソ連と全く違う存在になってきたと鄭
必堅さんは説明されます。その中で、鄭必堅さんは、1979年に
ソ連はアフガニスタンに侵攻したけど、中国は以後、平和的な対外
政策をとってきていると言われたんですが、ベトナムを攻撃したこ
とについては何も言っておられない。こういうところがやはり外国
からの信頼感をかち得る上で今一つ問題な点ではないかと私は感じ
るわけであります。

<<前へ|次へ>>|インデックスへ戻る

▲このページのトップに戻る
asahi.comトップ|社会|スポーツ|ビジネス|暮らし|政治|国際|文化・芸能|ENGLISH|マイタウン
ニュースの詳細は朝日新聞紙面で。» インターネットで購読申し込み
asahi.comに掲載の記事・写真の無断転載を禁じます。すべての内容は日本の著作権法並びに国際条約により保護されています。
| 朝日新聞社から | サイトポリシー | 個人情報 | 著作権 | リンク| 広告掲載 | お問い合わせ・ヘルプ |

朝日新聞社から|アスパラクラブ|クラブA&A|携帯サービス|Web朝日新聞|サイトマッ
プ|文字拡大・音声

社会 スポーツ ビジネス 暮らし 政治 国際 文化・芸能 ENGLISH マイタ


ウン
天気
天気||住まい
住まい||就職・転職
就職・転職||BOOK
BOOK||健康
健康||愛車
愛車|
|教育
教育|
|サイエンス
サイエンス|
|デジタル
デジタル|
|トラベル
トラベル|
|囲碁
囲碁・
・将棋
将棋|
|社
説 ・ コラム
コラム||ショッピング
ショッピング||be

asahi.comトップ > シンポジウム

朝日新聞シンポジウム「中国の台頭と日米同盟」
【討論】(3)中国の視点など

 加藤 朱先生にお尋ねしたいんですが、それでは、中国の対日戦
略、あるいは対米戦略は今どうなっているんだろうかということな
んですけれども、先ほども「台頭という単語は使わない」というこ
とは大変おもしろいと思いました。どう見られているかということ
に神経を使っているということはうかがえたんですが、それでは、
本質的に日本に対して、あるいはアメリカに対して、どういう関係
を築こうとしているのか。まさに先生は最近の本で胡錦涛政権の対
日戦略という本をお出しになられたばかりで、第一人者でいらっ
しゃるわけですけど、そこの中国側の台頭を踏まえた対日、対米戦
略はどう見たらいいのかというところを教えていただけますでしょ
うか。

 特に、先ほどハムレさんもご指摘なさいましたけど、日本と対等
な大国としてこの地域で生きていけるのか、これは非常に重要なポ
イントだと思うんですね。私、全く中国の歴史は素人ですが、よく
聞きますのは、中国の歴史を見ても、上下関係で地域の国とつき
合ったことはあるけど、対等につき合ったという歴史はないという
ことをよく聞きます。いわば日本との互角共存ができるのかという
のは非常に大きなテーマだと思うんです。そういう対日戦略、ある
いは対米戦略。ここを今中国はどう考えているのかと、ご説明いた
だければありがたいと思います。

 朱 中国の対米、対日戦略は、私は流動的な
もので、今これという戦略というものはないん
ではないかと思います。

 20年前に中国から見るアメリカと、10年
前に見るのと、今日見るのと、みんなそれぞれ
違っていると思いますね。現在、アメリカにつ
いては、やはり期待と心配と、両方あるかと思
朱建栄氏
うんですね。中国の今のエリートの留学、実は
大半はアメリカに行っています。中国人にとっ
て、アメリカという大きな国、いろんな夢が実現できる国、世界に
対しても夢を持って常に求め続ける国について、中国は、多くの中
対しても夢を持って常に求め続ける国について、中国は、多くの中
国人、特にエリートはかなり共感するものがあるんですね。

 ただ、一方、アメリカは今世界最大の軍事力を持ち、21世紀に
おける唯一の超大国として——数年前にアメリカのいろんな学者か
らそういうような議論もありましたけれども——21世紀はアメリ
カの一国支配の世紀にしようと。その中でいかなるチャレンジャー
が出てきても、それをその芽を摘むんではないか、つぶすんではな
いか、すなわち、今の台頭する中国に対して、アメリカが封じ込め
をやったり、中国の発展の足を引っ張ることをやるんではないか
と、このような心配は今日まであるのも事実です。

 ただ、冒頭も言いましたように、ゼーリック国務次官の重要な演
説というのは、中国の中で大変真剣に今研究されていると聞いてい
ます。それを踏まえて、今回のブッシュ大統領の訪中で、米中の首
脳のレベルで戦略的な対話が行われると思います。その中で、私の
理解では、中国は絶対アメリカの地位に挑戦しない、アメリカと対
決しない、東アジア地域では、アメリカのプレゼンス、米軍のプレ
ゼンスについても容認する。むしろ、東アジアの安全保障の枠組み
については、今後もアメリカが参加するだけでなく、リーダーシッ
プもとってほしいと、私はそのような中国側の、アメリカ側のいろ
んな発言を踏まえて、そのような反応に出る可能性が大きいんでは
ないかと思っています。

 一方、日本についてですけれども、これもやはり複雑な二面があ
ると思いますね。内心、やはりかつての戦争について、中国の中で
その考えの根底に残っている、これは事実ですね。日本にとってあ
の戦争は、大半の日本国民にとって、被害者の一面もあれば、加害
者の一面も、両方あったわけですけれども、中国にとっては完全な
被害者だったわけですね。

 人間はだれでも、被害者だった一面をよく覚えます。ましてあの
戦争の多くの被害者の遺族は、今の中国で数千万人単位、億人単位
で生きていますし、多くの戦争関連の訴訟、従軍慰安婦問題、強制
連行問題、まだ訴訟は進行中、さらに、旧日本軍が残した数十万発
の毒ガス化学兵器というのはまだ処理されていない。それが数カ月
に一度、どこかで漏れて緊急疎開し、死傷者が出ているんです。

 そういう意味で、中国のなかでのかつての侵略戦争についての過
敏ないろんな認識というのは、対日カードというよりも、このよう
な不幸な戦争を引きずった結果だと思うんですね。それについて
は、日中双方で努力して克服していくべきだと思います。

 一方、これからの日本の、安全保障面を含めての進路ですけれど
も、それも中国の中で、基本的には心配してないんですけれども、
心の底には懸念もあると、こういうような複雑な状況だと思いま
す。
 私も中国で講演した時に、中国の中で、一般的に言われている日
本の軍事大国化、軍国主義の危険性というのは私はないと申し上げ
ました。理由は5つ挙げました。日本は平和憲法を持っているこ
と、日米安保体制というのはそのような役割も果たしていること、
日本のシビリアンコントロールが徹底されたこと、そして4番目
に、日本の国民が戦後の長い平和の時代を経験し、もう戦争を反対
であること、さらに5番目には、今の国際環境にはいかなる国も拡
張的な政策をとるということは容認しないことと言いました。

 一方、中国国内の心の中にある懸念もここで合わせて申し上げた
いと思います。

 1つは、日本の外交や安保の方針を含めて、これからの進路につ
いて、これは絶対する、これは絶対しないというけじめ、この分か
れ目はどこにあるのか、外部には見えません。なぜなら、世界に、
アジアに大きな被害を与えたあの戦争についてすら、日本政府関係
者すら美化する人、肯定する人がいます。もちろん、私は日本にい
て、実は大半の日本国民は違う認識を持っているということはよく
わかります。小泉首相も中国に対して侵略戦争だった、そして、A
級戦犯の14人も戦争犯罪者だったとおっしゃっているという判断
を私は評価したいんですね。

 しかし、問題は日本の中で、今のようないろんな言論・意見があ
る中で、日本はこれから一体どのような国になるのか、はっきり
言って方向は外部には見えません。

 私の友人で神戸大学の王柯教授が、先日、朝日新聞に1つの投書
をしました。戦争日本と戦後日本を区別しようと、中国の中で、戦
争の日本ばっかり反対、批判し、今の日本の実情を知らないまま批
判しているのはよくないと彼は言いました。ただ、一方、それをも
たらした一因は日本国内にあるんではないか。そもそも、今の日本
は戦争と決別して平和の道を歩んだわけです。しかし、今の日本
は、その決別したけじめということをあいまいにしようとしていま
す。極東軍事裁判すら正当性があるかどうかと議論をしています。
あの戦争は悪くなかったとしています。こういう声がどうも増えて
います。

 となると、日本自身が戦後の日本、本当は戦前の日本と決別して
違うものだということを世界に示せていないわけですね。そうする
と、相手にもいろんな誤解を与えると思うんです。今後の日本を考
える上で、私はやはり戦争について、戦後の処理について、この一
線は超えない、日本は今後もこの一線は超えない、これはするけれ
どもこれはしないということを、もっと周辺国そして、世界が理解
するような形で示さないといけないと思います。

 2点目は、日本の大きさです。中国の台頭ということでいえば、
今の日本から中国はすごく大きく見えますけれども、しかし、今、
日本のGDPはドル換算で中国の3倍です。アジアの半分を占めて
日本のGDPはドル換算で中国の3倍です。アジアの半分を占めて
います。日本の技術力はアメリカの軍事力をも支える力を持ってい
ます。

 このような大きさというのは、日本の中であまり自覚せずにいろ
んな変な発言をすると、日本の中では、いや、これは個人の発言と
しても相手の国にはすごく大きく伝わる。だって、日本の大きさと
いうものは、ほかの国にはわかっているという部分を私はもっと注
意すべきだと思います。

 最後に、3点目ですけれども、日本の中で民主主義になっている
のは大変立派なことです。ただ、一方、何か一つの方向に対して、
日本の中で、本当に健全な牽制勢力、常に両者でそういうところで
バランスをとっているというようなことはできているのかどうか、
ちょっと疑問です。

 かつて、PKOが初めて海外に出るということについては、大半
の民衆は反対しました。しかし、いったん通過したら、どこに出て
も、戦後の多くの今までのタブーを超えて、イラク派兵でも、もう
日本の中で特に大きい牽制は出ていません。消費税が3%になる時
はみんな反対しました。5%になったら、社会民主党を含めてみん
な支持しました。日本の中で、結局これからある方向に対して、こ
れは絶対ノーと、こういうような牽制のものはどこなのか。

 中国の政治体制は問題だと思いますけれども、私は一つだけ言え
るのは、中国の国民はこの150年以来、いろんな戦乱を経験して
きた。絶対戦争はだめだと、もう二度と、もうあのような大きい戦
争は。それが本当に仮に指導部がそれをやろうとすれば、反対が起
きる、大きな牽制勢力が起きる。文化大革命というような熱狂に
走ったこともありましたけれども、はっきり言って、それはおもに
最初の1年から2年のことで、その後、大半の国民、中国の民衆は
もう白けた目で距離を置いていました。外部には、人民日報の社説
など、おもに伝わったんですけれども、中国の国民はやはり極端な
選択に対して距離を置く、バランスをとろうとする。私はそこはあ
ると思いますね。

 ですから日本も、韓国や中国など近隣諸国が内心思っているその
ような懸念に対しても、日本の中で仮に平和憲法改正などをするに
しても——それは当然、日本の内政ですけれども——もっとほかの
国がそれを納得、理解できるような形でしなければならないんでは
ないかと思います。

 加藤 朱先生、どうもありがとうございました。日本の現状、政
策の方向性などについて、鋭い視点に富んだご指摘があったと思い
ます。日本人としてもなるほどなと思う指摘があったと思います。

 さて、ハムレさんがスピーチの中でご指摘、提起なさいましたけ
ど、非常に大きな考えるべき課題は、こういう地域に2つの地域の
ど、非常に大きな考えるべき課題は、こういう地域に2つの地域の
大国があって、そういう状況、そういう構造というのはいずれ紛争
に結びつくんじゃないかと。これが一番大きな考えるべき課題だと
ご指摘なさいました。ここで、どうあるべきかではなくて、どうな
ると思うかというところをお聞きしたいと思います。ハムレ所長か
ら、お願いいたします。

 ハムレ いやいや困りましたね。では、私が一番心配しているこ
とを言わせてください。

 私は、われわれ関係国がいずれも内向きの政治指導者を抱えてい
るということを懸念しています。彼らは、国際的な責任よりも、内
向きで、国内の聞き手に向かってしゃべらなければならないと感じ
ているということです。ですから、他の国を非常に刺激的するが、
国内的には受けのよい発言が容易になります。

 私はこの状況は今ほとんどどの民主国家にもあると見ています。
どの国にもあって、率直にいえば日・米・中も例外でありません。
そして、もしこの状況が続けば、私はこの地域に緊張が高まること
でしょう。各国民がますます互いに対して過去に関する不平苦情を
募らせ、現在の激情で過去を再解釈する結果、徐々にこの地域にお
いてにらみ合いの状況が生じていくことを心配しています。

 米国は日本と中国のどちらかを選らばなければならないという状
態に置かれたくはありません。もちろん、米国は日本に好感を抱い
ています。両国は同盟関係にある国ですから。しかし、米国も日本
も、中国と衝突するわけにはいかない段階にきているのです。です
から、政治指導者が自国民に対してだけ話せばよいという態度から
一歩身を引き、国際的に、もっと大きな政治家としての役割を発揮
する意欲を持つ必要性が本当に高まっていると思います。

 加藤 では、高木先生、お願いいたします。

 高木 もちろん、そんな難しい問題には答え
られるわけはないんですが、2点だけ申し上げ
たいと思います。

 1つは、1945年8月15日までの日中間
の不幸な歴史について、これをどう克服するか
と。中国側の良心的な方の中には、いや、これ
は日中2000年の友好の歴史に比べれば10
高木誠一郎氏
0年にも満たないごくわずかな期間であると、
我々はまた友好の時代に戻ることができるんだ
という言い方をされる方がいらっしゃるんです。しかし、私は残念
ながらこの比喩は現在の、あるいは、今後の日中関係を考える上で
はあまり役に立たないと思います。

 やはり過去の日中の関係というのは、一方が圧倒的な軍事力なり
影響力を発揮し、他方が劣位にあるという関係であったわけで、こ
影響力を発揮し、他方が劣位にあるという関係であったわけで、こ
れは2000年の友好の歴史も基本的にそうであったわけですの
で、その時代を繰り返す必要はないし、繰り返すわけにはいかな
い。

 やはり今後の日中関係は、まさにハムレ所長が問題提起されたよ
うに、2つの大国として、対等かつ友好的に関係を処理していくと
いうことでありまして、これができるかできないかと言われても、
これもやはりできないと言ったことがまた自己充足的予言になるの
も悔しいわけでありまして、我々の世代に課せられた大きなチャレ
ンジだろうと考えております。これを何とか乗り切っていく努力を
せざるを得ないというのが我々の現在置かれた立場だろうと思いま
す。

 それから、民主体制の問題について一言、先ほど申し上げたこと
を補足したいと思うんですが、これも今のお答えに関係することで
すので補足させていただきたい。中国に西側の基準から見て民主体
制が欠けているということで、中国はけしからんとか、そのことも
危険だというようなことを私は申し上げたかったのではありませ
ん。先ほど朱建栄先生は、日本が軍国主義化する過程では、特に初
期の時代には、日本には多党制があったということを申されました
が、そういうまさに未熟な、民主化しつつある社会というのが非常
に危険性をはらんでいるということを私は指摘したかったわけであ
ります。

 安定した民主体制になった国というのはそんなに危険がないと思
うんですが、民主化しつつある国というのは、ともすれば感情的
な、そして、対外拡張的なナショナリズムに走りがちだと。そこを
どうマネージしていくかというのが中国にとっての今後の大きな課
題であろうと思いますし、周辺の諸国も懸念せざるを得ないところ
であります。

 日本と中国が今後、競争的な関係になっていくということは、そ
れ自体が必ずしも憂慮すべきことではないと思うんですね。この競
争がどう生産的に、そして、地域あるいは世界に貢献することがで
きる、そういう形で展開するかどうかが問題なのであります。ここ
でどう我々が知恵を絞るかというのが、我々が直面する大きな課題
だろうと考えております。

 加藤 ありがとうございます。朱先生、お願いいたします。

 朱 今、高木先生のちょっと新しい説、新説ということを私、い
ろいろ考えさせられました。民主化のプロセスが一番危険だという
ことですね。ただ、今世紀、20世紀の初めというのは、民主化の
プロセスじゃなくて、私が言いたいのは、ただの複数政党制がある
だけでは、総選挙があるだけでは何もならないということです。
 本当の民主化というのは、経済の発展、平等な分配のシステム、
法治国家をつくる……。それは先ほど申し上げました。その上での
民主主義ということと、そしてさらに世界に組み込まれた中国、そ
のプロセスが危険だということは、私はちょっと違うと思います。

 また、逆説的に言えば、今の中国でいわゆる民主化をして何でも
言論自由にするとすれば、はるかに反日のほうに走っていると思い
ます。今の中国の中ではなるべく、この戦争はごく一部の軍国主義
指導者のしわざで、大半の日本国民は同じ被害者、犠牲者であると
いうことを再三教育してるんです。中国の中での反日デモというも
のも必死に抑えようとしているんです。抑えるというのもちょっと
民主的ではないんですけれども。

 しかし、私はこれが本当に日中というのは、中国の大半の人に
とって、私はきのうだれかの話を聞きましたけれども、もう70年
代まで、大半の中国人にとってこの50年、100年の歴史的怨念
をもって日本人は我々にとって不倶戴天の敵だったとみんな思って
いました。特にエリート層。それが毛沢東・周恩来以来の教育で、
それはごく一部の人、もう亡くなったA級戦犯だけが悪かったとい
うことが一応今の中国で徹底したと。私はこのプロセスを見るべき
だと思います。

 加藤さんが質問されたことを私、さっき答えるのは忘れましたけ
れども、中国歴史上、上下の関係があって、結局対等な関係になり
得るかということですけれども、おっしゃるように、清朝の末期ま
で、中国は常に周りの国に対して中心的役割を果たしていたわけで
す。

 しかし同時に、その後の100年間は、中国自身は世界で見れば
取り残された国、どん底に陥った国ということで、必死に世界の枠
組みに平等な一員として扱ってくれと必死に努力した100年だと
思うんです。ですから、逆に現時点では、もうほかのいろんな枠組
みに中国を入れないんではないか、そういうようなところで一種の
ゆがんだ被害者意識で逆に見ている場合もあるんですね。

 そういう意味で、これからの中国について、一方、歴史に由来し
た一種の自信、もっといろんなリーダーシップをとりたいというよ
うな意欲、衝動もあると思います。しかし、一方、中国の現実の経
済、社会、今の世界で見れば、もうその枠組みの中でしか自分の発
展の道がないということもわかっています。

 今後もそのような中で揺れていくとは思うんですけれども、もう
ほかの国を抜きんでた唯一の、ほかの国を下に置いた国になるとい
うことは、今の中国の指導者層、エリート層ではもうそういう意見
は基本的にないと、私は思います。

 加藤 朱先生、どうもありがとうございました。以上をもちまし
て前半を終わりたいと思います。後半は、今の議論を踏まえて、提
て前半を終わりたいと思います。後半は、今の議論を踏まえて、提
起されました憲法9条の改正問題、靖国問題、あるいは当然考えな
きゃいけない台湾の問題とか、そういう具体的な問題を取り上げな
がら、どう対応していったらいいのかというふうに進めていきたい
と思います。

<<前へ|次へ>>|インデックスへ戻る

▲このページのトップに戻る
asahi.comトップ|社会|スポーツ|ビジネス|暮らし|政治|国際|文化・芸能|ENGLISH|マイタウン
ニュースの詳細は朝日新聞紙面で。» インターネットで購読申し込み
asahi.comに掲載の記事・写真の無断転載を禁じます。すべての内容は日本の著作権法並びに国際条約により保護されています。
| 朝日新聞社から | サイトポリシー | 個人情報 | 著作権 | リンク| 広告掲載 | お問い合わせ・ヘルプ |

朝日新聞社から|アスパラクラブ|クラブA&A|携帯サービス|Web朝日新聞|サイトマッ
プ|文字拡大・音声

社会 スポーツ ビジネス 暮らし 政治 国際 文化・芸能 ENGLISH マイタ


ウン
天気
天気||住まい
住まい||就職・転職
就職・転職||BOOK
BOOK||健康
健康||愛車
愛車|
|教育
教育|
|サイエンス
サイエンス|
|デジタル
デジタル|
|トラベル
トラベル|
|囲碁
囲碁・
・将棋
将棋|
|社
説 ・ コラム
コラム||ショッピング
ショッピング||be

asahi.comトップ > シンポジウム

朝日新聞シンポジウム「中国の台頭と日米同盟」
【討論】(4)憲法9条、靖国問題

 加藤 それでは、再開いたします。残りの時間では、いろいろ個
別具体的に前半指摘された問題についてより議論を深めていきたい
と思います。

 まず、憲法9条改正の問題です。ハムレ所長は9条改正というこ
とをスピーチの中でおっしゃいました。具体的にどういうことを念
頭に置いていらっしゃるのか、もう少し詳しくまずお聞かせいただ
きたいと思います。

 ハムレ これは非常に複雑な問題です。私
は、多くの日本人は、正直なところ憲法第9条
を支持しているのだと思います。

 なぜなら、この第9条は、日本人が本当はあ
まり議論したくない問題から自分たちを守って
くれているという気持ちを彼らに与えているか
らです。と同時に、日本人は、第9条が外国政
ジョン・ハムレ氏
府によって押し付けられたという気持ちも持っ
ています。

 ですから、日本が軍隊を持つ際の枠組みを基本的に自分たちで決
めたいと思っています。そして私は、これは日本が自分できめるべ
きことだと思います。防衛に関する日本の姿勢がどうあるべきか
を、米国が日本に告げるという時代は過去のものだと思います。

 私が決定的に重要だと思うのは、第9条が、選挙民から選ばれた
文民に対して軍が完全にその説明責任を果たすことを確実にするよ
うな条文になることです。非常に明確な説明責任が存在するかどう
か、それが最も重要な試金石だと思います。そしてそれが、国際的
な意味で、受け入れることの出来る9条の改正でありましょう。
 どこまで行きたいのか、そしてその軍事力で何をしたいのかを決
めるのは、最終的には日本であります。しかし、それが民主的なコ
ントロールに対して完全につまびらかな責任を有するものである限
り、それは受け入れることのできるものだろう、というのが私の感
じです。

 加藤 中国は憲法9条の問題は非常に強い関心を持って見ている
と思います。現段階での日本の憲法改正論議をどんなふうに見られ
ているんでしょうか。先ほど先生のお話ですと、中国もアメリカの
プレゼンスなどは容認するというお話がございましたけれども、地
域の秩序維持の役割として日本が安全保障面で役割を拡大していく
ということについては、中国はどう見ているんでしょうか。

 朱 短くお答えいたします。日本がほかの国と同じように軍事
力、防衛力を持ち、そして、冷戦以後の世界に貢献していくという
ことは自然の流れであり、日本国民自身がバランスをとって考えて
決めていくべきことで、ほかの国がとやかく反対するものではない
と思います。

 日本、今の世界においてこれから国連の枠組みのもとで日本と中
国、韓国、そして、アメリカ、そのような軍事要員が一緒に協力す
ることとか、それは大変いいことだと思います。今後、中国、日
本、韓国含めて、おそらくそのような防衛交流、国際社会、地域社
会における日中韓米の軍事要員を協力関係を建設的に模索していか
ないといけないと思いますし、そうしていくんだろうと思います。

 憲法の9条の話が出ましたけれども、日本の中でいろんな議論が
あるということはよくわかります。私の立場から感じたことを2点
申し上げます。

 第1。それはやはり戦争に対する反省で、その後、つくられた形
はどうであれ、それは日本の国民が戦争に対する反省、そして、絶
対二度と戦争をしないという気持ちを込めてそれを守ってきたとい
うことですね。私はそれは大事だと思います。ほかの国にとって
も、それが日本が平和の道を歩んできたということのシンボルとし
て理解されてきたということを申し上げます。

 もう1点は、実際、戦後の日本の平和路線が、日本を再び経済大
国化して世界の強国の仲間入りを再度したということ、その基礎を
つくった、実際それが日本にとって一番プラスになったということ
ですね。もちろん、冷戦以後の世界でいろいろ調整は必要ですけれ
ども、戦後の日本、今の日本にとってそれは財産である、簡単にた
だ要るか要らないかという話じゃなくて、戦後の発展の中で総括し
だ要るか要らないかという話じゃなくて、戦後の発展の中で総括し
て考えていく必要があるんではないかと思います。

 加藤 ありがとうございました。ハムレさん、朱先生、ともに基
本的には日本の内政の問題であるというお立場を説明していただき
ました。もちろん、それはそうなんですけれども、同時にそれが外
交問題であるということもまた否定できないところだと思います。

 そこで、高木先生にお尋ねします。9条を中心とするこの憲法改
正問題を我々日本人が、日本が考える時に、周囲への影響といいま
すか、地域への与える影響、9条ですと安全保障環境に与える影響
というようなものは、一体どのくらい気にしたらいいというか、配
慮しなきゃいけないのか。その辺はどう考えたらよろしいでしょう
か。

 高木 当然、周囲への配慮を一切なしに、こ
れは我が国の国内問題である、主権の範囲内の
問題であるということで一切無視していいとい
うことはあり得ません。今の世界というのは、
国と国とがお互いに緊密に相互依存の関係の中
に絡めとられた、そういう国際社会の中に生き
ている。ですから、いかに国内の問題、日本の
主権の問題といっても、日本の決定が諸外国に 高木誠一郎氏
要らざる警戒心を引き起こしてしまったり、あ
るいは、懸念を引き起こすというようなことに無頓着でいるわけに
はいかないというのは当然のことだと思います。

 しかし、このことは、諸外国の目を気にして憲法改正のあり方を
決めるということよりも、やはり憲法を改正するプロセスをオープ
ンにして、そこで行われている議論を対外的に十分に発信して、基
本的に自衛隊にしっかりとした憲法の規定の上における位置づけを
与えるような形に憲法を変えるのがいいと思います。けれども、決
して第9条1項の平和主義は捨ててはならないし、このことは十分
諸外国に向かって説明に説明を重ねるべきだと思います。

 加藤 ありがとうございました。次に靖国問題です。朱先生にお
聞きしたいんですが、中国は困っているんじゃないですかね。小泉
首相は靖国参拝という方針を一切変えようとしてません。この前の
選挙で小泉政権は圧倒的な支持を国民から得て、選挙で靖国問題が
イシュー(争点)になってなかったということもあります。けれど
も、小泉政権が続く限り、この靖国問題というのは続くと、さら
に、後継者の中でも靖国参拝の必要性をはっきりおっしゃる方も少
なくないと。
 仄聞するところによりますと、王毅大使が日本にいらっしゃった
時に、彼の大きな1つの目標といいますか課題は、小泉首相に靖国
参拝をやめさせることだとか。大使も困ってるんじゃないかと思い
ますが、中国はこれをどうごらんになってどうしようとしているん
でしょうか。

 朱 短い時間で十分に答えられるかどうかはわかりませんけれど
も、王毅大使が去年日本に着任し、靖国問題をかなり重視した、こ
れは事実だと思いますね。ただ、その意味は何なのかということで
すけれども、それこそ中国の胡錦涛新指導部がその歴史問題につい
て、本当は入口論ではなく出口論に持っていくための、日中の打
開・妥協の道を探るためというような意図でかなり努力しているん
ではないかと思います。

 今の中国の民間でナショナリズムが台頭する、こういう人たちの
中では、歴史問題だけこだわっていろいろ言う説はインターネット
でいっぱい出てます。ただ、日本もちょっとインターネットでの掲
示板に書かれた一部の言論だけで、これイコール中国の反日感情だ
と見るのも、それは大げさだと思います。中国の今のエリート層、
私は大半において、歴史問題というのは日中関係の全般における一
問題、すべてではないと、そう思うようになってきたと思います。

 問題はその件を完全に避けて通れない中国国内事情があるのも事
実です。もうご存じかと思いますけれども、中国はそもそもあの戦
争であのような大きい被害を受け、さらに、日清戦争、義和団運動
以来、何度も日本に賠償金を払ったんです。けれども、国交を樹立
した時に、日本から賠償金をとらないということを決めたわけです
ね。それは国内説得の論議として、あの戦争で悪かったのはごく一
部の戦争の指導者であって、大半の日本の国民ではないと、従っ
て、今の国民に賠償を求めない、そのような国内教育をしてきたわ
けですね。

 あの戦争では中国で少なくとも死者は1000万人以上。そうい
うような犠牲を負っている中で、じゃあ、だれが責任をとるのか、
それが当時の戦勝国を中心につくられた極東軍事裁判で決めたA級
戦犯、今の靖国に合祀された14人のうちの13人が中国戦場で指
揮をとったり実際の作戦を指揮した人なんですね。

 一方、日本もサンフランシスコ条約でそれを受託した。というこ
とは、中国から見れば、この14人がイコールあの戦争の首謀者
だったと、彼らに責任を求めて、ほかの日本人、言ってみれば、B
級、C級戦犯以下を含めて責任を求めない、これが中国の1つの国
内向けの戦争処理の図式でもあったわけですね。
内向けの戦争処理の図式でもあったわけですね。

 ところが、中曽根首相、橋本首相の時には靖国にそれぞれ1回
行ってやめたんですけれども、現在、毎年行くようになりました。
最初の年、小泉首相は、内外とも滞りなくそういう追悼ができるよ
うな方法を模索したいとおっしゃったんですけれども、その後ます
ますそれは日本の文化だと、個人の精神だということになって。

 つまり、今の首相が当時の戦争の責任者、首謀者のところに参拝
に行くということは、中国国内向けに指導者は、我々は一体なぜ賠
償を放棄したのか、だれが一体あの侵略戦争の責任をとるのか、中
国国内の説得ができなくなるという状況があるわけですね。

 そこで、話が戻りますが、韓国は靖国神社そのものについて盧武
鉉大統領が批判してます。中国の大半の学者も、おそらくきょうの
ハムレ所長と同じように、実際その場を見ればかなり違和感を感じ
ると思います。

 ただ、中国政府は、それは異議があってもそれは日本の内政だ
と。日本の首相が靖国に合祀された二百四十数万の人に参拝に行く
ことについては我々は反対しない、あくまでもA級戦犯に首相が行
くということに反対だと。ですから、それをめぐって解決の道を模
索したいということなんですね。そういう意味で、その問題につい
ては、アメリカの学者もぜひ今ハムレ所長と同じように、この問題
は一体何なのかを靖国の中に入って見たほうが私は政策の判断につ
ながると思います。

 一方、中国の対応ですけれども、私の理解では、もう歴史問題で
カードとして日本を抑えるというようなことは、10年、15年前
まではどうだったのかわかりませんけれども、現在私はあり得ない
と思います。今のアジアの共同体の建設、中国の平和環境、中国発
展、それはいずれも日本を抜きにしては語れない、日本を押さえ込
んで中国にとってメリットはないわけですね。

 かつて歴史問題を非常に気にしたというのは、逆の、別の言い方
で言えば中国は自信がない、被害者意識で見ていたんです。今の中
国、もっと自信に満ちて、もっと日本と一緒に将来、未来向けに行
きたいと。

 そういう中で考えれば、私は基本的にその問題は日本自身が取り
組んでやるべきだと思いますけれども、日中の最大妥協できるとこ
ろは、歴史問題全体について最大公約数だけは守ろうと。侵略戦争
があったこと、戦争処理のこのシンボルということを政府として堅
持することですね。
持することですね。

 ほかの個々のことについては、学者の議論に任せて、もう少し違
う議論があってもいいと思います。けれども、当面この靖国に合祀
されたA級戦犯のことは、すでにこれが戦争の処理、中国国内説得
という大きなことと絡んだことです。なので、それについては一方
的に押し切られるのではなく、もうちょっと自主的に努力する。あ
るいは、東洋人ですから、いろんな知恵があって、国際的にもある
程度説得になり、一方、日本国内でも大半の人が受け入れられるよ
うな方法を、東洋文化では絶対、解決方法は見つかると思います。
重要なのはそれに取り組むことです。

 加藤 ありがとうございました。今、朱先生から歴史問題をカー
ドとして日本を押さえ込むために使うということはもうないんだと
いう大変興味深いご発言がありました。

 しかし、その一方で、最近の日本の国連常任理事国入りに中国が
強い反対をした現状などを見ていますと、どこに原因があるのか
と、これはなかなか難しい問題ですが、やはり日本がより大きな政
治的安全保障の役割を果たしていこうとする時に、燐国の大国であ
る中国あるいは韓国から不信の目を持って見られていると、大きな
役割を果たす資格はないんじゃないかと見られているということ
は、やはり外交上の問題ではないかという見方も当然成り立つと思
うんですね。

 そこで、高木先生にお尋ねしたいんですけれども、そういうよう
にこれから日本がより大きな役割を地域で果たそうとしていく時
に、この歴史問題の解決というのはどの程度日本として考慮して考
えて取り組むべきなんでしょうか。

 逆に言いますと、靖国を含めた歴史問題を片づけないと、日本の
地域でより大きな役割を果たしていくということはやはり難しいと
考えるべきなのか、あるいは、それほど心配することはないと考え
るべきなのか、その辺はどう考えたらいいかちょっと教えていただ
ければ幸いです。

 高木 大変難し
い問題だとは思い
ますけれども、基
本的にその問題に
対する答えを握っ
ているのは日本で
はなくて、当然の
ことですけど、周
ことですけど、周
辺の諸国であるわ
けですね。特に今
まで加藤さんがおっしゃったように、日本、韓国の考え方というの
は非常に重要であります。

 もし確かに中国が歴史カードを使う気がないということであれ
ば、歴史問題を全く日本の言い分を受け入れるという必要はないわ
けです。しかし、歴史問題の議論は違いは違いとして、日本のこの
地域の大国としての役割を認めていく、特に国連の安保理の常任理
事国になることについては、中国が賛成しただけで実現するとは思
いませんけれども、少なくとも中国は反対しないという態度を明確
に示してくれるのが望ましいと思います。ただ、残念ながら現在の
ところ、やはり小泉首相の靖国神社参拝、歴史問題が最大の、少な
くとも表面的な理由として挙げられるということで中国は反対して
るわけですね。

 この反対の本当の理由は歴史問題そのものなのか、あるいは、地
域の大国として自分の国と並ぶ国が存在するということを受け入れ
たくないのか。その辺のところはしっかりと検討してみなきゃいけ
ない問題で、もし後者でないのであるとすれば、中国はもっとその
ことについて説得的な説明をしてくれる必要があると思うんです。
現在のところではやはり歴史問題の棚上げというのは非常に難しい
というのが現状だろうと思います。

 しかし、だからといって、日本がより責任を持った立場で対外政
策を展開していくのを、歴史問題が解決するまで待っているという
必要はないわけで、やはり歴史問題の解決を図りながら、できると
ころでは大きな責任を日本は果たしていくべきだろうと思います。

 国連の安保理の常任理事国にならなくてもできること、すべきこ
とはたくさんあるわけです。そういうことで言いますと、先の津波
とかパキスタンの地震、あるいは、アフリカの平和構築、復興とい
う面において日本は既に大きな役割を果たしているわけですが、今
後ともそういう活動は続けていくべきだろうと思います。

 そして、歴史問題につきましては、私は先ほどのハムレ所長のご
提案は非常に参考になると思います。やはり日中だけで話し合って
いてもなかなか解決しにくいこともあると思いますので、より国際
的に範囲を広げて、そして、基本的にこの問題は中国の{ケ小平氏が
かつて言われた「実事求是」の精神でこれに取り組んでいくと。
しっかりと事実を見きわめ、事実として確定したものは、たとえ不
愉快なものであってもこれを受け入れていくという態度を共有しつ
つ、しっかりとした研究と討議を通じて、徐々に共通認識を育てて
つ、しっかりとした研究と討議を通じて、徐々に共通認識を育てて
いくという以外にとるべき方法はないんだろうと思います。

 加藤 そこで、アメリカなんですけれども、先ほどハムレ所長は
靖国神社の併設する博物館「遊就館」の歴史の展示の内容について
違和感があるということをおっしゃいました。それから、この問題
の解決のために中国、日本、韓国、アメリカ、4カ国で委員会のよ
うなものをつくって歴史問題に取り組んだらどうかという、私が思
うに、非常に画期的なご発言をなさいました。

 その画期的という理由は、アメリカのこういう責任のあるお立場
の方から靖国問題についての発言というのはなかなか聞かれないん
ですね。特にブッシュ政権はそうですね。

 そこで、ハムレ所長にお聞きしたいんですけれども、小泉首相が
靖国参拝するということは、アメリカの国益に資するのかというこ
となんですね。要するに、日中関係は悪化するわけで、必ずしもア
メリカにとっては少なくともプラスとは思えないわけですね。

 ところが、今申し上げましたように、少なくともブッシュ政権は
意図的にこの問題については何も言わないという立場を貫いていま
す。果たしてそれがアメリカのとる立場としてはアメリカの国益か
ら考えて一番適切なことなのかどうかと、その点をお尋ねしたいと
思います。

 ハムレ 日本の首相は、祖国に対して立派に尽くした国民の貢献
と犠牲を公に讃える機会がなくてはなりません。首相はそうするこ
とができなくてはなりません。米国の大統領も国のために命を犠牲
にした軍人に敬意を表する必要があります。ですから日本もそのよ
うな場を持つ必要があると思います。

 靖国神社にまつわる問題は、現在、靖国神社が歴史についてある
特定の解釈をとることを選択した、極めて小さな勢力として見られ
ているのです。日本国内では、首相にそのようには見えないかも知
れませんが、日本の外にはそのように見えるのです。

 ですから、日本が国のために命をささげた全ての人のために新し
い追悼施設を建設することができるならば、それは首相が訪れる場
所になることができるし、率直に言えば、そこには米国の大統領が
行くこともできるでしょう。米国の大統領は、日本のために命を捧
げた人に敬意を表するために靖国神社に行くことはできません。わ
れわれは日本の首相にアーリントン墓地に来てもらい、戦死者に敬
意を表してもらうことができます。しかし、米国の大統領が靖国神
社に行くことはどうにもできないのです。
社に行くことはどうにもできないのです。

 ですから、新しい施設、国の名誉のために命をささげた戦死者に
真に敬意を表するための新しい追悼施設ができれば、それは一歩前
進です。歴史にとっての前進であり、日本にとっての前進、さらに
米国にとっても前進となるでしょう。

<<前へ|次へ>>|インデックスへ戻る

▲このページのトップに戻る
asahi.comトップ|社会|スポーツ|ビジネス|暮らし|政治|国際|文化・芸能|ENGLISH|マイタウン
ニュースの詳細は朝日新聞紙面で。» インターネットで購読申し込み
asahi.comに掲載の記事・写真の無断転載を禁じます。すべての内容は日本の著作権法並びに国際条約により保護されています。
| 朝日新聞社から | サイトポリシー | 個人情報 | 著作権 | リンク| 広告掲載 | お問い合わせ・ヘルプ |

朝日新聞社から|アスパラクラブ|クラブA&A|携帯サービス|Web朝日新聞|サイトマッ
プ|文字拡大・音声

社会 スポーツ ビジネス 暮らし 政治 国際 文化・芸能 ENGLISH マイタ


ウン
天気
天気||住まい
住まい||就職・転職
就職・転職||BOOK
BOOK||健康
健康||愛車
愛車|
|教育
教育|
|サイエンス
サイエンス|
|デジタル
デジタル|
|トラベル
トラベル|
|囲碁
囲碁・
・将棋
将棋|
|社
説 ・ コラム
コラム||ショッピング
ショッピング||be

asahi.comトップ > シンポジウム

朝日新聞シンポジウム「中国の台頭と日米同盟」
【討論】(5)日米同盟、中台問題など

 加藤 次に、こ
の会議のタイトル
「中国の台頭と日
米同盟」そのもの
の質問に移りたい
と思います。今、
日米同盟は皆さん
もご存じのよう
に、在日米軍の再
編協議などを通じ
て、同盟自体の変革、大きな変化も起きつつあるわけです。新しい
形の、新しい戦略環境に対応できるような新しい同盟に生まれ変わ
ろうというプロセスが今続いているところです。

 そこで、「中国の台頭」という、この新しい状況に対応する政策
手段として、この日米同盟というのはどのぐらい役に立つのかと。
今、進んでいる同盟の変革というのはそれに適したものなのかどう
かと。

 先ほどハムレさんは地域の4カ国による軍と軍の協議をもっと強
化すべきだという、バイラテラル(2国間)ではなくて、4カ国
間、多国間の枠組みの設立も提案されたわけですが、そういうよう
な観点から見て、今の日米同盟、変革しつつあるこの日米同盟とい
うのは、中国の台頭というこの状況に対応するために役に立つのか
と、適切なのかどうか。その点をお三方の先生に順に聞いてまいり
たいと思います。

 それでは、まずその4カ国の枠組みで軍事レベルの対話をもっと
深めるべきだというお考えをお示しいただいたハムレさんから、今
の日米同盟が中国の台頭という状況に対応する手段として有効なの
の日米同盟が中国の台頭という状況に対応する手段として有効なの
かどうか、どういうふうにこれからこの同盟というのを使っていっ
たらいいのか、この点をまずお聞きしたいと思います。

 ハムレ 日米同盟は軍事的な意味では2つの目的を果たすために
構想されました。まずそれは中国を抑止する意図で作られました。
中国が一枚岩の国際共産主義陣営の一員であり、自由で民主的な
国々にとって直接的な脅威となっていると認識した時代の産物でし
た。

 それが日米同盟の起源です。それにはもう一つの目標もありまし
た。日本にアジアの近隣諸国にとって脅威でないような軍事的姿勢
をとる枠組みを作り出すことです。

 日米同盟の第一の目的は変わったと思います。なぜなら中国の本
質が変わったからです。われわれは中国を、ちょうど1950年代
から1960年代初頭のソ連のように見ていました。こんにち、わ
れわれは中国をそのようには見ません。

 正直に言えば、われわれは中国の軍事的活動に懸念を持っていま
す。とくに中国の軍事的活動が台湾に向けられていることです。し
かし、われわれはそれを、米中間の攻撃的で不可避の衝突とは見て
いません。

 ですから、米国と日本の関係は軍事的な意味では、より幅の広い
協力の枠組みに変身したのです。実行可能な非常に多くの事柄にお
ける協力です。もし必要ならば、日本の防衛はたしかにそこに入り
ます。

 しかし、協力関係はこの地域のもっと広い範囲に及びます。さら
に域外にまでも及びます。つまり、日本の自衛隊は現在イラクにい
るのです。同盟関係を維持することはおそらくまだ非常に重要で
す。

 なぜならそれ域内の近隣諸国に安心できる枠組みを約束するから
です。このことはおそらくまだこの枠組みのプラスの、良い面なの
です。ですから私は、この枠組は現在変化のさなかにあり、これま
では常に暗黙だった事柄についてより明確になってきていると思い
ます。これは日米両国が互いを守るという固い約束を表明している
パートナーシップであります。

 しかし、そうした備えは維持するにしても、将来その必要性が本
当に高まるとは予想していません。たしかに、これが攻撃的な同盟
関係だとは、日米いずれによっても見られていません。域内のいず
関係だとは、日米いずれによっても見られていません。域内のいず
れかの国に対して攻撃をしかける出発点になるようなことはないの
であり、あくまでも防衛的なものなのです。今後ともずっとそのよ
うな性格のものであり続けるでしょう。

 加藤 次に、高木先生に基本的に同じ質問です。中国の台頭に日
本として適切に向き合うために日米同盟という政策手段はどれほど
有効なのか。それと、今進められている同盟の変革というものは、
そういう観点から見て適切な有効な方向に向かっているのか。この
点をお願いいたします。

 高木 日米安全保障体制は、冷戦が終わった後、しばらくその目
的を喪失したかのごとくに見えた時期がありました。しかし、19
96年、橋本首相とクリントン大統領による日米安保共同宣言に
よって、冷戦後においてもこの同盟は地域の不安定性、不確実性に
対応する重要な装置であるということが再確認されたわけですね。

 そして、この共同宣言の中で、日米両国は中国の建設的な役割を
歓迎する、それについての利害関心を共有するということを明確に
述べているわけです。

 そういうものとしての日米同盟が、この共同宣言を契機に徐々に
緊密化してきているということでありますので、これは先ほどしば
らく前に申し上げましたように、中国の将来には一定の不確実性が
あるということは否定できないと思いますので、最悪の状況に対す
る備えとして、やはり有効な作用を果たし得るだろうと私は考えて
おります。

 ただ、これも先ほど申し上げたことなんですが、この同盟関係を
緊密化していく上で、中国がこれを危険視し、それを自国の軍事力
強化の重要な理由にするというようなことがないように、しっかり
と同盟のあり方——ハムレ所長は防衛的な同盟であるということを
強調されましたが——そういう点も含めて、決して中国の台頭を阻
止する、あるいは、これを押さえつけるというためのものではない
ということを十分に中国に説明していかなくてはならないだろうと
思います。

 そのことについての中国側の理解が得られるということを前提に
考えれば、私はこの同盟というのは、中国の台頭に日本が有効に対
応する上で極めて重要な存在であろうと考えます。

 先ほど朱建栄先生は、中国の台頭に対して日本は非常に——どう
いう表現を使われましたか——余裕のない考え方をしているという
ようなことをおっしゃったと思いますが、私はそういうことはない
ようなことをおっしゃったと思いますが、私はそういうことはない
と思いますね。

 その理由は、単に日本人が非常に日本人の信条として肝っ玉が太
いといいますか、多少のことには動じないということなのではなく
て、やはり日米の同盟関係がしっかりしてるということがあるの
で、日本としては中国の台頭に対しても余裕を持って対応すること
ができるということなんだろうと思います。

 従いまして、この同盟がなかったらということを考えれば簡単に
わかることですが、この日米同盟というのは、やはり日本自身に
とっても、中国の台頭に直面してる日本にとっても、それから、こ
の地域の安定にとっても非常に重要なメカニズムであろうと思いま
す。  

 細かいことはいろいろ問題あると思いますが、基本的には現在に
至る日米同盟の緊密化というのは、冷戦後の新しい状況、それか
ら、9・11テロ以降の状況に対応した適切なものだろうと思いま
す。唯一問題があるとすれば、日本国内において、あるいは、地域
に対して、まだ説明が不十分であるというところだろうと思いま
す。

 加藤 それでは、朱先生、今の日米で行われている同盟の強化の
動きというのは、中国の台頭に一種対応するという側面もなきにし
もあらずだと思うんですけれども、今の日米で進んでいる同盟強化
の動き、中国からごらんになるとどう見えるのかと、その点を教え
ていただければ。

 朱 中国の中の議論も相当流動的で、ここ数年かなり変わってい
ると思います。前は一方的に否定したというようなことが、特に5
年前、90年代全体でそのような見方が多かったんです。けれど
も、現在やはり客観的にこの地域の安全情勢、及び、これからの東
アジアの安全情勢を考えれば、日米同盟そのものは今それにとって
かわる枠組みがあるわけではない。

 ですので、中国はそれについて現在、また、これから、反対とい
うような姿勢は示さないと思います、もちろん、警戒は一方ありま
すけれども。

 重要なのは、ハムレ先生がおっしゃったように、そもそも日米同
盟というのは冷戦時代の脅威に対処してつくられたもので、そのよ
うな脅威が変わったという部分をそのまま冷戦の時の枠組みのまま
堅持していいかどうかですね。そういう中で、新しいいろんな不確
定な情勢に対して今の日本がかなり心配していますから、日米で一
定な情勢に対して今の日本がかなり心配していますから、日米で一
緒に対処しようと、私はそれに対して中国は理解すべきだと思いま
す。

 ただ問題は、日米だけでアジアの安全保障問題を決めていくとい
うような印象を与えていいのかどうか、日米がいろんなこの地域の
安全保障でそれをめぐっていろいろ協議している、これは大変いい
ことですけれども、しかし、これだけでいいのかどうかです。

 ハムレさん、また、アメリカからも最近いろんな提案が出てます
けれども、1つは朝鮮半島をめぐる6者協議という枠組みの活用、
それをさらに発展して、この地域の安全保障問題の協議の対話の
場、ないし、それを協議する1つのメカニズムに発展させていくこ
と、そして、今おっしゃった米中日韓、一緒にいろんな対話をし、
安全保障問題についていろいろ協議していくというようなアプロー
チも非常にいいと思いますね。

 つまり、言いたいのは、この地域で1つの枠組みでほかのものに
とって変わるんではなく、この日米という枠組みはそれで結構で
す。それは日米の約束であり、日本国民の選択で結構ですけれど
も、それ自体はもっとアジアの情勢について客観的に理解するとい
う希望はありますけれども、言いたいのは、それとともに、重層的
にほかの枠組みも一緒につくっていくことだと思います。6者の枠
組み、4者の枠組みなどですね。

 最後にちょっと1点、これがまさに日本で、あるいは、アメリカ
でも懸念されている台湾問題のことです。それについてここで、お
そらく日米同盟が暗にそれを懸念材料としてるということはわかり
ますけれども、ここで最近の中国の議論を率直に紹介したいと思い
ます。

 今の中国で、大陸では、台湾に対して武力行使ということは、そ
れは同じ民族であり、それをやることで、中国にとってもう「下の
下」の選択だということはみんなよく知っています。一番悪い選択
です。

 第1、本当に戦って台湾を制圧できるかどうかわかりません。第
2、アメリカは絶対介入しますので、中国は勝てません。第3、中
国が必要とする平和環境、中国の経済はアメリカ、日本が一番の
パートナーですから、日米関係と決定的に悪化することは中国の経
済も耐えられません。

 こういうような状況のもとで、本当は武力は使いたくないんで
す。けれども、問題は李登輝さんが、今の陳水扁さんも言ってるん
す。けれども、問題は李登輝さんが、今の陳水扁さんも言ってるん
ですが、2008年の北京オリンピックの前、中国としては武力は
一番使えない。だから、今のうちに独立を宣言しようとしてるわけ
ですね。北京オリンピックを維持するために、開催させるためにも
それはできないと。

 もし台湾が独立を宣言した場合にどうすればいいのか。今申し上
げましたように、武力は使えない。でも、独立を容認すれば政権は
民衆によって倒されます。だったら、一番いい方法というのは、現
在台湾に行っている牽制軍事力の配備を含めて、牽制しつつ、独立
の方向に行かないようにしつつ、経済的に文化的に台湾を巻き込む
ということですね。

 それについてこの10月、ニューヨークを訪問した胡錦涛首席
は、ブッシュ大統領に1つ新しいシグナルを送ったと思います。今
の台湾海峡で我々が現状を破壊しようとしてるんではなく、台湾側
ですと、台湾海峡の平和を米中一緒にマネジメントしようというこ
とですね。

 ですから、そこの部分を、私は合わせて、統一というのは時間が
かかりますし、それは平和的な手段でないといけないということは
中国自身も外部世界も認識は共通だと思います。しかし、中国側の
苦しい国内の事情、そして、近代以来、最後に残った近代で割譲さ
れていまだに統一、国に復帰してない領土であるという、そのよう
な民族の悲願ということも一緒に合わせて理解していただきたいと
思います。

 加藤 ありがとうございます。米中で台湾海峡問題をマネージす
ると、非常にリアリスティックなお考えだと思います。高木先生か
ら、日本からごらんになって、この問題についてどうごらんになる
か、お願いいたします。

 高木 日本からの見方ということで私が日本
を代表し得るなどとはとうてい思えませんが、
私の個人的な反応といたしましては、今、朱建
栄先生がおっしゃったとおりであってくれれば
いいと思います。しかし、どうも台湾問題が絡
むと、中国の対外行動が極めて非合理的になる
傾向がしばしば見受けられます。
高木誠一郎氏
 例えば、マケドニアにおける国連の予防展開
の継続に拒否権を行使するというようなことが
何年か前にありましたが、これはマケドニアが台湾を承認したとい
うことと不可分の関係があるわけです。
うことと不可分の関係があるわけです。

 例えば、台湾で武力行使をしたら中国に対する投資が激減するの
で、そういうことはあり得ないと朱建栄先生はおっしゃるわけで
す。しかし、中国国内の議論では、主権という価値は経済的な価値
よりもはるかに高い、だから少々経済的なダメージがあっても、必
要とあれば武力を行使して台湾を奪回すべきだというような議論も
行われております。

 8月の中ロの合同軍事演習は、テロリズムに対応するという名目
で行われたわけです。しかし、上陸訓練をやってみたり、どう考え
てもテロリズム対応ではなくて、台湾に対する武力行使の練習では
ないかと思われるような演習を行ってみたり、あるいは、台湾を標
的とした短距離のミサイルの配備を年々増加させてみたり。

 本当に中国は武力行使をしたくないのかどうか、周りから見てい
ると大変不安に思わざるを得ないような行動が見られるわけです。

 こういう状況はやはり日本にとってもその状況の展開次第におい
ては、展開によっては、日本の安全保障にも重大な関わりのあるこ
とにならざるを得ないので、何とかこういう状況を回避していただ
きたいと思うんですね。

 そういう意味で私が注目しておりますのは、国民党の当時の連戦
首席が中国を訪問して胡錦涛国家主席と会談した折に発表された共
同声明の中で、中国は台湾と軍事的な信頼醸成のメカニズムをつく
るというようなことを言っておるわけです。もしこれが真意である
とするならば、当然、現在の陳水扁政権とそのための対話なり交渉
を始めなくてはいけない。

 ぜひそういう方向に中国が大きな一歩を踏み出して、台湾問題は
決して武力によっては解決しないのだということを行動で示してい
ただけると、この地域の平和と安定にとって大きなプラスになるだ
ろうと思います。

 先ほど、朱建栄先生は、日清戦争によって割譲されて唯一復帰し
ていないと言われました。しかし、復帰していないのは、どこかの
国がそこを植民地化しているから復帰していないのではなくて、台
湾の人たちが復帰したくないから復帰してないという要因があると
いうことを中国の方にはぜひわかっていただき、そして、台湾の人
たちの心を、もし統一を追求するならば、心を統一に向かわせるた
めの努力をしていただきたいと思います。
 加藤 ハムレ所長、もう一方の重要なパートナーとしてのアメリ
カとして、台湾問題についてお願いします。アメリカはあまり台湾
のことを信用してない、本当に防衛努力を十分してなくて信用して
ないというような状況があって、なかなかこの台湾問題というのは
複雑だなというのは私も記者として認識しているわけです。今、朱
先生、それから、高木先生からそれぞれご発言がありましたけれど
も、台湾問題、アメリカとしてはどう取り組もうとしているのかと
いうことをちょっと簡単にご説明いただけますでしょうか。

 ハムレ 米国が台湾とからんで抱える問題とは、もちろん台湾自
身の政治的変容の直接の産物であります。すなわち台湾が民主主義
になったということです。この35年の間に、台湾の人々は次第に
より民主的な表現を獲得してゆきました。

 米国はこの間、一貫した立場を固く守ってきました。私たちは台
湾と中国の間の問題が力あるいは暴力で解決できるとは考えませ
ん。問題は平和的に解決されなければなりません。

 北京は、台湾の現指導者は信頼できない、信頼できるのは独立後
の指導者だけだ、と考えています。ブッシュ大統領は、台湾が独立
を宣言する動きを支持しないということを非常にはっきりさせてい
ます。

 と同時に、われわれは台湾における政治状況が変化していること
を認めざるを得ません。そして、それは状況をさらに複雑にするよ
うな変化なのです。私は、台湾も北京も、これをもっと解決しやす
い問題にするために積極的な貢献ができると考えます。

 台湾の政界関係者は台湾内部の政治的感情に迎合し、それが他国
でどのように受け取られているかに十分な注意を払ってないと思い
ます。率直に言えばそういうことなのです。ですから、彼らは台湾
内部で有利な立場に立とうとして危険なプレーをしているのです。

 中国政府も自分自身と軍事的姿勢を台湾にとって非常に脅威とな
るようなものにしている、と言わざるを得ません。そして、率直に
言えば、状況を危険なものにしているのです。中国がこのような急
進的、攻撃的な姿勢から引き下がることは、自分自身にとっても大
きな利益になるでしょう。中国が急進的な姿勢を維持するならば、
米国も台湾を支持する上で急進的にならざるを得ません。そうしな
ければならないのです。

 わたしたちはまた台湾の政治家に対しても、台湾内部の政治的競
争心にばかりとらわれることなく、そろそろ、彼らが直面するすべ
ての問題について賢明であるよう求めざるを得ません。
ての問題について賢明であるよう求めざるを得ません。

 最終的には、台湾における状況は(台湾と中国)両者が、中心的
な関心事において歩み寄ることによって解決されるでしょう。中心
的関心事とは双方の市民の繁栄と安全をめぐるものであります。わ
れわれは依然として、これらは和解可能な問題であると考えます。

 しかし、それは三者のうちの一者だけによって解決されうるもの
ではありません。三者とは台湾、米国、北京のことです。それは、
このいずれかによって一方的に解決できるものではありません。そ
れは最終的には、台湾と北京の対話によってのみ解決されます。私
は、ブッシュ大統領はこの点についてはまことにはっきりしている
と思います。実際、ブッシュ大統領は温家宝首相の肩を持ち、台湾
の陳水扁総統にくやしい思いをさせました。もしクリントン大統領
がこんなことをしていたら、共和党が多数をにぎる議会から弾劾さ
れていたことでしょう。ともかく米国は非常に決然としていまし
た。

 私は、台湾問題が誰によってであれ、一方的に解決されることは
容認しないことを、ブッシュ大統領はきわめてはっきりさせたと思
います。しかし、また中国は軍事力の結集のさせ方が脅威をもたら
していることを自覚しなければなりません。米国は中国と台湾のど
ちらの問題も見逃しはしません。

<<前へ|次へ>>|インデックスへ戻る

▲このページのトップに戻る
asahi.comトップ|社会|スポーツ|ビジネス|暮らし|政治|国際|文化・芸能|ENGLISH|マイタウン
ニュースの詳細は朝日新聞紙面で。» インターネットで購読申し込み
asahi.comに掲載の記事・写真の無断転載を禁じます。すべての内容は日本の著作権法並びに国際条約により保護されています。
| 朝日新聞社から | サイトポリシー | 個人情報 | 著作権 | リンク| 広告掲載 | お問い合わせ・ヘルプ |

朝日新聞社から|アスパラクラブ|クラブA&A|携帯サービス|Web朝日新聞|サイトマッ
プ|文字拡大・音声

社会 スポーツ ビジネス 暮らし 政治 国際 文化・芸能 ENGLISH マイタ


ウン
天気
天気||住まい
住まい||就職・転職
就職・転職||BOOK
BOOK||健康
健康||愛車
愛車|
|教育
教育|
|サイエンス
サイエンス|
|デジタル
デジタル|
|トラベル
トラベル|
|囲碁
囲碁・
・将棋
将棋|
|社
説 ・ コラム
コラム||ショッピング
ショッピング||be

asahi.comトップ > シンポジウム

朝日新聞シンポジウム「中国の台頭と日米同盟」
【質疑応答】(1)

 加藤 会場から
たくさんの質問を
いただきました。
そこで、各先生に
1問ずつだけ質問
させていただきた
いと思います。

 まず、ハムレ所
長への質問です。
日本と中国が経済的、政治的に、将来、より強く結びつくという方
向に行くことをアメリカは嫌うんではないか、日中がより強く結び
ついていくことをアメリカは警戒し、嫌うんではないか。そういう
疑問を持っておられるのですけれども、ハムレさんはどうお考えに
なりますかと。

 ハムレ 経済協力という意味ですか。

 加藤 経済、政治、両面において、日中がより今より緊密な関係
を持つということをアメリカは嫌い、警戒するのではないかという
質問です。

 ハムレ まず、米国は日中間のより緊密な経済的つながりを歓迎
すると思います。さらに、日本と中国のより良い政治的対話も米国
にとって結構なことでしょう。

 ただ思うに、米国を除け者にするような経済的協力については、
われわれは少しばかり不安を感じています。そして、申し上げなけ
ればならないことは、かなりの数のアメリカ人は東アジア首脳会議
から米国が除外されていることを面白くないと感じています。
 米国は結局のところ、アジアの強国なのです。米国がこうした動
きに参加するのが本当だと思います。そして、米国は安全保障の分
野でのみアジアに参画することができ、経済の分野では外にいるべ
きだとアジアが考えるのならば、それは問題だと思います。それは
米国にとっては受け入れることができません。

 加藤 次に、高木先生に質問です。日本がアジア地域でリーダー
シップをとっていくためにはいくつかの要素が必要だと考えますけ
れども、そのうち、政治的力、軍事的力、経済的力、この3つの力
をどういうバランスでどういうふうに伸ばしていけば、日本がこの
地域でリーダーシップをとると、より大きな役割を果たすというこ
とに資するのか。そういう質問ですけれども、いかがでしょうか。

 高木 日本がこの地域でリーダーシップをとっていくべきだとい
うことはよく言われますし、私もそう思いますけれども、ただ、こ
のリーダーシップという言葉の意味なんですが、日本が排他的に主
導権を握って、すべて日本の意向に従って決めていくような状況を
つくっていくということであれば、当然これは周辺諸国、たぶん、
同盟国であるアメリカからさえ危険視されて、事実上、遂行不可能
な目的になると思うんですね。

 ですから、リーダーシップという言葉の意味をもう少し広い、
「先駆的なアイデアをどんどん提起して新しい状況をつくっていく
中心的な存在になる」ということであるならば、当然日本がリー
ダーシップをとっていくうえで、新しい状況をつくっていく、より
望ましい状況をつくっていくうえでの勢力として、米国との関係は
当然重要視されます。それから、中国とも協力しながらやっていく
と。ASEAN諸国とも協力しながらやっていくということになる
だろうと思うんですね。

 そういうことを考えますと、基本的に軍事力というのは中心的な
存在ではないだろうと思います。経済力はその裏打ちとして重要な
んですが、やはり最も重要なのは政治的な構想力と意志だろうと思
います。

 そういうことから考えますと、この3つ以外に、もう1つ私は、
日本が今後強化していくべき力の源泉として、いわゆるソフトパ
ワーの問題があるんだろうと思います。やはり日本の構想力、文化
というものをよりこれから強化して、この地域において積極的な役
割を果たしていく上での資産とするという考え方が必要であります
し、そのためのさまざまな国内体制の整備というのをこれから日本
はもっと進めていかなくてはならないだろうと思います。
<<前へ|次へ>>|インデックスへ戻る

▲このページのトップに戻る
asahi.comトップ|社会|スポーツ|ビジネス|暮らし|政治|国際|文化・芸能|ENGLISH|マイタウン
ニュースの詳細は朝日新聞紙面で。» インターネットで購読申し込み
asahi.comに掲載の記事・写真の無断転載を禁じます。すべての内容は日本の著作権法並びに国際条約により保護されています。
| 朝日新聞社から | サイトポリシー | 個人情報 | 著作権 | リンク| 広告掲載 | お問い合わせ・ヘルプ |

朝日新聞社から|アスパラクラブ|クラブA&A|携帯サービス|Web朝日新聞|サイトマッ
プ|文字拡大・音声

社会 スポーツ ビジネス 暮らし 政治 国際 文化・芸能 ENGLISH マイタ


ウン
天気
天気||住まい
住まい||就職・転職
就職・転職||BOOK
BOOK||健康
健康||愛車
愛車|
|教育
教育|
|サイエンス
サイエンス|
|デジタル
デジタル|
|トラベル
トラベル|
|囲碁
囲碁・
・将棋
将棋|
|社
説 ・ コラム
コラム||ショッピング
ショッピング||be

asahi.comトップ > シンポジウム

朝日新聞シンポジウム「中国の台頭と日米同盟」
【質疑応答】(2)

 加藤 それでは、最後に朱先生へお尋ねします。個別の質問とい
うことではないんですが、こういうことをお尋ねしたいと思いま
す。中国人の対日感が、突然たがが外れて軍国化する不安に基づい
ているとしたら、それは冷戦時代の古い認識ではありませんか。あ
るいは、別の方は、靖国神社に総理が参拝することによって中国に
敵意を抱くような国に見えますかと、もっと真の姿を貴国にわかっ
てほしいと、などなど。

 いずれも朱先生が既にいろんな議論や最初のプレゼンテーション
で説明していただいたポイントなんですが、それでもなお聴衆の方
からこういう質問が出るというのが、1つ現実をあらわしているん
だと思うんですね。

 やはり中国側の日本に対する理解が足りないんではないか、そう
いう不満あるいは認識がやはりここにきょう集まっていただいた聴
衆の方の中にもあるということだと思うんです。やはり中国側が日
本のことをちゃんと理解してないんじゃないかという不満が日本側
にあるということは、中国からごらんになっていかがなんでしょう
か。

 朱 おっしゃるとおりで、中国の中での日本
理解がまだ不十分だと思います。今の日本の中
国研究と中国の日本研究を比較しても、日本で
の中国研究というのは大変きめ細かく、いろん
な分野についていろいろやっている。中国の中
では、どうもいろんな研究というのは大ざっぱ
で、日本についてかなり不十分であるというこ
とはそのとおりで、中国はもっと日本理解を深 朱建栄氏
めていくべきだと思いますね。
 ただ、すでに言いましたように、日本のこれから軍事拡張という
ことは基本的に中国の中では心配はされていないと、内心的には
ちょっとそういうところで日本はこれから一体どこに行くのか、
もっと責任ある大国として方向を、これは絶対やる、これは絶対し
ないということをもっと外部がわかりやすいような形で説明してほ
しいと、そういう期待なんです。

 靖国というのは、それは中国がつくり出した問題ではありませ
ん。ここ数年、日本で引き起こされたことなので、それについて現
在、結果的に韓国、中国、ないし、アメリカまで心配になってきた
ので、日本自身の努力が必要です。また、中国、韓国もどのように
歴史を早く乗り越えていくか、その努力も私は当然必要だと思いま
す。つまり、一種の相互理解ですね。

 日本は中国について細かくいろいろ研究してますけれども、しか
し、落とし穴も結構あると思います。つまり、個々のことをわかっ
ていても、その全体像は把握してないんではないかと思います。

 今の中国でこの10年、私は20年近く前に日本に来ました。今
の中国の中の変化というのは、自分でも信じられないぐらいどんど
んと変化してますので、3年前に『中国 第三の革命』という本を
書きました。毛沢東の政治革命、{ケ小平の経済革命に対し、今の中
国で社会構造、国民意識で革命的な変化が起きている。その変化は
すべていい方向とは言いません。エリート層で落ち着いた冷静な認
識も増えてますけれども、一方、10年前には外交政策に全然影響
のなかった一般の民衆レベルで、インターネット、携帯電話などを
通じてどんどんと発言し、今度、ナショナリズムが出ている。

 そのような状況で、私は中国について、ただすべて中国国内の動
き、反日デモを含めて、共産党指導部がやらせたというような旧ソ
連に対する物差し、20年前の中国を見る物差しで今の中国を当て
はめてはならないという点です。

 もう一つは、今言いましたように、中国の将来は、周り、世界と
の関係にかかっています。日本よりも今中国経済は対外依存度が高
いんです。孤立と独自なやり方というのは中国はやっていけませ
ん。そういうところで、中国はもっと外に目を向けてるということ
は、日本としても積極的に受け入れてともにやっていくということ
が必要ではないかなと思います。

 そこで、高木先生が日本のリーダーシップについての質問を受け
たことについて、合わせての感想ですけれども、もうアジアの将来
について、中国も、日本も、あるいはアメリカも、単独でだれかが
リーダーシップをとることはあり得ないと思います。日本がとると
リーダーシップをとることはあり得ないと思います。日本がとると
ほかの国が反対、中国がとると日本もおそらく反対するでしょう。

 だったら、きょうのハムレ先生のお話の中にもヒントがありまし
たように、1つは、何重もの枠組みを同時につくっていく。現実を
尊重しながら、現実には米韓の軍事同盟、日米の軍事同盟、しか
し、それ以上にほかに6者の枠組み、新しい4者の対話のメカニズ
ム、そういうのを重層的につくっていくこと。

 もしリーダーシップということで考えれば、私は日中米は共同議
長ということを務めるべきではないかと思います。互いに分担すれ
ばいいんじゃないかと。例えば、いろんな、特に経済、金融、技
術、環境、いろんな問題で日本はもっとリーダーシップをとるこ
と、中国は南北問題、貧困問題、環境問題でも積極的に努力するこ
と、リーダーシップをとること。

 中国は本当は6者協議の議長国として、外交は本当は結構うまい
んです。ただ、日本は中国が外交でリーダーシップをとるのが嫌な
ら、韓国が、ASEANが先頭に立ってほかの国をフォローすると
いうようなことでもいいので、一緒にそれぞれの分野を担当して
リーダーシップをとっていく。

 そして、その中で、アメリカの存在を忘れてはなりません。ハム
レ先生は、私がアメリカに触れるかどうか、たぶん非常に注意深く
聞いていると思いますが、私は当然だと思います。この地域での安
全保障の問題、アメリカを抜きにしては語れません。

 特に今の日中韓で歴史問題で対立してるなら、それについて、ア
メリカを巻き込んだ4者の対話のメカニズムをつくること、安全保
障の問題で中国と日本の間に互いに相互の不信感があるなら、アメ
リカも安全保障の問題でもこの協議の信頼醸成のメカニズムについ
てもっとリーダーシップをとること、経済の面でもそれはアジアか
ら除外されるべきではなく、いろいろ加わっていくと。

 ただ、今の東アジア共同体というのは、それはさまざまなアプ
ローチの中の1つですから、東アジアの国が歴史上初めて一堂に会
した、そのことをアメリカとしては心配する必要は私は何もないと
思います。

 それを見つつ、一方、別の面で安全保障、別の枠組みを積極的に
この地域でつくって、リーダーシップをとっていくと、そのような
共通の努力というのが求められているんではないかと思います。
(拍手)
 加藤 朱先生に非常にきれいにまとめていただきまして、司会の
私としてはもう申し上げることはありません(笑)。1点だけ申し
上げるとすれば、朱先生がきょうの議論の中でおっしゃっていまし
たけど、日本が一体どのような国になるのか、方向が見えない。こ
れは私どもとしても、日本人としてちょっと明記しなければいけな
い問題かなと。やはり日本自身の透明性とも、日本の国をどう運営
していくかということに関する透明性ということも考えなきゃいけ
ないのかと、これは非常に重要なポイントだと思いました。

 以上をもちまして、きょうのシンポジウムを終わらせていただき
ます。ご清聴、どうもありがとうございました。(拍手)

 —— 了 ——

<<前へ|インデックスへ戻る

▲このページのトップに戻る
asahi.comトップ|社会|スポーツ|ビジネス|暮らし|政治|国際|文化・芸能|ENGLISH|マイタウン
ニュースの詳細は朝日新聞紙面で。» インターネットで購読申し込み
asahi.comに掲載の記事・写真の無断転載を禁じます。すべての内容は日本の著作権法並びに国際条約により保護されています。
| 朝日新聞社から | サイトポリシー | 個人情報 | 著作権 | リンク| 広告掲載 | お問い合わせ・ヘルプ |

You might also like