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「多国間」幻想の危険性 JBpress 03/05/09 12:54 AM

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日本再生>霞が関探偵団 [霞が関探偵団]

「多国間」幻想の危険性
日米同盟もドライな視点で
2009年04月27日(Mon) 憂国 人士

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月上旬は、ロンドンで開催された第2回G20金融サ
ミット(2日)、麻生太郎政権の大規模な財政出動を
伴う「経済危機対策」決定(10日)など、日本の将
来を決定づけるかもしれない出来事が国内外で幾つか起
こった。その中で今回は、5日に北朝鮮が実施した弾道ミ 北朝鮮、「ミサイル」発射
サイルと見られる「発射実験」を取り上げたい。 〔AFPBB News〕

 ミサイル発射を受け、日本は北朝鮮に対する新たな国連
安保理決議の採択を目指した。当初これを支持していた米国が、決議採択に慎重な中国と
ロシアに折れて妥協し、結局は法的拘束力なき「議長声明」という形で落ち着いた。一
方、北朝鮮は核問題をめぐる6カ国協議からの離脱を宣言。昨年12月の協議決裂に続き、
北朝鮮情勢は一段と混迷が深まりそうだ。

 日本の安全保障を脅かす挑発行為なのに、政治やマスコミの反応には首を傾げざるを得
ない。麻生政権は迎撃ミサイルの配備など万全の態勢を積極的にアピールしたが、支持率
アップを狙ったパフォーマンスではないか。そういう疑念を招いた。

 マスコミや野党は、4月4日の「誤探知」に基づく政府
発表を厳しく批判した。前回、前々回のテポドン発射時に
おける対応の遅れへの反省から、今回は迅速な通知を最優
先にしたのだから、4日のミスには仕方ない面もある。そ
れで国民に大きな損害が生じたわけでもないのに、異様と
も思える執拗さだった。

 総選挙を控え、今回の事態は外交・安保政策の在り方に
ついて、議論を深める好機になると考えられていた。しか
し、この分野では与野党とも内部対立をはらんでいる上、
「外交・安保は票にならない」と諦めているのか、盛り上 ミサイル開発進行中
がる気配はない。 〔AFPBB News〕

 5カ月以内に行われる総選挙ではさほど影響しなくと
も、北朝鮮の動向は長期にわたり、日本の安全を脅かしかねないのだから、真剣な国民的
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も、北朝鮮の動向は長期にわたり、日本の安全を脅かしかねないのだから、真剣な国民的
議論が必要だ。こうした深刻な事態に、日本はどのように対応していくべきなのか。

20年代に酷似、日本の周辺情勢

 覇権国家であるA国との同盟を基盤に、日本は安定と繁栄を謳歌してきた。ところ
が、A国の国力は徐々に低下する。同時に、同盟関係に基づくA国からの要請に対し、
日本は様々な理由をつけて積極的に応じない。このため、両国関係は必ずしも盤石とは
言えなくなっている。

 こうした中、台頭してきたB国は日本とA国の同盟関係を嫌い、両国の離反を図る。
そして、東アジア地域の不安定要因であるC国をめぐる安全保障問題について、B国は
日本やA国を含む関係国による多国間協議の議長役を買って出た。さらには、アジア太
平洋地域をカバーする、多国間の安全保障枠組みをつくることが望ましいと主張してい
る。

 A国は日本との同盟関係継続を希望するものの、他方で外交・経済で依存を強めてい
るB国の意向も無視するわけにはいかない。

 当コラムでは、厳しさを増す内外情勢に日本がどう立ち向かうべきかを考えるに当た
り、歴史とりわけ現代日本人があまり教わっていない日本の近代史が、貴重な教訓を示し
ていると繰り返し主張してきた。

 先ほど太字にした箇所では、あえて日本以外に登場する3つの国名を伏せておいた。A
=米国、B=中国、C=北朝鮮を当てはめれば当然、現在の日本を取り巻く国際情勢を論
じているように思うはずだ。

 実は、太字部分は1920年代前半(大正時代後半)の国際情勢の描写にも、そのまま使
えてしまう。

 この場合、A=英国、B=米国、C=中国になる。「多国間協議」とは1921∼22年のワ
シントン会議、「多国間の安全保障枠組み」は同会議の結果締結された4カ国条約、並び
に9カ国条約を指す。4カ国条約により、日本の安定と繁栄に多大な貢献をした日英同盟
は破棄され、その後日本は孤立を深めて破滅への道を歩むことになる。

マルチラテラリズム、危険な日本の「幻想」

 東アジアの安全保障をめぐる最近の米国の動きは、日本が大正時代と同じような状況に
直面するのではないか、という不安を掻き立てるのに十分なのだ。

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 米国のライス国務長官(当時)は米フォーリン・アフェアー
ズ誌2008年7・8月号に寄稿し、「北東アジアにおける多国間
安全保障機構の創設を模索すべきだ」と論じた。それは、米国
の外交戦略において日本がいかに軽視されており、当てにされ
ていないかを如実に示していた。

 この中で、「我が英国には永遠の同盟も永遠の敵も存在せ
ず、ただ英国の国益あるのみ」という19世紀英国の首相パー
マストン子爵の言を引用し、ライス氏は「私はこの言葉を信じ
る」と述べていた。それを目にした時、そのわずか1年前に当
ライス国務長官(当時)、
時の安倍晋三首相が「かけがえのない日米同盟」と強調してい 「永遠の同盟」否定(参考
た光景とのあまりの落差に、筆者はある種の戦慄を覚えた。そ 写真)〔AFPBB News〕
して、オバマ現政権も対話と多国間関係を重視し、今後さらに
強化する方向性を打ち出している。

 2国間同盟と異なり、仮想敵国の存在をあまり意識させない、国連をはじめとする「多
国間協議の枠組み」に対し、現代の日本人は幻想を抱きがちだ。しかし、これは現代人に
限ったことではない。ワシントン会議の全権代表で日本近代史上「随一の外交官」だった
幣原喜重郎さえも、当時流行した国際協調外交の理念に共鳴し、日英同盟の破棄にさした
る反対もせず応じている。

 このためか、多国間関係重視(マルチラテラリズム)というオバマ政権の姿勢にも、日
本の世論はおおむね好意的なようだ。米国ののこうした姿勢は果たして、日本にとって有
利に働くのだろうか。

 各国の利害が錯綜する多国間協議の場で、自国の主張を貫くことがいかに難しいか。こ
れは、今回のミサイル発射後の国連安保理における交渉経過を見ても明らかだろう。北朝
鮮による今回の発射実験が、過去の安保理決議に違反するのは明白だ。こうした行為に対
して国連が厳しい姿勢を示すため、「追加制裁の可能性を示唆し、法的拘束力のある新決
議を採択すべきだ」という日本の主張は至極正当だったと言えよう。

 しかしそれでも、中国やロシアがあくまで新決議に反対するとなれば、国連という場で
何らかの成果を出すためには、妥協する以外に道はない。他の常任理事国である英仏は直
接の脅威を受けておらず、正直なところ決議でも声明でも構わなかったはずだ。

 冷戦時のような先鋭な対立はないとはいえ、様々な局面で各国が利害を異にすることは
多い。中国とロシアが安保理で拒否権を持つ以上、我々はその現実を直視すべきだろう。
仮にもっと重大な事態、例えば日本へのミサイル攻撃や領土侵犯が実際に行われた(ある
いは、今にも行われる)場合、中露を含めて国際社会がこぞって対抗措置に賛成してくれ
る保証はどこにもない。
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る保証はどこにもない。

 自国の安全保障を国連に委ねてしまう発想が、いかに危ういのか。今回の経験を踏ま
え、日本人はしっかり認識した方がよい。

安保体制、米国完全依存は終焉

 安全保障面では米国に対して、完全に寄り掛かることはもはやできない。そういう認識
も求められている。

 冷戦時は、日本の地政学的位置や米国の圧倒的なパワー、そして日本独自の再軍備や核
武装への懸念を背景に、基地提供を条件に米国が日本の安全を保障するという、片務的な
同盟関係を維持することができた。

 しかし、こうした条件はいまやほぼ消滅しているのではないか(唯一、日本の核武装へ
の懸念はまだ残っていると思われるが)。

 このような状況下では、「日本は北朝鮮のミサイルや拉致の問題など何かにつけて我々
の支持を求めてくるが、憲法上の制約を盾に太平洋地域の安保協力には応じない。沖縄の
基地移転も住民の反対を理由に一向に進めようとしない。これでは我々の一方的な『持ち
出し』ではないか」と、米国に見られても文句は言えまい。

 ましてや米国の国際的地位が相対的に低下し、1国だけでは世界の安全保障を背負いき
れない。となると、口先で米国を支持しても行動の伴わない日本より、対立要素はあって
もアジアの政治的安定に一定役割を果たす意思と能力を持つ中国との戦略的協力を、米国
が優先するという選択肢がますます現実性を帯びるだろう。

 ウィルソン大統領以来、米国外交には理想主義と現実主
義の2つの潮流がある。ブッシュ前政権も初期は「ネオコ
ン」が主流を占めたが、その後現実主義へ転じた。オバマ
政権も現実主義路線を強く打ち出してくる可能性が大き
い。現実主義が前面に出ている時の米国外交は主義主張を
曲げても、実利を優先する。キッシンジャー大統領補佐官
(当時)の主導で日本に直前まで秘密にしたまま、1971
年に実現したニクソン大統領の電撃訪中はそうした外交の 「現実主義」典型、キッシン
ジャー外交〔AFPBB News〕
典型だ。

 敗戦以降、日本は自由主義陣営に属し、一貫して日米協
調関係にあるため、米国とは幅広い分野で利害が共通している。しかし、米国は日本では
ないし、日本も米国ではない。両国の国益が完全に一致することなどあり得ない。以前も
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ないし、日本も米国ではない。両国の国益が完全に一致することなどあり得ない。以前も
書いたように、「拉致」は基本的に日朝の2国間問題。北朝鮮のミサイルは日本にとって
現実の脅威だが、現段階ではミサイルの届かない米国には喫緊の課題とならない。

 ブッシュ前大統領は在任当時、「拉致問題に関する日本の立場を理解している」としな
がらも、北朝鮮に対するテロ支援国家指定を解除した。今回のミサイル発射でも、クリン
トン国務長官が「日本はミサイル迎撃を含め自国を防衛するためのあらゆる権利を有して
いる」と述べる一方で、ゲイツ国防長官は「米国として迎撃するつもりはない」と明言し
た。

 米高官のこうした発言は、「同盟国たる日本の立場は支持するが、条約上の義務を超え
て米国が支援するかどうかは、国益に照らして判断する」というシグナルと見るべきだろ
う。拉致問題を解決しながらミサイル問題にも対処するには、日本独自の外交努力や防衛
力の整備がどうしても必要になる。

 悪いことばかりではない。独自のポジションを作れば、米国をはじめ他国との間で日本
の交渉力が増すからだ。現時点では日本にとって米国との同盟関係維持が決定的に重要と
はいえ、米国には日本を「最後の最後まで」助ける義務はない。ライス論文からも見て取
れるように、米国にその意思はない。

 そうである以上、仮に米国が衰退の一途をたどるとした場合、日本が米国と運命を完全
に共にする必要もない。予見できる将来においてこうした事態が生じるとは思えないが、
独立国ならそうした万一の事態を考えておくことも必要だ(この視点は国際通貨制度をめ
ぐる議論でも求められているが、次回以降で論じたい)。パーマストンの指摘した通り、
「永遠の同盟」など存在しないのだ。

国際的孤立を避け、現実直視の外交を

 その一方で歴史からは、学ぶべきもう1つの教訓があ
る。国際的孤立は避けなければならず、そして常に現実を
直視しながら対応する必要があるということだ。

 この点、日本は90年前に貴重な経験をしている。すな
わち、1919年のパリ講和会議で日本が提起した「人種差
別撤廃条項」が米国と英国の反対で葬り去られ、22年に
国連安保理、対北朝鮮「議長声
は米国の強い圧力で日英同盟破棄。それまで模範としてき
明」〔AFPBB News〕
た英国に幻滅した日本は、同盟に頼らぬ自主路線の追求を
始め、やがて満州はじめ中国大陸で米英と決定的に対立。
国力の差も顧みず、無謀とも言える戦争に突入していった。

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 昨年のテロ支援国家指定解除や、今回のミサイル発射実験をめぐる米国の対応を受け、
日本の一部には米国への反発も広がっている。こうしたウエットな反応には、日英同盟破
棄時の反英感情と共通するものがあるように思う。

 確かに日本から見れば、今回の米国の行動には不本意な部分があった。だが周りを見渡
しても、安全保障面で米国ほど日本と共通の利害を持つ国はないというのも事実。日本近
海での艦船展開やミサイル発射に関する情報提供に加え、議長声明とはいえ厳しいトーン
の対北朝鮮メッセージを出すことで安保理理事国が全会一致した。迎撃態勢にせよ安保理
での外交戦にせよ、率直に言って日本単独の努力では、ここまでの成果を上げられまい。

 米国との同盟関係について、日本はもう少しドライに考
えるべきだ。また、各国の利害が錯綜する国際社会では
(1)自力で実現できるのはどこまでか、(2)米国や友
好国の支持はどこまで得られそうか、(3)それら諸国と
協力することで理想とする目標にどこまで近づけるか――
などを、現実に即して冷静に見極める眼を養わなければな
らない。
日米同盟、ドライな視点で(米
海軍第7艦隊)〔AFPBB News〕

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