会社法 まとめノート

会社法総論

1 会社の種類
持分会社
株式会社

間接有限責任
(104条)

社員は業務執行に参加しない
(362条)。

合名会社

合資会社

合同会社

無限責任社員のみ
(576条2項)

無限責任社員と有限責任社員
(576条3項)

有限責任社員のみ
(576条4項)

原則として会社の業務執行を
なす権利義務を有する(59
0条1項)。

無限責任社員は合名会社と同
じ。有限責任社員は出資価額
を限度として会社債権者に直
接連帯責任を負う(580条
2項)。

所有と経営の分離

対外関係では有限責任である
が(580条2項)、内部関
係では合同・合資会社と同じ
(590条1項)。

所有と経営の一致

(331条2項)

2 法人格否認の法理
(1)意義:特定の法律関係について会社の独立性(法人格)を否認し、会社とその背後の実体とを
同一視する法理
(2)要件:(ⅰ)法人格がまったくの形骸にすぎない場合(最判昭和 44.2.27)
①財産の混同、②業務活動の混同、③収支の区別の欠如、④機関活動の不存在等を
総合考慮して、会社と個人が実質的に一体化していること

(ⅱ)法人格が法律の適用を回避するために濫用される場合(最判昭和 48.10.26)

①会社の背後者が法人格を意のままに道具として支配していること(支配性)
②背後者に違法・不当な目的があること(違法・不当目的)
◆詐害的会社分割(濫用的会社分割)と法人格否認の法理
〜分割会社の債権者は新設会社の法人格を否認して、分割会社と同一視することによっ
て、新設会社に債務の履行を請求することができるか?
債権者を詐害する会社分割については、信義則違反を根拠に法人格否認の法理が適用
され、新設会社は分割会社の債権者に対し分割会社と同様の責任を負う(福岡地判平成
22.1.14)。もっとも、これが認められる場合には、詐害行為取消権の行使も認められると
考えられるから、固有の意義は乏しいといえる。
(3)効果:当該事件の解決に限って、会社の法人格を否定する。
一般的に会社の法人格を奪うものではない。

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設立

Ⅰ 総説
1 設立の意義
(1)意義:①成立すべき会社の実体たる団体形成するとともに(実体の形成)、②これに法人格を取
得させること(法人格の付与)
(2)手続:(ⅰ)実体の形成(実体面) :①定款の作成→②社員の確定→③機関の具備

※新設合併・新設分割・株式移転の場合の適用除外(814条)

(ⅱ)法人格の取得(形式面):④設立登記(49条)

2 設立中の法律関係
(1)発起人組合
ア.意義:会社設立の過程においては、発起人相互間に、会社設立を目的とする組合契約(民
法667条)があるとみられ、その履行として定款の作成、株式の引受け、設立事
務の執行等会社設立に必要な諸行為をすると考えられる。これを発起人組合という。
◆発起人組合と設立中の会社との法律関係
(ⅰ)当該行為が発起人の権限の範囲内の行為である場合
当該行為の効果は成立後の会社に帰属する(同一性説)。
(ⅱ)当該行為が発起人の権限の範囲外の行使である場合
①発起人組合の目的の範囲に含まれている場合
→発起人組合に効果が帰属し、発起人全員が責任を負う(最判昭和 35.12.9)。
②発起人組合の目的の範囲に含まれていない場合
→発起人(または会社を代表する肩書きを使用した者)が行った行為については、
発起人は民法117条の類推適用(∵「本人」たる会社がまだ存在しない)によっ
て相手方に対し責任を負う(最判昭和 33.10.24)。もっとも、相手方が会社が設立中
であることを知り又は知り得た場合には、民法117条2項に照らし、発起人は責
任を負わないと解する。
(2)設立中の会社
ア.意義:自らが会社として成立することを目的とする権利能力なき社団
イ.設立中の法律関係
◆同一性説〜発起人が会社設立のために取得した権利義務が成立後の会社に帰属すること
をどのように説明するか?
会社は成立前においても権利能力なき社団として実在し、発起人はこの設立中の会社
の機関としての地位を有している。したがって、発起人が設立中の会社の機関としてな
した権限の範囲内の行為の効果は、実質的には設立中の会社に帰属しており、会社の成
立(49条)とともに会社に帰属することになると解する。

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3 発起人の権限の範囲
(1)問題の所在:同一性説によれば、発起人の行為の効果が会社に帰属するのは、発起人が設立中
の会社の機関としてその権限に属する行為をした場合に限られる。そこで、発起人
の権限の範囲が問題となる。
(2)権限の範囲
ア.類型:①会社の設立それ自体を直接の目的とする行為
ex 定款・株式申込証の作成、創立総会の招集
②会社の設立にとって法律上または経済上必要な行為
ex 株主募集の公告委託、設立事務所の賃借
③成立後の会社の営業開始の準備行為(開業準備行為)
ex 営業用事務所の賃借、原材料・商品の購入、従業員の雇入れ
④営業行為そのもの
イ.学説:(ⅰ)狭義説:③開業準備行為には権限が及ばない(最判昭和 38.12.24)。

(ⅱ)広義説:③開業準備行為まで権限が及ぶ(立法担当者)。

※①②が発起人の権限に含まれ、④が含まれないことに争いはない。
◆発起人の権限の範囲〜開業準備行為が含まれるか?
会社法は、発起人の権限について厳格な規制を設け、成立後の会社の債務が増大する
ことを防止している(28条、33条等)。とすれば、会社法は、厳格な法定要件を満た
した財産引受(28条2号)のみを例外的に許容する趣旨であり、これ以外の開業準備
行為について発起人の権限は及ばないと解すべきである。よって、発起人の権限は③開
業準備行為には及ばない(最判昭和 38.12.24)。

Ⅱ 定款の作成
1 発起人
(1)意義:定款に「発起人」として署名した者(形式説)。実質的に会社設立を企画した者であって
も、定款に発起人として署名しなければ法律上は発起人とならない。もっとも、擬似発
起人として責任を負うことがある(103条2項)。※募集設立の場合のみ!
(2)発起人の資格・義務
ア.資格:制限なし(法人も可)。発起人は一人でもよい。複数の場合は発起人組合。
イ.義務:少なくとも1株の株式を引き受けなければならない(25条2項)。
2 定款
(1)定款の作成:発起人全員による作成・署名(26条1項)→公証人の認証(30条1項)。
公証人の認証後は、原則として変更することができない(30条2項)。
(2)定款の内容:①絶対的記載事項(27条1号〜5号)
②相対的記載事項(28条、107条1項1号、295条2項等)

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③任意的記載事項
3 変態設立事項(28条)
(1)意義:28条各号に定める事項。変態設立事項を定めるには、①定款への記載(28条柱書)
と②原則として検査役の調査を受けることが必要である(33条1項)。
(2)現物出資(1号)
ア.意義:金銭以外の財産による出資
イ.趣旨:現物出資の目的物が過大に評価され不当に多くの株式が与えられると、①会社の財
産的基盤を危うくして債権者を害するとともに、②金銭出資をした他の株主との間
で不公平となる。
ウ.例外:①価額の総額が500万円を超えない場合(33条10項1号)
②市場価額のある有価証券の場合(33条10項2号)
③価額の相当性につき弁護士等の証明がある場合(33条10項3号)
(3)財産引受(2号)
ア.意義:発起人が会社設立を条件とし第三者から特定の財産を譲り受けることを約する契約
イ.趣旨:①目的物が過大に評価され、会社の財産的基盤を危うくして会社債権者を害すると
ともに、②現物出資に関する規制を潜脱する方法として用いられるおそれがある。
ウ.例外:①価額の総額が500万円を超えない場合(33条10項1号)
②市場価額のある有価証券の場合(33条10項2号)
③価額の相当性につき弁護士等の証明がある場合(33条10項3号)
エ.法定要件を満たさない財産引受け
◆法定要件を満たさない財産引受の追認
会社法は、発起人の権限について厳格な規制を設け、成立後の会社の債務が増大する
ことを防止している(28条、33条等)。したがって、発起人の権限は、会社の設立を
直接の目的とする行為及び設立に法律上又は経済上必要な行為にまでしか及ばないと解
すべきである。とすれば、開業準備行為は本来発起人の権限の範囲外の行為であるが、
会社法は、厳格な法定要件を満たした財産引受(28条2号)のみを例外的に許容した
ものにすぎない。よって、法定要件を満たさない財産引受は絶対的に無効であって、追
認の余地はないものと解する(最判昭和 28.12.3)。
◆法定要件を満たさない場合の発起人の責任
発起人が設立中の会社の名を用いて取引した場合には、発起人は民法117条の責任
を負わない。なぜなら、設立中の会社であることが表示されている以上、相手方は発起
人の行為が権限の範囲に属するかにつき注意すべきであり、善意・無過失ということは
ありえないからである。
他方、発起人が既に会社が成立したかのように代表取締役の名を用いて取引した場合
には、相手方が善意・無過失である限り、発起人は民法117条の類推適用による責任

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を負うと解する(最判昭和 33.10.24)。
※「本人」たる会社が未だ存在しないため、直接適用ではなく類推適用となる。
(4)発起人の報酬その他の特別利益(3号)
ア.意義:発起人が会社設立のために尽力した労務に対する報酬や剰余金配当、新株の割当て
に関する優先権、会社の施設利用権などを発起人に与えること
イ.趣旨:発起人のお手盛りにより、会社の財産的基盤を危うくするおそれがある。
(5)設立費用(4号)
ア.意義:発起人が会社を設立するために支出した費用
イ.趣旨:本来、設立費用は発起人の権限の範囲内の行為によって発生するから、成立後の会
社が当然に負担すべきものである(同一性説)。しかし、無制限な支出を許すと会社
の財産的基盤を危うくするおそれがある。
ウ.設立費用債務の帰属
◆法定要件を満たさない設立費用の帰属
この点、判例は、定款に記載された額の限度内において、発起人のした取引の債務は
設立後の会社に帰属するが、記載額を超える部分については設立後の会社に帰属せず、
発起人が当該債務を負う(=分属する)とする(大判昭和 2.7.4)。
しかし、かかる見解によれば、会社の内部的問題によって債権者の地位を不安定にす
ることになるから妥当でない。そこで、設立費用に属する取引の効果は、相手方との関
係では全て発起人に帰属し、発起人は定款記載額の限度で設立後の会社に求償できるに
過ぎないと解すべきである(発起人全額負担説)。

Ⅲ 設立手続の各段階
1 発起設立と募集設立
(1)発起設立:定款に定められた会社の設立に際して発行する株式を発起人がすべて引き受けて会
社を設立させる場合(25条1項1号)
(2)募集設立:定款に定められた会社の設立に際して発行する株式の一部を発起人が引き受け、残
余については他から引受人を募集する場合(25条1項2号)
※募集設立は、実務では稀にしか利用されない。
2 発起設立
(1)株式の引受け・払込み(25条2項、34条1項)〜相殺はできない(208条3項参照)
(2)設立時役員等の選任(38条〜41条、47条、48条)
(3)変態設立事項の調査(33条1項)
(4)設立時取締役等による設立調査報告(46条1項)
3 募集設立
(1)株式の引受け・払込み(25条2項、57条、58条、63条1項)

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(2)変態設立事項の調査(33条1項)
(3)創立総会(65条1項)
ア.創立事項の報告(87条1項)
イ.取締役等の選任(88条)
ウ.設立経過の調査・報告(93条1項、2項)
エ.定款の変更(96条)
◆変態設立事項に関する定款変更
従来は、創立総会における変態設立事項の定款変更は、縮小的・削減的な方向のみ許
容されると解されていた(最判昭和 41.12.23)。しかし、会社法では「30条2項の規定
にかかわらず」定款変更できるとされていることから(96条)、変態設立事項について
の拡張的変更もできると解される。
4 設立登記
(1)設立登記(49条、911条1項、3項)
(2)908条の排除
◆設立登記に登記の一般的効力を定める908条1項の適用があるか?
設立登記は、会社という法人の存否を決するものであるから、第三者の善意・正当事
由等でその効力が左右されるとすれば法律関係の錯綜をきたす。したがって、設立登記
には908条1項の適用はなく、登記がなされれば一切の第三者に対して会社の存在を
対抗することができると解すべきである。

Ⅳ 設立に関する責任
1 発起人の責任
(1)現物出資・財産引受の不足額支払義務(資本充実責任)
・過失責任(52条2項2号)
※給付をした発起人については無過失責任(52条2項柱書かっこ書き)
※募集設立の場合は無過失責任(103条1項)
・株主全員の同意により免除可(55条)
・証明・鑑定評価した弁護士等も責任を負う(52条3項)
(2)任務懈怠責任(損害賠償責任)
・過失責任(通説) ※帰責事由=故意・過失
・株主全員の同意により免除可(55条)
・53条2項→対第三者責任(※55条による免責なし)
◆53条2項の責任の法的性質
取締役の第三者に対する責任(429条)と同様に考える。すなわち、53条2項は、
株式会社の設立について損失を被った者に対して、一般不法行為よりも簡易に発起人ら

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に直接責任を負わせるという特別の法定責任を定めた規定である(法的責任説)。
(3)会社の不成立の場合の責任(56条)
2 設立時取締役・監査役の責任
(1)現物出資財産等の価額填補責任(52条1項)〜設立時監査役には責任なし
(2)任務懈怠責任(損害賠償責任)(53条1項、2項)〜設立時監査役にも責任あり
3 弁護士等の責任(52条3項)〜過失責任(52条3項但書)
4 擬似発起人の責任(103条2項) ※募集設立の場合のみ
(1)意義:定款に発起人としてとして署名した者(=発起人)でなくても、株式募集の広告等に事
故の氏名・名称を掲げ、賛助する旨を記載した者は、発起人と同一の責任を負う
(2)趣旨:発起人らしい外観に対する信頼保護(禁反言ないし外観法理)
5 払込取扱機関の責任
(1)払込取扱機関の保管証明責任
ア.意義:募集設立の場合、指定された払込取扱機関は、発起人の請求により、払込保管証明
書を発行しなければならない(64条1項)。そして、払込保管証明をした払込取扱
機関は、証明書の記載が不実であること又は払込金返還に制限があることをもって
会社に対抗することができない(64条2項)。
※発起設立の場合には保管証明責任なし(廃止された)。
イ.趣旨:預合いなどの仮装払込みによる会社設立の弊害防止
◆払込取扱機関の支払い保管金の返還時期
払込取扱機関はその証明をした払込金額を、会社成立の時まで保管して、会社成立後
にこれを会社に引き渡すべき義務を負う。会社成立前に払込金を返還しても、成立後の
会社に対抗することはできない(最判昭和 37.3.2)。
(2)株式の仮装払込
ア.預合い:発起人が払込取扱銀行から借入れをして、これを設立中の会社の預金に振り替え
て株式の払込みに充て、同時にこの借入金を弁済するまではその預金を引き出さな
いことを約束することをいう。
◆預合いの効果
①このような仮装の払込みは会社の資本充実の原則に反するから、無効であると解す
る。②また、募集設立の場合、払込取扱期間は保管証明責任を負う(64条2項)。③さ
らに、預合いは刑事罰の対象にもなる(965条)。
イ.見せ金:発起人が払込取扱機関以外の者から金銭を借入れ、これを株式の払込にあてて会
社を設立し、会社の成立後それを引き出して借入金の返済に充てることをいう。
◆見せ金の効力
発起人は、出資の履行をすべき義務を負っている(34条1項、募集株式発行の場面
では208条1項)。したがって、当初から真実の払込として会社資金を確保する意図が

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なく、一時的な借入金をもって払込みの外形を整え、会社成立手続後直ちに払込金を払
い戻してこれを返済に充てることは、会社財産の形成を害する行為であって、資本充実
の原則に反するから無効と解すべきである。
そして、仮装意図の有無は、①会社成立後借入金を返済するまでの期間の長短、②払
込金が会社資金として運用された事実の有無、③借入金の返済が会社の資金関係に及ぼ
す影響を考慮して判断することになる(最判昭和 38.12.6)。

Ⅴ 設立無効および不成立・不存在
1 設立無効
(1)意義:会社の実体は形成され設立登記もなされたが、無効原因が存在する場合
(2)設立無効原因
◆設立無効原因
明文の規定はないが、設立手続に重大な瑕疵がある場合に限られる。
ex ①定款の絶対的記載事項の欠缺、②設立時発行株式を1株も引き受けない発起人が
いる場合、③公証人による定款の認証がない場合、④設立登記の無効など
※瑕疵が軽微な場合は裁量棄却を認めるべきである(831条2項類推適用、有力説)
(3)設立無効の訴え(828条1項1号)
(4)設立無効判決
ア.対世効(838条)
イ.遡及効の制限(839条)
ウ.清算手続の開始(475条2号)
2 会社の不成立・不存在
(1)会社の不成立:設立手続は経ているが中途で挫折し、設立登記に至らなかった場合
→発起人らに無過失責任が生じる(56条)
(2)会社の不存在:設立登記はあるが設立手続が全くの仮装であって会社の実体が存在しない場合

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株式

Ⅰ 総説
1 株式の意義
(1)意義:株式会社における社員たる地位。均等に細分化された割合的単位の形式をとる。
(2)趣旨:多数の者による出資を容易にし、資本の結合を図る
→株主は間接有限責任を負うのみ(104条)
(3)資本金と株式の関係:かつては資本金額=株金総額の関係があったが、平成13年改正により
すべて無額面株式となったため、今日では資本と株式の関係は完全に切断されている。
(4)株式の法的地位:株式会社における社員たる地位(社員権)→①自益権、②共益権
2 株式の共有・相続
(1)株式の共有
ア.意義:数人が株式を共同で保有することは認められる(民法264条参照)
株式の共有は、共同相続によって頻繁に生じる(民法898条参照)
イ.共有株式の権利行使の方法:原則として権利行使者の指定・通知が必要(106条本文)
◆共有株式についての権利行使の方法(106条)
株式の共有者が株式について権利行使するためには、権利行使者を定めて会社に通知
しなければならない(106条本文)。権利行使者の決定は、共有権を行使する代表者を
定めるものとして管理行為にあたるといえるので、持分価格の過半数で決すべきである
(民法264条、252条本文)(最判平成 9.1.28)。
なお、相続は一般承継であり、「譲渡」(130条1項)にあたらないので、会社に対
する対抗要件として、株主名簿の名義書換は不要であると解する。
◆少数派共有者が自己の意思を議決権の行使に反映させる方法
(ⅰ)権利行使者に対する関係
そもそも、共有株式の議決権自体は分割可能な具体的権利であり、本来であれば民法
427条に基づき共有持分権に応じて当然分割されているはずの権利である。ただ、1
06条は会社の事務処理上の便宜を図るため、会社との関係で共同行使が求められてい
るにすぎない。
とすれば、共有株式の議決権行使は、多数決で共有株式の議決権行使の帰趨を決定す
べきではなく、共有持分件者が自己の持分に対応する議決権行使について具体的に指図
した場合には、その指図に従う義務があるというべきである。
(ⅱ)会社に対する関係
会社は、他人のために株式を有するものでないときは、議決権の不統一行使を拒むこ
とができる(313条3項)。株式共有における権利行使者は「他人のために株式を有す
る」わけではないが、他人である他の共有者のために株式を行使する点で、313条3

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項が典型的に想定する信託による保有と異なるところはない。したがって、会社は共有
株式についての不統一行使を拒むことはできないと解する。
(ⅲ)指図に反する議決権行使の効果
106条本文は、会社の事務処理上の便宜を図る規定にすぎないから、実質的な議決
権行使者意見が分かっている場合に、会社がその意見を無視することは信義則に反する
(民法1条2項)。したがって、他の共有者の見解について会社が悪意である場合には、
他の共有者の指図に反する議決権行使は違法であり、決議方法の法令違反があるものと
解する(831条1項1号)。
◆権利行使者の指定・通知がない場合
権利行使者の指定・通知がない場合であっても、会社(代表取締役又は議長)が同意
すれば共有者は権利行使することができる(106条但書)。
この点、判例は、権利行使者の指定・通知を欠くときは、共有者全員が議決権を共同
して行使する場合を除き、会社の側から共有者に議決権行使を認めることは許されない
とする(最判平成 11.12.14)。しかし、この判例は、106条但書に相当する規定がなか
った改正前商法下のものである。
◆株式共有者が提起する株主総会決議取消の訴えの原告適格
株主総会決議取消訴訟の提訴権も株式についての権利であるから、権利行使者(10
6条本文)でない者に原告適格は認められないのが原則である。
もっとも、106条は会社の事務処理上の便宜のための規定にすぎないから、会社が
一方において権利行使者の指定がない者の議決権行使を認めながら(106条但書)、他
方において成立した決議を争うことについては権利行使者の指定がないことを理由に原
告適格を否定するような特段の事情がある場合には、権利濫用にあたるものとして、権
利行使者でない者の原告適格を肯定してよいと考える(最判平成 2.12.4)。
(2)株式の相続
ア.意義:株式は、株式会社における社員たる地位であるから、当然に相続の対象となる
(民法896条本文参照)
イ.問題となる場合
◆株式が共同相続された場合の法律関係
共同相続の場合、相続財産は共有に属することになるが(民法898条)、この「共有」
は文言上物権法の「共有」
(民法249条以下)と同じ意味であるといえる。したがって、
共同相続した株式は、相続持分の割合で相続人の準共有に属する(民法264条)。
◆共益権行使の訴えの係属中に株主が死亡した場合
営利法人たる株式会社においては、自益権のみならず共益権も、株主自身の経済的利
益のために行使されるものであって、一身専属権ではない。したがって、株主の訴訟上
の地位(原告適格)は相続人に承継されると解すべきである(最大判昭和 45.7.15)。

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Ⅱ 株主の権利
1 株主の権利
(1)自益権と共益権
ア.自益権:会社から経済的利益を受けることを目的とする権利
ex 剰余金配当請求権(453条)、残余財産分配請求権(504条)
イ.共益権:株主が会社の管理運営に参与することを目的とする権利
ex 議決権(308条)、株主提案権(303条〜305条)、提訴権(831条等)
(2)単独株主権と少数株主権
ア.単独株主権:一株をもつ株主でも行使することができる権利
イ.少数株主権:一定数以上の議決権数をもつ株主のみが行使できる権利
2 株主平等の原則(109条1項)
(1)意義:株式会社は、株主を、その有する株式の内容および数に応じて平等に取り扱わなければ
ならないという原則(109条1項)
(2)趣旨:①株式は株式会社における社員たる地位であり、これは均等化された割合的単位として
構成されるから、会社との関係において株主が平等に取り扱われることは当然である
②株式投資の収益の予測可能性を高め、株式投資を促進する
※多数決の濫用や会社の恣意的な権限行使から少数株主を保護する機能を有する
(3)例外:①非公開会社における株主ごとに異なる取り扱いをする旨の定款(109条2項)
②少数株主権の要件(297条、433条等)
③株式保有期間の要件(847条、360条1項等)
④種類株主総会の決議(322条)
(4)効果:株主平等原則に違反する行為は、会社の善意・悪意を問わず無効(強行規定)
(5)適用範囲:株主たる地位に基づく法律関係であること
◆一般論
そもそも、株主平等原則(109条1項)の趣旨は、株式が均等化された割合的単位
の形式を取ることから、株式投資の収益の予測可能性を高め株式投資を促進する点にあ
る。とすれば、同原則はおよそ一切の別異取扱いを禁止するものではなく、合理的理由
に基づく一定の区別は許容されると解すべきである。
株主の別異取扱いに合理的な理由があるかどうかは、①当該取扱の目的の重要性、②
手段の必要性・相当性があるかどうかで決することになる。
◆無配時の金銭贈与
会社が一般の株主に対しては無配としながら、特定の大株主に対し報酬として月額8
万円、中元および歳暮として各5万円を呈することを約した贈与契約は、無配による大
株主の投資上の損失を填補する意味を有し、大株主のみを特別に有利に待遇し利益を与

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えるものであるから、株主平等の原則に反し、また、454条3項の規定の趣旨に照ら
して無効である(最判昭和 45.11.24)。
◆株主優待制度
株主優待制度も、株主たる地位に基づき給付を与える制度であるから、株主たる地位
に基づく法律関係として株主平等原則の適用を受ける(109条1項)。
そもそも、株主平等原則(109条1項)の趣旨は、株式が均等化された割合的単位
の形式を取ることから、株式投資の収益の予測可能性を高め株式投資を促進する点にあ
る。とすれば、同原則はおよそ一切の別異取扱いを禁止するものではなく、合理的理由
に基づく一定の区別は許容されると解すべきである。そこで、①会社の経営政策上合理
的な目的を有し、②その手段として支給する価額が社会通念上軽微なものである限り、
株主優待制度は株主平等原則に違反するものではないと解する。
◆従業員持株制度
会社が、安定株主層の形成・インセンティブの付与等のために、従業員が自社株を取
得することに対して奨励金を支給することがある。このような奨励金の支給は、会社の
従業員としての地位に基づくものであって、株主としての地位に基づくものではない。
したがって、株主平等の原則は適用されないと解する。
◆株主総会において従業員株主を株主席の前方に着席させる措置
判例は、株主総会に出席する株主に対しては合理的理由のない限り同一の取扱いをす
べきところ、従業員株主を株主席の前方に着席させる措置に合理的な理由はなく不適切
であるとしたが、具体的に株主の権利行使が妨げられていないので、法的利益の侵害が
ないとした(最判平成 8.11.2)。
※本件は頭数平等の問題なので、厳密には株主平等原則の問題ではない?
◆差別的行使条件を付した新株予約権の無償割当てと株主平等原則
〜特定の株主につき差別的行使条件(ex 特定の株主を「非適格者」として新株予約権の
行使を制限する)を付した新株予約権無償割当てに対し、①株主平等原則違反(109
条1項)の法令違反または②「著しく不公正な方法」にあたるとして、差止請求(24
7条1号類推適用)が認められるか?
(ⅰ)新株予約権無償割当てに対する247条類推適用の可否
新株予約権予約権の無償割当ては、通常株主の持株比率を変動させず、株主に経済的
不利益を与えることはないから、募集新株予約権の発行の場合のような差止めの規定(2
47条)は設けられていない。
しかし、新株予約権予約権には差別的行使条件を付することが可能であり、差別的行
使条件の付された新株予約権予約権の無償割当ては、特定の株主が持分比率の低下とい
う不利益を受けるおそれがある点で、募集新株予約権の発行を異なるところはない。し
たがって、247条を類推適用して差止めをすることができると解する(最決平成 19.8.7)。

12

会社法 まとめノート

(ⅱ)株主平等原則違反(法令違反)の点について
278条2項は、株主に割り当てる新株予約権の内容が同一であることを前提として
いるものと解されるから、109条1項の株主平等原則の趣旨は、新株予約権無償割当
ての場合についても及ぶというべきである。もっとも、株主平等の原則は個々の株主の
利益を保護するための制度であるが、他方で、個々の株主の利益は会社の存続・発展な
しには考えられない。
したがって、特定の株主による経営支配権の取得に伴い、会社の存立・発展が阻害さ
れるおそれが生じるなど、会社の企業価値が毀損され、会社の利益ひいては株主の共同
の利益が害されることになるような場合には、その防止のために当該株主を差別的に取
り扱ったとしても、当該取扱いが衡平の理念に反し、相当性を欠くものでない限り、こ
れを直ちに同原則の趣旨に反するものということはできない。
そして、会社の企業価値が毀損され、会社の利益・株主の共同の利益が害されること
になるか否は、最終的には、会社の利益の帰属主体である株主自身によって判断される
べきものであるから、株主総会の判断は尊重されるべきである(最決平成 19.8.7)。
※ あてはめにおいて重視された事情
・新株予約権の取得対価が適正であったこと
・株主総会決議において会社側の提案に対し80%を超える賛成が得られていたこと
・株主総会の招集・決議の手続が適正なものであったこと など
(ⅲ)「著しく不公正な方法」の点について
「著しく不公正な方法」とは、不当な目的を達成する手段をいう。そして、会社経営
陣は株主に選ばれる立場であり、自らが株主を選ぶ立場にないから、募集株式の発行が、
特定の株主の持株比率を低下させ現経営者の支配権を維持することを主要な目的として
なされたと評価できる場合には、原則として「著しく不公正な方法」にあたると解する
(主要目的ルール)。
もっとも、特定の株主による経営支配権の取得に伴い、会社の存立・発展が阻害され
るおそれが生じるなど、会社の企業価値が毀損され、会社の利益ひいては株主の共同の
利益が害されることになるような特段の事情がある場合には、もはや不当な目的とはい
えず「著しく不公正は方法」にあたらないと解する。
そして、会社の企業価値が毀損され、会社の利益・株主の共同の利益が害されること
になるか否は、最終的には、会社の利益の帰属主体である株主自身によって判断される
べきものであるから、株主総会の判断は尊重されるべきである(最決平成 19.8.7)。
3 利益供与の禁止(120条)
(1)意義:株式会社は、株主の権利行使に関して財産上の利益を供与してはならない(120条)
(2)趣旨:①会社経営の健全性の確保
②会社財産の浪費の防止

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会社法 まとめノート

(3)要件:①「会社又はその子会社の計算において」
②「株主の権利行使に関し」
※特定の株主に対して無償又は有償であっても会社が受けた利益が著しく少ない場合
には、
「株主の権利行使に関し」供与がなされたものと「推定」される(120条2項)
③「財産上の利益を供与」=対価的関係が成り立たないこと
※利益供与の相手は誰であってもよい(「何人に対しても」)
◆「株主の権利行使に関し」の意味
そもそも、120条が利益供与を禁止しているのは、主に、株主に選ばれるべき取締
役が、株主の権利行使に影響を与えようと利益供与を行うことは、会社運営上の健全性
を害し、副次的には、会社財産の浪費につながるからである。
このような趣旨に鑑みれば、株主の権利行使に影響を及ぼす主観的認識(目的)が会
社側の取締役にあれば、その利益供与は、会社運営の健全性を害し、会社財産の浪費を
招きうるものと認められる。したがって、取締役の主観的認識として、権利行使に影響
を及ぼす意識があれば、「株主の権利行使に関し」といえる。
◆株式の譲渡に関する利益供与〜「株主の権利行使に関し」といえるか?
株式の譲渡は、株主たる地位の移転であってそれ自体は「株主の権利行使」ではない
から、「株主の権利行使に関し」とはいえないとも思える。
しかし、会社から見て好ましくない者が議決権等の株主の権利を行使することを回避
する目的でその株式譲渡をさせることは、いわば、権利行使阻止の究極的手段といえ、
株主の権利行使に関連する行為である。したがって、株式の譲渡に関してなされた利益
供与も、それが会社から見て好ましくない者が議決権等の株主の権利を行使することを
回避する目的でなされる限り、
「株主の権利行使に関し」にあたるというべきである(最
判平成 18.4.10)。
◆株主優待制度と利益供与
株主に議決権行使をさせるために利益供与をすることは、
「株主の権利行使に関」する
利益供与であり、原則としてすべて禁止される(120条1項)。もっとも、利益供与禁
止の趣旨は、会社運営の健全性および会社財産の浪費防止の点にあるから、議決権行使
の内容に踏み込まなければ、取締役が株主をコントロールすることにはならず、会社運
営の健全性を害することもない。
したがって、①株主の権利行使の内容に影響を及ぼすおそれのない正当な目的があり、
②個々の株主に供与される利益が社会通念上許容される範囲のものであり、③その総額
も会社の財産的基盤に影響を及ぼすものでない場合には、例外的に許容されるというべ
きである(東京地判平成 19.12.6)。
(4)効果:①被供与者の返還義務(120条3項)
②取締役の価額支払義務(120条4項)

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会社法 まとめノート

直接利益供与を行った取締役→無過失責任(120条4項本文)
利益供与に関与した取締役 →過失責任(120条4項但書)
③罰則(970条)
4 少数派株主の保護
(1)内容的保護
①株主総会における厳格な招集手続・決議方法
②多数決によっても強行法規に反する決議をすることはできない
(2)事前的救済手段
①累積投票制度(342条)
②差止請求権(210条、360条)
③募集株式発行価額規制(199条3項)
④株主総会招集権(303条)、会計帳簿閲覧請求権(433条)、株主提案権(303条)、
検査役選任権(306条)など
(3)事後的救済手段
①株主総会決議に関する各種の訴権(831条、830条)
②取締役解任請求権(854条1項)
③株主の代表訴訟(847条)
④株式買取請求権(469条、785条、116条、797条)

Ⅲ 株式の譲渡
1 株式譲渡の意義
(1)株式譲渡の意義:法律行為によって株式を移転すること(127条)
(2)株式の譲渡方法
ア.譲渡要件:株券不発行会社→意思表示のみ
株券発行会社 →意思表示+株券の交付(128条1項)
イ.対抗要件:株主名簿の記載・記録(130条1項、2項)
◆他人名義による株式の引受け〜実際の出捐者と名義人のいずれが株主となるか?
一般私法上の法律行為と同様、株式引受についても、真の契約当事者として申込みを
した者が株式引受人としての地位を取得すると考えるべきである。したがって、名義人
ではなく出捐者が株主たる地位を取得すると解する(実質説、最判昭和 42.11.17)。
なお、これは原始取得であり「譲渡」ではないので130条1項の適用はなく、株主
名簿に記載がなくとも、会社にその取得を対抗することができることになる。
※名簿上の株主から譲渡を受けた第三者は民法94条2項類推適用により保護されうる。
2 株式譲渡自由の原則と例外
(1)原則:株主は、その有する株式を譲渡することができる(127条)

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会社法 まとめノート

(2)趣旨:①株主の投下資本回収(必要性) ※持分会社のような退社制度なし
②社員の個性は重視されないから、社員が変動しても会社に不都合なし(許容性)
(3)時期による制限
ア.権利株の譲渡禁止:会社成立前または新株発行前の地位の譲渡は、会社に対して対抗する
ことができない(50条2項、208条4項)。
∵設立事務・新株発行事務の円滑(会社の事務処理上の便宜)
◆権利株の譲渡の効果
「対抗することができない」との文言から、会社との関係では無効であるが、当事者
間では有効と扱ってよい。また、会社の事務処理上の便宜を図る制度にすぎないから、
会社の側から権利株の譲渡の有効性を承認することも認められる。
イ.株券発行会社における株券発行前の株式譲渡:株券発行会社において株券の発行前にした
譲渡は、会社に対しその効力を生じない(128条2項)。
∵会社の株券発行事務の円滑(会社の事務処理上の便宜)
◆株券発行前の株式譲渡の効力
「株券発行会社に対し、その効力を生じない」との文言から、会社との関係では無効
であるが、当事者間では有効と扱ってよい。また、会社の事務処理上の便宜を図る制度
にすぎないから、会社の側から権利株の譲渡の有効性を承認することも認められる。
また、会社が株券の発行を不当に遅滞する場合には、もはや会社の事務処理上の便宜
を保護する必要がないから、合理的期間を経過した後の株式譲渡は、会社に対しても有
効になると解すべきである(最大判昭和 47.11.8)。
(4)定款による株式譲渡の制限
ア.意義:会社は、定款をもって、①すべての株式または②株式の種類として、譲渡による株
式の取得につき株主総会(取締役会)の承認を要する旨を定めることができる(1
07条1項1号、108条1項4号)。
※全ての株式について譲渡制限がある会社を「非公開会社」といい、それ以外の会社
を「公開会社」という(2条5号)
イ.趣旨:会社にとって好ましくない者が株主として会社経営に参加するのを防止する
(閉鎖的会社の安定性の確保)。
ウ.承認手続
①譲渡人または譲受人が譲渡承認請求(136条〜138条)
②会社(取締役会)が承認の有無を決定(139条1項)→通知(139条2項)
2週間以内に通知しなかった場合にはみなし承認(145条1号)
③買取請求ある場合、会社(取締役会)は買取先(会社 or 指定買取人)を決定(140条)
④会社 or 買取指定人と譲渡承認請求者間で売買契約成立(143条、144条)
※譲渡承認をしない場合でも、株式譲渡の途が確保されている点に注意(投下資本の回収)

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会社法 まとめノート

これに対し、新株予約権の譲渡制限については③に相当する規定がないので、事実上譲
渡が禁止されることになる。
エ.譲渡制限に違反した場合
◆譲渡承認のない株式譲渡の効力
(ⅰ)当事者間における効力
そもそも、定款による譲渡制限の趣旨は、会社にとって好ましくない者が株主として
会社に参加するのを阻止する点にある。かかる趣旨を達成するには、会社に対する譲渡
の効力のみを否定すれば足りる。また、133条や137条は、譲渡承認のない譲渡が
当事者間では有効であることを前提とした規定といえる。したがって、譲渡制限に違反
にした株式譲渡は会社との関係では無効であるが、当事者間では有効であると解する(相
対的無効説、最判昭和 48.6.15、最判昭和 63.3.15)。
(ⅱ)会社に対する効力
譲渡制限に違反にした株式譲渡は、会社との関係では効力を生じない。したがって、
会社は譲渡人を株主として取り扱う義務があるというべきであり、その反面として、譲
渡人は会社に対してなお株主たる地位を有する(最判昭和 63.3.15)。
※名義書換未了株主の場合との混同に注意(最判昭和 30.10.20)。
◆譲渡担保の設定と譲渡制限
株式を譲渡担保に供することは、127条にいう「譲渡」にあたる(所有権的構成)。
もっとも、譲渡承認を得ていない株式譲渡であっても、当事者間では有効と扱ってよい
(最判昭和 48.6.15)。
◆譲渡承認のない株式譲渡が会社との関係でも有効となる場合
(ⅰ)一人会社(一人株主)の場合
譲渡制限株式について会社の承認が要求される趣旨は、会社にとって好ましくない者
が株主になることを防止するためである。このような趣旨からすれば、一人株主が株式
を譲渡する場合には、他の株主がいない以上保護すべき利益が存在しない。したがって、
当該譲渡は会社との関係でも有効であると解する(最判平成 5.3.30)。
(ⅱ)株主が二人だけの会社の場合
二人の株主のみで構成されている会社において、その一方が他方に対して株式を譲渡
する場合には、会社にとって好ましくない者が会社に参加することにはならず、譲渡制
限の趣旨に反しないから、譲渡承認を得なくても有効である(東京地判平成 23.1.26)。
(ⅲ)株主全員の同意がある場合
譲渡制限株式について会社の承認が要求される趣旨は、会社にとって好ましくない者
が株主になることを防止するためである。このような趣旨からすれば、譲渡につき株主
全員の同意がある場合には、株主総会・取締役会による承認決議に代替する機能がある
といえるから、当該譲渡は会社との関係でも有効であると解する(最判平成 9.3.27)。

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会社法 まとめノート

オ.譲渡制限の例外:相続や合併といった一般承継の場合(134条4号)
※もっとも、定款の定めにより会社は売渡請求をすることができる(174条〜177条)
(5)契約による株式譲渡の制限
◆契約による株式の譲渡制限の有効性
(ⅰ)会社と株主間の譲渡制限契約
そもそも、株式会社においては、退社による持分の払い戻しは認められないから、株
主は株式を自由に譲渡し、投下資本の回収を図る必要がある。そこで、会社法は株式譲
渡を原則として自由とし(127条)、例外的に定款で定めた場合に限って譲渡を制限で
きるとしている(107条2項1号、108条2項4号)。したがって、契約によって譲
渡を制限することは127条の脱法行為といえ、原則として無効というべきである。
もっとも、契約による譲渡制限が、①投下資本の回収を不当に妨げるものではなく、
かつ、②主たる目的が経営支配権維持目的で行われたものでないといえる場合には、1
27条の潜脱とはいえないから、契約自由の範囲内として有効としてよいと考える。
(ⅱ)会社以外の第三者と株主間の譲渡制限契約
株主と第三者の間における譲渡制限契約は、会社法の関知するところではなく、契約
自由の原則が妥当する。したがって、当該譲渡制限契約が、会社・株主間の譲渡制限契
約の潜脱手段と認められるような特段の事情のない限り、有効であると解してよい。
(6)自己株式取得の制限
ア.意義:株式会社が自己の発行した株式を取得すること
イ.趣旨:①会社の株価対策、②企業再編の促進、③敵対的買収への対抗
※問題点:①会社の財産的基盤を危うくする(会社債権者の利益)、②株主間の不平
等(株主平等の原則)、③不公正な会社支配のおそれ、④相場操縦やイン
サイダー取引のおそれ
ウ.自己株式の取得制限
(ⅰ)有償取得の場合:株主総会の決議(156条)
(ⅱ)特定の株主からの取得:株主総会の特別決議(160条1項、309条2項2号)
他の株主による追加買取請求(160条2項、3項)
※例外:161条、162条、164条
(ⅲ)子会社からの取得:株主総会(取締役会)の決議(163条)
※子会社が親会社の株式を取得することは原則禁止(135条)
(ⅳ)財源規制:分配可能額を超えてはならない(461条1項2号)
エ.違法な自己株式の取得・処分
◆株主総会決議を経ない自己株式の取得の効力
自己株式取得の制限の趣旨は、自己株式の取得が実質的に会社財産の払い戻しになる
ことから資本維持を図る点にある。しかし他方で、取引の安全を図る必要もある。そこ

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会社法 まとめノート

で、違反の事実につき譲渡人(株主)が悪意の場合には当該取得は無効となるが、善意
の場合には会社は無効を主張することができないと解する(相対的無効説)。
なお、自己株式の取得制限違反による無効の主張は会社側からのみ認められ、目的を
達成している譲渡人(株主)の側から無効を主張することはできない(最判平成 5.7.15)。
※ これに対し、財源規制違反(461条1項柱書)については、違法配当の効力と同様
に考えて、無効であると解する。
(7)子会社の親会社株式取得の制限
ア.意義:子会社は、原則として親会社の株式を取得することができない(135条1項)
イ.趣旨:子会社と親会社の経済的一体性から、子会社による親会社株式の取得は実質的には
親会社財産の払戻しとなり、親会社の資本維持を害する
ウ.例外:135条2項各号の場合
3 株式の譲渡と権利行使
(1)株式の有価証券性
(2)株式の譲渡方法
(3)権利行使の方法
4 株主名簿と名義書換制度
(1)株主名簿(121条)
ア.意義: 株主及び株券に関する事項を明らかにするため会社法に規定により作成される帳簿
イ.趣旨:①多数の変動する株主に対する会社の事務処理上の便宜を図る
②株主の権利行使の円滑を図る
ウ.基準日の制度:一定の日(基準日)において株主名簿に記載された株主もしくは質権者を
もって、権利行使できる株主もしくは質権者とみなすことができる(124条1項)
エ.株式振替制度:上場株式の譲渡はすべて、社債・株式等の振替に関する法律(振替法)に
基づく振替制度によって行われる→名義書換は不要
オ.株主名簿閲覧請求権(125条2項)
◆株主名簿閲覧請求と委任状勧誘〜「実質的に競争関係にある事業を営み」の意味
会社法125条3項3号が、株主名簿閲覧請求について、実質的に競争関係に立つ者
の請求を拒めるとした趣旨は、競争関係にある者は、会社の犠牲において自己の利益を
図る目的で閲覧請求を行うおそれがあり、不当目的又は濫用目的であること(125条
3項1号、2号)が推認されるからである。
とすれば、125条3項3号は、不当目的・濫用目的を推定する規定であり、請求者
が不当目的・濫用目的でないことを立証しない限り拒絶が許されるという法律上の推定
規定であると読むべきである(立証責任転換説)。したがって、3号にあたる場合であっ
ても、請求者が不当目的・濫用目的の不存在を立証した場合には、閲覧請求を拒絶する
ことはできない(東京地判平成 20.6.12)。

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会社法 まとめノート

(2)名義書換(130条)
ア.意義:株主名簿に株主の氏名および住所を記載または記録すること
→株式譲渡の対抗要件(130条1項)。
イ.名義書換未了の法律関係
◆名義書換未了の株主〜「対抗することができない」の意味
株式の譲渡は、株主名簿の書き換えをしなければ、会社に対抗することはできない(1
30条1項)。もっとも、これは対抗要件にすぎないので、名義書換がなくても、会社が
自己の危険において名義書換未了の株主を株主と認めて権利行使させることは差し支え
ないと解する(最判昭和 30.10.20)。
◆名義書換の不当拒絶
そもそも、株主名簿制度は、集団的権利関係を画一的に処理するという会社の事務処
理上の便宜のためのものである。とすれば、会社が正当な理由なく株式の名義書換請求
を拒絶する場合には、もはや会社の事務処理上の便宜を図る必要はないから、会社が名
義書換未了であることを理由に株主の権利行使を拒むことは、信義則に反し許されない
というべきである(最判昭和 41.7.28)。
◆譲渡承認未了の場合と名義書換未了の場合の取扱いの違い
..........
譲渡承認未了→会社は譲渡人を株主として扱わなければならない(最判昭和 63.3.15)
......
名義書換未了→会社は譲受人を株主として扱ってもよい(最判昭和 30.10.20)
∵条文の文言、制度趣旨が異なる
◆他人名義による株式の引受け〜実際の出捐者と名義人のいずれが株主となるか?
一般私法上の法律行為と同様、株式引受についても、真の契約当事者として申込みを
した者が株式引受人としての地位を取得すると考えるべきである。したがって、名義人
ではなく出捐者が株主たる地位を取得すると解する(実質説、最判昭和 42.11.17)。
なお、これは原始取得であり「譲渡」ではないので130条1項の適用はなく、株主
名簿に記載がなくとも、会社にその取得を対抗することができることになる。
※名簿上の株主から譲渡を受けた第三者は民法94条2項類推適用により保護されうる。
ウ.失念株をめぐる問題
失念株:株主割当てによる新株発行の場合に、旧株の譲受人が新株割当期日までに名義書
換を失念した結果、株主名簿上の株主(旧株の譲渡人)に割り当てられた新株
※上場株式の譲渡は振替制度によって行われるから、名義書換の失念という問題は
生じない。よって、今日失念株の問題が生じるのは非上場株式の場合に限られる。
◆新株の割当を受ける権利の帰属
(ⅰ)会社との関係
名義書換がなされていない以上、譲受人は株主であることを会社に主張できない(1
30条1項)。したがって、新株の割当を受ける権利は、会社との関係では名簿上の株主

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会社法 まとめノート

たる譲渡人に帰属する。
(ⅱ)当事者間の関係
判例は、譲渡当事者間においても、名義株主である譲渡人が権利者であるとする(最
判昭和 35.9.15)。しかし、これは会社との関係と譲渡当事者間の関係を混同するもので
あって妥当でない。名義書換は株式譲渡の会社に対する対抗要件にすぎないから、当事
者間においては譲受人が株主であると解すべきである。したがって、譲渡当事者間にお
いては、新株の割当を受ける権利は譲受人に帰属すると解する。
◆譲受人の譲渡人に対する不当利得返還請求の可否
譲渡当事者間においては、新株の割当を受ける権利は譲受人に帰属するから、譲渡人
が新株割当を受けることは、譲受人との関係では「法律上の原因」がないといえる。し
たがって、譲受人は譲渡人に対し、不当利得として、配当財産や株式の売却代金相当額
の返還を請求することができる(最判昭和 37.4.20、最判平成 19.3.8)。

Ⅳ 株式の担保
1 株式の質入れ
(1)意義:株主は、株式に質権の設定をすることができる(146条1項)
(2)質権の設定方法・対抗要件
ア.設定方法:株券不発行会社→当事者間の意思表示
株券発行会社 →当事者間の意思表示+株券の交付
イ.対抗要件:株券不発行会社→株主名簿に記載・記録(147条1項)
株券発行会社 →株券の継続的占有(147条2項)
(3)質入れの効力:物上代位(151条)
2 株式の譲渡担保
(1)意義:株式を譲渡担保に供することもでき、実務上広く利用されている
◆譲渡担保の設定と譲渡制限
株式を譲渡担保に供することは、127条にいう「譲渡」にあたる(所有権的構成)。
もっとも、譲渡承認を得ていない株式譲渡であっても、当事者間では有効と扱ってよい
(最判昭和 48.6.15)。
(2)略式質か譲渡担保か
◆略式質と略式譲渡担保の区別基準
〜株券発行会社において担保権者に株券の交付がなされた場合どのように区別するか?
まず、当事者の意思が明らかであればその意思に従い、当事者の意思が不明である場
合には、譲渡担保であると解すべきである。なぜなら、譲渡担保は株式を任意に処分で
きる等の点で、担保権者に有利だからである。

21

会社法 まとめノート

Ⅴ 自己株式の取得
1 自己株式
(1)自己株式の取得
ア.意義:株式会社が自己の発行した株式を取得すること
イ.趣旨:①会社の株価対策、②企業再編の促進、③敵対的買収への対抗
※問題点:①会社の財産的基盤を危うくする(会社債権者の利益)、②株主間の不平
等(株主平等の原則)、③不公正な会社支配のおそれ、④相場操縦やインサイダー
取引のおそれ
(2)自己株式の取得手続
ア.有償取得の場合:株主総会の決議(156条)
イ.特定の株主からの取得:株主総会の特別決議(160条1項、309条2項2号)
他の株主による追加買取請求(160条2項、3項)
※例外:161条、162条、164条
ウ,子会社からの取得:株主総会(取締役会)の決議(163条)
※子会社が親会社の株式を取得することは原則禁止(135条)
エ.財源規制:分配可能額を超えてはならない(461条1項柱書)
◆株主総会決議を経ない自己株式の取得の効力
自己株式取得の制限の趣旨は、自己株式の取得が実質的に会社財産の払い戻しになる
ことから資本維持を図る点にある。しかし他方で、取引の安全を図る必要もある。そこ
で、違反の事実につき譲渡人(株主)が悪意の場合には当該取得は無効となるが、善意
の場合には会社は無効を主張することができないと解する(相対的無効説)。
なお、自己株式の取得制限違反による無効の主張は会社側からのみ認められ、目的を
達成している譲渡人(株主)の側から無効を主張することはできない(最判平成 5.7.15)。
※ これに対し、財源規制違反(461条1項柱書)については、違法配当の効力と同様
に考えて、無効であると解する。
(3)自己株式の法律上の地位
ア.共益権:①会社は自己株式につき議決権を有しない(308条2項)
②その他の共益権も有しない(通説)
イ.自益権:①会社は自己株式につきて剰余金配当請求権を有しない(453条括弧書き)
②残余財産分配請求権も認められない(504条3項)
③募集株式・新株予約権の割当を受ける権利なし(202条2項、241条2項)
④株式併合・分割により割当を受ける権利は認められる
∵これを認めないと、従前の相対的な交換価値が変動してしまう
(4)自己株式の保有・処分
ア.自己株式の保有;制限なし(金庫株の解禁)

22

会社法 まとめノート

イ.自己株式の処分:①募集株式の発行(199条1項)、②自己株式の消却(178条)
2 子会社による親会社株式の取得制限
(1)親会社・子会社の意義:親会社→2条4号、子会社→2条5号
(2)取得の制限
ア.原則:子会社は、原則として親会社の株式を取得することができない(135条1項)
イ.趣旨:子会社と親会社の経済的一体性から、子会社による親会社株式の取得は実質的には
親会社財産の払戻しとなり、親会社の資本維持を害する
ウ.例外:135条2項各号の場合
(3)処分:子会社は取得した親会社株式を相当の時期に処分しなければならない(135条3項)
子会社は保有する親会社株式につき議決権を有しない(308条1項)

Ⅵ 株式の消却・併合・分割・無償割当て
1 株式の消却(178条)
(1)意義:特定の株式を消滅させること ※現行法では自己株式の消却のみ認められる(178条)
(2)手続:取締役会の決議(178条1項)
∵自己株式は、取得の段階で株主保護・会社債権者保護が図られている
(3)効果:当該株式が消滅するが、資本金・資本準備金・利益準備金は減少しない
(会社の資本関係とは無関係)
◆株式の消却と発行可能株式数の復活
〜発行可能株式総数:1000株、発行済株式総数:500株、消却自己株式:100
株の場合、消却した100株分が復活して、600株発行できることになるか?
自己株式の消却より発行可能株式数が復活し、発行可能株式総数の範囲内で自己株式
の消却と株式の発行を繰り返すことができると解する。なぜなら、発行可能株式総数は、
既存株主の持株比率が低下する限度を画するものであるところ、発行可能株式総数の枠
内である限り、既存株主に不測の損害を被らしめることがないからである。
よって、600株の範囲で、再発行が認められる。
2 株式の併合(180条以下)
(1)意義:数個の株式を合わせて従来よりも少数の株式とすること
(2)趣旨:株価対策・合併時の比率調整等のために一株あたりの株価を引き上げる手段
(3)手続:①株主総会の特別決議(180条2項、309条2項4号)
∵一株に満たない株主が株主たる地位を奪われるなど、既存株主に与える影響が重大
②併合を必要とする理由の開示(180条3項)
③端数処理(235条)
※反対株主の株式買取請求権は認められていない

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会社法 まとめノート

◆株式の併合と少数派株主の締め出し(スクイーズ・アウト)
〜株式の併合は、大幅な併合比率(ex10万株=1株)を定めることにより、大部分の
株主の保有株式を1株未満にするという形で、多数派株主が少数派株主を締め出す手段
として利用されうる。少数派株主の救済として、どのような方法が考えられるか?
(ⅰ)株式併合の差止め(210条類推適用)‐事前救済手段
そもそも210条の趣旨は、新株発行が既存の既存株主の利益に影響(=持分比率の
変動)を与えることから、事前の救済措置を認めるという点にある。とすれば、株式の
併合も特殊な新株発行であって、併合比率によっては既存株主の地位に重大な影響を与
えうるから、上記の趣旨が妥当する。したがって、株式の併合についても210条が類
推適用されると解する。
「著しく不公正な方法」
(210条2号)とは、不当な目的を達成する手段をいう。そ
して、会社経営陣は株主に選ばれる立場であり、自らが株主を選ぶ立場にないから、募
集株式の発行が、特定の株主の持株比率を低下させ現経営者の支配権を維持することを
主要な目的としてなされたと評価できる場合には、原則として「著しく不公正な方法」
にあたる(主要目的ルール)。
したがって、多数派株主が現経営者の支配権維持のために少数派株主を締め出す目的
で、大幅な併合比率を定めることは、「著しく不公正な方法」にあたると解する。
※ 法令違反(210条1号)として、株主平等原則違反の主張もありうる。
(ⅱ)株主総会特別決議取消しの訴え(831条1項)
株式併合を行うためには、株主総会の特別決議が必要である(180条2項)。これは
株式併合の効力要件と解されるから、当該決議に取消事由(831条1項)がある場合
には、決議を取消すことにより併合の効力を争うことができる。
この点、「特別の利害関係を有する者」(831条1項3号)とは、当該決議がなされ
ることによって他の株主が得られない利益を得る株主をいい、
「著しく不当な決議」とは、
特別利害関係株主以外の株主に著しい不利益が生じることをいう。特別利害関係株主の
議決権行使と著しく不当な決議との間には因果関係が認められることが必要である。
これを本件についてみると、多数派株主が少数派株主を締め出す目的で、大幅な併合
比率を定めることは、特別利害関係を有する多数派株主の議決権行使によって、著しく
不当な決議がなされたものといえる。したがって、本件株主総会特別決議には831条
1項3号の取消事由がある。
そして、本件株式併合によって、少数派株主は取消訴訟の原告適格である「株主」
(8
31条1項)たる地位を奪われているが、決議取消判決の遡及効(839条反対解釈)
により株主たる地位を回復する者も、
「株主」として取消訴訟を提起することができると
解する(東京地判平成 22.7.7)。なぜなら、これを認めないと、違法な決議によって株主
たる地位を奪われた者がその地位を回復する手段が閉ざされてしまうからである。

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会社法 まとめノート

(ⅲ)株主総会の特別決議無効確認の訴え(830条2項)
株式併合を行うためには、株主総会の特別決議が必要である(180条2項)。これは
株式併合の効力要件と解されるから、当該決議に無効事由がある場合には、決議の無効
確認の訴え(830条2項)を提起することにより併合の効力を争うことができる。
この点、株主平等原則(109条1項)の趣旨は、株式が均等化された割合的単位の
形式を取ることから、株式投資の収益の予測可能性を高め株式投資を促進する点にある。
したがって、合理的な理由なく一部の株主を不利に扱うことは許されない。
そこで、多数派株主が合理的な理由なく、少数派株主を締め出すことを目的として行
う株式併合は、株主平等の原則(109条1項)に違反し、決議内容の法令違反として
無効事由となると解する(831条2項)。
3 株式の分割(183条以下)
(1)意義:既存の株式を細分化して従来よりも多数の株式とすること
(2)趣旨:株価対策・合併時の比率調整等のために一株あたりの株価を引き下げる手段
(3)手続:①株主総会(取締役会)の決議(183条2項)
∵持株比率に変動がなく、既存株主の利益を害することはない
②株主総会決議なく発行可能株式数を増加させる定款変更ができる(184条2項)
③端数処理(235条)
4 株式の無償割当て(185条以下)
(1)意義:株主の有する株式数に応じて、新たに払込みをさせないで株式を無償で割り当てること

Ⅶ 株式の種類
1 普通株・優先株・劣後株・混合株
(1)普通株:標準となる株式
(2)優先株:優先的取扱いを受ける種類の株式
(3)劣後株:劣後的取扱いを受ける種類の株式(後配株)
(4)混合株:ある点では優先株であるが、他の点では劣後的な株式
2 譲渡制限株式(107条1項1号、108条1項4号)
(1)意義:譲渡による株式の取得についてその株式会社の承認を要する株式
※全ての株式について譲渡制限がある会社を「非公開会社」といい、それ以外の会社を
「公開会社」という(2条5号)
(2)趣旨:会社にとって好ましくない者が株主として参加するのを防止(閉鎖的会社の安定性確保)
(2)発行手続:(ⅰ)会社成立時に譲渡制限を定める場合
→定款の定めが必要(107条2項1号、108条2項4号)

(ⅱ)会社成立後に株式の内容として譲渡制限を定める場合

→定款変更のための株主総会特殊決議(309条3項1号)

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会社法 まとめノート

反対株主には株式買取請求権あり(116条1項1号)

(ⅲ)会社成立後に株式の種類として譲渡制限を定める場合

→定款変更のための種類株主総会特殊決議(111条2項、324条3項)
反対株主には株式買取請求権あり(116条1項2号)
定款変更の一般的要件=株主総会特別決議(466条、309条2項11号)
3 議決権制限種類株式(108条1項3号)
(1)意義:議決事項の全部又は一部について議決権を行使することができない株式
(2)趣旨:①キャピタルゲインにのみ関心をもつ株主の投資ニーズ
②株主の経営への参加を制限したい会社経営者のニーズ
(3)制限:公開会社において、議決権制限種類株式の総数が、発行済株式総数2分の1を超えると
きは、会社は直ちに2分の1以下にするための必要な措置を採らなければならない(1
15条)。非公開会社においてはこのような制限はない。
4 取得請求権付株式(107条1項2号、108条1項5号)
(1)意義:株主が当該株式について会社に取得を請求することができる株式
(2)趣旨:出資を募りやすくし、会社の資金調達の便宜を図る
(3)行使手続:株主の請求により、会社が自己株式を取得する(166条1項、167条1項)
※分配可能額規制あり(166条1項但書、461条2項)
5 取得条項付株式(107条1項3号、108条1項6号)
(1)意義:会社が一定の事由が生じたことを条件に株主の同意なしに株式を取得できる株式
(2)趣旨:買収防衛の有力な手段
(3)取得手続:①取得日・取得株式は株主総会決議(取締役会決議)によって定めることができる
(168条1項、169条1項)。
②取得した株式は自己株式となり、株主は対価を取得する(170条2項)。
6 全部取得条項付株式(108条1項7号)
(1)意義:株主総会の特別決議により、会社が発行済株式の全部を取得する種類株式
(2)趣旨:①債務超過会社の円滑な事業再生(倒産処理手続によらない100%減資)
②敵対的買収に対する防衛策
(3)発行手続:(ⅰ)会社成立時に全部取得条項を定める場合
→定款の定めが必要(108条2項7号)

(ⅱ)会社成立後に株式の種類として全部取得条項を定める場合

→定款変更のための種類株主総会特殊決議(111条2項、324条3項)
反対株主には株式買取請求権あり(116条1項2号)
定款変更の一般的要件=株主総会特別決議(466条、309条2項11号)
(4)取得手続:①株主総会の特別決議(171条1項、309条2項3号)
②反対株主には株式買取請求権が認められる(172条1項1号)

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会社法 まとめノート

③取得日に、会社が全部取得条項付株式の全部を取得する(173条1項)
(5)全部取得条項付種類株式によるスクイーズ・アウトをめぐる問題点
◆全部取得条項付種類株式による完全子会社化のスキーム
① 公開買付け(TOB)によって被買収会社の支配権を取得できるだけの株式を取得する。
② 被買収会社の定款を変更し種類株式発行会社になる(466条・309条2項11号)。
③ 被買収会社の定款を変更して、その発行済株式を全部取得条項付種類株式にする(1
08条1項7号、111条2項・324条2項1号、466条・309条2項11号)。
④ 株式の全部取得を実行する(171条1項・309条2項3号)。この際、取得対価(1
71条1項1号イ)を普通株式とし、買収者以外の株主が受けるべき普通株式が全て
1株未満の端数となるように定める。
⑤ 1株未満となった株主に対し端数処理による売却代金を交付する(234条)。
※ 合計4つの株主総会特別決議が必要となるが、判例・実務は4つをまとめて一回の株
主総会ですることができるとしている。
◆振替株式の買取請求と個別株主通知の要否・時期
(ⅰ)取得対価決定申立権(172条)が「少数株主権等」
(振154条1項)にあたるか?
少数株主権等とは、株主の権利のうち、会124条1項に規定する権利を除いたもの
をいう(振147条4項)。この点、会社法172条1項所定の価格決定申立権は、その
申立期間内である限り、各株主ごとの個別的な権利行使が予定されているものであって、
基準日における株主の一斉の権利行使を予定する124条1項に規定する権利とは著し
く異なるものであるから、上記価格決定申立権は「少数株主権等」に該当する。
(ⅱ)個別株主通知は、権利行使要件か対抗要件か?
個別株主通知は、社債等振替法上、少数株主権等の行使の場面において株主名簿に代
わるものである。したがって、個別株主通知は、少数株主権等を行使する際に自己が株
主であることを会社に対抗するための要件であると解する(対抗要件説)。
(ⅲ)個別株主通知はいつまでに具備する必要があるか?
そうすると、会社が株式価格決定申立ての事件の審理において申立人が株主であるこ
とを争った場合、その審理終結までの間に個別株主通知が具備されることを要し、かつ、
これで足りると解すべきである(最決平成 22.12.7〔百選17〕)。
※権利行使時に備えていなくてもよい。
(ⅳ)近似の判例の整理
最決平成 22.12.7:冒頭のスキームのうち④の段階が問題となったケース(172条)
最決平成 24.3.28:冒頭のスキームのうち③の段階が問題となったケース(116条)
大阪地判平成 24.2.8:株主提案権行使が問題となったケースで権利行使要件説とった
◆全部取得条項付種類株式の取得によって閉め出される株主の救済手段
(ⅰ)株主総会特別決議取消しの訴え(831条1項3号)

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会社法 まとめノート

全部取得条項付種類株式の取得を行うためには、株主総会特別決議が必要である(1
71条1項、309条2項3号)。これは株式取得の効力要件と解されるから、当該決議
に取消事由がある場合には、決議の取消しにより株式取得の効力を争うことができる。
この点、「特別の利害関係を有する者」(831条1項3号)とは、当該決議がなされ
ることによって他の株主が得られない利益を得る株主をいい、
「著しく不当な決議」とは、
特別利害関係株主以外の株主に著しい不利益が生じることをいう。特別利害関係株主の
議決権行使と著しく不当な決議との間には因果関係が認められることが必要である。
これを本件についてみると、多数派株主が少数派株主を締め出す目的で、極端な取得
対価の配当割合を定めることは、特別利害関係を有する多数派株主の議決権行使によっ
て、著しく不当な決議がなされたものといえる。したがって、本件株主総会特別決議に
は831条1項3号の取消事由が認められる。
※ 東京地判平成 22.9.6 は、単に少数株主を排除する目的があるというだけでは不当性の
要件を満たさず、少なくとも、少数株主に交付される金員が株式の公正な価格に比し
て著しく低廉であることが必要であるとした。
※ この他、株主平等原則(109条1項)違反を理由とする株主総会の特別決議無効確
認の訴え(830条2項)も考えられるが、東京地判平成 22.9.6 は、配当割合自体は
一律であるとして、平等原則に違反しないとした。
(ⅱ)株主総会決議取消訴訟の原告適格
〜端数株主として「株主」たる地位を喪失することにより原告適格を失うのではないか?
株主総会決議の取消しによって株主たる地位を回復する者も、
「株主」として原告適格
を有すると解すべきである(東京地判平成 22.9.6、東京高判平成 22.7.7)。なぜなら、決
議取消訴訟の認容判決の遡及効によって(839条、834条17号反対解釈)、株主た
る地位が回復されることになるところ、これを認めないと違法な決議によって株主たる
地位を奪われた者がその地位を回復する手段が閉ざされてしまうからである。
(ⅲ)仮の救済
全部取得条項付種類株式への定款変更ないし、株式取得についての株主総会決議の取
消しの訴えを提起し(831条1項)、これを本案として、自己の株主たる地位について
仮の地位仮処分(民事保全法23条2項)の申立を行うべきである。
決議取消事由としては、前述の通り「特別の利害関係を有する者」による著しく不当
な決議がなされたことを主張すべきである(831条1項3号)。
7 拒否権条項付株式(108条1項8号)
(1)意義:株主総会又は取締役会において決議すべき事項の全部又は一部について、その決議のほ
かに、当該種類の株主の種類株主総会決議を必要とする旨の定めがある株式
(2)趣旨:種類株主に当該決議事項についての拒否権を与える

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会社法 まとめノート

8 取締役等の選解任についての種類株式(108条1項9号)〜クラス・ボーディング
(1)意義:種類株主総会における取締役又は検査役の選任に関する事項について内容の異なる株式
(2)趣旨:出資企業が出資割合や関与の程度に応じて自社の役員を送り込むことを可能にする
(3)発行手続:非公開会社のみ発行可(108条1項柱書但書)→委員会設置会社・公開会社は×
(4)取締役等の選任・解任:定款の定めに従い、種類株主総会において選任される(325条参照)

Ⅷ 株券・株券失効制度
1 株券
(1)意義:株式すなわち株式会社における社員たる地位を表象する有価証券
(2)発行手続
ア.原則:株券不発行の原則(214条)
イ.例外:定款の定めが必要(214条)→株券発行会社は株式発行後、株券を遅滞なく発行
しなければならないが(215条1項)、閉鎖会社においては株主からの請求がある
まで株券を発行しなくてもよい(215条4項)。
(3)株券の効力発行時期:株主に到達して交付されたとき(交付時説、最判昭和 40.11.16)
(4)善意取得(131条1項、2項)
(5)株券不所持制度(217条)
2 株券失効制度
(1)意義:一定の手続により喪失株券を失効させ、株主が新株券の発行を受けることができる制度
※有価証券喪失の一般的制度である公示催告・除権決定は株券に適用なし(233条)
(2)趣旨:善意取得等の株券喪失の不利益から株券喪失者の救済を図る
(3)手続:①株券喪失登録の申請(223条)
②所持人からの登録異議申請があれば株券喪失登録は抹消される(225条)
③登録日の翌日から1年経過により喪失株券は無効となる(228条1項)
④会社は株券喪失登録者に株券を再発行しなければならない(228条2項)

Ⅹ 単元株制度
1 意義:会社が定款により、一定数の株式を一単元とし、単元株主には完全な権利を認めるが、単
元に満たない数の株式しか有さない株主(単元未満株主)に対しては限定された権利のみ
を認める制度(188条1項)。
2 趣旨:株主管理コストの削減→上場会社で広く利用されている
3 手続:①定款の定めが必要(188条1項)
※定款変更には株主総会の特別決議が必要(466条、309条2項11号)
※単元数を減少・廃止する場合には取締役会決議のみで定款変更可(195条1項)
②定款変更により単元株制度を導入するには理由の開示が必要(190条)

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会社法 まとめノート

③1単元の株式の数は法務省令で定める数を超えることができない(188条2項)
※施行規則34条:発行済株式総数が20万株以上の場合は1000、発行済株式総数
が20万株以下の場合には200分の1
4 単元未満株主の権利
(1)権利の内容:単元未満株主は議決権及び少数株主権を有しない(189条1項)
(2)単元未満株主の株式買取請求権(192条、193条)∵株主の投下資本の回収
(3)単元未満株式の売渡請求制度(194条):定款の定めが必要(194条)

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会社法 まとめノート

機関

Ⅰ 総説
1 機関の意義:会社自体の意思決定・活動と認められる、組織上一定の地位にある者
2 所有と経営の分離
(1)意義:会社の実質的所有者たる株主によって構成される株主総会が、経営の専門家集団である
取締役会に会社の業務執行を委ねること(331条2項、362条2項など)
(2)趣旨:会社の合理役・能率的運営
3 機関設計自由の原則
(1)意義:会社法は、機関設計につき原則として自由とし(326条2項)、公開会社・非公開会社、
大会社・非大会社の区別に応じて一定のルールを定めている(327条、328条)
(2)機関設計のルール
◆グラフ理論による機関設計パターンのまとめ

〈ポイント〉
・株主総会から出発
・○…止まれない/□…止まれる(止まらなくてもよい)
・より右のルートを選ぶほど、より適正な会社経営の確保が可能となる
・より上に行くほど、会社の強い監督機関が並ぶ
・このグラフを①非大会社かつ非公開会社、②大会社かつ公開会社、③大会社かつ非公
開会社、④非大会社かつ公開会社の4パターンで検討することにより、全ての機関設
計のパターンを網羅することができる(会計参与は自由設置)

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会社法 まとめノート

①株主総会と取締役は必ず置かなければならない(295条1項、326条1項)
②公開会社は、取締役会を設置しなければならない(327条1項)
③取締役会設置会社には、監査役(監査役会)又は3委員会のいずれかを置かなければならな
い(327条2項本文、328条1項)。もっとも、非公開会社かつ非大会社においては、会
計参与を置けば、監査役(監査役)・3委員会は不要である(327条2項但書)
④委員会設置会社には、監査役(監査役会)を置くことができない(327条4項)
⑤取締役会を設置しない会社には、監査役(監査役会)及び3委員会を置くことはできない
(327条1項2号、3号)
⑥大会社には会計監査人が必要である(328条)
⑦会計監査人を置く場合には、監査役・3委員会のいずれかが必要(327条3項、5項)
⑧会計監査人を置かない場合には、3委員会を設置できない。
⑨会計参与は自由に設置することができる。
(3)機関設置義務に違反した場合の効果
◆株式会社における権限委譲(機関相互の関係)
(ⅰ)株主総会→取締役会への権限委譲
原則として権限委譲は許されない(295条3項)。もっとも、株主総会で取締役の報
酬総額または最高限度額だけを定めて、個々の具体的決定を取締役会へ委ねることは、
361条1項の趣旨(=お手盛りの弊害の防止)に反せず、許されると解する。
(ⅱ)取締役会→株主総会への権限委譲
強行法規または株式会社の本質に反しない限り、権限委譲は許される。代表取締役の
選任権(362条2項3号)や、業務執行の決定(362条2項1号)については問題
となるが、いずれも株式会社の本質に反するものではなく、許されると解する。
(ⅲ)取締役会・代表取締役の間での権限委譲
取締役会は、362条4項各号の事項以外の事項については、代表取締役に委任する
ことができると解する。他方、代表取締役が取締役会に業務執行行為をなす権限を委譲
することは、必要性がなく実際的でもないから、許されないと解する。
(ⅳ)代表取締役・株主総会の間での権限委譲
株主総会は会社の意思決定をする合議機関であり、業務執行行為をすることはできな
い。また、代表取締役も、362条4項の趣旨から、会社の基本的事項を決定すること
はできない。したがって、互いに権限委譲は認められない。

Ⅱ 株主総会
1 意義:会社の構成員である株主によって構成され、会社としての意思を決定するための機関
2 権限
(1)権限の範囲

32

会社法 まとめノート


ア.取締役会非設置会社:会社に関する一切の事項の意思決定ができる(295条1項)
イ.取締役会設置会社 :法律・定款に定められた基本的事項の意思決定のみ(295条2項)
①機関の選任・解任に関する事項
②定款変更・組織再編といった会社の基礎的変更に関する事項
③剰余金の配当など株主の重要な利益に関する事項
④取締役の報酬決定など他機関の決定に委ねるのが適切でない事項
(2)株主総会への権限委譲の限界
◆株主総会・取締役会の間の権限委譲の限界
(ⅰ)株主総会→取締役会への権限委譲
原則として権限委譲は許されない(295条3項)。もっとも、株主総会で取締役の報
酬総額または最高限度額だけを定めて、個々の具体的決定を取締役会へ委ねることは、
361条1項の趣旨(=お手盛りの弊害の防止)に反せず、許されると解する。
(ⅱ)取締役会→株主総会への権限委譲
強行法規または株式会社の本質に反しない限り、権限委譲は許される。代表取締役の
選任権(362条2項3号)や、業務執行の決定(362条2項1号)については問題
となるが、いずれも株式会社の本質に反するものではなく、許されると解する。
◆代表取締役選任権の株主総会への委譲の可否
そもそも、代表取締役の選任・解任が取締役会の権限とされている(362条2項3
号)のは、代表取締役に対する取締役会の監督権限(362条2項2号)を実効化する
ためである。とすれば、選任権・解任権が株主総会へ委譲されたとしても、取締役会は
代表取締役の解任を議題として株主総会を招集することができる(296条3項)から、
取締役会は代表取締役に対する監督権を失うわけではなく、上記の趣旨に反しない。
したがって、定款規定により代表取締役の選任権を株主総会の権限とすることも許さ
れると解する。
3 招集手続
(1)招集の時期:①定時株主総会(296条1項):毎事業年度の終了後一定の時期
②臨時株主総会(296条2項):必要があるときはいつでもよい
(2)招集権者:
ア.原則:取締役会が招集する(298条1項、4項)
イ.例外:公開会社においては、総株主の議決権の100分の3以上の議決権を6ヶ月前から
引き続き有する株主は、株主総会の招集を請求することができ(297条1項)、一
定の場合には自ら株主総会を招集することができる(297条4項)
(3)招集通知:公開会社では、招集権者が会日2週間前までに各株主に招集通知(299条1項)
※非公開会社の場合には、会日の1週間前までに招集通知
※株主全員の同意があるときは招集手続が不要となる(300条)

33

会社法 まとめノート

(4)株主の提案権
ア.議題提案権:取締役会設置会社において、6ヶ月前から引き続いて総株主の議決権の10
0分の1以上または300個以上の議決権を保有する株主は、会社が招集す
..
る総会において一定の事項を議題とすることを提案できる(303条)。株主
総会の8週間前までに請求しなければならない、
..
イ.議案提出権:株主は、株主総会において議案(動議)を提出することができる(304条)
ウ.議案通知請求権:取締役会設置会社において、6ヶ月前から引き続いて総株主の議決権の
100分の1以上または300個以上の議決権を保有する株主は、株主総会
の8週間前までに、提出する議案の要領を招集通知に記載することを請求す
ることができる(305条)
4 議事手続の運営・決議方法
(1)議長の選任・権限(315条1項、2項)
◆株主総会において従業員株主を株主席の前方に着席させる議長の措置の適法性
判例は、株主総会に出席する株主に対しては合理的理由のない限り同一の取扱いをす
べきところ、従業員株主を株主席の前方に着席させる措置に合理的な理由はなく不適切
であるとしたが、具体的に株主の権利行使が妨げられていないので、法的利益の侵害が
ないとした(最判平成 8.11.2)。
※本件は頭数平等の問題であって、厳密には株主平等原則の問題ではない
(2)取締役・監査役の説明義務(株主の質問権)(314条)
ア.原則:取締役、会計参与、執行役、監査役には説明義務あり(314条1項)
◆説明義務の発生時期
取締役等の説明義務は、「株主総会において」「説明を求められた場合」に生じ(31
4条1項)、あらかじめ会社に質問状等を提出していても、総会で質問しない限り取締役
に説明義務は発生しない。したがって、質問を待つことなく取締役が自ら説明すること
は、説明義務とは無関係であって、総会運営方法の当否の問題として会社の判断に委ね
られる(東京高判昭和 61.2.19)。
イ.例外:①株主総会の目的である事項に関しないものである場合
②その説明をすることにより、株主の共同の利益を著しく害する場合
③その他正当な理由のある場合(規則71条)
ウ.効果:違反すれば決議方法の法令違反として取消事由となる(831条1項1号)
◆説明義務の履行の判断基準(説明の範囲・説明の程度)
(ⅰ)説明義務の範囲
説明義務の範囲は、株主が株主総会の目的たる事項につき、合理的な理解及び判断を
するために客観的に必要と認められる事項に限られる。
(ⅱ)説明義務の程度

34

会社法 まとめノート

説明義務の程度は、決議事項の内容、質問事項との関連の程度、その説明内容に加え
て、質問株主が有する資料等も総合的に考慮し、平均的な株主が議決権行使の前提とし
ての合理的な理解及び判断をなしうる状態に達しているか否かを基準に判断される(東
京地判平成 16.5.13)。
◆一括回答方式の適法性
〜株主からの事前の質問状に対して、株式会社が重複する質問をまとめるなどして一括
回答することは説明義務違反とならないか?
取締役等の説明義務は、
「株主総会において」
「説明を求められた場合」に生じる。
(3
14条1項)から、あらかじめ会社に質問状等を提出していても、総会で質問しない限
りは取締役に説明義務は発生しない。したがって、一括回答は説明義務の履行として行
われるものではなく、314条の違法の問題は生じない。
質問を待つことなく取締役が自ら説明することは、総会運営方法の当否の問題として
会社の判断に委ねられるから、自発的説明を一括回答によってなすことは直ちに違法と
はいえない(東京高判昭和 61.2.19)。
(3)決議事項:取締役会設置会社においては招集通知に記載された事項に限られる(309条5項)
(4)決議方法
ア.普通決議:定足数:議決権の過半数
議決数:出席した株主の議決権の過半数(309条1項)
※実際には、定款によって定足数を緩和・廃止している。もっとも、取締役・
監査役等の選任・解任については、定足数を3分の1未満とすることはでき
ず、決議要件も過半数を下回ることができない(341条)
◆株主総会決議の採決の方法
会社法上に明文規定はなく、議長の裁量に委ねられる(315条1項)。すなわち、定
款で別段の定めがない限り、その議案に対する賛成の議決権数が決議に必要な数に達し
たことが明白になったときに成立するものと解され、必ずしも挙手・起立・投票などの
手続をとることを要しない。
もっとも、必要議決権数に達したかが微妙な場面では、厳密な集計をすべき義務が生
ずると解する余地があり、これに違反した場合には決議方法の法令違反として決議の取
消事由(831条1項1号)となりうる。
イ.特別決議:定足数:議決権の過半数
議決数:出席した株主の議決権の3分の2以上(309条2項)
※定足数については定款で3分の1まで引き下げ可(309条2項)
ウ,特殊決議:309条3項、309条4項(それぞれ議決要件が異なる)
エ.決議の省略(319条1項)
(5)書面等による総会決議(298条2項、298条1項3号)

35

会社法 まとめノート

(6)議事録の作成・備置(318条)
(7)総会検査役(306条1項)
5 議決権
(1)意義:株主総会に出席して、その決議に加わる制度。所有と経営が分離された株式会社におい
て、株主の議決権は、株主が会社経営に参与するための唯一の手段として、十分に保障
されなければならない。
(2)一株一議決権の原則
ア.原則:各株主が原則として1株につき1個の議決権を有すること
イ.例外:①議決権制限株式(108条1項3号)
②自己株式(308条2項)
③相互保有株式(308条1項括弧書き)
④単元未満株式(308条1項括弧書き)
⑤基準日後に発行された株式(124条1項)
⑥自己株式取得・売渡請求における売主の株式(160条4項、175条2項)
(3)議決権の行使方法
ア.不統一行使(313条1項)
趣旨:株式の信託、株券の保管振替決済がなされているなど、名義上の株主と実質上の株
主が異なっている場合には、実質上の株主の議決権行使を保障する必要がある。
イ.議決権の代理行使(310条1項)
趣旨:総会に出席できない株主に議決権行使の機会を保障するため
◆議決権行使の代理人資格を株主に限る旨の定款の効力
代理人資格を株主に限る旨の定款規定も、株主以外の第三者によって総会が撹乱され
るのを防止するという点で合理的かつ相当程度の制限といえるから、このような定款も
一般的には有効と解してよい。もっとも、代理人に議決権行使を認めても株主総会が撹
乱され会社の利益が害されるおそれがない合理的理由が認められる場合には、定款規定
の適用が排除されるものと解する(制限有効説、最判昭和 43.11.11)。
判例では、法人株主の職員・従業員による代理行使(最判昭和 51.12.24)、弁護士によ
る代理行使(神戸地裁尼崎支部判決平成 12.3.28)が認められている。
ウ.書面による議決権行使(298条2項、298条1項3号)
エ.電磁的方法による議決権行使(298条1項4号)
6 株主総会決議の瑕疵‐訴えの制度
(1)趣旨:株主総会の決議には、多数の利害関係人が関与しており、決議を前提として多数の法律
関係が形成されるから、瑕疵のある決議を一般則通り無効とすると、利害関係人に不測
の損害を被らせ、法的安定性を害する。そこで、会社を巡る法律関係の画一的処理と法
的安定性を図るため、各種の訴えの制度が設けられた。

36

会社法 まとめノート

(2)決議取消の訴え(831条)
ア.取消原因:①招集手続が法令定款違反、又は著しく不公正
決議方法が法令定款違反、又は著しく不公正(831条1項1号)
②決議内容の定款違反(831条1項2号)
③特別利害関係株主の議決権行使による著しく不当な決議(831条1項3号)
◆招集通知に記載のない事項についての決議
株主総会の招集通知には、決議事項が記載され(299条4項、298条1項2号)、
総会における決議事項は、招集通知に記載された事項に限られる(309条5項)。した
がって、招集通知に記載の事項についての決議には、決議方法の法令違反の取消事由が
ある(831条1項1号)。
もっとも、300条によって招集手続が不要となる場合、全員出席総会の場合(最判
昭和 60.12.20)には、招集通知に記載の事項についての決議も適法である。
◆招集手続の瑕疵 〜一人会社の場合
一人会社においては、その一人の株主が出席すれば株主総会は成立し、招集の手続を
要しない(最判昭和 46.6.24)。なぜなら、招集手続の趣旨は、株主に株主総会への出席
と準備の機会を確保する点にあるからである。
◆招集手続の瑕疵 〜全株主が総会の開催に同意し出席した場合
そもそも、招集手続の趣旨は、株主に株主総会への出席の機会を与えるとともに、そ
の議事及び議決に参加するための準備の機会を与えることにある、とすれば、全株主が
総会の開催に同意し、かつ出席した場合には、かかる趣旨は達成されているといえるか
ら、招集手続に瑕疵があったとしても、取消事由にはならないと解すべきである(最判
昭和 60.12.20)。
◆特別利害関係人による著しく不当な決議の意味(831条1項3号)
「特別の利害関係を有する者」とは、当該決議がなされることによって他の株主が得
られない利益を得る株主をいう。また、
「著しく不当な決議」とは、特別利害関係株主以
外の株主に著しい不利益が生じることをいう。
特別利害関係株主の議決権行使と著しく不当な決議との間には、因果関係(「によって」)
が認められることが必要である。
イ.原告適格:「株主等」=株主、取締役、清算人、監査役(828条2項1号)
◆招集通知もれと提訴権者
(ⅰ)招集通知を受けた株主が他の株主への招集通知もれを理由に、訴えを提起できるか?
招集通知を受けた株主であっても、他の株主に対する招集通知の瑕疵を理由に決議取
消しの訴えを提起することができると解する(最判昭和 42.9.28)。
なぜなら、決議取消の訴えは、株主の個人的利益の救済を図るためのものというより
は、手続の瑕疵のために公正な決議が妨げられたかもしれないという意味での抗議を認

37

会社法 まとめノート

める制度だからである。
(ⅱ)招集通知を受けなかった株主が異議なく出席した場合、訴えを提起できるか?
招集通知を受けなかった株主が異議なく出席した場合であっても、他の株主に対する
招集通知の瑕疵を理由に決議取消しの訴えを提起することができると解する。
なぜなら、決議取消の訴えは、株主の個人的利益の救済を図るためのものというより
は、手続の瑕疵のために公正な決議が妨げられたかもしれないという意味での抗議を認
める制度だからである。もっとも、当該株主一人だけについて招集通知が欠缺していた
場合には、結局株主全員について、出席の機会が与えられていたといえるので、もはや
取消の訴えを提起することはできないと思われる。
◆総会決議により株主たる地位を奪われた株主は「株主」にあたるか?
決議取消判決の遡及効(839条反対解釈)により株主たる地位を回復する者も、
「株
主」として取消訴訟を提起することができると解する(東京地判平成 22.7.7)。
なぜなら、これを認めないと、違法な決議によって株主たる地位を奪われた者がその
地位を回復する手段が閉ざされてしまうからである。
ウ.提訴期間:決議の日から3ヶ月以内(831条1項)
◆決議取消事由の追加主張の可否
〜決議取消訴訟を提起してから、831条1項の期間を経過した後に新たな取消事由を
追加主張することはできるか?
831条1項が提訴期間を定める趣旨は、決議の効力を早期に確定させ、感謝の法律
関係の安定化を図る趣旨である。そうすると、この期間経過後に新たな取消事由の追加
主張を認めることは、上記の趣旨を没却する。したがって、831条1項は、訴え提起
のみならず取消事由の主張も3ヶ月以内に限定したものと解すべきであるから、期間経
過後の追加主張は許されない(最判昭和 51.12.24)。
◆総会決議無効の訴えの無効事由として主張されていた瑕疵が取消事由にもあたる場合
〜株主総会決議無効確認訴訟において取消事由が無効事由として主張され、3ヶ月経過
後に決議取消訴訟に転換された場合、期間制限の適用を受けるか?
株主総会決議無効確認の訴えの無効事由として主張されていた瑕疵が取消事由に該当
し、かつ、その訴えが株主総会決議取消しの訴えの提訴期間経過前に提起されている場
合には、株主総会決議取消しの訴えは、提訴期間との関係では株主総会決議無効確認の
訴えの提起時に提起されていたものと同様に扱うべきである(最判昭和 54.11.16)。
エ.裁量棄却:株主総会の招集手続または決議方法が法令・定款に違反するときであっても、
裁判所は、①その違反する事実が重大でなく、かつ、②決議に影響を及ぼさな
いと認めるときは、決議取消しの請求を棄却することができる(831条2項)
※1号の「著しく不公正」及び2号・3号の事由については裁量棄却できない

38

会社法 まとめノート

◆招集通知もれと裁量棄却
招集通知の欠缺は、株主の最も基本的な権利である議決権の行使の機会を奪うもので
あるから、程度のいかんを問わず、それ自体重大な瑕疵というべきである。したがって、
裁量棄却は認められない。
(3)決議無効確認の訴え(830条) ※訴訟外の方法による無効主張も可
ア.無効事由:決議内容の法令違反(830条2項)
①株主平等原則違反(109条1項)
②欠格事由ある者の取締役選任(331条1項) など
(4)決議不存在確認の訴え(830条) ※訴訟外の方法による不存在主張も可
◆決議不存在事由
物理的に決議が存在しない場合のほか、著しい手続的瑕疵のゆえに決議が存在したと
法的に評価することができず決議取消しの訴えに存する提訴期間の制限などを課すのが
妥当でないという「評価としての不存在」も含まれる(最判昭和 33.10.3 など)。
ex 株主総会の招集を無権限者が行った場合(最判平成 2.4.17)

招集通知を受け取っていない株主の数が多い場合(最判昭和 33.10.3)

招集通知方法が杜撰である場合(最判昭和 33.10.3) など

◆取締役選任決議の不存在とその後の役員選任の効力
取締役選任決議が不存在である場合、そこで選任された者を構成員とする取締役会に
おける代表取締役選任決議も不存在であり、そのような代表取締役によって召集された
株主総会における取締役選任決議も不存在である(最判平成 2.4.17)。
◆決議不存在確認の訴えの利益
取締役等を選任する先行株主総会決議の不存在確認訴訟に、同決議が存在しないこと
を理由とする後任取締役等の選任に関する後行株主総会決議の不存在確認訴訟が併合さ
れている場合には、後行決議の存否の判断が先行決議の存否にかかっているため、双方
に決議に訴えの利益が認められる(最判平成 11.3.25)。
◆不存在の総会決議を追認する旨の株主総会決議の効力
〜追認決議により、不存在の総会決議を遡及的に有効と解することはできないか?
当該総会決議は法的には当初から不存在であるから、追認決議の効力を遡及させるこ
とは、これにより第三者の利益を害さない等の特段の事情のない限り、許されないと解
すべきである(東京地判平成 23.1.26)。

Ⅲ 取締役および取締役会
1 取締役
(1)取締役の意義:株主総会によって選任され、取締役会を通じて会社の業務執行を行うとともに、
業務執行を監督する者(取締役会設置会社の場合)

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会社法 まとめノート

(4)取締役の選任:株主総会による選任(329条1項) ※例外:108条1項9号
定足数は、議決権の3分の1以下にすることはできない(341条)
(5)取締役の退任
ア.事由:①委任の法定終了事由(330条、民法651条1項、653条)
②任期の満了(332条1項)
③取締役の欠格事由の発生(331条1項)
④解任(339条)
⑤会社の解散
イ.解任:①株主総会は、いつでも取締役を解任できる(339条1)。もっとも、「正当な理
由」のない解任の場合には、取締役は会社に損害賠償請求できる(339条2項)
②解任決議が成立しなかった場合でも、取締役が不正の行為をしたとき、又は法令
定款に違反する重大な事実があったときには、30日以内に取締役解任の訴えを提
起できる(854条1項)。
◆「否決されたとき」の意義
〜株主総会自体流会とされ、決議が成立しなかった場合も含まれるか?
そもそも、役員解任の訴えの趣旨は、多数派の横暴などにより、非行のある取締役を
解任しえないという不都合が生じないようにする点にある。とすれば、
「否決されたとき」
とは、必ずしも株主総会で否決された場合のみならず、多数派の横暴・恣意などにより
決議自体が成立しなかった場合を含むと解すべきである(高松高判平成 18.11.27)。
◆再任取締役の再任前に生じた解任事由
〜再任決議により取締役の適格が認められているから、再任前に生じた事由は解任事由
にならないのではないか?
再任取締役の再任前の事由については、既に解任事由となるべき事由が株主らに周知
された上で再任されていたような場合には、株主によって取締役の適格性が新たに承認
されたものとして解任事由にはならないと解する(宮崎地判平成 22.9.3)。
もっとも、その再任が少数株主による解任の訴えを免れる目的をもってなされたよう
な特段の事情がある場合には、解任事由になりうると考える。
◆取締役でなかった時期(取締役選任前)の解任事由
〜解任事由にあたる行為の後に選任された取締役との関係でも解任事由となるか?
854条1項は「取締役の職務の執行に関し」と規定しており、また、取締役が自己
の就任以前の他の取締役の不正行為等を理由として、現在の取締役の地位を奪われると
いうのはいかにも不合理であるから、当該取締役が取締役でなかった時期の事情をもっ
て解任事由とすることはできないと解する
もっとも、取締役就任前の事情であっても、その者が事実上の取締役として活動して
不正行為等をしたというような事情があり、かつ、それが現在まで判明していなかった

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会社法 まとめノート

場合には解任事由とする余地がある(宮崎地判平成 22.9.3)。
◆解任の訴えにおける解任事由の時的限界
〜解任を目的とする総会の招集手続から決議までに生じた不正・違法行為は解任事由と
なるか?すなわち、854条1項柱書の「あったにもかかわらず」とは、解任議案否決
後に生じた解任事由を含むものでないことは明らかであるが、解任を目的とする株主総
会の招集手続から決議までに生じた事由は含まれるのかが問題となる。
解任議案が否決されるまでに生じた事由であれば、解任事由に含まれると解する。な
ぜなら、もし取締役による議決権行使の妨害行為等の一連の行為が解任事由に当たらな
いとするならば、株主は改めて株主総会の開催を求め、取締役会解任の議案を審議した
のでなければ解任の訴えを提起できないことになり、迂遠であるからである(高松高判
平成 18.11.27)。
2 取締役会
(1)意義:取締役全員によって構成され、会社の業務執行に関する意思決定を行うとともに、取締
役の職務執行を監督する機関(362条1項、2項)
(2)趣旨:①会社の合理役・能率的運営、②代表取締役の業務執行の監督
(3)取締役会の権限:①会社の業務執行の意思決定(362条2項1号)
②取締役の職務執行の監督(362条2項2号)
③代表取締役の選定・解職(362条2項3号)
(4)取締役会の招集:原則として各取締役が招集(366条1項本文)
原則として1週間前に各取締役・各監査役に対して招集通知(368条1項)
※招集通知に議題の記載は不要(←株主総会と異なる)
(5)決議事項(362条4項各号)
◆「重要な財産の処分・譲受け」(362条4項1号)の意義
「重要な財産の処分」に該当するか否かは、①当該財産の価額、②会社の総資産に占
める割合、③保有目的、④処分の態様、⑤会社における従来の取り扱い等の事情を総合
的に考慮して判断される(最判平成 6.1.20)。
◆「多額の借財」(362条4項2号)の意義
「多額の借財」に該当するか否かは、①当該借財の価額、②会社の総資産に占める割
合、③借財の目的、④会社における従来の取り扱い等の事情を総合的に考慮して判断さ
れる(判例なし)。
◆取締役会決議を経ない重要な取引の無効主張権者
そもそも、362条4項が取締役会の決議事項を定めた趣旨は、重要な業務執行につ
いての意思決定を慎重にし、もって会社の利益を保護する点にある。
とすれば、取締役会決議の欠缺による当該取引の無効は、原則として会社のみが主張
することができ、会社以外の者は、当該会社の取締役会が上記無効を主張する旨の決議

41

会社法 まとめノート

をしているなどの特段の事情のない限り、これを主張することはできないというべきで
ある(最判平成 21.4.17)。
(5)決議の方法:取締役の過半数が出席し、出席取締役の過半数の議決による(369条1項)
特別利害関係を有する取締役は決議に参加することはできない(369条2項)
◆代表取締役解職の取締役会決議と特別利害関係取締役
代表取締役解任決議における当該代表取締役は369条2項にいう「特別の利害関係
を有する取締役」にあたり、議決権を行使することはできないと解する。なぜなら、当
該代表取締役が一切の私欲を捨てて取締役の忠実義務(355条)に従った公正な議決
権行使をすることは、一般的類型的に見て期待できないからである(最判昭和 44.3.28)。
(6)議事録(369条3項)
(7)特別取締役制度(373条)
(8)取締役会決議の瑕疵
ア.瑕疵ある決議の効力:一般原則により無効(訴えの制度なし)
イ.決議内容の瑕疵
◆招集通知に記載されていない事項につき決議がなされた場合
そもそも、株主総会とは異なり、取締役会の招集通知に目的事項を記載することは不
要であり、取締役会は会社の業務執行に即応するため、記載されていない事項について
も決議することができる。したがって、取締役会決議の無効原因にはならない。
ウ.招集手続の瑕疵
◆一部の取締役に対する招集通知漏れ
そもそも、招集通知(368条1項)の目的は、取締役及び監査役に取締役会への出
席・準備の機会を保障し、公正かつ適正な取締役会の運営を確保する点にある。したが
って、一部の取締役に対する招集通知漏れがあった場合には、決議の成立過程に重大な
瑕疵があったものとして、特段の事情のない限り、決議は一般原則により無効になると
解すべきである。
もっとも、招集通知を受けなかった取締役が出席したとしてもなお決議の結果に影響
がないと認めるべき特段の事情がある場合には、この瑕疵は決議の効力に影響しないと
いうべきである(最判昭和 44.12.2)。
3 代表取締役
(1)意義:取締役会設置会社の業務執行を行い、かつ対外的に会社を代表する常置機関
(2)代表取締役の選任:取締役の中から、取締役会が選任する(362条3項)
※取締役会非設置会社:取締役の互選又は株主総会の決議(349条3項)
(3)代表取締役の退任:①取締役の資格を失った場合
②代表取締役はいつでも辞任できる(330条、民法651条)
③取締役会による解任決議(362条2項3号)

42

会社法 まとめノート

(4)代表取締役の権限
ア.業務執行権:代表取締役は、会社の業務執行を行う(363条1項1号)
◆会社の業務執行権の範囲
取締役会設置会社においては、業務執行の意思決定は取締役会が行い、業務執行の実
行は代表取締役が行うのが基本である。もっとも、取締役会で決定しなければならない
のは、重要な業務執行に関する事項だけであり(362条4項)、日常の業務執行につい
ては代表取締役の選任と共に代表取締役に委任したものと推定され、代表取締役自らが
決定・実行する権限を有するものと解する。
イ.代表権:代表取締役は、対外的に会社を代表する権限を有する(349条1項但書)
代表取締役の代表権の範囲は包括的である(349条4項)
ウ.瑕疵ある代表取締役の代表行為
◆取締役会決議を欠く代表取締役の行為の効力
取締役会決議を欠く代表取締役の行為も、原則として有効であると解する。なぜなら、
代表取締役は会社の業務執行に関する包括的代表権を有しているところ(349条4項)、
会社の内部的意思決定の問題にすぎない取締役会決議の欠缺により行為を無効とするこ
とは、取引の安全を害するからである。
もっとも、取締役会決議を欠缺につき相手方が悪意又は有過失である場合には、取引
の安全を保護する必要はないから、民法93条但書の類推適用により、会社は取引行為
の無効を主張することができると解すべきである(最判昭和 40.9.22)。
◆代表取締役の代表権の濫用
〜代表取締役が客観的にはその権限の範囲内に属する行為をなしたが、主観的には自己
または会社以外の第三者の利益のために代表行為をなした場合(代表権の濫用)、当該
行為は有効か?
当該行為が代表取締役の権限の範囲に属するものである以上、原則として取引行為の
効果は会社に帰属する(349条4項)。
もっとも、代表取締役がその権限を濫用する場合には、自己のためにする意思と会社
のためにする外観との不一致があるという点で、心裡留保(民法93条)と類似した構
造が認められる。したがって、相手方が代表取締役の主観的意図について悪意又は有過
失である場合には、民法93条但書の類推適用により、会社は取引行為の無効を主張す
ることができると解すべきである(最判昭和 38.9.5、最判昭和 43.10.31)。
(5)表見代表取締役(354条)
ア.意義:代表権のない取締役に、社長、副社長、専務取締役、常務取締役など会社を代表す
る権限を有すると認められる名称を付した場合、会社はその取締役がなした行為に
ついて、善意の第三者に対して責任を負う(354条)
イ.趣旨:名称を信頼した相手方を保護し、もって取引の安全を図る(外観法理)

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会社法 まとめノート

ウ.要件:①外観の表示:「会社を代表する権限を有するものと認められる名称」
→社長、副社長、頭取、総裁、副頭取、取締役会長、代表取締役代行者など、外
形的・客観的に見て正当な代表権限があるように見える名称
②会社の帰責性:名称の付与、名称使用の許諾
※許諾は明示的でなくても、会社が名称使用を知りながらそれを黙認していれば
足りる(最判昭和 42.4.28)
③外観への信頼:善意かつ無重過失(最判昭和 52.10.14)
◆使用人について354条の類推適用が認められるか?
354条は「取締役」と規定するが、代表権を有するがごとき外観への信頼保護とい
う趣旨は取締役でない者が名称を使用する場合にも妥当する。したがって、会社の使用
人が代表取締役の承認のもとに常務取締役の名称を使用してなした行為にも、354条
の類推適用を認めてよい(最判昭和 35.10.14)。
4 取締役と会社の利益衝突の防止(取締役の義務)
(1)取締役の一般的義務
ア.善管注意義務(330条、民法644条)と忠実義務(355条)
◆両者の関係
取締役の忠実義務は、善管注意義務を具体化したものであって、両者は同質・同内容
のものであると解する(同質説、最大判昭和 45.6.24)。
◆善管注意義務違反の効果
善管注意義務違反があれば、任務懈怠責任が発生する(423条1項、429条1項)。
→具体的事案の下で、取締役等がどのような注意義務を負っているかを明らかにする
ex 債務超過状態における取締役の注意義務
債務超過状態となれば、有限責任の結果失うものがない株主は危険な投機的行動
に走りやすい。したがって、取締役は、企業価値を維持して会社債権者を保護する
義務、具体的には、会社債権者の損害拡大を阻止するため再建可能性・倒産処理等
を検討し、それらと無関係な債務を負担しないようにする義務を善管注意義務の一
内容として負っていると解する。
イ,監視義務(362条2項2号)
◆取締役の監視義務と任務懈怠責任‐名目上の取締役の責任(取締役である)
取締役会は、取締役の職務執行を監督する地位にある(362条2項2号)から、そ
の実効性確保のため、取締役会を構成する個々の取締役は、取締役会上程事項について
監視するにとどまらず、非上程事項についても、代表取締役の業務執行が善管注意義務
等に違反しないよう監視する義務を、善管注意義務の一内容として負っている(330
条、民法644条)。
そして、名目上の取締役であっても取締役として適法に選任されている以上、かかる

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会社法 まとめノート

監視義務を免れることはできない。もっとも、監視義務につき任務懈怠が認められたと
しても、ワンマン社長であるなど、監視したからといって損害発生を阻止することがで
きたか不明な場合には因果関係が否定されうる。
ウ.内部統制システムの構築義務(348条4項、362条5項)
◆内部統制システムの構築義務と任務懈怠責任
個々の取締役は、善管注意義務の一内容として、取締役の職務執行の監視義務を負う
(362条2項2号、330条、民法644条)。そして、大会社かつ取締役会設置会社
は、会社の業務の適正を確保するための内部統制システムについての事項の決定を取締
役会で行わなければならない(362条5項、4項6号)。すなわち、大会社かつ取締役
設置会社の取締役は、善管注意義務の一内容である監視義務の具体的内容として、適切
な内部統制システムを構築・運用し、取締役の職務執行を監視する義務を負っている。
もっとも、内部統制システムをどのように構築するかの判断は、個々の会社の事業の
規模、特性等に応じて費用対効果を考慮し、限られた会社の経営資源をどのように分配
すべきかを考える経営判断といえ、経営の専門家である取締役の広い裁量に委ねられて
いる事項である(経営判断の原則)。
したがって、措置時における同種の経営者として、通常想定される不正行為を防止で
きないような各別不合理な措置でなければ、内部統制システムの構築義務は履行された
といってよい(最判平成 21.7.9)。
(2)競業避止義務(356条1項1号)
ア.趣旨:取締役は、会社の業務執行に関する強大な権限を有し、営業の秘密にも通じている
ため、その地位を利用して会社の取引先を奪うなど、会社の利益を犠牲にして自己
又は第三者の利益を図る危険があるので、その危険を防止する
イ.内容:①重要な事項の開示+取締役会の承認(356条1項柱書、365条1項)
②重要な事項の事後報告(365条2項)
ウ.要件:①「会社の事業の部類に属する取引」であること
②「自己又は第三者のために」取引を行ったこと
◆356条1項1号「会社の事業の部類に属する取引」の意味
「事業の部類に属する取引」とは、会社が実際に行っている事業と目的及び市場が競
合し、ノウハウ・顧客関係が流用されるなど、会社と取締役との間に利益の衝突を来す
可能性のある取引をいう。
そして、会社が実際に行う事業といっても、現在に行っている事業に限定する必要は
なく。会社が開業の準備に着手している事業もこれに含まれる(東京地判昭和 56.3.26)。
◆会社の取締役が完全子会社の代表取締等に就任することが競業取引にあたるか?
完全子会社(100%子会社)は、親会社の一部門ともいえる存在であって、取引先
等を奪うことにはならず、実質的には競業関係にないといえるから、競業取引にあたら

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会社法 まとめノート

ない(大阪地判昭和 58.5.11)。
◆退職予定の取締役による従業員の引き抜き
「取引」そのものではないが、取締役が退任に至った事情、退職した従業員と取締役
の従来の関係、退職した従業員の人数など退職が会社に与える影響の度合い等の諸般の
事情を考慮した上で、不当な態度で行われた退職勧奨のみが忠実義務違反になると解す
る(東京地判平成 3.8.30)。
◆356条1項1号「自己又は第三者のために」の意味
356条1項1号の「ために」という文言は、承認を欠いた場合に、誰が得た利益を
損害額と推定すべきかを確定する機能を有している(423条2項)。とすれば、「ため
に」とは、取引によって得た利益の帰属主体が誰かという「計算において」の意味であ
ると解すべきである。
エ.効果:①承認を経ないでなされた競業取引も有効である
②承認を得た場合であっても、競業取引により会社が損害を被り、それについて取
締役に任務懈怠があれば損害賠償責任を負う(423条1項)
③承認を得ていない場合、競業取引によって取締役等が得た利益の額は損害額と推
定される(423条2項)
④競業避止義務違反を理由に取締役を解任できる(339条1項)
(3)利益相反取引の制限
ア.趣旨:取締役に会社との間の取引を自由にさせておくと、会社の犠牲において自己又は第
三者の利益を図るおそれがあるので、これを事前に防止する
イ.内容:①重要な事項の開示+取締役会の承認(356条1項柱書、365条1項)
②重要な事項の事後報告(365条2項)
ウ.類型:①直接の自己取引(2号):取締役が自己の利益のために会社と取引
②直接の他己取引(2号):取締役が第三者の利益のために会社と取引
③間接取引(3号):第三者と会社の取引であるが、取締役と会社の利益が相反
◆直接の他己取引(2号)の意味

取引

甲社

乙社

| |

平取締役A 代表取締役A

(ⅰ)甲社との関係
甲社との関係では、Aが乙社の名義で(「第三者のために」)行った、甲・A間の取引
といえるので、利益相反取引にあたる。

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会社法 まとめノート

(ⅱ)乙社との関係
乙社との関係では、Aが甲社の代表取締役でない限り、甲・乙間の取引にすぎないの
で、利益相反取引にはあたらない。
ウ.要件:(ⅰ)直接取引:①「自己又は第三者のため」にした取引であること

②取締役が会社と取引したこと

(ⅱ)間接取引:①会社と取締役以外の第三者との取引であること

②会社と取締役の利益が相反するものであること

◆356条1項2号「自己又は第三者のために」の意味
356条1項2号の「ために」という文言は、帰責事由不存在の抗弁による免責を認
めうるかを決する基準となる(428条)。したがって、明確性を確保する必要があるか
ら、「ために」とは「名義において」の意味であると解すべきである。
◆利益相反の判断基準
取引の安全を図る見地から、第1次的には一般的抽象的(外形的・客観的)に判断す
べきである。もっとも、形式的に見て利益相反となる場合であっても、第2次的に実質
的・具体的に見て会社の不利益にならない場合には、利益相反取引にあたらないと解す
べきである(最判昭和 46.10.13)。
〈利益相反取引にあたらないとされた例〉
・会社が取締役から無利息・無担保の貸付けを受ける場合(最判昭和 38.12.6)
・取締役に対して単に債務の履行をする場合(大判大正 9.2.20)
・普通取引約款に基づく取引(東京地判昭和 57.2.24)
・会社が取締役から無償贈与を受ける場合(大判昭和 13.9.28)
エ.効果:①取引は原則として無効。第三者に対しては悪意の立証が必要である。
②取締役らは損害賠償責任を負う(423条1項・3項、428条)
③株主総会は取締役を解任できる(339条1項)
◆承認を欠く利益相反取引の効力
そもそも、利益相反直接取引について会社の承認が要求されるのは、取締役が自己の
利益を測って会社の利益をないがしろにする危険があるからである。そして、承認を欠
く場合、上記のような危険を回避する手段は、取引を無効として財産等を回収すること
である。直接取引であれば、相手方は無関係な第三者ではなく利益相反者自身であるか
ら、無効としても取引の安全を欠くことはない。したがって、承認を欠く利益相反直接
取引は無効であると解する。
もっとも、間接取引の相手方及び利益相反取引により取得された財産の第三取得者と
の関係では、一律に無効とすると取引の安全を害するため、間接取引の相手方又は転得
者が悪意の場合に限り、会社は無効を主張することができると解する(相対的無効説、
最大判昭和 46.10.13)。

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会社法 まとめノート

◆一人会社の場合
一人会社においては、会社の営業は実質上取締役の個人営業にすぎないから、会社の
利害得失は実質的には取締役の利害得失となり、その間に利益相反の関係はない。
したがって、一人会社には356条1項2号・3号の適用はなく、当該取引は有効で
ある(最判昭和 45.8.20)。
※株主全員の同意がある場合も同様に考える(最判昭和 49.9.26)。
(4)取締役の報酬等(361条1項)
ア.趣旨:お手盛りの弊害の防止
イ.「報酬等」の範囲
◆退職慰労金
退職慰労金も、361条1項にいう「報酬」に含まれる(最判昭和 39.12.11)。なぜな
ら、退職慰労金も在職中の職務執行の対価として報酬の後払い的な性格を有しているし、
現職の取締役が将来の自己の退職慰労金の受給を考慮した馴れ合いをするおそれがあり、
お手盛りの弊害防止という361条1項の趣旨があてはまるからである。
◆使用人兼取締役の使用人分給与
①使用人の給与は、労働契約に基づく労務の対価であり、取締役の業務執行に対する
対価ではなく、②使用人として受け取る給与の体系が明確に確立されているならばお手
盛りの弊害もない。したがって、使用人分給与は「報酬」に含まれないと解する(最判
昭和 60.3.26)。
◆ストック・オプション
ストック・オプションは、インセンティブ報酬として支給されるものであるし、将来
利益を得る可能性があるという経済的実質から、お手盛りの危険があるといえる。した
がって、「報酬」に含まれると解する。
ウ.「報酬等」の決定
◆報酬の決議方法‐具体的金額を定めない報酬の決定
そもそも、361条が取締役の報酬について株主総会決議を要求したのは、報酬の決
定を取締役に委ねると、お手盛りによって会社財産を不当に害する危険があるためであ
る。とすれば、株主総会は報酬金額の上限を定めれば足り、必ずしも具体的な金額まで
決定する必要はない(最判昭和 60.3.26)。
◆株主総会決議で決定された報酬額の変更
株主総会によって決定された報酬金額は、会社と取締役の間の契約内容となり双方を
拘束するから、相手方の同意なく一方的にこれを変更することは許されない。したがっ
て、株主総会が事後的に無報酬とする旨の決議をしたとしても、当該取締役は、これに
同意しない限り当初の報酬請求権を失わない(最判平成 4.12.18、東京地判平成 2.4.20)。
この点、339条2項を解任の場合の報酬補償を定めたものと解し、
「正当な理由」が

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会社法 まとめノート

あれば減額が可能とする見解も考えられるが、
「正当な理由」があるのなら解任すればい
いだけであって、それをしていない以上、取締役は報酬請求権を失うことはないと解す
べきである。したがって、取締役の職務内容の変更や非行があった場合であっても、一
旦決定した報酬額を同意なく変更することはできない。
5 取締役の違法行為と株主の監督
(1)株主代表訴訟(847条1項)
ア.趣旨:役員と会社との馴れ合い関係から、会社が役員等の責任を追求するのが期待できな
い場合に、個々の株主が自ら会社のために責任追及の訴えを提起することを認めた
イ.要件:①6ヶ月前から引き続き株式を有する株主(非公開会社では保有期間要件なし)
例外:定款規定により権利行使することができない単元未満株主(189条2項)
②株主の請求にもかかわらず会社が60日以内に提訴しないこと(847条3項)
例外:回復することができない損害が生ずるおそれがある場合(847条5項)
ウ.責任追及の範囲
◆株主代表訴訟によって追求できる役員等の「責任」の範囲
取締役の会社に対する責任の全てを含む。すなわち、取締役の地位に基づく責任のほ
か、取締役が会社との取引によって負担することになった債務についての責任も含まれ
る(最判平成 21.3.10)。
なぜなら、条文上なんらの制限もされていないし、会社と取締役の馴れ合いによって
責任追及が不十分になるおそれは取引債務についてもあてはまるからである。
エ.訴訟参加(849条1項)
オ.担保提供命令(847条7項、8項)
◆「悪意」(847条8項)の意義
「悪意」とは、①提訴株主の請求に理由がなく、かつ、②同人がそのことを知って訴
えを提起する場合をいう。そして、請求に理由がないとは、請求原因が主張自体失当で
あること、立証の見込みが低いこと、被告の抗弁成立の蓋然性が高いことをいう(東京
高決平成 7.2.20)。
カ.訴訟告知(849条3項)
(2)取締役の違法行為に対する差止請求権(360条)
ア.趣旨:事前の違法行為阻止手段を認めることで、株主の利益保護を図る
イ.要件:①6ヶ月前から引き続き株式を有する株主(非公開会社では保有期間要件なし)
②取締役が目的の範囲外の行為又は法令定款違反の行為をしようとしていること
...
③会社に著しい損害が生ずおそれがあること ※株主ではない
※監査役設置会社・委員会設置会社の場合は「回復することができない損害」
(3項)
◆取締役の善管注意義務違反の行為の差止めと経営判断原則
「法令若しくは定款に違反する行為」には善管注意義務違反(330条、民法644

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会社法 まとめノート

条)も含まれ、差止請求の可否の判断についても経営判断原則の適用がある(東京地決
平成 16.6.23)。
すなわち、経営判断に属する事項は、結果責任を問われて業務執行が萎縮しないよう、
取締役の広い裁量が与えられていると解すべきである。したがって、善管注意義務違反
があるというためには、当時の社会経済状況下の当該業界における通常の経営者の有す
べき知識経験を基準として、①前提としての事実の認識・資料収集に不注意な誤りがな
かったか、②その事実に基づく行為の選択決定に不合理な点がなかったかという観点か
ら、当該判断が著しく不合理と評価されることが必要であると考える。

Ⅳ 監査役・会計参与・会計監査人
1 監査役
(1)意義:株主総会によって選任され、取締役の監査にあたる常置期間(381条)
※委員会設置会社に監査役を置くことはできない(327条4項)
(2)監査役の選任・終任
ア.選任:株主総会によって選任される(329条1項)。監査役選任決議の定足数は議決権を
行使できる株主の議決権の3分の1未満にすることができない(341条)。
監査役は選任について株主総会で意見を述べることができる(345条4項)。
イ.退任:取締役の退任の場合と同様
もっとも、解任については株主総会特別決議(309条2項7号、343条4項)。
正当な理由なく解任した場合には、会社は損害賠償責任を負う(339条2項)。
監査役は解任について株主総会で意見を述べることができる(345条4項)。
(3)監査役の資格
ア.欠格事由:取締役と同様の欠格事由がある(335条1項、331条1項・2項)
イ.兼任禁止:監査役は、株式会社もしくはその子会社の取締役・支配人・会計参与・執行役
等を兼ねることはできない(335条2項)
◆弁護士である監査役が会社の訴訟代理人となることができるか?
335条2項は、弁護士資格を有する監査役が特定の訴訟事件について会社の訴訟代
理人となることまでも禁止するものではない(最判昭和 61.2.18)。
ウ.監査役の人数:監査役会設置では3人以上。過半数は社外監査役(335条3項)。
(4)監査役の職務・権限
ア.監査権限の範囲:①会計監査+②業務執行全般(381条1項)
※非公開会社では、定款で会計監査に限定できる(389条1項)
イ.妥当性監査の可否:監査権限は適法性監査に限られ、妥当性監査にまでは及ばない
ウ.監査役の職務内容
①調査権:取締役に対する報告請求・調査権(381条1項)、子会社調査権(3項)

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会社法 まとめノート

②勧告的権限:監査報告の作成(381条1項)、取締役会への出席・意見陳述権(383
条1項)、取締役会招集権(383条1項)、株主総会に対する報告(384条)
③是正権:差止請求権(385条)、株主総会決議取消訴訟の提訴権(831条1項)各種
訴えの提訴権(828条2項各号)
(5)監査役と会社・株主等の関係
ア.監査役の善管注意義務(330条、644条)
イ.監査役の報酬:定款又は株主総会の決議により決定する(387条1項)
∵監査役の独立性の確保(お手盛りの弊害防止ではない)
監査役は報酬につき株主総会で意見を述べることができる(387条3項)
ウ.監査役の責任:監査役に任務懈怠があれば423条・429条1項の責任を負う
2 監査役会
3 会計参与
(1)意義:取締役(委員会設置会社では執行役)と共同して、計算書類およびその附属明細書・臨
時計算書類・連結計算書類の作成を職務とする機関(374条1項)
→会計参与は自由設置機関である(326条2項)
(2)資格:公認会計士・監査法人・税理士・税理士法人で欠格事由のない者(331条1項・3項)
(3)選任・解任等
ア.選任:株主総会決議により選任される(329条1項。341条)
会計参与は、選任につき株主総会で意見を述べることができる(345条1項)
イ.解任:任期は原則として2年(334条1項)
株主総会の決議により、いつでも解任できる(339条1項)
会計参与は、解任につき株主総会で意見を述べることができる(345条1項)
(4)権限・義務
ア.権限:会計参与は、取締役(委員会設置会社では執行役)と共同して、計算書類・附属明
細書・臨時計算書類・連結計算書類を作成することを職務とし、会計参与報告を作
成しなければならない(374条1項)
会計帳簿の閲覧・謄写及び取締役等に対して報告を求める権限あり(374条2項)
子会社に対する業務・財産の調査権(374条3項)
イ.義務:不正行為等の株主・監査役への報告義務(375条)
計算書類等の承認のための取締役会への出席・意見陳述義務(376条1項)
ウ.責任:423条1項、429条2項2号の責任

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会社法 まとめノート

Ⅴ 検査役
(1)意義:会社の業務および財産の状況に関し、取締役または発起人の処置の適否及び計算の正否
を調査する機関。株主総会招集手続及び決議方法の調査を任務とすることもある。
(2)選任:検査役は常置機関ではなく、法定の場合に臨時に選任されるにすぎない
ア.株主総会による選任:94条1項、316条1項・2項
イ.裁判所による選任 :33条1項、207条1項、306条1項、358条1項・2項
(3)権限:選任される場合によって職務の範囲は異なる

Ⅵ 委員会設置会社
1 総説
(1)意義:指名委員会、監査委員会、報酬委員会の3委員会を置く株式会社(2条12号)
(2)趣旨:執行役に日常的な業務の決定権を与えることにより迅速に意思決定ができるようにする
反面、取締役会による業務執行監督を各委員会に行わせることによりさらに監督を強化
する。アメリカ型のコーポレート・ガバナンスをモデルにしている。
(3)機関構成
ア.指名委員会(404条1項):取締役の選任・解任に関する議案の内容を決定する
イ.監査委員会(404条2項):執行役等の職務執行の監査を行う
ウ.報酬委員会(404条3項):執行役等の個人別の報酬等の内容を決定する
エ.執行役(402条1項、418条):業務執行の決定・執行を行う
オ.監査役:委員会設置会社には置くことができない(327条4項)
2 委員会設置会社における取締役・取締役会
(1)取締役の任期:選任後1年(332条3項)
(2)取締役・取締役会の権限
ア.業務執行の決定・監督:取締役会は、①会社の業務執行を決定するとともに、②執行役等
の職務執行を監督する(416条1項1号・2号)。
※取締役は原則として会社の業務を執行することができない(415条)
イ.業務執行決定の委任:取締役は、その決議によって、会社の業務執行の決定を執行役に委
任することができる(416条4項)
ただし、譲渡制限株式の譲渡承認、自己株式取得に関する事項の事前決定、株主
総会の招集決定、株主総会に提出する議案決定、委員会設置会社の執行役の選任・
解任、委員や代表執行役の選定・解職、責任免除、合併等組織再編の内容の決定に
ついては執行役に委任することができない(416条1項但書)。
3 委員会
(1)委員会の意義・権限
ア.指名委員会(404条1項):取締役の選任・解任に関する議案の内容を決定する

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会社法 まとめノート

イ.監査委員会(404条2項):執行役等の職務執行の監査を行う
ウ.報酬委員会(404条3項):執行役等の個人別の報酬等の内容を決定する
(2)委員会の組織・選任等
ア.組織:各委員は、それぞれ、取締役会で選任した委員3人以上で組織し、そのうち過半数
は社外取締役でなければならない(400条1項〜3項)。
もっとも、各委員会の委員を兼任することは可能であるので、全取締役の中に最低
2人の社外取締役がいれば足りることになる。
イ.兼任の禁止:監査委員は、委員会設置会社もしくはその子会社の執行役もしくは業務執行
取締役または委員会設置会社の子会社の会計参与もしくは支配人その他の使用人を
兼ねることができない(400条4項)
ウ.選任:各委員会の委員は、取締役の中から取締役会の決議により選定する(400条2項)
エ.解任:取締役会の決議によりいつでも解職することができる(401条)
(3)委員会の運営等:委員会は、当該委員会の各委員が招集する(410条)。原則として1週間前
までに招集通知を発する(411条1項)。委員会の決議は、原則として、決議に加
わることができる委員(特別利害関係人は除く‐412条2項)の過半数が出席し、
その過半数をもって行う(412条1項)。
(4)監査委員会による監査等:適法性監査だけでなく、妥当性監査にも及ぶ。
(5)報酬委員会による報酬の決定等:まず、報酬委員会がその内容の決定に関する方針を定め(4
09条1項)、それに従い、取締役・執行役が受ける報酬を決定する(409条3項)
①額が確定しているもの:個人別の金額
②額が確定していないもの:個人別の具体的な算定方法
③金銭でないもの:個人別の具体的な内容
4 執行役および代表執行役
(1)執行役の意義:取締役会で選任され、取締役会決議によって委任を受けた業務執行を決定し、
また、会社の業務を執行する機関(418条)。委員会設置会社には、一人または2
人以上の執行役を置かなければならない(402条1項)。
(2)執行役の資格・選任・解任
ア.資格:特に資格の制限はなく、欠格事由は取締役と同様(402条4項)
公開会社でない委員会設置会社においては、執行役が株主でなければならない旨を
定款で定めることができる(402条5項)
イ.任期:選任後1年(402条7項)
ウ.選任・解任:取締役会の決議により選任・解任する(402条1項・2項、403条)
(3)執行役の権限等
ア.権限:①取締役会の委任を受けた業務の執行の決定(418条1号、416条4項)
②委員会設置会社の業務の執行(418条2号)

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会社法 まとめノート

イ.具体的職務:①善管注意義務(402条3項、644条)、忠実義務(419条2項)
②取締役会に対する説明義務(417条4項・5項)
③取締役会の招集の請求・招集(417条2項)
④著しい損害を及ぼすおそれのある事実の報告義務(419条1項)
⑤423条1、429条1項等の責任
(4)代表執行役の意義
ア.意義:会社を代表する執行役
イ.選任・解任:取締役会の決議により、選任・解任する(420条1項・2項)
ウ.権限:営業に関する一切の裁判上・裁判外の行為を行う権限を有する(420条3項)
エ.表見代表執行役(421条)

Ⅶ 役員等の損害賠償責任
1 役員等の会社に対する損害賠償責任(423条)
(1)趣旨:取締役が会社に損害を与えれば、民法415条による損害賠償責任を負うが、会社の利
益を保護するため、損害額の推定や、任務懈怠の推定がある423条を規定した
(2)要件:①「役員等」にあたること
→「役員」=取締役・会計参与・監査役(329条1項)
「役員等」=「役員」+執行役・会計監査人(423条1項)
②任務懈怠を基礎づける法令・定款違反行為、善管注意義務違反行為の存在
③故意又は過失があること(428条1項反対解釈)
④損害の発生及びその数額
⑤任務懈怠と損害の間に相当因果関係が認められること
◆423条1項の責任と帰責事由不存在の抗弁
423条1項の責任は、債務不履行責任(民法415条)の一具体化であるから、利
益相反取引の特則(428条1項)の適用がない限り、被告側が帰責事由の不存在を主
張立証すれば損害賠償責任を負わない。ここでいう帰責事由とは、任務懈怠についての
故意又は過失をいう。
(3)対象となる行為
◆取締役の監視義務と任務懈怠責任‐名目上の取締役の責任(取締役である)
取締役会は、取締役の職務執行を監督する地位にある(362条2項2号)から、そ
の実効性確保のため、取締役会を構成する個々の取締役は、取締役会上程事項にとどま
らず、代表取締役の業務執行一般につき善管注意義務等に違反しないよう監視する義務
を、善管注意義務の一内容として負っている(330条、民法644条)。
そして、名目上の取締役であっても取締役として適法に選任されている以上、かかる
監視義務を免れることはできない。もっとも、監視義務につき任務懈怠が認められたと

54

会社法 まとめノート

しても、ワンマン社長であるなど、監視したからといって損害発生を阻止することがで
きたか不明な場合には因果関係が否定されうる。
◆内部統制システムの構築義務と任務懈怠責任
個々の取締役は、善管注意義務の一内容として、取締役の職務執行の監視義務を負う
(362条2項2号、330条、民法644条)。そして、大会社かつ取締役会設置会社
は、会社の業務の適正を確保するための内部統制システムについての事項の決定を取締
役会で行わなければならない(362条5項、4項6号)。すなわち、大会社かつ取締役
設置会社の取締役は、善管注意義務の一内容である監視義務の具体的内容として、適切
な内部統制システムを構築・運用し、取締役の職務執行を監視する義務を負っている。
もっとも、内部統制システムをどのように構築するかの判断は、個々の会社の事業の
規模、特性等に応じて費用対効果を考慮し、限られた会社の経営資源をどのように分配
すべきかを考える経営判断といえ、経営の専門家である取締役の広い裁量に委ねられて
いる事項である。
したがって、措置時における同種の経営者として、通常想定される不正行為を防止で
きないような各別不合理な措置でなければ、内部統制システムの構築義務は履行された
といってよい。
(4)経営判断の原則
◆経営判断の原則
そもそも、経営というものはリスクをとらなければ大きなリターンを得られないもの
である。とすれば、経営判断に属する事項は、結果責任を問われて業務執行が萎縮しな
いよう、取締役の広い裁量が与えられていると解すべきである。
したがって、経営判断に属する事項について善管注意義務違反(330条、民法64
4条)があるというためには、当時の社会経済状況下の当該業界における通常の経営者
の有すべき知識経験を基準として、①前提としての事実の認識・資料収集に不注意な誤
りがなかったか、②その事実に基づく行為の選択決定に不合理な点がなかったかという
観点から、当該判断が著しく不合理と評価されることが必要であると考える。
※ 経営判断原則を最高裁として初めて採用した最判平成 22.7.15(百選52)は、諸般
の事情を総合考慮して、「その決定の①過程、②内容に著しく不合理な点がない限り、
取締役としての善管注意義務に違反するものではない」としている。
◆経営判断の原則が適用されない場面
・経営の監督についての任務懈怠(監視義務違反)責任
・会社と取締役の利益衝突関係がある場合(利益相反取引)
・取締役の法令違反行為が問題となる場合
◆法令違反行為と任務懈怠
そもそも、会社があらゆる法令を遵守すべきであることは当然である。したがって、

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会社法 まとめノート

会社の業務執行にあたる取締役が、会社を名宛人とするあらゆる法令を遵守することは、
善管注意義務(330条、民法644条)の一内容となり、法令違反行為はすなわち「そ
の任務を怠った」ことになる。
なお、法令違反行為を行うことはおよそ経営判断に属する事項とはいえない(取締役
に裁量なし)から、いわゆる経営判断原則を適用する余地はない(もっとも、法令に違
反するかが微妙であった場合には、違反帰責事由=過失の判断において経営判断原則と
実質的に同様の考慮をすることになる。
◆会社の不祥事を認識した後の対処と任務懈怠責任
取締役が会社の不祥事を認識したときに、会社の損害を最小限に留めるために措置を
とるべきことは、会社に対する善管注意義務(330条、民法644条)の一内容を構
成する。しかし、具体的にどのような措置をとるべきかについては、不確実な状況で迅
速な判断が迫られる場合が多いので、取締役の裁量が認められる経営判断に属する事項
といえる。
したがって、上記善管注意義務違反があるというためには、当時の社会経済状況下の
当該業界における通常の経営者の有すべき知識経験を基準として、①前提としての事実
の認識・資料収集に不注意な誤りがなかったか、②その事実に基づく行為の選択決定に
不合理な点がなかったかという観点から、当該判断が著しく不合理と評価されることが
必要であると解すべきである。
2 役員等の責任の免除と軽減
(1)総株主の同意による免除:全部免除(424条)
(2)一部免除制度:①株主総会特別決議による一部免除(425条)
②定款規定に基づく取締役会決議による一部免除(426条)
③定款規定に基づく社外取締役の責任限定契約(427条)
※いずれも責任軽減のためには、善意かつ無重過失であることが要件である。
また、自己のために利益相反取引をした取締役については適用されない(4
28条2項)。
3 役員等の第三者に対する損害賠償責任(429条)
(1)趣旨:株式会社の活動を通じて損失を被った第三者に対して、一般不法行為よりも簡易に取締
役に直接責任を負わせることにより、第三者の保護を図る
(2)429条1項の責任の法的性質・範囲
◆429条1項の責任の法的性質
そもそも、429条1項は、株式会社の活動を通じて損失を被った者に対して、不法
行為よりも簡易に取締役に直接責任を負わせるという特別の法定責任を定めた規定であ
る(法定責任説、最大判昭和 44.11.26)。
◆429条1項「悪意又は重大な過失」

56

会社法 まとめノート

そもそも、429条1項は、株式会社の活動を通じて損失を被った者に対して、不法
行為よりも簡易に取締役に直接責任を負わせるという特別の法定責任を定めた規定であ
る(法定責任説、最大判昭和 44.11.26)。
簡易な第三者保護という趣旨を全うするため、相手方への権利侵害について要求され
るのではなく、会社に対する任務懈怠について悪意又は重大な過失があれば足りると解
する(最大判昭和 44.11.26)。
◆429条1項の「損害」の意味
そもそも、429条1項は、株式会社の活動を通じて損失を被った者に対して、不法
行為よりも簡易に取締役に直接責任を負わせるという特別の法定責任を定めた規定であ
る(法定責任説、最大判昭和 44.11.26)。
このような趣旨からすれば、
「損害」を限定する合理的理由はなく、任務懈怠との相当
因果関係が認められる限り、直接・間接を問わず広く含まれると解すべきである。
※判例:両損害包含説=損害の範囲を任務懈怠との間の相当因果関係の問題として処理
①直接損害…会社に損害がなく、第三者が直接に損害を被る場合
ex 既に経営状態が悪化している状況で取引に入った債権者が被った損害
②間接損害…第1次的に会社に損害が生じその結果第2次的に第三者が損害を被る場合
ex 債権を取得した後に会社の経営状態が悪化し、債権回収不能となる損害
(3)要件:①「役員等」の会社に対する任務懈怠行為
②任務懈怠についての故意又は重過失
③損害の発生とその数額
④任務懈怠と損害との間に相当因果関係が認められること
ア.「役員等」の会社に対する任務懈怠行為
◆任務懈怠の意味
善管注意義務(330条、民法644条)に違反すること。
→具体的事案の下で、取締役等がどのような注意義務を負っているかを明らかにする
ex 債務超過状態における取締役の注意義務
債務超過状態となれば、有限責任の結果失うものがない株主は危険な投機的行動
に走りやすい。したがって、取締役は、企業価値を維持して会社債権者を保護する
義務、具体的には、会社債権者の損害拡大を阻止するため再建可能性・倒産処理等
を検討し、それらと無関係な債務を負担しないようにする義務を善管注意義務の一
内容として負っていると解する。
◆法令違反行為と任務懈怠
そもそも、会社があらゆる法令を遵守すべきであることは当然である。したがって、
会社の業務執行にあたる取締役が、会社を名宛人とするあらゆる法令を遵守することは、
善管注意義務(330条、民法644条)の一内容となり、法令違反行為はすなわち「そ

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会社法 まとめノート

の任務を怠った」ことになる。
なお、法令違反行為を行うことはおよそ経営判断に属する事項とはいえないから、い
わゆる経営判断原則を適用する余地はない(もっとも、法令に違反するかが微妙であっ
た場合には、違反帰責事由=過失の判断において経営判断原則と実質的に同様の考慮を
することになる。
◆MBOの実施における取締役の株主の対する義務
営利企業である株式会社において、取締役は善管注意義務(330条、民法644条)
の一内容として、企業価値の向上を通じて株主の共同利益に配慮する義務を負っている。
とりわけ、MBOにおいては、①本来株主の利益を代表すべき取締役が、自ら株主から
株式を取得するという必然的な利益相反的構造にあること、②買主である取締役と売主
である株主との間には大きな情報の非対称性が存在していることから、取締役には株主
の共同利益を害さないよう、より慎重な配慮が求められる。
そこで、MBOにおいて取締役に善管注意義務違反が認められるか否かは、①交渉に
おいて当該取締役が果たした役割の程度、②利益相反関係の有無又はその程度、③利益
相反関係を回避あるいは解消するために採られた措置の内容等を総合考慮して判断すべ
きである(東京地判平成 23.2.18)。
※ 判例において重視された事情
・第三者機関による意見聴取がなされていること
・取締役会において十分な議論が尽くされていること
・監査役・監査役会の同意があること
・買収取締役が取締役会決議に参加していないこと
◆429条1項の責任を負う「取締役」の範囲
(ⅰ)名目上の取締役の責任(取締役である)
取締役会は、取締役の職務執行を監督する地位にある(362条2項2号)から、そ
の実効性確保のため、取締役会を構成する個々の取締役は、取締役会上程事項にとどま
らず、代表取締役の業務執行一般につき善管注意義務等に違反しないよう監視する義務
を、善管注意義務の一内容として負っている(330条、民法644条)。
そして、名目上の取締役であっても取締役として適法に選任されている以上、かかる
監視義務を免れることはできない。もっとも、監視義務につき任務懈怠が認められたと
しても、ワンマン社長であるなど、監視したからといって損害発生を阻止することがで
きたか不明な場合には因果関係が否定されうる。
(ⅱ)登記簿上の表見取締役の責任(取締役ではない)
適法な選任手続きを経ていない取締役であっても、取締役就任登記に承諾を与えた場
合は、会社法908条2項を類推適用して、その登記が不実であることをもって善意の
第三者に対抗できない(最判昭和 47.6.15)。なぜなら、908条2項の趣旨は、禁反言

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会社法 まとめノート

を基礎に不実登記への信頼を保護する点にあるところ、登記義務者でない者が不実登記
の作出に加功した場合にもかかる趣旨はあてはまるからである。
(ⅲ)退任登記未了の退任取締役の責任(取締役ではない)
取締役を退任したにもかかわらず退任登記が未了の場合、当該取締役は原則として責
任を負わないが、①退任後も積極的に取締役としての行為を行った場合や、②その不実
登記の残存につき明示的な承諾を与えていたなどの特段の事情がある場合には、会社法
908条2項の類推適用により責任を負う(最判昭和 62.4.16)。
なぜなら、908条2項の趣旨は、禁反言を基礎に不実登記への信頼を保護する点に
あるところ、登記義務者でない者が不実登記の作出に加功した場合にもかかる趣旨はあ
てはまるからである。そして①②の場合には、不実登記の作出に加功したものといえる。
イ.任務懈怠についての故意又は重過失
◆429条1項「悪意又は重大な過失」
そもそも、429条1項は、株式会社の活動を通じて損失を被った者に対して、不法
行為よりも簡易に取締役に直接責任を負わせるという特別の法定責任を定めた規定であ
る(法定責任説、最大判昭和 44.11.26)。
簡易な第三者保護という趣旨を全うするため、相手方への権利侵害について要求され
るのではなく、会社に対する任務懈怠について悪意又は重大な過失があれば足りると解
する(最大判昭和 44.11.26)。
ウ.損害の発生とその数額
◆429条1項の「損害」の意味
そもそも、429条1項は、株式会社の活動を通じて損失を被った者に対して、不法
行為よりも簡易に取締役に直接責任を負わせるという特別の法定責任を定めた規定であ
る(法定責任説、最大判昭和 44.11.26)。
このような趣旨からすれば、
「損害」を限定する合理的理由はなく、任務懈怠との相当
因果関係が認められる限り、直接・間接を問わず広く含まれると解すべきである。
※判例:両損害包含説=損害の範囲を任務懈怠との間の相当因果関係の問題として処理
①直接損害…会社に損害がなく、第三者が直接に損害を被る場合
ex 既に経営状態が悪化している状況で取引に入った債権者が被った損害
②間接損害…第1次的に会社に損害が生じその結果第2次的に第三者が損害を被る場合
ex 債権を取得した後に会社の経営状態が悪化し、債権回収不能となる損害
◆429条1項の「第三者」〜当該会社の株主も含まれるか?
「第三者」とは、会社及び請求の相手方となる取締役以外のものを指し、原則として
株主も含まれる。もっとも、間接損害の場合は、会社の取締役に対する損害賠償請求権
の一部を奪うものであって、実質的に優先的払戻しといえるので、会社の債権者に対す
る劣後的地位(502条)の観点から、「第三者」に含まれないと解すべきである。

59

会社法 まとめノート

エ.任務懈怠と損害との間に相当因果関係が認められること:民法416条により判断
◆損害賠償の範囲(416条)〜相当因果関係説
1項:事実的因果関係の認められる損害のうち、相当因果関係の認められる損害につ
いての賠償を命じた規定
2項:相当因果関係の判断の基礎となるべき特別事情の範囲を定めた規定(判断基底)
→予見可能性は履行不能時を基準とする
◆損害額の算定時期
原則:履行不能時 or 契約解除時
例外:①目的物の価格が現在も高騰中の場合
債権者が、債務不履行後の価格上昇という特別の事情を債務者が履行不能時
に予見し又は予見しえたことを立証できれば、債権者がその価格まで値上がり
する以前に目的物を処分したであろうと予想される場合でない限り、現在価格
(口頭弁論終結時)での賠償請求ができる(最判昭和 37.11.16)。
この場合は、債権者が転売等によって利益を得たであろうという事情は必要
でなく、自己使用のために不動産を買い受けた場合でも、価格上昇につき予見
可能性があれば足りる(最判昭和 47.4.20)。
②価格がいったん高騰し、その後下落した場合
債権者が、債務不履行後の価格上昇と、最高価格で処分し利益を収めたとい
う特別事情(416条2項)を債務者が履行不能時に予見し又は予見し得たこ
とを立証できれば、中間最高価格での賠償請求ができる(大連判大正 15.5.22)。
◆有価証券報告書の虚偽記載と相当因果関係のある投資者の損害
〜有価証券報告書の虚偽記載が発端となって株式の上場が廃止された場合、投資者に生
じた損害の額をどのように算定すべきか?
当該虚偽記載の公表後に株式を処分した投資者が被った損害の額は、その取得価額と
処分価額との差額を基礎に、経済情勢、市場動向、当該会社の業績等、虚偽記載に起因
しない市場価額の下落分を控除して算定すべきである。
この点、虚偽記載の公表後にいわゆる狼狽売りが集中して市場価額が過剰に下落する
ことは、通常予想される事態であるから、虚偽記載に起因しない価額変動であるという
ことはできず、損害額の算定に当たって控除することはできない(最判平成 23.9.13)。
(4)429条2項の責任
ア.法的性質:第三者の直接損害の保護を目的とする。情報開示の重要性とそれが虚偽である
場合の危険性から、429条1項と異なり、証明責任の転換された過失責任と
して規定されている。
イ.要件:①429条2項各号にあたるものが各号に定める行為をしたこと
②損害の発生とその数額

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会社法 まとめノート

③行為と損害との間に相当因果関係が認められること
ウ.具体例
◆虚偽の計算書類が反映された会社四季報を見て手形を取得した場合
虚偽記載のある書類を信頼して、会社と直接の取引関係に入ったわけではないから、
かかる手形を取得した第三者は保護されない(名古屋高判昭和 58.7.1)。

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会社法 まとめノート

計算

1 総説:株式会社の会計は、一般に公正妥当を認められる企業会計の慣行に従う(431条)
→「企業会計の慣行」=企業会計審査会が定めた企業会計原則など
2 会計帳簿
(1)意義:営業上の財産については一定の時期に記載するが、取引上の損益に関する事項は不断に
記載するもの。 ex 仕訳帳、日記帳、元帳など
◆「会計帳簿」と「計算書類」の関係
会計帳簿をもとに各事業年度についての計算書類が作成される(会社計算規則59条
3項)。すなわち、会計帳簿は生のデータ(日々の取引毎に作成)、計算書類はそれをも
とに作成した資料(一定の時点を基準として作成)である。
(2)作成・保存義務(432条)
(3)株主の会計帳簿閲覧権(433条)
ア.趣旨:株主が、詳細かつ正確な情報を得るには、計算書類・付属明細書を作成する基礎と
なったオリジナルな帳簿・書類の閲覧・謄写権を与える必要がある。
もっとも、会社の業務の円滑な執行を阻害し、営業秘密の漏洩の危険も生じさせる
ので、株主・社員の権利保護上真に必要な場合にのみ認められるべきという点から、
少数株主権とされている。
イ.内容:会計帳簿またはこれに関する資料の閲覧・謄写の請求(433条1項前段)
...
ウ.要件:①総株主の議決権の100分の3以上の議決権を有する株主又は発行済株式の10
....
0分の3以上の数の株式を有する株主
②請求の理由を明らかにすること
◆閲覧謄写の対象となる会計帳簿等の範囲〜「会計帳簿又はこれに関する資料」の意味
「会計帳簿」とは、会社計算規則59条3項にいう「会計帳簿」と同義であり、計算
書類及びその附属明細書の作成の基礎となる帳簿をいう。
「これに関する資料」とは、会
計帳簿作成の材料となった資料その他会計帳簿を実質的に補充する資料(伝票、契約書
等)に限定される(限定説、東京地判平成 1.6.22、横浜地判平成 3.4.19)。
◆請求の理由はどの程度の具体性が必要か?
閲覧請求の理由を明らかにすることが必要とされるのは、会社が閲覧に応ずるべき帳
簿・書類の範囲を特定し、閲覧拒否事由の存否を判断する資料を与えるためである。と
すれば、閲覧請求の理由は、帳簿・書類の範囲の特定と閲覧拒否事由の存否の判断に必
要な限度で具体的に明示しなければならない。もっとも、請求の理由を基礎づける事実
が客観的に存在することまでの立証は必要でない(最判平成 16.7.1)。
エ.閲覧謄写請求の拒否事由(433条2項各号)

62

会社法 まとめノート

◆433条2項1号「権利の確保又は行使の関する調査以外の目的」の意味
〜自益権行使のための閲覧謄写請求権は「調査以外の目的」にあたるか?
株式の譲渡制限を設けている株式会社において、株式を他に譲渡しようとする株主が、
株式の適正な価格を算定する目的でした会計帳簿等の閲覧請求は、特段の事情のない限
り、株主等の権利の確保または行使に関して調査をするために行われたものであって、
1号所定の拒絶事由には該当しない(最判平成 16.7.1)。
◆433条2項3号「実質的に競争関係にある事業を営み」の意味
そもそも、会社法が、競争関係にある会社からの会計帳簿閲覧請求を拒絶することを
認めているのは、競業者により会社の秘密が利用され、会社に大きな被害が生じること
を未然に防ぐためである。とすれば、将来的に競争関係が発生する蓋然性がある場合で
あっても、会社に被害が生じる相当の蓋然性が認められるので、請求の拒絶を認めるこ
とは法の趣旨に合致する。
したがって、将来的に競争関係が発生する蓋然性が認められるならば、
「実質的に競争
関係にある」として、請求を拒むことができると解する(東京地決平成 19.9.20)。
なお、会計帳簿閲覧請求の場合、会社に大きな損害が発生する可能性が客観的にみて
高いので、実質的に競争関係にあるというだけで拒絶を認める実質的理由としては十分
である。したがって、請求者が濫用目的等の不存在を立証しても、閲覧請求は認められ
ないというべきである。※株主名簿閲覧請求の場合(125条3項3号)と異なる
◆3号の拒絶理由と株主の主観的意図
〜3号の拒絶理由があるというためには、当該株主に閲覧請求によって知りうる情報を
自己の競業に利用する等の主観的意図が必要か?
そもそも、会社法が、競争関係にある会社からの会計帳簿閲覧請求を拒絶することを
認めているのは、競業者により会社の秘密が利用され、会社に大きな被害が生じること
を未然に防ぐためである。とすれば、株主が閲覧請求をした時点において競業に利用す
る意図を有していなかったとしても、客観的な競業関係が存在する以上、閲覧謄写によ
って得られた情報が将来において競業に利用される危険性は否定できない。また、そも
そも株主の主観的意図を会社が立証するのは極めて困難である。
したがって、当該株主が当該会社と競業をなす者であるという客観的事実が認められ
れば足り、主観的意図の立証は不要であると解する(最決平成 21.1.15)。
3 計算書類と承認手続
(1)計算書類:①貸借対照表②損益計算書③その他法務省令で定めるものをいう(435条2項)
(2)各計算書類の意義
ア.貸借対照表:決済期末現在における会社財産の構成状態を明らかにする書面
イ.損益計算書:営業年度における収益と費用を対照し、会社の営業成績を明らかにする書類
ウ.その他法務省令で定めるもの:株式資本等変動計算書、個別注記表

63

会社法 まとめノート

エ.事業報告:会社の状況に関する重要な事項を記載した書類
オ.附属明細書:貸借対照表、損益計算書、事業報告を補足する重要な事項を記載した書類
(3)計算書類の承認手続
ア.作成・監査:貸借対照表・損益計算書・事業報告・附属明細書の作成(435条2項)
監査役における監査(436条1項)
監査を経たものにつき取締役会の承認(436条3項)
イ.定時株主総会の承認:事前の開示が必要(437条)、株主総会の承認(438条)
※会計監査人設置会社においては、取締役会の承認を受け、法務省令で定め
る要件に該当する場合には、定時株主総会の承認は不要であり、定時株主総
会への報告のみで足りる(439条)。
ウ.開示・公告:定時株主総会の承認後遅滞なく、貸借対照表(大会社においては貸借対照表
及び損益計算書)を公告しなければならない(440条1項)
(4)臨時計算書類と連結計算書類
ア.臨時計算書類:臨時決算日(最終事業年度の直後の事業年度に属する一定の日)における
会社の財産の状況を把握するための計算書類(441条1項)
イ.連結計算書類:会計監査人設置会社およびその子会社からなる企業集団の財産及び損益の
状況を開示するために法務省令で定められるもの(444条1項)
4 資本金および準備金
(1)資本金
ア.意義:会社財産を確保するための基準となる一定の数額(445条1項)
※資本金は貸借対照表に記載される一定の数額であり、現在の会社財産とは無関係
イ.資本金の算定:資本金の額は、原則として、設立又は株式の発行に際して株主となる者が
会社に対して払込み・給付をした財産の価額である(445条1項)。もっとも、払
込み。給付にかかる額の2分の1を超えない額は、資本金として計上しないことが
できる(445条2項)。
(2)準備金
ア.意義:法律・定款の規定または株主総会の決議をもって、資本金の額以上の金額に相当す
る財産を会社に留保させる金額である
※準備金も貸借対照表の資本の部に計上される純然たる計算上の数額にすぎない
イ.種類・内容:①法定準備金(資本準備金・利益準備金)、②任意準備金
ウ.剰余金の配当:剰余金の配当をするには、法務省令により、当該剰余金の配当により減少
する剰余金の額に10分の1を乗じて得た額を資本準備金または利益準備金として
計上しなければならない(445条4項)。
(3)資本金額の減少
ア.意義:会社の資本金の額を減少すること→資本不変の原則の例外であり厳格な手続が必要

64

会社法 まとめノート

イ.手続:①株主総会の特別決議(447条1項、309条2項9号)
②会社債権者への催告・異議申立手続(449条)
5 剰余金の配当
(1)剰余金配当の意義:株主に対する金銭等の分配
(2)剰余金配当の要件:①形式的要件:原則として株主総会の決議(454条1項)
例外として中間配当の場合は決議不要(454条5項)
②実質的要件:分配可能額を超えてはならない(461条)
純資産額が300万円未満の会社は配当不可(458条)
(3)違法配当:①461条の分配可能額を超えた剰余金の配当(蛸配当)
②手続違反・株主平等原則違反の剰余金配当
ア.違法配当の効力
◆分配可能額を超えた剰余金配当の効力
そもそも、会社法が要件を欠く剰余金の配当の効力について特則を定めていないこと
からすれば、要件を欠く配当は一般原則通り無効である。この点、463条1項派「そ
の効力が生じた日」としており、文言上は違法配当も有効であるとしているようにも読
める。しかし、このような細かい文言のみによって、解釈問題の決着をつけるのは妥当
でなく、「効力が生じた日」とは、「効力を生じたはずの日」を意味するにとどまる。
したがって、
「配当時に分配可能額を超えない」という要件(461条1項柱書、8号)
を欠く以上、財源規制違反の配当は一般原則に照らして無効と解すべきである。
◆無効説に立った場合の処理〜株主は現物配当として交付された株式を保持できるか?
無効説に立つと、本来であれば、現物配当として株式の交付を受けた株主は、不当利
得返還義務として当該株式を会社に返還すべきことになる(民法703条、704条)。
しかし、462条1項柱書は、金銭等の交付を受けた者が会社に対して帳簿価額相当
額を支払わなければならないとしており、この義務は不当利得返還義務の特則と考えら
れる。実質的に考えても、現物返還義務を認めると、会社が株主のリスクで投機をする
ことを認めることになるが、善意悪意を問わず責任を負う株主にそのようなリスクを負
わせることは不当である。したがって、462条1項によって、上記の不当利得返還義
務が否定される結果、株主は交付された株式を保有することができる。
イ.株主の返還義務:①会社に対する帳簿価額相当金銭支払義務(462条1項)
②債権者に対する帳簿価額相当金銭支払義務(463条2項)
◆462条1項に基づく株主の責任〜善意の株主も責任を負うか
この点、463条1項は、善意の株主は業務執行者らからの求償を受けないとしてお
り、これとの均衡から、善意の株主は462条1項の責任を負わないとも思える。
しかし、462条1項柱書には善意悪意で区別する文言はなく、463条1項の規定
も、自ら違法行為をした業務執行者らが善意の株主に求償することが不当であるという

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会社法 まとめノート

理由から求償権を制限したものにすぎない。実質的にも、株主は適法な業務執行が行わ
れていれば得られなかったはずの利益を得ているのであるから、会社の犠牲のもとにか
かる利益を保護する必要性は乏しい。したがって、善意の株主も462条1項の責任を
負うと解する。
ウ.業務執行者等の責任:①会社に対する帳簿価額相当金銭支払義務(462条1項)
※無過失を証明すれば免責される(462条2項)
②悪意の株主に対する求償権(463条1項)
エ.業務執行者等の欠損填補責任:分配可能額を超えていない場合であっても、期末に欠損が
生じた場合には、業務執行者は会社に対して連帯して欠損の額(分配額が上限)を
支払う義務を負う(465条1項本文)。もっとも、その者が注意を怠らなかったこ
と(無過失)を証明した場合には義務を免れる(465条1項但書)。総株主の同意
あれば免除可(465条2項)。
6 株主の経理審査権
(1)趣旨:株主は、自らの利益を擁護するため、株主総会を通じた監督に加え、取締役の違法行為
差止請求権(360条)、取締役解任請求権(854条1項)等の監督権を有している。
しかし、これらの監督是正権を有効・適切に行使するためには、株主が会社の業務・財
産の状況について詳細かつ正確な情報を得ることが前提となる。
そこで、会社法は、株主が会社の経理内容について情報を獲得するため、計算書類等の
情報開示を求める経理審査権を与えた。
(2)種類:①計算書類等の開示制度(442条3項)
②会計帳簿閲覧権(433条1項)
③検査役選任請求権(358条1項)
(3)計算書類等の閲覧権(442条3項)
(4)会計帳簿閲覧・謄写権(433条1項)
ア.趣旨:株主が、詳細かつ正確な情報を得るには、計算書類・付属明細書を作成する基礎と
なったオリジナルな帳簿・書類の閲覧・謄写権を与える必要がある。
もっとも、会社の業務の円滑な執行を阻害し、営業秘密の漏洩の危険も生じさせる
ので、株主・社員の権利保護上真に必要な場合にのみ認められるべきという点から、
少数株主権とされている。
イ.内容:会計帳簿またはこれに関する資料の閲覧・謄写の請求(433条1項前段)
...
ウ.要件:①総株主の議決権の100分の3以上の議決権を有する株主又は発行済株式の10
....
0分の3以上の数の株式を有する株主
②請求の理由を明らかにすること
◆閲覧謄写の対象となる会計帳簿等の範囲〜「会計帳簿又はこれに関する資料」の意味
「会計帳簿」とは、会社計算規則59条3項にいう「会計帳簿」と同義であり、計算

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会社法 まとめノート

書類及びその附属明細書の作成の基礎となる帳簿をいう。
「これに関する資料」とは、会
計帳簿作成の材料となった資料その他会計帳簿を実質的に補充する資料(伝票、契約書
等)に限定される(限定説、東京地判平成 1.6.22、横浜地判平成 3.4.19)。
◆請求の理由はどの程度の具体性が必要か?
閲覧請求の理由を明らかにすることが必要とされるのは、会社が閲覧に応ずるべき帳
簿・書類の範囲を特定し、閲覧拒否事由の存否を判断する資料を与えるためである。と
すれば、閲覧請求の理由は、帳簿・書類の範囲の特定と閲覧拒否事由の存否の判断に必
要な限度で具体的に明示しなければならない。もっとも、請求の理由を基礎づける事実
が客観的に存在することまでの立証は必要でない(最判平成 16.7.1)。
エ.閲覧謄写請求の拒否事由(433条2項各号)
◆433条2項1号「権利の確保又は行使の関する調査以外の目的」の意味
〜自益権行使のための閲覧謄写請求権は「調査以外の目的」にあたるか?
株式の譲渡制限を設けている株式会社において、株式を他に譲渡しようとする株主が、
株式の適正な価格を算定する目的でした会計帳簿等の閲覧請求は、特段の事情のない限
り、株主等の権利の確保または行使に関して調査をするために行われたものであって、
1号所定の拒絶事由には該当しない(最判平成 16.7.1)。
◆433条2項3号「実質的に競争関係にある事業を営み」の意味
そもそも、会社法が、競争関係にある会社からの会計帳簿閲覧請求を拒絶することを
認めているのは、競業者により会社の秘密が利用され、会社に大きな被害が生じること
を未然に防ぐためである。とすれば、将来的に競争関係が発生する蓋然性がある場合で
あっても、会社に被害が生じる相当の蓋然性が認められるので、請求の拒絶を認めるこ
とは法の趣旨に合致する。
したがって、将来的に競争関係が発生する蓋然性が認められるならば、
「実質的に競争
関係にある」として、請求を拒むことができると解する(東京地決平成 19.9.20)。
なお、会計帳簿閲覧請求の場合、会社に大きな損害が発生する可能性が客観的にみて
高いので、実質的に競争関係にあるというだけで拒絶を認める実質的理由としては十分
である。したがって、請求者が濫用目的等の不存在を立証しても、閲覧請求は認められ
ないというべきである。※株主名簿閲覧請求の場合(125条3項3号)と異なる
◆433条2項3号「実質的に競争関係にある事業を営」む者の範囲
単に請求者自身が競争関係にある場合のみならず、請求者(完全子会社)がその親会
社と一体的に事業を営んでいると評価できる場合において、当該親会社が競争関係にあ
る場合も含まれる(東京地判平成 19.9.20)。
◆433条2項3号の拒絶理由と株主の主観的意図
〜3号の拒絶理由があるというためには、当該株主に閲覧請求によって知りうる情報を
自己の競業に利用する等の主観的意図が必要か?

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会社法 まとめノート

そもそも、会社法が、競争関係にある会社からの会計帳簿閲覧請求を拒絶することを
認めているのは、競業者により会社の秘密が利用され、会社に大きな被害が生じること
を未然に防ぐためである。とすれば、株主が閲覧請求をした時点において競業に利用す
る意図を有していなかったとしても、客観的な競業関係が存在する以上、閲覧謄写によ
って得られた情報が将来において競業に利用される危険性は否定できない。また、そも
そも株主の主観的意図を会社が立証するのは極めて困難である。
したがって、当該株主が当該会社と競業をなす者であるという客観的事実が認められ
れば足り、主観的意図の立証は不要であると解する(最決平成 21.1.15)。
(5)検査薬選任請求権(358条1項)
ア.趣旨:株主は、取締役に不正行為の疑いがあれば、広く直接に業務・財産の状況を調査す
る必要がある。そこで、一定の要件のもと、少数株主に検査役の選任請求権を与え
た。検査役は裁判所が選任し、会社の業務・財産の状況を調査する。
イ.内容:株主は、裁判所に対して検査役の選任の申し立てをすることができる
...
ウ,要件:①総株主の議決権の100分の3以上の議決権を有する株主、又は、②発行済株式
....
の100分の3以上の数の株式を有する株主であること
◆検査役選任申立て後の持分比率の変動
検査役選任の申立てをした時点で、当該株主が当該会社の総株主の議決権の100分
の3以上を有していたとしても、その後、当該会社が新株を発行したことにより、当該
株主が当該会社の総株主の議決権の100分の3未満しか有しないものとなった場合に
は、当該会社が当該株主の上記申請を妨害する目的で新株を発行したなどの特段の事情
のない限り、上記申立ては,申立人の適格を欠くものとして却下されると解する(最判
平成 18.9.28)。なぜなら、授権資本制度(37条1項)の下では、会社は原則として自
由に株式を発行できるのであり(201条1項)、株式発行による持分比率の変動のリス
クは、株主が負うべきだからである。

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会社法 まとめノート

資金調達

Ⅰ 募集株式の発行
1 総説
(1)募集株式の発行
ア.意義:会社成立後に株式を発行することにより、資金を調達すること
イ.種類:①通常の新株発行:通常の新株発行、自己株式の処分
②特殊の新株発行:株式の併合・分割、株式無償割当て、吸収合併
ウ.既存株主保護の必要性:①持株比率の低下、②株価下落による経済的損失
(2)授権株式制度:
ア.原則:会社設立時には、発行可能株式総数(授権株式、37条1項、98条)のうち原則
として4分の1以上の株式が発行されるものとし(37条3項)、会社設立後は発行
可能株式総数の枠内で、取締役会の決議によって自由に株式を発行することができ
る(199条1項・2項、201条)→株式持分比率低下の限界を画する機能
イ.例外:非公開会社においては、原則として株主総会の特別決議による(199条2項)
2 募集株式の発行手続
(1)公開会社の場合
ア.原則:取締役会の決議(201条1項、199条1項・2項
イ.例外:第三者に対する有利発行の場合(201条1項)
①理由の説明(199条3項)
②株主総会の特別決議(199条2項、309条2項5号)
◆「特に有利な金額」(199条3項)の意味
(ⅰ)上場会社株式の場合
「特に有利な金額」とは、現在の株式価値に比して著しく新規株主に有利な金額をい
う。上場会社の株式であれば、市場価格が現在の株式価値となり、これを基準に著しく
新規株主に有利といえるかを判断する。もっとも、株式発行に伴う需給バランスの変動
による一時的な株式価格の下落や、市場における発行新株の消化可能性を考慮して、数%
のディスカウントであれば許容されると解すべきである。
※ 日本証券業協会の自主ルールによれば、第三者割当増資の払込金額は、増資に係る取
締役会決議の直前日の市場価格または相当期間の平均市場か価格に対して10%以内
のディスカウントであれば許容されるとされている。
※ 不当目的による異常な投機によって市場価格が企業価値から乖離していると認められ
る場合には、高騰した市場価格を基準とすべきでない。
(ⅱ)非上場会社株式の場合
非上場会社の株式には市場価格がないので、当時の企業価値を算定し、その一株あた

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会社法 まとめノート

りの価値を株式価値と考えるほかないが、企業価値の算定方法には様々な方式があり、
その選択に一定の裁量が認められる。
したがって、
「特に有利な金額」といえるかどうかは、企業価値の算定方法の選択に不
合理な点はなかったかという観点から判断すべきである。
(2)非公開会社の場合:株主総会の特別決議+有利発行の場合は理由の説明(199条2項・3項)
3 違法な募集株式発行に対する救済手段
(1)株式発行の差止請求(210条)+発行差止の仮の地位仮処分の申立て(民執法23条2項)
ア.趣旨:法令・定款違反または著しく不公正な方法での発行により既存株主が被る株主個人
の不利益(持分比率・配当金額の低下)の回避
イ.原告適格:新株発行により不利益を受けるおそれのある株主
ウ.新株発行差止事由:①「法令又は定款に違反する場合」(1号)
②「著しく不公正な方法により行われる場合」(2号)
◆「法令又は定款に違反する場合」(1号)
①公開会社による発行における取締役会決議の欠缺(201条、199条2項)
②第三者有利発行における株主総会特別決議の欠缺(201条1項、199条3項)
③非公開会社による発行における株主総会特別決議の」欠缺(199条2項)
④不均等な条件で新株を発行する(199条5項)
⑤通知・公告の欠缺(201条3項、4項)
⑥定款に定めのない種類株式の発行(108条2項)
◆「著しく不公正な方法により行われる場合」(2号)
「著しく不公正な方法」とは、不当な目的を達成する手段をいう。
そして、会社経営陣は株主に選ばれる立場であり、自らが株主を選ぶ立場にないから、
募集株式の発行が、特定の株主の持株比率を低下させ現経営者の支配権を維持すること
を主要な目的としてなされたと評価できる場合には、原則として「著しく不公正な方法」
にあたると解する(主要目的ルール)。
もっとも、近時の裁判例は、不当目的が優越するかという点よりも、事業計画の合理
性を具体的にみて、会社の主張する資金調達目的に信ぴょう性があるかという点に重点
を置いて判断している。
(2)引受人の差額支払義務(212条1項1号)
ア.通謀引受人等の差額支払義務(212条1項)
イ.取締役等の現物出資不足額填補責任(213条1項、3項)
(3)株式発行無効の訴え(828条1項2号)
ア.趣旨:募集新株の発行には、多数の利害関係人が関与しており、発行を前提として多数の
法律関係が形成されるから、瑕疵のある発行を一般則通り無効とすると、利害関係
人に不測の損害を被らせ、法的安定性を害する。そこで、会社を巡る法律関係の画

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会社法 まとめノート

一的処理と法的安定性を図るため、各種の訴えの制度が設けられた。
イ.原告適格:株主、取締役又は清算人のほか、監査役設置会社においては監査役、委員会設
置会社においては執行役に原告適格が認められる(828条2項2号)
ウ.提訴期間:公開会社:効力発生日から6ヶ月以内(828条1項2号)
非公開会社:効力発生日から1年以内(828条1項2号)
エ.無効原因:明文なし(論点)
◆無効原因の一般論
新株発行無効原因について明文の規定はないが、公開会社の株式は流通しやすく株式
取引の安全を図る必要性が高い。そこで、公開会社における新株発行無効原因は、会社
や株主の救済が著しく困難といえるような重大な瑕疵がある場合に限定すべきである。
◆株主総会の特別決議によらない有利発行
会社法は、公開会社について授権資本制度を採用しており、発行可能株式総数の範囲
ならば取締役会が原則として自由に株式を発行できるとしている(37条、201条)。
すなわち、公開会社の新株発行は業務執行に準ずるものといえ、有利発行についての株
主総会特別決議要件は、取締役会の権限行使についての内部的意思決定の問題にすぎな
い。したがって、株主総会特別決議を経ていないことは未だ重大な瑕疵とはいえず、株
式取引の安全の要請が優先するため、無効原因とならないと解する(最判昭和 46.7.16)。
◆非公開会社における株主総会決議の欠缺
非公開会社における株主総会決議の欠缺は、新株発行の無効原因になるものと解すべ
きである(最判平成 24.4.24)。
なぜなら、①通知・公告制度(201条3項・4項)がない非公開会社の新株発行に
おいては、株主総会が唯一の情報公開の場であるところ、これがなされていない場合に
は、株主は新株発行に関する情報を入手することができず、差止請求(210条)によ
る事前救済を期待することができない反面、②非公開会社においては株式の流通性が乏
しく、取引安全の要請が小さいといえるからである。
◆瑕疵ある取締役会決議に基づく新株発行
会社法は、公開会社について授権資本制度を採用しており、発行可能株式総数の範囲
ならば取締役会が原則として自由に株式を発行できるとしている(37条、201条)。
すなわち、公開会社の新株発行は業務執行に準ずるものといえ、取締役会決議は、内部
的意思決定の問題にすぎない。したがって、取締役会決議を経ていないことは未だ重大
な瑕疵とはいえず、株式取引の安全の要請が優先するため、無効原因とならないと解す
る(最判昭和 36.3.31)。
◆著しく不公正な方法による新株発行
著しく不公正な方法でなされた新株発行も有効であり、無効原因にならないと解する
(最判平成 6.7.14)。なぜなら、「著しく不公正」な発行であるか否かの基準は明確でな

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会社法 まとめノート

く外部からは容易に知りえないため、取引の安全を優先すべきであるからである。
「著し
く不公正な方法」による発行の瑕疵は、本来差止請求によって救済されるべきものであ
るから(201条2号)、発行後は取引の安全を優先すべきである。
◆公告の瑕疵(公示義務違反)
そもそも、公開会社における通知・公告の義務(201条3項、4項)は、既存株主
に対して新株発行の事前差止の機会を保障するためにあるものであるから、これを怠る
瑕疵は重大であり、原則として無効原因になると解する。もっとも、事後的にみて差止
事由が存在しなかった場合には、公告通知の瑕疵により、株主の差止めの利益がないが
しろにされたとはいえないから、会社が差止事由のないことを立証した場合には、無効
原因にならないと解すべきである(最判平成 9.1.28)。
◆差止仮処分に違反した新株発行
差止めの仮処分に違反した新株発行は無効であると解する。なぜなら、これを有効と
すると、株主に差止請求権を与え、その利益保護を図ろうとする210条の趣旨を完全
に没却することになるからである(最判平成 5.12.16)。
(4)株式発行等不存在確認の訴え(829条1号)
ア.原告適格:確認の利益を有する者(株主等に限られない)
イ.提訴期間:提訴期間の制限なし
ウ.不存在事由:①実際の払込がない新株発行
②代表取締役でない者によってなされた新株発行 など
◆新株発行不存在確認の訴え〜決議不存在事由
829条の「行為が存在しない」という要件は、規範的要件であり、およそ物理的に
行為が存在しない場合のほか、行為の手続的瑕疵が著しく重大であり。そのために当該
行為が法律上存在するとは認められないような場合も含まれる(評価としての不存在)。
3 特殊の新株発行
(1)意義:払込みを伴う新株発行(通常の新株発行)以外の新株発行
(2)種類:①株式の分割・併合(183条、189条)
②株式無償割当て(185条)
③新株予約権の行使(236条)
④吸収合併(749条)、吸収分割(757条)、株式交換(767条)
(3)通常の新株発行との異同:①払込みがなされない(資本が増加しない)
②多くは既存株主に対してなされるので、株主保護の要請がない

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会社法 まとめノート

Ⅱ 新株予約権
1 新株予約権の意義
(1)意義:新株予約権者が、株式会社に対してこれを行使したときに、会社から株式の交付を受け
ることができる権利(2条21号)
(2)趣旨:①取締役や従業員に対してストック・オプションとして付与(インセンティブ報酬)
②資金調達の便宜(新株予約権付社債の形が多い)
③株主優待策
④会社買収に対する防衛策
2 募集新株予約権の発行手続
(1)公開会社の場合
ア.原則:取締役会の決議(240条1項、238条1項・2項)
イ.例外:第三者に対する有利発行(特に有利な条件・金額)の場合(240条1項)
①理由の説明(238条3項)
②株主総会の特別決議(238条2項、309条2項6号)
◆「特に有利な金額」(238条3項2号)の意味
会社法238条3項2号にいう「特に有利な金額」による募集新株予約権の発行とは、
公正な払込金額よりも特に低い価額による発行をいうところ、募集新株予約権の公正な
払込金額とは、現在の株価、行使価額、行使期間、金利、株価変動率等の要素をもとに
オプション評価理論に基づき算出された募集新株予約権の発行時点における価額(以下
「公正なオプション価額」という。)をいうと解されるから、公正なオプション価額と取
締役会において決定された払込金額とを比較し、取締役会において決定された払込金額
が公正なオプション価額を大きく下回るときは、原則として、募集新株予約権の有利発
行に該当すると解すべきである(東京地判平成 18.6.30)。
(2)非公開会社の場合:株主総会の特別決議+有利発行の場合は理由の説明(238条3項、3項)
3 新株予約権の管理・譲渡
(1)新株予約権の譲渡
ア.原則:新株予約権の譲渡は原則として自由(254条)
..
イ.例外:譲渡制限を新株予約権の内容として定めることができる(236条1項6号)
※定款による譲渡制限でない点に注意。また、株式の譲渡制限とは異なり、買受人
指定請求は認められていない→事実上の譲渡禁止が可能。
(2)新株予約権に関する諸手続
ア.払込み:金銭以外の財産の給付(代物弁済)、相殺が認められる(246条1項、2項)
募集株式発行と異なり払込日ではなく割当日に新株予約権となる(245条1項)
もっとも、払込がない場合には、新株予約権を行使できず(246条3項)、行使
することができない新株予約権は消滅する(287条)。

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会社法 まとめノート

イ.新株予約権の行使(280条1項)
ウ.新株予約権の無償割当て(277条以下)
趣旨:行使価格を低くし、敵対的買収に対する防衛策(ポイズン・ピル)として利用する
4 違法な募集株式発行に対する救済手段
(1)新株予約権発行の差止請求(247条)
ア.趣旨:法令・定款違反または著しく不公正な方法での発行により既存株主が被る株主個人
の不利益(持分比率・配当金額の低下)の回避
イ.原告適格:新株発行により不利益を受けるおそれのある株主
ウ.新株発行差止事由:①「法令又は定款に違反する場合」(1号)
②「著しく不公正な方法により行われる場合」(2号)
◆「著しく不公正な方法」の意義
「著しく不公正な方法」とは、不当な目的を達成する手段をいう。
そして、会社経営陣は株主に選ばれる立場であり、自らが株主を選ぶ立場にないから、
募集株式の発行が、特定の株主の持株比率を低下させ現経営者の支配権を維持すること
を主要な目的としてなされたと評価できる場合には、原則として「著しく不公正な方法」
にあたると(主要目的ルール)。
もっとも、経営支配権の維持・確保を主要な目的とする場合であっても、株主全体の
利益の保護という観点から、新株予約権の発行を正当化する特段の事情があれば、例外
的に不公正発行にあたらないと解すべきである。すなわち、①買収者がグリーンメイラ
ーである場合、②焦土化経営を行う目的で株式買収を行う場合、③経営権取得後会社資
産を流用する目的がある場合、④会社の資産を売却処分して一時的に高額配当を得よう
とする目的がある場合などが上記「特段の事情」に該当しうる(東京高決平成 17.3.23)。
◆差別的行使条件を付した新株予約権の無償割当てと株主平等原則
〜特定の株主につき差別的行使条件を付した新株予約権無償割当てに対し、①株主平等
原則違反(109条1項)の法令違反または②「著しく不公正な方法」にあたるとして、
差止請求(247条1号類推適用)が認められるか?
(ⅰ)新株予約権無償割当てに対する247条類推適用の可否
新株予約権予約権の無償割当ては、通常株主の持株比率を変動させず、株主に経済的
不利益を与えることはないから、募集新株予約権の発行の場合のような差止めの規定(2
47条)は設けられていない。
しかし、新株予約権予約権には差別的行使条件を付することが可能であり、差別的行
使条件の付された新株予約権予約権の無償割当ては、特定の株主が持分比率の低下とい
う不利益を受けるおそれがある点で、募集新株予約権の発行を異なるところはない。し
たがって、247条を類推適用して差止めをすることができると解する(最決平成 19.8.7)。

74

会社法 まとめノート

(ⅱ)株主平等原則違反の点について
株式は均一の割合的単位の形式をとっており、株式投資の予測可能性を担保する必要
があることから、会社は合理的な理由のない限り、株主を平等に取り扱わなければなら
ない(109条1項)。このように、株主平等の原則は個々の株主の利益を保護するため
の制度であるが、他方で、個々の株主の利益は会社の存続・発展なしには考えられない。
したがって、特定の株主による経営支配権の取得に伴い、会社の存立・発展が阻害さ
れるおそれが生じるなど、会社の企業価値が毀損され、会社の利益ひいては株主の共同
の利益が害されることになるような場合には、その防止のために当該株主を差別的に取
り扱ったとしても、当該取扱いが衡平の理念に反し、相当性を欠くものでない限り、こ
れを直ちに同原則の趣旨に反するものということはできない。
そして、会社の企業価値が毀損され、会社の利益・株主の共同の利益が害されること
になるか否は、最終的には、会社の利益の帰属主体である株主自身によって判断される
べきものであるから、株主総会の判断は尊重されるべきである(最決平成 19.8.7)。
(ⅲ)「著しく不公正な方法」の点について
「著しく不公正な方法」とは、不当な目的を達成する手段をいう。そして、会社経営
陣は株主に選ばれる立場であり、自らが株主を選ぶ立場にないから、募集株式の発行が、
特定の株主の持株比率を低下させ現経営者の支配権を維持することを主要な目的として
なされたと評価できる場合には、原則として「著しく不公正な方法」にあたると解する
(主要目的ルール)。
もっとも、特定の株主による経営支配権の取得に伴い、会社の存立・発展が阻害され
るおそれが生じるなど、会社の企業価値が毀損され、会社の利益ひいては株主の共同の
利益が害されることになるような特段の事情がある場合には、もはや不当な目的とはい
えず「著しく不公正は方法」にあたらないと解する。
そして、会社の企業価値が毀損され、会社の利益・株主の共同の利益が害されること
になるか否は、最終的には、会社の利益の帰属主体である株主自身によって判断される
べきものであるから、株主総会の判断は尊重されるべきである(最決平成 19.8.7)。
(2)新株予約権者・取締役等の差額支払義務(285条。286条)
(3)新株予約権発行無効の訴え(828条1項4号)→新株発行の場合と同様に考える
(4)新株予約権発行不存在確認の訴え(829条3号)→新株発行の場合と同様に考える

75

会社法 まとめノート

Ⅲ 社債
1 総説
(1)社債の意義:会社を債務者とする金銭債権であって、所定事項の定めに従い償還されるものを
いう(2条23号) ※株式会社以外の会社(持分会社)も社債を発行できる
(2)社債の趣旨:資金調達という点では募集株式の発行と同じであるが、社債によればコストを軽
減でき、既存の株主の配当率等に影響をおよぼすことがなく、課税上も有利である。
社債は会社が負担する債務という意味では、通常の借入金と変わらないが、その大
量的・定型的・公衆的・長期的特殊性から、会社の資産状態を害する危険があるこ
とに注意しなければならない。
(3)株式との共通点・相違点
ア.共通点:資金調達の方法、投資の対象である
イ.相違点:①社債は会社に対する債権である(他人資本)
②社債は単なる金銭債権であり会社の社員たる地位ではない(経営に参加しない)
③社債権者は会社の利益にかかわらず一定額の利息請求ができる(676条3号)
④社債権者は元本の償還(払戻し)を受けることができる(676条4号)
(4)株式との接近化:①議決権制限種類株式(108条1項3号)
②取得条項付株式(108条1項6号)
③配当優先株(108条1項1号)
④新株予約権付社債(236条、238条1項)
2 社債の発行
(1)社債発行の制限:平成17年改正により、社債発行に関する制限は全て撤廃された
(2)社債発行の手続:①取締役会の決議(362条4項5号反対解釈)
→社債発行は会社の業務執行行為
②社債管理者の設置・委託(702条本文)
③発行の方法:総額引き受け or 公募
④申込み(677条2項)・引受け(678条)→社債成立
⑤払込み(676条10号) ※払込みがなくても社債は成立する
現物出資×、分割払い・相殺・代物弁済はOK
◆取締役会決議(362条4項5号)を欠く社債発行の効力
そもそも、362条4項が取締役会の決議事項を定めた趣旨は、重要な業務執行につ
いての意思決定を慎重にし、もって会社の利益を保護する点にある。
とすれば、取締役会決議の欠缺による当該取引の無効は、原則として会社のみが主張
することができ、会社以外の者は、当該会社の取締役会が上記無効を主張する旨の決議
をしているなどの特段の事情のない限り、これを主張することはできないというべきで
ある。 ※取締役会決議を経ない「重要な財産の処分」と同様に考える

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会社法 まとめノート

3 社債権者の権利
(1)権利の内容:社債権者は、期限が到来すれば償還を受け、それまでの間は利息の支払いを受け
る権利を有する
(2)社債券・社債原簿・社債の移転
ア.社債券:社債権者の社債契約上の権利を表章する有価証券。社債券は、その発行する旨の
定めのある社債を発行した日以後、遅滞なく発行されなくてはならない(696条)
イ.社債原簿:社債・社債券に関する事項を明らかにすることを目的とする帳簿(681条)
ウ.社債の移転:社債の譲渡は、意思表示のみによって行われる。無記名社債の譲渡について
は、社債券の交付を効力要件とし(687条)、質入れについては社債券の引渡し
を効力要件とし(692条)、継続的占有が第三者対抗要件となる(693条2項)。
記名社債の譲渡における会社その他の第三者への対抗要件は、社債原簿への記載・
記録であり(688条1項)、質入れも同様(693条1項)。
4 社債管理者
(1)意義:社債発行会社から委託を受け、社債権者のために社債の管理にあたる者をいう。
会社は社債を発行するときは、原則として社債管理者を設置し、社債の管理を委託しな
ければならない(702条)。社債管理者は銀行、信託会社又はこれに準ずる者に限られ、
証券会社はなることができない(703条)。
(2)権限:必要な一切の裁判上・裁判外の行為をなす権限を有する(705条1項)
(3)義務:社債権者のために公平かつ誠実に社債の管理をなす義務を負う(704条1項)。社債管
理者が、会社又は社債権者集会の決議に違反する行為をなし、これによって社債管理者
に損害を与えたときは、社債管理者は損害賠償責任を負う(710条1項)。
5 社債権者集会
(1)意義:同一種類の社債権者によって構成され、社債権者の利害に重大な関係のある事項につい
て決議をする合議体(715条、716条)
(2)社債権者集会の決議の効力:裁判所の許可が効力発生要件(734条1項)
6 新株予約権付社債
(1)意義:社債発行会社の新株予約権が付与されている社債
(2)趣旨:社債権者として安全な地位を有するが、会社の業績が上がれば新株予約権を行使して株
にしとして有利な地位を取得できるものであり、社債の堅実性と株式の投機性を併せ有
している。会社の資金調達の便宜のため、広く利用される。
※新株予約権付社債は株式会社にしか認められないため、新株予約権に関する項目の中
に規定されている。
(3)発行の手続
ア.原則:取締役会の決議(240条1項、238条1項6号・2項)
イ.例外:第三者に対する有利発行(特に有利な条件・金額)の場合(240条1項)

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会社法 まとめノート

①理由の説明(238条3項)
②株主総会の特別決議(238条2項、309条2項6号)
(4)新株予約権付社債の譲渡・行使
ア.譲渡:新株予約権付社債の譲渡は、意思表示のみでなしうるが、新株予約権あるいは社債
だけの譲渡はできない(254条2項、3項)
イ.行使:新株予約権を行使しようとする者は、新株予約権付社債券を会社に提示しなければ
ならない(280条3項)。
新株予約権の行使により社債が消滅するとき(転換型社債)は、新株予約権者は新
株予約権付社債券を会社に提出しなければならない(280条4項)。

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会社法 まとめノート

組織再編

【会社法第5編の構成】
第1章 組織変更
第2章 合併(748条〜756条)
第3章 会社分割(757条〜766条)
第4章 株式交換・株式移転(767条〜774条)
第5章 手続
第1節 組織変更の手続(775条〜781条)
第2節 承継型組織再編
第1款 消滅会社の手続(782条〜793条)
第2款 存続会社の手続(794条〜802条)
第3節 新設型組織再編
第1款 消滅会社の手続(803条〜813条)
第2款 設立会社の手続(814条〜816条)

Ⅰ 事業譲渡等
1 事業譲渡
(1)意義:
◆467条の事業譲渡の意味
会社法467条1項1号の事業譲渡は、会社法21条1項(商法16条)の事業譲渡
は同一内容であり、①組織的・有機的一体として機能する財産の全部又は重要な一部を
譲渡し、②これによって事業活動を全部又は重要な一部を譲受人に引き継がせ、③譲渡
会社が競業避止義務を負う結果となるものをいう(最大判昭和 40.9.22)。
もっとも、21条1項は任意規定に過ぎないから、③の競業避止義務は特約で排除す
ることが可能である。
(2)趣旨:本来、事業譲渡は業務に関する取引行為であり、取締役会のみで決定できるはずである
が、事業譲渡は会社の業務のあり方に重要な影響を及ぼす問題であることから、株主を
保護する必要があるため、株主総会の特別決議を要するものとした。
(3)手続
ア.譲渡会社:①重要な財産の処分についての取締役会の決議(362条4項1号)
②株主総会の特別決議(467条1項1号・2号、309条2項11号)
※例外:①譲渡する事業が総資産額の5分の1以下の場合(簡易手続、46

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会社法 まとめノート

7条1項2号かっこ書き)、②譲受会社が特別支配会社である場合
(略式手続、468条1項)の場合には、株主総会特別決議は不要
③反対株主の株式買取請求権(469条、470条)
④免責的債務引受である場合には債権者の同意が必要
イ.譲受会社:①重要な財産の譲り受けについての取締役会の決議(362条4項1号)
② 「事業の全部の譲受け」である場合には、株主総会の特別決議(467条1
項3号、309条2項11号)
※例外:①事業の一部の譲受けである場合(467条1項3号反対解釈)、②
譲受する事業が総資産額の5分の1以下の場合(簡易手続、467
条2項)、③譲受会社が特別支配会社である場合(略式手続、468
条1項)の場合には、株主総会特別決議は不要
③「事業の全部の譲受け」の場合には、反対株主の株式買取請求権(469条)
④免責的債務引受である場合には債権者の同意が必要
ウ.個々の財産移転手続:事業譲渡は合併と異なり、取引行為であるから、事業に属する個々
の財産については個別の移転手続(対抗要件の具備等)が必要である。
(4)手続違反の効力
◆承認を欠いた事情譲渡の効力
そもそも、事業譲渡に株主総会特別決議を要求したのは、事業譲渡が株主に直接で重
大な影響を与えるからである。このような趣旨に鑑みると、株主総会決議を欠く事業譲
渡は、譲受人の善意・悪意を問わず無効であると解すべきである(最大判昭和 40.9.22)。
もっとも、譲受人からの無効主張は、信義則上制限されうる(最判昭和 61.9.11)。
◆事業譲渡の差止め
特別利害関係人による著しく不当な決議を理由に株主総会決議取消の訴えを提起し
(831条1項3号)、これを本案として、決議の効力停止の仮処分(民事保全法23条
2項)を申し立てるべきである。
2 事後設立
(1)意義:会社の成立前から存在する財産を、会社成立後2年以内に、事業のため継続して使用す
べきものとして、純資産の5分の1を超える対価で取得する契約(467条1項5号)
※検査役の調査が不要なので、財産引受(28条2号)の代替的手段として用いられる
(2)手続:株主総会の特別決議(467条1項5号)

Ⅱ 合併
1 総説
(1)意義:2つ以上の会社が契約によって1つの会社に合体する行為
(2)趣旨:①競争を排除して市場における独占的支配を確立すること cf 独禁法の企業結合規制

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会社法 まとめノート

②経営の合理化
③倒産寸前の会社の救済
(3)種類
ア.吸収合併:当事会社の1つが存続し、他の当事会社が解散して、存続会社が解散会社の財
産及び社員を収容する合併(2条27号)
イ.新設合併:当事会社の全てが解散し、別に新会社を設立して、解散会社の財産及び社員が
新会社によって収容される合併(2条28号)
◆三角合併(平成17年改正)
吸収合併において、消滅会社の株主に、合併対価として存続会社の親会社の株式を交
付する合併をいう。平成17年改正により認められるようになった(749条1項2号
ホ、800条参照)。甲会社が丙会社を設立し(100%完全親子会社)、丙会社を存続
会社、乙会社を消滅会社とする吸収合併を行い、乙会社の株主に合併対価として甲会社
の株式を与える。これにより、甲は丙の完全親会社となり、株式移転・株式交換と同じ
結果をもたらすが、甲の株主総会が不要である点、甲の株主から株式買取請求権を行使
されることがないという点でメリットがある。
(4)合併の法的性質:法人格の合一を目的とする組織法上の特別の契約(人格合一説)
2 通常の合併手続
(1)合併契約の締結:当事会社の代表取締役が合併契約を締結(748条)
(2)事前の開示:会社は一定期間、合併契約書を本店に備え置かなければならない。株主・会社債
権者は、営業時間内はいつでも合併契約の閲覧・謄抄本の交付請求ができる(78
2条、794条、803条、815条)。
(3)株主総会の特別決議
ア.吸収合併の場合
(ⅰ)消滅会社:原則:株主総会の特別決議(783条1項、309条2項12号)
例外:存続会社が消滅会社の特別支配会社の場合(略式合併、784条1項)
合併の場合は簡易合併の適用はなし(784条3項)
(ⅱ)存続会社:原則:株主総会の特別決議(795条1項、309条2項12号)
例外:消滅会社が存続会社の特別支配会社の場合(略式合併、796条1項)
対価が総資産額の5分の1以下の場合(簡易合併、796条3項)
イ.新設合併の場合
(ⅰ)消滅会社:原則:株主総会の特別決議(804条1項、309条2項12号)
例外:合併の場合はなし(805条)
(ⅱ)新設会社:特になし
(4)債権者異議手続:会社債権者は、会社に対し、合併について異議を述べることができる(78
9条1項1号、799条1項1号、810条1項1号)。これを担保するため、会社

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会社法 まとめノート

は合併につき官報で広告し、かつ、知れている債権者には格別に催告しなければな
らない(789条2項、799条2項、810条2項)。ただし、官報公告に加えて
日刊新聞 or 電子公告による公告も行った場合には、格別の催告は不要となる(78
9条3項、799条3項、810条3項)。
(5)反対株主の株式買取請求権
ア.吸収合併の場合
(ⅰ)消滅会社: 反対株主の株式買取請求権(785条)、新株予約権買取請求権(787条)
(ⅱ)存続会社: 反対株主の株式買取請求権(797条)
イ.新設合併の場合
(ⅰ)消滅会社:反対株主の株式買取請求権(806条)、新株予約権買取請求権(808条)
(ⅱ)新設会社:なし
ウ.株式買取価格の算定〜「公正な価格」の意味
◆反対株主の株式買取請求における「公正な価格」の意味
「公正な価格」という単純な文言は、平成17年改正前商法における「ナカリセバ」
との文言が削除されて生じたものであることから、組織再編等によるシナジーその他の
企業価値増加の適正な分配分まで反対株主に保障する趣旨であるといえる。
もっとも、買取価格が、もしナカリセバ価格を下回ることを許せば、少なくとも企業
再編がなければ認められていた価格の払い戻しを受けて、株主が会社から退出する機会
を奪うことになり、株式買取請求制度の趣旨を没却する。
そこで、
「公正な価格」とは、組織再編等による企業価値増加分を適正に分配した場合
に実現する株式の価格(シナジー適正分配価格)と、ナカリセバ価格のいずれか高い額
をいうものと解する(最決平成 23.4.19)。
◆「公正な価格」の算定基準時
そもそも、株式買取請求権を行使した時点で、売買契約が成立したのと同様の法律関
係が生じるのであるから、買取価格も、当該売買の成立時点における株式の価値によっ
て決まると解するのが最も自然である。したがって、買取請求の日が「公正な価格」の
基準時というべきである(最決平成 24.4.29)。
※ シナジー適正分配価格と「ナカリセバ」価格とで別異に解する必要はない。
※ これに対し、反対株主間の平等及び会社の事務処理上の便宜のため、基準日は統一す
るほうがよいという考慮から、買取請求期間の満了時を基準時とする有力説もある。
◆シナジー適正分配価格の算定方法
組織再編の当事者が互いに独立した関係にある場合においては、各当事者があえて自
社の株主に不利な条件で取引することは通常考えられない。したがって、不実の情報開
示や取引のプロセスに不適切な点があったなどの特段の事情のない限り、当事会社が交
渉の上で実際に決めた組織再編の条件がシナジーを適正に配分する条件であり、それに

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会社法 まとめノート

よって形成された基準時における実際の市場価格をもって、シナジー適正配分価格とい
うべきである。
※ 「相互に特別の資本関係がない会社間において,株主の判断の基礎となる情報が適切
に開示された上で適法に株主総会で承認されるなど一般に公正と認められる手続に
より株式移転の効力が発生した場合には,当該株主総会における株主の合理的な判断
が妨げられたと認めるに足りる特段の事情がない限り,当該株式移転における株式移
転比率は公正なものとみるのが相当である。…株式が上場されている場合,…株式移
転により企業価値の増加が生じないときを除き,反対株主の株式買取請求に係る「公
正な価格」を算定するに当たって参照すべき市場株価として,基準日である株式買取
請求がされた日における市場株価や,偶発的要素による株価の変動の影響を排除する
ためこれに近接する一定期間の市場株価の平均値を用いることは,当該事案に係る事
情を踏まえた裁判所の合理的な裁量の範囲内にあるといえる。」(最決平成 24.2.29)
※ 経営陣の参加する買収(MBO)や上場子会社の完全子会社化など、組織再編の当事
者が互いに独立の者とはいえない場合には、市場価格を株式価値の算定基礎に用いる
ことに慎重な配慮が必要である。
◆「ナカリセバ」価格の算定方法
組織再編の当事者が互いに独立した関係にある場合において、不実の情報開示や取引
のプロセスに不適切な点があったなどの特段の事情のないときは、ナカリセバ価格がシ
ナジー適正配分価格を上回ることはないというべきである。したがって、シナジー適正
配分価格(≒市場価格)が「公正な価格」となる。
※ 「吸収合併等により企業価値が増加も毀損もしないため,当該吸収合併等が消滅株式
会社等の株式の価値に変動をもたらすものではなかったときは,その市場株価は当該
吸収合併等による影響を受けるものではなかったとみることができるから,株式買取
請求がされた日のナカリセバ価格を算定するに当たって参照すべき市場株価として,
同日における市場株価やこれに近接する一定期間の市場株価の平均値を用いること
も,当該事案に係る事情を踏まえた裁判所の合理的な裁量の範囲内にあるものという
べきである。」(最決平成 23.4.19)
◆近時の3つの最高裁判決
最決平成 23.4.19(TBS):企業価値の増加も毀損もなし→ナカリセバ価格
最決平成 23.4.26(インテリジェンス):企業価値の増加も毀損もなし→ナカリセバ価格
最決平成 24.2.29(テクモ):企業価値増加あり+独立当事者間→シナジー適正分配価格
(6)効力の発生:吸収合併:合併契約で定めた効力発生日(750条1項、752条1項)
新設合併:設立会社の成立=登記の日(754条1項、756条1項、49条)
3 合併の効果
(1)吸収合併:①吸収合併存続会社は、効力発生日に、吸収合併消滅会社の権利義務を包括的に承

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会社法 まとめノート

継する(750条1項、752条1項)。
②吸収合併消滅会社の株主(社員)は、対価として与えられるものの種類に従い、
存続会社の株主・社債権者・新株予約権者となり、あるいは現金の受領者となる(7
50条3項、752条3項)。
③消滅会社は、清算手続を経ずに直ちに解散する(475条1号、471条4号)
④消滅会社の社員は、原則として当然に存続会社の社員となる(749条1項2号)
(2)新設合併:①新設合併設立会社は、その成立の日に、新設合併消滅会社の権利義務を包括的に
承継する(754条1項、756条1項)。
②新設合併消滅会社の株主(社員)は、対価として与えられるものの種類に従い、
存続会社の株主・社債権者・新株予約権者となり、あるいは現金の受領者となる(7
54条2項・3項、756条2項・3項)。
③当時会社は、清算手続を経ずに直ちに解散する(475条1号、471条4号)
④当時会社の社員は、原則として当然に新設会社の社員となる(753条1項6号)
4 合併無効の訴え(828条1項7号、8号)
(1)趣旨:合併には、会社・株主・債権者等多数の利害関係人が関与しており、合併を前提として
多数の法律関係が形成されるから、瑕疵のある合併を一般則通り無効とすると、利害関
係人に不測の損害を被らせ、法的安定性を害する。そこで、会社を巡る法律関係の画一
的処理と法的安定性を図るため、合併無効の訴えの制度が設けられた。
(2)原告適格:
ア.吸収合併:当事会社の株主、取締役、監査役、執行役、清算人、社員、破産管財人、吸収
合併を承認しなかった(=異議を述べた)債権者(828条2項7号)
イ.新設合併:当事会社の株主、取締役、監査役、執行役、清算人、社員、破産管財人、新設
合併を承認しなかった(=異議を述べた)債権者(828条2項8号)
(3)要件:①合併の効力発生日から6ヶ月以内(828条1項7号、8号)
②合併の無効原因
◆合併無効の訴えの無効原因
(ⅰ)一般論
合併の無効原因について明文の規定はない。もっとも、いったん合併が成立するとそ
れを前提に多数の法律関係が形成され取引安全の要請がある一方、株主等の利益は株主
総会決議や反対株主の株式買取請求制度によって手続的に保護されているといえるから、
軽微な瑕疵によって無効とすべきではない。したがって、合併の無効原因は、株主等の
利益保護の手続的保障をないがしろにするような重大な瑕疵に限定すべきである。
(ⅱ)合併比率の不公正
合併比率の不公正それ自体に対する既存株主の救済は、反対株主の株式買取請求権行
使によって金銭的補償が受けられることや、取締役の忠実義務違反に基づく損害賠償請

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会社法 まとめノート

求(355条、423条1項)によって確保されるべきであるから、これだけで無効原
因とすべき重大な瑕疵があったとはいえない(東京高判平成 2.1.31)。
※ 合併比率:合併条件のうち、合併対価が存続会社の株式である場合に、消滅会社の株
主に対して交付される存続会社株式の比率
(ⅲ)取締役会決議の欠缺
合併契約の締結は「重要な財産の処分及び譲受け」に該当するから、取締役会の決議
が必要である(362条4項1号)。そして、取締役会決議を欠く代表取締役の行為も原
則として有効であるが、取締役会決議を欠缺につき相手方が悪意又は有過失である場合
には、取引の安全を保護する必要はないから、民法93条但書の類推適用により、会社
は取引行為の無効を主張することができると解すべきである(最判昭和 40.9.22)。
したがって、取締役会決議の欠缺につき相手方が悪意又は有過失の場合には、合併の
無効原因となる。
(ⅳ)特別利害関係人による著しく不当な決議(合併承認決議の取消事由)
合併承認の株主総会決議に取消事由があることは、株主の適切な意見反映がなされて
おらず、株主の利益保護の手続的保障をないがしろにするものであるから、無効原因と
なるべき重大な瑕疵といえる。
なお、株主総会決議取消しの訴えは形成訴訟であるが、合併の効力発生によって合併
無効の訴えに吸収されると考え、決議取消事由を無効原因として主張するために決議取
消訴訟での勝訴を経る必要はないと解する(吸収説、最判昭和 40.6.29)。
もっとも、831条1項柱書が3ヶ月の提訴制限をして法的安定性を確保している趣
旨に鑑み、上記機関経過後は当該取消事由を無効原因として主張することはできない(無
効の訴えそのものは不適法にはならない)。
◆合併の差止め
(ⅰ)略式合併の場合→784条2項(消滅会社)、795条2項(存続会社)
(ⅱ)360条に基づく差止め
合併対価として存続会社の株式のみを交付している場合には会社財産の流出はなく、
合併対価に不公正があり株主間の利益移転が発生したとしても、会社に損害は観念でき
ない。したがって、
「会社に著しい損害」が生じることを要件とする360条1項の差止
めを請求することはできない。
これに対し、合併対価が金銭その他の財産である場合において、合併対価に関する定
めが不公正である場合には、会社財産が過剰に流出しており、損害が発生しているとい
えるから、360条1項による差止請求が認められうる。
(ⅲ)210条の類推適用による差止め
吸収合併において、合併対価として吸収会社に存続会社の株式が交付される点を捉え、
210条の類推適用によって合併を差止めることができるとする見解がある。

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会社法 まとめノート

もっとも、この場合には210条1号又は2号の要件を満たす必要があり、支配権維
持目的のない場合には要件を充足しない(主要目的ルール)。
(ⅳ)仮の地位仮処分の申立による差止め
そこで、特別利害関係人による著しく不当な決議を理由とする株主総会決議取消の訴
え(831条1項3号)を本案として、民事保全法に基づく仮の地位仮処分として決議
の効力停止の仮処分の申立てをする方法が考えられる(民事保全法23条2項)。この場
合、①保全すべき権利の存在(=株主総会特別決議の取消事由)と②保全の必要性を疎
明する必要がある(同法13条2項)。

Ⅲ 会社分割
1 総説
(1)意義:1つの会社を2つ以上の会社に分けること
(2)趣旨:①多角経営化した大企業の一部門を分離・専業化することにより経営を効率化する
②不振部門・新製品開発部門などを独立させて企業努力を促進させる
③他の会社の同じ部門とともに合併企業を作る
(3)種類
ア.吸収分割:株式会社または合同会社がその事業に関して有する権利義務の全部又は一部を
分割後、すでに存在する他の会社に承継させること(2条29号)
イ.新設分割:1または2以上の株式会社または合同会社がその事業に関して有する権利義務
の全部又は一部を分割により設立する会社に承継させること(2条30号)
◆人的分割と物的分割
新設分割と吸収分割のいずれにも、①設立(あるいは承継)する会社かが分割に際し発行
する株式を、分割する会社の株主に割り当てる方法(分割型=人的分割)と、②設立(あ
るいは承継)する会社が分割に際し発行する株式を、分割する会社に割り当てる方法(分
社型=物的分割)があるとされた。
会社去(平成17年改正)は物的分割のみ制度化し、人的分割を廃止した。人的分割は、
物的分割+株主に対する剰余金の配当として再編成された。ただし、剰余金の配当規制
の適用はない(792条2号。812条2号)。
2 会社分割の手続
(1)分割契約の締結:当事会社の代表取締役が吸収分割契約を締結(757条)
新設分割の場合は、新設分割計画書を作成(762条)
(2)事前の開示:会社は一定期間、分割契約書を本店に備え置かなければならない。株主・会社債
権者は、営業時間内はいつでも分割契約の閲覧・謄抄本の交付請求ができる(78
2条1項2号、794条3項、803条1項2号、815条3項2号)。
(3)株主総会の特別決議

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会社法 まとめノート

ア.吸収分割の場合
(ⅰ)消滅会社:原則:株主総会の特別決議(783条1項、309条2項12号)
例外:存続会社が消滅会社の特別支配会社の場合(略式手続、784条1項)
対価が総資産額の5分の1以下の場合(簡易手続、784条3項)
(ⅱ)存続会社:原則:株主総会の特別決議(795条1項、309条2項12号)
例外:消滅会社が存続会社の特別支配会社の場合(略式手続、796条1項)
対価が総資産額の5分の1以下の場合(簡易合併、796条3項)
イ.新設分割の場合
(ⅰ)消滅会社:原則:株主総会の特別決議(804条1項、309条2項12号)
例外:対価が総資産額の5分の1以下の場合(簡易手続、805条)
(ⅱ)新設会社:特になし
(4)債権者異議手続:一定の会社債権者は、会社に対し、合併について異議を述べることができる
(789条1項2号、799条1項2号、810条1項2号)。これを担保するため、
会社は合併につき官報で広告し、かつ、知れている債権者には格別に催告しなけれ
ばならない(789条1項、799条1項、810条1項)。ただし、官報公告に加
えて日刊新聞による公告も行った場合には、格別の催告は不要となる(789条3
項、799条3項、810条3項)。
◆債権者異議手続の対象となる債権者
①分割会社に対して債務の履行(当該債務の保証人として承継会社と連帯して負担す
る保証債務の履行を含む)を請求することができない分割会社の債権者(787条1項
2号・810条1項2号)
②人的分割(分割会社が分割対価である承継会社・新設会社の株式を剰余金の配当また
は全部取得条項付種類株式の取得の対価として分割会社の株主に分配する場合)にお
ける分割会社の債権者(789条1項2号・810条1項2号の各括弧書き)
③承継会社の債権者(799条1項2号)
◆債権者異議手続の対象とならない債権者
会社分割後に分割会社に対して債務の履行を請求できる債権者(=物的分割において分
割会社に残存する債権者)は対象とならない。分割会社が承継会社・設立会社から移転し
た純財産の額に等しい対価として発行株式等の交付を受けるなど、表面的には分割会社
の資産内容に変化がないと考えられていたからである。
もっとも、対価として交付される株式が非上場株式である場合には、その財産評価や
換価などに著しい困難を伴うから、会社財産の共同担保としての価値は実質的には毀損
されることになり、債権者の債権者を害するおそれがある。

87

会社法 まとめノート

◆会社分割における会社債権者(不法行為債権者)の地位とその保護
(ⅰ)吸収分割会社に対する履行請求(759条2項)
〜不法行為債権者が「各別の催告をしなければならないもの」にあたるか?
Pは吸収分割承継会社に免責的債務引受される債権者であるから、異議を述べること
ができる債権者にあたる(789条1項2号)。〜契約内容から事実認定する。
もっとも、Pは甲社に知られていない不法行為債権者であるから、そもそも個別催告
は不要であり(789条2項)、これに該当しないとも思える。
しかし、759条2項の趣旨は、各別の催告を受けていない手続保障が不十分な債権
者を保護する点にある。そして、会社と取引関係にない不法行為債権者は、会社に知れ
ているか否かを問わず、公告によるチェックを期待できず、事前の自衛策も取り得ない
ことからして、本来ならば十分な手続保障として各別の催告をなすべきところ、789
条2項は、会社分割の円滑化の観点から、
「知れている」不法行為債権者に各別の催告を
要求したに過ぎない。知れていない不法行為債権者であっても、その利益保護の要請は、
知れている場合と差はないというべきである。そこで、789条2項の「各別の催告を
しなければならないもの」とは、
「仮に分割会社に知れていれば各別の催告をしなければ
ならないもの」という意味と解すべきである(有力説)
本件Pはこれにあたり、各別の催告を受けていないから、甲社に対して759条2項
に基づく支払請求をすることができる。
(ⅱ)吸収分割無効の訴え(828条1項9号)
〜不法行為債権者が「承認しなかった債権者」(828条2項9号)といえるか?
まず、Pは吸収分割承継会社に免責的債務引受される債権者であるから、異議を述べ
ることができる債権者にあたる(789条1項2号)。〜契約内容から事実認定する。
異議を述べることができる債権者は、一定期間内に異議を述べなかった場合には承認
したものとみなされ(789条2項4号)、原告適格を失う。もっとも、個別催告が必要
であるのに、これがされなかった場合には手続保障を欠いているから、承認したものと
はみなされない。
しかし、Pはそもそも甲社に知られていない債権者であるから個別催告は不要であり、
官報による公告がなされている以上、手続保障がなされている(789条2項)
(※官報
+日刊新聞 or 電子公告によったとしても、知れている不法行為債権者については個別催
告を省略できない点に注意(789条3項かっこ書き))。にもかかわらず異議を述べて
いないのであるから、条文の規定通り承認したものとみなされ、原告適格を有しないと
いうことになる(有力説)。
この点につき、789条3項かっこ書きは、知れているか否かを問わず、不法行為債
権者に対しては個別催告を要求していると解し、個別催告を欠く以上、承認したものと
はみなされないとする見解もある。しかし、同2項の文言と整合しないし、実質的にも、

88

会社法 まとめノート

会社がどんなに注意しても、会社に知られていない不法行為債権者が存在する可能性が
あり、常に無効の訴えを提起されるリスクを負うとするのは妥当でない。よって、この
見解は採用できない。
※ 有力説は、個別催告が必要な範囲については、「知れている(不法行為)債権者」と
解する一方、759条2項2つ目のかっこ書きの「各別の催告をしなければならない
もの」という表現は、
「(実際は知られていない=個別催告は不要であっても)会社に
知られていたとすれば各別の催告をしなければならないもの」と解していることにな
る(ので、矛盾しない)。すなわち、会社に知られていない不法行為債権者につき、
個別催告は不要とする点は同じで、その上でどこまで保護を与えるべきかという問題
として考えていることになる。
したがって、P は、分割会社に履行請求をすることができるが、無効の訴えの原告
適格はないことになる。
◆濫用的会社分割(詐害的会社分割)〜問題の所在
会社分割によって会社債権者が被る可能性のある不利益に配慮し、会社法は、債権者
を保護するための制度として、会社分割に異議を述べる手続を規定している(789条
1項2号、810条1項2号)。そして、異議を述べた債権者は、原則として弁済や担保
提供をうけることができる(789条5項本文、810条5項本文)。しかし、当該債権
者保護手続きにより異議を述べることができる債権者は、原則として、会社分割後に分
割会社に対して債務の履行を請求できない債権者に限られている(789条1項2号、
810条1項2号)。
したがって、会社分割が行われる場合に会社の債務が設立会社や承継会社に免責的に
承継される場合には、当該債務の債権者は債権者保護手続によって異議を述べることが
できるが、分割の際に分割会社にも会社債務が残される場合や、設立会社・承継会社に
承継される債務を分割会社が連帯して保証する等の場合には、当該会社債務の債権者は、
「分割後に分割会社に債務の履行を請求できない債権者(789条1項2号)」には該当
せず、原則として、債権者保護手続による異議申立の対象外となる。
このような債権者が異議手続の対象外をされているのは、分割会社にも会社債務が残
される会社分割の場合には、分割会社には、分割の対価として設立会社・承継会社の株
式が割り当てられることから、債権者が債務の履行請求の引当てとする分割会社の純資
産は不変であり、債権者は分割会社に請求が可能であると考えられたためである。
しかし、対価として交付される株式が非上場株式である場合には、その財産評価や換
価などに著しい困難を伴うから、会社財産の共同担保としての価値は実質的には毀損さ
れることになる。
このようにして、会社法上、債権者が関与できないまま会社が債務を免れるために会
社分割を行うことが可能となり、債権者保護をいかにして図るかが問題となる。

89

会社法 まとめノート

◆濫用的会社分割(詐害的会社分割)への対応手段
(ⅰ)会社分割無効の訴え(会828条1項10号)
→「承認をしなかった債権者」にあたらず、原告適格なし(828条2項10号、東
京高判平成 23.1.26)。
∵物的分割において分割会社に残存する債権者は、債権者異議手続の対象でない
(789条1項2号、810条1項2号)
(ⅱ)商号続用責任の類推適用(会22条1項)
→新設会社が分割手続きの商号を続用していればOK
商号そのものではなく、ゴルフ場のコース名を続用した場合でもOK(この場合に
は、「事業譲渡」ではなく会社分割である点、「商号」ではなくゴルフコース名である
点で、二重の意味での類推適用となる。)
∵そもそも、22条の趣旨は、事業の譲受人が商号を続用している場合には、譲受
人が譲渡人の債務も引き受けたと考えるのが通常であり、かかる信頼を保護すべき
という外観法理にある。とすれば、会社分割も、法律行為によって事業の全部又は
一部が別の権利義務の主体に承継されるという点においては事業譲渡と同様であ
り、商号を続用する場合には上記の趣旨があてはまる。
もっとも、譲受会社が譲受後遅滞なく会員の施設の優先利用を拒否したなどの特
段の事情がある場合は×(最判平成 20.6.10)。
(ⅲ)詐害行為取消権(民424条)、否認権(破産法160条〜162条)
①会社分割は詐害行為取消権の対象となるか
〜会社分割が「財産権を目的」(民424条1項)とする法律行為といえるか?
→新設分割は、分割会社がその事業に関して有する権利義務の全部又は一部を新
設会社に承継させる法律行為であるから、財産権を目的とする法律行為に他なら
ない。また、会社法に詐害行為取消権の適用を排除する明文も存在しない。した
がって、会社分割は詐害行為取消権の対象となる。
※ 最判平成 24.10.7 も、会社分割は詐害行為取消権の対象になるとする
∵①会社の事業に関する権利義務の承継である点で、「財産権を目的」とする法
律行為であるといえる。
②会社法上これを否定する明文の規定は存在しない。
③分割会社に残存する債権者の保護の必要性。
④詐害行為取消しの効果は相対効であり、分割による新会社の設立の効力に何
ら影響を及ぼすものではない。
②詐害性の認定
→「債権者を害することを知ってした法律行為」にあたるか否かは、客観的な行
為の詐害性と、行為者の主観との相関関係によって判断される。

90

会社法 まとめノート

確かに、新設分割においては対価として新設会社の株式が分割会社に交付され
るから、計算上分割会社の一般財産は減少しておらず、詐害性がないとも思える。
しかし、非上場会社の株式は価値の評価や換価に著しい困難を伴うから、一般財
産の共同担保としての価値は実質的には毀損されているといえ、客観的な詐害性
が認められる。そして、会社は、かかる会社分割が債権者の債権回収を困難にす
ることを認識しているといえる。したがって、本件会社分割は「債権者を害する
ことを知ってした法律行為」にあたる。
③受益者の悪意の認定
→新設分割においては、分割会社の代表取締役が手続を進めるのであるから、分
割会社に詐害意思があれば新設会社も悪意であると擬制してよいと解する。
④取消しの範囲及び原状回復の方法
→詐害行為取消権が行使された場合、原則として現物返還すべきである。もっと
も、会社分割においては、承継された資産を特定して現物返還させるのは著しく
困難であるから、価格賠償によるべきである。
そして、取消権者は価格賠償の分割会社への返還債務と、分割会社に対する債
権とを相殺することにより、事実上の優先弁済を受けることになる。
(ⅳ)法人格否認の法理
→信義則違反を理由とする法人格否認(福岡地裁平成 22.1.14)。
もっとも、これが認められる場合には、詐害行為取消権の行使も認められるであろ
うから、固有の意義に乏しい?
要件:①会社の背後者が法人格を道具として支配していること(支配要件)
②背後者に違法・不当な目的があること(目的要件)
(ⅴ)23条1項の類推適用
→債務引受広告が新設会社によってなされた場合
債務引受広告といえるためには、社会通念上、事業によって生じた債務の引受があ
ったと債務者が信じるような内容が記載されていることが必要。
(5)反対株主の株式買取請求権
ア.吸収分割の場合
(ⅰ)消滅会社: 反対株主の株式買取請求権(785条)、新株予約権買取請求権(787条)
(ⅱ)存続会社: 反対株主の株式買取請求権(797条)
イ.新設分割の場合
(ⅰ)消滅会社:反対株主の株式買取請求権(806条)、新株予約権買取請求権(808条)
(ⅱ)新設会社:なし
ウ.株式買取価格の算定〜「公正な価格」の意味 →p.82
(6)効力の発生:吸収分割:分割契約で定めた効力発生日(759条1項、761条1項)

91

会社法 まとめノート

新設分割:設立会社の成立=登記の日(764条1項、766条1項、49条)
3 会社分割の効果
(1)吸収分割:①吸収分割承継会社は、効力発生日に、吸収分割消滅会社の権利義務を包括的に承
継する(759条1項、761条1項)。
②吸収分割承継会社の株主(社員)は、対価として与えられるものの種類に従い、
存続会社の株主・社債権者・新株予約権者となり、あるいは現金の受領者となる(7
59条4項、761条4項・5項)。
(2)新設分割:①新設分割設立会社は、その成立の日に、新設分割消滅会社の権利義務を包括的に
承継する(764条1項、766条1項)。
②新設分割設立会社の株主(社員)は、対価として与えられるものの種類に従い、
設立会社の株主・社債権者・新株予約権者となり、あるいは現金の受領者となる(7
64条4項・5項、756条2項・3項)。
4 会社分割無効の訴え(828条1項9号・10号)
(1)原告適格
ア.吸収分割:当事会社の株主、取締役、監査役、執行役、清算人、社員、破産管財人、吸収
合併を承認しなかった(=異議を述べた)債権者(828条2項9号)
イ.新設分割:当事会社の株主、取締役、監査役、執行役、清算人、社員、破産管財人、新設
合併を承認しなかった(=異議を述べた)債権者(828条2項10号)
(2)要件:①会社分割の効力発生日から6ヶ月以内
②会社分割の無効原因
(3)無効原因:①分割計画または分割契約の作成の懈怠ないし必要的記載事項の記載漏れ
②分割計画または分割契約の内容等を記載した書面等の備置きの懈怠
③新設分割計画または吸収分割契約の承認決議の瑕疵

Ⅳ 株式交換・株式移転
1 総説
(1)意義:ある株式会社が他の株式会社又は合同会社の100%子会社(完全子会社)となる取引
(2)趣旨:企業再編により、完全親子会社の設立を可能とする
(3)種類
ア.株式交換:株式会社が、その発行済株式の全部を他の株式会社または合同会社に取得させ
ること(2条31号)→完全親子会社関係を創設する組織法上の行為
イ.株式移転:1又は2以上の株式会社がその発行済株式の全部を新たに設立する株式会社に
取得させること(2条32号)→持株会社を創設する組織法上の行為
2 株式交換・株式移転の手続
(1)契約・計画:当事会社の代表取締役が株式交換契約を締結(767条)

92

会社法 まとめノート

株式移転の場合は、株式移転計画書を作成(772条)
(2)事前の開示:会社は一定期間、株式交換契約書・株式移転計画書を本店に備え置かなければな
らない。株主・会社債権者は、営業時間内はいつでも分割契約の閲覧・謄抄本の交
付請求ができる(782条、794条、803条、815条3項3号)。
(3)株主総会の特別決議
ア.株式交換の場合
(ⅰ)完全子会社:原則:株主総会の特別決議(783条1項、309条2項12号)
例外:親会社が子会社の特別支配会社の場合(略式手続、784条1項)
対価が総資産額の5分の1以下の場合(簡易手続、784条3項)
(ⅱ)完全親会社:原則:株主総会の特別決議(795条1項、309条2項12号)
例外:子会社が親会社の特別支配会社の場合(略式手続、796条1項)
対価が総資産額の5分の1以下の場合(簡易合併、796条3項)
イ.株式移転の場合
(ⅰ)完全子会社:原則:株主総会の特別決議(804条1項、309条2項12号)
例外:対価が総資産額の5分の1以下の場合(簡易手続、805条)
(ⅱ)完全親会社:特になし
(4)債権者異議手続 :原則:債権者保護手続なし ∵株式が移転するだけで債権者に不利益なし
例外:789条1項3号、799条1項3号、810条1項3号
(5)反対株主の株式買取請求権
ア.株式交換の場合
(ⅰ)完全子会社: 反対株主株式買取請求権(785条)、新株予約権買取請求権(787条)
(ⅱ)完全親会社: 反対株主の株式買取請求権(797条)
イ.株式移転の場合
(ⅰ)完全子会社:反対株主株式買取請求権(806条)、新株予約権買取請求権(808条)
(ⅱ)完全親会社:なし
(6)効力の発生:株式交換:交換契約で定めた効力発生日(769条1項)
株式移転:設立会社の成立=登記の日(774条1項、49条)
3 株式交換・株式移転の効果
(1)株式交換:完全親会社は、効力発生日に、完全子会社の発行済株式の全部を取得する(769
条1項、771条1項)。そして、完全子会社の株主は、対価として与えられるもの
の種類に従い、完全親会社の株主・社債権者・新株予約権者あるいは現金の受領者
となる(769条3項、771条3項・4項)
(2)株式移転:設立完全親会社は、その成立の日に、株式移転完全子会社の発行済株式の全部を取
得する(774条1項)。そして、完全子会社の株主は完全親会社の株主になり、対
価として与えられるものの種類に従い、社債権者等になる(774条2項・3項)。

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会社法 まとめノート

4 株式交換・株式移転無効の訴え(828条1項11号・12号)
(1)原告適格
ア.株式交換:当事会社の株主、取締役、監査役、執行役、清算人、社員、破産管財人、吸収
合併を承認しなかった(=異議を述べた)債権者(828条2項11号)
イ.株式移転:当事会社の株主、取締役、監査役、執行役、清算人、設立完全親会社の株主、
取締役、監査役、執行役、清算人(828条2項12号)
(2)要件:①株式交換・株式移転の効力発生日から6ヶ月以内
②株式交換・株式移転の無効原因
(3)無効原因:①合名会社・合資会社を完全親会社とする株式交換契約
②株式交換契約が錯誤、詐欺、強迫等により無効・取消しされた場合
③株式交換契約の必要的決定事項(768条1項)を欠く場合
④株式交換契約の内容等を記載した書面等の備置きの懈怠
⑤株式交換契約についての株主総会の承認決議の瑕疵

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会社法 まとめノート

解散・清算

1 解散
(1)意義:会社が法人格を消滅させるための手続(清算・破産)に入ること
(2)解散原因:①定款で定めた存続期間の終了(471条1号)
②定款で定めた解散事由の発生(471条2号)
③株主総会の特別決議(471条3号、309条2項11号)
④合併(会社が消滅するものに限る(471条4号)
⑤破産手続開始の決定(471条5号)
⑥解散を命ずる判決(471条6号) ex824条、833条
⑦休眠会社の場合にも解散したものとみなされる(472条1項)
(3)解散の効果:解散によって会社は、清算手続に入る(475条1号)
2 清算
(1)意義:解散に続いて法律関係の後始末をするための手続→清算の結了により会社は消滅
(2)通常清算の手続
ア.事業活動の制限:清算に入った会社は清算の目的の範囲内においてのみ存続(476条)
→本来の事業活動はできず、取締役等はその任務を終了する
イ.清算人:清算株式会社には、1人または2人以上の清算人を置く(477条1項)。清算人
会の設置は原則任意であるが、監査役会設置会社の場合は必要的(477条3項)。
清算人は、原則として解散当時の取締役がなるが、他の者を選任してもよい(4
78条1項)。
3 特別清算(510条、511条):倒産手続の一種

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