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utte interview vol.

アートと書のハーモニー

デザイン書道家 平田美記インタビュー
Miki Hirata, a Design Calligrapher,
utte interview
Harmony with Art and Moji
December 2008
アートと書のハーモニー

作品『創』部分

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アートと書のハーモニー

この冊子は、クリエイター作品の販売ウエブサイト
「utte」に掲載するクリエイター×ウッテリエ・イン
タビューです。気鋭のクリエイターの創作世界観を、
ウッテリエ(utte+sommelier=クリエイティブ界
のソムリエの造語)が 2000 字から 2500 字でぎゅ
っと伝えます。

2008 年 12 月にとりまとめたデザイン書道家平田美
記さんとのクリエイティブなインタビューです。美記
さんの創造文字の世界をしっかり伝える一文になり
ました。お楽しみください。

皆さまからのコメントが励みになります。お手紙は
utte の電子メールアドレスまでお願いいたします。
utte@utte.co.jp

utte ブックレット制作責任者 郷好文
同 村山桜子

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アートと書のハーモニー

平田美記 utte ウエブサイト
http://www.utte.co.jp/joomla/content/view/329/54
/
utte ウエブサイト
www.utte.co.jp
平田美記ウエブサイト
http://www.hamoji.com/
平田美記ブログ
http://ameblo.jp/hamoji-fude-moji

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アートと書のハーモニー

平田美記(ひらた みき) デザイン書道家

自己紹介

本格的書道家を目指していました。(笑
その思いから古典書を学び始めいろいろと進むうち
に芽生えてきた違和感を持ちながら歩んできて私の
やりたかった事って?書道家って?という疑念と葛
藤しながら辿り着いた道が、デザイン書道という今の
hamoJI(墨・調和・ぬくもり)という形でした。

文字を自由にアートする。

書道という固定観念を捨て墨モヨウであったり、文字
であったり決まりを拭い捨てる事で自分自身が自由
に書ける喜びを得た気がします。
10 人全員が共感してくれる作品を求めているわけで
もなく、美しいだけの文字を書きたいわけでもない。
たった一人にでも何かほんの少し心に残るモノが伝
わるような作品を作り続けていきたい。

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アートと書のハーモニー

平田美記(ひらた みき)経歴

1977 年 宮崎生まれの東京育ち
1983 年 書を習い始める
1999 年 書道家を目指し本格的に書の勉強を始める
2006 年 産経国際書展、全国臨書模刻展、入選、特選
受賞など(以下、継続)
2006 年 アート書道の講師としてワークショップ開

2007 年 hamoJI を開設 書道家ではなくデザイン
書道家として活動を始める
2008 年 池袋コミュニティカレッジにて商業書道を
専攻
2008 年 JDCA 日本デザイン書道作家協会に入会
2009 年 『楽しい筆文字・アート書』の講師としてア
ート書を教える

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アートと書のハーモニー

アートと書のハーモニー

文字、ではあるがじっと見ると“心象”にも見える。
文字、ではあるがじっと見ると“情景”にも見える。
文字、ではあるがじっと見ると“絵画”にも見える。

心象にも見える作品は『幻』。 こ
の世のものかあの世のものか、
文字の心模様がまるで霊のよう
に踊っている。

情景にも見える作品『風』には、
“かぜかんむり ”が飛ばされま
いと、ぐっと踏ん張る風
の動きが見えてくる。

絵画にも見える作品『雨』
は、雨の文字が人型にな

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アートと書のハーモニー

って踊っていて、てるてる坊主にも見えるユー モラスさ。
雨音のピチャピチャが聴こ
えてきそうだ。

魂、意志、ユーモアがあふれ
るアーティスティックな書。
デザイン書道家 hamoJI こ
と平田美記さんの偶発から
生まれる作品たちだ。無心
に墨を摺る。すぐには書か
ない。本を読んだりテレビ
を眺めたりして生活感を吸収する。想いにふける。ふと
筆を持つ。

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アートと書のハーモニー

筆が書道紙に触れる瞬間に、心象・情景・絵画が生まれ
る。書き終わるまで何も考えない。実際、タイトルさえ付
けない作品が多い。

【自由と伝統のはざまで】

HamoJI とは“Harmnony(調和)”と“MOJI(文字)”
を合わせた造語である。これを雅号と呼んでいいものか。
雅号とは書家らが自分 を表現する風雅な呼び名である。
作風を表し、属する“派”も表す。そうした書道の伝統的
なきまりと一線を画してきた彼女の作風は、書家のカテ
ゴリーにおさ まりきらない。

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アートと書のハーモニー

6 歳の頃から学びだした書、ずっと続けていたが、本格的

に書道家になろうと誓ったのは、結婚して子どもが生ま
れてから 23 歳のとき。きっかけは 30 歳になっ た自分
がどんなだろうかと想像したこと。何でもない自分では
イヤだなと思った。では自分に何ができるだろうか?ど
んなことも吸収する好奇心の強さをバネに して、何をし
たいのかじっと考えた。そして自分が好きだった書道で、
30 歳までに書道家になろうと決めた。子を育てながら前
衛的な書道家を師とする生活を 続けた。

甲骨文や金文、いずれも文字の始原と言われる古代文字
を学び、篆書(てんしょ)や楷書、かな文字を学んだ。臨

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書(お手本を見ながら書く)もたくさんした。書こそ自
分の道だとあらためて実感した。

だが疑問も芽生えた。書道家として段をとり、師範にな
り、書の伝統を守る。それもいいけれど、どうも自分とぴ
ったりこない。それが自分の書きたい文 字への道なのか、
表現の道なのか、自信が持てない。あれをやってはダメ、
こう書かないとダメという作法や規則にどこか窮屈さ
を感じた。

【自由に書きたい】

そんなとき結婚式のウェルカムボードを受注した。どん
な文字を書こうかワクワクした。普通の楷書ではつまら
ない。ある商業書道の大家の書体を真似て書いてみた。
できあがったのは自分の作風とはいえなかったけれど、
のびのびと自由に書けた。これだと感じた。

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アートと書のハーモニー

「わたしは自由に書きたい」 。

前衛書家のように目隠しをして書く。自分の衝動で書く。
そんなアート書道が自分の道だと思った。そこで自由な
作品を創造する商業書道を学び、自分なりの作風を磨い
た。文字で心象を表し情景を描き、絵画表現にする手法
にたどりついた。

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アートと書のハーモニー

鏡 像シンメトリーの作品“花”には、自由なスピリッツが
あふれる。右側の花という字。内側からほとばしる生命

が開き、

花となるかのように、文字が身をよじ る。一方、左側には
花をひっくり返した“鏡文字”がある。ひっくり返すこと
で、花のほんとうの美しさって何?と観る者を想いの淵
にいざなう。なんだか花が 謎めいてくる。

【夜、インスピレーションを書道紙に落とす】

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アートと書のハーモニー

淡墨(たんぼく)と濃墨(のうぼく)のコントラスト
も彼女のユニークさだ。淡い墨がにじみながらも広がり、
中心に濃い墨がとどまる。この表現を高める和紙の里な
かとみ(山梨県見延町)の紙が、彼女のインスピレーシ
ョンを受け止めるたいせつな道具でもある。

根っこにアーティストがいる彼女、でも昼間は子どもを
追いかけ、また追いかけられての明るい母でもある。母
としての一日の生活がひと段落した夜 10 時以降に“顔
を変える”。硯を手元に置き、インスピレーションがやっ
てくるのを待つ。本の文字に自分を漂わせ、しんとした
生活の音の中を泳ぐ。

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アートと書のハーモニー

空間の隙間 にふと文字のヒントを感じる。指先にそれが
落ちる。筆に伝わる。硯から墨を落とす。文字から偶発が
生まれ書道紙に hamoJi の世界が広がる。

2008 年 12 月 04 日
文・郷
写真・村山

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