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大野 泰伸
アナリシス
液化技術を知って北極圏LNG
開発を展望する
冬季のアイスクリーム需要が増えているそうだ。夏は主に体を冷やし涼む
ことを第一に、溶けないうちにと急いで食べてしまうことが多いが、冬は溶
けにくいからアイスクリームの味を楽しみながら食べられる。そもそも、夏
場の青草の代わりに飼料を多く与えられる冬場の乳牛からは、乳脂肪分の多
い原料乳が採れ、栄養豊富でコクのあるアイスクリームを作ることもできる
らしい。木枯らし吹くなか、お店で買って冷たいものを家に持ち帰るには多
少の苦労も必要かもしれないが、その分、暖房の利いた室内で食べるのがま
た格別とか。アイスクリーム=夏、と思っていた筆者であるが、この冬はぜ
ひじっくりと味わって食べてみたい。
さて話は変わるが、日本が消費する天然ガスの多くは、海外から LNG として輸入されている。LNG
の多くは、東南アジアや中東のような熱帯・乾燥帯で多く生産される。アイスクリームが飛ぶように売
れそうな地域である。一方、
“栄養豊富”かどうかはさておき、北極圏は石油に比べて天然ガスリッチで、
その埋蔵量 ・ 資源量は膨大である。今後の有望な天然ガス開発地域の一つであり、液化して LNG とし
て出荷することも構想されている。LNG は原料ガスを大気圧下で -1 6 2 ℃まで冷却しなければならない
ので、北極圏のような寒い地域では“おいしい”一面もある。無論、こういった地域での LNG 生産・出
荷には、それなりの努力も必要だ。本稿では、北極圏のような極寒地で極低温の LNG を“おいしく”作
る上でのポイントを解説し、また極地ならではの克服すべきさまざまな課題について紹介する。
はじめに
2008年5月のアメリカ地質調査所
(USGS:U.S. Geological (Snøhvit、2 0 0 7 年~)とロシア(Sakhalin Ⅱ、2 0 0 9 年~)
Survey)の発表によれば、北極圏には約 9 0 0 億バレルの の 3 カ国でしか稼働していない。石油を中心に資源開発
石油、約 1,6 7 0 兆立方フィートの天然ガス、約 4 4 0 億バ が進められ、天然ガスは厄介者視されることすらあった
レルの天然ガス液が、未発見資源量として眠っている(そ これまでは、あえて寒冷地仕様でコストアップしてまで
の後、2 0 0 9 年 5 月に石油の推定値を倍増)。この数値は 天然ガスを開発し、LNG を生産するインセンティブは
2 0 0 8 年の全世界の消費量に照らすと、石油で約 3 年分、 働かなかった。しかし、地球環境問題が取りざたされ、
天然ガスで約 1 5 年分に相当し、既発見の埋蔵量も含め 新興国のエネルギー需要が急拡大するなか、天然ガス需
てそのポテンシャルは非常に高い。特にガス資源が豊富 要の大幅な拡大が見込まれる今後にあっては、熱帯 ・ 乾
な北極圏は氷に閉ざされ、克服すべき課題は多いものの、 燥帯もさることながら、ガス埋蔵量が豊富な北極圏での
今後の有望なガス開発地域として、石油メジャーズをは 天然ガス更には LNG 開発も、供給を満たす上で重要な
じめとする多くの業界関係者から注目が集まっている。 役割を担うことが予想される。
2 0 0 9 年時点で、ベースロード用 LNG プラントは世界 とりわけロシアには、北極圏内で膨大な埋蔵量 ・ 資源
1 7 カ国で稼働中(2 0 0 9 年内の稼働開始見込みを含む)で 量を有する東バレンツ海や西シベリア堆積盆地がある。
あるが、そのほとんどは熱帯や乾燥帯にある。寒冷地で 従来の欧州向けパイプラインガス供給に加え、LNG の
は、アメリカ
(アラスカ:Kenai、1 9 6 9 年~)、ノルウェー 生産 ・ 出荷は、欧州内のイギリス、スペイン、ポルトガ
55 石油・天然ガスレビュー
アナリシス
ルといった他の供給先、更にはアメリカへと販路が拡大 のための前処理、液化、貯蔵、出荷などの各プロセスが
され、その戦略的位置付けが高まっている。これまで寒 あるが、本稿では主に“液化”に焦点をおいている。その
冷 地 で の 液 化 プ ラ ン ト の 事 例 は 少 な い が、 近 年 の 他のプロセスについては、石油天然ガスレビュー 2 0 0 5
Snøhvit や Sakhalin Ⅱは、今後拡大が期待される北極圏 年 3 月号「LNG ビジネスの本質を理解するための液化プ
の液化プラント建設 ・ 操業にあたって、さまざまな知見 ラント必須知識」
(宮崎信一)に詳しく解説されているの
が得られた有意義なプロジェクトである。 で、そちらを参照されたい。
液化プラントでは、井戸元から送られてきた原料ガス
から、二酸化炭素、硫化水素、水分、重質分などの不純
物を除去した後、冷媒との熱交換によって液化する。北
極圏のような寒冷地は、原料ガスの温度が低く、各種の
冷却に用いる空気や水の温度も低い。大気圧下 -1 6 2 ℃
まで原料ガス温度を下げるにあたっては、これら温度の
低さは都合がよい面もある。本稿では、まず LNG 生産
に必要な低温を作る原理を解説し、Snøhvit や Sakhalin
Ⅱの液化プロセスの特徴、寒冷地におけるそれらの利点
を紹介する。また、雪や氷に覆われ、冬季には日照時間
も限られるなかで建設 ・ 操業する上でのさまざまな課題
出所:ウェザーニューズ グローバルアイスセンター
についても触れながら、最後に今後の展望を考えてみた
い。
写1 北極圏の海氷
なお、液化プラントでは、原料ガスからの不純物除去
1. 液化の基礎 -熱力学的な理解-
(1)
低温を作り出す うことである。ベースロード用の液化プラントでは、冷
メタンを主成分とする天然ガスは、常温 ・ 常圧では気 媒との熱交換を行うことで天然ガスのエネルギーを奪
体である。大気圧下で約 -1 6 2 ℃まで冷却すると、液化 う。とはいえ、自然界に-162℃の冷媒は存在しないので、
して LNG となる。大気圧よりも圧力を高くする方が、 冷媒となる物質からエネルギーを奪い、その温度を下げ
より高い温度で液化が可能となるが、これにも限界が
ある。気体を昇圧していくと、圧力の上昇に伴い気体 100
イソブタン
の密度が上昇し、いずれは液体との密度差がゼロとな メタン エタン プロパン
ノルマル
ブタン
る(これを臨界点という)。臨界点以上の温度、圧力では、
蒸気圧(×0.1MPa)
液体と気体の区別ができなくなるため、決して液化す 10
ることはできない。メタンの場合で言えば、臨界温度 ノルマルペンタン
が -8 2.5 ℃であり、いくら圧力を高くしてもこれ以上の
1
温度、例えば常温では液化はできない。また、メタン
を -8 2.5 ℃で液化できる臨界圧力は 4MPa を超える高圧
である。高圧かつ低温の液体は扱いにくいので、大気
:臨界点
0.1
-180 -150 -120 -90 -60 -30 0 30 60 90 120 150 180
圧下の液化温度である -1 6 2 ℃まで天然ガスの温度を下
温 度( ℃ )
げ、LNG とする(図 1)。
出所:化学便覧
物質にはエネルギーがあり、温度が高い物質ほど多く
のエネルギーを保有している。したがって、天然ガスの
図1 炭化水素の蒸気圧と臨界点
温度を下げるために必要なことは、そのエネルギーを奪
る仕組みが必要となる。これには、圧縮機により昇圧さ も起きにくい。ただし、断熱膨張と異なり、膨張のエネ
れた冷媒を、①ジュールトムソン膨張、②断熱膨張、の ルギーは摩擦等で失われ、有効利用することはできない。
いずれかで膨張させて、冷却、液化することになる。な
お、ベースロード用以外では、高圧の天然ガス自体を膨 (3)
「断熱膨張」は仕事を有効に生かせる
張させることでエネルギーを奪い、その一部を液化する 膨張によるもう一つの冷却方法は断熱膨張である。断
ピークシェービング基地のような例もあるが、液化可能 熱膨張は、シリンダー ・ ピストン機構やエキスパンダー
量が少ない。冷媒を冷やすか天然ガスそのものを冷やす (回転機械の膨張機)などを介して外部に対して仕事をさ
かの違いで、基本的な原理は同じである。 せながら膨張する方法である。熱力学のエネルギー保存
の法則である熱力学第 1 法則は、次のように表される。
(2)
シンプルな「ジュールトムソン膨張」 dQ = dU + dW ③
絞り機構を通じて高圧の気体を膨張させると、分子同 ここで、Q は外部とやり取りする熱、W は仕事を表し、
士の間に働く引力(分子間力)が弱まり、気体の温度が変 それぞれの小文字の d は各物理量の微小変化分を意味す
化する。これをジュールトムソン膨張という。気体の温 る。仕事 W には、エキスパンダーなどを介して取り出
度は“変化”するのであって、必ずしも“下がる”わけでは せる目に見える仕事の他に、気体の圧力×体積(PV)の
ない。物質によって異なるが、特定の温度圧力条件下に 変化に相当する、目に見えない仕事も含まれる。PV の
ある気体を膨張させると、その温度は下がる。逆に、条 項を内部エネルギー U と合わせてエンタルピーで表現
件によっては膨張によって温度が上がることもある。低 すれば、 断 熱すなわち 外 部との熱 のやり取りが なく
温の冷媒を作るためには当然、冷媒に使われる物質に固 dQ = 0 であるので、目に見える方の仕事分はエンタル
有の、温度が下がる条件下でジュールトムソン膨張を行 ピーの差 H1 – H(
2 添え字 1,2 はそれぞれ膨張前後の状態)
うことになる。 に等しい。したがって、外部に仕事をした(>0)場合、
ジュールトムソン膨張では外部との熱の出入りがな H1 > H2 となって、膨張後の気体のエンタルピーと温度
く、気体自身が持っている内部エネルギーが膨張エネル は小さくなる。
ギーに変換される。内部エネルギーを U、気体の圧力を またもや厄介な代物であるが、エントロピー(S)を
P、気体の体積を V とし、膨張前後の状態を添え字の 1,2 定義しておく。過冷却された氷点下の氷をゆっくり温め
でそれぞれ表すと、次のような関係になる。 ていくと、0 ℃で融け始めて水になる。氷の状態での温
U2 – U1 = P1V1 – P2V2 ① 度の上昇は、相(気体 / 液体 / 固体)の変化を伴わず、顕
ここで便宜上、エンタルピー(H)を定義し、次のよ 熱によるものである。0 ℃で氷から水に相変化する際、
うに表す。 すべてが水になるまでは外部から加えた熱(潜熱)は、氷
H = U + PV ② と水の温度上昇をもたらさず、温度は 0 ℃のままである。
②式を①式にあてはめるとH1 = H2となるため、ジュー では、投入された熱はどこへ行ったのか?それを表す
ルトムソン膨張は「等エンタルピー膨張」とも言われる。 ものがエントロピーである。加えられた熱(この場合、
膨張の前後でエンタルピーが不変という条件で、気体の 増加分)を、その時の絶対温度で除した分だけ、エント
圧力変化に対する温度変化の関係を導くと、膨張(圧力 ロピーが増大している、と見なす。式で表すと次のよう
変化がマイナス)によって温度が上がるのか下がるのか になる。
が分かる。これ以上の数式の説明は省くが、これを表す dS = dQ / T ④
ものをジュールトムソン係数といい、これが正であれば エントロピーは気体の温度上昇に伴って増大するし、
膨張による温度変化もマイナスで、温度が下がることに 気体の体積増大に伴っても増大する。断熱膨張、すなわ
なる。理想気体ではジュールトムソン係数はゼロであり、 ち dQ=0 では、④式からエントロピーは変化しない(断
膨張しても温度は変わらない。実在気体の場合、分子間 熱膨張のことを、エントロピー膨張とも言う)
。気体が
力によってジュールトムソン係数がゼロでなくなり、体 膨張する(体積が増大する)と原理的にエントロピーは増
積膨張率が理想気体よりも大きい場合にはジュールトム えることになるが、断熱膨張であるから等エントロピー
ソン係数が正となって、温度が下がる。 変化であり、体積増大によって増加したエントロピーを
ジュールトムソン膨張は、バルブのような単純な「絞 差し引きゼロにするため温度が低下する、というように
り」で実現できる。後述する断熱膨張のような回転機は 断熱膨張を解釈することもできる。
不要で、非常にシンプルな設備であり、故障等の不具合 エントロピーは増大こそすれ、減少することはない。
57 石油・天然ガスレビュー
アナリシス
圧縮機
臨界点 P=P B
A B 凝縮器
P=PA
原料ガス B
温度
C
C
A
D’ D
熱交換器 ジュールトムソン膨張
D
冷媒サイクル
エントロピー
出所:JOGMEC 出所:JOGMEC
原料ガス 燃料ガス N2
C3サージドラム C3
除去 プレクール
LNG
熱交換器 タンク
アフター C3
クーラー C3 コンプレッサー
コンプレッサー C2=
サージドラム 熱交換器
アフタークーラー MR
C2+ コンプレッサー
分離
C2=
コンプレッサー
アフタークーラー スクラブ
混合冷媒 (MR) カラム
MP C3
熱交換器
LNG タンク 分離 HP C3
燃料ガス C1 LPG
コンプレッサー HHP HP MP LP
タンク、タンカーのボイルオフガス C3 C3 C3 C3 コンデンセート
出所:JOGMEC 出所:JOGMEC
59 石油・天然ガスレビュー
アナリシス
温度
原料ガス
プロパン
(3)
混合冷媒を使用する意味 冷媒
カスケード方式のように単一冷媒を用いる場合、低温 エチレン冷媒
液体である冷媒が原料ガスとの熱交換で気体へと相変化
メタン冷媒
する間、その温度は一定のままとなる。一方、原料ガス
は熱交換器を通る間に徐々に温度が低下する。つまり、 エンタルピー 変 化
熱交換器入り口側では原料ガスと冷媒の温度差が大き
く、逆に出口側では小さくなる。流体間の伝熱量は温度 出所:JOGMEC
差、伝熱面積に比例するが、温度差の小さな熱交換器出
口側に合わせて熱交換器を設計すると、温度差が大きく 図6 カスケード方式の T-Q 線図
なる入り口側では必要以上に冷媒の温度を下げているこ
とになり、その分、冷媒圧縮機用の動力等を浪費する。
理想的には、原料ガスと冷媒の温度差は、熱交換器内
で常に一定であることが望ましい。カスケード方式のよ
うに単一冷媒を用いる場合、熱交換に伴う冷媒側の温度
変化は、必然的にステップ状となる。原料ガスと冷媒の
間に生じる温度差を小さくする解決策として、冷媒を複
温度
原料ガス
プロパン
数段の圧力レベルに分け、順次原料ガスと熱交換を行う。 冷媒
これにより、各ステップが小さくなって効率改善が図れ 混合冷媒
る。ただし、熱交換器やセパレーター等の機器類の増加
を伴うため分割にも限度があり、各冷媒それぞれで通常
3 ~ 4 段に分けられる(図 6)。 エンタルピー 変 化
一方、混合冷媒を用いる C3MR 方式の場合、プロパン
出所:JOGMEC
冷媒の予冷サイクルでは同じように 3 ~ 4 段に分割する
ことになるが、混合冷媒のサイクルでは状況が異なる。
図7 C3MR 方式の T-Q 線図
混合冷媒では、液体から気体に相変化する過程において
も温度変化(上昇)するため、原料ガスとの温度差を極力
一定に保ちながら、
熱交換を行うことが可能となる
(図7)
。
図 8 ~図 1 0 は、エタン 1 0 0 %、プロパン 1 0 0 %、エ
10
タン 5 0 %+プロパン 5 0 %のモリエル線図を例示したも -80℃ -30℃ 20℃
のである。熱交換器内での圧力損失を無視すると、冷媒
は圧力一定のまま、熱交換器内で原料ガスから熱を受け 冷媒・液体→気体
圧力(MPa)
取り、液体から気体に相変化する。単一冷媒(エタン 1
1 0 0 %やプロパン 1 0 0 %)の場合、その過程で温度が一定
であるのに対し、混合冷媒(エタン 5 0 %+プロパン
5 0 %)では、温度が上昇していくことが分かる。ここで
は簡単化のため 2 成分の混合例を示したが、メタンや窒 0
-12,000 -8,000 -4,000 0 4,000 8,000 12,000 16,000
素なども含めて成分を組み合わせれば、原料ガスから受 エンタルピー( k J / k m o l )
け取る熱に従って、熱交換での冷媒の温度を任意に調整
出所:JOGMEC
できる。原料ガスは液化過程と過冷却過程とでその比熱
が異なるので、C3MR 方式のように混合冷媒のサイクル
図8 エタン 100%のモリエル線図
を主熱交換器で 2 流路に分ければ、更にエネルギー効率
10 10
-30℃ -20℃ 70℃ -80℃ -30℃ -20℃ 70℃
冷媒・液体→気体
冷媒・液体→気体
圧力(MPa)
圧力(MPa)
1 1
0 0
-16,000 -8,000 0 8,000 16,000 24,000 -20,000 -10,000 0 10,000 20,000
エンタルピー( k J / k m o l ) エンタルピー( k J / k m o l )
出所:JOGMEC 出所:JOGMEC
が上げられる。容易に察しがつくように、予冷サイクル が有限の状態から、温度が変化しない、すなわち比熱が
にも混合冷媒を用いれば、原理的にエネルギー効率は更 無限に大きくなる状態に変わることで生じる。冷媒に混
に上げられるが、このような液化プロセスについては、 合冷媒を用いても、やはり液化が始まる温度でピンチポ
後に紹介する。 イントは生じるが、単一冷媒とは異なり凝縮を始めてか
冷媒は原料ガスとの熱交換の他に、凝縮器で空気や冷 らも温度が低下するので、冷却水側との温度差はプロパ
却水とも熱交換を行っている(冷やす側か、冷やされる ン冷媒よりも小さく、エネルギー効率は向上する。
側か、が異なる)。例えば冷却水との熱交換に伴う、冷 ちなみに、液化プロセスのエネルギー効率を比較する
媒と冷却水との温度変化を見ると、液体のままである冷 際、LNG 1トンあたりに必要な動力(kW-d/ton-LNG)
や、
却水の温度は凝縮器内の流れに従って単純上昇するのに 導入した原料ガスの熱量に対する製品 LNG の熱量割合
対し、冷媒がプロパンのような単一成分の場合、気体の 等が用いられる。前者の方が熱力学的な効率を直接的に
状態から凝縮を開始するまでは温度が低下するが、その 表すものとなるが、実際には液化プロジェクトごとに原
後は相変化により温度が一定となる。凝縮を開始する時 料ガスの成分や圧力、外気温や水温等の諸条件が異なり、
点でプロパンの温度変化は不連続となり、冷却水温度と 一概にどの液化プロセスがよいとは言えない。また、熱
最接近することになるが、ここを“ピンチポイント”と言 力学的には効率のよいプロセスであっても、オペレー
かさ
う(図 1 1)
。ピンチポイントはこの例で言えば、熱交換 ションが煩雑であったり、設備費が嵩んだりすることも
に伴ってプロパン冷媒の温度が変化する、すなわち比熱 あるため、
エネルギー効率の他にもCAPEX
(資本コスト)
や OPEX(操業コスト)
、操作性なども踏まえ、
各プロジェ
クトに適した液化プロセスを選択する必要がある。
(4)最北端の液化プラント:ノルウェー Snøhvit
プロパン冷媒 2 0 0 7 年 1 0 月 に LNG 初 出 荷 を 行 っ た ノ ル ウ ェ ー
温度
61 石油・天然ガスレビュー
アナリシス
ge
v R id
noso
L omo Novosibirskiye Ostrova
Severnaya Zemlya
部
辺
縁
棚
陸
Svalbard 大
油田
a
BARENTS SEA
ly
m
既存 LNG プラント
Ze
KARA SEA
ya
Rusanov
N
側主張
北
極
圏
ロシア
Yamal LNG
ノルウェ
Leningrad
Shtokman Bovanenkov
Snøhvit
Severo Kildinsk Yamburg
200Km Teriberka
Shtokman LNG Prirazlomnoye
Murmansk Zapolyarnoe
rope
Murmansk Medvede
Urengoy
Eu
al
am
s
ght
nLi
rt her
No
am
Stre Vyborg
Nord
出所:JOGMEC
シュミット
原料ガス
(S-4)
S-5
アストラハン
(S-4)
予冷 東オドプト
(S-3)
サイクル
オドプト鉱区(S-1)
ピルトン・アストフスコエ鉱区(S-2)
アルクトン・ダギ鉱区(S-1)
アヤシ
(S-3)
チャイボ鉱区
液化 (S-1)
サイクル ウェーニン
(S-3)
デカストリ ルンスコエ鉱区(S-2)
原油積出基地(SⅠ)
キリンスキー(S-3)
過冷却
サイクル
燃料ガス
S-6
S-8
LNG
S-7
出所:JOGMEC
S-9
図13 MFC 方式プロセスフロー 既存LNGプラント
ガスPL
原油PL
SakhalinⅡ
サハリンⅠプロジェクト
サハリンⅡプロジェクト
ンを通じて陸上の液化プラントまでガスが輸送される。
Snøhvit/Askeladd/Albatross の各ガス田からガス / コン 図14 Sakhalin Ⅱの位置
デンセート / モノエチレングリコール(パイプライン中
で腐食やハイドレート形成を誘発する水分を吸収するた
めに注入される)の多相流で輸送され、SPS では世界最 液化プロセスは、Shell の Double Mixed Refrigerant
長の輸送距離となる。各ガス田から生産されるガス成分 (DMR)方式(図 1 5)で、C3MR 方式で予冷にプロパン
やコンデンセートの割合は異なり、上流側で液 / ガスの を用いる代わりに、DMR 方式では予冷にも混合冷媒を
分離をしないまま多相流で輸送されるため、液化プラン 用いる。サハリンの外気温の低さを利用し、またプロ
トに到達する原料ガスは成分や圧力等に変動要素があ パンではなく混合冷媒とすることで予冷サイクルのエ
る。これに対し、MFC 方式として混合冷媒を用いるこ ネルギー効率が上がり、液化プラント全体のエネルギー
とで、その成分調整によって原料ガス側の条件変更に対 効率が向上する。Sakhalin Ⅱでは空冷式の凝縮器を用
応することが可能になる。 いているが、外気温は夏場には 2 0 ℃を超え、海水冷却
と比較して季節間の温度変化が大きくなる。予冷サイ
(5)
ロシア LNG 輸出への足がかり:Sakhalin Ⅱ クルも混合冷媒とすることにより、冷媒の成分を調整
2 0 0 9 年 3 月、ロシア Sakhalin Ⅱからの LNG 出荷が開 して気温の変化に対応することも可能となる。
始された。ガス田はサハリン島北部、北緯 5 1 °に位置す 予冷に混合冷媒を用いる利点は、エネルギー効率向
るが、そこから約 8 0 0km のパイプラインを経て、北緯 上以外にもある。プロパン予冷では、プロパン圧縮機
63 石油・天然ガスレビュー
アナリシス
ン -LNG/ 年の 2 トレインであるが、デボトルネッキング
により各 5 5 0 万トン -LNG/ 年まで拡大することも検討
出所:JOGMEC
されている。この液化容量は、カタールのメガトレイ
ン(7 8 0 万トン -LNG/ 年)に次ぐものとなる。カタール
図15 DMR 方式プロセスフロー
の メ ガ ト レ イ ン は Air Products and Chemicals, Inc.
(1)
外気温 ・ 水温が低いのはプラスだが、夏冬の気温差
が課題 30
極低温を作り出す LNG にとって、北極圏における原
料ガス温度や外気温、水温の低さはエネルギー効率の向 20
上につながる。また、冷媒圧縮機の駆動源として広く使
平 均 気 温︵ ℃ ︶
われているガスタービンでは、空気の密度が高くなる低 10
気温ほど出力が高くなる。このように温度の低さによっ
0
て大きなメリットが得られる一方、北極圏では年間を通 1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月
じての外気温の変化が大きいことがデメリットとなる。
-10
月平均気温で見ると、熱帯地域では夏冬の気温差が数度 赤道直下
北極圏
に過ぎないのに対し、例えばロシア Shtokman LNG の
-20
計画地近郊の Murmansk では 2 5 ℃にも達する(図 1 6)
。
出所:JOGMEC
最高 / 最低気温で比べると、更に大きな気温差となる。
裏を返すと、外気温だけで判断すれば、冬季に比して夏
図16 北極圏と赤道直下の月平均気温比較
季の LNG 生産量が低下することを意味し、LNG 生産量
が年間を通じて大きく変動することになる。 (2)プラント建設への制約
ここではプラントの設計外気温をどう定めるかが、重 年間の半分以上は外気温が氷点下で、雪や氷に覆われ
要になる。最大生産が可能な冬季の外気温を設計温度と る北極圏は、作業環境が大変厳しく、建設工事は大きな
すると、北極圏のメリットを最大限に生かし、冬季に最 制約を受ける。例えば米国産業衛生専門家会議(ACGIH:
大量の LNG を効率よく生産することができる。冬季は American Conference of Governmental Industrial
ガスの需要期であり、この期間に多くの LNG が出荷さ Hygienists)では、外気温と風速の条件に応じて連続す
れれば、買い主側にとっては好都合である。一方、液化 ることが可能な屋外作業時間を規定している。これに
プラントでは、冬季の最低気温に合わせた最大生産量の よれば、外気温が -2 6 ~-2 8 ℃、風速が 1 5mile/h(6.7m/
設備仕様とすることで、熱交換器や配管等が大きくなる s)では、5 5 分間の作業ごとに 1 0 分以上の休憩を取り、
が、夏季にはこれら設備能力が使いきれない。また、冬 4 時間経過した時点では食事等の長時間の休憩を取る
季の生産量に合わせて耐氷仕様の LNG 船を手配すると、 こ と、 と し て い る。 ま た、 外 気 温 -3 2 ℃ 以 下 で 風 速
こちらも夏季には一部が余剰となる。他のプロジェクト 2 0mile/h(8.9m/s)、あるいは無風でも外気温 -4 2 ℃以下
ようせん
向けに傭船される可能性もあるが、いずれにせよ、年間 といった条件では、緊急作業を除いて屋外作業そのもの
なら
で均すと LNG 生産量の割に設備が過剰で、CAPEX の増 が推奨されていない。作業は可能でも総じて歩掛けは悪
加を招く。 く、そもそも冬季の北極圏では日照時間が短く、照明を
年間の平均気温を設計外気温と見なすと、程よくバラ つけるにしても可能な屋外作業は限定的となる。した
ンスしそうであるが、ガスタービン出力が外気温低下に がって、極力夏季のうちに LNG タンクの外層や各種建
伴ってほぼリニアに増加するのに対し、氷点下以下の外 屋工事を行い、冬季は屋内作業を中心に工事を進めるよ
気温では凍結対策でヒーティングに燃料を要するため、 うなスケジュールを組んでおく必要がある。逆に、夏季
プラント全体の効率はその分、若干だが低下する。した は比較的作業環境がよく、日照時間も長くなるので、シ
がって、夏季の LNG 生産量の落ち込みは、冬季に回収 フトを組んで集中的に工事を進めることも可能となる。
しきれない。設計の外気温をどう設定するかは、プロジェ 北極圏では資機材の搬入や作業員の出入りのためのイ
クトごとの事業コンセプトにもよるが、経済性に影響す ンフラが整っておらず、ロジスティクスの整備が不可欠
ることから、感度分析を行いながら最適なポイントを探 となる。また、氷点下の環境での作業経験を有する監督
していくことが必要である。 者も必要で、地域雇用促進の観点からも、こうした環境
このように、設計外気温の設定は必要であるが、年 に慣れた当地周辺の人々に作業に従事してもらうことが
間の LNG 生産量の変動を多少なりとも抑える方法もあ 望ましい。とはいえ、絶対的な人的リソースは少なく、
る。 例 え ば、 凝 縮 器 は 空 冷 式 と す る 方 が CAPEX/ 限られた労働者に対する十分な技能トレーニングと日々
OPEX は小さいものの、外気温につられて効率の変動 の健康管理を行いながら、一定の工事品質を確保しなけ
幅が大きくなる。これに対して水冷式とすれば、相対 ればならない。資機材調達でもローカルコンテンツによ
的に年間の変動幅は小さい。特に深層水を取水できれ り制約を受けることが考えられるが、特に低温材のよう
ば、低温かつ年間を通じて安定した水温が確保できる。 な特殊仕様品の手配が難しくなる。まずは開発国の法制
あるいは冷媒圧縮機を駆動用タービンとするのではな を確認し、人材や資機材の確保に対する手だてを早期に
く、電気モーター式とする手段もある。ガスタービン(+ 整えておくことが不可欠である。
スチームタービンのコンバインド)発電で電力を供給す 現地の作業環境やロジスティクスの制約を勘案する
ることになるが、やはり夏季の発電出力あるいは発電 と、設備のプレハブ化を進め、現地作業や輸送の手間を
効率の低下は発生する。しかし、圧縮機に与える電力 極力減らすことが現実的な手段となる。例えば Snøhvit
を制御することは可能であるから、LNG 生産量は比較 では、長さ 1 5 4m、幅 5 4m のバージをスペインの造船所
的安定する。どちらの方法でも CAPEX や OPEX の上昇 で建設し、その上に主熱交換器をはじめとする主要機器
を伴うため、必ずしも有効な手段とは言えないが、年 を搭載した。完成後、当然、海氷の影響がなく工事も可
間の LNG 生産量を高めつつ、かつ経済性を高めるため 能 な 夏 季 で あ る が、 ノ ル ウ ェ ー Hammerfest 近 郊 の
の種々の施策が必要となる。 Melkøya 島までバージごと運搬して現地への据え付け作
業が行われている。バージ上では設備の設置スペースや
搭載重量が限定されるため、エネルギー効率の良し悪し
65 石油・天然ガスレビュー
アナリシス
に限らず、機器数や必要スペースにも配慮した液化プロ としても、海氷との接触を考慮して外板の強度を上げ、
セス選定、あるいは省スペースのため空冷式凝縮器では 適切な氷海航行能力も備えていなければならない。
また、
なく水冷式凝縮器選定、といった制約を受けるかもしれ 海氷がなくても、波の高い厳しい航路となるため、LNG
ないが、解決方策の一つとはなろう。 タンクはスロッシング* 3 荷重に対して十分な解析を行
い、安全性を確認しておかなければならない。
(4)液化プラントでの前処理の負荷が変動することも
原料ガスがメタン以外のエタン、プロパン、ブタンと
いった炭化水素をほとんど含まない乾性ガス(dry gas)
であれば、あまり気にする必要はないかもしれないが、
これらを多く含む湿性ガス(wet gas)の場合には次の検
討が必要である。
外気温が大きく下がる冬季、上流のガス生産設備から
液化プラントまでのパイプライン内での圧力損失に応じ
て、炭素数の多い成分ほど凝縮して液化されやすくなる。
出所:StatoilHydro ホームページ 例えば、液化プラントへの原料ガスの着圧を 6MPa と仮
定して、原料ガス中にエタン 5 %、プロパン 3 %、ブタ
写2 Snøhvit 向けバージの運搬 ン 2 %が含まれると想定してみよう。それぞれの分圧
(着
圧)は 0.3MPa、0.1 8MPa、0.1 2MPa となるが、この時、
大まかに表に示した温度で全量が液体もしくは気体とな
(3)
設備面の対応 る。夏季の気温が 2 5 ℃、冬季の気温が -2 5 ℃であると
屋外設置となる各種設備に対しては、冬季の氷雪荷重、 して、パイプライン内の原料ガスも同温度になると見な
風圧荷重も考慮した強度設計が求められる。使用材質に すと、夏季には原料ガスが気体のままで液化プラントへ
ぜいせい
は、想定される最低外気温下でも低温脆性を起こさない 到達するが、冬季はブタンの全量とプロパンの一部が凝
ものを選定する。また、重要機器や日常的な点検・メン 縮し、液体分を混じえて原料ガスが到達する。このよう
テナンスを要する機器については、凍結防止や積雪時の に、年間を通しては、液化プラントに到達する原料ガス
アクセスを念頭に置いて、建屋内に設置することになる。 の液体分が変動することが考えられる。実際には気 ・ 液
冷媒圧縮機の駆動源として多く使われているガスタービ 二相流となることでパイプライン中の流れはさらに複雑
ンでは、外気温が低いほど効率が良いが、氷点下では空 になり、流量計測や制御が難しくなる。液化プラントに
気取り入れ口が氷結、閉塞しないように注意が必要で、 おいては、季節によるその変動分を見越した前処理設備
建屋内に設置してヒートトレースする等の凍結防止を行 の設計を考えなければならない。
う。このほか、潤滑油の固着防止や消火海水(工水)ライ
ンの凍結防止、計装空気の結露防止等、プラント内のあ
ちらこちらでヒートトレースが必要である。このため、
加熱に必要なエネルギーを消費する分、冬季のエネル 表 全量液体、全量気体となる温度
ギー効率は低下する。
永久凍土上に液化プラントを建設する場合、各種の地
全量液体となる温度 全量気体となる温度
上設備からの入熱があると永久凍土が融解し、設備が沈
エタン -70℃以下 -60℃以上
下することが懸念される。これに対しては、設備を断熱
したり、基礎杭の掘削深度を深くして融解の影響を受け プロパン -30℃以下 -20℃以上
4. 北極圏で展開される今後の LNG 計画
67 石油・天然ガスレビュー
アナリシス
Tr a n s - A l a s
(NPRA) Wildlife Refuge Mackenzie
(ANWR) Delta
ka
フィートと、可採埋蔵量でも合計で 1 3 8 兆立方フィート カナダ
-P
el
アメリカ合衆国
ip
in
アラスカ州
に上る天然ガスがある(図 1 7)。まずは North Slope が
e
ガス開発のターゲットとなるが、これにはアメリカ 4 8 Anchorage
州へガスを輸送するためのアラスカパイプラインの進展 Kenai
Valdez
が必要不可欠である。1 9 7 0 年代から構想されているも
ガス PL(計画)
化・出荷する構想があるが、あくまでアラスカパイプラ
図17 North Slope 周辺の位置
インの進展が前提となる。昨今、シェールガス / タイト
おわりに
北極圏にガス資源を所有する諸国のうちでも、欧州向 季には一部設備が余剰となる可能性もあるが、受入基地
けのパイプライン以外に供給多様化を図りたいロシア 側では冬季のピークに備えるための貯蔵設備を減らすこ
は、その具体的方策として LNG を位置付けている。そ とも可能であり、LNG チェーン全体で見ればコスト抑
の点で、Sakhalin Ⅱの操業開始には大きな意味がある。 制の効果も期待されよう。巨大なポテンシャルを持った
続く Shtokman LNG をはじめとする複数の LNG 液化プ 北極圏の LNG 開発が進展し、世界の LNG 供給において
ラント建設を通じて、北極圏を含む寒冷地からの LNG そのシェアを将来高めることになれば、なお更その効果
出荷に向け、野心的に取り組んでいる。本稿で紹介した は大きい。環境負荷の小さい、クリーンな化石燃料であ
ように、北極圏 LNG では、作業環境の厳しさやロジス る天然ガスの利用促進は、二酸化炭素排出量削減の観点
ティクスの不足、氷雪や海氷対応で嵩む CAPEX/OPEX からも中長期的に不可欠であり、膨大な天然ガス資源が
など、多くの課題にチャレンジしていかなければならな 眠る北極圏開発は必然的にますます注目を集めていくも
い。しかし、外気温の変動に伴う“夏薄冬厚”の LNG 出 のと予想される。そのなかで鍵を握る LNG 技術の今後
荷は、
冬季に需要が最大となる北半球のニーズに合致し、 の革新に大いに期待しつつ、世界中で愛されるアイスク
北極圏ならでは、の利点もある。北極圏の液化プラント リームのように、冬季に“おいしく”生産される北極圏
や同プロジェクト向けに手配される耐氷 LNG 船は、夏 LNG が市場に出回る日が今から楽しみである。
【参考文献】
1. 宮崎信一 「LNG ビジネスの本質を理解するための液化プラント必須知識-誰にもわかる液化原理から最新技術
まで-」石油天然ガスレビュー 2 0 0 5.3 Vol.3 9 No.2
2. 都筑卓司 「なっとくする熱力学」講談社
3. 荻原宏康 「低温工学概論」東京電機大学出版局
4. Gas Processors Suppliers Association“Engineering Data Book”
5. G.Venkatarathnam“Cryogenic Mixed Refrigerant Processes”Springer
6. 鈴木信市、三神直人「中規模 LNG は実現可能なのか?」石油天然ガスレビュー 2 0 0 8.3 Vol.4 2 No.2
7. Odd Arild Mosbergvik“Statoil to begin Snøhvit LNG operations by yearend 2 0 0 7”Oil & Gas Journal、Apr.9
2007
8. Wim Dam“Engineering design challenges for the Sakhalin LNG project”GPSA Conference San Antonio,
March 2 0 0 1
9. B obby Martinez“Meeting Challenges of Large LNG Projects in Arctic Regions”GPSA Conference San
Antonio, March 2 0 0 7
1 0. 本村眞澄 「ロシア北極海の資源ポテンシャルとシュトックマン・ガス田の開発」石油天然ガスレビュー 2 0 0 7.1 1
Vol.4 1 No.6
1 1. 原田大輔 「ロシアの石油・天然ガス開発概観:最近の動向と今後の見通し(上)」石油天然ガスレビュー 2 0 0 9.7
Vol.4 3 No.4
1 2. JOGMEC 調査部編「石油資源の行方-石油資源はあとどれくらいあるのか-」コロナ社
1 3. 市原路子 「北米:実現に向け動き始めた、米国本土向けアラスカガスパイプライン計画」石油・天然ガス資源情
報(2 0 0 9/7/2 1)
<注・解説>
* 1:炭素数の多い炭化水素ほど発熱量が高い。炭素数1であるメタン
(C1)
の含有割合が高いLNGは、
発熱量の低いリー
ン LNG となる。日本、韓国、台湾では、エタン(C2)
、プロパン(C3)
、ブタン(C4)を含む、発熱量の高いリッチ
LNG を主に輸入している。
* 2:サブシータイバックシステムとも言う。海底仕上げ井からプラットフォーム等までフローラインを接続して石油
やガスを生産するシステム。
* 3:LNG 船自体の揺れに、積載 LNG 液面の揺れが同調し、過大圧がかかることを言う。LNG タンクの構造や運用の
工夫によってスロッシングを回避する必要がある。例えば、既に運航しているアラスカ Kenai の LNG プラントか
ら日本までは厳しい航路であるが、独立支持型の方形タンク(タイプ B)による輸送では、その構造上、安全が確
認されている。
執筆者紹介
大野 泰伸(おおの やすのぶ)
(独)石油天然ガス・金属鉱物資源機構 石油開発支援本部 調査部 調査課 上席研究員(天然ガス・LNG技術)。
東京都生まれ 東京大学大学院修了(計数工学専攻)。
東京ガス株式会社に入社後、主にLNG受入基地の設計・建設、設備管理に従事。2008年4月より現職。
趣味はストイックにやるスキーとエアロビ。妻、娘(5歳)、息子(2歳)とバックカントリースキーをするの
が夢。
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