You are on page 1of 100

能力試験新出題基準準拠

ー読解2級ー

精選問題集

著者:目黒真実

1
2
前 書 き

 この「精選問題集読解2級」は、各回が長文読解一題と短文読解二題、解説

と解答に分かれています。12 回分ありますから、能力試験直前の読解トレーニ

ングにお使いください。

 さて、読解力を高めるのはどうしたらいいか、といった質問をよく受けます。

試験では、先ず速く正確に読む力が問われますが、この速読力というのは、い

ろいろな種類の文章を、できるだけたくさん読むことを通してしか養うことは

できません。速読力というのは読書量に比例するのです。

 しかし、読解問題の解き方に関しては、ミスを少なくするために、いくつか

アドバイスしたいことがあります。それが以下の三点です。

  1 わからない語にぶつかっても、止まらず、続けて読み進める。

  2 解答は必ず本文の中にあるので、本文の中から探す。

  3 解答の選択は消去法で行う。

 読解問題の本文中には、いくつかわからない語があるのが普通です。しかし、

全体を読めば解答できる場合がほとんどなので、わからない語のところで立ち

止まって時間を浪費しないことです。また、解答の選択に際して、自分の意見

や主観が入らないようにすることが大切です。解答は本文の中にありますから、

本文に書かれていないことは、原則として選択しないようにしましょう。

 また、ミスを少なくするために、正しいものを選ぶのではなく、間違ってい

るか、本文で触れられていない内容を含むような選択肢を、一つ一つ消してい

く消去法を勧めます。問題作成者は、正答(○)のほかに、紛らわしい選択肢

(△)を入れて問題を難しくしようとしますから、正しいものを選ぼうとすると、

この△に飛びついてしまう恐れがあるのです。

 では、読解トレーニングを始めましょう。読解問題は、一度にたくさんして

も効果がありませんから、一日一回で進んでください。

                           目黒真実

3
目    次

    第1回・・・・・・・・・・・・p
    第2回・・・・・・・・・・・・p
    第3回・・・・・・・・・・・・p
    第4回・・・・・・・・・・・・p
    第5回・・・・・・・・・・・・p
    第6回・・・・・・・・・・・・p
    第7回・・・・・・・・・・・・p
    第8回・・・・・・・・・・・・p
    第9回・・・・・・・・・・・・p
    第 10 回・・・・・・・・・・・・p
    第 11 回・・・・・・・・・・・・p
    第 12 回・・・・・・・・・・・・p

4
第1回
問題Ⅰ 次の文章を読んで、後の問いに答えなさい。答えは、1、2、3、4から最
     も適当なものを一つ選びなさい。

はんえい
 現在の繁栄をもたらした有力な武器に科学・技術ということがある。本来、科学と

技術は分けて考えるべきなのだが、日本では科学技術としてひとつのもののように考

える人が多い。そのときの科学はヨーロッパ近代に起こった近代科学を手本として、

研究者はものごとを客観的に、(  ①  )、その対象と無関係な立場に立って研究

し、そこに因果の法則を見いだす。それと技術が結びつくと、今日の工作機械のように、
(注1) そう さ
マニュアルに従ってボタンを押すと、機械が思うように操作され、望ましい結果が得

られることになる。

 これはすばらしいことだ。しかし、これがあまりにもうまくいくので、日本の多く

の人がどんなことにもマニュアルがあり、そのマニュアルどおりにやれば、何でもう

まくいく、と思いこみすぎたのではなかろうか。そのためには上等の機械や、よい方

法を手に入れる必要があるが、それらはお金で買うことができる。そして、やがてお

金さえあれば何でも思いどおりになる−幸福になる−と考えるようになる。
② ふ とうこう なや
 このことをはっきりと示す例として、子どもの不登校に悩んでいた父親から、「科学

が発達した今日、ボタンを上手に押せば人間は月まで行って帰って来られるのに、息
せま
子を学校に行かせるボタンはないのですか」と迫られたことがある。科学技術は、操

作する側とされる側が(   ③   )ときにのみ有効である。父親と息子という

人間関係があるところでは、それは役立たない。

 そのことを忘れて、現代人は他人を上手に操作して自分の思いどおりにすることが
さっかく
できると錯覚しているのではなかろうか。うまい育児法に従って自分の子どもを 「よ
めんどう
い子」に育てるとか、高齢者に対するよい「対策」を見つけて、面倒をなくするとか。

そして、その結果、子どもや高齢者は、自分を「人間あつかい」してくれないと、な

んとなく感じとって、よけいに悪い方向に向かうと思われる。

 人間関係というと、話が急にかたくなる。親子の対話をどうするのかなどという前に、
5
家庭でも友人でも、とにかく「一緒に生きているんやで」とでも言いたいような感情
ささ
の共有ということがあるのではなかろうか。そのような感情に支えられてこそ、人間

は自分は生きていると感じられるのである。

 このことを忘れて、何とか他人を「操作」したり「支配」したりして、自分の欲望

をとげるのが幸福だと思う。そして、そのために必要と考えるお金やマニュアル探し
の ④
に熱心になっているうちに、先に述べたような他人との感情を共有する態度が弱くなっ

てしまう。

 豊かな物に見合うだけの心のつながりを大切にすることに、もう少しエネルギーを

使ってはどうだろう。足もとにあるたくさんの果物のことを忘れ、高い木になってい
(注2) (注3) ぐんしゅう
る果物を取り合いするために、われ勝ちに高く登ろうといがみあっている群衆。日本
すがた
人はこんな姿にならぬように、まず人と人とがつながって分け合う楽しみを見いだし

てほしい。

   【河合隼雄「日本人はいま幸福か」(『読売新聞』 2004 年 4 月 14 日付夕刊)】

 (注1)マニュアル:分からない人のために使い方を説明したもの。手引き。

 (注2)われ勝ちに:人に負けまいと、先を競う様子。

 (注3)いがみあう:人が互いに敵意をもって争いあう。

問1 ( ① )に入る適当な語はどれか。

 1 やはり            2 つまり    

 3 ただし            4 したがって

問2 ②「このこと」というのは、何を指しているか。

 1 客観的に研究し、因果の法則を見いだすこと。    

 2 子供を学校に行かせることができる方法を手に入れること。    

 3 お金さえあれば何でも思いどおりになると考えること。    

 4 どんなことにもマニュアルがあると考えること。

6
問3 ( ③ )に入る適当な語はどれか。

 1 無関係な            2 平等な関係の   

 3 正反対の            4 同一の

問4 ④「他人との感情を共有する」というのは、どのようなことか。

 1 自分は生きていると感じられること。

 2 お互いに助け合い、一緒に生活すること。   

 3 人と人とがつながって分け合う楽しみを見いだすこと。 

 4 相手と十分に話し合うこと。

問5 ⑤「足もとにあるたくさんの果物のことを忘れ、高い木になっている果物を取
(注2) (注3) ぐんしゅう
   り合いするために、われ勝ちに高く登ろうといがみあっている群衆」とあるが、

   それはどのような人の姿を表しているか。

 1 相手を操作し支配しようとする姿。

 2 より多くの利益を得ようと、他人と競争し敵対する姿。  

 3 高い理想を持って努力する姿。 

 4 お金やマニュアル探しに熱心になっている姿。

問6 この文章で筆者が一番読者に対して述べたいことは何か。

 1 物質的にはもう十分に豊かであり、これ以上欲望を追求する必要はないこと。

 2 科学技術は決して万能ではないこと。 

 3 もっと人と人のつながりを大切にしてほしいこと。 

 4 何でもマニュアル通りに動かせるといった誤った考え方をやめること。

7
問題Ⅱ 次の(1)から(3)の文章を読んで、それぞれの問いに対する答えとして、
     最も適当なものを1、2、3、4から一つ選びなさい。

(1) 「自分は本当に何をしたいのか」といった問いを自分自身に向けるのは、特に
辛いことだ。タマネギの皮をむくように、いくらむいていっても何もなかったという
おそ
気持ちに襲われることもある。

 一方、読書の場合はすぐれた相手との出会いがあり、自分自身の内側を見つめてい

るだけでは、とうてい見えてこない世界に開かれるのが読書だ。読書を通して、時も
ふ だん
場所も離れた人間と出会うということは、普段のコミュニケーションとは違う楽しい
きんちょう かん
緊張感を味わわせてくれるのである。(  ②  )なのがテレビだ。テレビ番組を見
すき
ていれば、自分に向き合う必要もないし、テレビはそのような隙も与えない。テレビは、
かん き
自分の外側の問題に興味を喚起させる力はあるが、自分自身と向きあう時間はつくり
ばいたい
にくい媒体だ。テレビの時間は、テレビをつくる側が管理している。どのようなテン
し ちょうしゃ たい くつ
ポでどんな情報を組み合わせれば視聴者が退屈しないのかを計算して時間の流れをつ

くっている。それに対して、読書の場合は、途中で休んでもいいし、速いスピードで

読み続けてもいい。読書の時間は、読者の側がコントロールしているのである。

                 (斎藤 孝『読書力』(岩波書店)より)

問1 ①「自分は本当に何をしたいのか」といった問いを自分自身に向けるのは、特

   に辛いことだ」とあるが、どうして辛いことなのか。

 1 自分自身に問いかけるだけでは、なかなか答えが出てこないから。

 2 自分自身に問いかけても、自分が成長するわけではないから。   

 3 自分自身に問いかけても、すぐれた相手との出会いがないから。

 4 自分への問いかけは、単調で退屈な作業だから。

問2 ( ② )に入る適当な語はどれか。
せっきょくてき こう か てき
 1 積極的              2 効果的   
てんけい たいしょう
 3 典型的              4 対照的

8
ふし め せま

(2)人生の節目節目で、我々はいろいろな選択や決断を迫られますが、その決断も
せんたく し
複数ある選択肢のどれでもいいや、という選択や決断ではうまくゆきません。(  ア

  )自分は何をしたいと思っているのか、どの程度のことをしたいと思っているのか、

あるいは今選ぼうとしていることが自分の性格に合っているのかどうか、その方向を
(注1)
選べばその後の生活はどのような方向へ向かうのか、などということについてあらか
(注2)
じめある程度の考えを持っていないと、見当をつけられません。(  イ  )
あつか なが
 見当をつける、というのは扱っている問題を一度手元から離して、遠い距離から眺め、
おおわく
他の問題とのかかわりがどうなっているのかという大枠を知ることです。
(  ウ  )
たいきょくかん
日本には大局観という言葉があります。また、英語から輸入され、日本でも定着して

いることわざに、
「木を見て森を見ず」というのがあります。あるいは「(  ①  )」
おろ
ともいいます。細部にこだわって見当をつけられない愚かな状態のことを笑っている

のです。(  エ  )部分的な、狭い知識だけでは、全体がどうなっているのかは判

断出来ません。大きな立場から見ると、それまで見えていなかったことが見え、わか

らないこともわかるようになります。

         (山鳥 垂『「わかる」とはどういうことか』<筑摩書房>より)

 (注1)あらかじめ:その事がおこる前から。事前に。

 (注2)見当をつける:だいたいの方向や計画を決める。

つか
問1 「全体像を掴むことです」という一文が入るのは、ア〜エのどこか。

 1 ア                2 イ   

 3 ウ                4 エ

問2 ( ① )に入る適当なことわざはどれか。
いしばし わた
 1 石橋をたたいて渡る              
ねんぶつ
 2 馬の耳に念仏   
い かわず たいかい
 3 井の中の蛙、大海を知らず              

 4 急がば回れ

9
(3)国際感覚があるということは、ただスラスラと外国語を話し、外国人とそつな
くつきあえるというような単純なことではありません。また、国際感覚を身につける
ま ほう つえ
ということは、これさえ手に入れれば大丈夫というような、一本の 「魔法の杖」を見

つけることでもありません。それは、現代社会の中で、21 世紀に生きる私たちの生き
つらぬ
方について考えることでもり、一人の人間が自分の生き方を貫こうとしたら、いった

いどういう資質が求められるか、と問うことでもあります。
わく
 ただ私たち日本人の場合、どうしてもまず日本という国の枠を考え、その枠組みの
し しつ
中で、「世界に誇れる日本人の資質とは何か」と考えてしまいがちです。ただ、現代で

は、自分の国の国益さえ守れればそれでよい、という時代ではなくなってきています。
あらわ
そのことは、国際的問題が広く認識されるようになったことにも現れています。
り えき しょうとつ
 (  ②  )、世界の自然環境を守ることと、ある国の経済的利益が衝突するとい

うことは、いくらでも起こりうることです。そのときに私たちが、自分の国の利益だ
(注1)
けにとらわれずに、より普遍的な視点から発想できるかどうかが問題になってきます。
かか
一つの時代を共に生きるということは、その時代が抱える問題を、世界の人びとと共

有することでもあるからです。

             (渡部淳 「国際感覚って何だろう」<岩波書店>より)
こうそく
(注1) とらわれる:拘束される。

問1 ①「21 世紀に生きる私たちの生き方について考えること」とあるが、それはど

   のような国際感覚のことか。

 1 最後まで自分の生き方をつらぬくこと。

 2 世界に誇れる日本人になること。   

 3 国益に立って行動すること。

 4 国益を越えた普遍的な視点から発想できること。

問2 ( ② )に入る適当な語はどれか。

 1 もちろん             2 たとえば   

 3 しかし              4 たしかに

10
解答と解説
問題Ⅰ
て ほん
もたらす: 手本:

見いだす: マニュアル:
したが のぞ
従う: 望ましい:

うまくいく: 〜どおり:
おも
思いこむ: 〜さえ〜ば:
せま にんげん
迫る: 人間あつかい:
み あ
とにかく: 見合う:

つながり: エネルギー:
あし が
足もと: われ勝ち:

いがみあう:
<解   説>

問1:前の句と後ろの句は、同じ内容の言い換えとなっている。 

問2:3か4かが問題。後ろの文を読めば、焦点が「金」でなく「マニュアル=方法」

   にあるとわかる。 

問3:第一段落にも「対象と無関係な立場に立って研究」とある。 

問4:2か3かが問題だが、2は「一緒に生活する」が間違い。 

問5:「われ勝ちにいがみあう」の意味がわかればできる。 

問6:論述文では、一般に筆者の一番にいたいこと(=結論)は最終段落に来る。

問題Ⅱ
(1)

タマネギ: 皮をむく:
とう
とうてい〜ない: 〜を通して:
ふ だん
普段: コミュニケーション:
む あ すき
向き合う: 隙:
く あ
テンポ: 組み合わせる:
たいくつ
退屈する: スピード:

コントロール: とうてい〜ない:

11
<解   説>

問1:後ろに続く「タマネギの皮……」の比喩が意味していることは何か。

問2:読書との相違がはっきりしていることを表す言葉。

(2)
ふし め
節目: あらかじめ:
あつか
見当をつける: 扱う:

かかわり: 大枠:

井の中の蛙、大海を知らず: 木を見て森を見ず:

馬の耳に念仏: 石橋をたたいて渡る:

急がば回れ:

<解   説>
つか
問1:「大枠を知る」と挿入する文「全体像を掴むこと」が呼応している。 

問2:慣用句の問題。よく使われる慣用句は2級で出題される。

(3)
スラスラ: そつなく:
み ま ほう つえ
身につける: 魔法の杖:
つらぬ わく
貫く: 枠:
わく ぐ
枠組み: 〜うる:
こだわ
とらわれる: 拘る:

<解   説>

問1:最後の段落に国益論との対比で述べられている。 

問2:「国益だけ守ればいいということではない」ことの例として、環境問題が挙げら

   れている。

<第1回解答>
問題Ⅰ 問1:2 問2:4 問3:1 問4:3 問5:2 問6:3
問題Ⅱ (1)問1:1 問2:4   (2)問1:3 問2:3 
    (3)問1:4 問2:2 

12
第2回
問題Ⅰ 次の文章を読んで、後の問いに答えなさい。答えは、1、2、3、4から最
     も適当なものを一つ選びなさい。

しゅちょう
 自分の飼っている犬は泣いたことがあると主張する人がいる。またある種の記述に
(注1) (注2)
よれば、サーカスで飼われている象は涙を流すという。ヒト以外にも涙を流す動物が

いるのだろうか。( ① )これらの報告は、非科学的な誤った記述なのだろうか。そ
き みょう
うではなく、一見奇妙に思えるこれらの報告は、二種類の異なった涙を同じものとし

てしまった誤りのように思われる。というのは、ヒトにおいては、感情が高ぶったと

きに流される涙(感情の涙)と、目にゴミが入ったときなどに流される涙(連続性の涙)

は、明確に区別されているからである。
しょう こ ま すい
 この区別には、いくつかの証拠がある。たとえば、目の表面に麻酔をかけると、「連

続性の涙」は止まってしまうのだが、「感情の涙」は影響を受けない。目に麻酔をかけ
けむり (注3)
られた人は、煙にさらされようが、目にゴミが入ろうが涙が出なくなるのだが、悲し
(注4)いぜん
みによって涙を流すことは 依然として可能なのである。
ふたた (注5) (注6)
 ここで再び動物が流す涙について考えてみる。( ③ )、そもそも目をうるおすと
(注7)れいちょうるい
いう生理的な目的のために流される「連続性の涙」については、
 霊長類はもちろん、

動物全般にごく普通に共有されているものであろうことは容易に想像がつく。実際あ

る種の海鳥は、海水に含まれる塩分から目を守るために、「連続性の涙」を流すことが

ある。

 しかし、(   ア   )については、正確で信用できるような報告はない。動物

が(   イ   )を流したといういくつかの報告は、この(   ウ   )を
か じょう かい しゃく ふく ④
過剰に解釈したものが多く含まれるように思われる。結局、真の問題点は動物の内的
し ひょう
状態がわからないということにあるのだが、この点は今後、涙とは別の客観的な指標

を用いて、動物の内的な状態を推測することで解決できるものと思われる。

 だが、ここで重要なことは、「感情の涙」がヒト以外の動物にもあるのかということ
とくちょう ⑤
よりは、むしろそれがヒトに特徴的にみられるという点である。「感情の涙」こそ、ヒ

                   13

     
トという生物を考えていく上で重要なのである。

                   (金沢創「『涙』 の進化論」による)

 (注1)サーカス:多くの動物を使って、曲芸などを興行しながら各地を巡業する旅

     芸人の団体。

 (注2)ヒト:生物学的に分類するとき人類。

 (注3)〜うが〜うが:〜ても〜ても、関係なく
い ぜん
 (注4)依然として:元のままである様子。

 (注5)そもそも:はじめから。元来。
しめ
 (注6)うるおす(潤す):水分を含ませる。湿らす。
れいちょうるい
 (注7)霊長類:サルやヒトの仲間。

問1 ( ① )に入る適当な語はどれか。

 1 それとも           2 しかし    

 3 そして            4 さらに

問2 ②「これらの報告」について、筆者はどのように考えているか。

 1 ヒト以外の動物も感情の涙を流すことがある。   

 2 ヒト以外の動物が感情の涙を流すことはない。  

 3 感情の涙と連続性の涙を混同している可能性がある。    

 4 ヒト以外の動物が涙を流すかどうか、まだ確認できていない。

問3( ③ )に入る適当な語はどれか。

 1 すると            2 だから    

 3 それでは           4 それでも

14
問4 ア、イ、ウに入る語の組み合わせとして、正しいのはどれか。

 1 ア:「連続性の涙」  イ:「感情の涙」   ウ:「連続性の涙」    

 2 ア:「感情の涙」   イ:「感情の涙」   ウ:「連続性の涙」   

 3 ア:「連続性の涙」  イ:「二種類の涙」  ウ:「感情の涙」     

 4 ア:「感情の涙」   イ:「連続性の涙」  ウ:「二種類の涙」  

問5 ②「動物の内的な状態がわからない」とあるが、具体的には何がわからないのか。

 1 ヒト以外の動物はどのようなときに涙を流すのか。   

 2 ヒト以外の動物の動物が流す涙は、感情の涙か連続性の涙か。  

 3 ヒト以外の動物は何のために涙を流すのか。    

 4 ヒト以外の動物にもヒトと同じような感情があるのかどうか。

問6 ②「『感情の涙』こそ、ヒトという生物を考えていく上で重要なのである。」と

   あるが、筆者が主張したいことは何か。

 1 「感情の涙」を流すかどうかこそが、ヒトとヒト以外の動物の違いを示す指標で

   ある点が重要だ。  

 2 ヒト以外の動物が「感情の涙」を流すかどうかということより、ヒトが感情を

   持ち、感情の涙を流す動物だということが大切だ。  

 3 ヒト以外の動物が「感情の涙」を流すかどうかということを研究しても、ヒト

   の生活を向上させる上で何の役にも立たない。   

 4 ヒト以外の動物が「感情の涙」を流すかどうかという研究は、ヒトという生物

   を知る上でも重要な研究である。

15
問題Ⅱ 次の(1)から(3)の文章を読んで、それぞれの問いに対する答えとして、
     最も適当なものを1、2、3、4から一つ選びなさい。

(1)総体的にみて、日本人ほど情報をすんなり受け入れて、気安く自分のものに同
化してしまう民族も少ないと思います。その情報の一般化と、( ① )の日本化は、
ねっきょう (注1) せっしゅ
他に例を見ません。戦後のあの熱狂的なアメリカ文化とデモクラシーの摂取は、今の

中年以上の人々はよく覚えていると思います。
そしゃくりょく (注2)
 このすさまじい情報の吸収、咀嚼力は、開発途上国が先進国からお仕着せに与えら

れる文化の受け入れ方とは、根本的に違っています。たとえば南米やアフリカ諸国、

中近東の国々の人たちは、独自の文化は文化、西欧化は西欧化とはっきり区別しており、

表面的には受け入れても、それは与えたほうの姿のままで、ほとんど元の形なのです。

シャツ一つにしても、着ていることは着ていても、文字どおりお仕着せで、自分たち
かいぞう
の風土に合わせて改造し、独自なものを作り上げるということをほとんどしない。し
はんすう ②
かし日本人は、牛のように咀嚼、反芻して、本来の日本的なものと輸入されたものを
こんぜん
渾然と中和して、自分に一番よいものにしてしまう力を持っている。

              (手塚治虫「ガラスの地球を救え」<光文社>より)

 (注1)デモクラシー:民主主義。民主政治

 (注2)お仕着せ:自分の意志とは関係なく、一方的に与えられること。

問1 ( ① )に入る適当な語はどれか。

 1 文化             2 伝統    

 3 シャツ            4 輸入品

こんぜん
問2 ②「本来の日本的なものと輸入されたものを渾然と中和して、自分に一番よい

   ものにしてしまう力」と同じ意味でよく使われる言葉はどれか。
だいどうしょう い いっきょりょうとく
 1 大同小異           2 一挙両得    
い しんでんしん わ ようせっちゅう
 3 以心伝心           4 和洋折衷

16
(2)春が来て、自然がふたたびいろいろな色を見せるようになると、君はうれしい
(注1) むらさきいろ
ですか?ライラックは紫色に輝き、タンポポは黄色の花を咲かせます。でも木々につ

いている葉っぱだけは緑色です。どこを向いても緑色です。

 なぜ他の色にならないのでしょうか?実は葉っぱはもっと重要なことを行っている
ようりょく そ
ので、そのために緑色が必要なんです。この緑色(葉 緑素 と言います)があるから、

木や草は生きていられるし、大きくなることができるのです。そしてこの緑色がある

から、新しい木や草が地面の中から出てくることができるのです。しかも木や草がほ

かの生き物を食べなくてすむのも、この緑色のおかげなのです。
きゅうしゅう
 そのわけは、葉緑素には他の色ではできないことができるからです。吸収した日光
に さん か たん そ たんすい か ぶつ
を電流に変え、空気中の二 酸 化 炭 素 と水をもとにして炭 水化 物 を作っているのです。

私たち化学者はこの魔法を( ② )と呼んでいます。「光を使っていっしょに作る」

という意味です。そしてふたたび新しい葉っぱや花、実をこしらえるのです。

 では、この光合成のことを分かってもらうために、まず光のことをお話しましょう。

   (「ノーベル賞受賞者に聞く 子供のなぜ?なに?」<主婦の友社>より)

 (注1)ライラック:〔植〕リラ (lilas) の英語名。

 (注2)タンポポ:キク科タンポポ属の多年草の総称。蒲公草。

ようりょく そ
問1 ①「この緑色(葉緑素と言います」とあるが、この緑色ができないことはどれか。

 1 木や草がいろいろな色を見せること。           

 2 木や草が成長すること。    

 3 木や草が他の生き物を食べないこと。          

 4 新しい木や草が生まれること。

問2 ( ② )に入る適当な語はどれか。

 1 葉緑素            2 光合成    

 3 炭水化物           4 吸収

17
(3)よく「個性的になれ」とか、「個性的な人になりたい」とか言うよね。でも、人
は個性的になろうとして個性的になれるわけじゃない。なぜなら、そんなことをしな

くたって、現にすべての人は個性的だからだ。同じ人は二人といないからだ。
(注1)
 わかりやすい身近な例から考えてみようか。たとえば宇多田ヒカルみたいな人が現
(注2)
われるとする。そうすると、すぐに、彼女のまねをした似たような歌手がいっぱい出

てくるよね。それを見た君は、ああ宇多田ヒカルのまねだなとすぐにわかるだろ。そ

して、つまらないな、ちっとも魅力的でないなと感じるだろ。そりやそうだよね。宇

多田ヒカル本人にしてみれば、誰のまねをしているわけでもなくて、自分の好きなよ

うに歌うとこうなる、こうなってしまう。逆から言えば、そうとしか歌えないからそ
(注3) ねんとう ① ひ
う歌っているわけだ。聴衆のウケなんか念頭にないわけだ。聴衆はそこにこそ惹かれ
にせもの
る。彼女がそのままであるというところにこそ惹かれることになるのだが、偽物には

それがわからない。自分が本当にしたいことがわかっていないから、人のまねをしたり、

他人のウケを気にしたりということになってしまう。

            (池田晶子「14 歳からの哲学」<トランスビュー>より)

 (注1)宇多田ヒカル:米国在住、自作の歌を歌う国際派の若手女性歌手。

 (注2)まねをする:模倣する。

 (注2)聴衆のウケ:聴衆の評判。聴衆が喜んでくれるかどうか。


問1 ①「聴衆はそこにこそ惹かれる」とあるが、聴衆はどこに惹かれるのか。

 1 個性的な歌い方をすること。  2 自分が好きなように歌うこと。    

 3 聴衆のウケを気にしないこと。 4 人のまねが上手なこと。

問2 筆者は個性的になるにはどうすればいいと述べているか。

 1 人と違ったことをすること。           

 2 周りのことは気にしないで、自分の好きなように生きていくこと。

 3 今のままで何もしないこと。           

 4 自分が本当にしたいことを見つけること。

18
解答と解説

問題Ⅰ
サーカス: ヒト:
かんじょう たか ま すい
(感情が)高ぶる: (麻酔を)かける:
けむり
(煙に)さらす: 〜うが〜うが:
い ぜん
依然として: そもそも:

〜はもちろん: (目を)うるおす:

〜より、むしろ〜: 〜る・上で:

<解   説>

問1:「〜か、(   )〜か」という選択になっている。 

問2:1は明らかな間違い。2は「感情の涙を流すことはない」と断定している点が誤り、
   4は「感情の涙」でなく、単に「涙」となっている点が誤りとなる。

問3:前の文と後ろの文の関係はどうなっているか。逆説でもなく、「原因→結果」で

   もない。なお、「それでは」の後には人の意志行為や呼びかけがくる。 

問4:一度入れて読んでみる。アが「感情の涙」とわかれば、選択肢は二つしかない。

問5:「連続性の涙」か「感情の涙」かを知るための、「別の指標」は?

問6:1と3は明らかな間違い。2か4かになるが、前の一文に注意する必要がある。
とくちょう
   筆者は、「感情の涙」がヒトに特徴的にみられることを重要だと考えている。

問題Ⅱ
(1)

すんなり: デモクラシー:
し き
すさまじい: お仕着せ:

Nのまま: 〜に合わせる:
も じ
〜にしても: 文字どおり:
こんぜん そ しゃく はんすう
渾然: 咀嚼・反芻:
だいどうしょう い いっきょりょうとく
大同小異: 一挙両得:
い しんでんしん わ ようせっちゅう
以心伝心: 和洋折衷:

19
<解   説>

問1:後ろに続く文から、「文化」が自然となる。

問2:慣用句の問題。ここに載せてあるものは、よく使われる四字熟語。

(2)

ふたたび: ライラック:

タンポポ: 〜なくてすむ:

〜おかげ: わけ:

〜をもとにして: こしらえる:
<解   説>

問1:後ろに続く「タマネギの皮……」の比喩が意味していることは何か。 

問2:「大枠を知る」と挿入する文が呼応している。

(3)
〜うとする: 〜わけではない:

まねをする: なぜなら〜からだ:
ちょうしゅう
〜にしてみれば: 聴衆のウケ:
ねんとう ひ
念頭にない: 〜に惹かれる:
にせもの き
偽物: 気にする:

<解   説>

問1:1か2か迷うが、筆者は「彼女がそのままであるところ」と繰り返している。

問2:一番最後の文に、「自分が本当にしたいことがわかっていないから、人のまねを

   したり……」と何が大切なことか述べている。

<第2回解答>
問題Ⅰ 問1:1 問2:3 問3:1 問4:2 問5:4 問6:2
問題Ⅱ (1)問1:1 問2:4   (2)問1:1 問2:2 
    (3)問1:2 問2:4 

20
第3回
問題Ⅰ 次の文章を読んで、後の問いに答えなさい。答えは、1、2、3、4から最
     も適当なものを一つ選びなさい。

 なぜ、地球上の水不足は起こるのでしょうか。そのもっとも大きな原因は、人口の
じゅよう
増大により水の需要が増えるためです。国連の調査資料によると、1995 年の世界の水

使用量は 3 兆 5720 億立方メートルで、人口 83 億人と予想される 2025 年には、1.4 倍



の 4 兆 9130 億立方メートルになると予想されます。そのため世界で水不足の状態にお

かれる人口の割合は、1995 年の 3 分の 1 から、2025 年には 3 分の 2 に拡大するとみら

れます。

 人口が増えれば食料や工業製品の生産も拡大し、農業用水や工業用水の需要も増加
か せん
します。一方、水源のほとんどは河川で、しかも存在する水量は一定で、増えること

はありません。(  ②  )、需要が増加したからといって、どんどん使い続けていっ

たら、やがて不足することは目に見えています。その上、産業排水や生活排水の処理
すいしつ お せん たんすい
が不十分なため、水質汚染が進み、使える淡水はさらに減り続けています。
かんそう かいはつ と じょうこく
 すでに現在でも、大きな河川がなく、降水量が少ない乾燥地帯にある開発途上国を
しんこく
中心に、深刻な水不足が増大しており、アジア、アフリカなど 31 カ国で絶対的な不足

に悩んでいます。その結果、12 億人が安全な飲料水が確保されず、年間 500 万〜 1000


はいすいしょ り せつ び
万人が水が原因で死亡しています。このような途上国地域では排水処理設備の整備も

遅れているため、病気の 80 パーセントは汚れた水が原因で、それにより子どもたちが
(注1)
8 秒に 1 人が死亡していると、WTOは報告しています。

 幸い私たちの住む日本では、水にそれほど不自由していませんが、よその国の話だ

とのんびりかまえていていいのでしょうか。世界の水不足は日本にどんな影響を与え

るのでしょうか。わが国は世界でも比較的降水量が多く、水は豊富にあるように思わ

れますが、大量の水を(  ③  )していることを知っている人は少ないようです。

日本は農産物や木材、工業製品など、大量の水を使って作られている製品の輸入国で、
まめるい せん い
農産物では豆類、小麦などは 90 パーセント程度を、繊維製品は全需要量の 60 パーセ
21
ントを輸入に頼っています。また日本の木材輸入量は世界第 1 位で、世界全体の 25 パー

セントを占めています。このように日本は世界中からさまざまな製品を輸入している

わけですが、製品を通して世界中の水を輸入していると言ってもいいのです。その量

は輸入農産物だけについてみても、その生産に必要な水量は年間約 50 億立方メートル
(注2) ひっ てき ④
と計算されています。これは約 4000 万人分の生活用水使用量に匹敵します。日本経済は、

この目に見えない水の輸入によって成り立っているです。

 今、お隣の国中国も深刻な水不足に悩んでおり、1997 年、黄河は海に上流からの水

が到達しない日が、過去最高の 226 日を記録しました。このような水不足により、中


こくもつせいさん
国の穀物生産は 1999 年から三年間で 500 万トンも減少しています。中国から大量の食

料品、衣料品、工業製品を輸入しているわが国としては、もし水不足の影響で中国か

ら品物が入ってこなくなったとしたら、経済的に大きな打撃を受けます。ですから、

よその国の水不足は、私たちの生活や経済にとって決して無関係ではないのです。

 (岡崎稔・鈴木宏明『調べてみよう 暮らしの水 社会の水』<岩波書店>による)

 (注1)WTO:世界保健機構。国連の専門機関の一つ。

 (注2)〜に匹敵する:自分の意志とは関係なく、一方的に与えられること。

問1 ①「そのため」というのは、何を指しているか。

 1 排水処理設備の整備の遅れ。  2 降雨量の減少。  

 3 工業用水の需要の増加。    4 人口の増大。

問2 ( ② )に入る適当な語はどれか。

 1 また             2 しかし    

 3 それに            4 したがって

問3 ( ③ )に入る適当な語はどれか。

 1 海外から輸入         2 海外へ輸出    

 3 海外で生産          4 国内で消費

22

問4 ④「日本経済は、この目に見えない水の輸入によって成り立っているです。」と

   あるが、「目に見えない」とはどういうことか。

 1 日本は世界中から水を輸入しているので、どこの国で水不足が起こっているか

   知らないでいること。  

 2 日本は多くの農産物や工業製品を輸入しているが、それらの生産に大量の水が

   消費されていることに、私たちが普段気づかないでいること。

 3 新聞やテレビなどであまり取り上げられることがないので、どれほど水を消費

   しているか、多くの日本人は知らないこと。     

 4 日本は降水量も多く、水が豊富にあるので、水の大切さを普段は気づかないま

   ま生活していること。

問5 筆者は日本の水の状況についてどう考えているか。

 1 日本は降水量が多く、水不足になる恐れはないだろう。

 2 日本はすでに海外からの水の輸入に頼らなければやっていけない状況にある。

 3 日本は開発途上国からの農産物や工業製品の輸入を少なくする必要がある。

 4 地球温暖化が進むと、地球規模で降水量が減り、日本もその例外ではない。

問6 筆者はこの文章を通して何を読者に訴えているか。

 1 毎日の暮らしの中で、水を大切に使う

   ようにしよう。 

 2 地球人口の増加を少なくする方法を考

   えよう。    

 3 深刻な水不足に悩んでいる開発途上国

   を援助しよう。            

 4 よその国で起こっている水不足を、自

   分たちの問題として考えよう。

23
問題Ⅱ 次の(1)から(3)の文章を読んで、それぞれの問いに対する答えとして、
     最も適当なものを1、2、3、4から一つ選びなさい。

(1) 科学文明というものはどういうものかと考えていくと、いつでもより新しく、
より効率良く、僕たちの手や足に代わって便利で快適な暮らしを作ってくれるもので

ある。では、文明に対して文化とはどういうものかというと、困ったことに全く反対

の性格を持っているのである。つまり、いつでもより古く、より深く、したがって効

率が悪く、不便や我慢がいっぱいある。

 便利で効率が良い方がいいではないか、古いものよりも新しいものの方がいいでは

ないか、と僕たちは考えるかもしれないが、実はそれが間違いなのだ。なぜか。例えば、

私たちは飛行機や新幹線で便利になったけれど、馬の背で旅をする幸福感を失ったの
きょう き ほろぼ
である。環境問題や核兵器のように、行き過ぎた科学文明は凶器となり、人間を滅ぼ

してしまう恐れがある。この行き過ぎた科学文明を幸福のために使う力、( ア )が
ゆる おだ
凶器になる部分を緩やかに穏やかにする力こそが( イ )なのである。( ウ )と

は本来、科学技術の高さの代わりに深みのあるもの、便利になる代わりにゆっくり考
とうと
えることなのである。私たちは便利さだけでなく、不便さも大切にし、我慢の力を尊び、

人の幸福を考えていくようにしなければならない。

                         (大宮宣彦「芸術」より)

問1 ア〜ウに入る言葉の組み合わせで正しいのはどれか。

 1 ア:文明 イ:文化 ウ:文明  2 ア:文明 イ:文化 ウ:文化

 3 ア:文化 イ:文明 ウ:文明  4 ア:文化 イ:文明 ウ:文化

問2 筆者は文化と科学文明の関係についてどのように考えているか。

 1 科学文明は生活を便利に快適にするが、人を幸福にする力はない。

 2 これからの時代は、文明の便利さよりも文化の不便さが大切になる。   

 3 科学文明によって生活が豊かになれば、人の心も豊かになる。

 4 文化と科学文明は対立する面もあれば、補い合い、共存する面もある。

24
(注1)

(2)ビグミーたちの生活において、大切とされることがいくつかある。そのうちで
も特に重要視されることは、食物の分かち合いである。特に肉や蜂蜜などの特別な食
(注2) りょう
物は、一度キャンプに持ち帰ってきたら、必ずほかの人びとにも分配される。猟に参

加した人もしなかった人も、みんな、同じように肉をもらうことができる。

 ここでは、「働かざるもの食うべからず」という格言は通用しない。同じキャンプで

いっしょに暮らしているかぎりは、みんな同じように喜んだり、楽しんだりしなけれ
まんぷく
ばならない。「お腹がへるときもいっしょ。満腹するときもいっしょ。それが我々の生
たんたん
き方なんだ」と言う。肉の分配は淡々とまったく(  ①  )ことのように行われる。

肉をもらう人も(  ①  )ことのように受け取るだけだ。お礼の一言も言わない。

あげたほうも、それでまったくかまわない。彼らにしてみれば、いちいちお礼を言わ
(注3)
なくちゃならないなんて、水くさいということなのだろう。キャンプとは、ひとつの
きょうゆうざいさん
大きな家族のようなもので、キャンプのものはみんなの共有財産なのである。

   (寺嶋秀明「森に生きる人 アフリカ熱帯雨林とピグミー」<小峰書店>より)

 (注1)ピグミー:アフリカ中部の

     熱帯雨林に住む採集狩猟民。

 (注2)キャンプ:野営。野営地。

 (注3)水くさい:他人のようにふるまう。

問1 ( ① )には同じ語が入るが、それはどれか。

 1 ふしぎな            2 当たり前の

 3 よけいな            4 ほんとうの

問2 ②「お礼の一言も言わない」とあるが、それはなぜか。

 1 みんないっしょに働いているから。
ふうぞく しゅうかん
 2 お礼を言わないのがピグミーの風俗・習慣だから。   

 3 キャンプでは上下はなく、みんな平等だから。

 4 キャンプのものは、みんなのものだから。

25
(3)会話というのは、話し手と聞き手が入れ賢りながら、一つの話題について共に
心を広げながら楽しむことだと私は思う。
(注1)
 ( ① )、インターネットは、こちらの質問に対してジャストミートの答えが返っ
(注2) (注3)
てくるか、チヤツトのように文字経由で意見のエッセンスが交わされるだけで、そこ

には瞬時の判断や、緊迫した言葉のやりとりという息づかいが感じられない。また、

二四時間一方的に発信できる電子メールに慣れてしまうと、瞬時に答えを判断して、
(注4)
言葉のキャッチボールを楽しむ力は失われていくのではないだろうか。

 もう一つ、会話のやり方を忘れてしまうと、人の考えを受け入れる力も弱くなるよ

うな気がする。一方的に聞いてくれたり、百パーセント同意してもらえなければ満足

できなかったり、苦しみや喜びを共感し合えなくなったりさえするかもしれない
② そうしつ
 だとすれば、会話の喪失は、心の喪失なのではないだろうか。

      (三宮麻由子「目を閉じて心開いて」<岩波書店>より)

 (注1)ジャストミート:正確に受け止めること

 (注2)チャット:おしゃべり・雑談の意味。

 (注3)エッセンス:物事の本質。

 (注4)言葉のキャッチボール:言葉の受け答え。

問1 ( ① )には同じ語が入るが、それはどれか。

 1 そこで             2 さて

 3 だが              4 だから

そうしつ
問2 ②「会話の喪失は、心の喪失なのではないだろうか。」とあるが、どうして会話

   の喪失が心の喪失になるのか。

 1 人と苦しみや喜びを共感し合う心を失わせるかもしれないから。

 2 瞬時の判断や、人と緊迫した言葉のやりとりができなくなるから。

 3 人と言葉のキャッチボールをする能力を失うかもしれないから。

 4 人の考えを受け入れる力も弱くなるから。

26
解答と解説

問題Ⅰ
りっぽう め み
ー立方メートル: 目に見える:
しんこく
すでに: 深刻:

のんびり: かまえる:
ひってき
〜に匹敵する: ートン:
<解   説>

問1:「そ」は常に前方指示で、後ろに来る語や内容を指すことはない。 

問2:前の文と後ろの文は、原因ー結果の関係にあることがわかれば、「したがって」
   しか残らない。この「したがって」は「だから」と違って結果を強調する。

問3:同じ段落にも「水の輸入」という語が使われている。文章全体から考えるよう

   にしよう。 

問4:「目に見えない」のは直接海外から水を輸入しているのでなく、農作物や製品の

   生産に使われた水を間接的に輸入しているために気づかないという点にある。

問5:1、3は明らかな間違い。4はこの文章では触れられていない内容である。 

問6:1〜4のどれも間違っていないが、この文章の全体の要旨は、水不足をよその

   国の問題と考えている日本人に注意を喚起する目的で書かれている。

問題Ⅱ
(1)

〜に代わって: 〜ことに:
おそ とうと
〜恐れがある: 尊ぶ:

<解   説>

問1:アが「文明」とわかれば、選択肢は二つしかない。

問2:筆者は、この文章全体を通して、文明と文化の優劣やどちらが大切かというこ

   とは述べていない。科学文明を否定しているわけではない。むしろ相互補完の

   ものと考えていることがわかる。

27
(2)
ピグミー: 分かち合う:

キャンプ: 働かざるもの食うべからず:

〜かぎり(は): 淡々と:

水くさい:

<解   説>

問1:語の意味がわかれば難しくない。「当たり前」は「当然」と同義。

問2:物をもらってもお礼を言わない。それは最後の文にあるように、「他人の物をも

   らう」とは考えないからであり、キャンプの食べ物は共有財産だからであり、 

   全体が大きな家族だからである。

(3)

ジャストミート: チャット:

エッセンス: やりとり:

息づかい: キャッチボール:

〜さえ: だとすれば:

<解   説>

問1:
「そこで」は「そういう状況で/それで」、
「さて」は話題転換、
「だが」は逆接の「し

   かし」と同義。ここは逆説しか考えられない。

問2:「心の喪失」という点に注意する必要がある。2〜4は「能力の喪失」というべ
   きだろう。

<第3回解答>
問題Ⅰ 問1:4 問2:4 問3:1 問4:2 問5:2 問6:4
問題Ⅱ (1)問1:2 問2:4   (2)問1:2 問2:4 
    (3)問1:3 問2:1 

28
第4回
問題Ⅰ 次の文章を読んで、後の問いに答えなさい。答えは、1、2、3、4から最
     も適当なものを一つ選びなさい。

 フランスではしばしば、日本人の顔を評して「ヴィザージュ・エルメティック」と言う。

「内心が読みとれない( ① )な顔」という意味だ。表情が豊かであれば内心が読み
(注1)
取れるかというと、必ずしもそうではないが、言語メッセージの内容と顔の表情は密

接な関わりを持つと考えている人々にとって、無表情な日本人は不可解な存在だ。そ
あいさつ
れに加えて、パリを訪れる日本人団体客は、挨拶をしない、お礼を言わない、笑顔を
れいせつ
見せないと評判で、「日本人は礼節を重んじる人々だと聞いていたが……」と、驚きと
ふ しん
不審の目を向けられている。

 東京人が、他人と話をせず、笑顔を見せず、視線を向けようともしなくなった今、
② と だ
つまり、周りとのコミュニケーションが途絶えた今になって、その重要性が叫ばれ始
(注2)
めている。そして現代人は話し方教室だの自己啓発セミナーだのに通う。かつてはだ

れもが当たり前のように周囲の人々が話しているのを聞き、多種多様な相手と言葉を

交わすことで、いつのまにか覚え、(  ③  )さほど苦痛もなく身につけたコミュ
(注3)
ニケーションのスキルを、今やお金を出して、苦労して習う時代なのだ。

 「電話のかけ方一つ知らない」と若者を非難する大人がいる。しかし考えてみれば、

携帯電話が普及したことで、相手の家に電話をかける時間を気にしたり、取り次いで

くれる家族に対する言葉づかいに気を配ったりする必要がなくなったのだ。必要も機

会もないとしたら、人はものを覚えない。

 時代は後戻りできない。利便性を求めること自体は非難すべきものではないが、利
(注4)
便性のみを追求したツケが、言語コミュニケーションの面でも、いま回ってきている。

漢字の読み書きができなくなったというのは、「ゆとり教育」よりずっと以前に学校教

育を受けた世代にも言えることだ。テレビを見る時間はあっても、読書をする時間は

作れなくなった。加えて、筆記用具がペンからワープロやパソコンに変わった。その
(注5) ご い
結果、漢字が書けなくなっただけでなく、私たちのボキャブラリーから漢字の語葉が
29
激減した。
なま
 各種通信手段の発達によって、対面コミュニケーションの機会が減ったことで、生

身の人間との言葉のやりとりが下手になり、相手の目を見ることができない人が現れ

るのもまた当然の帰結だ。コミュニケーション能力を取り戻すには、自ら機会を作り

出すしかないだろう。エレベーターに乗り合わせた人と挨拶を交わす、相手の目を見
(注6)
て話す、鏡の前で笑顔を作る練習をする、一日に一度は「赤の他人」と言葉を交わし
(注7)
てみるといったことを、一人一人が心がけていくしかない。

          (野口恵子 「かなり気がかりな日本語」(集英社)による)

 (注1)メッセージ:伝言。相手に伝えたいこと。

 (注2)自己啓発セミナー:自己啓発のための講習会

 (注3)スキル:技術、技能など練習して身につけた能力。

 (注4)ツケが回ってくる:以前の無理や悪事の報いがめぐってくる。因果応報。

 (注5)ボキャブラリー:語彙

 (注6)赤の他人:全然知らない他人

 (注7)心がける:常に心にとどめる。常に注意して努力する。

問1 ( ① )に入る適当な語はどれか。

 1 無表情             2 不可解

 3 不審              4 奇妙

と だ
問2 ②「周りとのコミュニケーションが途絶えた今になって」とあるが、筆者は何
と だ
   が原因で「周りとのコミュニケーションが途絶えた」と考えているか。

 1 携帯電話が普及したこと。

 2 筆記用具がペンからワープロやパソコンに変わったこと。

 3 各種通信手段の発達によって、対面コミュニケーションの機会が減ったこと。

 4 学校教育の中でコミュニケーションの仕方を教えなくなったこと。

30
問3 ( ③ )に入る適当な語はどれか。

 1 しかし             2 しかも

 3 それで             4 もっとも

問4 ④「しかし考えてみれば」とあるが、何を考えるのか。

 1 どうして話し方教室だの自己啓発セミナーだのに通うのか。

 2 どうして若者は顔を合わせても挨拶しないのか。

 3 いつごろから日本で携帯電話が普及しはじめたか。

 4 どうして若者は電話のかけ方を知らないのか。

問5 ⑤「利便性のみを追求したツケが、言語コミュニケーションの面でも、いま回っ

   てきている」とあるが、
「利便性のみを追求したツケ」と考えられないのはどれか。

 1 10 年以上も学校で英語を勉強しているのに、会話ができない人が多い。 

 2 漢字は読めても書けないという人が増えてきた。    

 3 相手の目を見て話すことができない若者が多い。            

 4 現代人は生身の人間との言葉のやりとりが下手になった。

問6 筆者の考えと合っているのはどれか。

 1 学校でも生身の人と人の会話の機会を増やしたり、コミュニケーション能力を

   育てるための授業をするべきだ。

 2 話し方教室や自己啓発セミナーに通っても、コミュニケーション能力がつくわ

   けではないから、自分で生身の人との会話の機会を増やすようにした方がいい。

 3 コミュニケーション能力を取り戻すには、私たち一人一人が対面コミュニケー

   ションの機会を増やす努力をすることだ。           

 4 コミュニケーション能力を育てるには、できるだけ携帯電話や電子メールなど

   の通信手段を使わない方がいい。

31
問題Ⅱ 次の(1)から(3)の文章を読んで、それぞれの問いに対する答えとして、
     最も適当なものを1、2、3、4から一つ選びなさい。

と らい

(1)日本は様々な民族が渡来し混交した雑種社会であり、日本列島の上に形成され
たと (注1)
た文化も、いわば一種の雑種文化です。この日本文化を喩えて、「ラッキョウ文化」と

言う人もいます。ラッキョウの皮を一枚一枚剥いで行くと最後に何も残らないように、
(注2) み かた
日本文化には固有文化、オリジナルなものは一つもないとする見方です。(  ア  )
じゃくてん じゅよう
 このラッキョウ文化論の弱点は、外来の文化を受容した時のままで保持していると

考える点にあります。元のままなら、それを一つ一つ取り去ることができるし、取り去っ

たら後には何も残らないでしょう。(  イ  )しかし、受容した文化は、これに手

を加え、場合によっては原形をとどめないほど変えてしまうこともあります。それが

日本人の感性によって育てられ、日本の風土のなかに定着するとき、もはやラッキョ

ウの皮のように剥ぎ取ることはできないのです。例えば、漢字は中国から輸入されま

したが、日本人は漢字からひらがなやカタカナを作り出しました。現代では、カメラ

や自動車づくりの技術がその典型です。(  ウ  )このように、日本人はオリジナ
めいじん
ルに手を加え、オリジナル以上のものに仕立て直す名人でもありました。(  エ  )

               (村井康彦「日本の文化」<岩波書店>に基づく)

 (注1)ラッキョウ:【辣韮・薤・辣韭】。ネギ類に属し、食用とする。

 (注2)オリジナル:独創的。特有の。

問1 「ですから、タマネギ文化論は、文化を単に量として扱い、質の問題として考え

   ていない議論なのです」という文は、ア〜エのどこに入るか。

 1 ア      2 イ      3 ウ      4 エ

問2 ①「それが」とあるが、「それ」が指す内容はどれか。

 1 雑種文化である日本文化     2 受容したままの文化

 3 外来の文化の原形        4 加工された外来文化

32
るいじんえん

(2)人が類人猿から進化するきっかけとなったのが、まっすぐに立って歩くことと
そな
手で道具を使えたこと、それに火を管理する能力を備えたことであったとすれば、文

明が成立し、それが発展するきっかけとなったのは文字の発明だった、といっても言

い過ぎではないでしょう。

 口から発せられる言葉だけでは、声が届かないほど遠いところにいる人に何かを伝

えることができません。( ① )人類は、文字が発明されるまでの長い間、人と人と
ある
直接に顔をあわせる場か、或いは声が届く範囲内でしか、お互いのコミュニケーショ

ンがとれないという状況にありました。

 しかし、文字という記録された言葉は、同時代において空間を飛びこえることがで

きるだけでなく、それを時間軸に沿って運行することも可能でした。記録された文字
でんしょう こうせい ぎゃく
が伝 承 されれば、知識を後 世に伝えることができますし、逆 に後生の歴史家たちは、
い せき
古代の遺跡などから発見された文字を読むことによって、過去の時代の詳しい状況を

知ることができます。つまり、文字は「人類の文明を伝える乗り物」として機能する

ことになったのです。まさに文字こそは、人類の歴史における最も偉大な発明であっ

たと言ってよいでしょう。

              (阿辻哲次「漢字のはなし」<岩波書店>より)

問1 ( ① )に入る適当な語はどれか。

 1 さらに             2 しかし

 3 つまり             4 そのため

問2 ②「まさに文字こそは、人類の歴史における最も偉大な発明であったといって

   よいでしょう」とあるが、それはなぜか。

 1 気持ちを伝え合うには、口で発せられる言葉より文字の方が優れているから。

 2 文字のおかげで、時空をこえて人類の文明を伝え続けることができたから。

 3 記録された文字を通して、古代のことを知ることができるから。

 4 文字がなければ、人類は類人猿のままであり、文明も生まれなかったから。

33
(注1)

(3)近代科学は、人間が自然をコントロールするものと考えてきた。そして、対象
を自分の脳で理解できる範囲内のものとしてとらえ、相手を完全に動かせると考えた。

しかし、工業化を進められるだけ進めた結果、地球の温暖化が進み、異常気象が発生
い でん し
するといった事態を、最初から予想していた者はいなかったのである。近年、遺伝子
く か さいぼうゆうごう ひんしゅかいりょう さっちゅうせいさく7
もつ
組み換え・細胞融合などの技術を利用して品種改良が盛んであるが、殺虫性作物を食
えきちゅう じょそうざいたいせい な たね
べた益虫が死んだり、除草剤耐性菜種と近隣の雑草が交雑して、除草剤が効かない新
あと た そうぐう
種の雑草が生まれたといった報告が後を絶たない。ここでも予期しない事態に遭遇し

たのである。

 こ れらを考えると、環境問題とは、人間が自然をすべて脳に取り込むことができ、
(注2)うらはら
コントロールできると考えた結果、起こってきたとみることもできる。それと 裏腹に、
お せんぶっしつ た じょう か
自然のシステムはとても大きいから、汚染物質を垂れ流しても、「自然に」浄化してく

れるだろうという過大な期待もあった。人間は自然を相手にするとき、理解できる部

分はコントロールし、理解を超えた部分には目をつぶってきた。一言で言うなら、相
けんきょ し せい
手に対する謙虚な姿勢がなかったのである。

 (注1)コントロール:制御すること。支配すること。
うらはら
 (注2)裏腹 : 反対。期待に反すること。

問1 ①「これらを考えると」とあるが、「これら」とはどんな内容を指しているか。

 1 人間は科学によって自然をコントロールできると考えたこと。

 2 工業化を進められるだけ進めたこと。

 3 遺伝子組み換え・細胞融合などの技術を利用して品種改良が盛んであること。
ちょくめん
 4 人が自然をコントロールしようとする試みは常に予想外の事態に直面したこと。

問2 筆者は、環境問題はどうして起こったと考えているか。

 1 人間に自然に対する過大な期待があったから。

 2 人間が科学によって知り得たことは、まだ自然のほんの一部だから。

 3 自然を正しく理解することは、人間には不可能だから。

 4 人間に自然に対する謙虚な姿勢がなかったから。

34
解答と解説

問題Ⅰ
かなら げん ご
必ずしも〜ない: 言語メッセージ:
おも と だ
重んじる: 途絶える:

セミナー: いつのまにか:

さほど〜ない: スキル:
と つ き くば
取り次ぐ: 気を配る:
まわ
ツケが回ってくる: ゆとり:

ボキャブラリー: やりとり:
と もど こころ
取り戻す: 心がける:

<解   説>

問1:後ろに続く文が具体的な説明になっているので、そこから読みとる。 

問2:最後の段落で述べられている。全体を一度読んで、要旨や文章の流れを掴んで

   から各問題をするようにしてほしい。

問3:前の文と後ろの文はどのようにつながっているか。接続詞の問題は、順接?逆接?

   並立?のように考えていくとよい。問2は並立・添加の語がいいとわかる。

問4:この問題も後ろに続く文が問題を解く「鍵」となる。後ろで理由が説明されて

   いるが、何の説明か。

問5:「ツケが回ってくる」の意味がわからないと説けない。また、「〜と考えられな

   いのはどれか」となっていることに注意。 

問6:4は明らかな間違いだが、1、2は内容の半分は正しいが、半分は間違いとい

   う内容となっている。注意力が大切。

問題Ⅱ
(1)
いわば: タマネギ(玉葱):
み かた
オリジナル: 見方:

とどめる: もはや:
て くわ し た なお
手を加える: 仕立て直す:

35
<解   説>

問1:選択問題ではこの形式が一番難しい。一つ一つ入れて読むしかない。

問2:「そ」は、前の文との流れから、何が一番自然かと考える。

(2)
そな
きっかけ: 備える:
い す
〜とすれば: 〜と言っても言い過ぎではない:
ある そ
或いは: 〜に沿って:
〜によって: まさに〜こそ:

<解   説>

問1:<A→B>、前の文と後ろの文がどうつながっているか考える。この文は、原因ー

   結果の関係であることは比較的に容易にわかる。

問2:1と4は明らかな間違い。したがって2か3かの選択になるが、3は文字発見

   の意義を限定しすぎている。

(3)
コントロール: 〜だけ〜する:
あと た うらはら
後を絶たない: 〜と裏腹に:

システム: 目をつぶる:

<解   説>

問1:前の段落と後ろの段落がどうつながっているか考える。常に全体から部分を考

   えることが大切で、筆者は常に予想外の事態に直面してきたことを前の段落で
   例示している。

問2:後ろの段落を丁寧に読めばわかる。「相手に対する謙虚な姿勢」の「相手」は「自

   然」を指している。

<第4回解答>
問題Ⅰ 問1:1 問2:3 問3:2 問4:4 問5:1 問6:3
問題Ⅱ (1)問1:3 問2:4   (2)問1:4 問2:2 
    (3)問1:4 問2:4 

36
第5回
問題Ⅰ 次の文章を読んで、後の問いに答えなさい。答えは、1、2、3、4から最
     も適当なものを一つ選びなさい。

せいめい
 「人間にとっていちばん大切なものは?」と尋ねれば、多くの人が生命だと答えるで

しょう。それでは、その次に大事なものは、いったい何でしょうか。昔の人のことば

に「一眼二足」というのがあります。まず目が大切、足がこれに次ぐという意味ですが、
(注1)
これはあくまで体のこと。(  ①  )、人間が人間らしく生きるのに、もっとも大

きな働きをするのは、ことばではないでしょうか。
きず
 人は、ことばを使いこなすことによって、動物がもたない「文化」を築いてきました。

人が動物と異なるのは、ことば、火、道具の三つを使うからだと言われますが、なかでも、
あし
ことばはもっとも大きなものと言えるでしょう。「人間は考える葦である」と言われま
もち
すが、その前に、まず、「ことばを用いる葦である」と言うことができるはずです。け

れども私たち日本人は、歌をつくったり詠んだりするなかで、独自のことば文化を生

み出してはきましたが、自分のことばをはっきりと意識し、それに誇りをもつことは、
〔注1) さ こく せっしょく
ほとんどありませんでした。長い 鎖国の間、よその国の人との接触がなく、したがっ

て外国語に接する機会もなく、母語だけの世界で生きてきたためとも言えるでしょう。

 「ことば」というと、英語をはじめ、外国語を思い浮かべがちですが、私たち日本人

にとっての「ことば」とは、言うまでもなく「日本語」です。さまぎまな国の人々や

ことばが入り込み、日本の文化のなかに定着を始めている今、私たちはまず、(  ③

  )を改めて「ことば」として意識することが必要なのではないでしょうか。

 人は、この世に生まれたその瞬間から、ことばのなかで生きていかなくてはなりま

せん。一人前の人間になるための第一歩は言葉の習得から始まります。つまり、こど

もを育てるには、何よりもまず、言葉を教えなくてはいけないということです。

 こどもにとって、生まれてはじめてのことばは、母親のことばです。母親は、こど

もにとってはじめてのことばの先生です。母親は、ただ、(     ⑤     )

だけでよいのです。生まれたらなるべく早く、その日のうちに、母親の声を聞かせる
37
のが望ましいと言われています。しかし、その先生が、もしもことばをきちんと話さ

なければどうなるでしょうか。きちんとした日本語が話せないとしたらどうなるでしょ

うか。人間のことばの文化が、世代を越えて伝わらないことになってしまいます。こ

れは、たいへんなことです。

 このはじめのことばのことを、私は「母乳語」と呼んでいます。赤ん坊が母乳だけで、

体がどんどん成長していくのと同じように、こどもの内面は、母乳語だけで育ってい
(注2)かて
きます。母乳が体の 糧なら、母乳語は心の糧というわけです。母親のことばだけで、

こどもの心はどんどん発達していきます。

         (外山滋比古『わが子に伝える 「絶対語感」』(飛鳥新社)より)

さ こく
 (注1)鎖国:外国との通商・交易を禁止すること
かて
 (注2)糧:食糧。活動の元になる力。

問1 ( ① )に入る適当な語はどれか。

 1 もちろん            2 むしろ

 3 ついに             4 じつは

問2 ②「自分のことばをはっきりと意識し、それに誇りをもつことは、ほとんどあ

   りませんでした」とあるが、筆者は何が原因だと考えているか。

 1 母親がきちんとしたことばを話せなくなったから。

 2 日本語にはさまざまな国の言葉が入り込んでいるから。

 3 日本人はもともと言葉を大切にする気持ちが弱いから。
せっしょく
 4 鎖国のため、長い間ほかの国の人やその言語との接触がなかったから。

問3 ( ③ )に入る適当な語はどれか。

 1 日本語             2 英語

 3 外国語             4 母乳語

38

問4 ④「一人前の人間になるための第一歩は言葉の習得から始まります」とあるが、

   それはなぜか。

 1 こどもの心はことばによって成長していくものだから。

 2 人が動物と異なるのは、ことば、火、道具の三つを使うことだから。

 3 人間が生きていく上で、最も大切なのはことばだから。

 4 人間はことばを使って考える動物だから。

問5 ( ⑤ )に入る適当な文はどれか。

 1 赤ん坊にことばを伝える

 2 赤ん坊にことばを聞かせる

 3 赤ん坊の側にいてやる

 4 赤ん坊を大切に育てる

問6 本文の内容と合っているのはどれか。

 1 こどもを育てたり教育するのは、人間だけに与えられた能力である。

 2 きちんとした日本語が話せなければ、外国語を習得することもできない。

 3 こどもにことばを教えるには、まず親がきちんとした日本語を話せなければな

   らない。

 4 赤ちゃんへのことばの教育は、焦らないでゆっくりやる方がいい。

39
問題Ⅱ 次の(1)から(3)の文章を読んで、それぞれの問いに対する答えとして、
     最も適当なものを1、2、3、4から一つ選びなさい。

(1)「嘘をついてはいけない」ということは誰でもが知っている。知ってはいるが、
これは本当には実践することの不可能な真理なのだ。「宿題、ちゃんとしたの?」と聞
すみ
かれて「うん、したよ」と答えたら、宿題を隅から隅までちゃんとしたということになる。

しかし母親が点検したら、「ちゃんとできていない」ところがあった。そうすると母親

はこう言うのである。「ウソをつくんじゃないよ」と。

 しかしある年代に入ると、私たちは心で思うことと、それを実行することは同一に
つね
はゆかないことがわかってくる。口で言うことと実際にできることの間には常にずれ

があるし、Aすると言ってBしかできないことなどいっぱいある。それでも、それを

敢 えて「(   ②   )」とは言わない。もしこうした「ウソ」を自分に認めてあ
(注1)
げなければ、実現できそうにもない自分を、あたかもできるかのように演出し続けな
つく (注2)
ければならなくなり、結果的にもっと大きな嘘をつく自分を創り出すはめになるので

ある。           (村瀬学『なぜ大人になれないのか』<洋泉社>より)

 (注1)あたかも:まるで〜ように

 (注2)はめになる:よくない境遇になる

問1 ①「それを」とあるが、この「それ」は何を指すか。

 1 心で思うことを実行すること。         

 2 私たちが心で思うこと。

 3 Aすると言ってBしかできないこと。        

 4 実際には実現できいないこと。

問2 ( ② )に入る適当な文はどれか。

 1 嘘は許されない         2 嘘をついた

 3 嘘をついていない        4 嘘は必要だ

40
(2)すべての生き物が土に守られ、土が創り出したものに頼って生きていることは

わかったと思うけど、土がかつて生きていたものたちによって作られたものだという
くだ
ことを知ってたかい?土はただ岩や石が細かく砕かれたもの、と思っていなかったか

い?
ねん ど
 岩や石が細かくなったものは砂とか粘土であって、土ではないんだ。そこに生きて
し がい
いた植物の死骸、動物の死骸などの有機物がいっしよになって、はじめて土となるんだ。

草が枯れ、腐って、そこにほんの少しの土ができる。その土に木の種が落ちて成長し、

大木となり、やがて腐って、またほんの少しの土が加わる。そこに草が生え、動物た

ちが草を食べ、老いてその地の土となる。こうして、かつてそこで生きて死んでいっ

た草の、木の、動物たちの……すべての生命のめぐりが、何千、何万年と繰り返されて、
うさぎ
地球の土を作ってきたんだ。空を飛ぶ小鳥も、森をかける兎も緑の木も、そして私も、

一つ一つの生き物は、かつてその地で生きたたくさんの生命の集まりなのさ。そう考
くさばな (注1)
えたら、土も道ばたの草花も、とてもいとおしく、とても大切に思えてこないかい?

              (菅野芳秀「生ゴミはよみがえる」<講談社>より)
か れん
 (注1)いとおしい:かわいいくて、可憐だ。

問1 ①「土がかつて生きていたものたちによって作られたものだ」とあるが、その

   説明として、最も適当なのはどれか。

 1 土は砂や粘土とそこに生きていた動植物の死骸などが加わって作られている。

 2 土は生き物たちの世界であり、すべての生命のふるさとである。

 3 枯れた草や木が最初の土となり、そこに動物の死骸が加わって土を豊かにした。

 4 すべての生き物は土に守られ、土が創り出したものに頼って生きている。

問5 ②「そう考えたら」とあるが、何を指しているか。

 1 動物と植物はお互いに助け合って生きていると考えること。        

 2 すべての生き物が土を離れては生きられないと考えること。

 3 生命のめぐりが、何千、何万年と繰り返されて土が作られたと考えること。

 4 一つ一つの生きものが、その地で生きた多くの生命の集まりだと考えること。

                                     
41
(3)自動車に乗る人は自動車の目になって物を見てしまう。自転車を利用する人は
自転車の目を自分から取り外すことができない。そしてそれらの目が歩行する目と大

きく違うとしたら、それは地上を移動していく速度が異なるからだ。
ど べい あと
 たとえば、自動車で走り去る人には古い土塀の表面がはげ落ちた跡にどんな表情が
いしがき
浮かんでいるかを楽しむことができないだろう。自転車のペダルを踏む人は、石垣の
すき ま け はい
隙間からはい出している草の花を咲かせようとする気配を見落としてしまう。歩く人
かき ね
は字の消えかかった看板にも、破れた垣根の奥の光景にも、一つ一つ向き合うことが
そ しゃく
できる。そして目の中に入れたものをゆっくりと咀嚼しながら考え考え足を運ぶこと

ができる。
しぼ
 その逆に、自動車に乗ってスピードを出せば出すほど、前方視界が両側から絞られ

て狭くなることが知られている。速度によって失われるものは、僕らが考えている以
② と ほ
上に大きいかもしれない。この速度のもつ不自由さという点では、自動車と徒歩の違

いに似た関係が、テレビのように電波によって送られる映像や音声と、活字によって

刷られた紙面との間にあるように思える。

               (黒井千次「美しき繭」<北洋社>より)  

問1 ①「速度によって失われるもの」とあるが、具体的にはどのようなことか。

 1 車や自転車を使わないと、目的地に着くのが遅れ、時間の無駄が生じること。

 2 歩けば目に入る光景も、自動車や自転車では見落としてしまうこと。

 3 スピードを増すほど視野が狭くなり、動作も不自由になること。

 4 車や自転車では季節の移り変わりを楽しむことができないこと。

問5 ②「車と徒歩の違いに似た関係が、テレビ……刷られた紙面との間にある」と

   あるが、自動車とテレビはどんな共通した「速度のもつ不自由さ」があるのか。

 1 得た情報をゆっくり咀嚼しながら考える余裕がない。        

 2 入ってくる情報量は多いが、内容の深さがない。

 3 スピードが速くて、若い人でないと、ついていくのが難しい。

 4 目と耳からの感覚的な情報が中心で、思考力が低下する。

                                      
42
解答と解説

問題Ⅰ
いったい: あくまで:

〜がちだ: 言うまでもなく:
のぞ
なるべく: 望ましい:
かて
糧:

<解   説>

問1:副詞の問題。ここでは「目も足も大切、しかし、どちらかといえば〜の方が〜」

   とつながっている。

問2:すぐ後ろの文に理由が書いてある。一般に論述文は、意見ー理由ー例示と進む

   ことを知っておくと読解にも便利。

問3:「外国語」との対比で、「日本語」が自然となる。

問4:「一人前の人間になるため」とあるので、こどもの成長に焦点がある。2〜4は

   人一般について触れた内容なので、論点がずれている。

問5:こどもにことばを教えるときどうすればいいか。後ろに続いている文の内容から、

   何は一番適切か考える。なお、1の「ことばを伝える」はことばを教える方法

   を述べていない。3、4はことばを教えることと直接関係していない。

問6:筆者は「生まれたらなるべく早く」と述べているので、4は明らかな間違い。1、

   2は内容の本文中のどこにも触れられていない。

問題Ⅱ
(1)
つね
常に: ずれ:

敢えて: あたかも:

はめになる:
<解   説>

問1:問1と問2が連動しているので、難しいかもしれない。嘘となるのはどの場合
   か考えよう。

問2:3、4は明らかな間違い。1か2か、後ろの文とのつながりから考える。

43
(2)
かつて: 〜かい:
〜てはじめて: ほんの:
みち
めぐり: 道ばた:

<解   説>

問1:2、4は土の作られ方とは関係がない。1か3か、注意を要す。文中に、「そこ
し がい
   に生きていた植物の死骸……」とあるが、この「そこに」は「砂とか粘土に」

   という意味である。

問2:1と2は一般的には間違いないが、この文章では触れられていない内容。その

   ような場合は選択肢から外す。3か4かになるが、「いとおしく思える」のはど

   うしてなのか、どちらがより適切かという選択になる。

(3)
と はず お
取り外す: はげ落ちる:
け はい
ペダル: 気配:
み おと む あ
見落とす: 向き合う:
そ しゃく
咀嚼する: 〜によって〜られる:

<解   説>

問1:1は明らかな間違い。3は文の半分「動作が不自由になる」が間違い。4について、

   筆者は「車や自転車では……できない」とまで断定していない。
そ しゃく
問2:前段で、筆者は「歩く=目の中に入れたものをゆっくりと咀嚼しながら考え考

   え足を運ぶことができる」と述べていることに注意。逆に言えば、自動車には

   それができないことになる。テレビは送られてくる情報のスピードに自分がつ

   いていかなければならないが、印刷物は自分のペースで読むことができること
   から、テレビには同様の「速度のもつ不自由さ」が発生する。  

<第5回解答>
問題Ⅰ 問1:2 問2:4 問3:1 問4:1 問5:2 問6:3
問題Ⅱ (1)問1:3 問2:2   (2)問1:1 問2:4 
    (3)問1:2 問2:1 

44
第6回
問題Ⅰ 次の文章を読んで、後の問いに答えなさい。答えは、1、2、3、4から最
     も適当なものを一つ選びなさい。

き が (注1)
 数年前日本で、飢餓のアフリカの子どもたちを救おうとキャンペーンが大々的に行

われたことがあった。キャンペーンは終わってしまったけれども、(  ①  )その
(注2)
ものが終わったわけではない。今でも、世界のどこかで、お腹を空かせ、ギリギリの

ところで生きている人たちがいる。「毎年数百万人の子どもが失明したり、心身の障害
(注3) あと た
を負っている」といった深刻な報告(ユニセフ年次報告一九九〇年)は後を絶たない。

 一方私たち日本人の食生活といえば、お腹がいっぱいになったら、目の前のお皿に

まだ料理が残っていても、「もう食べられない」と残して捨ててしまう。以前、子ども
(注4)
たちの間でビックリマン・チョコのシール集めが流行ったとき、チョコを買っても、シー

ルだけ取って、チョコは食べないで捨ててしまう、ということもあった。私たちは食
どんかん
に関して、ものすごく鈍感になっている。お金さえ払えば、いくらだっておいしいも

のは食べられる。食べ物がなくなるなんて考えたこともない。
う ほうしょく きわ
 同じ地球上に生きていて、一方は飢え、一方は飽食の極み、地球全体で言えば、食
(注5)
糧が足りないわけではないのだ。ただ「豊かさ」が特定の人にか たよっているだけ。

そして「必要」が満たされない一方で、「無駄」が生じている。そこまでは、ちょっと

考えればすぐわかることだ。しかし、現実に一体どれくらいのかたよりが存在してい

るのかを知りたい。(  ④  )、世界的な環境問題の最新資料に詳しい、もと毎日
たか ぎ
新聞論説委員の高榎さんを訪ねてみた。高棟さんは、ジュニア新書『地球の未来はショッ

キング!』 の著者でもある。

 地球上でのエネルギー消費のかたよりを知りたいんです、というと、高榎さんはさっ

そく英語の資料を見せてくれた。「これなんかは面白い記事ですよ」と一番最初に見せ

てくれたのが、アメリカの新聞ニューヨークタイムズ。「牛たちの悩みごとー豊かな暮
しょうちょう
らしの象徴がついに地球の問題リストにのぼってきた」というタイトルだ。「アメリカ
たんぱくげん か ちくぎゅう
人がその蛋白源として頼っている家畜牛が、環境にどのくらい大きな影響を与えよう
45
(注6)
としているかといった話なんです」。記事についているイラストがなかなか笑える。ひ
さいばんしょ けんさつかん せ
とつは、裁判所の被告席に座らされた一頭の牛が検察官にこう責められている。「さて

それでは、君が人間のためにどんないいことをしているのか、正確に述べてみよ」と。
(注7) (注8)
そしてもう一つは、二頭の牛が出てきて、あぐらをかいてヨガをしているヒルダとい
(注10) ⑤
う牛に、もう一頭が「彼らは、 ヨ ーグルトを欲しがっているんだよ。ヒルダ、ねえヒ
〔注9)ひにく
ルダ、ヨガじやないよ、ヨーグルトだよ」と言っている 皮肉たっぷりのイラスト。

       (槌田 助『地球をこわさない生き方の本』 (岩波書店)より)

 (注1)キャンペーン:ある特定の問題についての啓蒙宣伝活動。

 (注2)ギリギリ:極限状態

 (注3)ユニセフ:(United Nations Children's Fund) 国連児童基金。

 (注4)シール:装飾などに用いる、絵やマークなどが印刷された紙片。

 (注5)かたよる:一方に傾く。不公平になる。

 (注6)イラスト:イラストレーションの略。見て楽しく誇張・変形した絵。

 (注7)あぐらをかく:足を組んで座ること。胡坐。

 (注8)ヨガ:古代から伝わるインドの修練法。現在では健康法としても行われる。
ひ にく
 (注9)皮肉:遠まわしの非難。風刺。

 (注 10)ヨーグルト:牛乳・羊乳などを乳酸発酵によって凝固させた食品。

問1 ( ① )に入る適当な語はどれか。

 1 貧しさ    2 豊かさ    3 飢餓     4 飽食

問2 ②「私たち日本人の食生活といえば」とあるが、日本人の食生活はどのような

   ものだと筆者は述べているか。

 1 「豊かさ」が特定の人にかたよった状態    

 2 お腹がいっぱいで、もう食べられない状態

 3 お腹を空かせ、ギリギリのところで生きている状態       

 4 飽食の極みで、「無駄」が生じている状態

46
問3 ③「私たちは食に関して、ものすごく鈍感になっている。」とあるが、それはど

   ういうことを言っているか。

 1 食べ物の味がわからなくなっている。

 2 食べ物の大切さを忘れ、浪費している。

 3 自分で作って食べることをしなくなった。

 4 おいしいものしか食べなくなった。

問4 ( ④ )に入る適当な語はどれか。

 1 しかし             2 だから    

 3 一方で             4 そこで

問5 ⑤「ヒルダ、ねえヒルダ、ヨガじやないよ、ヨーグルトだよ」と言っている皮肉たっ

   ぷりのイラスト」とあるが、どこが「皮肉たっぷり」なのか。

 1 人間でもない牛のヒルダが、健康のためにヨガをしていること。    

 2 やがて食べられる運命であることを、牛のヒルダが知らないこと。

 3 人間が求めているのはタンパク源としての牛で、ヒルダの健康ではないこと。

 4 人間たちが飽食の裏で、自分の健康を心配してヨガをしていること。

問6 筆者がこの文章で一番主張したいことは何か。
き が
 1 もう一度、飢餓のアフリカの子どもたちを救うキャンペーンをしよう。 

 2 一人一人が食べ物を無駄にしないで、残らず食べよう。

 3 この地球の「豊かさ」のかたよりを正して、共に生きる世界をつくろう。

 4 どれくらいエネルギー消費のかたよりが存在しているのかを学ぼう。

47
問題Ⅱ 次の(1)から(3)の文章を読んで、それぞれの問いに対する答えとして、
     最も適当なものを1、2、3、4から一つ選びなさい。

き しょう

(1)人びとは、朝の起床にはじまって、着る物や食べ物を選び、その日の計画され
たプランにしたがって必要な準備をし、学校や仕事場にむかう。道や交通手段を選ぶ

などなど、(  ①  )までに数かぎりない選択を重ねてその日が終わるのです。選

ぶ以上は、選びまちがいが起こりえます。しかし、人がまちがったり忘れたりするのは、

一つの能力と言うことができるのです。
(注1)
 コンピューターは、人間の用意したプログラムどおりに働き、自分でまちがう能力

はありません。与えられたプログラムを忘れる能力も持ちません。まちがうことも、
とくちょうてき
忘れることも、人間という生きものが持つ特 徴的な能力なのです。まちがうことで、

そこから新しい生活や生き方が工夫されるのですし、忘れることができるから、新し

い知識や生き方を受け入れることができるのです。それも、これも、人間が選ぶことで、

新しい自分を創りつづけるという特質に根拠をおいているからだと思われます。

                  (太田堯「生命のきずな」<偕成社>より)

 (注1)プログラム:コンピューターに対して指示した仕事や順序

問1 ( ① )に入る適当な文はどれか。
とこ
 1 床につく            2 目を覚ます   
ふ あ
 3 夜が更ける           4 夜が明ける

問2 ②「人がまちがったり忘れたりするのは、一つの能力と言うことができるのです」

   とあるが、なぜそう言えるのか。

 1 プログラムどおりの生活には喜びも楽しみもないから。   

 2 人間は選ぶことで新しい自分を作り続けるものだから。

 3 間違うことで工夫が生まれ、忘れることで新しい知識を受け入れられるから。

 4 人間らしさというのは、間違ったり忘れたりするところにあるから。

48
ひ やくてき

(2)日本語は漢字によって飛躍的に進化しました。漢字は日常に欠くことができな
こう つみ
い存在ですが、その功とともに罪の部分も認めなくてはなりません。

 日本語は、「かく(書く・欠く・掛く)」のように、漢字でさまざまに書き分ける内
しきべつ
容をもっています。このように多様な日本語の、その場その場の内容をひと目で識別

できる手段が漢字です。しかし、そうした漢字依存が、日本語のもつ本来の意味を失

わせていくことになります。

 ( ① )、「かく」は、文字や絵を「かく」時に用いますが、漢字や紙が渡来する以
じょうもん
前からありました。その答えが縄 文の土器です。それは土をこねて成形したものに、
せん も よう きざ
縄目をはりめぐらしたり、線文様などを刻んだりしていますが、原初の「かく」とは、
とが か
先の尖ったもので、掻いて土や石の表面に傷をつけることだったのです。この「かく」
こうせい しめ
行為は指先を使って行なう動作であることから、後世、指先で何かをすることを示す
しる
場合にも用いるようになりました。そして字を記す動作も「かく」といい、絵に表わ

す動作も「かく」と言い、やがて両者を「書く」「描く」などと漢字を変えて区別する
やまと
ようになりました。そのために「かく」という大和ことばが、本来はどういう働きを

示すものなのかが、わかりにくくなってしまったのです。

       (中西進『ひらがねでよめばわかる日本語のふしぎ』<小学館>より)

じょうもん
 (注1)縄文:紀元前3Cまで続いた狩猟・採集

       経済の段階の日本。

問1 ( ① )に入る適当な語はどれか。

 1 たとえば   2 さらに    3 いわば    4 なるほど

問2 どうして「かく」という大和ことばが、字や絵を「かく」という意味を表すよ

   うになったか。

 1 「書」「描」という漢字が、その意味とともに日本に伝えられたから。  

 2 「かく」ということばは、元々指先を使うという意味で使われていたから。

 3 どちらも指先を使って、物の表面に何かを記す点で同じだったから。

 4 どちらも先の尖ったもので、物の表面に傷をつける点で同じだったから。

49
(3)西ドイツで珍しかったのは、お茶や夕食の招待のほかに、「散歩の招待」という
のがあったことだ。私の家の玄関まで迎えに来て、森や湖や植物園をおしゃべりしな

がら、いっしょに散歩する。その楽しさが招待の主目的である。お金も何もいらない。

 ドイツでの滞在が長くなるにつれて、私は同じ資本主義国でも、日本とはもっと違っ

た豊かさが、この国にあることがわかってきた。ある朝、森を通って仕事に出かけた
ふじ
とき、休暇をとった中年の男性が、森の中の藤椅子に寝ころんで、ただじっとしてい

るのに出あった。夕方、帰りにその森を通ると、同じ人が同じようにじっとしている。

なんとなくおかしくて私は声をかけてみた。

 「あなたは一日中そこで何をしているのですか?」その答えは次の通りだった。

 「人間は能動的に、仕事をしているときも、得るものがある。しかし、一所懸命に何

かをしているときは、周りにあるものは目にはいらない。こうして何もしていないと、

小鳥の声、風のそよぎ、落葉の音、陽の光、そういうものが聞こえ、見えてくる。私

はこうして時々自然と対話をし、イメージをいっぱいにして都市に戻るのです」何か

をすると同時に、何もしないことの価値が認められているのも、また豊かではないか。

    (暉峻淑子『豊かさとはないか』<岩波書店>より)

問2 ①「私は同じ資本主義国でも、日本とはもっと違った豊かさが、この国にある

   ことがわかってきた」とあるが、「日本とはもっと違った豊かさ」とは何か。

 1 お茶や夕食の招待だけでなく「散歩の招待」もあること。  

 2 お金を使わないでも楽しむことができること。

 3 都市の近くに森や公園や湖が配置されていること。

 4 何もしないことの価値が認められていること。

問2 筆者の言う②「何もしないことの価値」と関係の深いものはどれか。

 1 自然を大切にする心   

 2 都市での生活

 3 精神的なゆとり

 4 経済的な豊かさ

50
解答と解説

問題Ⅰ
アフリカ: キャンペーン:

ギリギリ: シール:
きわ
〜の極み: かたよる:

さっそく: リスト:

タイトル: イラスト:

責める: あぐらをかく:

ヨガ: ヨーグルト:

<解   説>

問1:後ろの「今でも世界のどこかで、お腹を空かせ……」という文に続く点に注意。

問2:3は明らかな間違い。1は日本人の食生活に関する内容ではない。日本の食生

   活の説明として2と4のどちらが適切だろうか。

問3:まだ食べられるものでも捨てる社会、お金さえ払えば何でも食べ物が買えると

   考えている社会は、何に対して鈍感なのか。

問4:前と後ろの文の関係から、2「そこで」か4「だから」だとわかる。「だから」

   は意志や判断を強調する文脈で使われるので、もう起こったことを客観的に話

   すときには使いにくい。なお、
「そこで」は「前に述べた事柄が原因・前提となっ

   て」という意味を表し、「それで」と同様に事態の客観説明に多く用いられる。

問5:1か3が残るが、記事のタイトルにも注目しよう。牛に対する皮肉ではなく、 

   人間に対する皮肉なので、1ではない。

問6:文章全体を通して流れるテーマは、<「豊かさ」のかたより>であり、このか

   たよりを読者に知らせることで、何を提起しているのかを考える。

問題Ⅱ
(1)
プラン: プログラム:
とこ よ ふ
床につく: 夜が更ける:
よ あ
夜が明ける:

51
<解   説>

問1:「夜、寝る」だということはわかる。「寝る」を意味することばは?

問2:1は本文と無関係。2、4は人間についての説明で、人間がまちがったり忘れ

   たりすることの説明ではない。

(2)
め つち
ひと目: 土をこねる:
きざ
はりめぐらす: 刻む:
しめ やまと
示す: 大和ことば:
はたら
働き:
<解   説>

問1:このことばは後段の文全体にかかっているのでわかりにくいが、後段全体が「漢

   字依存が、日本語のもつ本来の意味を失わせていく」ことの実例となっている

   ことがわかる。「例えば」と「いわば」は混同しやすいが、「例えば」は「例を

   挙げれば」〔例示)、「いわば」は「喩えて言えば」(比喩)に使われる。

問2:1と2は本文に記載された事実と異なる。「書く・描く」は傷つけるのとは異な

   るので、4も間違いとなる。

(3)
〜につれて: 風のそよぎ:

イメージ:

<解   説>

問1:2、3は本文では何も語られていない内容で、選択肢からは外される。したがっ

   て1か4かになるが、1は少し「違った豊かさ」の一例でしかない。

問2:2、4は能動的にすることであ得られるもの。したがって、1か3になるが、
「何

   もしないこと」と「自然を大切にする」ことは同じではない。

<第6回解答>
問題Ⅰ 問1:3 問2:4 問3:2 問4:4 問5:3 問6:3
問題Ⅱ (1)問1:1 問2:3   (2)問1:1 問2:3 
    (3)問1:4 問2:3 

52
第7回
問題Ⅰ 次の文章を読んで、後の問いに答えなさい。答えは、1、2、3、4から最
     も適当なものを一つ選びなさい。

 若い人たちは日記を書かなくなったと言われている。確かに日記帳を買ってまで書
(注1)
くという人たちは少なくなっただろう。だが、今は自分のホームページを開設できる
(注2) あふ
ので、多くの日記や自己表現がネット上には溢れている。
ひた
 日記は自分の世界に浸る自己愛の世界という面が強い。自分のことを語りたいとい
よっきゅう
う欲求は、今の若い人たちにも根強くある。それは今も昔も変わらないだろう。ただ
(注3)
し今は、かつてのように日記に書くのではなく、携帯電話で親しい友だちとメールを
(注4) ①
やりとりするというスタイルで、その欲求を満たしている。
(注5)
 本来、日記というスタイルは、
「自分のことを話したいパワー」を活用して、うまく「書

く力」に転化する方法である。しかし今は、紙の上に書くのではなく、携帯電話のメー

ルを使って、(    ②    )というスタイルになっている。自分のために内面
(注6) ぐち
を見つめるのではなく、自分の感情のはけ口としてメールを交換するようになってい

る。

 日記の場合、自分で書いて、読むのも自分である。携帯メールの場合は、自分の書

きたいことを書いても、読み手がいる。その分、開かれているとも言えるが、その関
きょぜつ
係性は、お互いに自分の話をしても拒 絶されないという関係の上に成り立っている。

今の若い人たちの多くが、そういう関係を求めている。
〔注7) めぐ
 ( ア )は自分の思いを中心に書いているので、どうどう巡りをしやすいが、それ

でも自分を深く掘り下げていける側面がある。それに対して、( イ )は親しい相手

に日々の悩みを気軽に聞いてもらうような軽い感覚である。
けいさい
 また、最近ではインターネットのホームページで自分の身辺雑記を掲載する人たち

も多い。この場合には不特定多数に読んでもらうのだが、これは逆に「読んでもらう」

ことを意識しすぎたものになる。
(注8)
 今の若い人たちに、書くという欲求がなくなったわけではない。それどころか、書
53
きたい欲求は高まっていると言える。自分のことを話したい、だれかに聞いてもらい

たい、読んでもらいたいという欲求。そのパワーを有効活用して「書く力」を育てる
③ ④
ことは可能だ。ただし、そのためには、携帯メールやホームページではなく、「日記」

を活用してほしい。何かを「書く」ためには、書くべきものが自分のうちになければ

ならないが、日記を書くことは、自分を見つめ、自分の内面を作っていくための行為

になる。

                 (斎藤 孝「原稿用紙に 10 枚を書く力」より)

 (注1)ホームページ:個人や団体によって開設されたインターネット上のWWW

 (注2)ネット:インターネットの略。コンピューター・ネットワークの略。

 (注3)かつて:昔。以前。

 (注4)スタイル:様式。型。

 (注5)パワー:力。

 (注6)はけ口:排水口。たまっている感情などを発散させる対象。

 (注7)どうどう巡り:思考・議論などが同じことの繰り返しで、先へ進まないこと。

 (注8)それどころか:実際はそれと大きく違って

問1 ①「その欲求」とあるが、それはどんな欲求か。

 1 自己愛の世界に浸りたいという欲求。

 2 自分のことを語りたいという欲求。

 3 日記を書きたいという欲求。

 4 友だちと交流したいという欲求。

問2 〔  ②  )にはどの文が入るか。

 1 自分の内面を見つめる

 2 不特定多数の人と交流する

 3 自分を深く掘り下げる

 4 誰かに読んでもらう

54
問3 (ア)(イ)に入る適当な語の組み合わせはどれか。

 1 ア:日記  イ:メール            

 2 ア:日記  イ:ホームページ

 3 ア:メール イ:日記           

 4 ア:メール イ:ホームページ

問4 ③「そのためには」とあるが、「その」は何を指しているか。

 1 自分のことを話すこと

 2 パワーを有効活用すること

 3 書く力を向上させること

 4 書くという欲求を持つこと。


問5 ④「携帯メールやホームページではなく、
「日記」を活用してほしい。」とあるが、

   メールやホームページがもっている共通の特徴で、日記と異なる点は何か。
ひた
 1 日記と異なり、自分の世界に浸る自己愛の世界という面が強い点。 

 2 日記と異なり、自分の感情のはけ口として使われる点。

 3 日記と異なり、人に読んでもらうことを意識している点。         

 4 日記と異なり、自分のことを話したいという欲求に立っている点。

問6 筆者は「書く力」を育てるために、一番大切なことは何だと考えているか。

 1 毎日日記をつける習慣を持つこと。

 2 自分のことを書きたいという欲求を持つこと。

 3 自分の内面を見つめ、自分の内面を作っていくこと。

 4 自分が書いたものを多くの人に読んでもらうこと。

55
問題Ⅱ 次の(1)から(3)の文章を読んで、それぞれの問いに対する答えとして、
     最も適当なものを1、2、3、4から一つ選びなさい。

(注1) しお

(1)海の新しい利用として、海洋のエネルギーが注目されています。例えば、潮の
み ひ
満ち干やうねりの働きで発電機のタービンを回すと、海水のもつ運動エネルギーを電

気エネルギーに変えることができます。また、海面の温度(約三〇度)と深い所の温
(注2)
度(約三度) が違うことを利用して、発電機のタービンを回すこともできます。これは、

海水のもつ熱エネルギーを電気エネルギーに変えるものです。このときに使われる深
(注3) かいそう
海の水の豊富な栄養分を、栄養分の少ない海面に流して、植物プランクトンや海藻を

増やして、魚や貝などを大量に育てる研究もあります。 
① せ と ないかい わん
 しかし、最近ではそ の行き過ぎが心配されています。瀬 戸 内 海や東京湾 をはじめ、

日本の多くの海は、これまでも都市生活や産業活動でたいへん汚されています。また、

大規模な埋め立て事業が進められ、美しい海岸が失われたり、魚や貝が大量に死んだ

りしたこともありました。(  ②  )、私たちは、海を利用する場合でも、海の環

境や生物社会を壊すことなく、上手に利用する道を考えなければなりません。

     (松川康夫、佐々木克之「人間にとっての海」<農産漁村文化協会>より)

 (注1)エネルギー:熱・光・電磁気や質量など、物理学的な動力源の総称。

 (注2)タービン:流体の運動エネルギーを回転運動にかえ、動力を得る原動機。

 (注3)プランクトン:水中に浮遊している生物の群集、或いはその生物の総称。

問1 ①「その行き過ぎ」とあるが、「その」は何を指すか。

 1 海の利用            2 深海水の栄養分の利用

 3 産業活動            4 大規模な埋め立て事業

問2 〔  ②  )にはどの語が入るか。

 1 それでも            2 ところで

 3 それで             4 ですから

56
(2)才能というのは、得意・不得意、上手・下手には関係ありません。いかに夢中になっ
ものごと
て、物事に取り組めるかということなのです。(    ア    )

 子どものころ、私は絵を描くことに夢中になっていました。そんな私の子ども時代
こんにち こころざ
から今日までを振り返ってみると、私は実に多くの画家を志す人々に出会ってきまし
まわ
たし、私の周りには私よりも絵が上手な人はたくさんいました。しかし、だからといっ

て絵の上手な人たちが画家として成功したということでもありませんでした。
〔 ① )

成功した人にあまり上手さが目立つ人はいなかったような気がします。(    イ 

   )

 では、画家として成功するタイプとはどんなタイプなのか……。(    ウ   

 )それは、とにかく一言で言えば「とことん絵が好き」という連中です。朝早く起
(注1) (注2)
きて寝るまで絵のことで頭がいっぱい、そんなイメージです。そして、常に周囲にア

ンテナを張るという頭の働き方が身についていれば、何でもプラスになります。友人
(注3) さ
と会ったり、展覧会を見に行ったり。そしてまた次の日、頭の冴えている早朝から仕
かか
事再開です。そのように、すべてが自分の作品に関わることであると自覚して、それ

に正面から興味を持って接してゆく。(    エ    )

               (千住博「絵を描く喜びー千住博の美術の授業」

 (注1)イメージ:心の中に思い浮かべる像。全体的な印象。心象。

 (注2)アンテナを張る:情報を集める手段をいろいろ考える。

 (注3)頭が冴える:頭の働きが鋭い状態である。

問1 〔  ①  )にはどの語が入るか。

 1 もっとも            2 むしろ

 3 やはり             4 けっきょく

問2 「つまり成功する人というのは、夢中で毎瞬を生きている人なのです。」という

   一文は、ア〜エのどこに入るか。

 1 ア      2 イ      3 ウ      4 エ

57
(3)人間は世界中のさまぎまなところで生活をしている。特に自然条件の厳しい地
域で生活する人たちは、手に入れられる食べ物の種類が極めて少ない。それでも、そ

の人たちは何千年、何万年とその地域で生活し続けている。その長い年月から、すば
ち え
らしい知恵が生まれてきたのである。

 それは「もったいない」という知恵である。別の言い方をすれば、「(  ①  )」
しろくま
ということだ。イヌイットの人たちは、アザラシや白熊などを食べるとき、内蔵まで

も食べる。南米には、食べ物はほとんどトウモロコシだけという生活をしているイン
ほ ひとつぶ
ディオの人たちがいる。彼らはトウモロコシを天日で干して、一粒ずつ手でむしって
えいよう はい が
粉にし、パンを作って食べる。そうすれば、栄養がつまった胚芽の部分まで、全部食

べることができる。このように主となる食べ物を「(  ①  )」ことによって、あ

る程度の栄養のバランスが取れるのである。もちろん彼らは栄養のバランスを考えて
とぼ
そうしてきたのではないだろう。手に入る乏しい食べ物を「もったいない」と思う気

持ちがそうさせたのである。私は、どんなに時代が変わっても、この「もったいない」
し しん
という考えこそが、私たち現代人が自らの食生活を考える上での大きな指針ではない

かと思うのである。     (幕内秀夫「粗食のすすめ 実践マニュアル」による)

 (注1)手でむしる:(密着しているものを)引き抜く。手で引きちぎる。

 (注2)バランス:つりあい。均衡。

問1 2箇所ある( ① )には同じ文が入るが、それはどれか。

 1 むだなく食べる         2 いろいろ食べる

 3 食べられるだけ食べる      4 必要な量だけ食べる

問2 筆者の意見に合っているのはどれか。

 1 現代人の食生活は豊かになったのは、手に入る食べ物の種類が増えたからだ。

 2 私たちもイヌイットの人たちのように、栄養のバランスが取れた食事をしよう。

 3 昔からの食べ物の良さを見直し、現代人の飽食の生活を改めよう。

 4 「もったいない」という観点に立って、現代人の食生活を見直そう。

58
解答と解説

問題Ⅰ
ホームページ: ネット:
ね づよ
根強い: メール:

スタイル: パワー:
めぐ
はけ口: どうどう巡り:

インターネット: それどころか:

ただし: 〜べきN:

<解   説>

問1:1、3でないことはわかる。もし4を選んだ人がいたら、注意力不足。

問2:正しくないものを、一つ一つ消していく。それが一番の正答への近道。1、3

   は日記、2はホームページなので、4が残る。

問3:前にある段落を正確に読みとっていれば、日記とメールの違いはわかるはず。

問4:「そ」はすべて指す語や内容が前にある。1、4でないことはわかるが、2か3

   か選んだら、慌てて飛びつかないで、もう一度文に入れて確認してみること。

問5:消去法がベスト。1は日記、2はメール、4は三者に共通。2にした人もいる

   と思うが、それは自分の意見・考えであって、文中に書いてあることではない。

問6:1か3が残ると思う。筆者は日記の活用を述べているが、日記をつける習慣を

   持てとまでは述べていない。

問題Ⅱ
(1)
しお み ひ
エネルギー: 潮の満ち干:

うねり: タービン:
ゆ す
プランクトン: 行き過ぎ:

〜をはじめ: 〜ことなく:

<解   説>

問1:「そ」はいつも前の語や内容を指す。ない、1は全体、2は一例という関係。

問2:原因ー結果とわかるが、文末で「〜なければなりません」が使えるのはどちら?

59
(2)
と く
いかに: 取り組む:
こころざ
志す: だからといって:
め だ
〜として: 目立つ:

タイプ: とにかく:
れんちゅう
とことん: 連中:

イメージ: アンテナを張る:
さ かか
冴える: 〜に関わる:

<解   説>

問1:一つ一つの副詞の意味が理解できていないとできない問題。「もっとも」は「し

   かし、例外があって」、「むしろ」は「(二つを比較して)どちらかひとつを選ぶ

   とすれば」、「やはり」は「以前から思っていたとおり」、「けっきょく(結局)」
   は「最終的には」という意味を表している。

問2:「つまり、……」とある時は、前の語か前の文が「つまる」の後に来る「……」

   と同じ内容を表している。

(3)

もったいない: アザラシ:

トウモロコシ: インディオ:
てん ぴ ほ
天日で干す: むしる:
うえ
バランス: 〜る・上で:

<解   説>

問1:「もったいない」という意味がわかるかどうか。語彙力に関わる問題。

問2:いつも言うように、読解は消去法で。答えはいつも本文中にあるが、1は全く

   書かれていないこと、2、3もそのような内容にふれた箇所はない。

<第7回解答>
問題Ⅰ 問1:2 問2:4 問3:1 問4:3 問5:3 問6:3
問題Ⅱ (1)問1:1 問2:4   (2)問1:2 問2:4 
    (3)問1:1 問2:4 

60
第8回
問題Ⅰ 次の文章を読んで、後の問いに答えなさい。答えは、1、2、3、4から最
     も適当なものを一つ選びなさい。

(注1)
 外国人が日本に来て、日本人の会話を聞くと、一番耳につくのが「ね」という言葉

だという。「今 日はたくさん人が来ましたね」とか、「今日は天気がよかったですね」

とか、何かと「ね」をつける。あの「ね」は何という意味ですか、と聞かれたことが

ある。日本人ならすぐわかる。「今日はたくさんの人が来たと思っています。あなたも

同じでしょ」。つまり、「あなたと同じ気持ちです」ということを、私たちは会話をす
ごと
る毎に繰り返している。この「ね」ということを繰り返し繰り言うことで、相手に対
そんけい あいさつ
する軽い尊敬の気持ちを表している。だから挨拶ということが非常に大切なのである。

 アメリカ人が日本にやって来ると、日本人の挨拶はうるさくて仕方がない、と思う
(注2)
ようだ。例えば、思いがけないところで知っている人とバッタリ会う。「どちらにお出

かけですか」と尋ねる。アメリカ人はうるさいと思う。「どこに行こうと俺の勝手だ。
さぐ
俺の私生活の秘密を探ろうとしているのだろうか」。(  ②  )、日本人は何もそう

いうつもりではない。「こんなところでお目にかかるとは思いがけないことだ。もしあ
(注3)
なたの身の上に何か大変なことが起こったのではありませんか」と、相手を心配して
しょうじき
聞くわけである。だから聞かれた方も正直に「銀行へお金をおろしに行くところです」
およ
なんていう必要はない。相手にご心配には及びませんよ、ということを伝えればいい。

そこで何と言うか。「(   ③   )」。これでおしまいである。

 「先日は失礼しました」。これもよく私たちが口にする挨拶である。アメリカ人はびっ

くりする。「確かに先日この男に会った。しかし、そのときにこの男は俺に何にも悪い
おれ
ことはしていないはずだ。もしかしたらこの男は、俺の知らない間に何か悪いことを

したのではないか」と心配になるという。日本人の気持ちはそうではない。「先日は失

礼しました」と言ったら、
「先日あなたにお目にかかりました。私は不注意な人間なので、

あなたから見て、何か失礼なことがあったかもしれません。もしそんなことがあったら、

あなたにお詫びしなければなりません」という気持ちで言っている。こうした挨拶の
61
⑤ かんしゃ とうと
言葉からもわかるように、私たち感謝することよりも、謝ることを尊ぶ。
ゆず
 みなさんがバスに乗っている。おばあさんが乗ってきた。誰かが席を譲る。おばあ

さんは何と言うか。「ありがとうございます」とお礼を言う人もいるだろうが、「すみ

ませんねぇ」と謝る人の方がはるかに多いことだろう。おばあさんの気持ちはこうで

ある。「私がもし乗ってこなければ、あなたはずっと座っていられました。ところが私

が乗ってきたばかりに、あなたは立たなくてはならなくなりました。あなたにご迷惑

をかけてしまったのではないでしょうか」、そんな気持ちで謝るのである。

    (金田一春彦 『ホンモノの日本語を話していますか?』<角川書店>より)

 (注1)耳につく:同じことを何回も聞かされて、気になる。

 (注2)思いがけない:予期しない。意外である。

 (注3)身の上:その人の一身に関することがら。
いつわ
 (注4)正直:心に偽りのないこと。
およ
 (注5)〜には及ばない:〜する必要はない。

 (注6)〜ばかりに:〜が唯一の理由で、(悪い結果に)〜なった。

問1 ①「今日はたくさん人が来ましたね」とか、「今日は天気がよかったですね」と

   あるが、それと同じ用法の「ね」はどれか。

 1 確か、あしたはあなたの誕生日でしたよね。

 2 私はそうは思わないね。

 3 今度の日曜日にね。妻と映画を見に行くことにしたんだ。
こうえん よ
 4 今日の講演はほんとうに良かったわね。

問2 〔  ②  )にはどの語が入るか。

 1 それなのに           2 しかし

 3 それでも            4 だから

62
問3 〔 ③ )にはどの文が入るか。

 1 こちらこそ            2 ちょっとそこまで

 3 お世話になります         4 お変わりありませんか

問4 ④「『先日は失礼しました』。これもよく私たちが口にする挨拶である」とあるが、

   日本人はどうして「失礼しました」と言うのか。

 1 日本人は人に迷惑をかけたとき、次に会ったときにも謝る習慣があるから。

 2 「失礼しました」は、人と会ったときに交わす挨拶の言葉だから。

 3 知らず知らずのうちに相手に失礼なことをしている可能性があるから。

 4 「失礼しました」は、「ありがとうございます」と同じお礼を表す言葉だから。

かんしゃ とうと
問5 ⑤「私たち日本人は感謝することよりも、謝ることを尊ぶ」とあるが、このこ

   とから日本人のどんな国民性がわかることは何か。

 1 日本人はお互いが同じ意見を持つことを常に大切にしている。

 2 日本人は自分の行為の責任を自分で取ることを常に大切にしている。

 3 日本人は自分の気持ちがどうかということを常に大切にしている。

 4 日本人は相手の気持ちがどうかということを常に大切にしている。

問6 この文章の内容に合わないのはどれか。

 1 日本人は謝る挨拶言葉をよく使うが、それは相手に対して謝罪しているのでは

   なく、感謝の気持ちを表しているのである。

 2 日本人は相手を尊重する気持ちを謝ることで表す傾向があるが、外国人にはな

   かなか理解しにくい。

 3 外国人にとっては奇妙に思える日本人の挨拶も、そこには日本人特有の考え方

   があり、文化がある。

 4 日本人は会話の中で何かと「ね」をつけるが、それは日本人の相手に対する尊

   敬の気持ちの表れでもある。

63
問題Ⅱ 次の(1)から(3)の文章を読んで、それぞれの問いに対する答えとして、
     最も適当なものを1、2、3、4から一つ選びなさい。

む ぼう び

(1) 一見無 防 備 で弱い動物であるヒトが、今日まで生き延びることができたのは、


一つ一つの生命個体としてのヒトが、違いを超えて結びつき、協力しあうことで生き

延びる道を見つける、という進化のしかたをしてきたからではないかと思われます。
① せんりゃく
 そのための戦略が、与えられた自然である身体そのものを変形進化させるかわりに、

身体の外側に道具を創りだすという、独自の方法です。最初に道具を創りだしたのは、

一人のヒトだったかも知れませんが、それはまもなくみんなの共有することとなりま

す。この身体の外側に創りだした社会的共有物が文化であり、その典型的なものが道

具であり、言語であり、宗教や芸術や科学だと言えましょう。

 この文化は違いを超えて共通に利用できるものであり、生命と生命とを結びつける

ことによって、その価値を生ずることになるのです。ですから文化は人間にとって社
い でん (注1)
会的な遺伝とも言えます。つまり人間は、他の生物のように遺伝子DNAによって子

孫に生命を伝えると同時に、文化という社会的共有財産を子孫に伝えることができる

のです。               (太田堯「生命のきずな」<偕成社>より)

い でん せんしょくたい
 (注1)DNA:遺伝情報の保存・複製に関与する染色体の重要成分。

問1 ①「そのための戦略」とあるが、「その」は何を指すか。

 1 生き延びること         2 違いを越えて結びつくこと

 3 協力しあうこと         4 進化すること

問2 ②「文化は人間にとって社会的な遺伝とも言えます」とあるが、それはなぜか。

 1 違いを超えてみんなが共通に利用できるものだから。

 2 生命と生命とを結びつけることができるから。

 3 社会的共有財産として子孫に伝えることができるから。

 4 身体そのものを変形進化させたものだから。

64
(2)環境再生のために、どのような手段を選択するかに当たって重要なのは、以下
の判断基準である。
こた
  1 長期的に見て、将来のヒトのさまざまな必要性に応えられるかどうか。
そんちょう
  2 生物多様性を十分に尊重しているかどうか。
しんちょう (注1)
  3 十分な調査と慎重さに裏づけられているかどうか。

 1は、(  ①  )と言い換えられる。これは、祖父や曾祖父から受け継いだ自然

の恵みを、孫やひ孫にも受け渡すことができるか、という判断の基準である。2の判

断のためには、生物多様性読み書き能力とでもいうべき知織や理解が必要である。し

かし、これまで日本では、こうした自然環境に関する教育・学習が軽視されてきた。
せいふくてき
3は、征服的でない、共生型戦略のすべてに共通する物事の進め方の基本である。
(注2)
 これら全てを支える心の持ち方が共感能力である。ともすれば利己的になりがちな
おさ
自己を抑え、他人や他の生物の要求を理解し、受け入れることのできる包容力といっ

てもよい。これこそが一人一人が心の中に育てる必要がある最も大切な能力なのであ

る。              (鷲谷いづみ『自然再生』<中央公論新社>より)

 (注1)裏づける:結論を証拠や資料によって確実にする。

 (注2)ともすれば〜がちだ:どうかすると〜する傾向がある。

問1 ①にはどの語が入るか。

 1 自然の回復          2 持続可能性の確保

 3 自然との共生         4 環境との調和

問2 ②「これこそが」とあるが、「これ」は何を指しているか。

 1 生物多様性読み書き能力    

 2 征服的でない自然との共生型戦略

 3 他人や他の生物に対する共感能力  

 4 自然環境に対する科学的な認識

65
① どう き

(3)…(略)…。こうした動機づけを持つ子は、数学をやる意味が自分の人生に関
(注1) めんどう
連づけられている間は数学をやろうとします。でも、数学を学ぶことが 面倒くさく
(注2)
なったりすると、とたんに自分の人生の目的まで変えたりします。

 たとえば、将来、宇宙飛行士になりたい子どもがいたとします。この子の親は「宇

宙飛行士になるためには理系の勉強もしておかなければだめよ。だから数学もやって

おきなさい」というような意味のことを子どもにいう可能性が大です。子どももそれ

を信じて数学をやろうとするかもしれません。でも、数学が難しくなってきて面倒く

さくなったとき、この子は、
「やっぱり俺は宇宙飛行士になるのは無理だ。だって、数学っ

てこんなに難しいんだもの」と言って数学から離れていく可能性が大きいのです。
(注3) あこが なにもの
 今は昔と違って飽食の時代です。彼らはなんとなくかっこいいから憧れて何者かに

なりたいと思うのです。また、(   ②   )とさえ思わず、ただなんとなく楽に

生きていければそれでいいと思っている子どももかなり多いはずです。ですから、こ

うした子どもたちに困難な学習を維持させることは、けっこう難しいことです。

       (栗田哲也「数学に感動する頭を作る」<ディスカバー・21 >より)

 (注1)面倒くさい:手数がかかって、非常に大変だ。

 (注2)とたんに:ちょうどその時。その時すぐ。

 (注3)なんとなく:はっきりした理由や目的もなく。

問1 ①「こうした動機づけを持つ人」とは、以下のどの動機を持つ子どものことか。

 1 数学が面白いと思う。

 2 数学をやることが自分の将来にとって役に立つと思う。

 3 自分の知らなかったことがわかると嬉しい。

 4 競争に勝つのが嬉しい。

問2 ②に入る文はどれか。

 1 数学を学ぼう         2 宇宙飛行士になりたい

 3 なんとなくかっこいい     4 何者かになりたい

66
解答と解説

問題Ⅰ
みみ おも
耳につく: 思いがけない:
み うえ
バッタリ: 身の上:
しょうじき およ
正直: 〜には及ばない:
くち わ
口にする: 詫びる:
とうと
尊ぶ: ところが:
ばかりに:

<解   説>

問1:「あなたと同じ気持ちです」という同意・共感の「ね」はどれか。

問2:逆説であることははっきりしている。「しかし」は広く前に述べたことと対立し

   ていれば使える。一方、
「それなのに」は因果の逆説、
「それでも」は条件の逆説。

問3:これはとても基本的な挨拶ことばの一種。

問4:理由は同じ段落の後半部に書いてあるので、同じ内容のものを選べばいい。

問5:「どちらにお出かけですか」「先日は失礼しました」、そしておばあさんの「すみ

   ません」に共通するのは相手への気遣い、つまり相手がどう思っているかとい

   うことだとわかる。

問6:「謝る挨拶言葉」は感謝の場面でも使われるが、「先日は失礼しました」のよう

   にそうでない場合もあるので、1が誤りとなる。

問題Ⅱ
(1)
い の
生き延びる: 〜かわりに:

〜によって(方法): 〜にとって:

<解   説>

問1:この「そのため」は目的を表しているが、人は何のために道具を創りだしたか
   と考える。

問2:「遺伝」という言葉がなぜ使われているかという点に注意しよう。

67
(2)
あ こた
〜に当たって: 応える:
うら う つ
裏づける: 受け継ぐ:
う わた こころ も かた
受け渡す: 心の持ち方:

ともすれば: 〜がちだ:
おさ
抑える:

<解   説>

問1:環境問題を論じるときのキーワードなので、知っていれば答えは容易だが、仮

   に知らなくても、後ろに続いている文中の「受け継ぎ、受け渡す」という文か
   ら推測することができる。

問2:「これこそが……能力である」とあるので、「能力」に関するものから正答を選

   ぶことになる。とすれば、1と3かという選択になるが、この「……能力である」

   を見落としていると、2や4の解答になる。

(3)
めんどう
面倒くさい: とたんに:

なんとなく: かっこいい:

〜さえ〜ない: かなり:

〜はずだ:

<解   説>

問1:後ろの文で、「将来、宇宙飛行士になりたい子ども」の例が挙げられている。と

   すれば、2しか残らない。

問2:「〜とさえ思わず」という文型の意味が理解できないと、この問題は解けない。

   この場合も消去法で考えると、1と3は先ず消える。後は前後の文のつながり

   から、どちらが自然かと考えればよい。

<第8回解答>
問題Ⅰ 問1:4 問2:1 問3:2 問4:3 問5:4 問6:1
問題Ⅱ (1)問1:1 問2:3   (2)問1:2 問2:3 
    (3)問1:2 問2:4 

68
第9回
問題Ⅰ 次の文章を読んで、後の問いに答えなさい。答えは、1、2、3、4から最
     も適当なものを一つ選びなさい。

そ りん
 今から 2 万年以上前、日本列島は疎林と草原の広がる乾燥した寒冷地だった。ステ
(注1) おおつのじか
ゴドン象やナウマン象などがいた。シベリアから大量のマンモスや大角鹿などもやっ

てきた。そのころの日本列島の王者はマンモスだった、といっていい。

 地球が温暖化し、かつ、湿潤化して雪が大量に降るようになり、一万五千年前ごろ
おお
から日本列島は森林に覆われるようになる。草原を失い、かつ、温暖化による海面の
かいきょう
上昇で海峡が出現したため、大陸に戻れなくなったマンモスたちは、人間たちによっ

て狩りつくされ、絶滅する。マンモスを狩りつくした人間たちも続いて死ぬ運命にあっ
ちょうじゅう
たが、それを救ったのは森林の出現であった。森林の木の実、野菜、鳥獣などが新し
(注2) たくわ
い食料となった。さらに森林が成育したことによって、安定し、かつ、栄養を蓄えた
(注3) (注4) さかのぼ
川は、大量のサケ、マスなどを遡らせ、人間に栄養豊富な食料を提供した。その水が
やしな
海に流れてプランクトンを養い、たくさんの貝や魚がやってきて人々を喜ばせた。

 こうして私たちの祖先は、この日本列島において生き延びることができたのであっ

た。まことに森林は、救いの神であり「母なる森」であった、と言えるだろう。そし
① よく
てそのことを身をもって知っていた私たちの祖先は、ただ一方的に森林の恩恵に浴し

ただけではなく、森林を保護しようとしたのであった。このことはあまり言われてい

ないことだが、よく考えなければならないことではないか。
つぶ
 ( ③ )、そのころ、世界史的に見ると、森林を潰して農耕や牧畜にするところが

増えていったが、縄文時代の一万二千年間、ついに私たちの祖先は本格的農耕や牧畜

を行わなかったからである。そして本格的農耕や牧畜をやったところは、みな森林を

失ったが、日本列島においては森林の再生を前提とする焼畑農耕などは行われたもの
(注5)まぬが
の、本格的な農耕や牧畜をついにやらなかったために、森林は破壊から免れたのである。
じゅうらい ④
 従来、それは、日本列島の環境条件のせいとされた。島国であるがために、大陸か

ら本格的農耕も牧畜も入らなかった、というのである。しかし、考古学的には、七千
69
(注6)
年前から五千年前ごろの温暖期に、朝鮮半島を経由して九州の西北岸、と りわけ
ありあけかい えん がん (注8)
有明海沿岸に多くの漁労民の移住が見られる。続いて、三千五百年前から千五百前ご

ろにかけての寒冷期に、ユーラシア大陸の北方民族が南下して日本にやってきている。
ほか こうかいぎょろうみん た そくせき
他にも、東シナ海の航海漁労民も絶えず日本列島各地に足跡を残している。日本は島
(注9)
国とはいえ、縄文時代に国際的交流がなかったわけでは決してないのである。つまり、

(   ⑤   )わけではなく、また、大陸から入ることができなかったのでもなくて、
⑥ (注10)
入ってくるのを私たちの祖先が拒否した、と考えられるのである。そのおかげで日本

列島の森林は破壊を免れた、といっていい。

   (上田 篤「都市と日本人」<岩波書店>より)

 (注1)マンモス:肩高四m、体毛は赤褐色

     の巨象。→右の絵

 (注2)さらに:その上に。もっと。

 (注3)サケ(鮭):サケ目サケ科の海魚の総称。

 (注4)マス(鱒):サケ目サケ科の「マス」の名のついた魚類の俗称。
まぬが
 (注5)免れる:嫌なことや危ないことをしないですむ。

 (注6)せい:多くは、よくない物事の原因・理由を示す。

 (注7)とりわけ:特に。

 (注8)〜から〜にかけて:〜から〜までの間、ずっと〜

 (注9)〜とはいえ:〜といっても。〜というけれども。

 (注 10)〜おかげで:多くは、よい物事の原因・理由であることを示す。

問1 ①「私たち日本人の祖先は……森林を保護したのであった」とあるが、その内

    容の説明として最も適当なものはどれか。

 1 森林の恵みに感謝し、森林を増やそうとした。

 2 森林を潰すような本格的な農耕や牧畜を行わなかった。
まぬが
 3 大陸から本格的な農耕や牧畜が伝わらなかったので、森林は破壊から免れた。

 4 農耕を一切行わず、最後まで狩猟採集の生活を守った。

70
問2 ②「よく考えなければならないことではないか」とあるが、筆者は何について

   考えなければならないと言っているのか。

 1 どうしてマンモスが絶滅したのかということ。

 2 森林の恩恵に浴したこと。

 3 私たちの祖先が森林を保護しようとしたこと。

 4 森林の再生を前提とする焼畑農耕を行ったこと。

問3 〔 ③ )にはどの語が入るか。

 1 しかし            2 というのは

 3 ところで           4 つまり

問4 ④の「それは」は何を指しているか。
まぬが
 1 森林が破壊から免れたこと   

 2 森林を失ったこと

 3 本格的農耕も牧畜も入らなかったこと       

 4 本格的な農耕や牧畜をしなかったこと

問2 (  ⑤  )にはどの文が入るか。

 1 農耕や牧畜を知らなかった   2 農耕や牧畜を知っていた

 3 農耕や牧畜をしなかった    4 農耕や牧畜をした

問6 「入ってくるのを私たちの祖先拒否した」とあるが、日本人の祖先はどうして本

   格的な農耕や牧畜を拒否したのか。

 1 農耕や牧畜をしなくても、森林の恩恵だけで十分生活できたから。

 2 農耕や牧畜は、救いの神であり、
「母なる森」である森林を壊すことになるから。

 3 日本の風土が農耕や牧畜に適していなかったから。

 4 農耕や牧畜は、狩猟採集に比べてとても時間や労力がかかるから。

71
問題Ⅱ 次の(1)から(3)の文章を読んで、それぞれの問いに対する答えとして、
     最も適当なものを1、2、3、4から一つ選びなさい。

(1)インドでは見るもの間くものすべてが新鮮で、町を歩いているだけなのに毎日
(注1) (注2)
カルチャーショックを受けた。清濁あわせのむ、何でもありの大地に一カ月間身を浸し、

(    ①    )。日本での自分の生活は、地球上に存在するさまざまな営みの

一つなのだという当たり前のことを実感したのだ。

 僕はこのインド旅行以後、世界中をほっつき歩くことに情熱を燃やし始める。人を

寄せつけない厳しい自然の中に身を置いているとき、僕は不思議な喜びを感じる。高

い山に入り、「転げ落ちたら命を落としてしまうかもしれない」と思うような場所を一

人で登っているときに幸せを感じる。このような感覚は自分の家で暮らしているだけ
あふ
では体験することがない。周りにどんなにたくさんの情報が溢れていようと、実際に
そな
その場に身を置かない限りわからない。(  ②  )僕たちはせっかく備わっている

五感で感じるすばらしい能力を、日々失い続けているのではないだろうか。

   (石川直樹「興味あるもの全てを自分の体で感じたい」<岩波書店>所収より)

 (注1)カルチャーショック:異なった文化に接した時に受ける精神的な衝撃。

 (注2)清濁あわせのむ:心が広くて、善悪の区別なく受け入れる。

問1 〔 ① )にはどの文が入るか。

 1 世界を旅するなんて、思っても見なかった。

 2 家に閉じこもるのはやめて、一歩を踏み出してみよう。

 3 世界各地に行ってみたいと痛切に思うのだ。

 4 世界は多様なのだということを身をもって感じた。

問2 〔 ② )にはどの語が入るか。

 1 さて             2 それなのに

 3 それでも           4 ただし

72
(2)信頼できる友人ができないという悩みを持つ人がいる。たしかに、心から信頼
できる友人を得るのはなかなか難しいことだ。考えてみれば人生には多くの出会いが

あり、知人を得るチャンスは数多くある。学校時代に席を同じくしたというだけの仲

なら、それこそ星の数ほどの出会いがある。だが、そのように数多くの人たちと出会っ
(注1) わず
ても、その中で本当の親友と呼べる人は、ごく僅かな人びとのみである。 

 (  ①  )、自分には本当の友人はできないと決めてかかるのもよくない。だい

いち、友人は雑草のように、何の手を加えなくても自然に生えてくるものではなく、

自分で種をまいて、水をやり肥料をやらなければ育てられないものである。つまり、

友人を得るためには、本人の努力が必要だということだ。
なげ (注2) おこた
 「信頼できる友人がいない」と嘆く人は、たいていの場合、この努力を怠り、自分の

肩を優しくたたいてくれる人を待ち望んでいるだけだ。それで友人ができるのなら、
(注3)
そんな虫がいい話はない。

           (斎藤茂太「人間の魅力の育て方」<ダイヤモンド社>より)

わず
 (注1)ごく僅か:全部ではないが、ほとんどの場合。

 (注2)たいてい:全部ではないが、ほとんどの場合。
むし
 (注3)虫がいい:自分の都合ばかり考え、身勝手である。ずうずうしい。

問1 ( ① )にはどの語が入るか。

 1 だからといって        2 それにしては

 3 そのうえに          4 そればかりか

問2 この文章で、筆者が一番言いたいことを表している文はどれか。

 1 本当の親友と呼べる人は、ごくわずかな人びとのみである。

 2 自分には本当の友人はできないと決めてかかるのもよくない。

 3 友人を得るためには、本人の努力が必要である。

 4 心から信頼できる友人を得るのはなかなか難しいことだ。

73
(3)人類は誕生のときから、自然を自らが生きぬくための場とすることに大変な苦
労をしてきたと思われてならない。他の動物と比べ、特段すぐれた身体的能力を持ち
い しぼ (注1)
合わせていたわけではないからだ。その発達した脳を活かして知恵を絞り、かろうじ
ぜつめつ
て絶滅の危機を脱することができたといってよい。
① ② (注2)
 そのために重要なことは、自然を熟知し、記憶し、それを生きるすべにすることだ

つたにちがいない。身近な自然のしくみ、目印ともなる景観や地形、特徴ある岩、食

べられる植物、危険な動物などを克明に記憶することで、危険を末然に回避すること

ができたし、食べ物を得るチャンスを増やすことができたと想像される。
ほう が
 このように人類の自然史的な思考は歴史の早い段階から萌芽し、知識を次第に蓄積

するとともに、やがて収集された知識に基づいて、自然を成り立たせているしくみや

原理についても考えるようになっていった。

              (大場秀章「サラダ野菜の植物史」<新潮社>より)

 (注1)かろうじて:実際はそれと大きく違って

 (注2)すべ:手段。

問1 ①「そのために」とあるが、「その」は何を指しているか。

 1 自然を自らが生きぬくための場とすること。

 2 他の動物と比べ、特段すぐれた身体的能力を持っていなかったこと。

 3 発達した脳を活かして知恵を絞ること。

 4 自然に関する知識を蓄積すること。

問2 ②「自然を熟知し、記憶し、それを生きるすべにすること」とあるが、ここで

   言う「生きるすべ」とは具体的には何を意味しているか。

 1 絶滅の危機脱すること。

 2 危険を未然に回避し、食べ物を得ること。

 3 自然のしくみや原理を探求すること。

 4 身近な動植物た地形などの自然物を記憶すること。

74
解答と解説

問題Ⅰ
シベリア: マンモス:

かつ: サケ(鮭):
おんけい よく
マス(鱒): 恩恵に浴する:
まぬが
〜ものの: 免れる:

せい: とりわけ:
〜から〜にかけて: 〜おかげで:

<解   説>

問1:読解は消去法で。3は明らかな間違いだが、1は「増やそうとした」、4は焼き

   畑農耕は行われていたので、「農耕は一切行わず」が間違い。

問2:「このことはあまり言われていないことだが、よく考えなければならないことで

   はないか」とあるので、「このこと」が何かということになる。そうすると、2

   と3が残るが、では「あまり言われていないこと」はどちらか。

問3:文末に「〜からである」があることに注意。「というのは〜からである」と呼応

   している。

問4:2、3は明らかな間違いなので、1か4かの選択になる。では、
「環境条件のせい」

   はどちらか。

問5:実際は「農耕や牧畜を知っていた」のだから、「農耕や牧畜を知らなかったわけ

   ではなく」となる。

問6:3、4は本文中で一切触れられていないので、選択肢から外す。1か2かになるが、

   1の「十分生活できた」かどうかは本文からは不明のこと、従って2となる。

問題Ⅱ
(1)
せいだく
カルチャーショック: 清濁あわせもつ:
ある よ
ほっつき歩く: 寄せつけない:
そな
備わる:

75
<解   説>

問1:前の文のつながりから、1、2が消える。では、後ろの文との意味上の関係から、

   3、4のどちらが残る?

問2:逆接だとわかるが、因果の逆接か、条件の逆接か。なお、「さて」は話題転換の

   副詞で、「ただし」は「しかし条件があって」という意味の副詞。

(2)

チャンス: ごく:
わず
僅か: たいてい:
おこた むし
怠る: 虫がいい:

<解   説>

問1:前の文と後ろの文が対立する内容なので、逆接だとわかる。「そのうえに」は「そ

   れに加えて」、「そればかりか」は「それだけでなく」という意味なので、前後

   の文ががつながらない。残るのは1と2だが、「だからといって」は「仮にそう
   であっても」、「それにしては」はほぼ「それなのに」と同じ意味を表す接続詞。
問2:一般に言いたいことは否定的な内容ではなく、積極的な提言や判断になる。 

(3)
かろうじて: すべ:
もと
しくみ: 〜に基づいて:

<解   説>

問1:この「そのために」は目的を表しているが、ヒトは何のために、身近な自然の

   仕組みを知り、記憶しようとしたのかと考える。

問2:「生きるすべ」は「生きる手段」という意味なので、ヒトの生活にどのように役

   に立つのかと考える。  

<第9回解答>
問題Ⅰ 問1:2 問2:3 問3:2 問4:4 問5:1 問6:2
問題Ⅱ (1)問1:4 問2:2   (2)問1:1 問2:3 
    (3)問1:1 問2:2 

76
第 10 回
問題Ⅰ 次の文章を読んで、後の問いに答えなさい。答えは、1、2、3、4から最
     も適当なものを一つ選びなさい。

めぐ めぐ
 わが国ほど豊かな自然に恵まれた国は少ない。(  ①  )、四季の巡りにしたがっ
よそお (注1) (注2)
て、自然は変化に富んだ装いをみせる。ウサギ小屋とからかわれるような小さな家に

も庭があり、部屋には花が生けてある。日本人は世界の数ある民族の中でも、すぐれ

て自然を愛好する民族だと思っている人が多い。(  ②  )、それは半分は正しく、

半分は間違っている。
しれとこはんとう ばっさい ぜつめつ (注3)
 知床半島の原生林の伐採が強行されて、島フクロウ(鳥の種類)が絶滅の危機にさ
しらかみ さん ち
らされる。残された唯一のブナ(ブナ科の落葉高木)の大原生林である自神山地の伐
いしがきじま しら ほ さん ご しょう
採計画が進められている。石垣島の自保の珊瑚礁が破壊されようとしている。すべて
ぼうきょ
経済優先の考えに基づく暴挙であるが、もっと根本的には日本人の自然観に基づいて

いる。

 日本人は自然保護の思想が貧困だと言われる。なぜそうなのかを少し考えてみたい。
ひ ふくりつ
一言にして言えば、
(    ③    )からである。国土面積の森林被覆率は[ア]
ひってき
パーセント弱、これは森と湖の国フィンランドに匹敵する世界有数の森林国と言えよ

う。木材の国力ナダであっても森林面積は国土の[イ]パーセント、ドイツやフラン

スで[ウ]パーセントだから、日本は大変な森林国である。それに樹木の種類も多い。フィ
じゅしゅ
ンランドヘ行ってびっくりするのは、樹種が非常に少ないことだ。
くず
 わが国は世界でも有数の天災多発国だ。地震や火山の噴火で山は崩れ、山火事で山
ささ
が燃えつきることもある。しかし、しばらくするとススキ(イネ科の多年草)や笹が
つ じ はだ おお
生え、次いで低木や松の緑が破壊された地肌を覆ってしまう。日本の森は壊れても焼
ねば づよ
かれても復元する粘り強さをもっており、世界中でも最も回復力が強い森だと言って
わざわ ふ し ちょう
よい。清い水と豊かな緑に覆われた自然、どんな災いからも立ち直る不死鳥のような
④ (注4)
自然、そんな中で育った日本人には、自然を保護しようなどという考えが生まれよう

もなかった。自然は人間を守ることはあっても、人間に守られる存在ではなかった。
77
(注5) (注6)
 ヨーロッパの森は日本のそれとは違い、人間のしわざに対してもろくて弱い。農耕

牧畜が始まって以来、ヨーロッパの森林は破壊され続け、ほとんどなくなってしまった。

自然は人間の対立物として考えられ、人間によって支配されるべき対象であった。自
きょく ち
然破壊の極地に至ったとき、自然は管理し保護しなければならないという思想が生ま

れる。プロシャで自然保護という言葉が生まれたのは、わずか 200 年前のことである。


(注7)
 日本人にとっては、自然は人間の対立物でもなく、まして支配する対象でもなかっ

た。空気や水と同じく、人間を取り巻くごく当たり前のものであった。人間の力では
(注8)
びくともしない豊かな自然、それがここ 20 年の間に巨大な破壊技術の進歩によって、

急激に壊され始めたのである。しかし、まだ日本人の心の奥には、自然は無限に豊かで、

不落の城であるかのような印象が根を張っている。この状況が続けば、かつてのヨー

ロッパがそうであったように、否、もっと恐ろしい形で日本の自然が破壊しつくされ
(注9)
るであろう。そうなればもはや取り返しがつかなくなる。

                (河合雅雄「子どもと自然」<岩波書店>より)

 (注1)ウサギ小屋:日本の小さい家を、兎の小屋に喩えたもの。

 (注2)からかう:冗談を言ったり馬鹿にしたりして、相手を困らせる。

 (注3)さらす:(危険な状態に)置かれる。

 (注4)〜ようもない:〜する方法もない。

 (注5)しわざ:行為(良くない意味で使うことが多い)。

 (注6)もろい:壊れやすい。

 (注7)まして:言うまでもなく。当然。

 (注8)びくともしない:外から力を受けても全く動かない。

 (注9)取り返しがつかない:もう元には戻らない。

問1 ( ① )に入る語はどれか。

 1 しかも             2 すると

 3 しかし             4 だから

78
問2 ( ② )に入る語はどれか。

 1 では              2 だから

 3 しかし             4 それで

問3 ( ③ )に入る文はどれか。

 1 日本の自然が豊かすぎる            

 2 日本の自然が破壊された

 3 日本が有数の天災多発国だ          

 4 自然と人間は対立物ではなかった

問4 [ア]〜[ウ]に入る数字の組み合わせとして、正しいのはどれか。

 1 ア:33  イ:70  ウ:27   2 ア:27  イ:33  ウ:70

 3 ア:27  イ:70  ウ:33    4 ア:70  イ:33  ウ:27

問5 ④「日本人には、自然を保護しようなどという考えが生まれようもなかった」 

   とあるが、なぜ日本人には自然を保護しようという考えが生まれなかったのか。

 1 日本人は自然との共存を大切にし、自然に手を加えることを嫌ったから。

 2 日本の自然は豊かなばかりか、自分の力で回復する力を持っていたから。

 3 日本は天災が多く、人間が自然を守ろうとしてもむだだったから。 

 4 日本人にとって、自然は人間の力を越えた神のような存在だったから。

問6 ⑤「この状況が続けば」とあるが、その説明として最も適当なものはどれか。

 1 経済優先の考えに基づいて開発を進めること。

 2 自然を人間の対立物と考えて、破壊すること。            

 3 人間は自然の一部と考え、ありのままの自然を残そうとすること。

 4 自然は無限に豊かで、失われるものではないと考えること。

79
問題Ⅱ 次の(1)から(3)の文章を読んで、それぞれの問いに対する答えとして、
     最も適当なものを1、2、3、4から一つ選びなさい。

(1)身近な人間と親しみ、恋人や友人、知人と親しみ、観察や研究、知識などを通
して自然と親しむ、それが人間の生のほとんどすべてである。そして、人間や社会や

自然と親しむための第一歩は、名前を知ることである。

 たとえたった一つの名前を知るだけでも、世界は格段に広がる。それを実感するのが、

野の道を歩いているときである。ギッシングの言うように、「野の花の名前を覚えて、

それぞれに挨拶ぐらいは送りたいものだ」と言っているが、名前を知っているという

だけで、その花に対する親しみが増すのである。
ざっとう
 この野の花を人間に置きかえてみるとよくわかる。都会の雑踏で出会うのは見知ら
いなか か
ぬ人ばかりで、これは(     ①     )。ところが、田舎では、道で行き交

うのはたいてい顔見知りの人ばかりで、知らん顔というわけにはいかない。お互いに

名前を呼び合い、挨拶を交わしたり、立ち話をはじめたりする。このように、名前を知っ

ているだけで相手が親しく感じられるようになり、名前を一つ覚えるごとに世界は広

く、豊かになるのである。つまり、人がどれほど豊かに生きるかは、世界についてど

れほどたくさん名前を知っているかに(  ②  )のである。

               (木原武一「ちからをくれる言葉」<光文社>より)

問1 ( ① )に入る文はどれか。

 1 名前を知らない草花ばかりが茂る野道を行くようなものである。  

 2 名前をよく知っている草花が茂る野道を行くようなものである。

 3 名前を知らないが、よく見る花が茂る野道を行くようなものである。 

 4 名前を知っているが、あまり見ない花が茂る野道を行くようなものである。 

問2 ( ② )に入る語はどれか。

 1 比較する            2 対比する

 3 並行する            4 比例する

80
(2)わたしたちは、日常的な感覚として、「わたし」と「あなた」或いは「わたし以

外の人」の間にしきりがあることを知っているし、また感じている。

 もちろん幼い時代には、母親のような存在は、
「わたし」と共有する部分をもっており、

分かち難い存在のように感じられている。何も話さなくても、理解してくれていると

幼い子どもは感じている。ところが何かのきっかけで、母親さえも自分と感じたり考

えたりしていることを共有しあってはいないということに気づく。つまり、理解し合

うにはお互いに(   ②   )が必要であることに気づくのである。言い換えれば、

どのような人もそれぞれがしきられている「他者」であることに気づくのである。

 何らかの言葉によるコミュニケーションが必要であるのは、「わたし」と「他者」と

の間にしきりがあるからだ。では、言葉はそのしきりを取り払うことができるのだろ

うか。残念ながら、言葉の存在そのものがどこまでもしきりの存在を前提にしており、

このしきりを「透明」なものにすることは不可能である。私たちはどこまでもコミュ

ニケーション不能の部分を抱えているからこそ、コミュニケーションし続けるのであ

る。

                (柏木博『「しきり」の文化論』<講談 >より)

 (注1)しきり:間を断つこと。二つの間を区切る物。

 (注2)コミュニケーション:人間の間に行われる知覚・感情・思考の伝達。

問1 ①「しきり」をほかの言葉で言い換えるとしたら、どれが一番いいか。

 1 床               2 屋根

 3 壁               4 ドア

問2 ( ② )に入る文はどれか。

 1 何も話さなくても、理解しあえること。  

 2 言葉によってコミュニケーションすること。

 3 「わたし」と「他者」との間にしきりがあること。    

 4 お互いにしきりを「透明」なものにすること。 

81
(3)人間は道具を作るとともに。火を使うことを覚え、地上最強の動物となりました。
人間はさまざまな動物を食べて生きていますが、人間を食べて生きている大型の動物

はいません。
けもの
 その最強の動物である人間も、獣たちに寝込みなど不意をつかれると弱かったので

す。このため人間はつねに警戒しながら生活しなければなりませんでした。それには
ぼうへき おおぜい
防壁をつくり、大勢で集まって住むのが一番でした。

 ( ① )、人間にとって最大の敵は、なんといっても他の人間でした。そのことは
かたな やり ゆみ てっぽう
現在でも同じです。人間は昔から刀、槍、弓、鉄砲と多種多様な武器を作ってきまし
たいほう
たが、大砲から後に作られた武器は、人間に向けるしかないものなのです。人間はまず、

他の人間からの安全が必要でした。人びとは安全を求めて、都市を山の上など不便な

ところにつくりました。それらの都市は、敵の攻撃の対象になりやすかったため、そ

の周囲を城壁で囲みました。さらに普段は平地にある町に暮らしながらも、強力な敵
せ きず ようさい
が攻めてきたときは、そこを放棄して、山の中に築かれた要塞にこもる用意もされて

いました。アテネなどのギリシャ諸都市にあったアクロポリスと呼ばれるものが、そ

うした場所だったのです。

                (藤田弘夫「人間はなぜ都市をつくるのか」より)

問1 ( ① )に入る語はどれか。

 1 もっとも            2 しかし

 3 やはり             4 なぜなら

問2 ②「ギリシャ諸都市にあったアクロポリスと呼ばれるものも、そうした場所だっ

   たのです」とあるが、アクロポリスの説明として適当なものはどれか。

 1 アクロポリスは獣や敵から住民を守るために居住地の周りに作った防壁のこと。

 2 アクロポリスは泥棒や強盗から住民の命や財産を守るために築いた要塞のこと。

 3 アクロポリスは敵から都市を守るために、その周囲に築いた城壁のこと。

 4 アクロポリスは強力な敵が攻めてきた場合に備え、山の中に築いた要塞のこと。

82
解答と解説

問題Ⅰ
めぐ
巡り: 〜にしたがって:
よそお
装い: からかう:
ねば づよ
さらす: 粘り強さ:

〜ようがない: しわざ:

もろい: まして:
と ま
取り巻く: びくともしない:
ね は と かえ
根を張る: 取り返しがつかない:

<解   説>

問1:迷うかもしれない問題。「〜し〜し、しかも〜」の添加が一番自然となる。

問2:「だから」と「それで」は原因理由を表す接続詞なので、不適当。1か3かの選

   択になるが、そんなときは実際にその語を入れて読んでみる。

問3:自然保護思想の貧困、それはなぜか。後ろに続く文から日本が世界有数の森林

   保有国であるという事実がわかる。

問4:注意深く読んでほしい。ア(日本)が、一番高くなる。

問5:2か4かが残るのだが、具体的に理由を述べているのはどちらか。また、「自然

   =神のような存在」だから「保護しようとしない」というのは論理的にも?

問6:「そ」は前にある語や内容を広範に指すが、「こ」は、一般的には直前で述べた

   ことを強調することが多いという知識を持っておくと、このような場合には解

   答が容易になる。

問題Ⅱ
(1)
した
親しみ: たった〜:

たいてい: 〜わけにはいかない:

〜ごとに:

<解   説>

問1:「都会の雑踏=見知らぬ人ばかり」ということを比喩として述べたのはどれ?

83
問2:漢字圏の人には難しくない問題。「名前を一つ覚えるごとに世界は広く……」は

   比例変化を表している。

(2)
ある
或いは: しきり:
と はら
コミュニケーション: 取り払う:

<解   説>

問1:二つの間を区切る物が「しきり」だが、仮にこの語の意味がわかっていなくても、
   文を読みながら意味を推測することが大切になる。 

問2:
「何も話さなくても、理解してくれている」と思っていた幼い時代、やがて「しきり」

   を知ったとき、話して伝える必要に気づく。

(3)
けもの ね こ
獣: 寝込み:
ふ い
不意をつく: なんといっても:

〜ながらも: こもる:

アテネ: ギリシャ:

アクロポリス:

<解   説>

問1:接続詞の問題。前の文と後ろの文の関係を掴む。「なぜなら」(理由)、
「もっとも」
   (例外)は除外されるが、
「しかし」か「やはり」か。「やはり」は「予想したとおり」
   という意味で、当時の人の気持ちから言うと疑問となる。

問2:アクロポリスは、都市の中の小高い山の上にある建造物で、敵から身を守る要

   塞であったと同時に、宗教施設であったようだ。

<第 10 回解答>
問題Ⅰ 問1:1 問2:3 問3:1 問4:4 問5:2 問6:4
問題Ⅱ (1)問1:1 問2:4   (2)問1:3 問2:2 
    (3)問1:2 問2:4 

84
第 11 回
問題Ⅰ 次の文章を読んで、後の問いに答えなさい。答えは、1、2、3、4から最
     も適当なものを一つ選びなさい。

 環境破壊や戦争といった大きな問題は、日々の暮らしの中で多くの現代人が感じる

生きづらさと根っこの部分でつながっていると、僕は思っている。

 その根っことは、効率性や生産性や経済成長や消費増大などを最優先にして、その
ぎ せい
ためには生態系や平和や家庭の幸せを犠牲にしても仕方がないとするようなファスト

(速い)な社会のあり方。なぜファストかといえば、より速く、より多く作って、売る

ものが勝つという競争原理に基づいているので、社会が全体として加速するからだ。

 同じゴールに向かって競い合うのが競争というもの。いつのまにか、われわれ現代

人は競争原理こそ社会の基本原理だと思いこんでしまったようだ。競争がないと、人
なま ていたい
は怠けるようになる。すると、その社会は発展をやめて停滞してしまうというわけだ。

 でも、本当にそうだろうか。社会とはそもそも同質の人々が、同じ目的に向かって

競争的に生きる場所ではないはずだ。第一、どうして一人一人のゴールが違っていて

はいけないのだろう。僕は競争を一概に否定するつもりはない。一時的には競争が人
し げき
に刺激や力を与えることもあるだろう。しかし、社会には地域社会とか、コミュニティー

とか、家庭とか、友人関係とか、本来は相互扶助の場所、競争になじまない場所もあ

る。にもかかわらず、生産性や効率性をめぐる競争が、こうした相互扶助の場の中に

まで入りこむ。そんな社会は生きづらい。また、そんな社会が長続きするとは思えない。

でも、今の日本はそれに近い。日本ほど人々が互いを急かせ、自分を急かせている社

会も珍しい。

 サン・テグジュペリの『星の王子さま』がこう言っていたのは、僕たちのことでは

なかったか。「みんなは( ③ )に乗りこむけれど、今ではもう、何を求めて、どこ

に行こうとしているのかもわからなくなってる」。

 僕たちは親として、子どもたちにいったいどれだけ「がんばれ」とか「急げ」とか言っ

たら気がすむのだろう。待てないのは、他人に対してばかりではない。自分自身にも
85
④ むしば
待てないのだ。しかし、僕たちのこうした「がんばり」が地球を蝕み、実は自分自身

をも蝕み、その人生を空っぽにしてしまうことが見えてきた。

 ( ⑤ )、もうがんばるのをやめよう。もっとスロー(遅い)に生きることを考え

てみよう。スローに生きるとは、自分の時間に、他人の時間に、自然の時間に寄り添
⑥ のうせい ま ひ う ちゅうじん おく
うように生きること。あなたに、こんな脳性麻痺の詩人宇宙塵氏の詩を贈りたい。

   がんばらないは、幸せだ。

   がんばらないは、自分の時を刻むこと。

   がんばらないは、自分を知ること。

   がんばらないは、地球を愛し続けること。

   がんばらないは、宇宙。

   がんばらないは、私だ。               

                   (辻 信一「がんばっている人」による)

 (注6)ゴール:目的。目標。終着点。

 (注8)一概に〜ない:全部が〜とは言えない。

 (注9)コミュニティー:共同体。

 (注6)なじまない:調和しない。ふさわしくない。

 (注7)急かす:急がせる。

 (注8)いったい:ほんとうに。

 (注9)気がすむ:満足して気分がおさまる。

 (注8)蝕む:悪弊や病気が少しずつ体や心をおかす。悪くする。

 (注9)空っぽ:中に何も入っていないこと。


問1 ①「根っこの部分でつながっている」とあるが、筆者は環境破壊や戦争を引き

   起こす根っこの部分とは何だと考えているか。

 1 経済成長            2 競争原理

 3 社会発展            4 相互扶助

86
なま
問2 ②「競争がないと、人は怠けるようになる。すると、その社会は発展をやめて
ていたい
   停滞してしまう」とあるが、筆者はこうした意見についてどう考えているか。

 1 競争原理を社会原理にすることに基本的には賛成だが、もう少し競争が少なく、

   もう少しスローな社会の方が住みやすい。 

 2 賛成できない。社会には競争に向かない場所もあり、またゆきすぎた競争が地

   球や自分自身を蝕んでいる事実に私たちは気づくべきである。

 3 賛成である。生産性や効率性をめぐる競争が社会を発展させてきたのであり、 

   それを否定する意見を認めるわけにはいかない。 

 4 反対である。これまでの価値観を全面的に改め、競争から相互扶助へ、経済優

   先から自然との共生へ、今の社会を変える必要がある。

問3 ( ③ )に入る語はどれか。

 1 各駅停車   2 長距離列車  3 寝台列車   4 特急列車

問4 ④「がんばり」は何を意味しているか。

 1 競争に勝とうとすること     2 ファストに生きること   

 3 自分を急かせること       4 スローに生きること

問4 ( ⑤ )に入る語はどれか。

 1 すると             2 ところで   

 3 だから             4 しかし

のうせい ま ひ う ちゅう じん おく
問4 ⑥「こんな脳性麻痺の詩人宇宙塵氏の詩を贈りたい」とあるが、筆者はどうし
う ちゅうじん
   て宇宙塵氏の詩を引用したのか。

 1 人生を楽しく幸せに生きることの大切さを教えてくれるから。     

 2 障害者の目で、「がんばる」ことが地球を蝕んでいることを告発しているから。

 3 私たちと違う世界の見方を知らせ、読者に何が大切かを考えてほしかったから。

 4 人間がお互いに助け合って生きることの大切さを教えてくれるから。

87
問題Ⅱ 次の(1)から(3)の文章を読んで、それぞれの問いに対する答えとして、
     最も適当なものを1、2、3、4から一つ選びなさい。

(1)日本人が手先が器用で、「手の文化」を育ててきた背景として、決定的な役割を
いなさくのうこう
果たしたのが、箸を使い続けてきたことである。日本人は稲作農耕の民族であり、そ
こくもつ くちばし めしつぶ
の食生活は穀物や豆、魚が中心であるため、鳥の嘴のような箸で飯粒や豆をつまんだり、

小魚の小骨をより分けて食べる必要があったのである。
(注1) しゅりょう たみ
 ( ① )近代文明を生んだ欧米人は、元を正せば遊牧、狩猟の民であり、足の民族

である。彼らのような肉を中心とした食生活には、ナイフやフォークが適しており、

指先を使わない「すくうと突く」だけのものになった。彼らの生活にとって必要なのは、
けんきゃく
手先の器用さではなく、健脚で足が速いことであった。

 この農耕民族か遊牧民族か、また、それが生む食文化や必要な道具の違いが何十世
ひ が
紀も続くと、彼我の文化や技術に決定的な相違を生むことになる。日本人が「手の文化」

を育て、携帯電話、家電、自動車、精密機械などの指先の器用さを生かす分野を得意
う ちゅうさんぎょう
としているのに対し、欧米人は「足の文化」を育て、航空機や宇宙産業、コンピューター

のように移動空間を拡大し高速化する分野を得意としているのである。

 (注1)元を正せば:物事の原因や起りをはっきりさせる。

問1 ( ① )に入る語はどれか。

 1 それに対して          2 それにもかかわらず

 3 それはともかく         4 それどころか

問2 この文章に見出しをつけるとしたら、どれが一番適当か。

 1 日本人と「手の文化」          

 2 欧米人と「足の文化」

 3 日本と欧米の食文化の違い        

 4 「手の文化」と「足の文化」

88
しょさい

(2)欧米人の書斎は、ただ机があって、椅子があって、本があればよいというもの
ではない。一定の広さがなければ価値がない。彼らにとっては、歩き回れるスペース

がなければ書斎とは言えない。動き回るからこそ頭がよく働く。そして実際、彼らは

書斎の中で実によく歩き回る。(  ア  )私が昔、パリに下宿していたころ、上の

部屋に夜中になると歩き回る人物がいた。午前一時になると、いつも決まったように

歩き出す。古アパートなものだから、ミシミシとうるさくて困ったものだったが、そ

の人もおそらく歩きながら、何かを一所懸命に考えていたに違いない。(  イ  )

 アリストテレスなどは歩きながら弟子たちに講義した。だから後に彼の弟子たちは
しょう よう
逍遥学派をつくるのだが、とにかく考える、( ① )読むときには,歩くというのが

一番いい。(  ウ  )
じゅっこう
 しかし、一般的には、じつと座って熟考するというのが、日本の哲学者や思想家の

イメージだ。日本人はなかなか動かない。自分の専門領域のなかにどっぷりとつかり、

ただじっと考える。動かすのはただ頭と、そして目だけである。(  エ  )

           (木村尚三郎「耕す文化の時代」<PHF研究所>より)

 (注1)スペース:古代ギリシアの哲学者でプラトンの弟子。

 (注2)アリストテレス:古代ギリシアの哲学者でプラトンの弟子。

 (注3)とにかく:貧農出身で苦学して成功した人。多くの小学校に銅像がある。

 (注4)二宮金次郎:貧農出身で苦学して成功した人。多くの小学校に銅像がある。

問1 ( ① )に入る語はどれか。

 1 あるいは            2 それとも

 3 すなわち            4 それに

問2 「その点、薪を背負って、歩きながら読書をしている二宮金次郎の姿は理想的だ

   ということができる」という一文は、ア〜エのどこに入れたらいいか。

 1 ア      2 イ      3 ウ      4 エ

89
おお

(3)最近クラゲが増え始めています。海一面がクラゲで覆われている映像を、テレ
ビなどで見たことはありませんか。クラゲは主に海水温の高い夏から秋に出現します

が、最近は夏ばかりでなく、どの季節でもクラゲが見られるようになってきました。

その原因の一つに温暖化の影響があると言われています。例えばミ ズクラゲですが、
せ と ないかい えっとう
通常は春から秋に見られ、瀬戸内海では越冬できないと言われていました。広島大学

の上眞一先生の話では、広島湾では海水温 11 度以上が越冬可能な水温のようです。し

かし、最近は真冬でも 11 度を下回ることが少なく、ミズクラゲは真冬でも見られるよ

うになってきました。日本海側でも同じような現象が起こっています。

 昔から、「クラゲがたくさん捕れる年は(  ②  )

あり」と言うことわざがあります。「クラゲがたくさん捕

れる」のは「海水温が高い」とも言えます。海水温が高い
すいじょう き
と、海面上の水蒸気の量が増えることになります。その海

面上へ寒気が流れ込んでくると、多量の水蒸気により雪雲

が発達し、雪の量がいつもよりも多くなるのです。これはかなり確率の高いことわぎ

です。

   (南利幸「ことわざから読み解く天気予報」<日本放送出版協会>より)

せ と ないかい えっとう
問1 ①「ミズクラゲですが、通常は春から秋に見られ、瀬戸内海では越冬できない

   と言われていました」とあるが、ミズクラゲが瀬戸内海で越冬できないと言わ

   れていたのはなぜか。

 1 地球が温暖化して、瀬戸内海の海水温が高くなったから。      

 2 長い間、冬の瀬戸内海の海水温は 11 度以下になっていたから。     

 3 瀬戸内海の海水温が、冬でも 11 度を下回ることが少なくなったから。

 4 最近、冬の瀬戸内海の海水温が 11 度を上回ることが多いから。

問2 ( ② )に入る語はどれか。

 1 大雨     2 地震     3 猛暑     4 大雪

90
解答と解説

問題Ⅰ

根っこ: ゴール:
おも
いつのまにか: 思いこむ:
なま いちがい
怠ける: 一概に〜ない:

コミュニティー: なじむ:

にもかかわらず: 急かす:
むしば
いったい: 蝕む:
から よ そ
空っぽ: 寄り添う:

<解   説>

問1:「根っこ=ファストな社会=競争原理」と展開されていることに注目しよう。

問2:最後まで読み進めると、「がんばるのをやめよう」「スローに生きよう」と、競

   争原理に立つ社会に基本的には反対していることがわかる。そこで2と4が残

   るが、筆者はこの文では社会改革を主張してはいない。

問3:「競争・急かす」という文の流れから、特急列車とわかる。

問4:筆者は「がんばれ」と「急げ」を並べて書いているので、両者を区別している

   ことがわかる。つまり、「がんばれ」が速度には関係ないことになる。

問5:前の文と後ろの文は明らかに順接、しかも原因ー結果の関係にあるとわかる。

問6:2、4は詩とは全く無関係。1の「楽しく幸せに生きることの大切さ」も詩の

   本旨からずれている。

問題Ⅱ
(1)
くちばし
嘴: つまむ:
わ もと ただ
より分ける: 元を正せば:
すくう:

<解   説>

問1:日本人と欧米人の民族性・食文化が対比されていることがわかればできる。

問2:3、4が残るが、本文は食文化の違いだけを述べているのではない。

91
(2)
スペース: ミシミシ:

とにかく: 〜ものだから:

〜た - ものだ どっぷり:

つかる: ただ〜だけ:

<解   説>

問1:「A o r B」という選択となるので、「あるいは(或いは)」か「それとも」のど

   ちらかの選択になる。注意するのは「それとも」は「A? o r B?」と疑問句と

   疑問句が使われること。「あるいは」の選択は句でも語でもよい。なお、「すな
   わち」は置き換えで、「日本の首都、すなわち東京」のように使う。

問2:この歩きながら読書している二宮金次郎の銅像は、多くの小学校にある。戦前

   の日本では勤勉と努力の模範とされていた。さて、この「歩きながら読書して
   いる二宮金次郎」が入るのはどこか。それほど難しい問題ではないはず。

(3)
おお
クラゲ: 覆う:
おも したまわ
主に: 下回る:

ことわざ: かなり:

<解   説>

問1:問題文の内容に注意。
「どうして越冬できないのか」と質問している。クラゲは「海

   水温 11 度以上が越冬可能な水温」とあるので、越冬できない理由は、海水温が

   11 度以下になるからだとわかる。

問2:後ろの文で、「多量の水蒸気により雪雲が発達し、雪の量がいつもよりも多くな

   るのです。」とある。したがって、答えは「大雪」となる。

<第 11 回解答>
問題Ⅰ 問1:2 問2:2 問3:4 問4:1 問5:3 問6:3
問題Ⅱ (1)問1:1 問2:4   (2)問1:1 問2:3 
    (3)問1:2 問2:4 

92
第 12 回
問題Ⅰ 次の文章を読んで、後の問いに答えなさい。答えは、1、2、3、4から最
     も適当なものを一つ選びなさい。

じゅんすい ① (注1)
 純粋に技術的な観点からいえば、
「IT革命」は少しも「革命」などではなく、単なる「革

新」だと私は思っているのですが、ITを利用する人間の質が革命的に変わっていく、
れっ か
はっきり言えば、劣化、退化していくことは間違いないのではと思います。

 確かにITのおかげで、多種多様な情報が昔と比べれば格段の容易さで得られるよ

うになり、現代「文明人」の頭の中には多量の知識が入り込んでいます。また、IT

をはじめとする数々の文明の利器は、昔の人間には考えられなかったような「効率」

で作業を行なうことを可能にしたのです。             
じょうほうしゅうしゅう しゅだん がいりゃく
 今までに人類が獲得した情報収集手段を、歴史的に、また概略的に列挙すれば、直

接観察→見聞→書籍→ラジオ(音声)→テレビ(音声と映像)→インターネット、と

なるでしょう。これは、そのまま情報収集の「効率」の向上の順番でもあり、それは
(注2)
とりもなおさずITの発展史を示すものでもあります。ちょっと考えただけでも、そ
じんそくせい
の「効率」と迅速性の進化に驚かされます。

 まず、活字と印刷術の発明は”情報“を量ばかりでなく( ア )的、( イ )的

に人類の知識量を飛躍的に増大させました。
② (注3)
 しかし、人間の脳に対する刺激と情報の意味化において、活字メディアとテレビの

ような映像メディアとは根本的に異なるのです。活字メディアの場合、まず文字を、

そして読むことを学び、習得しなければなりません。また、文字という、それ自体は
ら れる
具体的な像を持たない記号の羅列、つまり文、文章から場面や状況や内容などを自分

の頭で具体化しなければならないのです。ここには自分自身による、文字通り”想像“の

作業が必要なのです。

 ところが、テレビのような映像メディアでは、特別に学ぶことは必要ではありません。

具体的な像が音声つきで直接的に与えられるのです。”想像“の作業は一切不要です。

したがって、知識の増量は容易でしょう。この”想像“の作業が必要であるか否かは、

93
ち のう
脳の活性化、智能の発達のことを考えれば、決定的な違いです。ITの発達によって、

人間は知識を飛躍的に増したかも知れませんが、それに比例させて智能を低下させて
(注4)
いるように思われます。ちなみに”知“は「知ること」であり、”智“は「物事の理を
さと
悟り、適切に処理する能力」です。
く し
 いかに最先端のITを駆使して得た情報、知識であれ、それらは有限であり、全宇

宙の中ではほんの一部のものに過ぎません。また、それらの情報や知識は、”道具“さ

え持てば、容易に得られるモノです。しかし、それらを真に自分のモノにし、生かす
④ ⑤
には、”心の眼“が必要です。それは情報や知識の中に発見できるものではないのです。

        (志村史夫『文科系のための科学・技術入門』 <筑摩書房>による)

 (注1)IT:情報技術

 (注2)とりもなおさず:それがそのまま。すなわち。

 (注3)メディア:新聞・テレビ・ラジオなどの情報媒体。

 (注4)ちなみに:それに関連して言えば。ついでに言えば。

問1 ①「技術的な観点……単なる革新だ」とあるが、「IT革命」は技術的に見てど

   のような革新か。

 1 人類の情報や知識の量を飛躍的に増大させたこと。      

 2 情報収集の「効率」と迅速性が飛躍的に進化したこと。

 3 大量の、しかも双方向の情報発信を可能にしたこと。      

 4 さまざまな作業を効率的に行なうことを可能にしたこと。

問2 ( ア )( イ )に入る語の組み合わせとして、適当なものはどれか。

 1 ア:現実  イ:理想      

 2 ア:国家  イ:国際

 3 ア:時間  イ:空間      

 4 ア:人間  イ:機械

94
問3 ②「情報の意味化」の内容として最も適当なものはどれか。

 1 多様な情報を幅広く収集して、分類すること。      

 2 情報の種類によって、ふさわしいメディアを選択すること。

 3 その情報が正しいかどうかを判断すること。    

 4 情報を理解可能なまとまりのある内容にすること。

問4 ③「それに比例させて智能を低下させている」とあるが、ITの発達がなぜ智

   能を低下させるのか。

 1 頭の中で想像する作業が増えるから。     

 2 頭の中で想像する作業が少なくなるから。

 3 道具さえあれば誰でも簡単に情報を得られるようになったから。

 4 ITで得た知識は全宇宙の中ではほんの一部のものに過ぎないから。

問5 ④「心の眼」とあるが、具体的には何を指しているか。

 1 情報の真偽を一瞬のうちに見抜く能力。    

 2 文章から場面や状況や内容などを自分の頭で具体化する能力。
さと
 3 物事の理を悟り、適切に処理する能力。     

 4 誰よりも早く、最新情報を手に入れる能力。

問6 ⑤「それは情報や知識の中に発見できるものではないのです」とあるが、それ

   はなぜか。

 1 知識や情報が多いことと、物事の本質を理解し、活用する能力は異なるから。

 2 テレビやインターネットを通して得られる知識や情報は常に過去のものであり、

   未来のことには役立たないから。

 3 テレビやインターネットを通して得られるのは知識や情報の要約・断片に過ぎ

   ず、詳細はわからないから。

 4 テレビやインターネットを通し得られる知識や情報は間接的なものであり、自

   分で体験し、自分の目で見たものではないから。

95
問題Ⅱ 次の(1)から(3)の文章を読んで、それぞれの問いに対する答えとして、
     最も適当なものを1、2、3、4から一つ選びなさい。

きし

(1)家庭におけるしつけや学校における教育は、子どもをこちらの岸から社会とい
うあちらの岸に渡すことだと思います。ところが、子どもを向こう岸に渡すとなる
(注1)え か
と、得てして教師は橋を架けることばかりに熱中します。しかし、これは間違いです。

 ( ① )、こちら側にいる子どもたちは、それぞれいる場所が違うからです。上流

にいる者、中流にいる者、下流にいる者など、さまざまです。いる場所が違うという
みちび
ことは、それぞれ必要なことが異なるということです。上流にいる者に対しては、導
(注2)
く者はせせらぎを発見すべきでしょぅ。川がせせらぎ波立っているのは、底が浅い証
すそ
拠です。別に橋を架ける必要はなく、その子どもには履き物を脱ぎ、裾をまくって渡

ることを教えればすみます。中流では橋を架けるのもよいでしょう。しかし下流に行っ

て川幅が広がり、海からの逆流が強ければ、なかなか橋を架けることも困難です。で

あれば、下流にいる者には舟で渡ることを教えるべきです。

       (童門一「木くばりのすすめー細川重賢」<文藝春秋特別版>より>


 (注1)得てして:ある傾向になりがちであることを表す語。=ともすると

 (注2)せせらぐ:水が浅瀬を音を立てて流れる。

問1 ( ① )に入る語はどれか。

 1 たとえば            2 したがって

 3 なぜかというと         4 要するに

問2 筆者がこの文で一番訴えたいことはなにか。

 1 社会人として独立できるような技能を身につけさせるべきだと提案している。

 2 家庭か学校か会社か、場所によって教育法は異なるべきだと提案している。

 3 知識の詰め込みではなく、もっと実用的なことを教えるべきだと提案している。

 4 画一的な教育を批判し、一人一人の個性にあった教育の必要を提案している。

96
へんきょう たずさ おとず

(2)何年にもわたって、アジアの辺境の各地を、カメラを携えて訪れている。どん
やまおく (注1)
な山奥に入っても、アジアの子どもたちは明るく、はにかみやだ。そして私の目には、

子どもたちがほんとうによく働く姿が目に焼きついている。

 つい先日訪れていたネパールのチョモランマ(エベレスト山)のふもとの村の子ど

もたちは、毎日二時間、山を登り下りしてして学校に通っていた。そして学校から戻
えさ
ると、牛や馬に餌をやり、弟や妹の世話をしていた。( ① )、何か暗い生活を思い
(注2)
浮かべるかもしれないが、どの子どもたちもくったくがなくて、ほんとうに明るいのだ。

 片言の現地の言葉で子どもたちに話しかけると、もう大変だ。日本人をはじめて見
まと
る子どもたちの好奇心の的になってしまって、とても楽しい時を過ごすことができた。
じゅく
 ここには、日本のように学校が終わって、塾や習い事に行くような子どもはいない。
ど じょう
経済という土 壌 があまりに違う。しかし、アジアの辺境の地に生きる子どもたちと、

日本の子どもたちを比べたとき、私は色々なことを思わずにはいられない。なぜか日
はな かがや
本の子どもたちの顔には、アジアの子供たちの放つ目の輝きや明るさがないのだ。

              (飯島正広「アジアの子どもたちを見つめて」より)

 (注1)はにかみや:はずかしがり屋。

 (注2)くったくがない:心配や気にかかることがない。

問1 ( ① )に入る語はどれか。

 1 こう言うと           2 そうすると

 3 こうして            4 それでは

問2 次のうち、本文の内容と合っているのはどれか。

 1 日本の子どもたちは、アジアの子どものように家の手伝いをするべきだ。

 2 アジアの子どもたちの教育環境を改善するために支援をしよう。

 3 塾や習い事に行かされる日本の子どもたちは、ほんとうかわいそうだ。

 4 アジアの子どもたちは貧しいが、日本の子どもたちより生き生きしている。

97
(3)科学技術の発展は今を便利にはしたが、人類の歴史には不便や不都合をもたら
してはいないだろうか、とふと思う。
(注1) か そ せい
 例えばプラスチック。二〇世紀最大の発明のひとつで、可塑性がある。つまり変形

できるという英語の形容詞が、そのまま充てられた。( ① )、思いどおりの形につ

くれるすぐれもののこと。どろどろの原料液を、さまざまな形態にしながら冷ませば

できあがる合成樹脂一般をさす。軽い、硬い、電気を通さないなどの特性があり、何
けんろう なが も (注2)いた
よりも安く生産できる。だが、堅牢で長持ちし傷まないということは、同時に変質し

ないし、腐らないということでもある。プラスチック製品をゴミとして出すと、その
たいせき う ふ しょく
ままで堆積し、出した量だけゴミのスペースが増え続ける。土に埋めても、腐食して
と (注3)
自然の大地に溶けこむことがない。では燃やそう、とすると、燃やせば有毒ガスが出
(注4)しまつ ②
るので、これもまた始末が悪い。これが、便利を生んだ科学技術の一面である。

          (森英樹「国際協力と平和を考える 50 話」<岩波書店>より)

 (注1)プラスチック:【plastics】合成樹脂。
いた
 (注2)傷む:破損する。腐る。
ゆうどく
 (注3)有毒ガス:毒性を持つ気体
し まつ
 (注4)始末が悪い:本当に困ったものだ

問1 ( ① )に入る語はどれか。

 1 結局    2 要するに  3 いわば   4 いわゆる

問2 ②「これが、便利を生んだ科学技術の一面である」とあるが、その例でないも

   のはどれか。

 1 現代は車社会となったが、一方で大気汚染が深刻になった。

 2 女性の高学歴化が進んだが、一方で結婚しない女性が増え、少子化も進んだ。

 3 携帯電話が普及したが、一方で対面コミュニケーションが苦手な人が増えた。

 4 冷凍食品が普及したが、一方で食卓から家庭の味や季節感が消えた。

98
解答と解説

問題Ⅰ
かくだん
格段: 〜をはじめとする:

とりもなおさず: メディア:

ところが: ちなみに:
さと
悟る: いかに(〜ても):

〜に過ぎない: モノにする:

<解   説>

問1:1、4は技術革新の結果であり、技術革新そのものの観点からは、2か3が残る。

   その場合、3はインターネットに触れた内容だが、本文では取り上げていない。

問2:1、4は明らかな間違い。2か3になるが、技術的に見てどうなのか。

問3:この意味化について、同じ段落で、「文章から場面や状況や内容などを自分の頭

   で具体化しなければならない」とその内容を述べている。

問4:③を含むこの段落の中に「この”想像“の作業が必要であるか否かは、脳の活性化、
ち のう
  智能の発達のことを考えれば、決定的な違いです。」という文がある。筆者はこの

  「”想像“の作業」を失うと、智能の低下を招くと考えている。

問5:注意して読めば、「心の眼」=「智能」であることがわかる。

問6:問5に連動しているので、問5を間違うと問6も間違う可能性がある。それ=

   「心の眼」=「智能」であり、知識の量と智能は異なることを、筆者は既に前の

   段落で述べている。

問題Ⅱ
(1)

しつけ: 導く:

せせらぐ: 裾をまくる:

<解   説>

問1:文末の「〜からです」と呼応する副詞は?

問2:筆者は人によって教え方を変える必要を述べている。現代に置き換えると?

99
(2)
へんきょう たずさ
辺境: 携える:
め や
はにかみや: 目に焼きつく:
おも う
ふもと: 思い浮かべる:
まと
くったくがない: 的:
はな
〜ずにはいられない: 放つ:

<解   説>

問1:前の文が、読者の知らないと思う事実の報告であることが大切。日本人である

   筆者は、
「自分がこう言ったら、多くの日本人はこう思うだろう」とわかっている。
はな かがや
問2:「なぜか日本の子どもたちの顔には、アジアの子供たちの放つ目の輝きや明るさ

   がないのだ。」という一文が、筆者の気持ちを表している。また、筆者はこの文で、

   どうしたいとか、どうしようとか、何も述べていない。

(3)
もたらす: ふと:

プラスチック: 充てる:

すぐれもの: どろどろ:
なが も いた
長持ちする: 傷む:

溶けこむ: ガス:
し まつ わる
始末が悪い:

<解   説>

問1:前の文と後ろの文は、順接でもなく、逆接でもなく、並列でもなく、同じ内容

   が別の言い方で説明されている。

問2:「科学技術=便利」、その一方で起こる<マイナス面=不便>という関係でない

   ものが選択肢の中に一つある。 

<第 12 回解答>
問題Ⅰ 問1:2 問2:3 問3:4 問4:2 問5:3 問6:1
問題Ⅱ (1)問1:3 問2:4   (2)問1:1 問2:4 
    (3)問1:2 問2:2 

100

You might also like