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January 2010

コスト、在庫、商品開発力を改善する
   利益主義経営

Profit Oriented Management

2010年1月10日作成
著者 江口一海
Author Kazumi Eguchi

初出 2004年 アイデアマネジメントレビュー
序 : 『利益主義経営』の全体構成

『利益主義経営』とは、利益の出せる会社しか生き残れないという認識に立ち、
・売値の健全化
・製品原価率の改善
・キャッシュフローの改善
を行うことにより、期間利益の改善を図る。利益を明確な経営目標に掲げ、利
益を生み出すプロセスを体系的、計画的に確立する活動である。
『利益主義経営』とは、利益に最大の関心とこだわりを持った時に、変革を強い
られる旧制の仕組みの解体と再構築を、組織的に行う活動である。
・規模、効率重視の経営から価値、質への経営シフト
・グローバル・ベースでの技術、商品の差別化
・市場の変化へのスピーデイなシンクロナイゼーション
を可能にする仕組みと意識の変革が不可欠である。

『利益主義経営』とは、利益にすべての活動を合流させる取組みである

企業の生き残りための経営変革
価値・質経営・差別化経営・スピード経営

『利益主義経営』

売上げ利益率改善 売値の健全化 商品力強化の開発

製品原価の再設計
製品利益率改善 原価率の改善

キャッシュフローの改善 業務プロセスの変革
棚卸資産改善

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目次

Ⅰ.利益主義経営の概要
  1. どうして利益が上がらないのか
  2.利益を損ねる悪魔のサイクルを断ち切る

  3.量/効率から質/価値の経営
  4.利益体質強化の活動範囲
  5.利益を生み出す流れの仕組み化
  6.利益の流れを作るマネジメント
  7.利益体質強化計画の活動サイクル
  8.利益体質強化の活動コンセプト
  9.利益を生み出す2軸のプロセスの見直し
  10.利益体質強化の活動の体系
  11.利益を上げる活動の計画
Ⅱ.「Speed to Profit 」利益力強化の取組みのポイント
  1.取組みの活動と対象:スピードで利益を創る
  2.活動1: 営業・販売~生産管理~物流の仕事の見直し
  3.活動2: スピードと生産性を両立する生産システムの最適化
  4.活動3: 「仕向開発」体制と標準誘導による顧客ニーズの源流対策
Ⅲ.「Cost to Profit」利益力強化の取組みのポイント
  1.取組みの活動と対象:コストで利益を創る
  2.活動1:機能/仕様の見直しと適正化
  3.活動2:製品構造簡素化設計
  4.活動3:つくり易さ主眼の製品設計~加工法~生産効率の一貫した見直し
  5.活動4:「生産プロセス機能」を見直す
  6.活動5:「作業の再設計」
  7.活動6:「調達、購入品の再設計」 3

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Ⅳ.「Value to Profit」利益力強化の取組みのポイント
  1.取組みの活動と対象:商品価値で利益を創る
  2.活動1:価値を生み出す組織的な研究開発への取組み
  3.活動2:顧客研究に基づく商品機能の再設定
  4.活動3:機能最適開発とは
  5.活動4:生産プロセスの高度化
Ⅴ.利益主義経営への取組み
1.利益主義経営への取組みの考え方と全体計画の位置づけ
  2.利益主義経営の全体の進め方
  3.対象事業の評価と考察の方法
4.利益主義経営の取組み区分と定量的ポジショニング
  5.利益主義経営のプラクティス基準例
  6.利益主義経営活動の取組み理念
  あとがき

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始めに
利益が出せなければ会社は潰れる、という当たり前のことを、長い間、日本の製
造業は忘れていた。いずれ景気が循環して、需要が回復しさえすれば、それなり
の利益は出せると期待していたが景気は簡単には戻らず、戻っても生き残ってい
く厳しさは何ら変わりがない、と多くの経営者は気づいている。利益を上げる事に、
経営者からマネージャー、担当までが懸命にならなければ、生き残り続けることが
難しいが、利益へのこだわりは、経営者以外は薄いという印象を強く受けている。
これまで各企業では利益改善のための活動を熱心に行ってきたが、中々、見える
形での利益向上につながらず、苦戦しているようである。この理由は、
・利益の手段であるコストダウンが目的化しており、コストダウンに汲々となってい
るが、一方で売上げが減少したり、品質を落としたりと、利益につながらないことも
ある。
・コストダウンは数字で効果が見えやすい反面、すぐ安易な値引きに使われがち
なので、コストダウンのメリットはすぐ飛散する。
・コストダウン、在庫削減、更には品質改善と複数のプロジェクトが同時並行するこ
とが多いので、それぞれが中途半端に終わり、改善も全体的に徹底化されず、利
益に結びつかない。
などが考えられる。
そもそも原価管理、品質管理、在庫管理に関してはきちんとしたマネージメントの
仕組みが存在するが、利益管理の場合、実績と予算を比較する月次損益管理を
指すことが一般で、利益が結果であることを考えると、主体的な利益改善への体
系的な取組みがなされていないのは不思議でもある。
一方で、グローバル競争下での生き残りも問われている。今までの規模と効率に
よる更なる利益創出は期待し難い。商品と技術の卓抜した差別化による付加価値
型の経営を目指すことが日本の製造業の進む道である。量から質、効率から価値
への経営シフトが求められている。この経営指標は、言うまでもなく利益である。
企業のパラダイムも構造的に変化しており、利益主義の経営へと変革が急がれる。
いずれにせよ、冒頭に述べたように、利益が出せなければ会社は潰れる。この緊
迫感と緊張感を、利益を生み出す強い製造業への経営改革につなげて行きたい
ものである。
なお、本書をまとめるにあたり、日本能率協会コンサルティングの顧問高達秋良氏
とチーフ・コンサルタントの石田恒之氏から貴重なアドバイスを頂いた。厚くお礼申
し上げます。 5
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1.どうして利益が上がらないのか                      
1.どうして利益が上がらないのか                      
  
  
2002年、2003年の二年間に大半の企業は一応のリストラ策を完了し、企業収益は
上向いてきた。しかし、これに安堵する経営陣は少ない。また、飽くなきコストダウ
ン活動への疲弊感もあり、コストダウンによる利益貢献も限界的になってきている。
コストダウンの必要性はどの企業にとっても大きいものの、価格にすぐ反映されて
しまうので、価格の引き下げが更なるコストダウンを必要とし、利益を犠牲にした
体力限界競争になってしまう。    
一方で、顧客ニーズは益々多様化している。市場はマスから個客へとカスタマイズ
の方向に大きく動いている。この流れにうまく対応できなければ、売り上げを減らし
コスト上昇を招く。また、在庫が積みあがり、キャッシュフローが悪化する。  さら
に商品力を高めることにより利益の拡大を図っていかねばならない。コストダウン
に割いていた資源と時間を計画的に商品力強化へ移行させていかなければ、利
益の継続的な安定と拡大は望めない。
2004年は、いよいよ利益を生み出す力があるのかどうかを試される年になりそうで
ある。  

利益が上がらない背景

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2.利益を損ねる悪魔のサイクルを断ち切る
結果の利益は、売上に左右されるが、実際は、売上を上げるための資源の投入量
で決まる。資源の投入量は、品質を当然の基本条件とすると、納期〔在庫〕、コスト、
商品力に左右される。販売は顧客の意思と大きく関わるので、ここでは考慮しないこ
とにする。
・納期が長いので、タイムリーな商品供給ができない。売れ残り在庫が増える。
・在庫が多いと、皮肉にも一方で機会損失が起こる。
・結果として、コストを上げて、利益率を悪くする。
・コストが高いと売り上げにも影響する。当然、価格が高いので、数量が下がる。
・価格が高いことが機会損出を生む。また在庫が増える。
・在庫が増えると、資源が過多になり、キャッシュフローを悪くする。
・運転資金に影響する・・・
このように、「リードタイム×コスト×商品の力」が利益を左右するメカニズムファクター
であることは明白である。これらを同時解決することが急がれる。

・仕事のプロセスが複雑
・分断された組織と意思決定
・生産工程が分断
・フレキシビリティーが無い等
納期が長い
数量が
在庫が
伸びない
増える

利益が出
ない

商品が売れない
コストが高い

・過剰な仕様と製品構造が
・顧客のニーズにミートしない  複雑
・品揃えが不十分 価格が ・部品の共通化が低い
上がる
・価格設定が正しくない ・生産性が低い
・性能と品質がいまいち ・高コスト体質の仕組みと仕
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 事のやり方
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3.量/効率から質/価値の経営

効率を追求すると物が溢れ、値崩れが起こる。更に中国からの安価商品が出回り、一層の値崩れ
が起こる、という価格破壊サイクルが、デフレ経済の一因を作っている。明らかに今までのビジネス・
モデルが否定されている。これからは、
・規格商品→カスタマイズ商品
・在庫商品→マーケットシンクロナイズド商品
・価格安定商品→機能訴求型商品
・売り上げ→利益、キャッショ
と言うように、顧客の一人一人のニーズに応えつつ利益の出せる商品作りが重要になる。明らか
に、製造業においては、量/効率から質/価値への変換が求められている。
この変換は、同時に
・消費者の多様な価値観に応える
・消費者にその商品の質と価値が認識できる
・そのことが大いなる差別化である
これらはビジネスのモデルと経営のやり方を根底から変える要素を含んでいる。今までの延長に
無い、むしろ今までを否定する新しい事業への変換をどうやっていくかが問われている。利益主義
経営の意図がここにある。

量/効率の時代 質/価値の時代
規模

“幸せ“の時代
“豊かさ“の時代
商品に安全、安心、納得
が組み込まれた信頼価
“脱貧しさ“の時代 値

商品に機能、価格、サー +
ビスが組み込まれたパ
フォーマンス価値

顧客のマスニーズを充足できる “幸せ”は、人の数だけ存在する価
値の多様性に応える商品作りが大
商品の品揃えと提供が大切

2000年代 8
パラダイム変化
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4.利益体質強化の活動対象                           
4.利益体質強化の活動対象                           
 
 
・利益体質強化は、部分〔限定したコスト議論とか〕にこだわらず、事業全体を見
渡し改革することが大切である。 
・利益体質強化とは、事業全体を見直し、仕組みから変革することである。
・利益体質強化の要は、「コスト」「リードタイム〔スピード〕」「商品力向上」である。
・利益体質の強化は、意識の変革が不可欠である。

ROA(総資本利益率)からの展開
ROA:総資本利益率
ROA:総資本利益率
(経常利益÷
(経常利益 ÷総資本)
(経常利益÷総資本)

ROS:売上高利益率 総資本回転率
(経常利益÷売上高) × (売上高÷
(売上高÷総資本)

経常利益 売上高 総資産

営業 営業外 固定 流動
利益 損益 資産 資産

売上 販売費・一 営業外 営業外 有形固 無形固 投資 当座 棚卸 資産 その他


原価 般管理費 収益 費用 定資産 定資産 等 資産 資産

製造 商品
原価 仕入 経常利益最大化
投資戦略
材料 労務 商品力向上 リードタイム
経費 遊休資産圧縮
購入費
費 費 単価×数量 在庫圧縮・ SCM
コスト コスト 費目レベルの目標展開 債権回収期間短縮
変動費削減 固定費削減
物量値レベルの目標展開(1~数階層)
Copyright 2003 JMA Consultants Inc.

利益率向上の対象活動を示す。
リードタイム、コスト、商品力向
上を対象に利益率向上を目指
す。
顧客を巻き込む活動〔営業〕と将
来投資に絡む活動は、別の角 9
度からの議論が必要なので、本
活動から除いている。営業外損
益も除く。 Copyright @ IDEA Inc. All rights reserved
5.利益を生み出す流れの仕組み化
利益を生み出すためには、
・リードタイム〔ビジネスリードタイム〕を最小にし、
・製品コストを最小にし、
・商品力を上げて、価格で負けない、
仕組みをどう作るかにかかっている。理屈は簡単であるが、それぞれの活動対象
とアプローチが違いすぎるので、取り組みは中々難しいのが実情である。また商
品力は、お客様があっての話なので一筋縄には行かない。まず、活動ごとに
・ リードタイム (Speed to Profit)
・コスト (Cost to Profit)
・商品力 ( Value to Profit )
に区分して、その考え方と改革・改善の対象を明確にしておきたい。

利益を生み出す流れの仕組
み化

Speed to profit 資産回転率
リードタイム 
短、直、即の仕事のプロセス 〔在庫〕

Cost to profit  売上高利益率
コスト  簡、単、易な製品、生産の構造

Value to profit 売上高 
商品力  魅、差、益の価値の創出

実態を変革し改革する力 10

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6.利益の流れを作るマネージメント

利益の流れを作るには、すでに述べた「リードタイム」「コスト」「商品力」の3つの
側面からのアプローチが不可欠である。しかし、利益を上げていくには、そのため
に行う活動の順序設定が重要であり、また改善のための目標指標も必要である。
利益を最大化する活動の流れは企業によって異なるため、各企業独自の戦略と
活動方針をしっかり組み立てる事が大事である。
利益〔売り上げ、価格、数量、原価、資産回転率〕

商品力〔魅力度、信頼性、サービス力、価格〕

コスト〔原単価、歩留まり、不良率、生産性、リードタイム〕

リードタイム〔時間生産性、サイクルタイム、在庫〕

在庫〔フレキシビリティー、瞬発力、融通性〕
これら利益を生み出すファクターの関連フローを把握し、改革優先順位と活動評
価の正しい設計、設定がなされた利益マネージメントが有効となる。

顧客
研究

商品力

調達 製造 製品
利益
コスト コスト コスト


リー ム
タイ 利益を生み出す活動の関連フロー


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7.利益体質強化の活動サイクル
スピード・在庫を大きく改善する仕事の仕組み作り(プロセスの改革)に
始まり、コスト再設計により製品・生産構造を改革し、魅力ある商品への
変革につなげていく活動サイクルである。
・高収益会社としてのあるべき姿を構想化して、実態の変革点を明確に
する。
・利益改善への経営指数と改革〔状態〕指数を設定して、活動の水準と到
達度を定量的に評価し管理する。
・白紙に戻して、意識を変えて新たに挑戦する。
ことが活動サイクルを通した改善の定石である。

Cost to Profit
〔コスト・パフォーマンス〕
・製品構造の簡素化設計
・工法、工程の見直し
    ・調達、購入品の見直し

利益体質強化のサイクル
Speed to Profit Value to Profit

〔スピード・在庫〕 ・利益を最大化 〔商品効用の最大化〕


・顧客の使用の場の研究
・販・技・製の一貫統合化 ・利益を継続化
・最適機能開発
・市場同期プロセス構築〔モジュー
ル、セル〕     ・Simultaneous Engineering
          体制推進
    ・物流の短プロセス化
       

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8.利益体質強化の活動コンセプト

利益体質を強化するには、実態プロセスでの仕事の変革、作り方の変革、製品
の変革を総合的に行うことが不可欠で、これらが利益を生む源泉となる。部分的
見直しでは不十分である。この実態プロセスの改善の上にITの再構築を図るこ
とが、強い利益体質作りにつながる。

実態の改善域 ITの構築域

業務及び生産プロセス
Speed to Profit の徹底したムダの排除、
効率化、整流化された 仕事の変革
SCM,
仕事及び生産の仕組
みをつくる ERP
仕事を変える
コンカレ
ントエン
ジニアリ
ング

究極のコストを実現す
Cost to Profit つくり方の変革
るための製品及び生
産プロセスの再設計を
行う 3D-
作り方を変える
CAD,
デジタ
ルエン
ジニア
リング/
ファクト
顧客ニーズに戻した リー
Value to Profit 商品の見直しと機能と 製品/商品の変革
コストの最適化を図る
製品を変える

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9.利益を生み出す2軸のプロセスの見直し                   
9.利益を生み出す2軸のプロセスの見直し                   

事業を強化し利益を高めるには、「リードタイム」「コスト」「商品力」の見直しを総合的
に行うことが 不可欠である。このためには、事業全体を対象として、下記に示す商
品開発のプロセスと生産・流通のプロセスの2軸のプロセス〔Value Chain Process
/Supply Chain Process〕を合わせて見直すことが必要である。
更に、事業全体の仕組みとプロセスを顧客の目線に立ち、白紙に戻して見直すこと
が求められる。顧客の「期待レベル」から乖離したまま、旧態化した仕組みとプロセス
を維持し続けることが、利益を損なう元凶であることを認識することが重要であろう。

Value Chain
Process

商品企画
商品企画

開発
開発
CosttotoProfitの施策
Ⅱ. Cost
Ⅱ. Profitの施策
Value totoProfitの施策
Ⅲ.Value
Ⅲ. Profitの施策
設計
設計

プロセス
プロセス
開発
開発

設備設計
設備設計

販売
販売 受注
受注 調達
調達 製造
製造 出荷
出荷 物流
物流

SpeedtotoProfitの施策
Ⅰ.Speed
Ⅰ. Profitの施策 Supply Chain
Process

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   10.利益体質強化活動の体系
 強靭な事業構造を創り上げ利益体質を強化するには、「Speed to Profit」「 Cost to
Profit」「Value to Profit」のアプローチが不可欠である。このためには、「仕事を変え
る!」「つくり方を変える!」「製品を変える!」の3つの観点を総合的に組み合わせて高
収益会社への変貌を図る改革を行う。                           
今までは、利益達成手段である活動が目的化されて、その活動の議論にのみ関心
が払われたため、活動自体が虫食い的になりがちであった。 例えば、スピード改
善を目的として ITを導入し、「仕事の見直しが大事である」と強調されるが、IT導入
は「仕事」だけでなく、「作り方」「製品」と関連するし、利益面からしても、「仕事の見
直し」は利益に寄与する一部でしかない事は、下記の表から明らかである。    
                                           

仕事を変える 作り方を変える 製品を変える

・組織、業務のス ・整流化、同期化 ・カスタマイズ向け


リム化、簡素化、 プロセス 固定/変動設計
Ⅰ. Speed to Profit 一貫化
・人、物、設備、情 ・メニュー設計
報の最適化

・業務の統合、廃
・加工法、加工条 ・製品構造の簡素

件の最適化 化設計
Ⅱ.Cost to Profit ・複数任務制、チー
・調達品の価格適 ・部品共用化
ム制
正研究
・つくり易い設計
・時間生産性向上

・顧客ニーズ研究 ・新工法開発 ・機能の最適開発

Ⅲ.Value to Profit ・機能開発の知の ・革新プロセス開 ・性能、品質の向


体系化 発 上

Speed×Cost×Value=Profit Max

抜群の利益の発揮!
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11.利益を上げる活動の計画
利益を上げるための活動を事前に予測して、何をどのように改善すれば、どう
なるかを関係者が十分に認識し、そのことを共有化して取り組む事が、活動の
集中化につながる。このための利益計画の方法として、松野茂雄氏の「企業の
体質改善計画」がある。この著書の中から、下記の利益計画を利用させてもらっ
ている。棚卸資産は在庫の削減であり、固定資産は売上げ計画とコストダウン
計画のための過剰な設備投資の回避である。
当期利益の向上      
 ・キャッシュフローの改善

棚卸資産I 商品回転率の改善 棚卸資産I’ B/Sの改善


固定資産E 固定資産回転率の改善 固定資産E’
コストダウンによる    利益   G’
利益   G  原価率の向上
売上げ  S 売上げ  S’
比例費 YQ 商品力向上による売価 比例費 Y’Q’
非比例費  F の健全化&向上 非比例費  F’
P/Lの改善
利益計画用(g)公式

1
g= p- (1-m)y q - ( m- u) f
u

 gは、利益の倍率を表す式で、この式の中での各項目と意味は、以下の通りで
ある。
 前期実績付加価値率(m)及び売上げ利益率(u)と製品1単位あたりの価格の新
旧比(p=新/旧)同じく比例費の新旧比(y=新/旧)、一定期間あたりの非比例費の
新旧比(f=新/旧)及び生産数量の新旧比(q=新/旧)からその期間内の利益額が
何倍になっているかをg(新/旧)として算出する公式である。             
 この公式より、利益を目標レベルに改善するには、
・比例費の改善は?    
・固定費の改善は?
・数量の目標は?
・価格の水準は? 16
について、計画的に目標化できる。
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コストダウン計画への展開

利益公式(g)から各パラメータの目標値の設計ができるが、製品の単位
原価のコストダウン目標を決める必要性は随所にある。これをコストダウ
ンのための(γ)公式と呼ぶ。同じく、松野茂雄氏の「企業の体質改善計
画」から引用している。
特に、γ=hy+(1-h)×f/q , h=(1-m)/(1-u)
これを前述の利益公式(g)に入れると
1
g= (p-(1-u)γ)q
u
同様に

1
 γ= (p-ug/q)
1-u

これより、利益の利益を上げるには、単位商品の原価をどのくらい下げた
らよいかが、売価と数量の関係で算定できることになる。

ただし、m=実績付加価値率
     u=実績売上げ利益率
     h=同じく原価中変動費の占める比率
     γ=商品1個あたり原価の新/旧倍率
     y=同じく変動費の新/旧倍率
q=期間あたり生産数量の〔平均的〕新/旧倍率
     f=期間あたり固定費の新/旧倍率

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Ⅱ.「Speed to Profit」利益体質強化の取組みのポイント

1.取組みの狙いと活動対象:スピードで利益を創る

「Speed to Profit 」は、販売・設計・製造・物流のプロセスを見直し、再構築してスピード


〔ビジネスリードタイム〕を目的追求して利益に寄与させる活動の考え方である。ここ
での利益とは、直接的にはキャッシュフローの向上であり、このための棚卸資産の削
減、商品回転率の向上、在庫の削減である。
この改善を進める推進する過程では、
・業務〔仕事〕プロセスの無駄の排除と時間生産性の向上
・市場の変化、変動へのプロダクトミックスの最適計画
・短サイクル生産、確定生産〔Build To Order〕をベースとしたセル生産方式を含む在
庫最小の効率的な生産体制等を同時に見直し改善する事が不可欠であるので、必
然的に
・業務生産性の向上
・生産資源〔人、物、時間〕の効率向上
・売り上げ機会ロスの回避
等による改善効果が経営利益の貢献への大きなドライブになる効果が大きい。
大きな投資/効果を含むIT導入によるSCM(Supply Chain Management)構築の期待は、
上記の点に集約されるが、効果を大きくするには、実態の改革・改善が必要であるこ
とは言うまでもない。
「ITを導入したものの・・」という経営期待のミスマッチは、実態系の改革・改善が取り
残されたためである事は疑う余地も無い。日本の製造業にとり、この問題は古くて新
しい問題の一つであるが、この当たり前の本質を見逃しているケースが多い。
顧客
研究

商品力
調達 製造 製品 利益
コスト コスト コスト

リー ム
タイ 利益を生み出す   18

在 活動の関連フロー
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「Speed to Profit 」取組みの活動と対象

ビジネスリードタイム即ち受注から出荷までのリードタイムが短いほど企業の
競争力が高い。したがってビジネスリードタイム短縮化のための業務全体のプ
ロセスの評価が不可欠である。ここから業務と生産プロセスにおける個々の問
題点も顕在化されてくる。
営業又は販売段階での仕様決め・注文の取り方も大事な検討事項の一つであ
る。下記の活動を中心に見直される事をお勧めする。

活動2
市場/顧客 スピードと生産性を両立する
生産システムの最適化

新商品開発 生産プロセス

活動3

「仕向開発」体制と標準誘導による
顧客ニーズの源流対応

市場/顧客 営業・設計・生産・出荷 市場/顧客

活動1
営業・受注~生産管理~物流の仕事の見直し

業務プロセスと生産プロセス
間接業務の再設計
の相互最適化     

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活動1
<営業・販売~生産管理~物流の仕事の見直し>

• 多品種化とタイムリーな商品供給を可能とするには、需要変動にいかに素早くレスポンスするかであ
り、生産のサイクルを短くし、市場への供給スピ―ドを上げていくことである。
• 生産計画を販売情報と連動させて迅速に策定することにより、例えば、デーリーの販売実績をもとに
した短サイクルな生産計画が必要となる。つまり、マーケットの要求に応えるための流通在庫をミニ
マムに管理して、流通、物流及び生産を統合する生販情報の仕組みが必要である。
• このためには、受注~生産~出荷・供給・管理の一元的な仕組みと、情報の共有化、情報伝達の一貫
化が必要。
• この点の抜本的な業務の見直しと再構築がポイントとなる。
• 生産と顧客を短プロセスで直結化することが、リードタイムだけでなく、品質、コスト、サービスを
向上させ競争力の強化につながる。
◆管理方式の見直しと流し方の考え方
• 顧客の要求リードタイム、仕様変更度、製品・生産特性(品種・量、バラエティ発生構造、工程数・
能力 etc.)などを考慮し、顧客~製品構造~生産工程(外注、購入品を含む)全体を総合的に関連
付け、一貫した見方で検討を行う。  
• この考え方に立ち、原材料~仕掛かり~製品の持ち方、生産方式全体の構想づくりをする。
• 確定生産と先行計画生産のインターフェイスをどこに設定するか、確定生産領域での切り替え、信頼
性、品質、能力等のリードタイムを保証する物的条件の改善課題は何か。
• 各工程の指示、管理、フィードバックの仕組み、やり方をどうするかについての総合的な見直しが必
要である。

◆確定生産方式/在庫補充生産方式
◆短サイクルによるリードタイム短
縮 物流CPU
部材マスター
◆受注情報の精度・確度、スピード
向上 工程情報
確定注文情
ホスト 在庫情報 報
先行計画情報
確定指示(出荷情報展
開)
原料・
資材
仕入先
物流
受 入 処 理 本組立 検査・梱包 出 荷 センター
加 工

確定生産に基づく在庫補填型生産範囲 確定生産範囲

効率追求 リードタイム・フレキシビリティ追求

整流化、同期化、小ロット化、工程能力向上、切替時間短縮

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<間接業務の再設計>

間接業務は、人それぞれのやり方、スタイルに依存し、標準化しにくいため
に情報を大きく遅らせている。また、定型的・反復的な仕事であるにもかかわ
らず、元々分業化され、部署間の壁が情報のよどみと多くの重複作業を生
んでいる。
間接業務の再設計は、標準化を基準に業務を一貫するプロセスで再構築し、
組織、人、基準ルール、IT化の総合的な検討と見直しを図ることが大事であ
る。仕事のスピードとコストは、業務のインプットの改善で見直しが出来るが、
仕事の価値は、アウトプットのレベルアップに依存する。アウトプットを高めて
価値を生み出す仕事を再設計する際に重要な議論になろう。

1)情報の整流
「必要な情報が、必要な時に、必要な人に供給される。」
このための、仕事の体制、指示系統の流れと意思決定、及び業務の 標準化の見直しを図る。
2)価値を生む仕事の連鎖、連結化
正しい仕事の手順と流れをつくることにより、効果的、効率的でス ピーディーな仕事の再組立を図る。(ス
テップリストマネジメント)
3)業務の完結サイクル化
仕事の目的、目標と実績までのサイクル化により、小回りがきき責任が明確な仕事へ再組立を図る。責任
と共に進化、改善できる達成感 のある仕事へ見直しを図る。
4)複数任務性の導入
各人が多くの仕事を兼務又は協業し合うことにより、開放的な裁量のある仕事のやり方を追求する。
5)業務そのものの標準化、基準化とシステム化(IT化)
人のスキルと経験に依存しない仕事の見直しと仕事の無駄、ロスの排除と標準化、基準化を行ったうえで
ITを活用し省人化を図る。

ステップリストマネジメント
月/日

レビュー
担 当

INPUT OUTPUT
Job
活動 事前 活動 事前
項目 保証事項 項目 保証事項

商品企画

商品設計

試 作

21

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業務プロセスと生産プロセスの相互最適化

多品種少量・短納期からカスタマイズ化要求の進展により、業務プロセスが
複雑になり、かつ従来からの業務の重複、重層化、情報の分断による業務プロセス
の非円滑化と相まって、顧客情報がスムーズに生産工程に展開できず変更・再
計画の無駄が、発生している。
一方、生産プロセスは顧客ニーズが常に変化し変動するため製品の作り込
みが不十分で、再処理、規格外品が増え、更には設備トラブルにより稼動率が
低下していく。このため、計画の信頼性が低くなり、在庫を増やし、販売サイドからの
不信を招く。
以上の相互不信と情報と物の同期化の信頼水準の低さが、情報システムのIT化
以前の問題として多くの企業に散見される。

業務プロセス
業務プロセスの機能と情報の一貫した
仕組み・仕事の見なおし    

・部分最適の無駄
・分断の無駄  
生産プロセス
よどみのない整流化した生産プロセスの実現
   

・定検、定掃、定修の見なおし 
・停止トラブルの最小化     
稼動率の向上
〔詰まり、付着、磨耗等〕   
・的中率の向上            
     
・ゲル生成の減少          
操業度の向上 規格外ロスの改善       
・設備の焼け、こげの最小化    
    
・操業方法、条件の最適化        
   
品種切り替えの効率化
   〔仕込み、運転、洗浄等〕       
    

22
・系列、設備能力のバランス化、適正化
プロセス能力の均一化    

            
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活動2
3.スピードと生産性を両立する生産システムの最適化
 フレキシビリティと生産性・コストを両立する生産システムづくりを行うには、
 ・将来の品種数、品種仕様の変化や多品種・量変動対応など、フレキシビリティ
 の条件をまず目標化することが先決である。
 ・この順序を逆にすると、即ち生産性、コストの条件を先に目標化すると生産ラ
 インはいたずらに硬直化し、製品変化に容易に陳腐化してしまい、結果として
 生産システム全体の効率を落としてしまう。
 ・フレキシビリティの条件を目標化すると、工程・設備・作業の負荷が増大する
 ポイントを顕在化できる。
 ・例えば、切替回数・生産準備業務・運搬回数・検査回数が増える、と言うよう
 に、現在「見えない所、作業」に負荷がかかってくるのである。
  ・このため、作業の負荷がかかる所を事前に顕在化させ、改善、見直し、自動
 化、システム化の手を打つ事が重要である。                    
このような生産システムの最適化への実態改善があって、効果のあるSCMの
構築があることを確認しておきたい。

改善対象 生産システム最適化の範囲

〔受注・受入れから製造・出荷まで〕 キーワードは整流化

工程の見直し 設備の見直し 作業の見直し


販売・

場外物流の最適化
・同期化、系列化 ・能力アンバランス ・段取り改善
・ロットの最小化 の 均一化 ・人と機械の最適化
・レイアウトの一貫 ・C/Tの最小最適化 ・多能工化、多台持
物流・
お客様

化 ・品質向上(不良) ・ハンドリング改善
・仕掛りポイントの最 ・チョコ停、トラブル削 他
代理店

適化 他 減 他

場内の製品、部品の物流及び管理の最適化

生産管理、工程管理の一元化
23

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活動3

4.「仕向開発」体制と標準誘導による顧客ニーズの源流対応

  「仕向開発」とは、変化・変動する顧客ニーズを事前に層別して製品機能の
対応限界を明確にして、効果的、効率的に製造展開する考え方と方法であ
る。開発要素がある場合は、仕向開発で対応して製造条件に展開する。カ
スタマイズ的な要求が拡大している事を考えると大事な要件になる。  
                           
 ・現在の製品機能の水準に入るものについては、販売から製造へ直接オーダー
し、顧客へのレスポンスを高める。同時に販売では、製品機能 の水準内
に入る他の顧客への積極販売〔標準誘導〕を行い、売上拡大とカスタム性
に考慮した技術の標準化を高める。             

処方、物性開発 研究・開発
処方、物性開発
顧客ニーズにマッチする

機能要件 項目水準

仕向開発の範囲
製品機能の発揮

.機能項目がないor


顧客

水準理論値を超え
客ニ

る ・超える
ニーーズ

設備の改造、改

設備機能限界 設備の改造、改

◇ 良

入力条件の再設
入力条件の再設

製造化


操業条件の変更
操業条件の変更

2.従来水準を超える
(理論値内) 適条件:現設備機能・範囲内
(入力条件)

.水準範囲内
(直接、製造へ展開)

標準誘導ツール 標準誘導ツールを活用し、他のお客様
・製品/設備機能限界 への拡販を考える。
D/B ・仕様決めの確実化
・お客さまメニュー ・見積の即時化
・インターネットの ・製造条件の一元展開
活用 ・次期商品開発へのフィードバック

24

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Ⅲ.「Cost to Profit」利益体質強化の取組みのポイント
1.取組みの狙いと活動対象:コストで利益を創る
「 Cost to Profit」は、製品コストすなわち設計と製造を対象とするコストの見直しを
通して、製品コストの究極化を図る活動である。特に、個別に議論するのではなく、
製品構造及び部品を顧客ニーズに立って簡素化、共用化して、生産方式及び生産
構造を単純化して製品コストを下げるアプローチを基本にしている。
ここでの利益とは、言うまでもなく原価低減であるので、
・調達購入費の削減
・製造比例費〔エネルギー・ユーティリティー〕
・設備償却費
・労務費
・その他経費
である。しかし、実際の取組みは単純ではなく
・顧客ニーズが変化、変動〔即ちカスタム化〕してもコストを上げない製品設計と生産
の方式
・熟練の現場作業者が減少する中でのスキルのいらない作業方式の確立と設計へ
のフィードバック
・コストの削減に品質を損なう事のない生産技術機能の向上と改善
といった製造業の物づくり基盤が必要であり、設計から製造までの抜本的な見直し
を図る事が肝要である。

顧客
研究

商品力
調達 製造 製品 利益
コスト コスト コスト

リー ム
タイ 利益を生み出す  

在 活動の関連フロー 25

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「 Cost to Profit」の取組みの活動と対象

設計を見直し生産工程を変えることが活動の基本である。このためにも顧客ニーズ
の多様化/カスタマイズ化の考え方と方針をしっかり持ち設計から見直す事が大切で
ある。安易な標準化はかえって危険である。コストの削減は全体的な活動であるの
で、設計ー生産の見直しを幹にして関連事項の検討を総合的に行う必要がある。

活動5
市場/顧客
活動4 人作業を見直す

新商品開発 生産プロセス機能を見直す
活動1

製品機能/仕様の見直しと適正化 生産プロセス

活動3
活動2
つくり易さを追求する製品設計~
加工法~生産効率の一貫した見直し 製品構造簡素化と
バラエティ・リダクション設計

市場/顧客 営業・設計・生産・出荷 市場/顧客


活動6

購入品の再設計

26

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活動1

2.機能/仕様の見直しと適正化

顧客の多様なニーズに過度に追従する製品開発・設計のやり方が過剰な仕
様を作り出し、不要な機能と従属する部位・構造がコストを上げるバラエ
ティを作り出し、生産コストばかりか、間接コスト、生産準備コストを上
げている。
 顧客ニーズに応え、適正な価格で提供できる製品を設計するには、顧客ニー
ズと製品機能、構造を統合する製品仕様の再設定・絞り込みと、仕様段階
からの製品機種を超えた機能の見直し、構造の簡素化が極めて重要である。

多様化の視点

・システム化、複合化
・環境性
・フリーメンテナンス
・安全性

仕様のまとまり モデルストラクチャーの展開

顧客仕様
システ
基本仕 ム 
顧 客 ニー ズ

様 ・処理対象
・処理条件
任意仕 ・処理量 ユニッ
様 ・稼動率 ト

特殊仕      etc. 設備


仕様決めロジック 機能単位の設定

・機能コード
・部品集合化

仕様とコスト(価格) 仕様バリエーション 標準化


設計
固定/変動化
モジュール組合せ

徹底したコスト見直し 製品・部品構造の見直
① 機能条件 → 機能の適正化 し
② 構成/構造 → 方式、構造、諸元の適正化
③ 加工条件 → 工法・工程設計最適化
④ 調達条件 → 品質、コスト最適化

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活動2
3.製品構造簡素化設計

 顧客の多様なニーズに応えながら、効率的に製品(機能)と生産プロセス
の再構築を行い、コストダウンを図らねばならない。
 そのために㈱日本能率協会コンサルティングの高達秋良、鈴江歳夫により
開発され、既に多くの企業で実績を上げている手法が「バラエティ・リダ
クション(VR)」である。
 これは、製品(機能)の多様化要求を損なうことなく、必要な基本部品の
構成のみにし、総部品数の半減化を図るもので、製品(機能)に対する多
様化の要求と生産側の標準化要求の対立矛盾を克服して、しかも複雑化し
た製品(機能)、生産プロセスを簡素化するものである。
●バラエティ・リダクションの5つの
コンセプト
顧客からみると 顧客のニーズを満足させる製品群
必然ニーズ 構造
①固定/変動/準変動
・ 製品の多様化と標準化の対立をと
るために、製品の中の客先ニーズ
または製品仕様によって変わらな
い固定部分とニーズに直結する変
構造のバラエティ
動部分を分ける。
を増やして ④系列化
・また、変動部分も準変動という見 多品 多様化 ⑤レンジ化
方を入れ、基本条件を見直し、フ 種一 変動要素 に対応
レキシブルな対応ができるように 品化
する。
②モジュール化
・ 少ない部品やユニットの組合せで
製品多様化に対応させる。
③多機能化 最大限の
固定要素 ● 構造の簡素化
・ できるだけ一つの部品やユニット 製品反復
*バラエティの
に多機能を持たせ、総部品数を減 ~多機能
圧縮
らす。 化
・ このための製品機能の仕様拡大を 対応
つくり込む生産条件範囲を決める。 ②
① ③
④レンジ化 ユニット
固定/変動 多機能化
・ 生産設備能力範囲(レンジ)を考 モジュール化
え、個々の製品機能をつくり込む 不要な
生産条件範囲を決める。 バラエティ
⑤系列化 を排除
・ 性能等の数値を決まった数列から
とり、総合秩序づけをする。

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バラエティ・リダクションのコンセプト
1 固定・変動

・固定部分と変動部
固 定 分をわけ
準変動 てみる

・顧客に対応した変
変 動 動部分の

商品多様化
み増やす
2 モジュール

製 ユニッ ・レベルの下の要素
品 ト の組合せ
○ 部
○ ○ 品
○ で上の機能を作る
○ ○
○ ○ ○ ・多様な製品を組合
○ ○ ○ せで増や

生産効率化
3 多機能化

・排 除:なくてもすむ機能の除去
・結 合:2つ以上の機能を1つの部品で果す
・交 換:構成組付順序の入れ替え
・簡素化:構造単純化

レン ・1つの部品がカバー
B型使用範囲
レンジ


する性
能の範囲(レンジ)

A型使用範囲 を段取
50 100 150 200 コストがミニマム
部品の寸法性能 になるよ
うにする
5 系 列

・変動のさせ方をある系列にのせる
・性能数値の等比化・等差化
・寸法数値の等比化・等差化

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活動3

4.つくり易さを追求する製品設計~加工法~生産効率の 
     一貫した見直し

製品設計段階で、部品の形状を含めてつくり易さを見直すことの効果は大きい。
元々手作業の器用さを前提に部品設計も行われている。つくり易さを見直すこ
とにより、生産システムの生産性、効率は大きく向上する。そのためのポイント
は以下の通りである。

-部材の加工精度が安定していること
-位置決め(ロケーション)が容易であること
-把持(ハンドリング)が確実かつ正確に行えること
-共通化、共用化等による部品点数の削減が十分なされていること
-1方向からの組付が出来ること
-品種変更への切替が容易であること
-部材のセット(配膳)が容易であること(識別、ハンドリング、方法)
-インラインで品質チェックが出来ること

これらを実現するためには製品仕様、部品構造等の見直し、標準化が前提とな
る。実際には、多くの企業において上記の条件との乖離が大きいのが実状であ
り、つくり易さの見直しの余地が大きいと言える。

つくり易い設計によるコストミニマムの追求

コストミニマムな
つくり易い設計

設計諸元 加工方式・方法 作業効率

部品標準化 加工方式・方法変更 多台持ち化


共用化 組立方式・方法変更 作業編成変更
・ 信頼性向上 作業のスキルレス化
・ ・ ・
・ ・

・切替レス ・サイクルタイム短縮 ・人員削減


・調整レス ・品質向上 ・海外移転の容易化
・稼働率アップ ・設備固定費ダウン

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活動4
5.「生産プロセス機能」を見直す

生産プロセスを見直すことは、商品価値、スピード、コストの改善に
つながる大きな意味を持つ。
生産プロセスとは、「付加価値を生む製品の変換プロセス」と定義することが出来
る。その変換単位を「生産機能」と呼んでいる。人、設備、物、情報はこの変換を
行うためのインプットと考えられる。生産プロセスを見直すことにより、人、設備、
物、情報の総合的な改善が図れる。コストを大幅に見直すためには、生産プロセ
スを見直すことが早道である。
生産プロセスは、生産対象〔ワーク〕、設備、操業条件の全体に関与しており、生
産プロセスを見直すことは、コスト改善にとどまらず、品質、性能を含めた商品価
値の向上の点からも重要なことである。

製品機能の高度化
生産プロセスとは
「付加価値」を生む
製品の変換プロセス

ワーク

工 法 つくり易さ

生産機能

設 備 操業条件

品質設計

標準化、共有化
圧倒的なQ、C、D (ノウハウ、スキル継
の向上 承化)

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工程設計と加工条件の見直し

顧客ニーズの高度化と多様化は、生産機能に与える要求機能を高度かつ多
様にしている。機能とコストの限界を追及することが、つくり方を変える命題であ
る。工程設計に戻して各工程の機能とコスト支配要素(コスト・ドライビング・ファク
ター)をきっちり定義し、つくり方を変えることにより、コストに与える 影響を評価し
ながら最適な機能を発揮、発現できる「つくり方」の変革を行うことにより、製品機
能のレベルを向上させ、製品価値の向上にもつなげる。

[つくり方の変革とコストドライビングファクター]

顧客ニーズ、基準の評価、
再設定

製品の使用の場の解析

◆生産機能限界の追及
工 程 設 計 ◆コスト支配要素(コストドライビングファク
ター)
製品仕様、構造の適
正化 材料条件/部品構 材料コスト、歩留り
(寸法精度限界、材 造
料特性)

工程数、サイクルタイム、ロットサイズ、段
工 順/設 備
取時間、公差、品質、稼働率、配
置(持台数)
新工法の見直し
〔機能特性の改良〕 金 型/治 具 段取時間、ロットサイズ、サイクルタイム、
稼働率、品質

◇ Y /

公差、サイクルタイム、品質、稼働率
成 形、加工条件
成形、加工条件の見
直し
〔性能特性の改良〕

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活動5

6.作業の再設計

「量が拡大しない中で加工コストを1/2にするためには、作業者を1/2にした生
産体制の再構築を行う」という場合が多い。
 しかしこれを従来の取組みの延長で行うには、無理なことも明白であるの
で、白紙に戻して作業の再設計を行うことが必要となるのである。
積極的に1/2の作業者で仕事をするには、
(1)製品を変える (2)つくり方を変える (3)レイアウト、設備を変える
(4)治具、ツールの利用、機械化をする
(5)多能工化、多台持ちによる作業の効率化を図る
といったトータルな作業の与件を再設計することが本質である。
 さて、作業の再設計をする場合に、何をどう見直し、どのレベルに引き上げ
ていけば良いかを正しく目標化しておくことは大事なことである。
このための方法として、松野茂夫氏の「企業の体質改善計画」で詳説されて
いる生産性倍率の公式が有効である。
[作業再設計の余地、目標化]

ε′ 1+α 1 R′
生産倍率 q × × ×
= ε 1 1-λ R

●作業速度(レーティング)を改善する
・正しい作業の導入と習熟
・関連作業の改善・スピード化
・量産処理、確認作業の排除

●工数の中に含まれる潜在的な余地(機械損失)を変えるこ
とにより改善
・作業改善
・工程編成
・治工具導入……

●現在の人手の作業の一部又は全部を機械に置き換
える改善
・加工、組立作業、検査の自動化
・ハンドリング、運搬作業の機械化、自動化
●現在の仕事の方法を変えないで、除外工数(非稼動要因)
を減らし、
生産への寄与を高める改善
・待ち時間、歩行時間の低減
・設備故障の現象、3S……

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活動6

7.調達、購入品の再設計

調達、購入品を見直すには適正価格を明らかにし、実態購入価格とのギャップを
顕在化することが有効な取組みである。適正価格を明確にするには、
①調達、購入品を一つ一つ工程設計し、工数を正しく設定する
②チャージを設定し、適正価格の基準を設定する
③現行の購入単価との差異を明らかにして、改善の方向、課題を設定する
④部品の標準化、つくり易さ、精度、公差の基準を見直し、購入品の仕様の
適正化を行う
⑤生産方式、設備、作業の総合的な改善の余地を明らかにして、適正化へ
の取組みを協議する
といった、正攻法の取組み、進め方が必要である。

[工程設計に戻した適正価格の評価/決定]
発注仕様書 図面
・公差
・仕様 ・機能 ・精度
・諸元 etc. ・粗さ
●海外調達との
バランスある組合せ
適正な
つくり方の

原材料費 単価×所要量×歩留
設定・評価

OP×× 工程設計書 D/B


加工費

・加工情報
○ ○ ○ ○ ○
外注・購買先

・基準レー
適正な価格


・基本仕様 ・相場価格
・設備
・加工条件
・サイクルタイム
・基準レート
最適・
調達物流の
設定・
適正な

評価

加工コスト
シミュレーション

物流費  輸送+梱包+物流作業・管理
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Ⅳ.「 Value to Profit 」利益体質強化の取組みのポイント
1.取り組みの狙いと活動対象:商品価値で利益を創る

「 Value to Profit」は、商品力を向上させて、売上げの増加を図り利益を作り出すこと
を狙っているが、既存の商品を顧客ニーズに戻して再評価して商品の機能だけでなく、
ライフサイクル、サービス性の観点から見直し、不足する技術要件を加味して根本的
に見直すことが必要である。
ここでの利益とは、売上げ利益率の向上である。付加価値の高い商品作りと呼び変え
ても良い。従来日本の製造業は、特に大企業ほど単一の商品の利益率は低くても規
模を拡大していくので、総利益額が大きいことを良しとしていた。
しかしこれからは、利益の総額を競うのではなく、商品ごとの利益率が高いことが重要
である。このためには、安値競争に巻き込まれないことが条件で
・先行商品としてのアドバンテージがあること
・他商品との差別化された価値の発揮があること
・技術、サービスで優れていること
が不可欠である。
商品の価格は、傾向としては下がっていても「良い商品は高くても売れる」傾向が見え
てきている。
商品を見直し利益率を上げることは、今日的な顧客のニーズの原点に戻って考え直す
ことでもあるので、今までの商品機能を白紙から再設計する取組みにもなるであろう。

顧客
研究

商品力
調達 製造 製品 利益
コスト コスト コスト

リー ム
タイ 利益を生み出す  

在 活動の関連フロー
35

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「 Value to Profit」の取組みの活動と対象

改めて今日的な顧客ニーズの研究が重要となっている。デコレーション的な機能の
追加で顧客の心は掴めない。当然、商品ありきの開発も問題が大きい。      
開発のやり方そのものが見直されつつある。良い商品作りに機能と性能の向上が
欠かせないが、このことは構造と制御を複雑にし、コスト上昇につながりやすい。こ
のための技術解決が決め手になる。また商品開発時点でのコストの予測と計画を
行うDTC(Design To Cost)の取組みも有効である。

活動2
市場/顧客
顧客研究に基づき商品機能再設定

活動3
活動1
商品機能最適開発
価値を生みだす組織的な研究開発への取組み

新商品開発 生産プロセス

市場/顧客 営業・設計・生産・出荷 市場/顧客

活動4

生産プロセスの高度化

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活動1
2.価値を生み出す組織的な研究開発への取組み

 顧客のニーズが捉みにくい、ニーズを製品に置き換えることが難しい、テー
マのブレイクスルーが難かしい、といった諸々のことが重なり合い、機能型
商品での組織的な研究開発の取り組みは遅れているのが実情である。   
その最大のポイントは、製品機能を明確に定義できないこと、製品機能を発
現する生産処方、条件への展開が体系的でないことが指摘できる。    
この点の見直しを含めて「一気通貫」した組織的な研究開発への取り組みが
重要視される。

一気通貫できる組織的な研究開発

事 業 戦 略

営業      技術開発 研究  製造 管理

OUT
IN
目標/物理特性
目的/製品機能

検討/操作変数
ニーズ情報

生産
製品化
顧客

蓄 積 技 術

①常時、開発テーマの見直しと進捗管理を行う。
②テーマを共有化し、コンカレントで組織的な研究開発体制
③顧客ニーズを商品機能、物理特性に定量的にブレークダウンし、テーマの目標を明確化、
共有化する。
④蓄積技術に上乗せした研究で短納期化を図る。(物理特性をキーワードとした情報の共
有化)

37

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活動2
3.顧客研究に基づく商品機能の再設定

既に商品は成熟し飽和した時代になると、誰を顧客に何をターゲットに新製品を開
発するかが非常に難しい。
しかし一方で、既に慣れ親しんだ自社の製品群を前に、顧客の気持ちを捉えた商
品への進化が出来ず悔しい思いをしている当事者も多い。得てして開発の傾向は、
・先行者の開発品のコンセプトを抜け出せず、コスト中心の開発に終始する
・目先の多品種化、特定ユーザー仕様の開発に追われて、利益に結びつかない開
発となる
・新製品を出す事が目的となり、利益につながる開発にならない
と言うように、どこか硬直化をきたしている。一番の問題は、顧客研究が不十分で
顧客の立場から発想していない開発のやり方にあると思われる。新製品は、次の
Aゾーン、Bゾーン、Cゾーンのどこに照準を合わせた製品開発かでアプローチは
変わってくる。


現 改 新
場 新製品区分 特徴 顧客研究のポイント

現 顧客の使用の場
既製 Bゾーン新製 極め細かく顧客の
Aゾーン の研究
品 品 ニーズに適合する
新製品 ・使用プロセス
カスタマイズ開発
・仕様シーン

顧客の全体プロセス
プラス1の価値が の研究      
Aゾーン新製 Cゾーン新製
新 Bゾーン 加わることにより、 ・価値観、
品 品 新製品 既ターゲットを超え ライフスタイル
た市場の拡大 ・新たな使用の
発掘
Cゾーンは、既存事業からからの脱皮を図           
る新製品もあるが、ここでは、何らかの既
市場と技術の双方の
存製品の技術を生かした新製品の場合と ニューテクノロジー、
Cゾーン トレンド研究
考えて、全くの既存事業を捨てる場合は、 ニューコンセプトの
新製品 ・技術イノベーション
議論のスコープから外す。 新製品開発    
38
・市場創出研究   

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商品力強化の効果的な進め方
商品力強化の効果的な進め方とは、売れる商品作りの立案と方法を指すが、
「今までの発想を抜け出し、差別化できる商品を構想し作り上げる」、更に「顧
客の多様化とコストを考慮した商品作り」を行うことを狙っている。

P&M 構想

マーケット戦略と
企画 製品ミックス計画 ・中期的な商品構成 開発実施
開発方針
 に基づいたプラット
 フォームの共通化
・顧客層層別分析     構想
・機能・性能変化へ
・顧客ニーズ分析   ・ニーズ・機能構造化  の対応モジュール ・プラットフォーム
     開発
  顧客シーンの分析 ・性能・満足度分析 ・シリーズ方針  構想
・商品コンセプト設定 ・コア機能・性能 ・モジュール開発
  顧客行動プロセス ・開発目標の設定  と変動機能・性能 ・技術開発
  の分析 ・開発仕様の設定  構成計画
・事業性評価 ・顧客・製品・価格
 実績ニーズ解析  戦略
   
・開発ターゲットの設定

技術開発 構想

・製品ミックス計画
  
 実現のための技術
 課題抽出と解決
 構想

プラットフォーム共通化
ニーズ・機能の構造化 構想
・最適価値型商品    
     割付
 多様な顧客のニーズに      機能 プラットフォーム2機種7
カスタマイズで応えるニー ニーズ     機種3
ズ進化型の商品開発  
     機種5
・創造価値型商品     遊び
機種2
   
興奮刺激
 トレンドとニーズを先取 機種4
りした市場創造型の商品
友達づくり 機種1 機種6
開発     プラットフォーム1

03年  04年    05年
39
ニース゛の割付

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活動3

4.機能最適開発とは
機能最適開発とは、顧客の立場にたって、顧客の真のニーズを把握して、製品機能を
発現する手段〔方式、機構、構造〕を自然法則に戻して再評価して、再組立する考え方
と方法である。顧客の求める価値は、商品機能で決まる性能、品質、特性要件だけで
なく、機能の裏側にある価格要件も重要な要素である。機能とコストを最適化する観点
からも開発時点での計画的な再設計は重要となる。このことにより、具体的には、負
の製品機能〔騒音、振動、故障等〕を見直し、基本機能の発揮安定化を図り、性能、品
質の向上を図る。更に、基本機能の安定発揮により余分な機構/制御を排除し、簡素
化して機構と構造を単純化することによりコストの削減を図る。

  機能最適開発

顧客研究 ・機能発揮の正しい手
段〔方式、機構、構造〕
開発

製品構成/構造
製品機能


客 ○○品質〔騒
機能ユニット 音、振動〕改善
様 製品 
の  コスト

○○メンテナン
機能ユニット ユニット

容易化

機能ユニット
○○品質改善

  機能最適開発(ES:エンジニア
  リング・サイエンス法)
入出力の場の構 仮説の構築
機能の定義 対策指針の
造化 設定
状態変数の考察
駆動伝達過程の
考察 40

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機能最適開発の進め方

①機能を正しく定義して機能を貫くプロセスを自然法則に戻して正しい物理条
件を決定する。〔この考え方と方法をES:エンジニアリング・サイエンス法と呼
ぶ〕
②物理条件を発現するための施策の具体案を策定する。
③ユニットの機能構造モデルを構築して、関係する条件の検証を行う
④有効な施策案の考えられるオプションを、ありたい構造条件に展開する。

重点
重点
問題の 機能ユニット ユニット シュミ 方式
ユニットの
定義 の展開 機能 レーション 構造設計
ES構想
モデリング 解析
・構造設計
・VR設計
・ワークフロー ・ダイナミック ・作りやすい設
・ユーザー要 ・機能展開 ・機能の定義 シュミレーショ
望 ・方式案展開 計
・問題と機能 ・入出力の場 ン
・期待値水準 の の構造モデ ・構造分割

〔品質、コスト〕 関連図
・状態変換の
・他社評価 ・機能別
考察
・不具合事項 改善ターゲッ オプション デザイン
駆動伝達過
ト 案
程の考察 レビュー
・仮説の記述
・改善指針の
設定
・対策案の展

41

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活動4

5.生産プロセスの高度化
生産プロセスそのものは、製品に変換される工程としてここで価値が作りこまれる。このために、生
産プロセスのどの工程〔工程間含む〕をどう見直せばよいかを、顧客の立場と目線で課題化して生
産プロセスに正しく関連付けていくことが望ましい。この方法を技術連関表と呼んでいる。この方法
により、価値とコストの全ての課題の割付と関連付けが効果的に図れる。

要求品質
顧客ニーズ

工   程
要求 要求機能の
条件 展開
P P P P P
1 2 3 4 5

商品価値の向上
A
商品単位

価値を上げる工程
B 〔生産機能〕顕在化

C
 技術連関  

製品 要求 使用 製品 製品 原材 プロ 原材 方
特性/ の場 機能 物性/ 料挙 セス/ 料物 式
品質 /挙 特性 動 条件 性
動 /特

<状態変
<状態変 <状態変
<状態変
換2> 製品
製品 換1>
換2> 換1> 銅粉
銅粉
基板上で Aの
Aの 樹脂と銅
基板上で 樹脂と銅 体の
体の
の溶剤の 特性
特性 粉体の分
の溶剤の 粉体の分 性状
性状
揮発と膜
揮発と膜 散と保存
散と保存
凝固
凝固 中の銅粉
中の銅粉
体の反応
体の反応
42
38
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生産プロセスの抜本的見直し、高度化

生産プロセスを抜本的に見直すには、生産プロセスの機能を目的状態への変換過程として捉えて、
この変換のメカニズム〔入力と出力の場の構造化〕を明確にして、入力と出力のプロセスとその方
法を見直すことが有効である。〔この方法を前述のES:エンジニアリング・サイエンス法と呼ぶ〕

製品機能 (例) おいしいお茶を


目 的
飲む

カルキを抜く

水中CL 2 濃度を下げ
生産機能展 る

◇◇ppm CL2以下

真空にする 水の温度を上げる

平 衡濃度を下げ 気体溶解度を下げ
る る

出 力

製法・処方
・プロセス条件 生産対象(ワーク)
プロセス      変 換
 初期状態    目的
→□→□→□→ 状態

設備(方式) 入 力
手 段

処理条件、操業条件、作業条件 設備 入力 媒体

原材料 労務費 設備 エネルギー 入 力


費 費 費

43

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Ⅴ.利益主義経営への取組み

1.利益主義経営への取組みの考え方と全体計画の位置づけ

● 利益主義経営は利益中心の経営モデルに変革して、利益力
を高めるために経営資源をどう組み立て直し、経営競争力を高めて
いくかの活動である。このためには、事業の全体プロセスを通した利
益力強化の戦略的な再設計が必要である。
● このため、事業単位でまず構想計画を立て、リードタイム、コスト、
商品力の観点から利益力強化と結び付けて、やるべき事が明確化さ
れたマスタープランづくりを行うことが重要である。
● この際に、環境変化、競争条件を正しく捉えて、そのために何をす
べきかを白紙にもどって検討する。
● やる事をしっかり共有化、共通化すること。
● コンセプトをしっかり設計して、仕組み・構造から何を変革すべきか
  を明確にする。
● 変革するための課題を正しく設定し、具体的な着想へ展開する。
● 着想を総合評価し、利益を実現するための効果的なテーマの設定
  を行う。
● 期待成果を最大化するために探求すべき条件は何か。
● 推進体制はどうあるべきかについて構想し計画を策定する。

44

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2.利益主義経営の全体的進め方
利益主義経営は、
・価値を生み出す経営
・質を高める経営
を目指す活動理念であることを述べてきた。この成果指標と活動指標が利益で
ある。このために、
-理想のありたい姿を明確にし、かつ構想化する     
-実態の変革と改善を、ありたい姿の側からアプローチする
 ・仕組みの改善
 ・個別機能の改善
-成果を生み出すのは、組織と人なので、組織と人の意識変革を指標化する

Phase 0 Phase 1
Phase 2-1
全体計画の策定
予備診断

仕組み改善設計

課題 課題 実行 Phase 3
構想 設計 計画
実施移行
Phase 2-2

組織、人の考課
Function改善立案 ・意識
利益を目標にし ・達成度
て、課題と改善 課題 課題 改善
余地をシュミレー 具体 実施
ション 構想 化 計画
活動の成果目標を事
業全体で開示し共有 45
化 
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3.対象事業の評価と考察の方法

診断から実施までは、常にありたい理想水準との比較を通して、Global Profit Topを目指す


活動を推進する。
このために常に、ゴールと利益活動とのギャップ評価が重要である。

Phase0 Phase1 Phase2 Phase3

予備診断 全体計画づくり 実施計画


・余地と活動の ・課題づくりと ・各Function改善と
Master Plan Module 実施移行
枠組み Customize設計

業務 カテゴ 業務プ
プロセ リー別 ロセス
課題 課題 実施
Profit &活動 GAP診断 ス診 GAP 解決方 実施評価/見直し
利益改善 断 評価 針 構想 具体化 計画
期待案
利益改善
計画案

GAP分析 業務プロセス別To Be カテゴリー別ギャップの 業務プロセス別適用


Model シナリオ導入 考察と解決課題づくり 方針の設定
例)製品設計
機 能 評価軸
Profit 機 能 Performance
固定/変動 Performance
4 4
理想水準
設定 3 商 品 Series 固定/変動設 3 商 品 Series
2 配置 定 2 配置
1 1
Speed Cost 0 事業水準のup
0

つくり易さ 部品共 つくり易さ


部品共用性
用性
Variety 評価軸 課題と対策  解決事項
Variety
Value Cost
Cost
〔全体考察〕
・商品Modelが多く、
業務プロセス別の実態 シリーズ化が出
GPT と 水準評価を評価軸に基 きていない
のギュッ づき考察し、点数化する
プの評 評価軸GAPのScenario
価  
評価軸 理想  達成条件 実態 課題    
GAP   Level 業務プロセス別の
課題の設定と取組
GPT(Global Profit み方針を明らかに
Top)とのギャップ する
評価を事業全体で
行い、活動のベン
チマークにする

業務プロセス別の理想との実態 46
GAPの評価と課題化を行う

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4. 対象事業の取組み区分と定量的ポジショニング

利益主義経営の取組み区分として、下記の分類とポジショニングが重要である。
当然、各事業により、また置かれた経営環境と時期により、利益そのものの変
動はある。しかし、どの状況にあるかを正しくポジショニングして、取組みの課題
認識につなげることが重要となろう。また、今は絶好調にあっても、慢心したら転
げ落ちる。問題だらけの赤字経営は、宝の山でもある。経営は常に時間軸で動
いているので、固定的な見方は禁物である。
S
Splendid すばらしい経営状況、状態
P Performance 資源の生産性、効率向上
E Effectiveness 資源の有効性の向上

R Revise 資源の再設計

下記に示すように、それぞれのポジショニングにより、これからの利益
強化の取組みは、異なるものである。

S E

  利益生産性

絶好調なので、理想条 既資源を活用し目に見
件を明確した将来戦略 える競争変化の実現
の展開
・商品の魅力度、翌日
 

・オンリーワン戦略、カ 出荷、不良ゼロetc
スタマイズ戦略etc
← 付加価値総額
  すべての資源をリスト
既資源での生産性、コ ラクチャリング又は、撤
スト削減 退
・調達費削減、人生産
性向上、在庫削減etc
P R

利益状況のポジショニング 47

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5.利益主義経営のプラクティス基準例

事業特性と置かれた環境条件はそれぞれ企業により異なるため、個別に理想とす
る経営水準からプラクティスモデルを考案しなければならないが、客観的におおよそ
の利益主義経営のレベル評価を行うことができる。                    
これにより、事業の実力を定性的に把握することができる。
例: 組立型

グローバル革新    
Basic(基本)改善 機能別改善 事業総合イノベーション  イノベーション
レベル
1 2 3 4
活動 Inferior Unsatisfactory Satisfactory Excellent

・マーケットニーズの ・マーケットニーズの ・商品設計全体に固 ・多様化した顧客へ


 拡大に商品バラエ  変化に追随してい  定/変動、シリーズ  のカスタマイズに 
 ティーが増えて経   るが、儲けの出せ  の思想が貫かれて  効率的な販売、受
Speed
 営全体の効率を落  る水準には無い。   おり、業界でのリダー 注~設計~製造 
 としており、業務の  商品全体に思想が  シップを確保してい  ~物流の一貫した
 プロセスの整理    弱く、後工程の生   る。  効率的な仕組みに
 標準化が遅れてい  産性と在庫を犠牲  より、変化に強く 
 る。  にした水準により、  キャシュフローが健
 収益が上がらない。  全である。

・各商品の部品点数 ・調達コスト、加工コ ・製品構造の適正な ・コストを上げずに 


 /バラエティーが多く、 ストの個別のコスト  簡素化と作り易さ   カスタマイズが可 
 コストそのものが高  改善に力を入れて  の追求により設計ー 能であり固定/変動
 く生産性が低い為  いるが、製品総コ   製造のコス ト改善  モジュールの製品
Cost  に、直接開拓のコ   ストの改善が期待  が進んでいる。  設計が後工程への
 ストアップに繋がっ  レベルにはいかな  効果を発揮してい
 ている。  い。  る。

・商品開発のプロセ ・商品開発のプロセ ・商品企画/開発/生  ・マーケットで差別化


 スはマニュアル化   スはあるが、“商品  産化製造までの商  される商品力を確
 しているが上市期  ありき”の発想から  品開発のプロセス  保しており、常にそ
Value  間が長く、マーケッ  抜け出せず魅力、  は十分に機能して  の商品の技術と特
 トシェアも苦戦して  訴求力のある商品  いるが、なかなかヒッ 徴が、トップレベル
 おり、新商品が利   作りに欠け、 商品  ト商品に恵まれな   にあり進化を続け 
 益貢献していない。  開発期間が まだ  い。  ている。
48
   まだ長い。

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6.利益主義経営の取組み理念

1. 利益を中心とした経営モデルを創り、更にそれを継続化させるには強い
体質変革への改革が必要である
-常に顧客価値を最重視する
-ありたい理想の側から商品、技術、プロセスを見直す
-既存の仕組みを破壊し、経営資源(Input)を再組立する
-精緻華麗に積み上げた従来の常識を捨てさる〔規模重視、横並び等〕
-利益は経営であり、存在そのものである

2. 利益はスピード、コスト、商品価値の掛け算で創られる
-スピードはビジネスリードタイムを最短にし変化に強い体質を作る
-コストは利益を生み出す直接の源泉として、存在の力を問いかける
-商品価値は顧客からの信頼と信用のパラメータとして利益を映し
出す
3. 利益主義経営の実現は価値を創りだすイノベーションである
-プロダクトイノベーション
-プロセスイノベーション
-マインドイノベーション
4. 利益体質強化の取組みは各自の率先意識と行動が必要である
-夢、希望、理想からの主体的な行動
-将来を切り開く勇気、知恵、行動
-組織と自己確立の共存

49

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あとがき
コストを下げれば・・、生産性をあげれば・・、利益はついてくる、という時代を
長く享受していた。このベースには、量産品の価格競争というビジネスパター
ンがあった。だから、叩かれても、叩かれてもコストダウンに邁進してきた。日
本の製造業の根幹を成すものは明らかにコストであった。
筆者も1994年に「コストハーフ」のコンセプトを提言し、自らその活動支援を行
う多くの機会を頂き、時には一緒に苦悩し、時には一緒に喜びそれなりの課題
目標に挑戦してきた。しかし、市場のグローバル化、連鎖的価格破壊現象の
浸透とともに、企業経営の軸足は収益力重視へと移り、現実に我々の活動支
援は、ここで述べさせていただいた「利益主義経営」活動へ徐々に広がってき
てている。その理由は                                   
 ・ギスギスしたコストダウンの延長では、真の事業の展望と機会創出が起こ
らない。
 ・まず市場の変化について行けなければ、コストダウンの効果は、見せ掛け
だけのものになる。
 ・大きなコストダウンは、新商品の開発時点で実現することが有効である。
このため「コストハーフ」と言えども本論で述べたスピード、コスト、商品力の活
動が組み込まれている事が多々あった。当然、製品のコストダウンと商品力
強化は、連続しているので、そこには、時間的優先順位があるが、コストとスピー
ドは、当然同時に取り組むべき課題となる。このような経緯の中で、コスト、ス
ピード、商品力を関係付けて、利益を正しく創出することを最優先する取組み
について、まとめて見たいと常日頃考えていた。しかし、このことの重要な点は
コストから利益への頭の切替にとどまらず、製造業の規範を今までのコスト主
義から価値主義に変換する点にあることを強く認識するにいたった。
まだ十分とは言えないが、これからの製造業の変換を意識した「コストハーフ」
から「利益主義経営」への発展として纏め上げたものである。既に、時代は明
らかに利益主義へ移っていると思われるし、海外との物づくりの棲み分けは、
この一点にかかっている。このためには、技術、商品で優位性を発揮させると
いう製造業の根幹の議論にも通じていく。
時代にどう適合し生き残っていくか。「利益主義経営」とは、その結果見えてく
る企業のパラダイム変換と考えても良い。

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[著者紹介]
株式会社アイデア
代表取締役/経営コンサルタントとして、技術の本質からの経営改善を展開
1974年慶応大学機械工学科修士課程卒
1977年日本能率協会コンサルティングに入社し、以来経営コンサルタントとして、
1980年代 省エネルギー、編集設計、FA生産システム、CIM構築
1990年代 最適生産システム、製品簡素化設計・コストダウン
領域で、50社以上の経営課題の改善、解決のコンサルティングを行う。
1997年に、株式会社アイデアを設立し、
コストハーフ、生産システムの構築、事業の黒字化を主なテーマに活動している。
著書は、「生産システムのリエンジニアリング」「コストダウン50%を可能に
する実行手順」「ものづくり問題解決法」等多数

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