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知識創造過程支援のための方法とシステムに関する研究

A Method and a System for Supporting the Process of Knowledge Creation

網谷 重紀* 堀 浩一**
Amitani Shigeki Hori Koichi

*東京大学大学院工学系研究科 **東京大学先端科学技術研究センター

Faculty of Engineering, Research Center for Advanced Science and


University of Tokyo Technology, University of Tokyo

Abstract: In this paper, a method named ``knowledge liquidization and crystallization'', and a
system named ``Knowledge Nebula Crystallizer (KNC)'' are described. It is also reported that
how they work for supporting the process of knowledge creation in human practices. As an
exemplar of knowledge creation, we have applied the method and system to actual exhibition
design processes in cooperation with a Japanese advertising company. It has been proved that
our method and system have worked for creating new scenarios through user studies and
discussions with professional designers.
景によるものである。
「知識というものは形式的に記述
1.はじめに
することができ、万人が共有することができる」とい
本研究会の趣旨でも説明されている通り、知識創造 う暗黙的な前提があったため、知識管理に関する研究
のためには断片的な情報や気づいたチャンスをうまく や実践においては「客観的な知識」を捉えて蓄えてお
実際のシナリオに紡ぎ上げる、つまり「シナリオ創発」 くということを試み続けられてきた。そうしたアプロ
に関する枠組や技術は不可欠なものである。 ーチで知識管理を成功させてきた例も存在するのは事
本研究ではシナリオ創発を知識創造過程のひとつと 実であるが、同時に行き詰まりを見せているのも事実
捉え、その知識創造過程を支援するための方法「知識 である。
の液状化と結晶化 (knowledge liquidization &
crystallization)
」およびシステム「Knowledge Nebula 2.2 知識創造理論の誕生
Crystallizer」 を提案・構築することを目的としている。 1990 年代に 「従来の知識管理へのアプローチは新し
具体的な例題として構築した方法とシステムをイベ い知識を創造するという視点を欠いている」というこ
ント設計過程に適用し、ユーザスタディおよびプロの とが指摘された。数多くのケーススタディを通して、
プランナーとの議論を通してその有効性を検討した。 知識というものが人間の実践的行為の中に埋め込まれ
ているものであり、その文脈に合わせて動的に構成さ
2.知識創造へのアプローチ
れるものであり、その構成のためには多視点から現象
2.1 知識管理への伝統的アプローチの限界 を分析する能力が必要であるということが主張され、
1980 年代半ば以降に 「社会と組織にとって知識が重 知識管理における関心が「知識蓄積」ではなく、 「知識
要になる」という指摘がなされ始め、新たな経営理論 創造」へと移っていった。そこで知識創造過程に関す
が生まれてきたが、そうした理論の関心の中心はいか る理論が生まれたのである。
にして既成の知識を獲得・蓄積・利用するかというと 野中ら[1]は「暗黙知から形式知へ、形式知から暗黙
ころにあった。これは「知識」というものの捉え方が 知への知識のモードを変換させる過程で知識が創造さ
西洋の伝統的認識論に強く影響を受けて「科学的・客 れる」という立場をとり、SECI モデルを構築した。
観的知識の存在」を前提として成立してきたという背 また Fischer ら[2]は知識管理を設計問題と捉え、完
全に必要な知識全てを予め記述しておけるのではなく、
網谷 重紀 東京大学大学院工学系研究科 Creation – Integration – Dissemination を繰り返し
〒153-8904 東大先端研4号館知能工学研究室 て新たな知識を作り出していくという循環的であると
Tel: 03-5452-5289, Fax: 03-5452-5312,
いう立場をとった。これは知識管理の Design
E-mail: amitani@ai.rcast.u-tokyo.ac.jp
Perspective と呼ばれる。
知識の液状化 人間の行為の文脈を伴った情報を、
2.3 知識創造のための方法論の必要性 実世界に記号接地できる概念を核とし、そのローカル
従来の知識創造に関する理論は多くの企業の知識管 な意味的関係を保存して核を単位とする粒度に分解す
理に対する考え方に影響を与え、その重要性が理解さ ること。
れるに至ったが、現実にはその理論を具体的に実務に 知識の結晶化 液状化で保存したローカルな意味的
適用する方法が提示されておらず、実際に知識創造の 関係を文脈に応じて結合してグローバルに新構造を生
ためには何をすればよいのかがわからないという問題 成すること。
が生じている。理論を実践に落とし込むための方法が
必要とされているのである。 Knowledge Nebula Crystallizer(KNC)は知識の
液状化と結晶化を実現するためのシステムである。
2.4 本研究のアプローチ KNC は、獲得された「人間の行為の文脈を伴った情
本研究は「知識は文脈に依存して動的に再構築され 報」を上記の液状化の定義に従って分解し、蓄積する
るものであり、静的に蓄積しておけるものではない」 ためのレポジトリであり、また蓄積された情報の断片
という立場をとる。 「形式的に記述して保存しておける とその情報間の関係をユーザの現在の文脈に添った形
知識」というものは知識の一形態に過ぎない。知識と で結合して提示するシステムである(図 2) 。ユーザ
はむしろそうした「固体」のようなものではなく「液 は提示された情報および情報間の関係を観察・分析し
体」のようなものであって、文脈によって形を変える て、提示された情報空間を理解する。さらに KNC は
ことや、部分的に抽出して融合することで新たな文脈 ユーザに提示した情報間の関係性を再構築させるとい
に適用可能な性質を持つものに変化させることができ うインタラクションを提供し、内省的思考を促進させ
るものであると捉える。知識の文脈依存性と Design て新たな知識を生み出すことを支援するものである
Perspective に基づき、本研究では知識創造過程を以 (図 3)。
下の段階が繰り返される循環的過程であると捉える。
3.知識創造支援の具体例 – イベント設計を題材に -
• 「人間の実践的行為の文脈」を伴う情報を獲得 本研究では提案する方法とシステムの有効性を検討
する するために広告会社との共同研究を通して東京モータ
• 獲得された情報の内容や情報間の関係を多様な ーショーなどの「イベント設計」を具体的な課題とし
視点から観察・分析して理解する て選び、構築した方法とシステムを適用した。イベン
• 自分が現在おかれている文脈に適合するように ト設計は、現状ではプロの企画者の暗黙的な知識に頼
情報間の関係を再構成する る部分が大きい創造活動であり、知識創造のための方
• 実践に適用する 法が強く求められている分野の代表例のひとつである。
イベント設計において知識創造とは「来場者に企業
本研究では従来の知識創造理論を実践に落とし込む が伝えたいことを表現するためのシナリオを創造する
ため、上記の知識創造過程を支援するための方法「知 こと」と捉えることができる。この点を支援する。
識の液状化と結晶化(knowledge liquidization &
crystallization)
」を提案し、支援システム「Knowledge 3.1 イベント設計における現状の問題点
Nebula Crystallizer」を構築することを目的とする。 従来のイベント設計においては、設計のための材料
としてアンケートの統計分析結果およびインタビュー
2.知識の液状化と結晶化 が使われていたが、企画する側からは「実際の効果の
「知識の液状化と結晶化」は大まかに言って「情報 中身が見えてこない」という声が挙がっている。これ
を分解して保存しておき、それを必要に応じて適切な は Suchman[3]が主張するように、インタビューやア
形で再構成する」というものである。分解される情報 ンケートだけでは人間の行為の文脈(situated
は、前節で述べたとおり人間の行為の文脈を伴った情 actions)を把握しきれないことが理由であると考えら
報を蓄積して置く(図 1)
。また人間が情報の意味内 れる。人間の行為の文脈を損なっている情報は知識と
容を理解するためにはその情報が実世界に記号接地さ して活用するのが困難なのである。
れていなくてはならない。それを踏まえて、本研究で
は「知識の液状化と結晶化」を以下のように定義する。
Retrospective Report Method と After-Action
Designer’s mental space Review という手法を用いた。
来場者が受ける印象を実際のイベント会場でプロト
Designer A
Information with
contexts of human practices コルデータを採取することによって行った。プロトコ
= a resource for knowledge
ルデータは「人間の実践的行為を伴う情報」と見なす
Information with ことができる。実際のイベント会場で、指定のブース
Knowledge contexts of human practices Knowledge
Nebula = a resource for knowledge
Nebula を図 4 に示す様な記録装置をつけて周ってもらい、見
Crystallizer
た後に記録した映像を見ながら「何を見て」 「何を考え
Knowledge たか」ということを報告してもらった。これはプロト
Designer B Nebula
コル分析で用いられる Retrospective Report Method
Acquiring information with contexts of human practices
という手法であり[4]、記録した映像を見せながら報告
してもらうことで、記憶の変容や忘却を防ぎ、可能な
限りイベント会場で生起する文脈を捉えようとするも
図 1 人間の行為の文脈を伴った情報の獲得
のである[5]。
DV Camera

Information with keywords Indicating possible


contexts of human practices by the user Crystallization

Knowledge Crystallization

Knowledge Liquidization Restructuring relationships


among the pieces of information

Dynamic
Knowledge Nebula
Concept
Base
図 4 記録装置

Knowledge Nebula Crystallizer 企画者の意図は、企画書から「どういう概念を伝え


るためにどのようにどのイベントオブジェクト(ステ
ージや説明員、床、他の来場者など、イベント会場内
図 2 KNC における知識の液状化と結晶化
に存在し、来場者が見ることができるもの全てを指す)
をどのように配置して会場を設計したか」ということ
Observing the acquired information from various
viewpoints
を抽出した。企画書だけからでは拾いきれない部分は
Restructuring relationships among the pieces of
a core information
直接質問を行うことで補った。
Designer A

output
Possible Crystallizations
as stimuli
企画者側の意図と来場者の印象の比較は、米陸軍で
stimuli & interaction 用いられている After-Action Review (AAR)と呼ばれ
Creating new information artifacts
る手法である[6]。この手法は「事前に計画していたこ
for explanation on one's actions and thoughts Knowledge
Nebula とと実際に起こったこととを比較することで自分の行
output Crystallizer
動への内省を促進し、自分の行動に対する説明力を与
えるもの」であり、知識管理への応用の重要性が指摘
Designer B
されている[7]。人工物の設計においては人間の実践的
a core
行為の文脈および設計意図との差がよりよい設計のた
Interaction with KNC
めの知識の元となると考えられ、この差が自分の設計
に対して省察を促し、design rationale を明確化させ
図 3 KNC とのインタラクション
るのに有効である。

3.2 本研究で用いた手法
4.KNC を用いた情報とのインタラクション
企画者は来場者の行為の文脈を明らかにし、企画者
4.1 システムによる知識の液状化と結晶化
側の意図と来場者の印象の乖離を把握した上で次の設
採取されたプロトコルの例を図 5 に示す。プロトコ
計に臨む必要がある。そのために本研究では
ルデータは「時刻」 「認識されたオブジェクト名」
「思 • Dynamic Concept Base: システム内部で動作す
考および行動」の3項目が書き起こされ、この「認識 る、概念間関係を動的に再構成する概念ベース
されたオブジェクト名」を「記号接地された核」とみ 実装の詳細は文献[10]を参照されたい。
なす。なぜならイベントオブジェクトとその名前との
対応は企画書に定義されており、かつイベントオブジ 4.2 ユーザスタディ
ェクトは企画者と来場者の共通理解を促進するための 以下のような設定でユーザスタディを行った。
Boundary Object[8]と見なせるからである。 目的:システムの使われ方の調査および利用による
液状化の定義に従い、図の四角で囲まれた部分を単 知識創出過程の観察
位として分解してシステムに保存する。獲得された情 タスク: 2004 年度の東京モーターショーにおける
報の例と、それにより引き起こされた、企画者の知識 S 社ブースのプランニングチームに所属すると仮定し、
の結晶化の例は文献[9]を参照されたい。 2001 年度東京モーターショーの際に使った資料およ
びインターネット上の情報その他を参考にして、2001
年度のモーターショーのよかった点、悪かった点など
を挙げるとともに、クライアントへのプレゼン資料の
元となる資料を作成する
実験の構成:Think-Aloud による
1回目:2001 年度企画書類・インターネット利用可能
2回目:1 回目の資料・KNC4ED 利用可能
被験者: 2名
図 5 採取されたプロトコルデータの例
Test User 1 (TU-1): Web デザイン会社勤務
システムは KNC をイベント設計に特化した Test User 2 (TU-2): 広告会社勤務
Knowledge Nebula Crystallizer for Exhibition
Design (KNC4ED)を実装した。図 6 に KNC4ED の 1回目の実験で手元の資料を用いて可能な限りプラ
スナップショットを示す。 ンニングをしてもらい、2回目で KNC4ED を用いて
さらに続けてもらったため、システムを使う/使わない
という順序の影響は本実験では考慮しなかった。

4.3 結果と考察
TU-1 は1回目の実験でブースコンセプトの大枠を
デザインした。以下のようなまとめ方であった。

ちょっと具体的な構成までまだいかないけどでもだいたい全
体を静と動で、静と動って言うと非常に陳腐な言い方だけど、
荒々しさっていうのを、S 社の持つ土臭さっていうか、いい
図 6 KNC4ED 意味で、なんだろ、野卑なところと、今車 L のコマーシャル
で訴求しているようなきれいな、ヨーロッパの伝統的な建築
各コンポーネントは次のような機能を持つ。
物を背景にクラシックが流れてくるようなああいうちょっと
• ViewpointMap: プロトコルにおける頻出単語上
洗練されたイメージって言うのをひとつにまとめるんじゃな
位10個を表示し、 「来場者の視点」を提供
くて、同時にひとつのブースの中で対比をつけて演出できな
• ControlPanel: プロトコルの内容と選択されたプ
いかってことを考えてて荒々しさのアピールっていうのと非
ロトコル全体の表示・プランナーの意図を記入
常にこの静けさって言うのがうまく演出できないかって、今
• ChronoSpace: 実世界へのgrounding を見やすく
だいたいこう全体のイメージがまとまっています。
して来場者の思考や行動を詳細に観察
• ContextMap: 得られたプロトコルデータを大局
2回目に KNC4ED を用いて、TU-1 は「メインス
的・網羅的に探索し、プロトコルデータ間の類似
テージ」という観点で ContextMap を用いて検索した。
度に従い多次元尺度法による空間配置・インタラ
その結果 S 社の「車 C」に対して、複数の来場者が別々
クティブに事例に新たな意味づけや構造化の場
に言及しているということを発見し、新たなシナリオ
を創発してブースコンセプトの精緻化させる過程が観
察された。

車 C っていうのを発言したのが、別の人だったんだ。多分若
いんだと思うんだけど、意外に知られてるんだ、車 C って A
社の歴史の原点としてそしたら、こないだあたしがなんか、
プランした中の半分のこういうなんかこうちょっとなんかガ
レージ風に演出したところに、単にそのイメージだけじゃな
くて、 車 C から連なる、なんかそういう、そんだけね、割と
認知されているようだったらば、歴史を踏まえた感じでその、
がんばってきたっていうような汗臭さみたいなのが半分に出
せるといいかもしれない。だから実はその車 C って終わった
ものとして置くんじゃなくて原点としてやっぱり、実はとっ
図 7 獲得された情報をトリガとする知識の結晶化
ときたいね。前回はちょっと思わなかったけど、意外に車 C
はよく知られているようでで、実際どうもテレビ番組 X でも
やった風だし、その辺知ってる人多いのかもしれない。プラ
ンの大筋は変わんないけど、なんかちょっと対比が、こっち
のイメージっていうのは単に泥臭いっていうだけじゃなくて、
歴史に裏打ちされた汗とオイルの歴史みたいなそういう感じ
で対比させようかなと思います。

この過程を図 7 に示す。ここで重要なのは、
KNC4ED が大量の文脈つきの情報を液状化し、適切
図 8 ContextMap 上での構造化
な形で構造化して提示することにより、企画者が新し
いシナリオを生成するトリガとなったという点である。
• 「あ、 車 L だ車 L だ」て。 車 L の B4 てのがあって。
通常の検索では関連する文書(ここではサイズの大き
普通の4ドアセダンで「これ売れてるのかなあ」て思い
なプロトコルデータ)が提示されるが、KNC4ED は
ながら見てました。これは B4 を見ている。一番手前に
そのうちの関連する部分を適切なタイミングで提示し
あったから。
たといえる。また、図 8 のように ContextMap 上で
• S 社って書いてなくて「 」だったと思って。 S
(日本名)
実際に構造化することでシナリオが生成されるのも観
社で、 S 社といえば車 L。 車 L が印象にあったので車
察された。ここでは紙面の都合上詳細は省略するが、
L の新しいのに乗ろうと思って車 L あるかなと思って。
1 回目に TU-1 は車 L について「今車 L が訴求してい
• これもずっと車 L だと思うんですけど。あ、 車 L だな
るような洗練さとか、その、スタイリッシュなエレガ
って。
ンスみたいなところはちょっとこう、強く出していき
ここから TU-1 は「あんまり車 L に対して、あん
たいんだよね」等イメージを強く出すことを念頭に置
まり『かっこいい』とか、そういうのちょっとそうな
いてプランニングを進めていた。
いね。まぁ人気機種だよねって感じで。 」という発言を
2 回目に KNC4ED を用いてプロトコルを「車 L」
し、最終的に以下のようなシナリオを生成した。
という観点で分析し、以下のようなプロトコルデータ
をシステム上で整理した。
コアな S 社ファンに新規のファン獲得で、やっぱ新規のファ
• 前というか車Lの方からみたいと思って歩いていると
ンの獲得って言っても単にこう、イメージ戦略だけじゃだめ
ころ。 車 L が見られるところに来たところです。こ
で、やっぱりこう、S 社の歴史とか、技術面(聞き取り不能)
れが一番売れてる車 L なんですよね。 車 L はうちの
やっぱこのへんを強くこう印象付けると。待てよ、コアな S
兄が持ってる。ワゴンとしてはいいな。後ろ回ると後
社ファンっていうのは、そういう車 L の売り方みたいなのに
ろはやっぱり広いな。 車 L は後ろの奥が深い。
抵抗ないのかな。でも確かに、その、妙に洗練されたイメー
ジで登場してしまうと、コアなファンにとっては抵抗感じる
から、両方とも同等に扱うことで、絶対に満足していただけ
るんじゃないかと思います。 ロトコルの採取には時間的経済的コストが高いため、
これを縮小する方向性が実務上の課題となる。
この過程を図 9 に示す。ここで重要なのは、前述の
例同様に KNC4ED が大量の文脈つきの情報を液状化 5.結論
し、適切な形で構造化して提示し、さらにユーザがそ KNC は得られたプロトコルデータを液状化の定義
の構造を観察・分析し、再構築したことで新しいシナ に従って取り込み、結晶化の定義に従いユーザに提示
リオを生成したという点である。 することで知識創造過程を支援する。ユーザスタディ
の分析結果およびプロのイベントプランナーとの議論
を通して、筆者が構築した知識創造過程を支援するた
めの方法とシステムの有効性の検討を行った。本研究
は知識創造過程を支援するための方法およびシステム
のあり方についてのひとつの方向性を与えたと考える。
Acknowledgement
The authors gratefully acknowledge the generous assistance
of Dr. Mori, Dr. Shoji, Dr. Shibata and Mr. Kanazaki for
experiments and discussions. With thanks to Ms. Ueoka in
RCAST and Mr. Clarkson at MIT Media Lab for wearable
computers.

図 9 インタラクションによる知識の結晶化
[1] 野中 郁次郎, 竹内 弘高, 梅本 勝博: "知識創造企業", 東洋
経済新報社, 1996.
4.4 実務側からの評価 [2] Gerhard Fischer, Jonathan Ostwald: "Knowledge
提案・構築した手法・システムの有効性について検 Management: Problems, Promises, Realities, and Challenges",
討するために、共同研究を行っている広告会社のマー IEEE Intelligent Systems, Vol.16, No.1, pp. 60-72,
January/February 2001.
ケティング担当部門の方々と議論を行い、評価してい [3] Lucy Suchman: "Plans and Situated Actions: The Problem
ただく機会を得た。 of Human-Machine Communication", Cambridge University
Press, 1987.
データのリアルタイム性・詳細度およびシステムの
[4] Anders K. Ericsson, Herbert A. Simon: "Protocol Analysis:
柔軟性の有効性が評価された。 Verbal Reports as Data", Cambridge, MA: MIT Press, 1993.
• その時その場所でしか得られないデータを拾い出してく [5] Masaki Suwa, Terry Purcell, John Gero: "Macroscopic
る。 analysis of design processes based on a scheme for coding
designers' cognitive actions", Design Studies, Vol.19, No.4,
• そのデータをコンパクトに観察することができる。 pp.455-483, 1998.
• それを概念レベルから個々の地図情報にまで戻って観察 [6] Center for Army Lessons Learned: "A Leader's Guide to
After-Action Reviews", Headquarters Department of the
できる。つまり、様々な粒度で観察可能である。
Army, 1993.
• オブジェクトでデータをきることができる。 [7] T. H. Davenport and L. Prusak: "Working Knowledge:
• テキストデータを扱うため、他の DB との統合が容易で How Organizations Manage What They Know", Boston:
Harvard Business School Press, 2000.
あると思われる。
[8] Susan Leigh Star: "The Structure of Ill-Structured
また、クライアントの説得の支援としての有用性が Solutions: Boundary Objects and Heterogeneous Distributed
指摘された。統計データのみではなく、来場者から得 Problem Solving", In Distributed Artificial Intelligence (eds. L.
Gasser and M. N. Huhns), Vol.2, pp.37-54, 1989.
られる生のコメントに基づいた設計であり、さらに実 [9] 網谷 重紀, 森 幹彦, 柴田 博仁, 庄司 裕子, 堀 浩一: "イベ
際の来場者の言葉を使って説明を詳細化することが可 ント設計における知識獲得のための方法論と知識再構築支援シ
能である。 ステムに関する研究", 日本知能情報ファジィ学会誌, 「チャンス
• その時その場所でしか得られないデータに対して網羅的 発見とソフトコンピューティング」特集論文, Vol.15, No.3,
pp.34-44, 2003.
に検索をかけることができる。そうすること自体に説得
[10] 網谷 重紀, 森 幹彦, 柴田 博仁, 庄司 裕子, 堀 浩一: "イ
力がある。 ベント設計における知識獲得のための方法論と知識再構築支援
• 地図上で「こういうオブジェクトに対してはこういう意 システムに関する研究", 第17回人工知能学会全国大会論文誌,
見がある」という見せ方をするのがわかりやすい。 2E1-02, 2003.

今回の手法において、低コスト化が求められた。プ

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