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イベント設計における知識創出のための方法論と

知識再構築支援システムに関する研究

An Approach to a Methodology for Knowledge Creation


and a Knowledge Nebula Crystallizer for Exhibition Planning
網谷 重紀:東京大学大学院工学系研究科(*1)
森 幹彦:
東京大学先端科学技術研究 センター(*1)
柴田 博仁:
東京大学先端科学技術研究センター(*1)
庄司 裕子:
川村学園女子大学情報コミュニケーション学科(*2)
堀 浩一:
東京大学先端科学技術研究 センター(*1)

(*1) 〒153-8904 東京都目黒区駒場 4-6-1 東京大学先端科学技術研究センター4号


館5階知能工学研究室
(*2) 〒270-1138 千葉県我孫子市下ヶ戸 1133

Shigeki AMITANI:
Department of Advanced Interdisciplinary Studies, the University of Tokyo (*1)
Mikihiko MORI:
Research Center for Advanced Science and Technology, the University of Tokyo
(*1)
Hirohito SHIBATA:
Department of Advanced Interdisciplinary Studies, the University of Tokyo (*1)
Hiroko SHOJI:
Dept. of Information and Communication Sciences, Faculty of Education Kawamura
Gakuen Women's University (*2)
Koichi HORI:
Research Center for Advanced Science and Technology, the University of Tokyo
(*1)

(*1) Artificial Intelligence Laboratory, 5th Floor, Bldg. No.4, Research Center for
Advanced Science and Technology (RCAST), The University of Tokyo, 4-6-1, Komaba,
Meguro-ku, Tokyo 153-8904, Japan
(*2) 1133 Sagedo, Abiko-shi, Chiba, 270-1138, JAPAN
概要:
本研究では広告会社との共同研究を通して、モーターショーなどの「
実際のイベント設計の現
場」を対象として知識獲得および知識創出を支援するための方法論およびシステムの構築にとり
くむ。
従来暗黙的な勘や経験で設計されてきたイベントであるが、近年企画者側 が「 なぜこのような
方法で設計するのか」 ということを出展者側に説明する必要性が生じてきた。しかし説明の手段
は「勘と経験」ということに依存しているのが現状である。無論そういった勘と経験は非常に重要
な財産であるが、それだけでは出展者側への説得力ある説明ができていないのである。これまで
のイベントの評価には主に5段階評価のアンケートの統計的な分析や、自由回答形式で来場者
からコメントを集めるといった方法が用いられてきたが、プランナーたちによれば、実際にはこうい
ったデータが得られても、そこから何を読み取って、どのように次 のイベント設計に生かすことが
できるかわからないとのことである。実際のイベントのプランニングの現場や会場では数々の「 実
際の文脈に即した知識」 が生まれるが、それを文脈なしに無関係な時点で提示されても役に立た
ないのである(1)。
そこで本研究では、従来の手法では抽出することが 困難であった「
文脈つきの 知識」
を可能な
限り実際のイベント会場から抽出する方法論を提案し、そこで得られた情報を企画者側に適切に
フィードバックするためのシステムを提案・
構築する。
実際のイベントに我々が提案する方法論を用いて調査を行った結果、イベントプランナーが思
いもよらない設計上の変数が数多く発見された。さらにそれらを元にプランナーが知識創出する
という現象が観察され、本手法が有効であるという見通しが立った。
この文脈つき情報の獲得から新たな知識を創出する過程を本研究では「 知識の再構築」 と呼
ぶ。提案する方法論で獲得された大量の情報から重要な事象を発見し、プランナーの Reflective
Thinkingを促し、知識創出を支援するためのシステムKnowledge Nebula Crystallizer for
Exhibition Planningを現在開発中である。
本研究はプランナーの意思決定にとって重要な事象・ 状況についての情報を見出し、それをど
う生かせるかということの理解を促進するという意味で、プランナーにとってのチャンス発見を目
指したものである。文脈つきの知識によってどのような手法が来場者にどのような効果があるの
かということが明確になり、出展者側への説明能力が増すことが期待される。本研究では、「 説得
支援」という実務上の課題を解決することも大きな目標のひとつである。本稿では提案する方法
論および従来の手法では得られなかった情報が獲得された例を示す。さらに得られた情報を活
用するための現在開発中のシステムの概要を述べる。

キーワード:
知識創出 、創造活動支援、知識再構築 、イベントプランニング
Abstract:

The main goal of our research is to establish "methodology for knowledge creation"
and to build a supporting system for exhibition planning named "Knowledge Nebula
Crystallizer for Exhibition Planning".
Every year, exhibition planning companies hold various exhibitions. So far exhibition
planning is conducted with implicit knowledge of experienced planners and effectiveness
of exhibitions is measured only by questionnaires. In actual situations, it is said that
planners cannot obtain adequate and proper knowledge for future planning only from
statistical data derived from questionnaires. Then planners fail to evaluate exhibitions
they design, and they cannot have accountability enough persuasive for their planning
to clients. Planners need to know what visitors to exhibitions actually feel and how they
behave when they are at the exhibition booth in order to construct strategies for next
exhibition planning.
In this paper, we are going to describe the methodology adopted for investigating
visitors' mental transition in the real world and examples of obtained results. The
methodology described here works to articulate exhibition planners' intention and
exhibition visitors' mental impression at real exhibition sites, and then to articulate gaps
between them. Visitors' interactions with exhibition objects were observed, and their
verbal reports (protocol data) and their actions were recorded, collaborating with
Dentsu Inc. From the result of our approach, we obtained a prospect that our
microscopic approach is useful and effective toward exhibition planning a prototype of
"Knowledge Nebula Crystallizer for Exhibition Planning" is described.

Keywords:
creativity support, knowled ge creation, Knowledge Nebula Crystallizer, exhibition
planning
1. はじめに コンピュータによる支援が不可欠である。本研究ではこ
毎年広告会社をはじめとする企画会社により様々なイ の過程を支援するためのシステムKnowledge Nebula
ベントが数多く催されているが、イベント設計はする際、 Crystallizer for Exhibition Planningを現在開発中である。
現状ではプロのプランナーの勘と経験に頼る部分が大き 本稿では次章で関連研究とともに本研究の位置づけを
く、イベントによる効果を把握・分析するための指標がア 述べ、第3章で本研究において提案する手法を述べる。
ンケートの統計的な分析に終始し、実際の効果の中身が 第4章では本手法を用いた調査の結果およびそれに対
見えてこないという問題がある。従ってイベントで用いた する考察を行い、第5章で現在開発中の知識再構築支援
手法がどのような 効果をもたらしたのかということに関し システムについてその設計思想と実装について述べる。
ての情報が得られず、プランナーがブースを出展するク
ライアントにどのような戦略でブースを設計するのかとい 2. 関連研究
うことについて、十分な説明ができないのである。クライ 2.1. 知識創出過程と設計問題
アントへの説明というのは実務上非常に重要であるにも Fischerら(1)は知識を利用するには知識が創出される
関わらず、現状ではプランナーの勘と経験によってなされ 文脈を知る必要があると主張している。我々が捉えること
ている。この説明能力を向上させるということが大きな課 ができるのは知識創出に利用可能と考えられる情報なの
題である。 であり(3)、従来のアプローチの多くが失敗するのは知識
本研究では「 企画者の意図がどれだけ来場者に伝わ そのものを蓄えようとすることによるのである。Fischerら
っているのか」 ということを調査する方法論の提案と、さら はまた、知識管理とはcreation-integration-dissemination
にそこで得られたデータを以後のイベント設計に活用して の循環的過程であると述べている。これは知識のdesign
いくためのシステムKnowledge Nebula Crystallizer for perspectiveと呼ばれ、知識は設計問題のひとつと見なさ
Exhibition Planningを構築することを目的とする。 れるべきであることを示唆している。Schoen(4)は設計過
広告会社との共同研究を通して、以下のイベントを対象 程を「自分と設計対象との対話」 であると述べ、その過程
として、実際に我々が提案する方法論で調査を行った。 は設計者の頭の中で処理される曖昧模糊とした過程であ
l World PC Expo 2001 (2001/09/19(水)∼ ると結論付けた。堀(5)(6)はそういった曖昧模糊とした思
2001/09/22(土)@幕張メッセ 以下「WPC」 と表記) 考過程を分節化(articulation)することが必要であると述
l Tokyo Motor Show 2001 (2001/10/26(金)∼ べ、各創造活動に適切な表現操作系を持つ道具を用い
2001/11/7(水) @幕張メッセ 以下(MotorShowと て外在化することで分節化を促進し、創造活動を支援す
表記)) ることが可能であると結論づけている。Norman(7)はその
来場者のイベントオブジェクト(展示物や会場内にいる ような認知的人工物は人間の内省的思考を増幅するも
人など、イベント会場にあるもの全てを指す) とのインタラ のであるべきだと主張している。すなわち知識創出という
クションにおけるプロトコルを採取してミクロに観察するこ 過程を支援するには知識そのものを捉えて解決策として
とで「 来場者の印象」を明らかにし、「企画者の意図」 との 提示するというアプローチではなく、内省的思考を促進す
差異を表出させた。この意図と印象との差異は「企画者 るのに必要な文脈つきの情報を捉えるための方法論と、
側のイベントの評価基準」として利用可能である。 そうして得た膨大な情報を文脈に応じて再構築するため
また従来暗黙的にしかわかっていなかった「来場者は の適切な表現操作系を持つ道具が必要なのである。
どのような文脈で来場者が何を見て何を考えてどのよう 2.2. 認知過程の調査手法
な行動をしたのか」という「文脈つきの情報」が表出され、 マーケティングやhuman-computer interaction、認知科
イベント設計戦略のための新たな視点が獲得されるとい 学、文化人類学、民族学といった多くの分野で、人間の
う現象が観察されさらに獲得された新たな視点から企画 行動や思考、認知過程を分析する様々な手法が開発さ
者が次のイベント設計戦略を思いついたという現象も実 れてきた(8)(9)(2)。実務上、特にイベントの効果測定に用
際に観察された(1)。文脈つきの情報を提供することで現 いられている調査手法は主に来場者に対するアンケート
在向き合っている文脈に応じてそれらの情報を再構築し、 の統計分析、またはマーケティングで行われているデプ
知識創出に有効活用するという「知識再構築」 の過程を スインタビューやグループインタビューといったものであ
促進できる見通しが立った。 った。
本研究で提案する方法論は、プロトコル分析における これらには次のような問題点がある。
Retrospective Report Method(2)を用いており、膨大な発 l アンケートの統計分析結果だけ見せられてもそこか
話データが得られる。この大量の定性情報から重要な事 ら何をどう解釈したらいいのかプランナーは理解で
象を発見し、内省を促し、知識創出を支援するためには きない。
l 上記の定性調査で何を引き出せるかはインタビュア 得た。インタビューの手順は以下の通りである。
ーの技量に依存する→実務上障害となる。 1. 事前に企画書をもらっておき、意図と実際の手法
l インタビューで来場者が報告する内容は、認知科学 (配置や演出など)との組をあらかじめ抽出してお
的な観点から記憶の変容や再構成、忘却、インタビ く。つまり「この配置や演出は何を意図したもの
ュアーの質問による誘導がおきやすい(2)。 か?」ということを明確にしておく。意図と手法との
l インタビューもアンケートも「企画者側があらかじめ 組が明確でないものについては質問事項として
用意した視点に関する質問がなされる。 挙げておく。
企画者側の視点で切り取った調査は「 企画者側の意図 2. プランナー自身に、プランナー自身の言葉でブー
したところに着目したかどうか 」ということを調べるのには ス出展のコンセプトを語ってもらう。ここで不明な
有効であると思われるが、「 実際に来場者が何に着目し 点があった場合には質問事項として挙げておく。
ているか」 といったことは調べることができない。しかしそ なるべくプランナー自身の言葉でコンセプトを語っ
ういった情報は「どのように情報を提示するか」 という設 てもらいたいので、こちらから誘導につながるよう
計問題に関わるものであり、調査してイベントの設計に生 な質問をすることは避ける。
かしていくべきである。 3. あらかじめ用意しておいた「 意図-手法」 の組で不
本研究では来場者が「何を見て」 「何を考えて」「どのよ 明だったものに関して質問する。その際の質問は
うな行動をとるのか」 という情報を、実際のイベント会場と 「この手法はどのようなことを伝えるためにとった
いう文脈をできる限り保持した上で獲得するために、プロ ものか」ということに絞る。これはこのインタビュー
トコル分析におけるRetrospective Report Methodが適切 がインタビュアーの技術によらないようにするた
であると考えた(2)。言語報告によって人間の認知過程を めである。誰にでもできるインタビューを目指した
調べる手法には主に次の2つがある(2)。 ためである。
l Think-Aloud: 被験者は、既に言語化されているかど 3.2. 来場者の印象の抽出
うかに関わらず、考えていることを発話する方法。 WPCでは被験者は6組(1人×3組、2人組×3組)、
l Retrospective Report: 特定のタスクを実行中に考え MotorShowでは被験者12名をあらかじめ 雇い、記録装
たことをタスク完了後に報告してもらう方法。 置を装着してもらって会場内の指定したブースを閲覧し
l 本研究ではタスクが「 イベント会場を見て周る」という てもらった。前章で述べたとおり、WPCの被験者のうち、
タスクの性質上、Retrospective Report Methodを採 1人はThink-aloudで、2人組には対話法を用いた。
用した。イベント会場には被験者以外の来場者もお MotorShowでは全被験者に対してRetrospective Report
り、その環境の中でマイクなどに向かって言語報告 Methodを用いることにした。採取したプロトコルデータは
を行う場合周囲の目を気にして発話内容や発話の 時刻情報・認識されたオブジェクト・ 思考および発言・行
頻度が変化してしまうことが予想されたためである。 動の4項目からなる。実際のイベント会場の指定のブー
実際今回後述する2つのイベントを対象として調査を行い、 スを記録装置をつけて周ってもらい、見た後に記録した
試しに1つめのイベントの被験者1名にThink-aloudで会 映像を見ながら「 何を見て」「 何を考えて」「どのように行
場を閲覧してもらったが、予想通り発話は困難であった。 動したか」ということを報告してもらった。その上で企画者
また、Think-aloudの手法のひとつに2人組で行う「対話 の意図と来場者の印象とが一致しているかしていないか、
法」という手法もある。自然な対話を促すために2人で話 していないならばどのような差異があるのかといったこと
し合ってもらうというものである。今回試験的にWPCの被 を抽出した。プロトコルデータの例を表 1に示す。
験者何組かに対してこの対話法を用いて調査を行ってみ 表 1 採取したプロトコルの例
たが、MotorShowの調査においてはRetrospective 認識された オブ
時間帯 ジェクト 思考および発言 行動
Report Methodに統一した。 インクジェットプ レーザープリンタはどこに
23.40 リンタ あるのかな?
レーザープリンタを見て レーザープリン
3. 本研究で提案する方法論 みよう タを探す。
WPC・MotorShowを対象として、実際に我々が提案す 3.3. 調査手順
る方法論で調査を行った。 紙面の都合上詳細は省くが、大体以下のような手順で
3.1. 企画者の意図の抽出 調査を行った。イベント開催前に被験者を選出しておき、
「どのような意図を持ってブースを設計したのか」という 集合時間・集合場所を通知しておく。イベント当日は以下
ことを明らかにすることを目的とする。今回は対象とした のような手順である。
ブースのプランナー本人に直接インタビューを行う機会を
来場した被験者に対して調査の趣旨や制限時間など これをプランナーに報告したところ、以下のような新た
を説明する。付録にインストラクションの内容を示す。閲 な戦略を思いついたという現象が観察された。
覧するブースを指定し、ブース閲覧時間は基本的に被験 例えば、スバル車に乗っている家族を何組か招待する
者が終了したいと思った時点で終了ということにしたが、 と他の来場者もこのように感じるかもしれない。『 特別な
最大で1時間とした。待ち合わせ場所で係が待機してお お客』として招待された家族は喜ぶだろうし、招待された
き、被験者にそこに来てもらうように指示しておく。図 1に 家族がもしその企業をより好きになったら、それは企業に
被験者に装着してもらった記録装置を示す。この記録に とっても有益なことだ。
はWearable Computerの利用を試みた。しかしイベントの おそらくプランナーはたとえば以下のようなことは既に
スポンサー側の要請によって、WPCでは一部利用するこ 知っていたと思われる。
とができたが、MotorShowではWearable Computerの利用 l 来場者間でインタラクションがある。
は全面的に禁止された。そこで調査では主にイベント会 l 特別なお客様として招待されたら来場者は喜ぶ
場で不審に思われないような普通のデジタルビデオカメ l 来場者が企業を好きになれば企業にとっては有
ラを利用した。この記録装置をつけてもらって会場内の指 益である。
定のブース内を自由に閲覧してもらった。今回の調査で これらの情報は新しいものではないが、ある文脈によ
対象となったブースは次の通りである。 って統合されることでその組み合わせが新たな戦略を生
l WPC:富士ゼロックス、東芝、Canon み出した。これは知識再構築の良い例である。これは「事
l MotorShow:スバル 象間をある文脈でつなげる」ということが新たな戦略を生
閲覧終了被験者と待ち合わせ、インタビュー室に移動す み出す可能性を示している。
る。その後インタビュー室で被験者が記録装置で記録し 4.2. 企画者の意図と来場者の思考とのギャップの例?
た映像を見ながらRetrospective Report Methodによるイ 期待動線の差
ンタビューを行う。閲覧時間によって異なるが、インタビュ 企画者側にはブースへの来場者に「このような物語を
ー時間は約1∼2時間であった。経験上閲覧時間の2倍 感じ取ってほしい」といった狙いを持ってブース内での来
程度の時間がかかることが見込まれる。 場者の動きを制御しようとする。この動きを期待動線と呼
ぶ。一般的には以下のような流れを作ることを念頭に置
4. 結果と考察 いてブースを設計する。
来場者の実際の行動を詳細に観察することで企画者 l 来場者にメインステージで新しいことを知ってもらう
にとって興味深い現象が多数現れた。紙面の都合上全て l その後実際の製品の展示へと導く
を列挙することはできないが、以下にいくつか例を示す。 従って、メインステージをまず見てもらうことを期待する。
DV Camera 図 2にMotor Showのスバルブースにおける第一期待動
線(1)-(5)および第二動線(a)-(f)を示す。図中の小さな長
方形は展示車を示す。図 2のMain entrance側に縦に中
央通路が通っており、そちら側から多くの人が入場するこ
とを期待した。企画者の意図は以下のようなものであっ
た。
「期待動線としては中央通路から入ることを想定した。
そこでメインステージを現在の位置にした。メイン動線以
外の動線でブースを周ると、印象が異なる。車を先に見
図 1 使用した記録装置(SONY DCR-TRV20) るのは持っている人または買う人。これはブランドが確立
4.1. 知識再構築の例 している証拠。」
他の来場者とのインタラクションが数多く見られた。そ 調査の結果、被験者12人中2人が第一期待動線に従
の中の一例であり、プランナーを新しい知識の創出に導 ったことがわかった。後の被験者は中央通路から来て図
いた例である。 2右下隅の車のところで立ち止まり、そこから左方向に並
「隣で見ていた家族連れを、コンパニオンのお姉さんが んでいる車を順に見て、ほぼ第二期待動線に沿って歩く
近づけて。一緒に写真撮って。コンパニオンも子供もニコ というのが観察された。第一期待動線をたどらないという
ニコしていて。うちの子供、やっぱスバル、レガシーのファ 現象が統計的に有意に起こるかどうかということについ
ンなんですけど。うちの子供連れてきたら喜ぶかな。こう ては本研究では言及できないが、その傾向が観察された。
いうのもいいなあ。」 このような実際の動線と期待動線との比較はイベントの
評価基準のひとつになりうると考えられる。 する。前章で述べたような調査結果は「観察によ
る発見」 である。従ってプランナーの観察過程を
支援する必要がある。
l プランナー自身の観点から興味深い事象を抽出
して保存やコメント付けができること(Filters)。
l 複数のイベントでの複数の被験者の調査結果を
横断的に閲覧可能であること( Joiners)。
l 大量のプロトコルデータを概念的なまとまりで検
索し、閲覧できること( Aggregators)。
l さらにプランナー自身の観点を導入した概念的な
まとまりで検索できること。詳細は後述する。
l 上記のように、実際の個々のデータと全体的な概
図 2 ブース配置図および期待動線 念空間と両方を提示し、その間の往復が容易で
あること(Transformers)。
5. Knowledge Nebula Crystallizer for Exhibition l 従来のアンケートデータも統合できること
Planning (Wrappers)。
以上から、本研究で提案する方法論を用いた調査によ 本研究では上記のことを実現するために、以下に示す
って、従来の手法では拾えなかったイベント設計における 知識再構築支援システムKnowledge Nebula Crystallyzer
有用な情報が得られるという見通しが立ったといえる。本 for Exhibition Planningを提案する。図 3にシステムのスク
手法では現実に即した形で可能な限り文脈情報を保持 リーンショットを示す。次節から各コンポーネントの説明を
するという目的でプロトコルを採取するという方法を採用 行う。図 4にイベント設計と提案する方法論およびシステ
した。今回の調査で得られた膨大なプロトコルデータは筆 ムとの関係を示す。従来はイベントを計画し、イベントを
者らが手作業で分析したが、実際の業務にこの手法を持 実施し、アンケートなどをとる、というサイクルであった。
ち込むためには分析を支援するためのツールが必要で 体系的な調査結果のフィードバックというものはなく、結
ある。プロトコルデータというのは概して膨大なものにな 果がイベント設計段階に利用されることはほとんどなかっ
るため、プロトコルデータを取り扱うにはコンピュータによ た。本研究で提案する方法論の導入により、まず調査に
る支援が不可欠であると言える。このようなデータは、大 よる情報の獲得の段階が増強される。そしてシステムの
量に貯めるだけでは意味がなく、観察し、興味深い事象 導入により調査結果に対する省察が強化される。過去の
を発見し、それを知識創出のために活用しなくてはならな 調査結果も含めて、現在のプランナーの観点で横断的に
い。そのためには単にテキストデータを保存しておくだけ 考えることをシステムがサポートしてやることでさらに省
ではなく、それらを現在直面している文脈に応じて再利用 察が強化され、新たな知識創出につながりやすくなること
できるようにしなくてはならない。そこで本研究ではこの が期待される。また、横断的に考えたことをシステム上に
過程を支援するための知識再構築支援システムを提案 残してやることでプランナーの思考の分節化(6)(5)が促進
し、現在実装中である。 される。
Berzal(10)は、これからのデータマイニング支援の道具は ControlPanel
①異なるデータベースを統一的に利用可能にすること
(Wrapper)、②複数の種類のデータセットを組み合わせる
ことができること(Joiner)、③データを高次の観点から見
られるようにすること( Aggregator)、④入力したデータセ
ットから興味深いものを抽出すること( Filter)、⑤データセ
ットを様々な表現系で提示すること(Transformer) の5つ
の機能を持つことが必要であると主張している。実際の
業務の流れやBerzalの主張を踏まえて、システムとして
以下の点を支援することを考える。
l 大量に得られる個々の被験者のプロトコルデータ
を、可能な限り文脈を保持した形でプランナーに ChronoSpace ContextMap
提示し、被験者の行動や思考過程を観察しやすく 図 3 Knowledge Nebula Crystallizer for Exhibition Planning
ので、調査対象ブースの地図上にプロトコルが発生した
場所がプロットされる。図 4との対応としては、主に情報
:従来の手法
:本研究の支援対象 獲得∼調査結果に対する省察およびイベン概念・オブジ
イベント設計 ェクト設計という過程を支援する。具体的には以下のよう
新たな知識創造
な機能を持つ。
このサイクルをシステムが支援 (勘と経験)
調査対象ブースへのオブジェクトのプロット:
調査結果に対する省察
イベント開催前の段階で、実際にどのようにイベントオブ
(報告書)
仮説の
設定・
検証
ジェクトを配置したのか、そしてその配置にはどのような
提案する方法論による支援 情報獲得・蓄積 イベント概念・ 意図があるのか、ということを明確にするための機能で
オブジェクト設計
ある。ブースの図を読み込み、そこにオブジェクトをプロッ
(アンケート調査)
説明・
説得 トできる(図 6の小さな番号なしの正方形)。オブジェクト
イベント実施 クライアント ごとにコメントを残しておき、「これはこういう効果をねらっ
てこのように配置する」 といったようなコメントを残してお
図 4 イベント設計とシステムとの関係
ける。これは企画書のデータをそのまま用いることができ
プランナー自身が自分の概念を言葉によって明確にし るため、「いずれにせよクライアントへの説明用に書かな
ていくということはすなわち自分の思考を説明することに くてはならない文章を入力する」という意味で実際のワー
なる。「プロトコルデータという、実際の来場者の声に基づ クフローに即したものであるといえる。説得支援という観
いての分析を言葉で説明する」 ということは、クライアント 点からは、「このような配置にしました。なぜなら…」 という
への説明能力を高めることにつながり、本稿の冒頭で述 ように、実際にどのような意図でそうしたのかということが
べた説得支援につながることが 期待される。これは野中 ひとつの図にまとめられ 、そのブースの全体構造を把握
ら(11)が提唱したSECIモデルやFischer(1)の しやすくしている。プロットしたオブジェクト上にマウスカー
Creation-Integration- Disseminationのサイクルといった ソルをのせるとそのオブジェクト名および添付したコメント
知識モード変遷・ 知識創出に関する理論的枠組みおよび が表示される。将来的には各オブジェクトのみではなく、
Shneiderman(12)の創造活動支援の枠組み 「ここのゾーンでは」 というように、オブジェクトの階層構造
collect-create-consult-disseminateに対応しており、モー を導入していけるようにしたいと考えている。
ド変遷を起こして知識創出に結びつけるための方法論で 動線の自動生成:
あり、それらを実現するためのシステムである。 上記のようにしてオブジェクトをプロットしてできたオブジ
本システムは大きく分けて次の3つのコンポーネントに ェクトデータと時系列的に表現された被験者のプロトコル
分かれる。 データとをつき合わせて、システムがその被験者の動線
l ChronoSpace:プロトコルデータの詳細な観察 を自動生成する。被験者のプロトコルデータを起こすの
l ContextMap:イベント・被験者の横断的な観察と は現状の技術では人間が手作業で行うしかないが、テー
概念形成 プ起こしを専門に行う業者があることを考えると、十分に
l ControlPanel:オブジェクトへのコメントづけ、プロ 業務上実用的であると考える。
トコルデータの表示や検索を行う操作ウィンドウ
(図 5)

図 5 ControlPanel
5.1. ChronoSpace:詳細な観察のためのツール
ChoronoSpace(図 6)は、現場で観察できないプランナー
が「実際に来場者が何を見てどう思ったのか」ということ
を可能な限り詳細に全体の行動履歴を観察するためのも 図 6 ChronoSpace
この機能はイベント調査後に「各被験者が何をどのよう
な順序で見て何を考えたのか」 ということを把握しやすく
②各塊の名前、③関連属性・関連する値・ 関係、④固まり
するためのものである。プロトコルデータは膨大になりが や属性・ 値・関係性の関連付け、⑤制約、⑥一般化、⑦
ちなので、素早く見るためのインタフェースが必要である。 構造の集約の7点がなされることで進んでいくと主張して
一見してどのような動線をたどったのか、それが期待動 いる(13)。
線とどれだけ違ったのかといったことを分析しやすくする 「様々なイベントで用いたある手法やオブジェクトがど
ための機能である。 のような効果をもたらしたか」「ある効果をもたらすには
動線上に時間順に番号がつけられた「発言があった場 様々なイベントにおいて従来どういう手法やオブジェクト
所」が地図上に提示される。発言には2種類あり、「あら を用いられてきたか」 ということを網羅的に把握するため
かじめプランナーが定義したオブジェクト」に対する発言 にプロトコルデータを分析していくことになるが、プロトコ
と「プランナーが定義しなかったオブジェクト」に対する発 ルデータは膨大であり、関係性を見抜き、関連づけを行う
言である。前者はプランナー自身が自分の意図と合致し ことは人間にとって困難である。しかし、データに対して
ているかどうかということを確認することでプランナーの 構造化を行わなければ膨大なデータはそのまま埋もれて
Reflective Thinkingを促す。後者はプランナーが予期しな しまう。そこでデータの関連性を提示するために、インタ
かった「来場者の意外な視点」 発見を促すことが期待され
ラクティブな空間表現を用いて表示し、かつそこにはプロ
る。動線上の発言を見ていくことで「期待動線と合致して トコルデータ間の類似度に従ってデータを配置する。ここ
いなかった理由は何か?」ということをつぶさに分析する での検索には後述する概念ベースを利用する。これによ
ことが可能になる。 って上記7項目中の1∼3が支援されると考える。具体的
プロトコルデータを見ていくうちに興味深い事象を発見 には検索語を概念ベースで展開して、それらを検索語と
した場合、地図の下にある「 interesting」
というボタンを押
して概念的に類似しているプロトコルを抽出する。類似度
すことで保存することができる。こうして保存したデータは に従って配置されるため、「 なぜそれらの プロトコルが似
後述するContextMap上に情報を提示する際に活用され たものとして判断されたのか」 という分析が可能である。
る。また、興味深いものにタグ付けするという操作そのも たとえば「メインステージ」という検索語で検索を行い、デ
のがプランナー自身の「 その情報に対する意識」を高め ータが一箇所に固まっているのを見ることでメインステー
るという効果をもたらすという期待もある。この機能は ジの一般的な傾向を見たり、遠くに配置されたデータを見
BerzalのFilterにあたるものであり、プランナー自身の観 て「何が特殊なのか」 ということを観察して関係性を発見
点で情報への関心の強さを表現するものである。この情 したりすることができる。
報は後述する「 概念ベースの動的生成」において活用さ ユーザによる再配置:BerzalのTransformer
れることを念頭においている。 ユーザが直面している状況に合わせてプロトコルデー
5.2. ContextMap: 事例分析と知識創出支援ツール タの再配置およびグルーピング・コメント付与といったイン
ContextMap(図 7)は大量のプロトコルデータに対して タラクションをとれるようにした。これによりShipmanが提
網羅的に検索し、左側に空間配置を行う。右側には、検 示した7つの項目のうち4∼7が支援されると考える。ユ
索語と後述する概念ベースによって展開された類義語お ーザ自身が明示的に関連付けを行い構造化していくこと
よび検索語とその語との類似度がリスト表示される。 で、その状況に応じた新たな知識創出が支援されると期
待できる。山本ら(14)が指摘している通り、ある時点にお
いて求められるのは「 問題を解決するための答えを提供
するシステム」なのではなく、「問題空間と解空間とを探
索するための場」を提供することである。
このように関連付けをシステムが、あるいはユーザ自
身が行う過程は、たとえば「メインステージに対する来場
者の価値判断基準は何か?」「 なぜ自分はこのような価
値付けをするのか?」「なぜ自分はこのように考えたの
か?」ということを分析し、明確に説明可能にしていく過
図 7 ContextMap 程である。つまり、データを基にして結論に至るまでの思
ContextMapにおいては次のようなインタラクションを想 考過程をクライアントと共有することができることが期待さ
定している。 れる。これは説得支援へとつながる。
事象間の関係の観察:BerzalのJoiner・Aggregator さらに、2つの軸を設定してプロトコルデータを平面上
Shipmanらは分析的タスクにおける情報の構造化は①塊、 で分類する機能を実装中である。たとえばX軸を「 マイク
ロソフト」、Y軸を「東芝」として平面にプロトコルデータを 脈に応じて動的に作り変えて利用することを考える。従来
配置すると、第一象限には両社に共通するもの、第2・4 概念ベースの重み付けを動的に変更するといった研究
象限にはどちらか一方が持っているもの、第3象限には はなされてきたが、実用上の応用という例はほとんどな
どちらにもないものが提示され、今後の新たな展開を考 い。問題解決や分析といった過程はその状況に大きく依
えるきっかけが生まれることが 期待される。またたとえば 存する発見的過程であり、またある構造を知識として保
「マイクロソフト」「ステージ」という軸を設定して「 マイクロ 存したとしても概念間の関係は本来動的なものであるた
ソフトのステージはこういうもの」 というプランナーの直感 め、動的に再構築可能な環境を提供するべきである。
があっているのかどうか 、違っているならばどのような違 本研究ではContextMapにおいて付与したグループや
いがあるのか、といったことを確認することができる。 コメント、ChronoSpaceで「興味深いもの」
として保存した
こういった分析を行うための従来の情報可視化支援シ データに含まれる語を元に索引語文書行列における索
ステムにおいては分析の軸は固定であることが多かった。 引語の出現頻度の重み付けや索引語間の類似度を大き
Ahlbergら(15)はDynamic Queryを提唱し、動的な問い合 くするという手法をとる。これによりContextMap上での検
わせに対してリアルタイムで情報を提示するインタフェー 索精度が向上し、その状況やユーザの思考過程により即
スを提供して従来よりも情報の閲覧性を高めているが、 した検索が可能になることが期待できる。
固定された軸に関しての動的な問い合わせであり、軸そ これら2つのコンポーネントによって、実際のリアルな
のものをユーザ側が指定して情報を提示するという研究 データと設計における概念空間との往復が容易になり、
はこれまでほとんどなされていない。本研究では動的に、 獲得したデータを活用して読み取った情報から知識創出
ユーザの言葉で軸を設定できるようにしたいと考えてい へのサイクルが促進されると期待される。両コンポーネン
る。 トは連携しており、ContextMap上のプロトコルデータをク
5.3. 概念ベース リックすればChronoSpace上でどの被験者がいつどのイ
ここで構築する概念ベースは検索を行う際に利用する ベントでこのような印象を抱いたのかということを即座に
ものである。たとえば「 ステージ」 という語で単純に検索す 見ることができる。また、両コンポーネントとも複数のウィ
ると「ステージ」という単語を含むプロトコルが検索される ンドウを表示でき、被験者間の動線の比較なども用意に
だけだが、概念ベースを導入することによって「 ステージ」 行える。
と概念的に近い単語、たとえばイベントにおいては「プレ
ゼンテーション」「スクリーン」「映像」などが挙げられるが、 6. おわりに
それらを重みつきの検索語として用いることが可能にな 本研究の特色は知識創造理論の現場への応用のた
る。言葉の類似性は分野ごとに異なり、一般的な類義語 めの方法論構築という点である。これまで理論に止まっ
辞書などでは対応できないため、概念(ここではプロトコ ていて様々な企業で実際に導入するのが困難であった
ルに含まれる名詞・動詞・形容詞) 間の関係をプロトコル 知識創造理論を実際の企業の現場に導入するための方
データから抽出することによって、概念間の類似度を計 法論を構築するために「現場レベルでの、ミクロな認知過
算して構築する。本稿では詳細な概念ベース構築のアル 程の遷移にまで踏み込んでの調査」 を行ったという点が
ゴリズムは割愛するが、概要は以下の通りである。 新しい。我々のアプローチは創造活動支援の知見、認知
1. 全プロトコルデータを奈良先端大学院大学で開発さ 科学的手法などを適用し、知識創造理論=「知識モード変
れた形態素解析システム「 茶筅」(16)により形態素解 遷に関する理論」を、現場で使える「知識を変遷させるた
析を行い、名詞・動詞・形容詞を抽出する。 めの方法論」にまとめ上げるものである。その実例として
2. 抽出された語を索引語として索引語ベクトル を作る。 イベント設計支援を行うこととした。
3. 各プロトコルデータにおける各索引語出現頻度でプ 従来イベントの評価はアンケートの統計的な分析に終始
ロトコルベクトル を作る。これを並べて索引語文書行 しており、イベントは「その場限り」で終わってしまうもので
列を作る。 あるため知見がたまりにくい分野であることも手伝って、
4. 索引語文書行列の行ベクトル 間の類似度を計算す 統計的分析による点数付けが次の設計への知見となる
る。ベクトル 間の類似度の計算については様々なも ような手法ではなかった。即ち、「 イベント設計論」というも
のが提案されているが、ここでは最も単純な内積を のはプランナー自身の暗黙的な知識以外には現状存在
用いた。 せず、イベント設計における知識管理に切り込んだ今回
笠原ら(17)の観点に基づく概念間の類似性判別に関す の試みは全く新規なものであるといえる。「実際のイベン
る研究により、検索において状況に応じた類似性判別が トオブジェクト」-「
効果」-「来場者の行動への影響」のリン
可能となる。本研究ではこの手法を応用し、利用する文 ク=「文脈つきの知識」はプランナー自身の創造活動支援
のみならず 、クライアントに対する「 説得支援」という目的 ら物語作成まで", 新曜社, 1998.),

にも応用できるものであり、実際の業務上最も求められ (10) Fernardo Berzal, Ignacio Blanco, Juan-Carlos Cubero, Nicolas


Marin: "Component-based Data Mining Frameworks",
るものである。
Communications of the ACM, Vol.45, No.12, pp.97-100, December
本研究で構築中のKnowledge Nebula Crystallizer for 2002.
Exhibition Planningは、従来の創造活動支援および (11) 野中 郁次郎, 竹内 弘高, 梅本 勝博: "知識創造企業", 東
Human-Computer Interaction Knowledge Managementに 洋経済新報社, 1996
おける知見を生かし、知識創出過程において人間とシス (12) Ben Shneiderman: "Codex, memex, genex: The pursuit of
テムとがとるインタラクションをデザインしようとしている transformational technologies", International Journal of
Human-Computer Interaction Vol.10, No.2, pp.87-106, 1998.
一例であるといえる。まだ開発段階であり、機能および実
(13) Frank M. Shipman III, Raymond J. McCall: "Incremental
装や表現操作系に関しても検討中であるが、今後実際の
formalization with the hyper-object substrate", ACM Transactions
プランナー側の意見や業務の流れといったものを考慮し on Information Systems, Volume 17, Issue 2 (April 1999), Pages:
ながら開発を進めていきたい。将来的にはシステムのプ 199 - 227
ロトタイプを完成させた時点で実際にプランナーに使って (14) 山本恭裕: "情報送出の初期段階における思考活動のため
もらい改良を進めていき、それとともにプランナーの知識 の理論的枠組みとインタラクティブシステム", 博士論文, 奈良先端
科学技術大学院大学情報科学研究科, March, 2001
管理の方法がどのように 変化するかを観察していく 予定
(15) Ahlberg, C., Williamson, C., and Shneiderman, B.: "Dynamic
である。 queries for information exploration: An implementation and
evaluation", Proc. ACM CHI'92: Human Factors in Computing
7. 謝辞 Systems, pp.619-626, 1992.
The authors gratefully acknowledge the generous (16) 松本 裕治, 北内 啓, 山下 達雄, 平野 善隆, 松田 寛, 高
assistance of Mr. Kanazaki for experiments and 岡 一馬, 浅原 正幸: "日本語形態素解析システム『 茶筌』
discussions. With thanks to Ms. Ueoka in RCAST and Mr. version 2.2.1 使用説明書",
Clarkson at MIT Media Lab for wearable computers. http://chasen.aist-nara.ac.jp/chasen/bib.html.ja, 2000.
(17) 笠原 要, 松澤 和光, 石川 勉, 河岡 司: "観点に基づく概念
参考文献 間の類似性判別", 情報処理学会論文誌, Vol.35, No.3, pp.505-509,
1994
(1) Gerhard Fischer, Jonathan Ostwald: "Knowledge Management:
Problems, Promises, Realities, and Challenges", IEEE Intelligent
Systems, Vol.16, No.1, pp. 60-72, January/February 2001 問い合わせ先
網谷 重紀
(2) Ericsson Anders K., Simon Herbert A.: "Protocol Analysis:
〒153-8904 東京都目黒区駒場 4-6-1 東京大学先端科学技術研
Verbal Reports as Data", Cambridge, MA: MIT Press, 1993
究センター4 号館 513 知能工学研究室
(3) Hackbarth G., Grover V.: "The knowledge repository:
Organizational memory information systems", Information System TEL: 03-5452-5289
Management, Vol.16, No.3, pp.21-30, 1999. FAX: 03-5452-5312
(4) Schoen, D A: "The Reflective Practitioner: How Professionals Email: amitani@ai.rcast.u-tokyo.ac.jp
Think in Action", Basic Books, NY, 1983
(5) Hori, K.: "A Model to Explain and Predict the Effect of 著者略歴
Human-Computer Interaction in the Articulation Process for 網谷 重紀
Concept Formation", Information Modeling and Knowledge Bases, 1975年生.1998年東京大学工学部産業機械工学科卒業.同年東京
Vol.7, pp.36--43, IOS press, 1996 大学大学院工学系研究科情報工学専攻入学.現在同研究科先端
学際工学専攻博士課程在籍.ACM, 認知科学会, 情報処理学会,
(6) Hori, K.: "A System for Aiding Creative Concept Formation",
人工知能学会学生会員.
IEEE Trans. Systems, Man, and Cybernetics, Vol.24, No.6,
pp.882-894, 1994
森 幹彦
(7) Donald A. Norman: "Things That Make Us Smart: Defending 1973 年生.1996 年千葉大学工学部電気電子工学科卒業.2001 年
Human Attributes in the Age of the Machine", Addison Wesley
東京工業大学大学院総合理工学研究科知能システム科学専攻博
Publishing Company, 1994 (佐伯 胖 (訳): "人間を賢くする道具",
新曜社認知科学選書", 1996) 士課程修了.博士(工学).2001 年日本学術振興会未来開拓学術

(8) Paco Underhill: "Why we buy: The Science of Shopping", 研究推進事業研究プロジェクトリサーチアソシエイト,東京大学先


Touchstone, 2000. (鈴木 主税 訳: "なぜこの店で買ってしまうのか 端科学技術研究センター協力研究員.人工知能学会,電子情報通
―ショッピングの科学", 早川書房, 2001.)
信学会会員1 .
(9) Robert M. Emerson, Rachel I. Fretz, Linda L. Shaw: "Writing
Ethnographic Fieldnotes (Chicago Guides to Writing, Editing, and
Publishing)", University of Chicago Press, 1995. (佐藤 郁哉, 山田
富秋, 好井 裕明 訳: "方法としてのフィールドノート ―現地取材か 1 2003 年 4 月より京都大学助手(学術情報メディアセンター)
柴田 博人
1968年生.1992年金沢大学理学部数学科卒業.1994年大阪大学
大学院理学研究科数学専攻修士課程修了.同年富士ゼロックス株
式会社入社.2003年年東京大学大学院工学系研究科先端学際工
学専攻博士課程修了.工学博士.ACM,人工知能学会,認知科学
会学生会員.

庄司 裕子
1989年東京大学工学部機械工学科卒業.1991年同大学院工学系
研究科産業機械工学専攻修士課程修了.2002年同大学院工学系
研究科先端学際工学専攻博士課程修了.博士(工学) .1996年より
川村学園女子大学教育学部情報教育学科(2002年より情報コミュ
ニケーション学科に名称変更)専任講師.現在,同助教授.主な研
究の興味は,創造性支援,チャンス発見,ヒューマンコンピュータイ
ンタラクション,知識マネージメントなど.2000年度人工知能学会研
究奨励賞受賞.

堀 浩一
1956年生.1979年東京大学工学部電子工学科卒業.1984年同大学
院博士課程修了.工学博士.1984年国立大学共同利用機関国文学
研究資料館助手,1986年同助教授.1988年東京大学助教授(先端科
学技術研究センター ),1992年同(工学系研究科),1997年東京大学教
授,現在に至る.この間,1989年9月−1990年1月仏国コンピエーニュ
大学客員助教授.現在,先端学際工学専攻所属.人工知能を中心とし
た情報処理システムの基礎から応用にわたる広範囲の研究・教育
に従事.最近の個人的 な興味の中心は創造活動支援 システム .
IEEE,ACM,情報処理学会,人工知能学会,日本認知科学会等会員.

付録
以下に Motor Show 調査で用いた被験者へのインストラクション
を掲載する。

本日は調査にご協力いただきまして誠にありがとうございます。今
回の調査の説明をさせていただきます。
1. 調査の概要
この調査ではみなさまに記録装置を装着していただいて、ブースに
入って見学していただきたいと思います。
ブースの見学時間は10分以上とし、全体の見学時間は最大1時間
とさせていただきます。その間で「ここまで」と思うところで終了して
ください。
2. インタビューおよびアンケートについて
見ていただいたあと、以下の手順で進めさせていただきます。
1. 見ていただいた直後に短いインタビュー
2. インタビュー室に移動してインタビュー
3. ブースに関する質問
4. アンケート

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