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2010 年 5 月 11 日

Economics - Data Notes


中国 
Global Research

4月の中国経済指標
依然として過熱

4 月の CPI 上昇率と銀行の新規融資額は予想を上回った。一方、工業生産と都市
部固定資産投資の伸び率は鈍化したが、小幅にとどまった。以上を踏まえると、
引き締め策は当分の間続くとみられる。

<CPI 上昇率> インフレ率が加速している。4 月の CPI 上昇率は前年比+2.8%と


前月の同+2.4%から加速、市場予想ならびに HSBC 予想を上回った。季調後前月
比(HSBC 推計)でも+0.3%と 3 月のほぼ横ばいから加速した。ベース効果に加
え、食品価格の上昇率加速(3 月の前年比+5.2%から同+5.9%)と住宅関連価格
の上昇ペース加速(前年比+3.3%から同+4.5%)が全体の CPI 上昇率を押し上
げた。一方、HSBC が予想した通り、川上製品価格の上昇率も加速した。4 月の
PPI 上昇率は前年比+6.8%と前月の同+5.9%から加速、19 カ月ぶりの高水準を記
録した。ベース効果や国際コモディティ価格の高止まりがその背景。内訳を見る
と、生産財価格の上昇率が前年比+8.5%と前月の同+7.4%から加速する一方、
消費財価格の上昇率は 3 月の前年比+1.2%から同+1.4%にとどまっており、比
較的落ち着いている。堅調な輸出回復と依然として過度な工業生産の伸びを踏ま
えると、PPI から CPI への価格転嫁リスクは高まっている。

<工業生産、固定資産投資> 4 月の工業生産と固定資産投資の伸び率は小幅鈍化
したが、景気過熱リスクはそれほど後退していない。4 月の工業生産は前年比+
17.8%と前月の+18.1%からやや鈍化し、予想を下回った。季調後前月比(HSBC
推計)でも、3 月の+1.5%から+1.3%に鈍化した。しかし、前年比伸び率は 18%
Qu Hongbin* 近くに達しており、実績平均の約 13%を大幅に上回っている。実績に照らせば、
Economist
この水準の工業生産の伸び率では、GDP 成長率は前年比+11%強となるため、
The Hongkong and Shanghai Banking
Corporation Limited (HK) 過熱感は依然強い。4 月の軽工業生産の伸び率は前年比+14.1%と前月の同+
+852 2822 2025
13.4%から加速しており、堅調な輸出回復で工業生産が明らかに押し上げられて
hongbinqu@hsbc.com.hk
いる。しかし、投資主導の景気刺激策を背景に、これまで工業生産の伸びをけん
引してきた重工業の生産は 3 月の前年比+20%から同+19.4%に鈍化した。中国
政府の刺激策縮小が効果を発揮し、国内経済の過熱を和らげていることがこれを
見ても分かる。項目別では、4 月の自動車生産が前年比+34.6%(3 月は同+
51.5%)に鈍化する一方、電力生産が前年比+21.4%(3 月は同+17.6%)、鉄鋼生
*HSBC Securities (USA) Inc の非米国関 産が前年比+31.5%(3 月は同+28.1%)、セメント生産が前年比+16.1%(3 月は
連会社の従業員であり、NYSE/NASD の 同+12.1%)にそれぞれ加速した。
RR ではありません。

発行:The Hongkong and Shanghai 1-4 月の都市部固定資産投資の伸び率は前年同期比+26.1%と今年 1Q の同+


Banking Corporation Limited 26.4%から小幅鈍化した。これを見ると、4 月の固定資産投資の伸び率は名目ベ
ースで前年比+25.6%と前月の同+26.2%から鈍化、実質ベースでは前年比+
ディスクレーマー/ディスクロージャー
本レポートの末尾に記載されています。
併せてお読みください。
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20.3%から同+18.7%に鈍化したとみられる。背景には、地方レベルの投資プロジェクトのペー
スダウン(1-4 月は前年比+27.6%と 1Q の同+28.2%から鈍化)がある。1-4 月の国営企業に
よる投資は前年比+20.8%と 1Q の同+21.1%から鈍化、4 月の新規プロジェクト投資の伸び率
も前月の前年比+30.5%から同+26.2%に一段と鈍化しており、ここでも中国政府の刺激策縮小
が反映されている。とはいえ、1-4 月の鉄道投資は 1Q の前年同期比+16.4%から同+17.5%に
加速した。また、最近の不動産関連の引き締め措置にもかかわらず、4 月の不動産投資の伸び
率は 1Q の前年比+35.1%から同+38.5%に加速した。

<小売売上高> 4 月の小売売上高は前年比+18.5%と予想を上回り、個人消費の底堅さを示し
た。インフレ率が加速しているにもかかわらず、実質ベースでも 3 月の+15.6%から+15.7%に
やや加速した。所得の着実な伸びと雇用情勢の改善、農村部における家電購入補助制度の継続
がけん引した。中国国家統計局が行っている 3 月の消費者信頼感指数は 107.9 と前月の 104.2 か
ら上昇、08 年 9 月以来の高水準を記録した。4 月の小売売上高を製品別で見ると、ガソリンが
前年比+43.1%(3 月は同+39.2%)と急増、自動車が前年比+36.9%(3 月は同+36.2%)に加
速する一方、家具が前年比+35.1%(3 月は同+40%)に鈍化した。

<新規融資額、マネーサプライ> 4 月の新規融資額は 7,740 億元と予想を上回っており、依然


として行き過ぎである。一方、マネーサプライ伸び率は正常化に向かっている。中国の銀行に
よる 4 月の新規融資額は 7,740 億元と前月の 5,100 億元から増え、市場予想ならびに HSBC 予想
(6,000 億元)を上回り、09 年 4 月実績の 5,912 億元も上回った。4 月の融資残高の伸び率は前
年比+22%と前月の同+21.7%からやや加速した。内訳を見ると、旺盛な住宅ローン需要を背
景とした家計向け中長期融資が急増し、家計向け融資が 3,255 億元と 3 月の 2,700 億元から大幅
増加した。また、企業向け融資も 3 月の 2,310 億元から 4,480 億元に急増。4 月の割引手形が 470
億元増加する一方、企業向け中長期融資額は 3,260 億元と 1Q の月平均 5,930 億元から鈍化した。
他方、4 月の広義のマネーサプライ伸び率は前年比+21.5%と前月の同+22.5%から引き続き鈍
化した。今年の 3 度にわたる預金準備率引き上げや公開市場操作の強化などの量的引き締めが
続いていることが背景にある。一方、4 月の M1 伸び率は前年比+31.3%と前月の同+30%から
小幅に加速した。M1 は財・サービスの購入ですぐに換金できる現金通貨と要求払い預金であ
ることから、M1 伸び率の加速は依然として旺盛な需要と今後のインフレリスクを示している。

事実、中国人民銀行は 1Q の金融政策執行報告でインフレ期待の管理が課題と指摘している。
同報告はインフレ期待が高まっている要因として、① 景気テコ入れ策として世界的に行われて
いる極めて緩和的な金融政策を背景とした国際コモディティ価格の高騰、② 景気刺激策に伴う
中国国内の行き過ぎた銀行貸し出しの伸び、③ 一部の 1 次産品やサービス、不動産価格の大幅
な値上がり、④ 天候不順や自然災害を背景とした農産物の価格上昇期待の高まり、を挙げてい
る。人民銀は、依然として物価の安定が保たれているとしながらも、労働や環境保護に関わる
コスト上昇で物価が影響を受ける可能性が高い、と警戒を強めている。HSBC では、ヘッドラ
イン CPI 上昇率が 5 月に当局が目標とする 3%を上回り、向こう数カ月は加速が続くと予想し
ている。

インフレ圧力の高まりや依然として過度な銀行貸し出しの伸びから判断する限り、工業生産と
都市部固定資産投資の伸び率が小幅鈍化したとはいえ、中国経済の過熱リスクが大きく後退し
ているとは考えにくい。HSBC では、当分の間引き締め措置が継続されるとみている。中国人

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民銀行は向こう数四半期も預金準備率の引き上げ(さらに 100~150bp の引き上げ)や中銀手形


の増発による量的引き締めを中心に金融引き締めを行うとみられる。また、向こう数カ月以内
に新規中長期融資の抑制に向けた一段の措置が行われる見通しである。前述の量的引き締め措
置は効果的であり、主要な金融引き締め手段となるが、HSBC では、人民銀がインフレ期待の
抑制に向けて 2Q に利上げ(27bp)を実施する必要があると考えている。新規インフラプロジ
ェクトへの支出削減もあり、前述の金融引き締め措置で 2010 年下半期にかけて建設投資は落ち
着き始めよう。これにより、原材料価格の上昇に歯止めが掛かるとみられる。不動産関連の引
き締め措置もあり、2010 年下半期に GDP 成長率は 10%を下回り、CPI 上昇率は+3~4%に落
ち着く見通しである。

図 1 インフレ率は加速

図 2 貸し出しは高水準

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図 3 都市部固定資産投資の伸びはやや鈍化

図 4 4 月の工業生産の伸び率は鈍化も依然として高水準

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重要開示事項
本レポートはマクロ経済に関する情報提供を目的として作成されたものです。当レポートで使
用しているグラフ、表等は参考データであり、将来の結果を保証するものではありません。

本レポートの原文(英語版)はHSBC グローバルリサーチに属するグローバルエマージングマー
ケット・マクロ・アンド・ストラテジー・チームによって2010年5月11日に発行されました。

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要事項を記述いたします。

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銀行業務とリサーチの間に適切なチャイニーズ・ウォールを設置し、全ての機密および価格敏感
情報が適切に取り扱われることを確実にしています。

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(当資料記載内容についてご留意いただきたい事項)

1. 当レポートは、HSBC 投信株式会社(以下、当社)が情報提供を目 HSBC 投信株式会社


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図したものではなく、当社が運用を行う投資信託への組入れを示 Fax:03-3548-5679
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