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特 集





冬・流氷
[写真]松浦 武志
(勤医協中央病院 内科医長)

新年明けましておめでとうございます。そして、旧年中は大変お世話になりました。心から御礼申し上げます。
「民のちから」を示した2009年から2010年へ。よりよい医療と福祉、住みよい街づくりがもう一歩でも二歩
でも進むことを願ってやみません。勤医協中央病院は、地域の中で何が出来るのか、しっかり考え、多くの皆さん
と力を合わせ、教えをいただきながら、ふさわしい役割を担っていきたいと念願しています。2013年竣工をめざ
して基本設計に着手した新しい勤医協中央病院が、少しずつ芽吹いてくる…そんな2010年となれば幸いです。
一方では、無保険者や失業者の増大をはじめ、老若男女を問わず、社会不安が強まっています。無料・低額診療
を実施する医療機関として、今後とも微力ながらセーフティネットの一翼を担うという役割を果たしていく所存で
す。また受診抑制も大きな問題となっています。国民皆保険を守り、患者自己負担増に反対する運動にも医師会の
勤医協中央病院 院長 諸先生方とも力を合わせて取り組んで参りたいと思います。
田村 裕昭 今後ともより一層のご指導・ご鞭撻のほど、よろしくお願い申し上げます。
救急診療部
勤医協中央病院 副院長/救急診療部長 畠山 広巳

1 はじめに

こんにちは、今回は救急研修中の研修医Pが中央病院救急
診療部をご紹介します。救急診療部は北米型のER(テレビ
ドラマを見た方も多いと思いますが)を目標に2003年に開
設されました。それまでは日替わりの当番制だった救急車の
対応ですが、受入数が増えるに従って専任医が必要との要望
が強く、元心臓外科医の現部長が任命されました。歩いて来
院し何科を受診したらよいか分からない方から、救急車で蘇
生処置を受けながら搬送される方まで、何でも受けようとい
う意気込みだったようです。部長がドラマを見て感化された
のは言うまでもありません。
24時間救急医療を守っています

2 歴 史
います。
(ア)内科救急
簡単に救急診療部の歴史をご紹介します。2003年5月に ① 消化器:札幌市第二次救急医療体制当番に参加して
専任固定医師1名で開設されましたが、当初から初期研修を います。消化管出血に対する緊急内視鏡検査およ
行うことを目的の一つに掲げ、1−2名の初期研修医を受け入 び止血、急性膵炎に対する動注療法、総胆管結
れ救急研修を行っています。開設当時は救急初療室1(2床)、 石・胆管炎に対する内視鏡治療(ERCP、ERBD、
診察室1、点滴などを行う処置ベッド9床でしたが、2006 EST)、急性肝炎治療など。
年6月に翌日までの経過観察を主な目的とした3床の病床を ② 循環器:札幌市第二次救急医療体制当番に参加して
併設し、2009年10月には本格的に改装を行い6床の救急 います。急性心筋梗塞・ACS(急性冠症候群)に
病棟を併設しました。2007年からは指導医も2名体制とな 対するPCI(カテーテルインターベンション)、徐
り、救急車の受け入れ台数は開設前の約1400台から今年度 脈性不整脈に対するペースメーカー治療、心不全
予想は2000台を超えるまでになりました。また、ベッド運 治療、急性動脈閉塞・ASOに対する血管内治療、
用が一元化されておらず臨時入院の受け入れがスムーズでな 急性肺動脈塞栓など。
かったために、BCC(Bed Control Center)によるベッド ③ 呼吸器:札幌市第二次救急医療体制当番に参加して
コントロールの集中を行い、6床の救急病棟も活用し臨時の います。肺炎治療、急性呼吸不全に対する非侵襲
入院依頼に可能な限りお応えできるようにしています。 的陽圧呼吸(NPPV)および人工呼吸治療、喘息
治療、喀血治療。

3 対応可能な疾患
④ 腎臓内科:急性腎不全・慢性腎不全憎悪に対する血
液浄化(人工透析)。
一般的な発熱や胸 ⑤ 糖尿病、内分泌:糖尿病性昏睡、甲状腺クリーゼ。
苦、腹痛、めまいなど (イ)外科疾患:消化管穿孔、急性虫垂炎など急性腹症に
の症状で来院される方 対する緊急手術
はもちろんですが、地 (腹腔鏡手術を
域の先生のご希望にも 含む)
、自然気胸
お応えできるよう、以 の治療(胸腔鏡
下のような治療も専門 手 術 )、 閉 塞 性
医との連携で対応して 救急外来 黄疸に対する
救急処置室 救急病棟

PTCDなど。 の救急病棟入院
(ウ)整形外科:骨折(大腿骨頚部骨折を含む)、腰痛、手 患者さんの受け
指の再接着。 入れ病棟を決定
(エ)耳鼻科:鼻出血 し、本日の空床
状況を確認。今

4 救急外来の1日
日も空床が少な
いな…。今度は
ここで、救急外来の一日を簡単にご紹介します。(過去の 近くで開業をさ
経験をもとにしたフィクションです。) れている先生か
午前8時に当直医と日勤者とのカンファレンス。外来で経 ら肺炎の方の入院依頼。来院されてから喀痰、血液の培養を
過観察中の患者さんと昨夜救急病棟に入院した患者さんを引 提出。グラム染色で肺炎球菌肺炎と診断し抗菌薬を開始して
き継ぎます。当直医の皆さんお疲れ様。さっそく、救急隊と 呼吸器病棟へ。ほっとしたところへ再び救急要請。70代男
のホットラインが鳴ります。30代男性、突然の右腰背部痛。 性胸痛、冷汗があり心電図で胸部誘導にST上昇。UCGで左
到着すると痛み 心室前壁に壁運動低下を認め急性心筋梗塞と診断。アスピリ
で声も出せない ン、プラビックスを内服しつつ循環器医に連絡、緊急カテと
状態。痛み止め なる。弁当をかっ込んでいるところへ、訪問看護師から電
を指示しエコー 話。糖尿病でインシュリン治療を受けている患者さんの自宅
を当てると右の を訪問したところ意識障害で倒れており搬送したいとのこ
腎杯が拡張、尿 と。意識はJCS-300、血糖はハイ、尿ケトン陽性、血ガス
検査で潜血も確 で強度のアシドーシス。糖尿病性ケトアシドーシスの診断で
認でき尿管結石 生食急速点滴、インシュリン持続注入を開始してICUへ。受
と診断。9時 付から下血している男性が来ていると連絡あり。本人は元気
15分から病床 そうだが真っ赤な出血が多量にあったそうなので、すぐ直腸
運営会議。昨夜 診をすると暗赤色の血液が直腸内に溜まっており緊急大腸内
視鏡へ。憩室出血でした。ようやく一息ついたところへ当別 定です。私たちは新病院を、がん医療と救急医療を中心に地
救急隊から自宅内で転倒して頭部と大腿部を痛がる80代女 域を支える中核病院として位置付けています。救急診療部も
性の受け入れ要請。大腿骨頚部骨折かな。これからだと到着 さらに充実させ、HCU(ハイケアユニット)も開設する予
は5時過ぎになるので申し訳ないが当直医に対応を依頼する。 定です、ご期待下さい。(研修医Pは部長の変名との噂あり)
整形の当番医にも連絡を入れる。当直の先生朝までよろしく
お願いします。
筆者プロフィール

5 新病院建設へ向けて 勤医協中央病院 副院長
畠山 広巳
(はたけやま ひろみ)
2013年に勤医協中央病院は移転、リニューアルを行う予
1957年生まれ
1983年北大医学部卒
1983年勤医協中央病院外科
1989年北大第二外科研究生
1990年国立循環器病センターレジデント
1992年勤医協中央病院にて心臓血管外科開設
2003年救急診療部部長
2009年中央病院副院長

一般外科研修後、心臓血管外科を専門としていましたが、救急診療部
開設を機に救急を担当することに。「研修医と共に学ぶ」をモットーに
現在は自分を総合医と考えています。
趣味はかなり偏った傾向をもつ「読書(SF)」と「音楽鑑賞(prog.
rock)」。
救急病棟病室

無料・低額診療事業のご紹介 医療福祉課課長 田中 裕司

勤医協中央病院では生活困 利用されました。また、相談の中で生活保護制度につ
窮を理由に医療費の支払いが ながるケースもありますので経済的な相談等を広く行
困難な方に対して医療費の減 っています。色々悩まれる前にまずはご相談ください。
額または免除を行う無料・低
額診療事業を行っています。
無料・低額診療事業の利用は
所定の申請書により、病院長
への申請が必要です。相談は
医療福祉課のソーシャルワー
カーが担当しています。
現在までの利用された方々
の状況を紹介します。路上生
活の方、保険証を持っていな
い方、国保証はあるが短期の
期限の方、保険証は持っているものの入院費が払えな
い方、外来で高額な薬を処方されているが支払いでき
ご相談がある場合は「勤医協中央病院 医療福祉課」へ
ず中断している方、糖尿病でインスリン治療必要だが お問合せ下さい。
医療費・薬剤費の支払い困難なため中断している方、借
電話 011-782-4660(直通)
金の問題を抱え病院にかかれない方など数多くの相談
Fax 011-786-5664(直通)
をお受けしています。上半期では130人以上の方がご
シリーズ検査紹介

臨床検査室 第1検査科 主任 大古場 恵利子

二次救急を受け入れている当院にとって、検体検査の迅速な結果は早期
診断・早期治療に繋がり、病態把握や治療法の選択、治療効果の判定と多
岐に渡り臨床現場の重要な一躍を担っています。この緊急検査に臨床検査
室では、検体が到着してから30分以内に結果報告が出来るよう24時間体
制で取り組んでいます。近年、入院日数の短縮化が進み、外来のみならず
入院での緊急検査も増加し、現在1日約700検体の38%を占めるまでに
なりました。緊急検査の主な内容は、生化学31項目、血液一般(血球数)

凝固系4項目、その他輸血検査、一般検査8項目です。臨床現場の動向に
検査室夜勤は1人体制
合わせ、検査適正委員会にて随時検討し、緊急検査導入を図ってきました。
また、診断上重要な生化学、血液一般検査ではそれぞれ2台の測定機器を
設置し、迅速な検査対応だけではなく測定機器故障によるトラブル回避を
行っています。
この緊急対応に臨床検査室は臨床検査技師9名が、検体測定、外来採
血、病棟検査、耳鼻科検査を担当し、検査混雑時には連携して業務支援を
行うなど検査時
間短縮に努めて
います。また、 2台の生化学分析装置で測定
検査業務以外に
も検査の専門性
を活かし、輸血
療法委員会、栄
養サポートチー
ム、院内感染委
員会で活躍して
います。 9名で幅広い業務を担当しています

【基本方針】
勤医協中央病院「医療・福祉宣言(理念)」
1)東区の地域に根ざして、患者さんの要求に応え、急性期医
2003年1月31日作成  2007年8月2日改定 療を中心に保健予防から在宅医療まで総合的に医療・福祉
を担う地域中核病院として発展していきます。
私たち勤医協中央病院は、地域の人々に支えられ、 2)患者さんとの信頼関係を大切にしながら、より良質で安全
この地域になくてはならない病院として発展してい な、そして安心できる医療を「共同の営み」として提供で
くことを目指し、ここに「勤医協中央病院 医療・ きる病院をめざします。
福祉宣言」を発表し、「勤医協綱領」に基づき、その 3)臨床研修病院として、民主的な集団医療の実践をめざし、
実現に努めます。 人間としての尊厳および権利を尊重できる医療人を育成し
ます。
1.安全・安心で納得のいく医療・福祉をすすめます。
4)子供から高齢者まで安心して住みつづけられるまちづくり、
2.地域・友の会とともに健康で住みやすいまちづく 憲法と平和が守られる国づくり、医療改善の運動をすすめ
りをめざします。 ます。
3.互いに学び成長する職場・病院づくりに努力しま 5)勤医協綱領に基づき「いつでも、どこでも、だれもが安心
す。 してかかれる」無差別平等の医療の実践をめざします。
委 員 会 紹 介

輸血療法委員会
委員長 高桑 良平(副院長)
勤医協中央病院の輸血療法委員会は、安全で適正な輸血の実
践を目的に2003年2月に設置されました。委員会のメンバー
には、病院管理部、各部門の医師・看護師、薬剤師、事務、臨
床検査技師が入っており、毎月1回定例会議を行っています。
主な活動として、アルブミン製剤を含めた輸血製剤の適正使
高桑委員長を囲んで
用を進めるため、毎月の使用状況報告や、不適切な使用があっ
た場合などの検討や指導、院内輸血療法マニュアルの整備、輸 ついてのニュース発行や学習会を開き、啓蒙活動に取り組んで
血に関する学習会の開催、輸血後のウイルス検査フォローなど います。
をおこなっています。 輸血された患者さんには、輸血後感染がないことを確認する
現在の当院では血液製剤の有効利用がすすみ、輸血製剤の廃 ために肝炎ウイルス検査などを勧める案内をしています。退院
棄率が過去2年間で1%以下に改善されてきています。これま された場合は郵送でお知らせしできる限りの確認をしています
で行ってきた委員会活 が、現在まで感染は認められておりません。
動により、適正な輸血 今後、よりいっそう安全で適正な輸血が行われる
に関する知識が以前よ よう活動をすすめていく所存でおります。
り広められたためと考
えています。また、今
年度は輸血管理料Ⅰの 編集後記
取得に向けて、アルブ
ミン製剤の適正使用に 以前冬の円山動物園に行き、屋内展示している動物
外部講師による輸血学習会の開催
を見たことがある。その中に虎もいた。数メートルの
手の届きそうな距離で、その迫力は夏の屋外とは比較
にならない。そしてあの美しい縞模様、怖いながらも
ほれぼれと見ていた。さて今年の干支は虎、転変地異
表紙の写真 今回の写真は、私が北海道移住を決意した原点、オ
ホーツク海の流氷です。学生時代、名古屋から鈍行を
が起こると言われる。昨年も十分それに近いことはあ
ったが、あまり期待したくないものである。
乗り継ぎ、夜行列車に揺られ、48時間かけて網走に さて、新病院建設が本格化している。多くの職員が
到着し、オホーツク海を埋め尽くす流氷を目の当たり 関わり青写真を作っているが、美しい効率的な働きや
にした時の感動は今でも忘れられません。学生時代の すい病院をと、望みは尽きない。ただこの医療情勢の
ように、毎年見に行くことができなくなって久しいで 厳しい中、この建設に関わることは責任もあり怖くも
すが、ニュースなどで流氷の便りを聞くと、どこか心 ある。動物園の虎は傍観できたが、そうはいかない。
が弾みます。 現使命は美しくほれぼれする病院を、地域の方ととも
写真は流氷砕氷船から天都山に沈む夕日を撮ったも に作ることと認識している。(k)
のです。青空との対比も美しいですが、夕暮れ時の茜
色の空と、それを映す海に浮かびあがる流氷のシルエ
ットも実に感動的でした。
私は、北海道に来てスキーを始めたのですが、自然
豊かな広大な北海道では、ゲレンデスキーよりも、歩
くスキーや、山スキーがお勧めです。下の写真は、摩
周湖第三展望台で撮ったものです。今でこそ除雪され
て車で行けるようになりましたが、この当時はスキー
で歩いていくしかありま
冬・流氷
せんでした。車の音も何
も聞こえない、キーンと張った空気の中の摩周湖は、まさ
に、神秘の湖です。素晴らしいです。
1年間表紙の写真を担当させて頂きましたが、最後まで
読んでいただいた皆さんに大変感謝いたします。
総合診療部 内科医長 松浦武志

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