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社会・経済ニーズ調査レビュー委員会 (2/8-4/30)(辻野、石井、石井、浜田、立野)

浜田真悟(客員研究官)
全般的印象
1. 調査の目的・ねらい
    *主旨を見直す必要があるか。
現在の趣旨で大丈夫だとは思うが、DELPHI との比較で、事前評価に力点を入れるのか、それ
とも実証評価に力点を入れるのかで、コンセプトの作り方が違ってくると思う。以前、全体
会議で DELPHI 調査に関してニーズ調査・シナリオ分析の「補完関係」という概念が議論に
なったが、この議論に直接関連してくる。もう一度、当時の議論を思い出して主旨を煮詰め
なおすことも可能である。

    *いつ調査を行うべきか、いつ結果を出すべきか。
2年間で一つのクルールーチンを組めるようなタイムスパンがよいのではないか。内容的
には「善は急げ」で、2006年度からおこなうべきである。その際、事前評価と事後評価の
二つにたいしてそれぞれクルーを置くべきだと考える。今回のパネル方式の結果は研究成
果レベルのものなので、これを公表してもインパクトは大きくない。もっと精査した結果の
公表は 2 年先でもかまわないが、1年後にはおおよその結果が知れ渡るべきであろう。

    *誰が調査を行うべきか。(政策研、動向センターなど)
動向センターが事業主体となるべきである。調査の実施者は、コンサルティング会社や調査
会社に外注してもよいだろう。

    *予測調査全体の中でどのような位置づけにするか。
前出の「補完関係」の位置づけとして、DELPHI調査のさきがけにあたる部分(事前評
価としての社会ニーズ・シナリオ調 査)と実証評価(事後評価としての研究調 査)にあた
る部分の二段階構えで行うのが良いと思う。

    *他
公表形式を工夫してみてはどうか、あまたの調査報告は数少ない関係者(研究者・行政関
係者)にしか読まれていない。近頃、学校・研究機関関係で流行している「サイエンス・カ
フェ」のような形態で、今回の調 査研究の紹介をしたり、そのインパクトを間接的に得るこ
ともできる。

各部門のレビュー
2. 調査の方法
 2.1.調査の実施体制
    *手法を変える必要があるか。
今回の方式は、方法論を見つけ出すための実験室段階では比較的うまく行っている。このパ
ネル形式では、参加者の母体(専門家、一般市民、実業界)や適正人数を決めることによっ
て、意見の数量化ができたのであるが、この手法は「国民全般を対象とする」ような大規模な
調査には向かないのではないか。

    *他

2.2.調査の概要と作業フロー
   *対象範囲を変更すべきか。
現在の調査範囲設定でよいと思う。

   *他

2.3.分科会の開催と議事
報告書で述べられている分科会では、方法論や政策提言などに詳しい意見が多く出されて
いることをもれ聞いている。今回のようなテーマ設定では、なんでも知っている人とか、オ
ールラウンドプレーヤーのような知識と経験が必要なのに加えて、方法論的な巧拙や政策
提言の実態に詳しい、というようなことも要求される。しかし、これを個人単位で求めるこ
とは容易でないので、つぎのような分科会を設定するとよい。

-参加型プロセスによる社会 経済ニーズ把握の方法論的問題点
-将来像のサーベイと提示の方法論
-社会アクター(有識者・市民・産業界など)の摘出の方法論
-調査結果から導かれる政策提言の方法論

3. 調査結果
 3.1.社会・経済ニーズの抽出
参考資料 1.2「第七回技術予測調査のニーズ項目と各種報告書および白書との比較検討」は、
重厚でひとつひとつ丁寧に読んでいけば、それなりに重要性が理解されるが、この資料を使
えるようにするもう一工夫が必要であろう。そして、おそらくこの資料と密接に関連してい
るであろう「将来社会像(事務局参考案)p.30」が、裏方での政策立案作業の複線になって
いることを文章中のどこかでサジェスチョンすべきであろう。

 3.2.パネルによるニーズ項目抽出と優先度設定
統計データ-の重み付け(p.49,56)は、このパネル規模の範囲内でのみ有効であるが、これ
が人それぞれのものの考え方や社会アクターの同定とどう関係があるのか、今ひとつ明確
でなかったように思う。また、原理的に、この重み付けは統計数の大きい集団には適用しに
くいと考えられる。

3.3.ニーズ項目の整理と分析

3.2で展開されたニーズ分析をこれだけ集約するのは大変であろうと想像されるが、こ
れだけのテーマ数をもって「集約された」と理解できるのかどうか疑問である。また、この集
約データをこのさきどうやって使えようにするのか、めどが立っているのかどうか不透明
である印象を受けた。

4. まとめと今後の課題
 4.1.今回の調査全般についてのまとめ

「市民の視点に立った」->「社会・経済ニーズ把握」->「科学技術・文理融合・社会技術」
の箇所について:原理的には賛成するが、報告書の前章までの流れと関係なくこれが導入
されている。おそらく、調査と関係なくあるいは平行して形成された概念だと考えられるが、
これが有効であることを実証すべきである。たとえば、EU では、これと類似の政策概念の形
成を「融合研究」という名目で行っているが、その場合、融合研究がどれくらいこのスキーム
に貢献するか、全体の RTD 支出費のどのくらいをこの概念がカバーすべきかを論じている。

4.2.ニーズ項目の抽出について

おおむね賛成

 4.3.国民のニーズを定期的に把握する方法の検討

おおむね賛成

4.4 継続 的な調 査に向けて臨まれること

おおむね賛成

5.参考資料1について
6.参考資料2について

7.  全般的ご意見

参考資料1.2の使いか方を工夫する。
3.1(p.12-27)の方法論的記述はわかりやすいが、参考資料に入れてもよいのではない
か。
逆に、参考資料の中に納まっている参考資料2(p.144-156)は、議論の中核をなすもので
あり、本文中においても十分使ってよいのではないか。

(参考意見:EU の科学技術政策から、融合研究の概念形成について)
EURA (欧州研究開発評議会)は FP-ERA  の中で NEST-SSH,TSER といわれる融合研究
(科学技術と社会)の推進策を提示している
・提言1:FP-ERA の中で、NEST を新技術融合研究、SSH を RTD にかかわる人文社会科学
研究と同定する(予算 250M-500M ユーロ)。SSH はすべての RTD 分野に対してインフラ
と付加価値(S&T の民主政治・伝統文化)を提供する。
・提言3:TSER(社会経済 インパクト研究によりターゲットを定められた研究開発)を
より有効に同定・実施するためフォーサイト活動・アセスメント活動の拡大に SSH を注力
する。
・提言5:RTD の政策方向性を TSER に合わせるため、SINAPS(科学技術情報の政策提言
ネットワーク)に役割を担わせる。SSH がそれに注力する。
・提言8:SSH を RTD に融合させるには、「問題解決型アプローチ」をとることとする。

8. 第 9 回社会・経済ニーズ調査-自分ならこうやるー(狙い、方法、対象、まとめ
方) 

    *主旨
DELPHI 調査に関連するニーズ調査・シナリオ分析の「補完関係」という概念をはっきりさ
せる。DELPHI を先導し、世の中の動向を大雑把に知り、さらに、社会経済ニーズという項目
に落とし込む事前評価の部分が70%、政策と DELPH 調査・社会経済ニーズ調査、基本計
画がどのようにずれていたかを検証する事後評価の部分が30%くらいのウェイトを持つ
のがよいのでは。

    *方法
パネル方式で、まず、東北・東京・関西・九州の四箇所くらいで同じ手法で同じ時期に実施
する。その後、データの荒さ・細かさを見ながら、必要であれば、北海道・東北・関東・東
海・近畿・中国・四国・九州などのブロックで行うか、あるいは、東京一極集中で行う。
一つのクルールーチンで二年間の作業を組めるようなタイムスパンがよい。(クルールー
チンは事前評価と事後評価の二つ)

    *主体、対象
動向センターが事業主体となるべきである。地方・地域で行う場合、国立大学・研究機関と
の連携も考えられる。この場合、DELPHI 調査に関する理解を推進していく必要があるだろ
う。調査の実施者は、コンサルティング会社や調査会社に外注してもよいだろう。

    *予測調査全体の中でどのような位置づけにするか。
「補完関係」のひとつとして、DELPHI などの国民全体への俯瞰調査を経済社会ブロックで見
たもの、という位置づけがをもっとおしすすめる。たとえば、地方ブロックでこの調査を行
った場合、イノベーション政策でよく議論される「産業クラスター」などはもっとよく見え
るのではないか。また、人材政策(流動性・キャリアパスなど)も、東京で俯瞰してみてい
る以上に、地方地域の様子をよく見えるのではないだろうか。

この場合でも、DELPHI 調査のさきがけにあたる部分(事前評価としての社会ニーズ・シナ
リオ調査)と実証評価(事後評価としての研究調査)にあたる部分の二段階構えで行うと
良いと思う。

また技術的な開発課題として、報告書で述べられている分科会に加えて、つぎのような分科
会を設定するとよい。
-参加型プロセスによる社会経済ニーズ把握の方法論的問題点
-将来像のサーベイと提示の方法論
-社会アクター(有識者・市民・産業界など)の摘出の方法論
-調査結果の政策提言の方法論

    *まとめ方
精 査した結果の公表は 2 年先でもかまわないが、1年後にはおおよその結果が知れ渡るべ
きであろう。
また、公表形式を工夫してみてはどうか。あまたの調査報告は数少ない関係者(研究者・行
政関係者)にしか読まれていない。近頃、学校・研究機関関係で流行している「サイエン
ス・カフェ」のような形態で、今回の調査研究の紹介をしたり、そのインパクトを間接的に
得ることもできる。
事実 EU の「社会と科学」では、こうした経済社会ニーズの対話・参加形式を「サイエンス・
カフェ」や「ユーロサイエンスオープンフォーラム ESOF」のような公開事業でどんどん進め
ている。EU のイノベーション政策でよく議論される FP-ERA の位置づけもこうした地域政
策に則ったものである。
政策提言の「サイエンスカフェ」を、社会経済ニーズ調査の地方巡業版と考えれば、こうした
公的事業もやりやすく、かつ関心が高まるものと期待する。

                                    以上。

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