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中国経済・株式市場概況 2010 年 10 月 20 日

中国人民銀行、2年10ヶ月振りに利上げを実施

HSBC 投信株式会社

• 中国人民銀行は、1年物の貸出基準金利と預金基準金利を 0.25%引き上げて各々5.56%、2.50%と
すると発表。利上げは 2007 年 12 月以来、2 年 10 ヶ月振り。

• 利上げの背景は、中国国内におけるインフレ抑制の必要性、世界的な過剰流動性の高まりに伴う中
国の資産価格上昇懸念、人民元切り上げを求める外圧緩和など。

• 利上げによる短期的な影響はあるものの、安定的かつ力強い成長を背景とする中国市場に対する
投資家の長期的な信任は揺るがないものと判断。

1.サプライズとなった今回の利上げと市場の反応

中国人民銀行は、10 月19日(火)、1年物の貸出基準金利と預金基準金利を20日(水)から0.25%引き上
げて各々5.56%、2.50%とすると発表しました。利上げは2007年12月以来、2年10ヶ月振りとなります。

中国の利上げ発表直後、世界経済の牽引役である中国の成長鈍化による景気減速懸念から米国株式
市場ではNYダウ工業株30種が下落、終値は前日比-165米ドルの1万978米ドルとなり、外国為替市場で
は、リスク回避志向の高まりを映し米ドルが主要通貨に対してほぼ全面高となりました。
一方、利上げ発表後最初の取引となった20日(水)の中国株式市場は日本時間11時30分現在、香港市場
上場のH株指数が前日比-2.2%、レッドチップ指数が同-2.7%、ハンセン指数が同-1.7%、本土市場の
上海総合指数は同-1.3%となっています。

2.利上げの背景

先進国を中心に世界経済の先行きを巡る懸念が拭えない中、人民銀行はこれまで利上げに慎重な姿勢
を続け、預金準備率(市中銀行から強制的に預かる資金の比率)の引き上げなど主に量的手段を使って、
市場から余剰資金を吸収してきました。先週 12 日(火)には、4 大国有商業銀行(中国工商銀行、中国建
設銀行、中国銀行、中国農業銀行)に加え、招商銀行、中国民生銀行を含めた 6 行の預金準備率を引き
上げたことが報じられています。それだけに、市場関係者の多くは今回の利上げを予想外と受け止めた
模様です。
当局がこのタイミングで利上げに踏み切った背景としては、以下が挙げられます。

※末尾の「当資料のお取り扱いにおけるご注意」をお読みください。

2010 年 10 月 20 日 マーケットレポート

-1-

1)インフレ抑制の必要性
中国国内では春先以降、各地で天候不順による干ばつや水害が多発していたことに加え、国際的な穀物
価格の上昇傾向が続いていたことから食品価格が高騰し、物価が押し上げられてきました。その結果、8
月の消費者物価指数(CPI)は前年同月比+3.5%と、政府の年間目標である+3%を 2 ヶ月連続で上回り
ました。21 日(木)に発表される 9 月の CPI は同+4%に近づくとの予測も多いことから、人民銀行はイン
フレに対する警戒レベルを引き上げたものと見られます。

2)世界的な過剰流動性の高まりに伴う中国の資産価格上昇懸念
中国の不動産市場は4月の過熱抑制策導入以降、数ヶ月間低迷していたものの、8月に入ってから取引
件数及び価格ともに上昇傾向にあります。要因の一つとして、先進国の金融緩和を背景に世界的な金余
り現象が続く中、先進国から新興国に資金が向かう流れが続いていることがあります。また、他の新興国、
ブラジルやタイなどでは加速する投資資金の流入対策の一つとして相次いで資本規制を導入しており、新
興国の代表格である中国も同様に、22日(金)から韓国・慶州で開かれるG20(20ヶ国・地域財務相・中央
銀行総裁会議)を前に、世界に向けて強いメッセージを送る必要に迫られていました。

3)人民元切り上げを求める外圧を緩和
市場関係者の中には、今回の利上げは、米財務省が為替報告書の発表を延期したことに対する政治的
な意思表示であり、一定の人民元の切り上げを事実上容認したものと見る向きもあります。また、利上げ
により中国への資金流入が加速し、その結果、人民元が主要通貨に対して上昇すれば、人民元の上昇を
求める外圧の軽減に繋がり、また国内向けには外圧に屈して人民元相場の切り上げを図ったのではない
ことを示すことになります。

1 年物貸出基準金利、預金基準金利及び消費者物価指数上昇率(前年同月比)の推移
(%)
10

5.56
5
3.5
2.50
0

-5
00/1 02/1 04/1 06/1 08/1 10/1 (年/月)
消費者物価指数上昇率(前年同月比)
1年物貸出金利
1年物預金金利
(出所)データストリームをもとに HSBC 投信が作成

2010 年 10 月 20 日 マーケットレポート 2

3.ソフトランディング後、さらなる成長に向かう中国経済

人民銀行による利上げは、一時の急激な景気減速に対する懸念が後退し、堅調な内需を背景に中国経
済がソフトランディングに成功したことを示す自信の表われと言えます。
現在、発表済の9月の主要経済指標の内容は以下の通りです。物流購買連合会発表の9月の製造業購
買担当者指数(PMI)は、8月の51.7から53.8へと改善、市場予想の52.5を上回りました。HSBC製造業PMI
も、51.9から過去5ヶ月間の最高となる52.9へと上昇しました。9月の輸出は前年同月比+25.1%の1,449億
8,500万米ドルと単月では7月に続く過去2番目の高水準となり、輸入は同+24.1%の1,281億1,200万米ド
ルと単月で過去最高を記録、貿易黒字は168億7,400万米ドルとなりました。人民元建て新規貸出額は前
月の5,452億元から5,955億元へと加速、通貨供給量(M2)は前月とほぼ変らずの前年同月比+19%でし
た。9月末の外貨準備高は2兆6,483億米ドルと前四半期からの増加額(1,940億米ドル)は過去最大となり
ました。また、9月の国内乗用車販売台数は政府による低燃費車を対象とする補助金制度の実施を追い
風に、前年同月比+19.3%の121万台に達しました。

明日21日(木)に発表される2010年第3四半期の実質GDP成長率は第2四半期に比べてやや減速の
+9.5%前後と予想していますが、第4四半期は、原材料の在庫調整の進展、製造業による投資の加速、
住宅建設を中心とする公的部門の投資が持ち直すことなどにより、成長率は再加速するものと予想しま
す。当社では、今年の実質GDP(国内総生産)成長率は+10.0%前後に達するものと予想しています。

4.今後の見通し

今回の利上げ決定は、人民銀行のインフレに対する強い警戒感を示す形となりました。今後、インフレ率
が引き続き高水準で推移すれば、人民銀行は一段の利上げを求められる可能性もありますが、HSBCで
は、2011年の第四半期までの追加利上げは0.25%程度の小幅なものとなると見ており、金融市場への影
響は限定的と考えます。

15 日(金)、北京で開幕した中国共産党の第 17 期中央委員会第 5 全体会議(5 中全会)では、第 12 次 5


ヶ年計画の草案が採択されました。草案には具体的な目標数値は明示されなかったものの、成長の質を
重視し、改革を進める方針が打ち出されました。そこでは、所得格差の是正、社会的セーフティーネットの
構築、最低賃金の引き上げ、サービス産業の促進と内陸部への投資誘導などが議論されたものと見られ
ます。次期 5 ヶ年計画は来年3月の全人代(全国人民代表大会)で正式に承認されますが、今後、名目国
内総生産(GDP)の約 36%を構成する民間消費支出の比重を高める一方、輸出産業や重工業への依存
度を低下させる具体策などが打ち出される見通しです。

中国が目指す一段とバランスのとれた経済成長とは、実質 GDP 成長率の目標値が第 11 次計画の年


+7.5%(実績見込みは+11.4%)から同+7.0%前後に引き下げられることを意味するとの見方は徐々に
コンセンサスとなりつつあります。市場では 21 日(木)に発表される 2010 年第 3 四半期の実質 GDP(国
内総生産)成長率は上振れするとの見方が強まっていますが、中国による今回の利上げは、政府が成長
のスピードよりもむしろ、質的成長へと舵取りを転換したことの表れとも理解出来ます。

2010 年 10 月 20 日 マーケットレポート 3

今回の利上げによる株式市場への短期的な影響はあるものの、安定的かつ力強い成長を背景とする中
国市場に対する投資家の長期的な信任は揺らがないと見ています。

(以上)

<関連するファンドに関わる事項>

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すので、ご投資をされる際には、事前に良く「投資信託説明書(交付目論見書)」をご覧下さい。

HSBC 投信株式会社
金融商品取引業者 関東財務局長(金商)第 308 号
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2010 年 10 月 20 日 マーケットレポート 4

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