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ビルマ人 2010 年総選挙ボイコット委員会

複数政党の総選挙をボイコットすることについて、民主国家から理解を得ることは難し
い。

軍事政権は自らが開く総選挙を自由で公正であると宣言しているが、実際は異なってい
る。その理由は以下のとおりである。

われわれ在日ビルマ民主化勢力は 11 月 7 日に予定されている総選挙について、以下に
列挙する理由によってこれを認めることはできない。

認められない理由

その1.2008 年憲法と 2010 年総選挙の関連性


以下に挙げるのは、見せかけの国民会議で作成された 2008 年憲法の主なポイントであ
り、これによって軍が権力を濫用しながら国を統治することが可能となるものである。

1. 議会が全国に適用される非常事態宣言を発令した場合、その議会の会期が終了し
た時点で軍が憲法上合法的に国を統治する。
2. 人権侵害や、犯罪への関与が認められたとしても、憲法は軍関係者の免罪を約束
している。
3. 議会は、軍関係の予算に干渉することはできない。
4. 軍事法廷(軍事裁判?)は、軍事の関与したすべての犯罪に対する最終審の権限
を持つが、最高裁判所はこれに対して干渉できない。
5. 新しい憲法の不公正な統治機構によれば、行政府に設置される非常時の委員会で
ある国家防衛治安評議会は、大統領と少なくとも5名の指名による軍人を含む
11 名から構成され、すべての司法・行政・立法権を掌握することができる。

軍事政権は自らの利益に沿った憲法草案を一方的に起草・作成し、不当なやり方で強制
的に採択した。憲法草案に関してその賛否を問う国民投票は 2008 年 5 月 24 日に実施さ
れた。死者・行方不明者 13 万 4 千人以上に及び、200 万を超える国民が住居を失うと
いう被害を出したサイクロン・ナルギスの襲来から僅か 22 日後、全国民が救援活動に
奔走しており、多くの有権者が投票すら出来ない状況のなかで国民投票が強行された。

この憲法はビルマ国民にとって有益なものとはなりえない。軍事政権の権力者たちが自
らの権益を守ろうとするものにすぎない。この憲法を公式に発布す る役割を持つ議会
のための総選挙を実施しようとして、不法不当かつ国際的な基準をもとうてい充たして
いない 2010 年選挙関連法を定めたのである。
その2. 2010 選挙管理委員会と選挙関連法および規則
(A) 現在もビルマを支配している軍事政権(SPDC)は 1989 年に設置した選挙管
理委員会を解散し、新たな選挙管理委員会を設置した旨、2010 年 3 月 8 日に発表した。
これは以下に述べる理由によって認めることはできず、軍事政権が予定している 2010
年総選挙に反対するものである。

• 1989 年に組織された選挙管理委員会のもとに実施された 1990 年総選挙の選挙結


果を軍事政権は一切認めず、1989 年の政党登録法に基づいて結成された諸政党
に事前に通告または協議を行なうことなく 1989 年選挙管理委員会を一方的に解
散させた。
• 新たに組織された選挙管理委員会には軍事政権側の人物を選んで任命している。

(B) このように一方的に選挙管理委員を任命した軍事政権は、そのはなはだしい人権侵
害のゆえに国際社会から毎年報告書や勧告を突き付けられている権力機構であ る。国
内においても、彼らの人権侵害は多くの証言、証拠から明らかであり、十分な民主的な
権利を手にするために軍事政権を頼ることはできないことは明白で ある。その軍事政
権が実施しようとしている 2010 年総選挙を認められない。

(C) 選挙関連法は権利の侵害、規制の強化や弾圧の要素を含んでおり、多くの面で民主
主義の原則に合致しない。この点からも 2010 年総選挙は認められない。

その例(1)選挙法第三章第六項には拘束中の人物は政党の党員にはなれないとしてい
る。

その例(2)政党登録法第二章第六条、第七条、第八条によれば政党登録を申請する政
党はミャンマー連邦共和国憲法(2008 年憲法。訳者注)の遵守を誓わなければならな
いとしている。

(国民大衆の意思を代表してビルマ民主化の実現に向けて活動している政党として、国
民の意思

をくみとることなく、強制的に採択された 2008 年憲法を遵守するなどと誓えるわけは


ない)

その3. 対話
以下に列挙する諸課題の解決のために、多くの国民が、加わるべきであり、その必要が
あると認める人たちによ義のある対話を行なうべきである。しか し、そうした対話は
今日に至るまで実現していない。そのことも軍政が実施しようとしている総選挙を認め
られない理由の一つである。

• 国民和解の実現
• 国連総会の決議が一貫して要求している三者対話の実現
• 2008 年憲法にかかわる問題
• 1990 年総選挙結果を無視している問題
• 司法制度の根幹が崩壊し、有効な法の統治が失われている問題
• 言論・表現の自由、結社・活動の自由など基本的人権が奪われている問題
• 2010 年総選挙にかかわる法律の問題

その4. 政治囚の釈放がなされていない状況
いかなる犯罪行為も犯していないにもかかわらず、軍事政権による一方的な起訴、公正
ではない司法の判断によって逮捕され、拘束されている政治囚は 2000 人を超えている。
この人たちが参加できないかたちで実施する選挙は自由で、公正な選挙であるとは絶対
に認められない。このことからも 2010 年総選挙を認めることはできない。

その5. 国民民主連盟(NLD)が選挙に参加するための政
党登録を行わないと決定したこと
国民民主連盟は 1990 年総選挙において圧倒的な勝利をおさめた政党である。しかし、
軍事政権が公布した 2010 年選挙にかかわる法律が民主主義の原則に合致しない(理由
その1参照)ばかりか、前出の理由その2、その3からも認めることはできないとして
政党登録を行 わないことを全員一致で決定した。したがって国民民主連盟は 2010 年総
選挙には加わらない。この決定、さらには国民民主連盟のシュエゴンダイン声明を支
持する国内外のビルマ人として、2010 年総選挙を認めることはできない。

註:国民民主連盟のシュエゴンダイン声明は、選挙に参加できる条件として次の四項目
を要求した。

1. 2008 年憲法に含まれている非民主的な条項について検討を加え修正すること
2. 1990 年総選挙の結果をなんらかのかたちで認めること
3. 対話の実現
4. すべての政治囚の釈放
その6. 基本的な条件の欠如
民主主義を実現するためには二つの条件が充たされなければならない。

1. 完全な複数政党制の実現と
2. 国民の総意に基づいて選択された計画性のあるプログラムもしくはプロセスを用
意することである。これらを欠いたまま軍事政権が自ら描いたプログラムを一方
的に進めようとしているかぎり、ビルマの政治問題が解決されることはあり得な
い。

完全な複数政党制を真に実現するには

1. 1990 年総選挙において圧倒的な勝利をおさめた公党である国民民主連盟とその
他の政党が自由な立場から選挙に参加する権利を認めなければならない。
2. 逮捕・拘束している政治囚を即時、無条件に釈放し、選挙への参加を認めなけれ
ばならない。

国民の総意にもとづいて選択されたプログラムもしくはプロセスを実現するには

1. 国民の総意に基づいて起草、制定された憲法がなくてはならない。
2. 選挙管理委員会、選挙関連法などについても国民の意思に沿ったもの、もしくは
国際的な基準を充たすものでなければならない。

ビルマにおいて民主主義体制への移行はなんとしても成し遂げなければならない政治課
題である。民主化は、国民大衆が命を犠牲してまで求めているもの であるばかりでは
なく、国際社会もまたそれを望んでいる。民主化への過程は国際的な基準に適ったもの
でなければならない。国際基準に適った民主化への過程 においては以下の諸点をふま
える必要がある。

• 多数意見を優先しつつも少数意見をも尊重する。
• 平等を保障する。
• 基本的人権を尊重し、行動の自由を保障する。
• 国民を守る司法制度すなわち「法の支配」がなければならない。
• 報道の自由を保障する。
• 自由で、公正な選挙官吏委員会を組織する。

民主主義体制へと移行する段階においては以下の条件が基本的に必要である。

1. 政治活動への参加を望む国民には誰であれ自由に参加できる権利を保障する。
2. いかなる政党であれ自由に結成・組織する権利、選挙に参加する権利、選挙に参
加しない権利を保障する。
3. 政治囚としての逮捕・拘束は行わない、政治囚がすでに存在する場合はその全員
を即時・無条件に釈放する恩赦を実施する。
4. 投票にあたっては脅迫、強要、強制などは行わず自由な投票を保障する。
5. 有権者の確定にあたっては国際的な基準もしくは民主主義諸国で実施されている
基準を適用する。
6. 有権者であっても、投票をしない(棄権する)権利を保障する。
7. 政党の結成および活動については、民主主義諸国における現行の基準と同等のも
のを保障すべきである。
8. 政党がめざすべき目標は議会制民主主義による政治の実現であり、民主主義の奨
励、維持に資するプログラムを制定し、実施する力量がなければならない。
9. 選挙管理委員会メンバーには政府が気に入った人物を直接任命するのではなく、
多くの国民から信頼されている法律家や専門家によって構成される委員会、国連
もしくは民主主義国が認め、実施している基準に合致した委員会であるべきであ
る。
10. 選挙管理委員会メンバーは民主主義諸国の選挙制度や選挙関連の法律・規則など
を学び、通暁し、民主主義国の基準に沿った選挙実施法・規則を作成できる人物
であるべきである。
11. 選挙関連法・規則は憲法に合致したものでなければならない。したがって憲法そ
のものがビルマ国民にとって有益なものに修正されていなければならない。

軍事政権は自らの利益に沿った憲法草案を一方的に起草・作成し、不当なやり方で強制
的に採択した。憲法草案に関してその賛否を問う国民投票は 2008 年 5 月 24 日に実施さ
れた。死者・行方不明者 13 万 4 千人以上に及び、200 万を超える国民が住居を失うと
いう被害を出したサイクロン・ナルギスの襲来から僅か 22 日後、全国民が救援活動に
奔走しており、多くの有権者が投票すら出来ない状況のなかで国民投票が強行された。

この憲法はビルマ国民にとって有益なものとはなりえない。軍事政権の権力者たちが自
らの権益を守ろうとするものにすぎない。この憲法を公式に発布す る役割を持つ議会
のための総選挙を実施しようとして、不法不当かつ国際的な基準をもとうてい充たして
いない 2010 年選挙関連法を定めたのである。

以上のような観点から在日ビルマ人民主化組織とそこに結集するビルマ人民主化活動家
一同は、ビルマ軍事政権による 2010 年総選挙を認めることはできないことをあらため
て宣言するものである。

この宣言に賛同する在日ビルマ人民主化組織は以下のとおりである。

それゆえ、ビルマ人 2010 年総選挙ボイコット委員会は 2010 年総選挙はみせかけであり


軍政によって周到に準備された選挙である。

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