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B2O3-SiO2 および Na2O-B2O3-SiO2 ガラスの構造と弾性率の

定量的解析

A. Abd El-Moneim

原題:Quantitative analysis of elastic moduli and structure of B2 O3 -SiO2 and Na2 O-B2 O3 -SiO2 glasses

概要
B2 O3 -SiO2 二成分系と Na2 O-B2 O3 -SiO2 三成分系について、架橋密度平均 n̄c 、単位体積あたりのネット
ワークボンド数 nb 、平均伸縮力定数 F̄ 、原子環サイズ ℓ を計算した。これらのデータはそれぞれのサンプル
についての体積弾性率 Kbc とポアソン比 σcal を計算するために使われた。これらのパラメータと組成による
Kbc /Ke 比の変化について、ガラスネットワーク構造の変化の観点から、定量的な議論がなされた。その結果
は、B2 O3 濃度が増加するとともに B2 O3 -SiO2 の接続性、つまりその剛性は減少するということを示した。
ところが、Na2 O-B2 O3 -SiO2 ガラスにおいては、調整剤 (modifier) である Na2 O の増加が、3 配位ホウ素の
4 配位への変形により架橋密度を上昇させる。このことがひいては、このガラス系のネットワークのゆがみへ
の抵抗を上昇させ、弾性率と観測密度を増加させている。加えて、それぞれのサンプルについて得られた理論
的弾性率は、実験値と比較しても一致している。この結果は、すでに調べられたサンプルの大部分と素晴らし
く調和的である。

1 はじめに
珪酸塩ガラスは、半導体技術、光通信技術、他のエレクトロニクス領域と結びついた分野においても、さま
ざまな応用を持っている。これらのガラスは化学的侵食に対しての強い抵抗や、非常に低い電気伝導性と線膨
張係数を持ち、また、紫外線をよく透過する。今日、鉛珪酸塩ガラスは、電子増倍管やマイクロチャネルプ
レートに使われる基本的な物質となっている。Na2 O-B2 O3 -SiO2 ガラス系は工業的に重要なたくさんの物質
の基礎を形成している。珪酸塩ガラスへのアルカリ物質あるいはアルカリ金属酸化物の添加は、やがてガラス
ネットワークを変化させ、非架橋酸素 (Non-Bridging Oxygen,NBO) の形成を導く。弾性的特性のふるまい
や酸化物ガラスの構造に関しては、多数の研究がある。M.William , G.Scott (1970) では、加法的な化学組
成を持つ酸化物ガラスの体積弾性率を定量的に比較している。N.Soga , O.Anderson(1965) では、弾性率と
原子パッキング密度を関連付け、弾性率とイオンペアあたりの体積のあいだの関係を導きだした。B.Bridge
, A.Higazy(1986) と B.Bridge et al.(1983) は、アニオン-カチオン間の一次伸縮力定数、架橋密度、平均原
子環サイズなどの観点からの酸化物ガラスの弾性率と、構造のふるまいを同じくらいうまく解釈している。
彼らはまた、ガラスネットワークのボンドを圧縮した体積弾性率は、架橋密度とボンド伸縮力定数の両方に
直接的に比例していると提案した。A.Abd El-Moneim , co.workers(1998,1998) は超音波速度の組成依存性、
弾性率、65SiO2 -15PbO-5CaO-(15 − x)K2 O-xNa2 O ガラス系のデバイ温度などについて議論した。彼らは、
このガラス系での Na2 O 含有量の増加は前述のすべてのパラメータを増加させると報告した。カチオン間の
電界強度、パッキング密度、体積ユニットあたりの原子数、平均原子環サイズ、ネットワークの伸縮力定数、
などの観点から、彼らの結果は解釈された。最近、A.Abd El-Moneim(2001) で、このガラス系の構造パラ
メータ (ガラスの架橋密度、応力定数、体積ユニットあたりのネットワーク形成ボンド数 ) を使っての、ボン
ド圧縮体積弾性率、ポアソン比、平均の原子環サイズ、が計算された。多くの研究者たちが 、Na2 O-SiO2 と
Na2 O-B2 O3 ガラスでの超音波速度にアルカリ調整剤 (Na2 O) が与える影響を研究してきた。彼らは、Na2 O
調整剤は Na2 O-B2 O3 ガラス中のホウ素の配位数を 3 から 4 へと変化させるので、超音波速度を増加させる
ことを発見した。対照的に、A.V.Gradove , V.V.Tarasov は、Na2 O-SiO2 ガラスでの Na2 O 含有量の増加
は、超音波速度と弾性率を減少させるということを見つけた。これは、Na+ イオンと SiO4 四面体の接続がそ
の結果として、構造中の架橋密度を減少させる、1 つの結合しか持たない酸素原子を生成するためである。
 少量のアルカリイオン K+ を含むホウ珪酸塩ガラスは、その低い線膨張係数と、高い化学的耐性のため
に、工業的にも科学的にも興味をもたれている。またその特殊な性質のために、研究用ガラス製品、家庭用調
理器具、車のヘッドランプなど、多岐に渡る応用がなされている。C.A.Maynell et al.(1973) によって、急冷
と熱処理を施された B2 O3 -SiO2 と Na2 O-B2 O3 -SiO2 ガラスの両方で、超音波の速度と減衰が測定されてい
る。この論文の主要な目的は、それぞれのサンプルの架橋密度平均にしたがって、これらのガラスの構造と弾
性率を計算によって求め、定量的に解析することにある。ネットワーク中の平均的原子環サイズについて計算
と実験で求められたパラメータを比較し、構造の変化を推定することに格別の注意を払った。さらに、超音波
の活性化エネルギーと弾性率 (体積弾性率、せん断弾性率、縦弾性率、ヤング率) の理論値は、それぞれのガラ
スサンプルについて B.Bridge , N.D.Patel(1986) のモデルに従って計算され、対応する観測値と比較される。

2 数値計算のための理論
A-O ボンド (A = カチオン, O = 酸素) を作る三次元構造の 1 成分系ガラスの成分 A にとっては、体積弾
性率 (Kbc ) は、ボンド圧縮モデル (B.Bridge et al.(1983,1986)) に従って、次の関係で与えられる

nb f¯r2
Kbc = (1)
9
ここで r はカチオン-アニオンのボンド長で、 f¯ は平均伸張力定数 nb はガラスの単位体積あたりのネット
ワークボンド数で、次の関係で与えられる
nf
nb = Na (2)
VM
ここで Na はアボガドロ数 nf は単位ガラス化学式あたりのネットワークボンド数であり Vm はガラスのモ
ル体積である。A-O ボンドの伸張力定数は B.Bridge ,A.Higazy(1986) による次の式で与えられる。

17
f¯ = (3)
r3
三次元複成分酸化物ガラスにとって Kbc と nb は次の式で与えられる

Na ∑
Kbc = (xnf f¯r2 )i (4)
9VM i

∑ Na (xnf )i Na ∑
nb = = (xnf )i (5)
i
VM VM i
ここで x は、構成する酸化物 i のモル分率である。複成分酸化物の、ボンド圧縮モデルに従った理論的ポア
ソン比は、次の式で得られる
σcal = 0.28(n¯c )−0.25 (6)

ここで n¯c は、ガラスネットワークの平均架橋密度数で、次の式で与えられる


1∑
n¯c = (nc )i (Nc )i (7)
η i

ここで nc は酸化物 i 中のカチオンあたりの架橋密度数、 Nc はガラス組成ユニットあたりのカチオン量で、


η = Σi (Nc )i は、ガラス組成式ユニットあたりのカチオン量の合計である。ゆがみ環モデルに従った三次元
ネットワーク構造の平均原子環サイズ(ℓ)は、次の式で表現できる。

Ke = 0.0106F¯b /ℓ3.84 (8)

ここで F¯b はボンド偏角力定数の第一近似で、伸縮力定数 F̄ に比例するように定義され、 Ke は実験的体積


弾性率である。三次元複成分ガラスの伸縮力定数 F̄ は、次の式で与えられる。

Σ(xnf f¯)i
F̄ = (9)
Σi (xnf )i

B.Bridge , N.D.Patel(1986) は、超音波緩和の活性化エネルギー V と、最も重要なネットワーク構造パラ


メータ、すなわち応力定数 F̄ および原子環サイズ ℓ 、との間の関連を示す定量的方程式を提案した。

V = AF̄ ℓm (10)

ここで A は定数で、 m は正の指数である。さらに彼らはガラスの弾性率は、活性エネルギーと応力定数と


ネットワーク中の原子環サイズの関数であることを示した。彼らは 4 つのパラメータ K , V , F , l の間に
ある次の関係を導いた
KV = B F̄ 2 ℓm−4 (11)

ここで B は正の定数である。同じ著者らが彼ら自身のモデルを SiO2 , P2O5, As2O3, B2 O3 , GeO2, Mo-P-O


ガラスの値計算で試している、最終的に彼らは次の式を得た

KV = C F̄ 2 ℓ−0.5 (12)

または
KV ∼ DF̄ 2 (13)

ここで C と D は定数である。  Abd El-Moneim[17] は純粋な非晶質 TeO2 と 3 成分系 TeO2-V2O5-


Sm2O3 ガラスの、Bridge , Patel[16] の解析で使われたのと同程度なデータを使い、そして V と l それぞれ
の自然対数に対して最小自乗回帰を行った。彼は次の関係を報告した

Vcal = 113F̄ 2 ℓ2.6422 (14)

と、
Kcal Vcal = 1.2 × 10−27 F̄ 2 ℓ−1.36 (15)

これらの表現は、ジュールでの活性エネルギーの値と、体積弾性率とポアソン比をそれぞれのガラス系につい
て与えた。せん断弾性率
Gcal = 1.5Kcal [(1 − 2σcal )/(1 + σcal )] (16)
縦弾性率
Lcal = Kcal + 1.33Gcal (17)

ヤング率
Ecal = 2(1 + σcal )Gcal (18)

3 解析と考察
表 1 は、それぞれの酸化物の結晶構造から取ったパラメータの一覧である。これらのパラメータは、平均伸
張力定数 F̄ 、ユニット体積あたりのネットワークボンド数 nb 、ボンド圧縮状態の体積弾性率 Kbc 、ポアソン
Kbc
比 σcal 、平均架橋密度 n¯c 、原子環サイズ ℓ、および実験的体積弾性率とボンド圧縮モデルとの比 Ke の計算
に使われる。B2 O3 -SiO2 および Na2 O-B2 O3 -SiO2 ガラス系について計算されたパラメータは体積弾性率 Ke
と密度 ρ とともに表 2 に示される。実験データは以前にほかで測定されたものである。[5] この表から、伸縮
力定数 F̄ の値は純粋な SiO2 ガラスについては 432 N/m、純粋な B2 O3 ガラスについては 660N/m であると
明らかになった。純粋な SiO2 ガラスが高い体積弾性率 Ke (36.1 GPa) と高い密度 ρ(2.2 g cm−3 ) の実験値を
持っている一方で、純粋な B2 O3 ガラスは低い Ke (13.2 GPa) と低い ρ(1.83 g cm−3 ) の実験値を持っている。
さらに、それぞれの計算された値は、構成するネットワークに入った SiO2 、B2 O3 、Na2 O などの酸化物の本
質と、それらの濃度に依存している。

3.1 B2 O3 -SiO2 2 成分系ガラス

SiO2 と B2 O3 のふたつの酸化物は、ガラス形成酸化物として知られている。純粋な非晶質 SiO2 は、SiO4


四面体の 4 つの頂点のそれぞれで他の四面体と接続し、四面体が無限につながる三次元ネットワークを形成
する。このガラスについての伸張力定数 F̄ 、架橋密度 n¯c 、原子環サイズ ℓ の値はそれぞれ、432 N/m、2、
0.567 nm である。[9] さらに、このガラスの nb 、Kbc 、 KKbc
e
比の値はそれぞれ 8.83 × 1028 m−3 、110GPa、
3.05 である。[9] 図1に B2 O3 -SiO2 ガラス中での B2 O3 の濃度による、平均架橋密度 n¯c の変化を示す。酸化
ホウ素の増加とともに平均架橋密度は次第に減少することをこの図ははっきり示している。 n¯c の計算値は純
粋な SiO2 ガラスでは 2 だったが、45.3 mol% の B2 O3 を含むサンプルでは、1.38 に変化している。平均架
橋密度 n¯c の減少は配位数 nf = 4、カチオンあたりの架橋密度 nc = 2 を持つ珪素原子がより小さい配位数
nf = 3、カチオンあたりの架橋密度 nc = 1 のホウ素原子に置換されることと関係がある。図 2 に示すよう
に、同じ組成範囲でのユニット体積あたりのネットワークボンド数 nb は、B2 O3 の添加にともなって減少し
ている。nb の計算値は純粋な SiO2 ガラスでは 8.83 × 1028 m−3 だったが、45.3 mol% の B2 O3 を含むサン
プルでは、6.64 × 1028 m−3 に変化している。さらに、nb の値は純粋な B2 O3 ガラスでは 4.75 × 1028 m−3
である。ユニット体積あたりのネットワークボンド数の減少は、B2 O3 濃度の増加にともない次第に減少する
平均架橋密度に由来すると考えられる。一方で、平均伸縮力定数 F̄ は純粋な SiO2 ガラスについての 432N/m
から、純粋な B2 O3 ガラスの 660N/m に増加している。この結果は研究された B2 O3 -SiO2 ガラスの接続性、
つまり剛性は、B2 O3 濃度の増加にともない減少することを示す。 図3は B2 O3 濃度の増加にともなう、研
究された B2 O3 -SiO2 ガラス中での見積もられた原子環サイズ ℓ の変化を説明する。この図からわかるよう
に、B2 O3 -SiO2 ガラスの原子環サイズは、B2 O3 濃度とともに増加している。これが意味するのは、これらの
ガラスのネットワークは、ホウ素酸化物の増加と珪素酸化物の支出によって、より開かれ、より柔らかくなっ
たということだ。観測された、B2 O3 -SiO2 ガラスのホウ素酸化物の 0 から 45.3 mol% への増加にともなって
起こる原子環サイズの 0.567 から 0.752 nm の増加は、このガラスの平均架橋密度とユニット体積あたりの
ネットワークボンド数が次第に減少するためだ。純粋な B2 O3 ガラスにおける原子環サイズの高い値は、そ
れ自身の低い nb (4.75 × 1028 m−3 ) と n¯c (1) による。ユニット体積あたりのネットワークボンド数 nb の減
少は、計算されるボンド圧縮状態の体積弾性率 Kbc の減少を導く。図 4 は、B2 O3 -SiO2   2 成分ガラス系
において、計算されるボンド圧縮状態の体積弾性率の、B2 O3 濃度による変化を示している。この図から、計
算されるボンド圧縮状態の体積弾性率 Kbc が、ユニット体積あたりのネットワークボンド数 nb や平均架橋
密度 n¯c と同じようにふるまうことは明らかである。それは純粋な SiO2 ガラスの 110 GPa から、45.3 mol%
の B2 O3 を含む B2 O3 -SiO2 での 86.54 GPa へ変化し、純粋な B2 O3 ガラスでは 66.3 GPa まで減少する。こ
れは、B2 O3 -SiO2 ガラス系において、B2 O3 含有量の増加に伴って観測された、密度や実験的体積弾性率の
減少を説明している。このガラス系での密度減少は、おそらく B2 O3 の添加によるガラスネットワーク構造
Kbc
の開かれた本質の結果である。  B2 O3 -SiO2 ガラスのために研究された Ke 比の値はホウ素酸化物の 0 か
ら 45.3 mol% への増加にともなって 3.05 から 5.25 まで増える。Bridge et al.[9] と Higazy , Bridge[8] にお

Ke ≫ 1 という値は、比較的開かれた (広いリングの) 三次元構造ネットワークを示し、その中の原子


いて、 Kbc

Kbc
環サイズは、ガラスが体積圧縮に従うときに卓越する Ke とネットワークボンド屈伸 (ネットワーク圧縮な
しでの) 変化に依存していると報告した。著者たち [9] は、純粋な SiO2 、P2O5、GeO2、AsO3 ガラスについ
て、 K
Ke の値はそれぞれ、3.05, 3.08, 4.39, 6.62 であることを見つけた。これらのガラスそれぞれの原子環サ
bc

イズは、0.58, 0.567, 0.631, 0.722 nm である。表 2 から、 K


Ke 比は、ネットワーク中の原子環サイズの増加
bc

Kbc
に伴って増加することは明らかである。高い値の Ke は、その組成でのより開かれた三次元構造に由来して
いる。 ポアソン比は、伸張力が与えられたときに生まれる縦と横の変形の比としてどんな構造についても正
式に定義されている、ガラスにおいて、ネットワーク中に生まれた伸張による変形は原子間架橋に影響されな
い一方で、横の変形は架橋密度の増加に従い大きく減少する。[8,9] これらの原子間架橋は、横の収縮への抵
抗に耐える強い共有結合力を生み、結果、図 5 に見られるようにポアソン比を減少させる。B2 O3 -SiO2 ガラ
ス系では、ネットワークの接続性は B2 O3 濃度の増加に伴って減少する。平均架橋密度はホウ酸酸化物の量が
0 から 45.3 mol% まで増加するのにしたがって 2 から 1.38 に変化し、純粋な B2 O3 ガラスでは 1 に等しくな
る。[9] この平均架橋密度の減少はポアソン比の増加を導く。ポアソン比の計算値 σcal は、純粋な SiO2 ガラ
スでは 0.235 であり、45.3 mol% の B2 O3 を含有するホウ珪酸塩ガラスサンプルでは 0.258 へ変化し、純粋な
B2 O3 ガラスでは 0.28 となる。[9] 調べられた B2 O3 -SiO2 ガラス系についてのポアソン比の実験値は、B2 O3
の量が 0 から 45.3 mol% までの増加するのにしたがって 0.16 から 0.2335 に増加する。

3.2 Na2 O-B2 O3 -SiO2 3 成分系ガラス


Na2 O-B2 O3 -SiO2 3 成分ガラス系における、アルカリ調整剤 Na2 O による酸化物 SiO2 と B2 O3 の置換は、
このガラス系の構造と弾性に影響する。表 2 から、観測されたこのガラスの密度 ρ は、Na2 O の量が 3.3 か
ら 19.8 mol% まで増加するのにしたがって 2.069 から 2.4 g cm−3 に増加する。[5] さらに、実験的体積弾性率
Ke は、同じ範囲で 22.44 から 39.34 GPa に増加する。[5] 酸化物 Na2 O の伸張力定数と架橋密度はそれぞれ
225 N/m と 2 である。[9] Gradove , Tarsove[13] は、アルカリイオン Na+ (電界強度 0.19) はネットワーク調
整剤で、Na2 O-SiO2 ガラス中ではネットワークのすき間に存在し、架橋ボンドのいくつかを破壊する。壊れ
たボンドは、すき間にいる調整剤イオン (Na+ ) とネットワーク中の NBO のあいだのイオン間結合に取って
代わられる。ネットワーク中の非架橋酸素の形成は Na2 O-SiO2 ガラスの接続性を減らし、弾性率を減少させ
る。調整剤カチオン (Na+ ) とガラス形成アニオン (O-) のあいだの原子間力 (静電的相互作用) の大きさは、
電荷と同じくらい調整剤カチオンの半径に依存している。[10] 対照的に、Na2 O-B2 O3 ガラスにおいて、ホウ
素酸化物の場所への Na2 O 調整剤の添加は、三次元結合を増加させる結果となり、これは 3 配位ホウ素 (BO3
ユニット) が 4 配位 (BO4-ユニット) へと変形するためであるということを同じ著者は発見した。したがって、
次元的な増加はガラスネットワーク中に入った追加の Na2 O による弾性率の増加の原因となる。Makishima ,
Mackinzie[14,15] は Na2 O-B2 O3 ガラスについての同じ結果を報告している。Milberg et al.[20] は NMR を
用いてアルカリホウ珪酸塩ガラスこの構造研究を行った。Na2 O/B2 O3 比が 0.5 より小さい限り、それぞれの
アルカリイオン (Na+ ) はホウ素を 3 配位席から 4 配位席に変換させることを彼らは発見した。その後、アル
カリ分布はホウ素と珪素のあいだで分配され、Na2 O/SiO2 比によって非架橋酸素 (SiO- K+ のような) を形成
する。Na2 O-B2 O3 -SiO2 の研究では、Na2 O/B2 O3 比は 0.5 以下であった。図 2 から、平均架橋密度 n¯c 、ユ
ニット体積あたりのネットワークボンド数 nb 、ボンド圧縮状態の体積弾性率 Kbc の計算値は、Na2 O の量が
3.3 から 19.8 mol% まで増加するのにしたがって増える。さらに、これらの計算値は純粋な珪酸ガラスについ
て報告されたものより小さい。[9] これは Na2 O の添加は、ホウ素の配位数を 3 から 4 へ増やすことで B-O-B
ブリッジを変質させることを意味している。これは追加の架橋酸素原子の形成とネットワークの接続性の増加
を導く。また、Na+ カチオンのこの席への接近は酸素原子の動きを阻害し、弾性率を増加させる。表 2 に示さ
れるように、Na2 O-B2 O3 -SiO2 ガラスにおける酸化物 B2 O3 と SiO2 の場所への 3.3 から 19.8 mol% までの
Na2 O の添加は、ガラスの平均架橋密度 n¯c を 1.359 から 1.413 まで増加させる。図 6 は、Na2 O-B2 O3 -SiO2
ガラス系の研究での、Na2 O 濃度によるユニット体積あたりのネットワークボンド数 nb の変化を示している。
この図から、ユニット体積あたりのネットワークボンド数 nb は、Na2 O の量が 3.3 から 19.8 mol% まで増加
するのにしたがって 6.69 × 1028 から 7.7669 × 1028 m−3 まで増える。これも同じく、ネットワーク中の原
子環サイズの見積もりを減少させる。ネットワーク中の平均原子環サイズの値は、同じ組成範囲で 0.686 から
0.588 nm まで変化する。ボンド圧縮状態の体積弾性率 Kbc の計算値は、Na2 O の量が 3.3 から 19.8 mol% ま
で増加するのにしたがって 86.79 から 96.67 GPa まで変化する。このガラス系でのポアソン比の計算値は、同
じ組成範囲で 0.2593 から 0.2568 まで次第に減少する。また一方、Na2 O-B2 O3 -SiO2 ガラス系での平均伸縮
力定数 F̄ は、Na2 O の量が 3.3 から 19.8 mol% まで増加するのにしたがって 519 から 482.4N/m まで減少す
る。Na2 O-B2 O3 -SiO2 ガラスでの Na2 O の増加は、3 配位のホウ素を 4 配位に変形させ架橋密度を増加させ
ることを、この結果が証明した。このことがひいては、このガラスにおけるネットワークの変形を促進させ、
Kbc
観測される密度と弾性率の上昇を説明する。B2 O3 -SiO2 または Na2 O-B2 O3 -SiO2 ガラス系における Ke 比
と見積もられた原子環サイズ ℓ の間の関係を研究することもまた非常に重要である。これらのガラスのふるま
いは図 8 に示されるように、同じように秩序立った関係にある。 K
Ke 比は見積もられた原子環サイズの増加に
bc

Kbc
伴って増えることがこの図で明らかに示されている。低い値の Ke は、その組成での小さなリング状三次元
構造に由来している。

3.3 計算された弾性率と実験値とのあいだの相関
研究された B2 O3 -SiO2 と Na2 O-B2 O3 -SiO2 ガラス系における弾性率の計算値 (体積 Kcal 、せん断 Gcal 、
縦 Lcal 、ヤング率 Ecal ) は、よく一致した実験値とともに表 3 に示される。弾性率の実験値は他の論文から
取った。[5] これらの計算に必要なパラメータは、平均伸縮力定数 F̄ 、原子環サイズ ℓ、ボンド圧縮状態のポ
アソン比 σcal である。表 3 から、弾性率の計算値は、実験値の範囲にあることは明らかである。図 9∼12 は
バルク、せん断、縦、ヤング率のそれぞれの弾性率について、理論的計算値と観測された値の間の一致を示し
ている。各図の直線は、すべて単一の傾きを持っている。計算値とそれに対応する実験値の相関係数は、バ
ルク弾性率では 88 % から 100 %、せん断弾性率では 86 % から 100 %、縦弾性率では 88 % から 99 %、ヤン
グ弾性率では 87 % から 99 % であると図は示している。もし私たちが不確実さを考慮にいれるなら、それは
実験的測定値と、式 (13) と (14) に基づく近似に固有なもので、私たちはこのモデルが、サンプルの多数で
の弾性率の観測値と計算値の間によい一致をもたらしているかを検討できる。図 13 は、研究されたガラスで
の活性エネルギー Vcal による計算値バルク弾性率の変化を表している。図では、Bridge , Patel[16] で提案さ
れたモデルのように、すべてのデータは双曲線上に載っているように見える。これらの結果は、酸化物ガラ
スの物理的特性と低温での超音波緩和パラメータの間の図式関係 (13) と (14) が、研究された B2 O3 -SiO2 と
Na2 O-B2 O3 -SiO2 ガラスについて成功的に得られることを証明した。さらに、他のサンプルの弾性率からボ
ンド圧縮状態のポアソン比 σcal と計算されたバルク弾性率を計算した。

4 結論
1. 研究されたホウ珪酸塩ガラス、B2 O3 -SiO2 と Na2 O-B2 O3 -SiO2 の構造と弾性率は、最も重要なパラメー
タ、ボンド圧縮状態のポアソン比とバルク弾性率を計算することで組成の関数として研究された。2.B2 O3 -
SiO2 2 成分系の接続性つまり剛性は、B2 O3 濃度の上昇とともに減少する。対照的に、Na2 O の添加はホウ素
原子の B3 状態を B4 状態へ変形させ、それによって Na2 O-B2 O3 -SiO2 3 成分系ガラスの弾性を強固にする。
3. 弾性率に関する理論的計算値と実験値は、多くのサンプルで非常に素晴らしく一致している。

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