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レアメタル 2007(2)

レアアース(希土類)の需要・供給・価格動向等

希少金属備蓄部 企画課 課長代理 リ
minami-hiroshi@jogmec.go.jp 南 博志  ー

はじめに
本シリーズは、現代産業に必要不可欠なレアメタルのうち、JOGMEC が動向を注視し、次の備蓄の可能性を検討

している 7 鉱種(プラチナ、レアアース(希土類)、インジウム、ニオブ、タンタル、ストロンチウム、ガリウム) ア
について、順次需給動向等をとりまとめていくものです。 メ

本号では、第 2 回としてレアアース(希土類)を取り上げています。 ル
<レアメタル備蓄制度についての詳細は、レアメタル備蓄のページ 2
(http://www.jogmec.go.jp/mric_web/organization/japan/g3/index.html) 0
0
からご覧になることができます。> 7
(2)
レアアース(希土類)とは、元素周期律表第Ⅲ族に と呼ぶようになったものである。なお、研究によりレ

属する原子番号 57 番から 71 番のランタノイド 15 元素 アアースの個々の元素がすべて発見されたのは 20 世紀 ア
(ランタン〈La〉 、セリウム〈Ce〉、プラセオジム〈Pr〉、 半ばであり、最初の発見から約 150 年の歳月を要して ア
ネオジム〈Nd〉、プロメチウム〈Pm〉、サマリウム いる。 ー

〈Sm〉、ユウロピウム〈Eu〉、ガドリニウム〈Gd〉、テ レアアース元素は、それぞれの化学的性質が類似し ︵
ルビウム〈Tb〉、ジスプロシウム〈Dy〉、ホルミウム ており、高融点で熱伝導性が高い。また、原子核を周 希
〈Ho〉、エルビウム〈Er〉、ツリウム〈Tm〉、イッテル 回する電子の軌道が特殊なため他の金属にはない独特 土

ビウム〈Yb〉、ルテチウム〈Lu〉)に、同じ第Ⅲ族の の機能を発揮する。そのため、用途は、永久磁石(希 ︶
21 番のスカンジウム〈Sc〉及び 39 番のイットリウム 土類磁石)、ガラス研磨剤・添加剤、触媒、蛍光体等と の
〈Y〉の 2 元素を加えた 17 元素の総称である。 幅広く、最先端産業、特に日本の技術優位性を生かし 需

レアアースは、1794 年にフィンランドの学者 ているハイテク産業分野で用途が拡大している。 ・
J.Gadolin が、1787 年に発見されていた新しい鉱物中に また、レアアース 17 元素は、その発見された経緯や 供
未知の元素の酸化物の“新しい土”を発見し、それを 元素ごとに分離する際の状況によって、軽希土(ラン 給
“希な土 → rare earth”と名付けたことが語源となっ タン、セリウム、プラセオジム、ネオジム)と中重希 ・

ている。この酸化物は 1797 年にイットリヤと名付けら 土(サマリウム、ユーロピウム、ガドリニウム、テル 格
れ、また、1803 年には同じくスウェーデンでセリヤと ビウム、ジスプロシウム、イットリウム、他)に分類 動
呼ばれる新しい土が発見された。これらの新しい土は、 されている。 向

最初のうちはそれ自体純粋な元素の酸化物と考えられ
ていたが、その後の研究の結果、実はそれぞれ非常に 1. 需要・供給
化学的性質の似ているいくつかの元素の混合物である 1-1. 世界の需給状況
ことがわかってきたので、このような化学的性質の似 表 1 に世界のレアアース需給を示す。
ている一群の元素を総称して「レアアース(希土類)」
表1 世界のレアアース需給 レアアース酸化物量;推定、単位:t
1997年 1998年 1999年 2000年 2001年 2002年 2003年 2004年 2005年 2006年
中国 53,300 65,000 70,000 73,000 73,000 88,000 92,000 95,000 119,000 120,000
    〈生産シェア〉 66.9% 84.9% 85.4% 87.4% 87.4% 89.5% 92.8% 93.1% 96.7% 97.6%
インド 2,700 2,700 2,700 2,700 2,700 2,700 2,700 2,700 2,700 2,700
マレーシア 220 350 350 450 450 450 250 250 750 200
CIS諸国 2,000 2,000 2,000 2,000 2,000 2,000 2,000 2,000 ― ―
タイ ― ― ― ― ― ― 2,200 2,200 ― ―
アメリカ 20,000 5,000 5,000 5,000 5,000 5,000 ― ― ― ―
ブラジル 1,400 1,400 1,400 200 200 ― ― ― ― ―
スリランカ 120 120 120 120 120 120 ― ― ― ―
その他 ― ― ― ― ― ― ― ― 400 400
供 給  合 計 79,700 76,600 82,000 83,500 83,500 98,300 99,100 102,000 123,000 123,000
需 要  合 計 66,000 ― ― 79,000 ― ― 84,000 ― 95,262 ―
需給バランス 13,700 ― ― 4,500 ― ― 15,100 ― 27,738 ―
(注)1997、2000、2003、2005年以外の需要量はデータ無し。
出典:Mineral Commodity Summaries(USGS)、The Economics of Rare Earths & Yttrium(Roskill)、
平成18年度レアメタルの備蓄検討調査報告書(日本メタル経済研究所)

2007.7 金属資源レポート 127


(227)
世界のレアアース生産は、その 90 %以上を中国が占 力・磁束密度を高める性質を有するジスプロシウム及
めており、この供給寡占状況は近年ますます強まって びテルビウムの重要度が増してきている。これら 2 元
いる。特に、西側最大のレアアース鉱山であったアメ 素は中重希土であり、中重希土の量が多く含有されて
リカ・ Mountain Pass 鉱山が環境問題等により 1998 いるのは、現在では中国華南地域で生産されるイオン
年に生産量を大きく減少させた(2002 年休止)ことに 吸着型鉱床(江西省、湖南省、広東省、福建省等に散
シ より、中国による寡占は加速度的に進んだ。このよう 在している)のみである。従って、新たな鉱山開発と
リ に、レアアースは、タングステンと同様に、圧倒的な して最も期待されているのは、中重希土に富む鉱床の
ー 生産シェアを持つ中国の動向が世界の動向に大きく影 鉱山開発である。
ズ 響を及ぼすという異例の供給構造となっている。従っ
て、中国以外の供給源を求める動きが世界で様々に行 1-2. 日本の需給状況
われている。今後開発が期待されるプロジェクトとし 日本は、レアアース全量を、酸化物、塩化物等の化
レ ては、オーストラリア・ Mt.Weld プロジェクト 合物、合金、金属の形態で輸入している。表2にレア

メ (Lynas 社: 2008 年に生産を開始する計画)、カナダ・ アースの主要対日輸出国の推移を示す。レアアースの
タ Hoidas Lake プロジェクト(Great Western Minerals 対日輸出国の上位 5 か国集中度は 1999 年の 99.1 %か

2 Group 社: 2009 ∼ 10 年頃に生産を開始する意向)、カ ら 2005 年は 98.9 %となっており、その寡占化は非常
0 ナダ・ Thor Lake プロジェクト(Avalon Ventures に高いレベルで推移しているといえる。生産における
0
7 社: 2010 ∼ 11 年頃に生産を開始する意向)があり、 中国への寡占状況と同様に、中国 1 か国への集中度が
(2) また、休止中のアメリカ・ Mountain Pass 鉱山でも、 1999 年の 72.4 %から 2005 年は 90.2 %とより一層高ま
レ 2008 年をめどに再開が計画されている。その他にも、 っており、日本の中国への依存度はかなり進行してい
ア ベトナム、タイ等で探査が進められているほか、独立 る状況となっている。

ー 行政法人産業技術総合研究所が「層状鉄マンガン鉱床
表2 レアアース主要対日輸出国の推移
ス にはレアアースが多く含まれていることを確認。今後
︵ 国  名 2005年(酸化物量t) 国  名 1999年(酸化物量t)
希 調査研究を進めていく。」との研究成果を発表し今後が
中国 25,819 90.2% 中国 15,185 72.4%
土 期待されている。
類 フランス 1,422 5.0% フランス 4,411 21.0%
世界全体の生産量は、中国の生産増によりほぼ単調
︶ エストニア 617 2.2% 台湾 570 2.7%
の 増加の傾向にある。中国国内最大のレアアース鉱山は インド 325 1.1% エストニア 411 2.0%
需 内蒙古自治区にある包頭の白雲鄂博(Baiyun Obo)鉱 フィリピン 118 0.4% インド 194 0.9%

山で、軽希土を中心に生産、現在世界で生産されるレ その他計 326 1.1% その他計 199 0.9%

供  合  計 28,628  合  計 20,970
アアースの約 50 %を供給している。一方、需要面では、

・ ネオジム・鉄・ボロン(Nd-Fe-B)磁石の需要が日本、
上位5か国計 28,302 98.9% ← 上位5か国計 20,771 99.1%
出典:財務省貿易統計よりJOGMEC換算
価 中国を中心に伸びており、増加傾向にあると見込まれ

動 ている。
向 圧倒的な生産シェアを持つ中国では、レアアースを 表3に日本のレアアース品目別需要を示す。日本の

国家戦略物資と位置付け、この重要な国内資源を守り、 レアアース需要においては、前述のとおり Nd-Fe-B 磁
内需を優先し、さらには輸出の高付加価値製品へのシ 石の需要(ネオジム、ジスプロシウム、テルビウム)
フト(国内で加工度の高い製品にして輸出する)を推 が好調であるほか、フラットパネルディスプレイ関連
進するために、様々な政策を実施している。具体的に (ガラス研磨剤→セリウム、蛍光体→セリウム、イット
は、外国企業や合弁企業(中国企業と海外企業)のレ リウム他)及び自動車排ガス浄化触媒(ランタン、セ
アアース産業への参入の禁止< 2002 年>、輸出増値税 リウム)が堅調で、今後も需要を牽引していくと期待
還付制度の撤廃< 2004 年 1 月に鉱石について撤廃、 されている。また、今後需要の伸びが期待できる分野
2005 年 5 月に酸化物について撤廃>、委託加工貿易の として、Nd-Fe-B 磁石以外に水素吸蔵合金(ハイブリ
禁止< 2005 年 5 月、「海外から鉱石を中国に持ち込ん ッド電気自動車搭載のニッケル水素二次電池向け)や
で中間製品に加工して輸出する貿易」を禁止>、輸出 石油精製用接触分解触媒を挙げている予測も見られる。
税の増税< 2006 年 11 月から鉱石・酸化物について いずれにせよ、需要はさらに拡大していくと考えられ
10 %を課税した。2007 年 6 月 1 日から金属にも 10 % る。
課税する予定>及び輸出許可枠の削減<近年では毎年
削減>を実施してきている。これらの中国の動向は世
界の需給・価格動向に多大なる影響を及ぼしており、
日本をはじめとするレアアース消費国にとってはレア
アース安定供給における最大の懸念材料となっている。
また、Nd-Fe-B 磁石の需要増により、ネオジムのみ
ならず、添加されることによってその高温域での保磁

128 2007.7 金属資源レポート


(228)
表3 日本のレアアース品目別需要
レアアース酸化物量、単位:

1997年 1998年 1999年 2000年 2001年 2002年 2003年 2004年 2005年 2006年
(予測)
主要用途
酸化イットリウム(Y2O3) 380 380 400 520 360 380 500 500 500 500 蛍光体(赤色)、光学ガラス 等
酸化ランタン(La2O3) 710 760 800 900 600 700 900 1,000 1,100 1,800 光学レンズ、セラミックコンデンサー、触媒 等 シ
酸化セリウム(CeO2) 5,300 5,500 6,000 7,000 6,000 6,000 5,500 5,700 5,900 8,200 ガラス研磨剤、触媒、紫外線吸収ガラス添加剤 等 リ
酸化ネオジム(Nd2O3) 1,800
200
2,000
200
2,300
200
2,700
200
1,800
120
1,900
120
2,100
120
2,700
100
4,000
100
5,000
120
ネオジム・鉄・ボロン(Nd-Fe-B)磁石 他 ー
酸化サマリウム(Sm2O3) サマリウム・コバルト (Sm-Co)磁石 他
酸化ユウロピウム(Eu2O3) 15 15 16 20 14 15 15 14 14 15 蛍光体(赤色)等 ズ
ミッシュメタル 1,060 1,200 1,400 2,000 1,300 1,200 1,200 1,700 1,900 2,800 水素吸蔵合金(ニッケル水素電池)他
その他 280 295 310 350 280 290 320 350 370 420 ※ ジスプロシウム → Nd-Fe-B磁石添加物
 合  計 9,745 10,350 11,426 13,690 10,474 10,605 10,655 12,064 13,884 18,855

フッ化希土、酸化プラセオジム(Pr6O11)、酸化ガドリニウム(Gd2O3)、酸化ジスプロシウム(Dy2O3)等の合計
※「その他」は、 ア
出典:新金属協会、 レアメタルニュース (アルム出版社)、平成18年度レアメタルの備蓄検討調査報告書(日本メタル経済研究所)



2
0
0
7
(2)
使用済み製品からのレアアースのリサイクルは、コ その輸出量を増加させてきた。このため、価格は低迷
スト面の理由からほとんどなされていない。ただし、 し、ほとんどの西側企業が撤退に追い込まれることと レ

ニッケル水素二次電池の分野では 77 %の電池が回収さ なった。2000 年代に入ってからは、中国が環境問題へ ア
れており、この中でニッケルだけでなくレアアースも 本格的に取り組みはじめ規制を強化したほか、ITバ ー

ある程度の量がリサイクルされていると考えられるが、 ブルの影響によって、価格は上昇に転じた。その後、 ︵
この部材リサイクル率は企業秘密とされている。また、 ITバブルの崩壊(IT不況)により再度価格は低迷 希
製造工程の発生屑からのリサイクルについては、Nd- したが、前述のとおりの中国の資源保護・内需優先の 土

Fe-B 磁石の分野で行われている。磁石メーカーにおけ 政策実施、Nd-Fe-B 磁石等の需要増により、2003 年頃 ︶
る工程屑の約 50 %は、磁石組成合金のメーカーが有償 から回復しはじめた。さらに、2005 年に入ってからは の

で買い取ってリサイクルしているが、残り約 50 %は海 Nd-Fe-B 磁石関連する元素(品目)の価格高騰が目立 要
外に輸出されリサイクルされている。また、近年では っている。 ・

磁石組成の多様化に伴いリサイクルの困難さが増して なお、アルム出版社発行のレアメタルニュース・工 給
きているという問題もある。これらを踏まえると、日 業レアメタルは、業界関連企業からの情報として金属 ・

本としては経済性のあるリサイクルプロセスの開発・ レアアースの月ごとの価格推移を掲載している(デー 格
整備が今後のレアアースのリサイクルにおける課題と タは 2004 年以降しか存在しない)。図1にこの価格推 動

して挙げられる。なお、国内 Nd-Fe-B 磁石メーカーの 移を示す。 等
うち、唯一、信越化学工業だけが組成合金からの一貫
生産を行っており、日立金属(旧 NEOMAX : 2007
年 4 月 1 日に親会社であった日立金属が吸収合併)と
TDKは組成合金を外部から購入している。また、組
成合金のメーカーとしては三徳、昭和電工、住金モリ
コープがある。

2. 価格
レアアースに関する国際的な価格決定機構は存在し
ない。他の多くのレアメタルにおいてその掲載価格が
指 標 と し て 用 い ら れ て い る Metal Bulletin 誌 及 び
Metals Week 誌にも、レアアースの価格は掲載されて
いない。実際の取引価格は、需給動向を鑑みて需要側
と供給側の相対取引で決まっているものと思われる。
レアアースの価格は、1980 年代まで、限られた数の
生産者のもとで安定的に推移してきた。しかし、1980
年代に入ってから中国が参入、その中国では 1990 年代
まで乱立した鉱山企業や分離・製錬メーカーが無秩序
に乱売競争をくり返し、圧倒的な安値での輸出を続け、

2007.7 金属資源レポート 129


(229)
単位:$/kg、CIF価格

700
テルビウム

600


ー 500


400

レ 300
ア 2004年 2005年 2006年 2007年


ル 110
2 ジスプロシウム
0 イットリウム
0
7 90
※ ジスプロシウム(Dy)の価格
(2)  は、ジスプロシウム鉄(DyFe)
 のDy純分ベースの価格

レ 70


ー 50



30
土 2004年 2005年 2006年 2007年

︶ 30

ネオジム

セリウム

ランタン

供 20




動 10

0
2004年 2005年 2006年 2007年

出典:レアメタルニュース(アルム出版社)、一部 JOGMEC 推定

図 1 金属レアアースの価格推移

これによると、Nd-Fe-B 磁石関連品目である金属ネ ののバランスして採掘されるという特徴がある。その


オジム、ジスプロシウム鉄(Dy 純分当たりの価格)、 ため、一部の元素の需要が増大しても、他の元素は残
金属テルビウムの価格動向は、それ以外の 3 品目の価 ってしまう場合がある。従って、このことにより後者
格動向と明らかに異なる。後者 3 品目の価格が徐々に 3 品目が前者 3 品目に比べて供給過剰気味になってい
上昇しているのに対し、前者磁石関連 3 品目は 2004 年 ることも価格がそれほど上昇していない原因と考えら
の価格の 2 ∼ 3 倍に高騰している。特に、前者 3 品目 れる。
の 2005 年以降の価格上昇傾向は相似しており、これは
Nd-Fe-B 磁石需要増が大きく影響を及ぼして高騰して 3. 用途
いると思われる。また、レアアースは各元素が同時に 図2にレアアースのマテリアルフロー図(日本)を
採掘されるため、元素により品位のばらつきはあるも 示す。

130 2007.7 金属資源レポート


(230)
それぞれ、
レアアース酸化物量、化合物量、金属量;(  )内は粗い推定値  単位:

<原   料> <中間製品> <最終製品> <主応用製品> <リサイクル>

 希土研磨剤  研磨剤 リサイクルなし

 酸化セリウム・セリウム化合物  ガラス研磨剤  TVブラウン管、液晶ガラス等 リサイクルなし


生産量
輸入量 13,363  蛍光体  蛍光灯、CRT リサイクルなし
  中国 10,523
フランス 1,551  紫外線吸収ガラス添加剤  自動車フロントガラス等 リサイクルなし
  エストニア 615
インド 340  排ガス浄化三元触媒  自動車 リサイクルなし
その他 344
 塩化ランタン  FCC触媒  触媒 リサイクルなし

 酸化ランタン  排ガス浄化三元触媒  自動車 リサイクルなし


 希土化合物 生産量
 (粗塩化希土を含む) 輸入量 1,801  光学レンズ  光学機器・携帯電話 リサイクルなし
輸入量 5,738   中国 1,758
  中国 5,140 フランス 40  フェライト磁石(La-Co系)  永久磁石 磁石工程くずのみリサイクル
  フランス 304 オーストラリア 3
  その他 294  セラミックコンデンサー誘電体  電気機器部品 リサイクルなし

 酸化イットリウム  蛍光体  蛍光灯、CRT、


プラズマディスプレイ リサイクルなし
生産量
輸入量 1,226  光学ガラス  (業務用)
ビデオカメラ、
デジカメ リサイクルなし
  中国 1,211
  その他 15  コンデンサー誘電体  携帯電話、パソコン等高周波数用 リサイクルなし

 電池極板  Ni水素電池、燃料電池用極板 部分回収

 フェロセリウム  ジルコニア焼結助剤  自動車エンジン酸素センサー リサイクルなし


輸入量 592
  アメリカ 200  フェルール  光ファイバコネクタ リサイクルなし
  中国 262
  その他 130  製鋼原料 鉄鋼材料 鋼材くずとしてリサイクル

 金属Nd、Sm、Dy、La、他  永久磁石  SmCo、NdFeB磁石(焼結、


ボンド) 磁石工程くずのみリサイクル
 希土金属 生産量

2007.7
輸入量 8,387  RE成分調整原料  各種REメタル リサイクルなし
  中国 8,386
  その他 2  ミッシュメタル  水素吸蔵合金  Ni水素電池 電極工程くずのみリサイクル
生産量
 製鋼原料 鉄鋼材料 鋼材くずとしてリサイクル

 発火石  ライター リサイクルなし

金属資源レポート
出典:財務省貿易統計、工業レアメタル2006(アルム出版社)、新金属協会、鉱物資源マテリアルフロー2006(JOGMEC)

図2 レアアースのマテリアルフロー図(日本)<2005年>

(231)
131
7
0
0
2































(2)
レアアース各元素は様々に使用され、それらの用途 ダを用いて分離し、次にウランとトリウムを濃塩酸を
は多岐にわたっている(表3の主要用途も参照) 。 用いて分離、最後にレアアースを塩化物として回収す
現在、最も注目されている用途は、ここまでに幾度 る方法で、鉱石中の有用成分の全部と使用薬品のほと
も述べているように Nd-Fe-B 磁石である。Nd-Fe-B 磁 んどが回収できる経済性に富んだ方法である。分離は
石は、その名のとおりネオジム、鉄、ホウ素を主成分と 溶媒抽出法により行われる。有機溶媒を用いて、まず
シ しており、永久磁石のうちでは最も強力とされている 軽希土グループと中重希土グループに分離する。次い
リ (この分野では、代替として同じ性能を発現できる材料 で、中重希土をサマリウム、ユーロピウム、ガドリニ
ー は無い)。また、前述のとおり、ジスプロシウム及びテ ウム(中希土と呼ぶこともある)とそれ以外(重希土
ズ ルビウムも、添加されることによって Nd-Fe-B 磁石の と呼ぶこともある)に分離する。そして、それぞれか
高温域での保磁力・磁束密度を高める性質を有してい ら、分別沈殿法、溶媒抽出法、イオン交換法を組み合
るので重要度が増してきている。Nd-Fe-B 磁石の日本 わせて、各元素ごとに分離し酸化物を精製していく。
レ における需要で最も多いとされているのは HDD(ハー 金属レアアースの製造では、一般的に、軽希土グルー

メ ドディスクドライヴ)向けで、磁気ヘッドの位置決め プには溶融塩電解法、サマリウムには蒸留還元法、テ
タ に用いる VCM(ボイスコイルモータ)磁気回路にレ ルビウム、ホルミウム等の少量生産には金属熱還元法

2 アアース磁石を使用している。これは、日本製のほぼ が用いられている。
0 全ての HDD に使用されている。また、ハイブリッド なお、レアアースにおいては、放射性物質を含む鉱
0
7 電気自動車(HEV)のモータやエアコンの室外機の駆 物が生産される場合があるため、その場合レアアース
(2) 動素子にも用いられる。特に、ハイブリッド電気自動 を分離精製した後の残渣(廃棄物)をいかに貯蔵する
レ 車モータ向け需要は、日本で今後最も有望な分野と予 かが問題となってくる可能性がある。近年、世界各国
ア 測されている。他には、自動車パワーステアリング用 で環境規制はより厳しくなっており、環境対策を講じ

ー のアシストモータ、小型の MRI(Magnetic Resonance ることがレアアース生産のコストアップにつながる可
ス Imaging :磁気共鳴画像診断装置(医療機器の一つ))、 能性は大きい。また、環境対策をクリアして政府等の

希 CD-DVD 用ピックアップ、携帯電話のスピーカー、バ 承認を得るのに、多くの時間と労力を費やすこともあ
土 イブレーターの振動モータ等にも用いられている。な ると考えられる。さらに、近年では、環境問題に関す
類 お、携帯電話用途には、性能は劣るが安価な Sm-Co 磁 る関係団体の動きも活発になっており、その対応も重

の 石、フェライト磁石が用いられることも多い。 要となっている。
需 その他の用途には、Sm-Co 磁石、ガラス研磨剤、紫

・ 外線吸収ガラス添加剤、水素吸蔵合金(ニッケル水素 5. 資源
供 二次電池向け)、自動車排ガス浄化触媒、石油精製用接 表 4 に世界のレアアース埋蔵量を示す。

・ 触分解触媒(FCC 触媒)、蛍光体、携帯電話・パソコ 表4 世界のレアアース埋蔵量
価 ン用コンデンサー、フィルター・センサー等のセラミ
格 国 名 埋蔵量(千t)
(レアアース酸化物量)
動 ック製品等がある。前述のとおり、中でも、フラット 中国 27,000 30.7%
向 パネルディスプレイに用いられるガラス研磨剤、蛍光 CIS諸国 19,000 21.6%
等 13,000 14.8%
体、環境分野で今後も重要な自動車排ガス浄化触媒、 アメリカ
オーストラリア 5,200 5.9%
ハイブリッド電気自動車ニッケル水素二次電池向けの
インド 1,100 1.3%
水素吸蔵合金等が今後需要の伸びが期待される分野と
マレーシア 30 0.0%
して挙げられている。 その他 22,000 25.0%
合 計 88,000
4. 生産・製錬 出典:Mineral Commodity
Summaries(USGS)
レアアースの生産は、まず鉱石を選鉱、レアアース
鉱物(バストネサイト、モナザイト、ゼノタイム、イ
オン吸着型鉱等)の精鉱としてから、分解処理を行い レアアースの世界の埋蔵量は、レアアース酸化物に
混合希土の化合物(塩化希土等)を生成する。そして、 して 8,800 万tと推定されている。このうち、中国は
その化合物を分離・精製することにより各元素の酸化 全世界の 30.7 %を占めており、偏在性は比較的高いと
物が精製され、さらにはそこから金属レアアースが製 は言えるものの、生産量ほどの極端な偏りは見られな
造される、という方式で行われる。 い。このことにより、中国以外の供給源の開発の可能
選鉱においては、バストネサイトでは浮遊選鉱等、 性は決して少なくないと言える。
モナザイトでは湿式比重選鉱、磁力選鉱等が用いられ レアアースの鉱床タイプは、カーボナタイト鉱床、
る。分解処理には、硫酸法、アルカリ分解法がある。 鉄希土類鉱床、イオン吸着型鉱床、漂砂鉱床、アルカ
硫酸法は、熱濃硫酸で鉱石を分解する方法で、現在で リ岩鉱床の 5 種類である。これら鉱床は、主にアメリ
はほとんど使われていない。アルカリ分解法は、精鉱 カ、中国、オーストラリア等の大陸地域に分布してい
からまずレアアースに次いで多いリン成分を苛性ソー る。

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カーボナタイト鉱床は、方解石またはドロマイトか 〈参考文献等〉
らなる炭酸塩岩の貫入岩を母岩とし、アルカリ複合岩 1.総合資源エネルギー調査会鉱業分科会レアメタル対
体の形成と成因的に密接な関係があるため、アルカリ 策部会資料
岩に随伴し、その組成は軽希土に富んでいる。鉄希土 「今後のレアメタルの安定供給確保について(とり
類鉱床には、マグマから直接鉱物が沈殿した「マグマ まとめの方向)」
性鉱床」と高塩濃度熱水から鉱物が沈殿した「熱水性 2007 年 5 月 経済産業省資源エネルギー庁 シ
鉱床」とがある。鉱床の規模は比較的大きく、どちら 2.The Economics of Rare Earths & Yttrium〈10th リ
かというと軽希土に富んでいる。イオン吸着型鉱床は、 ∼ 12th Edition〉Roskill ー
花崗岩の風化殻の鉱床であり、鉱物の分解に伴って放 3.レ ア ア ー ス ( 新 版 ( 改 訂 4 版 )) 1 9 8 9 年 1 2 月 ズ
出されたレアアースが風化によって形成された粘土鉱 (社)新金属協会
物に吸着し濃縮されたものである。品位は低く、鉱床 4.希土類物語(先端材料の魔術師)1991 年 4 月 足
規模は比較的小さいが、中重希土に富む場合が多く、 立吟也監修、足立研究室編著 レ

放射性元素を含まない鉱床が多い。漂砂鉱床は、花崗 5.新金属データブック 2002 2002 年 8 月(株)ホーマ メ
岩や変成岩類を後背地とする大陸の海岸に沿った砂鉱 ットアド・金属時評編集部 タ

として存在しているが、現在ではほとんど採掘されて 6.工業レアメタル 2006 ANNUAL REVIEW 2006 年 2
いない。鉱床規模は大きく、主に軽希土に富んでいる。 7 月 アルム出版社 0
0
アルカリ岩鉱床は、アルカリ岩火成岩に随伴し、アル 7.レアメタルニュース〈過年度分∼現在〉アルム出版社 7
カリ岩体、熱水性鉱床等の中にレアアースを含有して 8.金属資源レポート 2004 年 11 月号 森川市参「世 (2)
いる。熱水性鉱床は比較的規模が大きく、中には中重 界のレアアース需給」 レ
希土に富む場合もある。 9.金属資源レポート 2006 年 3 月号 山岡幸一 ア

主な鉱石鉱物としては、バストネサイト、モナザイ 「中国レアアース産業の現状と動向及び日本レアア ー
ト、ゼノタイム、イオン吸着型鉱が挙げられる。また、 ース産業への影響」 ス

中国には、バストネサイトとモナザイトが共生してい 10.平成 18 年度レアアース資源開発調査報告書 2007 年 希
る複雑鉱も存在する。このうち、バストネサイト、モ 3 月 住鉱コンサルタント株式会社 土

ナザイトは軽希土に富んでおり、ゼノタイム、イオン 11.平 成 1 8 年 度 レ ア メ タ ル の 備 蓄 検 討 調 査 報 告 書 ︶
吸着型鉱は中重希土に富んでいる。 2007 年 3 月 (社)日本メタル経済研究所 の
現在のレアアース鉱山には軽希土を主体として生産 需
12.第 17 回日中レアアース交流会議報告書 2005 年 要
している鉱山が多く、前述のとおり今後さらに重要と 11 月 JOGMEC 金属資源開発調査企画グループ ・
なる中重希土は、現在のところ中国華南地域のイオン 13.非 鉄 金 属 の し お り = 4 0 鉱 種 の 紹 介 = 2 0 0 6 年 供

吸着型鉱からの生産のみとなっている。従って、中重 JOGMEC 金属資源開発調査企画グループ ・
希土に富む新たな鉱山開発も含めて、中重希土の安定 価

供給の確保が重要となってくる。 動


6. まとめ
レアアースは、日本のみならず世界全体が供給のほ
とんどを中国 1 か国に依存している。そのような状況
下で、中国は、国内資源を守り内需を優先する様々な
政策を実施しており、需給面、価格面に大きな影響を
及ぼしている。従って、レアアースについては、中国
の動向を常に把握し供給上のリスクを常に考えておか
ねばならず、なおかつ、中国以外への供給源の分散、
国内リサイクル率の向上、代替材料の開発を考えてい
く必要がある。特に、中国以外への供給源の分散とい
う観点では、アメリカ・ Mountain Pass 鉱山の再開、
オーストラリア・ Mt.Weld プロジェクトの開発、そし
て中重希土に富む新たな鉱山開発に注目することが必
要である。
(2007.5.25)

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