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はじめに

で動いています。市場原理を理解すれば、なぜ現実の経済がある方
向に動いたのかを、読み解くことができるようになります。
 市場原理とは、売り手(供給側)と買い手(需要側)が自由に取
引をしていくと、自動的にモノ・サービスの適正な価格が決まって
「経済」という言葉を聞いて、何を連想するでしょうか。たとえば、 くることです。経済は、「需給のバランス」で動いているのです。
会社員なら「ビジネス」、主婦なら「買い物の値段」
、リタイアした   も ち ろ ん、 市 場 原 理 は 完 全 無 欠 で は あ り ま せ ん。 た と え ば、
高齢者なら「年金や金利」——と、人それぞれ違うと思います。 2008年9月に米国大手投資銀行の経営破綻をきっかけに、世界経
 そのどれもが正解ですが、経済のほんの一部でしかありません。 済は大きな危機に直面しました。これは、米国が市場原理を尊重し
経済とは、「お金」のやり取りがからんでくる、私たち個人や企業 すぎて、適切な「経済政策」を打たず、バブルを放置したことが原
の活動すべて(経済活動)を対象としているからです。 因でした。
 さらに、現代は「グローバル化」の時代といわれているように、  
私たち個人や企業の経済活動の舞台は、国内にとどまらず、簡単に  以上のことを踏まえて、本書は、経済という広い世界の姿を、こ
国境を越えて、大きく広がっています。 の1冊で理解できるようになるために、「経済の基礎知識」(Part
 では、私たちは、経済というものを、どう理解すればよいでしょ 1)
、「経済指標」(Part 2)、「経済政策」(Part 3、4)、「グロ
うか。 ーバル化」(Part 5)、「世界経済」(Part 6)、「経済分析・予測
 とてもシンプルにいってしまえば、経済の正確な姿をうつしだす の方法」(Part 7)の6つに分けて、難しい専門用語はかみ砕き、
鏡である「経済指標」と、経済を動かしている原理である「市場原 身近な具体例を織り交ぜながらまとめました。
理(マーケットメカニズム)」の2つを理解することだと思います。  最近、世の中では、「日本経済はどうなってしまうのか」という
 1つ目の経済指標はなぜ大事なのでしょうか。 漠然とした危機意識が広がりつつあります。本書は、危機的な状況
 経済について、マスコミや評論家は常日ごろ、センセーショナル に置かれている日本経済の真実の姿を、率直に解説しています。
なことをいっていますが、明確なデータに基づかず、大した検証も  経済の生きた知識を身につけることは、私たちがこの不透明な時
しない、いい加減な情報も多いようです。たとえば、法人税減税で 代を生き抜くうえで、とても大切なことです。
景気は回復するという論調は、明確な根拠に基づいていません。  それでは、経済ワールドの扉を、これから1つひとつ開けていき
 こうした情報に惑わされず、今の経済の本当の姿を正確に理解す ましょう。
るためには、「経済指標」を読めるようになることが大事なのです。
 2つ目の市場原理はなぜ大事なのでしょうか。 2011年2月 上野 泰也 
 さまざまな経済活動は、市場原理という1つのシンプルなしくみ ※Part1〜5は河合が執筆し、上野が監修。Part6〜7は上野が執筆しました。

002 003
No.1エコノミストが書いた 世界一わかりやすい経済の本 04 市場経済のシステムが経済を支えている.............. 030

目次
誰でも自己責任で自由に経済活動が行える
みんながやりたいことをやっていて大丈夫?

はじめに............................................................................................................ 002
05 供給量や価格が自動調整される市場メカニズム..... 033
売る側も買う側も満足する価格に落ち着く
神の見えざる手が働いている
自由な経済活動がもたらす弊害

Part
1 経済を動かす基本的な
しくみと法則を理解しよう 06 企業間競争は消費者にメリットをもたらす........... 037
企業間競争は良いことか?
資源の有効活用も促進させる
01 経済とはそもそも何だろう?................................... 020
得意分野に専念してつくるのが「分業」
みんなが集まってモノを交換できる場が「市場」 07 自由な貿易は生活を豊かにする.............................. 040
交換をとても容易にするのが「貨幣」 貿易は利益を得るための国どうしの取引
スミスとリカードが説いた貿易理論

02 経済活動は生産と消費の繰り返し.......................... 023
社会では「生産」と「消費」が日々繰り返されている 08 経済学から経済の法則を学ぶ①
人間が選択するときに起こる希少性とトレードオフ.... 043
人間は常に「選択」を行っている
03 経済活動のプレイヤーは家計、企業、政府......... 025
「希少性」によって人間は選択を迫られる
家計の役割は「労働力の提供」と「消費」
一方を選ぶと他方を失う「トレードオフ」
企業の役割は「生産」と「販売」
企業は経営資源を使って利益を最大化する
政府の役割は公共サービスを行うこと
モノ・サービスとお金がぐるぐる回っている
経済循環は国境を越えて世界が舞台に
09 経済学から経済の法則を学ぶ② 02 国際収支①
選択することで失ってしまう機会費用という利益......... 047 外国との経済活動の結果は国際収支に表れる.............. 065
あきらめることになった利益が「機会費用」 「経常収支」と「資本収支」に大別される
出産退職によって生じる女性の機会費用は? 日本は経常収支が黒字、資本収支が赤字
国が保有する外貨準備が増えたか減ったか

10 経済学から経済の法則を学ぶ③
選択のメリットを訴えて行動に影響を与えるインセンティブ....050 03 国際収支②
インセンティブとは意思や行動を変化させる刺激 日本の経常収支についてみてみよう................................ 068
インセンティブは経済活動に影響を及ぼす 日本の経常収支はどうなっている?

04 国際収支③
11 経済学から経済の法則を学ぶ④ 日本の資本収支についてみてみよう................................ 071
取り戻すことができない費用がサンクコスト................ 053 国のお金の流入額と流出額はどうなっている?
サンクコストはもう回収できない費用
今後のコストと完成後の利益の比較で判断する
05 国民の財力は家計金融資産に表れる..................... 074
あなたも経験があるはず
日本の家計金融資産は1400兆円台で推移
家計の資金が政府の借金に回っている
家計金融資産の減少は、貯蓄率の低下と低金利のせい

2
日本は先進国の中でも最低レベルの貯蓄率
現実の経済活動を
Part
経済データで把握しよう
06 経済は好景気と不景気を繰り返す.......................... 079
需給バランスが崩れて景気が変動する
01 国の総合的な経済力はGDPに表れる................... 058
好況・不況は経済指標で判断できる
GDPは国内で生み出された付加価値の合計
名目GDPと実質GDPの違い
日本のGDPは頭打ち傾向にある 07 経済の状態は雇用に直結する................................. 082
2010年に世界第2位から3位へ 不況になると失業率が上がる
国民の豊かさは「1人当たりのGDP」でみる
08 国の経済力は為替レートに表れる.......................... 085
為替レートは貿易に不可欠
経済成長する国の通貨は買われる
Part
3 経済の命運を握る経済政策①
金融政策を理解しよう
09 景気の良し悪しは金利の水準に表れる................. 089
経済活動が活発になると金利が上がる 01 金融政策とは何だろう............................................... 106
日本にも高金利の時代があった 日銀は物価安定を第一に考えて金融政策を行う
金利の力を利用して景気や物価の安定を図る

10 これから景気がどう動くかは株価に表れる.......... 092
株式発行は有力な資金調達手段 02 金融政策のターゲットは無担保コール翌日物金利...... 109
株式は証券取引所で売買される 短期金融市場でオペを行い、目標金利に誘導する
株価は「景気の先行指標」
日本企業の株価の推移は?
03 金融政策で景気や物価が安定するしくみとは?...... 112
インフレの場合は金融引き締めを行う
11 経済がインフレ、デフレになるのはなぜ?........... 098 デフレの場合は金融緩和を行う
景気が良くなると物価が上がり始める
景気が悪くなると物価が下がり始める
04 公開市場操作の具体的な手法は?......................... 115
インフレ期待が強まると物価はますます上昇
公開市場操作は資金供給オペと資金吸収オペの2つ
極端なインフレがハイパーインフレ
預金準備率操作は長いこと行われていない
継続的に物価が下落していくデフレ
日本は慢性的なデフレ状態にある
05 金融政策は誰が決定する?...................................... 117
金融政策決定会合で基本方針や金利水準が決まる
ブラックアウト・ルールという守秘義務がある

06 日銀の金融緩和政策を振り返る............................. 120
日銀の政策金利は超低水準が長期化
07 インフレ目標とは何だろう....................................... 126 公共事業の効果が薄れてきた
物価上昇率(インフレ率)の目標値の設定は有効? 増減税で景気対策を行う
世界で20カ国以上が採用した 累進課税制度と社会保障制度が景気を安定させる
デフレ脱却に本当に有効なのかは疑問
日銀の「中長期的な物価安定の理解」とは?
03 財政政策は誰が決定し、動かしている?.............. 150
予算ができるまでの大まかな流れ
08 どんな金融政策をすれば 自民党政権時代の予算編成は官僚主導だった
日本経済が良くなる?............................................. 131 小泉政権で政治主導の予算編成を目指した
まず日銀の活動目的と役割を押さえておく 民主党政権の財政支出拡大で財源が大幅に不足
ハイリスク資産を買い入れるべきではない
金融システムや金融市場の安定はほぼ保たれている
04 日本の歳入はどうなっている?................................ 156
インフレ率は若干のプラスを目指すべき
2010年度予算は5割弱も借金でまかなっている
デフレの原因は生産年齢人口の減少と過剰供給にある
直接税は不安定、消費税は安定した収入源

05 日本の歳出はどうなっている?................................ 161
Part
4 経済の命運を握る経済政策②
財政政策を理解しよう
国債の返済が歳出全体の22.4%を占める

06 日本が財政赤字で、国債大量発行を続けている理由.... 163
01 財政と財政政策とは何だろう.................................. 140 財政赤字が膨らむ3つの理由
財政には3つの役割がある なぜ国債発行を続けていられるのか
国債を発行して税収不足を補っている
景気対策に使われる公共事業や減税
07 日銀が国債を引き受けてはいけない理由............. 167
「小さな政府」と「大きな政府」はどちらがいい?
日銀の野放図な紙幣大量発行を防ぐのが目的
新たに発行した紙幣は国債、地方債と交換する
02 財政政策が経済に波及していくしくみ................... 146 満期が来た国債の金額内なら引き受けができる
公共事業を調整して景気をコントロールする 日銀の銀行券ルールには問題がある
政府紙幣の発行はデフレ対策になる? 02 投資マネーが世界中のマーケットをかけめぐる.... 193
実物経済とマネー経済とは?
有望な新興国に世界中から投資マネーが集まる
08 日本が国債を発行できなくなる日が来る?.......... 173
低金利と高金利の差をねらうキャリー取引
家計金融資産でいつまで国債を買い支えられるのか
実物経済とマネー経済は相互作用がある
10年以内に国債消化の危機が訪れる

03 一国のバブル崩壊がなぜ世界全体に波及していく?.... 198
09 世界各国と比べた日本の財政状況はどうなっている?..... 177
証券化によって世界中にリスクが広がった
IMFが日本のさらなる財政悪化を予測
金融市場でクレジット商品の信用がなくなった
長引く不況が国債発行を増大させた
市場の動きの根底には「人間心理」がある
日本が抱える3つの大きな課題

04 世界各国が自由貿易を進めている.......................... 201
10 日本経済が良くなる財政政策は何だろう.............. 182
関税率を高くして国内産業を守る
巨額を投じても短期的な経済対策では無意味
消費者は高い商品を買わされるのがデメリット
近視眼的にならず、ムダを取り除く
自由貿易の拡大を目指し、GATTからWTOへ
財政の立て直しは必要不可欠、残された時間は少ない
関係国だけで協定を結ぶFTA・EPAが増加
日本は11の国・地域とEPAを締結
日本がFTA・EPAを結ぶメリットは?

Part
5 グローバルな経済動向を
みてみよう 05 世界的な資源争奪戦が激しくなっている.............. 209
高騰を続けてきた原油価格
世界同時不況で資源の需要が大幅に減った
01 グローバル化とはそもそも何だろう....................... 188
RJ/CRB指数で商品先物全体の動きがわかる
地球規模で行われるようになった経済活動
世界各国の資源争奪戦が激化している
新興国は「世界の工場」から「世界の市場」へ進化
日本は世界で一番レアメタルを消費する国
国境を越えたM&Aが急増している
金融不安や株安が瞬時に世界に広がるマイナス面も
06 日本の輸出と輸入はどうなっている?................... 215
輸出品のナンバーワンは米国向け自動車
中国が米国を抜いて最大の輸出先になった
最も多い輸入品はエネルギー
輸入先も中国が米国を抜いて1位になった
Part
6 世界各国の経済状況を
みてみよう

01 世界経済の勢力図は新たな3極に分かれている...... 238
07 グローバル化で日本経済はどう変わってきた?.... 222 回復が遅い先進国と回復が早い新興国
きっかけは「プラザ合意」後の円高だった 中国の経済規模が世界第2位に躍り出た
貿易摩擦の激化と低賃金の生産拠点 世界経済の勢力図は3極体制へ
新興国は製造拠点から消費市場に変わった

02 世界通貨ドルと強い消費に支えられる米国経済.... 242
08 グローバル化で日本企業に勝ち組と負け組が生まれている.... 226 米国経済を支える個人消費が落ち込んだ
世界相手の生き残り競争に突入した 財政出動で財政赤字が急激に膨らんだ
M&Aで海外市場に打って出る 双子の赤字が再び大きくなっている
新興国市場の開発・マーケティングを強化する 経済政策に手詰まり感が出てきた
世界のデファクト・スタンダードをつくる ドル安とドル高のはざまで悩んでいる
クール・ジャパンとして評価される

03 世界一の巨大経済圏を形成したEU経済.............. 248
09 今後グローバル化が進むと日本企業はどうなっていく?..... 233 欧州を政治・経済的に統合することを目指す
値下げ競争の先にある体力消耗戦 輸出依存度が高いドイツ
海外進出後により熾烈な競争が待っている 世界一の観光大国フランス
海外進出は「産業の空洞化」という悪影響も及ぼす 金融立国として復活した英国
欧州通貨統合がはらむ制度的な欠陥が露呈した

04 世界第2位の規模になった中国経済...................... 255
中国は高成長を続けざるを得ない
日本と中国の関係は「政冷経熱」
人民元の大幅な切り上げを拒否している 04 日本経済は1995年に大きく転換した................... 274
2020年以降、高齢化社会が到来する 日本は景気回復を輸出の力に頼るしかない
1995年前後を境にインフレからデフレにシフト
超低金利時代はこれからも長く続く
05 世界経済を牽引するBRICs経済......................... 260
インドは優れたIT技術をもち、国内需要が大きい
資源価格の上昇が輸出の追い風になっているブラジル 05 法人税率引き下げはデフレ脱却に本当に効く?.... 278
資源に依存するロシア 政治公約の「プラス3〜5%成長」は実現できない
資金は潤沢でも設備投資には消極的
減税しても企業は設備投資や雇用には動かない

Part
7 将来の経済動向を予測する
エコノミストの読み方・考え方
06 銀行が国債を買い続けた末に「泥船論」が待っている.... 281
銀行と政府・日銀は「運命共同体」

01 プロは何を材料に経済動向を予測している?...... 266
07 人口減・少子高齢化で日本企業が直面している「氷上の白クマ論」.... 283
経済指標は経済予測に不可欠な「材料」
国内消費市場は年々小さくなる "北極海の氷"
市場の判断が正しいとは限らない
今の日本経済が本当に必要とするのは人口対策

02 日本の経済指標をみるときの注意点①
08 バブル崩壊後の米国経済が復活するのはいつ?..... 286
経済成長率の数字のマジックに注意する....................... 269
経済の回復力が弱い最大の理由は「家計の悪化」
本当の経済成長が数字に反映されていない
本当の経済成長の姿を把握する

03 日本の経済指標をみるときの注意点②
先行、一致、遅行の3つを区別して考える....................... 272
重視すべきなのは早めに動く「先行指標」
1
Part

経済を動かす
基本的なしくみと
カバー・本文イラスト:神林美生
カバー・本文デザイン:吉村朋子
        写真:石井和広

・本書のデータは、本文中に断りがない場合、2010年12月末時点のものです。
・ドルの金額をカッコ内で円換算している場合は、1ドル=80円で算出しています。 法則を理解しよう
01
経済を動かす「分業」「市場」「貨幣」のしくみ 1

経済とは

経済を動かす基本的なし くみと法則を理解しよ う
平野の村人

そもそも何だろう?
米をつくる分業
経済は「分業」「市場」「貨幣」という3つの大きなしくみで成 売る
り立っている。
お金に換える

得意分野に専念してつくるのが「分業」 市場


「経済」という言葉は、簡単にいえば、私たちが働いてお金を得て、
モノとお金の
そのお金で生活に必要な食料品や日用品を買ったり、旅行に行った お金に換える 交換場所 お金に換える

り、貯蓄に回したりする日常生活そのものを指します。
 とはいえ、「経済は日常生活そのもの」といっても、経済全体の
し じょう
しくみはよくわかりませんね。そこで、経済とは「分業」
「市場」
「貨
売る 売る
幣」という3つの大きなしくみで成り立っている社会のことだ、と
考えれば、とても簡単に理解できます。この3つの大きなしくみに 魚を獲る分業 獣を獲る分業
海辺の村人 山の村人
ついて、これから説明します。
てること、山の村ではイノシシなどの獣を獲ることに専念すれば、
 1つの村の中で生活に必要なものを全部、村の人たちだけでつく 効率よく、質の高い食料がつくれるようになります。
ってまかなう「自給自足」の暮らしはとても大変です。食べ物や住  分業は、すべての経済活動の基本となります。
居、農機具、衣服などを、すべて自分たちの手でつくれば、時間も
手間も膨大にかかります。 みんなが集まってモノを交換できる場が「市場」
 そこで、それぞれの村は、得意分野で力を発揮してつくったもの  分業で生産した食料を交換する原始的な方法は「物々交換」です。
を、村どうしが交換し合う「分業」という方法をとります。  たとえば、農村に住むAさんは米を収穫し、魚と交換したいと考
 たとえば、海辺の村は魚介類を獲ること、平野の村では穀物を育 えています。漁村に住むBさんは魚を獲り、米と交換したいと考え

020 021
02
ています。この2人が出会って米と魚を無事交換できれば、お互い
1

経済活動は
に苦労せずに欲しいモノが手に入ります。

経済を動かす基本的なし くみと法則を理解しよ う
 ところが、AさんとBさんがいつも出会うとはかぎりません。出
会いは偶然に左右されるからです。そこで、交換の偶然性をできる
だけなくすため、交換したい人たちは、「市場」に集まります。人
生産と消費の繰り返し
がたくさんいれば、自分が取引したい条件に合う人もみつかります。
 経済学では、「市場」という名前がつく青果市場や魚市場だけで 経済活動とは、生産者が財・サービスを提供し、消費者が代金
を支払ってそれを手に入れること。
はなく、インターネットのショッピングサイト、スーパー、コンビ
ニなど、お金とモノを交換する場所すべてを「市場」といいます。
社会では「生産」と「消費」が日々繰り返されている
交換をとても容易にするのが「貨幣」  私たちは、働いて得たお金で、食料品や日用品などを買っていま
 物々交換には問題があります。たとえば、先のAさんが「もっと す。経済学では、そのうち衣服、食べ物、住居、家電製品、車など
たくさんの魚を出さないと、米2キロと交換できない」といい、B 形があるモノ(有形物という)を「財」といい、医療、教育などの
さんがこの要求を飲まなければ、物々交換は成立しません。 形がないもの(無形物という)を「サービス」といいます。
 また、Bさんが魚をまったく獲れない日があると、その日は米が  企業は、財やサービスを生み出して、私たちや他の企業に販売し
手に入らなくなります。 て、その代金を受け取っています。
 こうした物々交換の問題を解決する手段が「貨幣=お金」です。  こうしたお金のやり取りをともなう私たちや企業などの行動のこ
 まず人々は、自分が生産したモノを売って貨幣に換えます。たと とを、「経済活動」といいます。経済活動は、「生産」と「消費」の
えば、魚は日にちが経てば腐って交換できなくなりますが、貨幣に 2つに大きく分けられます。
換えておけば、欲しいモノを欲しいときに手に入れられます。 ①生産
 このように価値を保管しておくことができる貨幣を使うことで、  企業が財やサービスを生み出すことです。企業を「生産者」とい
市場での交換はとても容易になります。 います。たとえば、自動車メーカーがクルマを製造して販売したり、
 つまり経済とは、「分業」して商品がつくられ、「市場」で商品と 豆腐店が豆腐や油揚げをつくって販売するのは生産です。
「貨幣」が交換される社会のことです。貨幣が交換の仲介をする経 ②消費
済を「貨幣経済」、人々が自分の欲しいモノを市場での取引(売り  私たちが財やサービスを使うことです。私たちを「消費者」とい
買い)によって手に入れる経済を「市場経済」といいます。 います。私たちがスーパーで買い物をしたり、外食をするのは消費

022 023
03
経済活動のしくみ 1

経済活動のプレイヤー

経済を動かす基本的なし くみと法則を理解しよ う
は家計、企業、政府
販売

家計、企業、政府の3者間で、モノ・サービスとお金のやり取り
生産者 代金 消費者 が行われ、お金がぐるぐる回っている。
(企業) (私たち)

生産 消費
家計の役割は「労働力の提供」と「消費」
する する  経済活動のプレイヤーは、「家計」
「企業」
「政府(国や地方公共団
体)」の3者です。経済学では、3者を「経済主体」といいます。
 ここでいう「家計」とは、一家のお金の収支ではなく、生活費を
一緒にしている世帯(家族)のことです。一般に1つの世帯は、同
生産と消費を「経済活動」という じ収入源で暮らしていますから、個人ではなく、世帯を経済の最小
単位としているのです。
です。子どもがお小遣いでお菓子を買うのも、立派な消費です。
 このように、毎日当たり前のように社会で繰り返されているさま  家計の主な役割は、「労働力の提供」と「消費」です。私たちは
ざまな経済活動全体を指す言葉が、「経済」なのです。 企業などで働き、その対価として給料を受け取り、それを使ってモ
 小説『ロビンソン・クルーソー』のように1人で無人島で自給自 ノやサービスを購入しています。それ以外の余ったお金があれば、
足の生活をしていないかぎり、意識するしないにかかわらず、私た 「貯蓄」に回します。
ちは誰もが経済という枠の中に組み込まれています。  ところで、「収入」と「所得」という言葉は意味が違います。収
入とは手に入った金額。所得は、その収入から必要経費を差し引い
 私たちは基本的に、「より豊かで便利な生活がしたい」と思いな た金額のことです。
がら経済活動を行っています。この思いが長い年月をかけて、経済  私たちは、所得の一部を税金として政府に納め、教育、医療、交
をより便利で高度なしくみに進化させてきたのです。 通、司法、消防、警察などの「公共サービス」(→P26)を受けて

024 025
います。
モノ・サービスとお金の流れ 1

経済を動かす基本的なし くみと法則を理解しよ う
企業の役割は「生産」と「販売」
 企業は、「労働力」「土地」「資本」という3つの「生産要素」を
使って、生産・販売活動を行います。 家計
①労働力



 家計の働き手が企業の労働力となります。企業は、家計に給料を






支払います。


ノ・





②土地
 家計や他の企業から借りたり、買ったりします。貸し手・売り手
にお金(土地代)を支払います。 公共サービス
税金
③資本
モノ・サービス
 家計や他の企業から借りたり、投資してもらったりします。貸し 企業 代金 政府
手や投資した人にお金(利子や配当)を支払います。

 企業は、生産したモノ・サービスを、家計や他の企業、政府に販 3つの経済主体の間を、モノ・サービスとお金が
ぐるぐる回っていることを経済循環という
売して「売り上げ」を手にします。
 ただし、企業は生産する過程で、他の企業から原材料を仕入れた
り、生産設備(製品をつくるための機械)を購入したりしています。 を行うことです。
 そして企業が最終的に手にする「利益」は、従業員への給料や前  公共サービスとは、国民の生活を安全で豊かにし、経済活動がう
述した原材料、仕入代金などを除いた金額になります。 まく行われるしくみを整えることです。公共サービスの費用は、家
 また、家計と同じように、利益の一部を税金として政府に納め、 計と企業から集めた税金でまかないます。
公共サービスを受けています。  公共サービスを行う他に、政府は生活に困っている人にお金を給
付したり、予算が足りない自治体(県市町村)に補助金を配ったり、
政府の役割は公共サービスを行うこと 法律を制定して企業や家計の経済活動が望ましい方向に進むように
 政府の主な役割は、家計や企業では生み出せない「公共サービス」 したりします。

026 027
 政府では公務員が働いているので、企業と同じように、家計の労
モノ・サービスとお金は国境を越える 1
働力を利用しています。また、政府も企業からモノ・サービスを購

経済を動かす基本的なし くみと法則を理解しよ う
入して、代金を支払っています。
輸出
モノ・サービスとお金がぐるぐる回っている モノ・サービス

 経済活動では、家計、企業、政府の3者の間で、お金がやり取り 代金

され、お金がぐるぐる回っています。
 現実の経済活動では、たとえば、私たち(家計)がスーパー(企
業)でお菓子を買って、スーパーにお金を支払います。支払ったお 輸入
金の一部は、スーパーの従業員の給料になります。 日本 モノ・サービス 外国
(中国、米国、ドイツなど)
 そして、従業員は給料でモノやサービスを買い、給料の一部を政 代金
府に税金として納めます。政府はその税金を使って、公共サービス
を行います。

 このようにモノ・サービスとお金がぐるぐる回っている流れを
「経 体と外国の経済主体どうしがモノを売り買いする「貿易」(→P
済循環」といいます。経済循環は活発になったり、停滞したりしま 40)などの経済活動を行っています。
す。経済循環が活発になっていくと、経済全体も元気になっていき  このように国境を越えて経済活動が行われる傾向が強まってきた
ます。そのしくみは以下のようになります。 ことを、「グローバル化」(→P188)といいます。
 多くの日本企業は、外国企業に自動車や工作機械などを輸出し、
モノやサービスの生産・販売が拡大→企業の利益が増える→私 外国企業から代金を受け取っています。
たちの給料が上がる→消費が拡大する→モノやサービスの生  逆に、日本企業は外国企業から穀物や食料品、雑貨などを輸入し
産・販売がさらに拡大する て、代金を支払っています。
 たとえば、私たちの周りには、外国製の洋服やバッグ、インテリ
アなどがたくさんあります。私たちが外国製品を買うことで、お金
経済循環は国境を越えて世界が舞台に が外国企業に渡ります。このように、私たちの経済活動は、世界の
 現代社会では、経済循環が一国だけにとどまらず、日本の経済主 中に組み込まれているのです。

028 029
04
市場経済は生産も消費も自由 1

市場経済のシステムが

経済を動かす基本的なし くみと法則を理解しよ う
経済を支えている
パン屋 A

市場経済では、自らが保有する財産を有効活用して、利益をよ
り大きくしようとする。

誰でも自己責任で自由に経済活動が行える
 23ページで述べたように、経済活動とは、モノやサービスを生産・
消費することです。 パン屋 B

 では、モノやサービスを、①誰がどれだけ生産し、②誰がどれだ
け消費するか、ということはどのように決まるのでしょうか。
 ①と②が、市場で取引する生産者と消費者の意思にゆだねられて
いるシステムを、「市場経済」といいます。
 旧ソ連を中心とする社会主義経済圏が崩壊した今、日本や米国を
含む多くの国が、市場経済を採用しています。
 たとえば、自動車メーカーは、自社の事業計画で決めた生産台数 生産量、価格を自由に 買うモノ、買う量を自由に
決めることができる 決めることができる
に基づいてクルマを生産しています。買う側の私たちも、クルマを
買うかどうかの判断は自由です。生産台数も消費台数も、生産者と
消費者の自由意思に任されているのです。 をしてよいのです。
 市場経済の国では、どんな仕事に就いてもいいし、お金をもって  市場経済は、「私有財産制」を前提に成り立っています。私有財
いれば、好きなモノを好きなだけ買えます。 産制とは、資本主義社会の基礎をなしている社会制度で、すべての
 一方、企業も何をどのくらいつくり、いくらで売るかは自由に決 財産を、国民が個人的に所有(私有)することが認められています。
められます。個人も企業も自己責任の下、基本的には、自由に売買  これによって私たちは、会社や土地、工場・機械などを自分のも

030 031
05
のにできるのです。
1

供給量や価格が自動調整
 私有財産制の下では、誰もが、自分がもつ財産を効率的に利用し

経済を動かす基本的なし くみと法則を理解しよ う
て、より大きな利益を上げようとします。なぜなら、がんばって働
くことで成果が上がれば上がるほど、自分の財産が増え、満足度も
上がるからです。このため誰もが一生懸命に働くようになり、生産
される市場メカニズム
性が上がるメリットがあります。
供給と需要のバランスによって市場価格が決まる。市場価格が
決まれば、供給量・消費量もおのずと決まってくる。
みんながやりたいことをやっていて大丈夫?
 みんなが自分の利益や満足を追求して、やりたいことをやってい
たら、生産や消費に偏りが生じないのでしょうか。 売る側も買う側も満足する価格に落ち着く
 たとえば、パソコンとテレビゲームの生産が儲かるとなれば、ど  スーパーに食料品や生活用品がいつも豊富に並んでいるのは、市
の企業もそればかりを生産し始め、世の中はパソコンとテレビゲー 場で自由な価格競争が行われ、生産量と消費量が自動調整される
「市
ムだらけになりそうです。 場メカニズム」が機能しているからです。
 また、私たちの生活に必要なパンや石けんがあまり儲からないと  市場メカニズムのしくみを、リンゴを例に説明します。
なれば、どの企業もつくらなくなるかもしれません。  まず、農家などの売り手(供給者という)は、自分がつくったリ
 そうなれば、私たちは生活に困るはずですが、現実には、一部の ンゴを「豊作だったから50円くらいでも売る」「100円以上でな
製品が世の中にあふれかえったり、生活必需品の品切れが起こった いと元がとれない」などと、利益が出る価格で販売します。
りすることは、めったにありません。  当然、高く売れればそれだけ利益が増えますから、売り手はリン
 その理由は、市場の中で自由な価格競争が行われると、適切な生 ゴをたくさん市場に出すようになります。
産量、消費量に自動調整される「市場メカニズム」が働くからです。  この供給量と価格の関係を表したグラフを「供給曲線」といい、
 市場メカニズムでは、生産量が多くなりすぎた製品は価格は下が 右肩上がりのラインになります(35ページの図)。
って儲けが少なくなり、生産量が少なくなりすぎた製品の価格は上  一方、私たち(需要者という)は、「おいしければ、1個200円で
がって儲けが増えます。 も買いたい」「80円でないと買わない」といった具合いに、自分の
 そこで自然と、経済活動は最適のバランスに調整され、生産や消 利益(その商品を買うことでどれだけ満足できるか)と価格を照らし
費の偏りはなくなるのです。市場メカニズムについては、次ページ 合わせて、買うかどうかを判断します。
で詳しく説明します。  私たちが何を満足とするかは人それぞれですが、通常、安ければ

032 033
買う人が増えます。この需要量と価格の関係を表したグラフを「需
需要と供給のメカニズム 1
要曲線」といい、供給曲線とは逆に右肩下がりのラインになります。

経済を動かす基本的なし くみと法則を理解しよ う
 一般に、市場では、この供給曲線と需要曲線の交わった点(均衡 価格

点という)の価格でモノやサービスが取引されます。そして、需要
供給曲線
と供給の関係(需給バランス)は以下のようになります。
(売る側の行動)
①需要が供給を上回る
均衡点 価格が高くなるほど、
 売る側が強気になり、価格は引き上げられます。 (市場価格) 供給量は増える
②需要が供給を下回る
 買う側が強気になり、価格は引き下げられます。 均衡
価格
価格が高くなるほど、
 この結果、モノやサービスが高すぎれば安い方向に、安すぎれば 消費量は減る
高い方向に価格は変化し、最終的には均衡点に落ち着きます。均衡
需要曲線
点の価格が、売る側も買う側も満足する人が最も多い価格となります。 (買う側の行動)

神の見えざる手が働いている
均衡量 需要量・供給量
 私たちは、企業が一方的につけた価格で商品を買っています。売
る側の企業と、買う側の私たちが、オークションで双方の希望価格
をいい合って妥協点を決め、価格を決めているわけではありません。 市場価格が決まれば、供給量・消費量も決まる

 しかし、商品の売れ行きが悪ければ、企業は価格を下げ、追随し
て値下げをするライバル企業も出てきます。価格が安くなれば、私  18世紀の英国の経済学者アダム・スミスは、市場が商品の供給
たちも商品を買おうとします。このようにして、しだいに供給と需 量や価格を自動的に調整していく機能のことを、「神の見えざる手」
要のバランスがとれ、価格は均衡点に落ち着いていくのです。 と呼びました。「神の見えざる手」に任せておくことで、世の中の
ニーズに合ったモノやサービスが自然に供給され、経済が安定する
 売る側も買う側も、それぞれ自分の利益が最大になるように行動 と考えたのです。
する市場を「完全競争市場」といい、需要と供給が一致する均衡点  現代の経済学では、完全競争市場の状態にできるだけ近づけ、
「神
の価格を「市場価格」といいます。市場価格が決まれば、市場で取 の手」に任せておくことで、世の中のニーズに合ったモノやサービ
引される量も自然と決まってきます。 スが自然に供給され、経済が安定すると考えられています。

034 035
06
自由な経済活動がもたらす弊害 1

企業間競争は消費者に

経済を動かす基本的なし くみと法則を理解しよ う
 ただし、自由な経済活動は、社会に悪影響をもたらすこともあり
ます。これを「市場の失敗」といい、以下のような問題があります。
①インフレ、デフレを引き起こす
メリットをもたらす
 景気(→P79)が安定しない場合、モノやサービスの価格が急
激に動くことがあります。物価が高騰するのが「インフレーション 企業間競争は、モノ・サービスの価格低下で消費者に恩恵をも
たらし、企業の技術革新や資源の有効活用をうながす。
(インフレ)」、物価が継続的に下がるのが「デフレーション
(デフレ)

です。双方とも、経済に悪影響をもたらします(→P100)

企業間競争は良いことか?
②企業が公害問題を引き起こす  企業がより多くの利益を上げようとして、価格や商品の質などで
 企業が自社の利益を重視するあまり、周辺の環境に配慮せず、
「公 競い合うことを、「企業間競争」といいます。これは、私たち消費
害問題」を引き起こすこともあります。 者に大きなメリットをもたらします。
 たとえば、廃水を浄化せずにたれ流したり、排煙を浄化せずにま  たとえば、パン屋さんが1軒しかなかったら、値段が高くても我
き散らしたりして周辺地域の環境を汚染し、人々の健康に損害を与 慢して、その店で買わざるを得ません。私たち消費者は、とても弱
えることがあります。 い立場になるわけです。でも、ライバル店が2軒、3軒とできれば、
価格競争や品質競争が始まります。
③失業や貧困(所得格差)といった社会問題を引き起こす  競争が始まれば、パン屋さんは「安くておいしいパン」をつくっ
 自由な経済活動下では、企業が従業員を解雇することもあります。 て、ライバル店に差をつけようと努力します。
また、一部の成功者だけが裕福になって、それ以外の人が貧困に陥  その結果、多くの人が魅力を感じなかったパン屋さんは、客足が
とう た
る可能性もあります。 とだえ、競争に負けて店をたたみます。これを「市場淘汰」といい、
自由競争の経済下では仕方のないことです。
 また、市場メカニズムでは任せておけない分野もあります。たと  企業間競争にはこうした厳しい側面があります。しかし、できる
えば、警察や消防などの公共サービスは、利益の追求を目的とする だけ安く、質のいいモノやサービスを購入したいと思っている私た
市場メカニズムではうまく機能しません。そうした市場メカニズム ち消費者にとって、最終的には利益になるわけです。
だけでは対応できない分野を担うのが「政府」(→P26)です。 「競争なんかやめて協調すれば、もっと幸せな社会になるのに

036 037
……」という意見もあるでしょう。
企業間競争と消費者のメリット 1
 でも、もしパン屋さんどうしが仲良く「このパンは500円で売

経済を動かす基本的なし くみと法則を理解しよ う
ろう」と高い価格を設定したら、私たちは高いパンを買うしかなく
企業間競争がない状態
なります。これは消費者にとってありがたいことだとはいえません。

資源の有効活用も促進させる 価格を下げない 買う店を選べない


品質を上げない
 企業間競争は、技術の進歩や資源(原材料や労働力など)の有効
活用にも役立っています。
パン屋 A
 企業が価格競争を勝ち抜くためには、より優れた技術を開発した パン屋 Aで買う

り、資源を効率的に使う方法を編み出したりすることで、
「生産性
の向上」に努めなければならないからです。
企業
 生産性の向上とは、技術革新(新しい技術の発明)によって、生
消費者
産設備の能力を上げたり、資源を効率よく使ったりすることで、こ
れまでよりも少ない原材料や少ない稼働時間で、同じような製品量
をつくれるようになることです。
企業間競争がある状態
 こうした企業の努力は経済全体にも恩恵をもたらします。
 たとえば、ある製品を1個製造するときに石油が10リットル必 価格を下げる!
要だったとします。ところが、新しい技術を使い5リットルででき 品質を上げる! 買う店を選べる

ました。すると、ここで使わずにすんだ石油5リットルは、他の製
パン屋 A
品の生産に回すことができます。これは、限られた資源である石油
パン屋 A 、B 、C の
の有効活用という点からみて、とても望ましいことです。 どこかで買う

 自動車の燃費が年々良くなっているのも、企業努力による技術革 パン屋 B
企業

新の成果です。さらに、日本の自動車メーカーは、地球温暖化や原
パン屋 C
油価格の高騰を背景に、ハイブリッド車や電気自動車、燃料電池車
消費者
といった新技術の実用化の努力をし、成果を上げています。これも
競争がもたらしたメリットなのです。

038 039
07
鉱物などが採掘できる国は限られています。これを「生産要素の地
1
域的偏在」といいます。生産要素とは、製品・サービスの生産に使
自由な貿易は

経済を動かす基本的なし くみと法則を理解しよ う
われる資源のことです。

生活を豊かにする  このように生産技術や資源の状況は、国によってバラバラなので、
各国は自らが得意とする分野に特化して生産します。これを「国際
分業」といいます。
各国は得意分野の生産に専念して、不得意分野の生産は他国に  貿易とは、「自国の得意とするモノを輸出し、不足しているモノ
任せる。こうした貿易によって商品を交換するのが効率的。
を輸入する取引によって、お互いに利益を得ようとする経済活動の
こと」といえます。
貿易は利益を得るための国どうしの取引
 現在、多くの国で「貿易」が活発に行われています。貿易とは、 スミスとリカードが説いた貿易理論
国境を越えた製品・サービスの取引のことです。  英国の2人の経済学者、アダム・スミスの「絶対生産費の理論」と、
 日本経済は、貿易で大きく発展してきました。主な輸出品は、自 デビッド・リカードの「比較優位の理論(比較生産費説)」で、経
動車、半導体などの電子部品、鉄鋼などの工業製品。輸入品は、原 済における貿易の役割がうまく説明されています。
油、液化天然ガス(LNG)、食料品などの資源が中心です。得意 ①絶対生産費の理論
なハイテク技術を生かした工業製品を海外に売って、国内にはほと  モノの価値は、生産のために必要な「総労働時間」によって決ま
んどない天然資源を、海外から主に買っているわけです。 るという考え方に基づいています。得意分野の生産性は高いので、
 海外に目を向けると、日本とは逆の国も多くあります。たとえば 総労働時間は短くなります。そこで、各国が得意分野の生産に特化
天然資源が豊富なロシアは、原油や天然ガスなどの燃料・エネルギ して低コストで商品を生産し、それを各国間で交換すれば、各国の
ーを多く輸出し、自動車や家電製品などの工業製品を多く輸入して 生活がより豊かになるという考え方です。
います。ロシアは、天然ガスの生産量では世界第1位、原油の生産
量でもサウジアラビアを抜いて現在世界第1位です。 ②比較優位の理論
 世界には、日本や米国のように高い生産技術をもつ国もあれば、  ある国が複数の分野で他国よりも高い生産性をもっていた場合に、
まだ高度な技術をもっていない国もあります。これを経済学で「生 どうすればいいかという考え方です。その場合も、その国は最も得
産技術の地域的格差」といいます。 意な分野の生産に専念し、それ以外の分野の生産は他国に任せたほ
 また、天然資源は地球上の至るところにあるわけでなく、原油や うが効率的であるという考え方です(42ページの図)。

040 041
経済学から経済の法則を学ぶ①

08
比較優位の考え方 1

人間が選択するときに起こる

経済を動かす基本的なし くみと法則を理解しよ う
希少性とトレードオフ
先進国 A 国 後進国 B 国

自動車 小麦 自動車 小麦
地球上に存在するすべてのもの(資源)は有限であり、これを
希少性という。
B国より A国より劣るが
得意 不得意
得意 自動車より得意

人間は常に「選択」を行っている
 これまでさまざまな経済活動について説明してきましたが、経済
活動には「法則性」があります。「経済学」とは、一言でいうと、
その法則性をみつけ出そうとする学問です。法則性を知れば、現実
得意な自動車の生産に特化 得意な小麦の生産に特化
の経済活動について、なぜそれが起きたのかという理由を解明する
ことができます。
自動車の生産を 小麦の生産を
分業 分業  経済学が法則性をみつけ出そうとする際、人間の「選択する」と

自動車を輸出 いう行動に着目します。人間は日々の経済活動において、複数の選
択肢の中から、何らかの理由で1つを選択し続けていると考えるの
A国 B国 です。たとえば、あなたは、どんな企業に勤めるのか、どんな商品
を買うのか、どこに旅行するのか—といったことについて、選択
小麦を輸出
を行っています。
 人間は選択をする際、「自分が最大限の満足を得ることができる
選択肢を選ぶ」と考えるのが経済学の基礎となる考え方です。もち
ろん、現実には、人間の選択が必ずしも合理的とはいえないケース
生産力が劣る国でも、比較的得意な分野に
特化したほうが、効率的に生産できる もありますが、経済学では割り切って考えているわけです。これか
ら、経済学の基本的な考え方と法則性について説明します。

042 043
希少性の考え方 トレードオフの考え方 1

経済を動かす基本的なし くみと法則を理解しよ う
❶ ナイターを ❷ 残業そして
  みて楽しむ   給料が増える

商品、お金、
労働力、
人間の欲望は「無限」
時間はすべて「有限」

一方をとると他方を失う
買い手が要求する量よりも、実際の量が少ない状態が「希少性」 「トレードオフ」の状況

ある以上、すべての人間の欲望を満たすことは物理的に不可能とい
「希少性」によって人間は選択を迫られる うわけです。
 最初に説明するのは「希少性」という考え方です。  すべての資源に希少性があるからこそ、人間は選択を余儀なくさ
 例え話をします。ある日突然、すべての人が大金持ちになったと れます。「全部ほしい」「全部やりたい」というわけにはいかず、何
します。すると、たくさんの人が、有り余るお金で高価な宝石や高 かを選択していかなければならないのです。
級マンション、高級車など、それまで手の届かなかった高級品をい
っせいに買い始めます。 一方を選ぶと他方を失う「トレードオフ」
 その結果、いずれ高級品の在庫がなくなり、どこにいっても買え  私たちが選択をする際、「トレードオフ」という状況が発生する
なくなります。当然ですが、商品の数には限りがあるからです。 ことがあります。トレードオフとは、限られた条件の下で、複数の
「希少性」とは、このように買い手が要求する量よりも、実際の量 選択肢の中から、どれか1つを選ばなければならないことです。
が少ない状態のことをいいます。  たとえば、ある日、会社員のあなたが以下のような選択を迫られ
 経済学は、人間の欲望は「無限」であり、地球上に存在するすべ たとします。両方とも19時〜21時の時間帯です。
ての「資源」は「有限」であると考えます。ここでいう資源とは、 ・巨人対阪神のナイターをみにいく
いわゆる原材料だけではなく、商品を生産するために必要なすべて ・残業をする
のものを指します。お金、労働力、時間も資源です。資源が有限で  ここであなたの頭に浮かぶのは、

044 045
経済学から経済の法則を学ぶ②

09
・ナイターにいく=大好きな野球を楽しめる
1

選択することで失ってしまう
・残業する=残業代で給料が増える

経済を動かす基本的なし くみと法則を理解しよ う
という方程式です。あなたはこの2つの選択肢を天秤にかけて、自
分の満足度が高いほうを選びます。
 一方をとると他方を失うので、この2つの選択肢は「トレードオ
機会費用という利益
フの関係にある」といいます。ナイターをみにいく楽しみと、残業
することで増える収入との間には、トレードオフの関係があります。 ある選択肢を選んだとき、別の選択肢を選んでいれば得られた
であろう利益を「機会費用」という。

企業は経営資源を使って利益を最大化する
 先に述べたように、人間は選択する際、最大限の満足度を得られ あきらめることになった利益が「機会費用」
るものを選びます。  私たちが何かを選択するとき、選択を決定する要因の1つとなる
 では、企業にとっての満足度とは何でしょうか。それはいうまで のが「コスト」です。
もなく、「より多くの利益を得ること」です。  コストとは、何かをするために、代わりに支払わなければいけな
 先に「資源」について説明しましたが、企業がもつ資源のことを、 い費用です。たとえば、商品を買う際にはお金のコストがかかりま
「経営資源」といい、以下の3つがあります。 す。テレビをみる際には、時間のコストがかかります。
①ヒト(従業員の労働力)  コストについて考える際、経済学の「機会費用」という考え方を
②モノ(工場や設備) 知っていると、合理的な選択をするのに役立ちます。
③カネ(資金)  機会費用とは、ある選択肢を選んだために、あきらめることにな
 しかし、ヒト、モノ、カネもやはり有限です。世界的に名の知れ った利益のことです。いい換えると、別の選択肢を選んでいれば得
た企業でも、もてる資金量は有限ですし、従業員を24時間働かせ られたはずの利益のことです。
るわけにもいきません。  選ばなかった選択肢が複数ある場合は、その中で最も利益が大き
 そこで企業は、限られた経営資源をうまく使って、利益をできる い選択肢(次善の選択肢)の利益が機会費用です。
だけ大きくすること(利益の最大化という)を目指して活動します。  たとえば、大学卒業後、A社に就職すれば年収500万円(固定)
 まとめると、個人は自分の満足度を高めるため、企業は利益を最 が得られるとします。一方、大学院に進学して博士課程を修了すれ
大化するために、限られた資源をうまく使うというのが、経済の基 ば、B社に就職できて、年収は同じですが、院卒手当てが年間50
本法則というわけです。 万円もらえたとします。両社とも定年は60歳です。

046 047
機会費用の考え方 女性が出産・子育てで失ってしまう機会費用 1

経済を動かす基本的なし くみと法則を理解しよ う
単位:万円(逸失率以外)
選択肢
大卒平均
給与 25,377

A B
就業を継続した場合 退職金 2,269
合計 27,645
の利益 の利益 給与 23,503
退職金 2,234
育児休業を取得して働き続けた場合
合計 25,737
逸失率 6.9 %
給与 16,703
選択して手に入れた利益 あきらめることになった利益 出産退職後子どもが6歳で 退職金 1,006
再就職した場合 合計 17,709
逸失率 35.9 %
給与 4,827
出産退職後パート・アルバイトとして 退職金 86
機会費用
子どもが6歳で再就職した場合 合計 4,913
逸失率 82.2 %
出典:内閣府「平成17年版国民生活白書」の機会費用の推計結果
①大学院に進学した場合の機会費用
 500万円の年収を得る機会を大学院在学中の5年間失っている を「機会費用」として推計しています(上の図)。
ので、機会費用は2500万円になります。  大卒の女性標準労働者が定年(60歳)まで勤務した場合の総賃
②大学卒業後、A社に就職した場合の機会費用 金は2億7645万円で、大卒女性たちが28歳と31歳のときに子ど
 B社に就職すれば得られていた院卒手当てを33年間(60歳− もを産んだ場合、失ってしまう賃金を計算しています。
27歳)分、失っているので、機会費用は1650万円となります。  それによると、総賃金の逸失率は、育児休業をとって働き続けた
  場合が6.9%、出産退職後子どもが6歳で再就職した場合は35.9
 機会費用だけをみて考えれば、大卒後にA社に就職するほうが有 %、そして出産退職後パート・アルバイトとして子どもが6歳で再
利です。ただし、この例は大学院の学費を考慮していないなど、ご 就職した場合は82.2%となっています。
く単純化していますし、実際の機会費用は他にあるかもしれません。  このように、働き手としての女性が出産・育児によって生じる機
会費用はとても大きいのです。失う収入の大きさを考えると、結婚
出産退職によって生じる女性の機会費用は? しない女性、子どもを産まない女性が増える理由もわかります。
 内閣府の平成17年版国民生活白書「子育て世代の意識と生活」  政府が本気で人口減少を止めたければ、個人がそうした合理的な
では、女性が出産・子育てによって得られなくなってしまった所得 選択をすることをよく理解して、対策をとることが必要でしょう。

048 049
経済学から経済の法則を学ぶ③

10
3つのインセンティブ 1

選択のメリットを訴えて行動に

経済を動かす基本的なし くみと法則を理解しよ う
❶ 報酬によるインセンティブ

影響を与えるインセンティブ 金銭的な 与える 行動を


メリット 起こす
人々に刺激を与えて、特定の行動を起こさせたり、自粛させた
りするのがインセンティブ。

❷ ペナルティによるインセンティブ
インセンティブとは意思や行動を変化させる刺激
 私たちの経済活動は、「インセンティブ」に大きく左右されてい 金銭的な 与える 行動を
ます。インセンティブとは、人間や組織が意思決定をする際、行動 デメリット 自粛する

を変化させるような外部からの刺激のことです。
 たとえば、あなたがついつい付録に引かれて雑誌を買ってしまっ
た場合、付録というインセンティブが、あなたの購入意欲を刺激し ❸ 非金銭的なインセンティブ
て、雑誌を買わせたわけです。

名誉、地位、快適・ 与える ・行動を起こす 


不快、楽しさ、喜び ・行動を自粛する
 インセンティブはさまざまな分野で活用されていますが、その種
類は大きく3つに分けられます。
①報酬によるインセンティブ  政府が実施したエコポイント制度やエコカー減税・補助金もそう
 アメとムチでいうと、「アメ」の役割です。金銭的なメリットを です。対象商品を買うと消費者が得をしますから、実施期間中は、
与えて、人々に行動を起こさせます。給料を払う、価格を安くする、 政府の思惑どおり、エコポイント対象の家電製品や、エコカー減税・
補助金を出すなどの方法があります。 補助金対象の環境対応車がよく売れました。
 たとえば、ホームランを40本以上打つと、2000万円のボーナ
スが出るしくみを設ければ、野球選手はやる気が出て成果も上がり ②ペナルティによるインセンティブ
ます。  アメとムチでいうと、「ムチ」の役割です。金銭的なデメリット

050 051
経済学から経済の法則を学ぶ④

11
を与えて、人々に行動を自粛させます。罰金制度を設ける、延滞料
1

取り戻すことができない費用
を支払うしくみをつくるなどの方法があります。

経済を動かす基本的なし くみと法則を理解しよ う
 たとえば、自動車のスピード違反や駐車違反などの交通ルールを
破れば、罰金が科せられます。罰金を払いたくないため、みなが交
通ルールを守るようになります。
がサンクコスト
 また、レンタルしたCDやDVDの返却が遅れると延滞料がとら
れるので、期限までにきちんと返そう、となります。 過去に投資した費用(サンクコスト)はあきらめ、新たに投資す
る費用と、それによって得られる利益を天秤にかける。

③非金銭的なインセンティブ
 お金以外のものがインセンティブとなります。たとえば名誉、社 サンクコストはもう回収できない費用
ふくすいぼん
会的地位、快適・不快、楽しさ、喜びなどです。 「覆水盆に返らず」ということわざがあります。一度費やしたコス
 たとえば、特別においしいわけではないが、スタッフの笑顔がい ト(お金や時間など)は取り戻すことができないという意味です。
いから通っているレストランは、快適のインセンティブが働いてい  経済学では、取り戻すことができないコストを、
「サンクコスト
(埋
ます。食事はおいしいが、スタッフが無愛想だから二度と行かない 没費用)」といいます。
レストランは、不快のインセンティブが働いています。  現実の経済活動では、サンクコストにとらわれて合理的な選択が
できないケースがたくさんあります。過去に投資したお金や時間に
インセンティブは経済活動に影響を及ぼす とらわれることを「サンクコストの呪縛」といいます。
 テレビや新聞・雑誌などさまざまな媒体に掲載される商品の広告  ダムや道路の建設などの公共事業において、政府がサンクコスト
をみると、インセンティブがあふれています。 の呪縛に陥っている例がよくみられます。
や ん ば
 私たち消費者は、広告が発するインセンティブに影響を受けて、  たとえば、ニュースで大きく取り上げられた群馬県の八ッ場ダム
モノやサービスを購入するわけです。 は、総事業費4600億円のうち、すでに7割の3200億円が使われ
 人間に行動を起こさせるインセンティブとは、その人にとって大 ていました。民主党主導の政権に交代したことで、このままダム建
きな見返りが得られることを示すものです。 設を続けるべきか否かの大議論が巻き起こったのです。
 インセンティブをうまく活用できれば、人々を思うように動かし、  経済学で考えると、どちらの選択が合理的でしょうか。
大きな効果を上げることができます。企業なら売り上げが大きく伸  すでに投資した3200億円は、取り戻すことができないサンクコ
び、政府なら政策がねらいどおりに成功します。 ストと考えて無視します。そして、これからダムが完成するまでに

052 053
かかる費用と、ダムができることによって得られる利益をはかりに
サンクコストの考え方 1
かけて、次のように判断します。

経済を動かす基本的なし くみと法則を理解しよ う
・今後かかる費用 > 完成後に得られる利益 →中止
開発
現在 完成
・今後かかる費用 < 完成後に得られる利益 →継続 スタート

これまでの 今後かかる 完成後の


投資額 費用 利益
 経済学でいう合理的な選択とは、サンクコストをきっぱりあきら
めることなのです。 150億円 20億円 X億円

今後のコストと完成後の利益の比較で判断する サンクコスト 考慮すべきコスト


 企業も、サンクコストの呪縛に陥るケースがあります。
取り戻すことができない。
 たとえば、A社が最新の淡水化装置開発プロジェクト(開発予算 無視すべき

170億円)にこれまで150億円投資しているとします。あと20億
経済学の考えでは...
円かければ、1年で新装置が完成する予定です(右の図)

 その矢先、ライバル企業のB社が、A社が開発中の製品よりも優
れた淡水化装置を新たに発表したとします。 ・20億円 > X億円  事業中止
 こんなとき、経営者や開発プロジェクト担当者は、
「これまで多 ・20億円 < X億円  事業継続

くのお金と時間をかけたのだから無駄にするのはもったいない。こ
のままプロジェクトを続けよう」と考えがちです。 プから映画のDVDを借りてきましたが、内容がまったく面白くな
 しかし、この考え方こそ「サンクコストの呪縛」です。合理的に いとします。お金を払って借りてきたので、最後まで我慢してみて
判断するなら、開発にかけた150億円と時間は、サンクコストと しまうというのは、サンクコストの呪縛です。
して無視します。  経済学では、レンタル料金は取り戻すことができないサンクコス
 そして、これからかかる費用と完成後の利益を比べて、プロジェ トなので無視します。そして、みたくもない映画に貴重な時間を使
クトの続行か中止かを判断するのが、経済学的には正しい判断です。 うのは、合理的ではないと考えます。
 みたあとに残るのは、時間を浪費してしまったという後悔と目の
あなたも経験があるはず 疲れぐらいでしょう。それよりも、その時間を何かほかの有意義な
 個人もサンクコストの呪縛に陥ります。あなたがレンタルショッ ことに使おうと考えます。

054 055

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