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[ 海損・貨物 ] 2010 年 8 月 11 日

MSI Marine News トピックス


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カンボジアの経済特別区(Special Economic Zone : SEZ)

近年目覚ましい経済成長をとげているカンボジアは、ベトナムに続く投資先として新たに注目を
集めつつあります。1991 年の内戦終結以降、多くの国からの支援によって経済成長を実現させてき
たカンボジアにとって日本は最大の援助国である反面、民間投資についてはこれまで積極的に行わ
れてきたとは言えず、中国・韓国・アメリカなどの後塵を拝してきました。しかしながら昨今、ベ
トナムの人手不足やタイの政情不安などアジア各国で問題が顕在化してきていることから、日本の
企業もいよいよカンボジアへの投資を本格的に検討し始めているようです。
今回は、カンボジアへ進出を検討する際の重要な要素のひとつである経済特別区(以下 SEZ と表
記)と、また、その中でも日本の政府開発援助(ODA)によって整備されたことから日系企業の進出
に対して大きな期待が寄せられているシアヌークビル港 SEZ に関してご説明します。

1. カンボジアにおける経済特別区とは
経済特別区(SEZ)とは、経済発展のために法的、行政的に特別な地位を与えられている地域を指
します。カンボジアでは 2005 年に経済特別区制度が導入されました。SEZ 進出企業は適格投資案件
(QIP※)に与えられる通常の優遇措置に加え、全ての業種において付加価値税(VAT)が免除されます。
※QIP:Qualified Investment Project、適格投資プロジェクト

現在、カンボジア国内で認可を受けている SEZ は 21 箇所あります。その所在地は下図の通りで、


プノンペンを除くと、そのほとんどが沿岸部もしくはタイ、ベトナムとの国境付近に位置している
ことがわかります。国境付近に位置することのメリットとしては、カンボジア側から見た場合には
タイのレムチャバン港、ベトナムのサイゴン港域などへのアクセスがしやすいことや、電力供給な
どにおいて自国より進んだタイ、ベトナムのインフラを利用することが可能であること、一方タイ
やベトナム側から見た場合には、自国の隣接地で安価な労働力を手に入れることができること、な
どが挙げられます。

は SEZ 所在地で数字は区の数 カンボジア開発評議会「カンボジアの投資環境 2010」をもとに作成


2. シアヌークビル港 SEZ
カンボジア唯一の国際深水港であるシアヌークビル港
に隣接するこの SEZ は、日本の ODA により 2009 年秋に着
工され、現在、入居に関する契約条件など最終調整の段
階に入っているようです。この SEZ に対しては特に日系
企業の進出が期待されており、カンボジア政府は積極的
な誘致活動を行っています。
面積こそ 70ha とそれほど大きくはありませんが、国際
深水港に隣接していることが最大の強みであり、CFS(コ
ンテナ・フレイト・ステーション)やメンテナンスオフィ
スなどを敷地内に有しています。このことから、シアヌ
ークビル港経由で輸入した原材料を SEZ 内で加工し、そ
の製品を再び同港経由で輸出するという輸出加工貿易の
形態を主とする製造業にとっては、最小限のコストおよ
びリードタイム※による輸送が可能となり、大きなメリ
ットを享受することが期待できます。
出典:Sihanoukville Autonomous Port パンフレット
※リードタイム:生産・流通・開発などの現場で、工程に着手してからすべての工程が完成するまでの所要期間のこと

3. シアヌークビル港周辺インフラと課題
水路に関しては、シアヌークビル港の貨物取扱量は年々増加している(2008 年のコンテナ取扱量
は 258,775TEU※)一方で輸出貨物量はまだまだ少なく、また定期船の運航も少ないため、カンボジ
ア発の貨物は、定期船が多く就航するベトナムのサイゴン港域や昨年開港したカイメップ港域など
ベトナム南部の国際港まで艀で運ぶケースが多いようです。しかしながら、今後この SEZ が本格稼
働を開始すれば、シアヌークビル港の貨物取扱量の増加、およびその結果としての就航便数の増加
も期待できます。
陸路に関しては、首都プノンペンとシアヌークビルを結ぶ国道 4 号線が整備されており、その距
離はおよそ 230km、車で約 3 時間半でアクセス可能です。また、今後シアヌークビル港の貨物取扱
量が増加していくであろうことを考慮した場合、トラックの輸送能力には限界があることから、鉄
道輸送の整備も期待されています。シアヌークビル港にはシアヌークビル駅が隣接していますが、
カンボジア国内の鉄道は内戦で受けた損傷の修復がなされていないため、未だ期待される貨物輸送
に耐えうる状態にはありません。しかしながら現在、アジア開発銀行(ADB)によるリハビリプロジ
ェクトが実施されており、その完成が待たれます。さらにインフラ整備が進むことでカンボジアが
第二のベトナムとなり得るかどうか、今後の動向が注目されます。
※TEU:twenty-foot equivalent unit、20 フィートコンテナ換算

出典:Sihanoukville Autonomous Port パンフレット(シアヌークビル港の様子)


―― CD 発行予定のお知らせ ――
弊社では 8 月末に CD-ROM 版海外物流事情シリーズ「ベトナム物流事情Ⅲ」を発行する予定です。第
二東西経済回廊の現状を紹介する中でカンボジアの経済特別区についても触れておりますので、こ
ちらも併せてご参照頂ければ幸甚に存じます。
参考:「2010 年カンボジア投資セミナー」独立行政法人国際協力機構 編
「メコン地域開発研究-動き出す国境経済圏」調査研究報告書 アジア経済研究所
Sihanoukville Autonomous Port 作成パンフレット
JICA WEB サイト:http://www.jica.go.jp

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