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勤医協中央病院看護技術マニュアル 2008 版

9 硬膜外鎮痛法と看護 1/6

9.硬膜外鎮痛法(
硬膜外鎮痛法(持続)
持続)と看護

1.概念
1.概念
硬膜外腔に局所麻酔薬、麻薬等を注入する事によって鎮痛する方法

2.硬膜外
2.硬膜外カテーテル
硬膜外カテーテル留置
カテーテル留置の
留置の適応疾患

術後痛
慢性痛 帯状疱疹 外傷性頸部症候群
帯状疱疹後神経痛 慢性膵炎
腰椎椎間板ヘルニア 糖尿病性ニューロパチー
上下肢反射性交感神経性萎縮症 開胸術後痛
頸椎症 がん性疼痛
特殊な例 尿路結石(体外衝撃波による結石破砕術の麻酔
目的)分娩痛

3.硬膜外鎮痛法
3.硬膜外鎮痛法の
硬膜外鎮痛法の利点、
利点、欠点(BY:
欠点(BY:小坂義弘
(BY:小坂義弘)
小坂義弘)

利 点 欠 点
1 心臓、肺、食道等の手術以外は頚部から下の 特殊な針やカテーテルなどの準備が必要であ
身体各部の手術の麻酔に適応出来る。 る事。
2 任意の脊髄分節の麻痺が得られる。 硬膜外腔の確認が出来る手技に熟達している
必要がある事。
3 麻酔薬の濃度を変える事により、交感神経の 麻酔の発現、完成が脊髄麻酔に比較して遅い
みの麻痺から充分な知覚や運動麻痺までを 事。
得る事が出来る。
4 持続硬膜外麻酔法では長時間の手術の無痛 全身脊椎麻酔の危険がある事。
はもとより、術後も長時間にわたって、除痛
を図る事が可能である。
5 脊髄腔内に直接薬液を注入しないので、脊髄 長時間の手術では局所麻酔薬による中毒症を
麻痺に比較して合併症の発生は少ない。 引き起こすおそれがある事。
6 呼吸や循環系をはじめ、生理学的変化に及ぼ 麻酔が高度になると血圧が低下する事、また、
す影響は脊髄麻酔より少ない。 全身麻酔を併用した場合、使用吸入麻酔薬に
よっては著明に血圧の低下を見る事がある
事。
7 呼吸系や循環系をはじめ、生理学的変化に及 頚部、胸部、上腹部において、脊髄神経の麻
ぼす影響は脊髄麻酔より少ない。 痺は充分でも迷走神経が遮断されていないの
で、内臓の牽引によって種々の迷走神経反射
が起こりうる事。
8 全身麻酔を併用すると応用手術の範囲は拡 このほか種々の神経系などの合併症が生じる
大し小児外科手術をはじめ、心、肺、食道の 事。また、長期間の持続硬膜外麻酔法では感
手術にも使用出来る。また、全身麻酔薬の使 染を見る事がある。
用量を少なくする事が可能である。

2008 年 3 月改定
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利 点 欠 点
9 脊髄麻酔では難しい上腹部の手術、たとえ
ば、肝、胆道系の手術が可能となり、高齢者
では胃切除の麻酔にも応用出来る。
10 ペインクリニックの領域でも活用出来る。

4.硬膜外
4.硬膜外穿刺部位
硬膜外穿刺部位と
穿刺部位と目標麻痺域など
目標麻痺域など

手術部位、
手術部位、穿刺部位、
穿刺部位、薬剤量 (麻酔の研修ハンドブックp319 表 13-5 より)
手術部位 穿刺部位 必 要 と す る 麻 薬液量 濃度(%)
酔の広がり (ml) リドカイン ブピバカイン
(キシロカイン) (マーカイン)
頚部 C5~C6 C2~T1 5~6 1 0.25
上肢 T1~T2 C4~T4 10~15 1 0.25
胸部 T5~T6 T1~T10 15~20 1 0.25
上腹部 T7~T8 T4~T12 15~20 1.5~2 0.5
下腹部 T12~L1 T6~L3 15~20 1.5~2 0.5
鼠径部 L1~L2 T10~S5 10~15 1.5~2 0.5
臀部
下肢 L4~L5 L1~S5 10~15 1.5~2 0.5
直腸 仙骨 S1~S5 10~15 1.5~2 0.5
会陰部

5.禁
5.禁 忌

1 ショック状態の患者、例えば消化管穿孔や腸閉塞の末期。子宮外妊娠疑い、分娩弛緩の至急
の手術。
2 高度の脱水、貧血などで循環量が不足していると思われる症例。
3 背部の皮膚に感染症があり、硬膜外麻酔後に感染の危険がある時。
4 穿刺部位の知覚の脊髄、脊椎などに悪性腫瘍の転移がある時。
5 凝固系の疾患や抗凝固療法を受けている患者。
6 その他、硬膜外麻酔が不適当と考えられる症例や硬膜外腔の穿刺が困難な症例など。
7 患者の同意、協力が得られない場合。
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6.合併症
6.合併症

1 血圧低下 7 神経根損傷
2 硬膜損傷、頭痛 8 脊髄損傷
3 急性局麻中毒、血管内注入 9 嘔気、嘔吐、痒み
4 感染、硬膜外膿瘍 10 尿閉
5 硬膜外血腫 11 薬物などの誤注入(硬膜外腔にはある程度緩衡作用が
6 硬膜外膿瘍 あり、重篤な後遺症は報告されていない)

7.使用
7.使用される
使用される薬剤
される薬剤

●カルボカイン
カルボカイン(
カルボカイン(1%.2%)
.2%) 作用時間は短く中毒になりにくい
●アナペイン
アナペイン(
アナペイン(0.2%
0.2%.0.7%)
.0.7%) マーカインに比べて中毒性が少ない
●マーカイン
マーカイン(
マーカイン(0.125%
0.125%.0.25%
.0.25%.0.5%
.0.5%) 濃度が濃くなると中毒性になりやすい
●キシロカイン
キシロカイン(
キシロカイン(1%.2%)
.2%)
●フェンタネスト
フェンタネスト(
フェンタネスト(麻薬)
麻薬) ●塩酸
塩酸モルヒネ
塩酸モルヒネ(
モルヒネ(麻薬)
麻薬) ●レペタン
レペタン

8.カテーテル
8.カテーテル挿入部位
カテーテル挿入部位の
挿入部位の消毒

用意するもの
用意するもの
1 0.5%グルコン酸クロルヘキシジン(マスキンRエタノール液 0.5W/V%)
2 ノベクタンスプレー

3 ネオヨジン液

4 ステリーテープ

5 オプサイト

6 シルクテープ

7 温タオル

8 滅菌手袋
手 技
1 ウエルパスで手指消毒後オプサイトを外す。

2 滅菌手袋を着用し 0.5%グルコン酸クロルヘキシジン(マスキンRエタノール液 0.5W/V%)


で周囲の皮膚まで含めて消毒する。
3 ステリテープを外して更に 0.5%グルコン酸クロルヘキシジンで周囲に皮膚まで三回消毒
する。
4 ノベクタンスプレーでカテーテルを皮膚に粘着させる。

5 ネオヨジン液をカテーテル挿入部位に少量付ける。

6 ステリテープをその上から固定。

7 オプサイトを貼りカテーテルをサージカルテープで皮膚に固定する。
~麻酔科外来での消毒は殺菌性、速効性を目的に 0.5%グルコン酸クロルヘキシジンを使
用するが、病棟ではイソジンで構わない~

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9.消毒回数
9.消毒回数

1 硬膜外カテーテル挿入翌日は出血など確認の為必ず行う
2 ペイン目的の患者は麻酔科管理で外来で行う。(病棟は手術後の患者で 3 日~1 週間
で抜去されるので行っていない)
3 休日の場合は 72 時間あかないように配慮する
4 麻酔科外来管理以外の患者様においては各病棟の基準に準じる(基本は週 3 回)

10.抗生剤投与
10.抗生剤投与
挿入されたら、感染予防として抗生剤が投与される。

11.持続硬膜外注入
11.持続硬膜外注入について
持続硬膜外注入について

持続注入ポンプ
持続注入ポンプの
ポンプの種類
PCA ポンプ 2ml/h 4ml/h
*卵形でワンプッシュできるが管理上は患者自身に押
させてはいない
シリンジポンプ(テルモ) 50ml

硬膜外専用フィルター
黄色のフラットフィルター PERIFIX (B―BRAUN社)
エクステンションチューブ XI-L50, XI-L100

項目 手順等
1 フィルター ・1回注入法を行う場合においてのみ接続する。
・その場合、硬膜外カテーテルのコネクターとフィルターの相性が良くな
いので必ずエクステンションチューブ XI-L50 を間に接続。
・手術後の患者は 1 週間前後で抜去されるのでフィルターは交換していな
い。
・PCA ポンプをつけるときは、フィルターをはずす。
2 一回注入法 持続投与のみでは痛みが緩和しない場合や、痛みを伴う処置などの場合に
一回注入法を併用する。
3 必要物品 注入量にあわせたシリンジ、注射針、指示の局所麻酔薬 酒精綿(70%エ
タノール綿)、血圧計、聴診器
4 注入方法 ①シリンジに指示の局所麻酔薬を指示の量だけ吸い上げ、明記する。
②患者様に施行の旨を告げ同意が得られれば安静臥床とし施行前の血圧
測定をする
③硬膜外チューブの三活である事を確認しキャップを外し酒精綿で消毒
をする
④シリンジを接続し三活を患者側に回し陰圧をかけて空気、血液、透明液
(1ml 以上)などが逆流しない事を確認する。

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項目 手順等
⑤注入速度は 30 秒から 1 分位かける。カテーテルが細いのでこの時ある
一定の抵抗がある。ルートが屈曲していないか等問題がないか確認す
る。
注入出来ない程の強い抵抗がある場合は中止し医師に報告する。
急速に注入すると背部の痛みを訴える場合がある。ゆっくりと一分位か
けて注入しても痛みが生じる場合は注入を中止し、医師に報告する。
⑥無事に注入終了後は三活を元にもどし、三活部に残った薬液を酒精綿に
捨てて(感染予防の為)70%エタノール酒精綿で消毒後キャップをする。
⑦注入前後で、硬膜外刺入部が漏れていないか、出血は無いか確認する。

5 観察 ・注入前、注入直後、5分後、10分後、15分後、30分後、60分後
血圧測定をする。
・症例により、回数を減らす事は可能。
・患者様にはその間安静臥床としてもらう。
・注入薬剤の影響で血圧が下がる事があるが、通常は安静下で回復する。
・回復しない場合や極端な血圧の低下は補液の必要となる事もあるので、
医師に相談する。
6 副作用 、 観察 ・血圧低下、嘔気、顔面蒼白、生あくび
項目 ・排尿困難
・呼吸停止、意識消失
・徐脈
・頭痛
・注入時痛や挿入局所の圧痛
・発熱

7 看護 ・持続硬膜外注入がきちんと決められた流量通りに注入されているか流量
と残量を確認する。
・持続注入ポンプの中身が医師の指示通りの中身である事を指示板と確認
する。
・カテーテルが途中クランプされていないかどうか確認する。
・カテーテルと接続がゆるんでいないか、はずれていないか、もれていな
いか確認する。
・カテーテルが途中抜けたりしないようなテープ固定と管理。
・持続注入ポンプやルート、カテーテルが破損されていないか確認する。
・刺入部の発赤、腫脹、出血、周囲の皮膚の状態のチェック。
・眠気、痒み、脱力感、知覚異常・麻痺、等の副作用の確認。
・背部痛。
・バイタルチェック。

12.ワンポイント
12.ワンポイント

Q1.カテーテルをクランプすると詰まってしまうのか?
A 一日位クランプしても流れなくなる事は無いようだ。しかし、薬を流していないと感染の
確率が高くなるようなので薄い濃度で流量を少なくするか、二、三日もクランプした場合
は抜去した方が安全である。

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Q2.
Q2.途中から液が漏れている場合
A 接続が緩んでいる場合は、しめる事で改善する。接続が外れていた場合は、フィルターよ
り末梢の場合はフィルターごと交換する事が出来きる。硬膜外カテーテルのコネクター(白
い部分)が外れていた場合はカテーテル先端を消毒して先端を数㎝切る事でもう一度接続
しなおす事は可能だが主治医、麻酔科医に集中すること。
Q3. 硬膜外カテーテルが途中切れた、外れた場合
A 肩より身体側で切れた場合は再挿入が必要となります。すぐに主治医、麻酔科医に報告し、
コネクターが外れた場合はマスキンRエタノール液 0.5W/V%、イソジン消毒し主治麻酔科
医に連絡して接続可能です。
Q4. 硬膜外鎮痛を行っているのに痛いと患者様が言っている
A 考えられるケースとしては
①硬膜外腔のカテーテルが挿入されていない、途中抜けてきた、挿入位置が悪い
②カテーテルは硬膜外腔に入っているが知覚神経に薬液が到達していない
③硬膜外だけでは緩和出来ない痛み
④持続注入器がクランプされている
上記の原因がないか確認し主治医・麻酔科医に相談する

Q5. カテーテルは何日も入れていて構わないのか?
A 長期になるとカテーテルの周りの組織が異物反応を起こして隙間が出来る為薬が漏れてく
る事がある。その場合は医師に相談する。
Q6.入浴について
Q6.
A 入浴は禁止だが、オプサイトV3000 等で保護すればシャワー浴は可能。刺入部の保護をし
持続注入器は接続部で外し、身体側の硬膜外カテーテルに三活でキャップし、その先端は
ビニール袋で覆い、水滴が入らないように袋の先端は下に向けて保護する事が大切。

Q7. 発熱、背部痛がある
A 刺入部の炎症等が考えられる為、主治医に相談する。
★いずれにしても
何かがあった場合
かがあった場合は
場合は独自の
独自の判断では
判断では行
では行わずに、
わずに、まずは主治医
まずは主治医・
主治医・麻酔科医に
麻酔科医に相談すると
相談すると
言う事を徹底すること
徹底すること。
すること。

2008 年 3 月改定

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