辰已法律研究所大阪本校

平成25年度司法試験合格者ガイダンス

「短答で300点を取って逃げ切ろう」
平成25年司法試験合格者

達也

はじめにー自己紹会と本ガイダンスの趣旨説明
2011年

九州大学法学部

卒業

2013年

神戸大学法科大学院既修者コース

平成25年司法試験短答式試験

山内

卒業

297点(139位)

司法試験における短答式試験対策の重要性
(1)択一で高得点(280点=8割以上)が取れれば最終合格率は80%を超える

120.0%

平成24年度司法試験(辰已法律研究所調べ)

100.0%

80.0%

60.0%

40.0%

20.0%

0.0%

320点 310点 300点 290点 280点 270点 260点 250点 240点 230点 220点 210点











合格率 100.0% 100.0% 80.0% 84.8% 84.0% 70.7% 67.0% 50.8% 42.7% 29.6% 18.4%

5.6%

(2)択一で280点が取れれば論文は平均点+5 点で合格できる(平成25年)
①総合点数=(短答式試験の得点 0.5)+(論文式試験の得点 1.75)
②合格に必要な点数

780 点

③短答式試験平均点

253.6 点( 0.5=126.8 点)

④論文式試験平均点

361.62 点( 1.75=632.835 点)
1

以上を前提にシミュレーションすると・・・

短答が 300 点(=150 点)だった場合

論文 366 点(=640.5 点)で最終合格。

論文:平均点+5 点

短答が 253.6 点(=126.8 点)だった場合

論文:平均点−1 点

短答が 280 点(=140 点)だった場合

論文 360 点(=630 点)で最終合格。

論文 373 点(=653.2 点)で最終合格。

論文:平均点+12 点

短答が 220 点(=110 点)だった場合

論文 383 点(=670 点)で最終合格。

論文:平均点+22 点

(3)択一で高得点を取ることは論文で高得点を取ることよりもハードルが低い
択一は勉強量に比例して確実に点が伸びる。
択一は論文に比べてケアレスミス(ex 問題文の読み間違え等)をするリスクが低く、仮
にケアレスミスをしたとしてもダメージは小さい(リスクが分散されている)。
択一が素点評価であるのに対し論文は偏差値評価→論文で差をつけるのは相対的に難し
く、択一の点数には9分の1以上の重みがある。
(4)受験生が陥りがちな「迷信」∼択一は合格点ギリギリ取れればよい?
毎年のように合格者から語られる受験武勇伝の一つに「択一は合格点ギリギリだったが、
論文で2000人以上抜いて最終合格した」というものがある。このような武勇伝を聞い
て、
「択一はギリギリ合格点が取れる程度勉強していればよく論文対策の方に重点を置くべ
きなのだ」と安易に考える受験生がいるが、それは危険な発想である。
確かに、その合格者が論文で大逆転して合格されたことは事実であり、カッコイイこと
なのではあるが、そのような合格者はあくまでも少数にすぎない。そもそも、そのような
話が武勇伝らしく語られ「カッコイイ」という印象を受けるのは、その裏側の事実として
「択一の点数が低い人はほとんどが不合格になっている」という現実があるからに他なら
ないのではないか。
受験生が目を向けるべき事実は、
「択一が悪くても最終合格した人がいる」ではなく、
「択
一が悪かった人はほとんどが不合格になっている」という事実である。合格に「カッコイ
イ」も「カッコ悪い」もないのだから、受験生としてはよりリスクの低い手段を選ぶべき
である。
(5)合格発表待ち期間の精神衛生?合格発表前の就職活動との関係?

2

短答式試験の勉強方法(総論)
(1)学習計画を立てる
• 実力がもっとも伸びるのは試験前の2∼3ヶ月(ラストスパート期間)
この期間にどれだけ効率的な「質の高い」学習ができるかが合否を分ける。ラストスパ
ート期間はみんな追い込んで勉強をするので、勉強時間で差をつけることはできない。言
い換えれば、ラストスパート期間に突入する前に、どれだけラストスパートをかける「準
備」ができているかで大きな差がつくことになる。
ラストスパート期間に実力を一気に合格レベルに持っていくための「準備」とは、つま
るところ、今まで学習した情報を何らかの有形的な方法で「蓄積」し、さらにそれをいつ
でも確認できるように「一元化」しておくことである。
スローガン的に言うなら、年明けまでにしておくべき学習とは、
「試験本番につながる勉
強」ではなく(今知識を完璧にしたところでどうせ忘れる)、「試験本番の3ヶ月前につな
がる勉強(=準備)を」ということ。
• 長期→短期→一日というふうに大きな枠から逆算して計画を立てる
ラストスパート期間との関係で年明けまでの期間(約70日)をどのような期間と位置
づけるのか?何を「準備」する期間か?を考える。
年明けまでにやるべきこと(タスク)をリストアップして短期計画を立てたら、それぞ
れのタスクを完了するのに何日かけるかを決める。そして、それらを一日ベースのスケジ
ュールとして具体的に落としこんでいく。

(2)過去問は3回以上回す(手を広げるよりも同じ教材を何度も回すことが重要)
① 1 周 目 :夏休み前半の約1ヶ月間
過去問を解いて解説を読み、出題された条文・判例は判例六法にチェックを入れる。
一日50問∼60問ペースで、午前中に終わらせる。ほぼ一ヶ月で1周できる。
② 2 周 目 :11月はじめから12月終わりまでの約2ヶ月間
過去問で間違えた箇所や知識が曖昧な部分に関する「間違いノート」を作成する。
午前中に一日25問ペース。12月下旬の TKC 模試までに終わらせるイメージで。
③ 3 周 目 :2月中の1ヶ月間
ダメ押しの3週目。確認程度にサクサクと回し、どちらかと言えば間違いノートを読み
込んでいくイメージ。終わったら、直近の過去問(平成24年)を解いてみる。

3

(3)間違いノートを作成する
過去問の間違った部分や知識が曖昧な箇所に関する情報を簡潔にまとめる(手書き)。予
備校本の使える図表等を切り取って貼りつけ、自分なりのアレンジを加える。

( 4 )「 ピ ン ポ イ ン ト 型 問 題 」 の 対 策
ピンポイント型問題とは、特定の狭いテーマに含まれる事項につき、条文の文言そのも
のの正誤や各制度の相違点等を純粋な知識としてピンポイントで聞いてくる問題である。
例えば、次のようなものである。
【平成22年 民事系 第41問】

4

【平成21年 刑事系 第38問】

求する訴えを提起し,請求棄却の判決が確定した後,Xが白地部分を補充して,再度Yに対し
手形金を請求する訴えを提起した。この場合,Xの後訴請求は,既判力によって妨げられるこ
とはない。
3. XのYに対する1000万円の貸金返還請求訴訟において,Yが限定承認の抗弁を主張し,
相続財産の限度で支払えとの判決が確定した後,XがYに相続財産の一部の隠匿があったとし
て,改めて責任限定のない判決を求めて,同一の訴えを提起した。この場合,Xの後訴請求に
は前訴判決の効力は及ばない。
4. XがY会社に対して有する金銭債権についてその支払を命ずる判決が確定した後,当該債務
の支払を免れるためZ会社が設立された。これが法人格濫用に当たる場合,法人格否認の法理
により,Y会社の有する債務をZ会社が履行する義務を負うとしても,Y会社の受けた判決の
既判力がZ会社に及ぶことはない。
5. XのYに対する所有権に基づく建物収去土地明渡請求訴訟において,訴訟上の和解により,
Yは建物を収去し,敷地である土地を明け渡すべき義務を負うとされた。その後,Yから当該
建物を借り受け,その建物の敷地である土地を占有するZには,Zが和解調書の存在を知って

【 平 成いたか否かにかかわらず,当該調書の執行力が及ぶ。
18年 民事系 第59問】
〔第59問〕(配点:2)

次のアからオまでの記述のうち,正しいものを組み合わせたものは,後記1から5までのうちど

れか。(解答欄は,[№72])

ア. 準備的口頭弁論においては,いわゆる電話会議システムの方法を利用することはできない。
イ. 弁論準備手続は,当事者双方が立ち会うことができる期日において行う。
ウ. 弁論準備手続において,文書の証拠調べをすることはできない。
エ. 書面による準備手続においては,いわゆる電話会議システムの方法を利用することはできな
い。
オ. 進行協議期日において,証拠調べと争点との関係の確認の協議を行った後に,新たな攻撃防
御方法を提出した当事者は,相手方の求めがあるときは,相手方に対して,その協議前に提出
することができなかった理由を説明しなければならない。

1. ア

2. ア

3. イ

4. ウ

5. エ

〔第60問〕(配点:2)

文書に関する次のアからオまでの記述うち,誤っているものを組み合わせたものは,後記1から

このようなピンポイント型の問題は、単純に知識の有無で差がつく上、頻繁に出題され
5までのうちどれか。(解答欄は,[№73])

ア. 裁判所は,文書提出命令の申立てに係る文書が,挙証者の利益のために作成されたか否かを
るので、確実に得点できるようにしておきたい。もっとも、各テーマの守備範囲(知識量)
判断するために必要があると認めるときには,いわゆるインカメラ手続を実施することができ

は小さく、聞かれることがある程度決まっているので、対策はしやすい。その対策とはズ
る。
イ. 作成名義人による署名がある私文書は,押印がなくても,法律上,真正に成立したものと推

バリ、「暗記ツールを作っておいて、試験直前に叩き込む」である。
定される。

ウ. 私文書に作成名義人の印章による印影がある場合,その印影は,法律上,作成名義人の意思
に基づいて顕出されたものと推定される。
エ. 裁判所は,契約書が真正に成立したことが認められたときは,作成名義人が当該契約書に記
載されたとおりの契約締結の意思表示をしたことを認めることができる。
オ. 証拠保全も証拠調べであることに変わりはなく,裁判所は,文書の検証に応じない文書の所
持者に対し,検証物提示命令を出すことができる。
1. ア

2. ア

3. イ

4. イ

- 23 -

5

5. ウ

ex 会 社 の 機 関 設 計 ( 3 2 6 条 ∼ 3 2 8 条 )





ex 刑 事 訴 訟 法 : 裁 判 の 種 類 ( 3 3 7 条 ∼ 3 3 9 条 )

6

ex 民 事 訴 訟 法 : 争 点 及 び 証 拠 の 整 理 手 続 ( 1 6 4 条 ∼ 1 7 8 条 )

(5)条文素読(判例六法素読)
民事系(特に会社法)は必須。刑訴法、行政法でも極めて重要。論文対策としても効果
あり。最初はしんどいが、何度もやれば確実に力がつき、しんどいがゆえに大きな差とな
って現れる。一日何時間もできる勉強法ではないので、計画を立てて毎日コツコツとやる
ことが重要。
具体的な方法としては、ただ読んでも眠くなるだけなので、重要な文言にはマーカーで
チェックを入れたり、定義やキーワード等を書き加えたりして六法をカスタマイズしてい
く。条文の横に小さく書いてある参照条文は非常に便利。
民訴法・刑訴法については、『民事訴訟第一審手続の解説』『入門刑事手続法』等を参照
し、手続の流れに沿って条文を読むことも極めて有益だろう。

7

(6)短答式試験対策としての判例学習
• 短答式試験における判例の出題法則
過去問を分析する限り、判例に関する短答式試験の出題には以下の2つの法則があるよ
うに思われる(※論文式試験はこの限りではない)。
短答式試験の問題における「判例」とは、最高裁判例のみをいう。
短答式試験に出題される「判例」は、受験年度を(n)年とすると、
(nー2)年
以前のものに限られ、(n)年・
(n­1)年のものは基本的に出題されない。
したがって、短答式試験対策としては直近(平成24年及び平成25年)の重判を読み
込む必要はないように思われる(論文式試験対策としては意味があるかもしれないが)。
• 科目ごとの特色を踏まえた判例学習の必要性
判例学習といっても、例えば民法や民訴法に関しては一般化できる判例が多いので結論
(規範部分)だけを押さえておけば足りるのに対し、憲法や行政法、刑法に関しては事例
判断的な性質を有するものが多いので結論(規範部分)だけでなく事案(+憲法に関して
は理由付け)も押さえておく必要があるなど、科目ごとの特徴を踏まえた学習が必要とな
る(詳細は各論を参照)。

8

(7)まだインプットに自信のない人は…
「まだインプットに自信がないから択一の過去問はできそうにない…」という思いもあ
るかも知れないが、だからといって択一対策を後回しにするのは得策でない。経験上、知
識のインプット・ブラッシュアップは問題演習を通してやるのが最も効率がよい。過去問
をとりあえず何問かやってみて、正解はできないが解説を読めば理解できるというレベル
なら、過去問演習に取り組むべきである。
この場合、一日10問∼20問程度のペースでもよいから、時間をかけてじっくりと理
解するように心がけよう。体系別になっている過去問集(ex 辰已の過去問パーフェクト)
を使用して、基本書(薄めのものがよい)の読み込みと同時並行で進めるのも有益だろう。

短答式試験の勉強方法(各論)
(1)民法
• 全範囲からまんべんなく出題されるので、とにかく穴を作らないよう対策する必要がある。
• 知識量が膨大なので、基本書を読み込むよりは判例六法や市販の条文・判例本(択一六法)
を用いたほうが効率がよい。
• ピンポイント型問題も多いが、制度横断的な知識を問う問題も出題される。
• 判例については、判例そのものを問うというよりは判例の立場を前提に事例処理をさせる
問題が多く見られるため、時間配分に注意する。
(2)商法
• 会社法は条文からの出題が8∼9割を占める。判例も出題されるが百選レベルにとどまり、
正答率が高いので差がつかない。
• 条文素読が極めて重要。単純に条文を読んだ回数で差がつくといっても過言ではない。
全条文を素読するのはかなり骨が折れるが、最低でも『リーガルクエスト会社法』
(有斐閣)
巻末の条文索引に掲載されている条文は確実に押さえておく必要がある。
• 会社の機関設計や、各機関の選任手続・任期・権限等の相違点に関するピンポイント型の
問題については、図表にまとめるなどして直前期に確認できるようにしておく。
• 商法や手形小切手法に関する問題も相当数出題されるので、手を抜かずに対策をしておく
必要がある。商法はかなり細かいところまで問われるが、あまり深追いはせず、過去問を
確実に潰しておく程度でよいと思われる。手形小切手法に関しては論文での出題も予想さ
れるため、早川徹『基本講義手形小切手法』
(新世社)等を用いて全体を回しておくとよい。

9

(3)民事訴訟法
• 条文知識に関するピンポイント型問題が多いので、条文素読のほか、各制度の相違点など
を図表にまとめておくことが有効な対策となる。
• 択一対策としては『民事訴訟第一審手続の解説』
(法曹会)がオススメ。民事訴訟規則につ
いては、差し当たりこの本で触れられているものだけ押さえておけば十分だろう。
(4)憲法
• 人権分野に関しては、判例のかなり細かい知識が問われるため、判例の読み込みが極めて
重要(結論を知っているだけでは正解できない)。
• 判例は比較的新しいものが出題されやすい(ただし、超直近の判例は出題されない)。
• 判例対策としては、戸松・初宿『憲法判例』
(有斐閣)が質・量共にベスト。ただし、百選
が改訂されるので(11月下旬刊行予定)、そちらにも目を通しておくとよい。
• 統治分野はピンポイント型問題が多いため、暗記ツールを用意しておいて直前期に一気に
仕上げる。基本書よりも市販の条文・判例本(択一六法)を用いた方が効率的。
(5)行政法
• 行政手続法・行政代執行・行政不服審査法・行政事件訴訟法の条文素読が重要。
• 類似制度の相違点(申請に対する処分と不利益処分、行政不服審査法と行政事件訴訟法、
申請型義務付け訴訟と非申請型義務付け訴訟など)を問うピンポイント型の問題が多いた
め、図表にまとめるなどして直前期に確認できるようにしておく。
• 処分性や原告適格、国賠訴訟分野については判例知識が問われるため、事案(問題となっ
た行為)と結論を簡潔に押さえておくとよい。判例集としては、百選よりも橋本博之『行
政判例ノート』(弘文堂)がオススメ。
(6)刑法
• 判例からの出題が多い。刑法判例は膨大なようにも思えるが、実は今までの判例問題のほ
ぼ全てが判例六法掲載判例からの出題であり、複数回出題されている判例も多い。したが
って、まずは判例六法掲載判例を確実に押さえるようにする。
• 論理パズル系の問題は時間配分に注意(時間をかければ誰でも解ける)。判例・通説に対す
る主な反対説とその根拠を知っていれば時間を節約できるが、必須ではない。
• 執行猶予や刑の加重減軽に関するピンポイント型問題については、暗記ツールを用意して
おいて直前期に一気に仕上げる。

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(7)刑事訴訟法
• 各段階の手続につきかなり細かい条文知識が問われるため、条文素読が極めて重要。
• 捜査段階の手続については、主体(裁判所か裁判長か裁判官か、検察官か弁護人か被告人
か、検察官か検察事務官か司法警察員か司法巡査かなど)と方法(口頭か書面か、令状が
必要か否かなど)に着目して整理するとよい。
• ピンポイント型の問題が多いため、図表にまとめるなどして直前期に確認できるようにし
ておく。市販の条文・判例本(択一六法)を利用してもよい。
• 三井・酒巻『入門刑事手続法』
(有斐閣)は手続の流れに沿った条文解説となっており、出
題可能性の高い規則や少年法についても言及されているため、択一対策としてオススメ。

おわりに
今できなくて我慢していることのほとんどは試験後でもできる。他方、司法試験制度自体が不
安定で就職難が叫ばれる近年では、一年後れることのリスクは極めて大きい。年明けまでの期間
にどれだけ計画的に学習できるかが合否を分けるということを肝に命じて、是非頑張ってほしい。
〈第 2 回 法 曹 養 成 制 度 改 革 顧 問 会 議 議 事 録 よ り 抜 粋 〉

資料5 3

19

以上
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