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2月14日(日) 9:00∼10:20
第5回 若手家庭医のための家庭医療学冬期セミナー
【二日目選択WS】
岡田 唯男
• 子どもの頃 → 科学者
• 高2 医師決意
• ブラックジャック → 脳外科医
• 膠原病 vs 小児科 → 家庭医(医学部6年)
• 家庭医は単にいろいろ見る医者としかとらえていな
かった
サービス
●家庭医療クリニック(診察室11)
一般診療(年齢,性別,臓器,問題を問わない家庭医療.女性の問題,メンタルヘルス,皮膚,筋骨格系,小
外科なども含む)
・成人の診療 ・小児の診療
特別外来(一般外来でも実施するが,特定の曜日,時間帯も設けているもの)
・予防接種,小児健診など/週5日 ・思春期外来/月1回午後
・妊婦健診/週2日午前 ・産後ファミリー外来/週1日午後
・栄養指導/週1日 ・高齢者総合評価/2週に1回
・禁煙外来/2週に1回 ・スポーツ外来 週2回
・母乳外来、フットケア外来/不定期、適宜
●リハビリテーションセンター(運動器(I),脳血管(II),呼吸器, 成人,小児,発達障害,PT,OT,ST)
●透析センター(慢性期維持透析のみ)/週6日〔9クール〕
●歯科センター(これのみ歯科医師による)
●在宅診療(訪問診療,訪問看護)
●総合相談室(ケアマネ業務等) スタッフ約100名(非常勤含む)
●病児・病後児保育(館山市・南房総市委託事業)
家庭医の数だけ
家庭医療がある
これからの医療
変わりつつある医療のパラダイム
(岡田,2002)
• 入院から外来へ
• 急性疾患から慢性疾患へ
• 生物医学的治療から行動変容主体の治療へ
• 2,3次予防から1次予防へ(待つ医療から攻める
医療へ)
• 医師主導型から患者中心の医療へ
• 個人から集団へ
• 環境との相互作用 (社会疫学の考慮)
エビデンスー診療ギャップ
• 冠動脈疾患予防のためのstatin。実際にはeligibleな
患者の33%にしか投与されていない (McGlynn,
NEJM)
1. Aware 存在の認識
2. Accepted 事実の受け入れ
3. Applicable 適応がある
4. Available & Able すぐに利用出来る、能力的にも可能
5. Acted on 実際に行動に移す
6. Agreed to 患者が同意する
7. Adhered to 患者が遵守する
各段階で20%の減衰があるとすると患者に届くのは21% (0.8の7乗)
Glasziou and Haynes. The paths from research to improved
health outcomes. Evidence-Based Medicine (2005) (10) pp. 4-7
The Evidence Pipeline (7As)
質の高い医療が患者に
届いていないという大問題
私的家庭医療論
家庭医のたとえ
• 料理人:最高の素材
• ネックレスの糸:すばらしい原石
• 究極の個別化:テイラーメイド
• おせっか医/分割払い
「攻めるプライマリケア」
(Okada, 2000)
2,3次予防から1次予防へ. ReactiveからProactiveな医療へ
• 本当のゴールキーパーは家庭医なのでは?
家庭医はインターフェイス
(境界面)の取り扱いを専らにする
• アクセス/インターフェイス/通訳/ポリデント
• 継続性と包括性、責任性などはあくまで手段(ア
クセスも手段だが)
その他のキーワード
• feminnism
• salutogenesis(健康因)
• コミュニティー
• ネットワーク
家庭医療は
ニューサイエンス
様々なニューサイエンス
• 相対性理論 → 相対性は家庭医療の本質であろ
う
• システム理論 → BPS
• カオス理論/ネットワーク理論/複雑系/自己組
織化 →医療そのもの(特に慢性疾患)
ニュートン科学
ニューサイエンス
デカルト的パラダイム
唯物論 関係性
線形性 非線形性
細分化還元主義 全体論(システム)
機械としてとらえる 生物としてとらえる
二重スリットの実験
• 電子を二つのスリットの 間を通す
• 両方→干渉縞(波) 片方→個別の点(粒子)
• 知っているのか? 空けたり閉じたりしてもその瞬
間の状態で振る舞う
• 記録しなければ潜在的な波動として
video: シュレディンガーの猫
http://www.youtube.com/watch?v=Q8savTZOzY0
この世界(ニューサイエンス)では、生命体の
「基本構成要素」は関係であり、個々の個体では
ない。単独で存在するもの,最終的な不動のアイ
デンティティをもつものは何もない。私たち人間
も、誰もが「可能性のかたまり」であり、この可
能性は関係によって呼び起こされる。他者と出
会ったとき、あるいは新しい状況に身を置いたと
き、人は変わる。
M. Wheatley
「リーダーシップとニューサイエンス」
量子論の世界では,すべてが文脈に依存してお
り、その瞬間だけ成立する個別の関係に依存して
いる。関係は,場所が変われば変わり、時間が経
てば変わる。それなのに、ある文脈で生まれた答
えが別の文脈でも同じように機能するはずだと期
待するのはなぜだろう。
M. Wheatley
「リーダーシップとニューサイエンス」
さらに,この世界の一番不思議なところは、科学
者がいくら探しても、観測者を抜きにして存在す
る独立した現実は何も見つからないということ
だ。現実は、私たちの観測という行為を通してつ
くられる。
M. Wheatley
「リーダーシップとニューサイエンス」
量子力学 → NBM
ニュートン科学 → EBM?
これからの家庭医療
• 骨を埋めてもダメ、システム
• グループ診療
絶対に必要なこと
• 医療の質(CQI+PM) • 研究
• 患者を主役に • 政策への関与
• テクノロジー • 教育の質(学生∼生
涯まで)
• 3つの至上命題 • 戦略
• 成果(具体的、か • 主流市場内のニッ
つ実利的) チ選定
• 簡単さ(工夫なし • ホールプロダクト構
に簡単に利用でき 築
るUI)
• ポジショニング
• 実績(過去の)
• 流通チャネルと価格
議論のための質問
• 家庭医療は からないか? (Baumol’s disease)
• 家庭医はminorityのためのものか?(金のある人は専門医
にかかる/望む?)
• 家庭医療はB級医療か?
• 日本独自(その国独自)の家庭医療というのはあるのか
(日本独自の家庭医像 vs global standardとしての家庭医
療)
• 現代の標準化(質の均てん化)vs 究極の個別化医療
• 家庭医療はアンチテーゼか
• 家庭医療学は存在する vs 他の学問の集積
• では対話(dialogue)を持ちましょう
家庭医の数だけ
家庭医療がある
医学のみならず,科学、そして社会そのものがデカルト的パラダイ
ムによる限界に直面し、複雑系をはじめとする新たなパラダイムに
基づいての思考と行動が求められている。
家庭医のアイデンティティクライシスと言うけれど、そうではな
い。全体性、相対性と関係性、非線形性をベースにした新しいサイ
エンス/パラダイムに基づいた学問である以上、周囲や周囲の状況
との関係性において自らを定義しようとしているだけのこと。相手
や状況が変われば我々の状態も変わる。
臓器専門医がそのような状態に陥らないのは 絶対性、唯物主義、
線形性をベースにしたニュートン科学/デカルト的パラダイムに基づ
いているから,というだけにすぎない。
目に見えないものや予測不可能性までを包含する豊かな世界観を
もった新しいパラダイムに基づいてこのすばらしい世界を生きてい
る僕たちが本当の最先端と言っても過言ではないだろう。
偉大な考えは、姿を現したときには,混沌とし、
不可解に見える。発見者にも半分しか理解でき
ず、発見者以外の人にとっては全くの だ。だ
が,もし,ある考えが風変わりに見えなかった
ら、それには[大物になる]見込みはない。
ニールス・ボーア
ありがとうございました
このスライドは当日使用したものに少し手を加えて
あります。また、
今回のセッションの記録の一部が
http://tadao-okada.blogspot.com/2010/02/5.html
からのリンクに残されています。参考にして下さ
い。