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キャリア・アンカーとは:
キャリア・アンカーとは、キャリアを形成する上で、どうしても犠牲にしたくないコンピタンスや動機、価値観のことです。これは、キャ
リアを決める際、指針にも制約にもなる自己イメージであり、本当にやりたいことを考えるための拠り所、あるいは自分自身を発見する拠
り所でもあります。したがって、お互いのキャリア・アンカーを理解することは、個人にとっても組織にとっても適材適所の視点から有益
なことです。また、自分と異なる価値観について知ることは人間理解を助け、本音レベルで改善が進む風通しの良い職場作りを助けます。
キャリア指向自己チェック表の使い方:
1)回答欄に下記の1~6の数字を記入する。
1(全く違う)、2(だいたい違う)、3(どちらかというと違う)、4(どちらかというとそう)、5(だいたいそう)、6(全く
そう)
2)作業欄の説明を参考に、得点を計算する。
3)もっとも得点の高かった分類の番号(①~⑧)で、「キャリア・アンカー確認表」を見て、自分のキャリア・アンカーを知る。
(人は程度の差はありますが、すべてのキャリア・アンカーの型をもっています。大切 なことは、自分がどのタイプの傾向が強いかを知ることです。)
補足:
ここでいうキャリアとは、専門の職業、職業生活の組み立てや進歩、仕事生活が時とともにどのように発達してきたのか、また本人がそ
れをどの程度自覚しているのかなどを含む内面的なキャリアです。ある職種に就き、昇進していく過程で、その職種や組織から要請される
具体的な段階である外面的なキャリアではありません。
キャリア・アンカーという言葉は、スローン経営大学院(MIT のビジネス・スクール)のシャイン教授(Edgar H.Schein,Ph.D.)
が、修士課程の同窓生44人を対象に、在学中(2年生)、卒業後半年、卒業後1年、卒業後5年、卒業後 10~12年にキャリアの個人史を
詳しくインタビューし、「ひとつひとつの具体的な出来事はきわめてバラエティにとんでいたが、回答者が選 択を行った理由、出来事につ
いて考えたことは、驚くほど一貫性のあるパターンを示した。彼らは、自分に適していない仕事についたとき、自分にもっと適している何
かに『引き戻されている』というイメージを語った」ことから名づけたものです。なお、初期の研究では、5 つの型に分類していましたが、後
に3つ追加しています。
キャリア指向自己チェック表(1/3)
*回答欄に数字を記入: 1(全く違う)、2(だいたい違う)、3(どちらかというと違う)、4(どちらかというとそう)、5(だいたいそう)、6(全くそう)
番号 質問 回答欄 上位3 ① ② ③ ④ ⑤ ⑥ ⑦ ⑧
に4点
1 「この仕事ならあのひとに聞け」と絶えず専門家としてのアドバイスを求められ
る分野でうまくやっていくことをめざす。
2 他の人々のやる気をまとめあげ、チームをマネジメントすることによって大きな
成果を上げることができたときに、最も大きな充実感を仕事に感じる。
3 自分のやり方、自分のスケジュールどおりに、自由に仕事ができるようなキャリ
アを目指す。
4 自由や自律を勝ち取るよりも、将来の保障や安定を得ることが、自分にとっては
より重要なことだ。
5 常に自分の事業を起こすことができそうなアイデアを探している。
6 社会に本当に貢献できていると感じられるときにこそ、キャリアがうまくいきそ
うだと感じる。
7 難題を解決したり、とてつもない挑 戦課題にみまわれた状況を打破したりできる
ようなキャリアをめざす。
8 家族とともに楽しみにしていることが犠牲になってしまう仕事に異動させられ
るぐらいなら、その組織をやめた方がましだ。
9 キャリアを通じて専門技能や職能分野の技能をすごく高度に磨き上げることが
できるならキャリアがうまくいきそうだと感じる。
10 複雑な組織を率い、大勢の人びとを左右する意思決定を自分で下すような立場を
めざす。
11 どのような課題をどのような日程と手順で行うのか、について自分の思いどおり
になるとき、最も大きな充実感を仕事に感じる。
12 安定した職務保障もなしに仕事に配属させられるくらいなら、すっぱりとその組
織を離れるだろう。
13 他人の経営する組織でマネージャーとして高い職位につくよりも、むしろ自分の
事業を起こすことを重視する。
14 キャリアを通じて、他の人びとのために自分の才能を役立てることができたとき
に、最も大きな充実感を自分のキャリアに感じる。
15 非常に難しい挑 戦課題に直面し、それを克服できたときにこそ、キャリアがうま
くいきそうだと感じる。
小計 1ページ目の小計 縦の和⇒
(参考)「キャリア・アンカー」エドガーH.シェイン著 金井嘉宏訳 白桃書房
キャリア指向自己チェック表(2/3)
*回答欄に数字を記入: 1(全く違う)、2(だいたい違う)、3(どちらかというと違う)、4(どちらかというとそう)、5(だいたいそう)、6(全くそう)
番号 質問 回答欄 上位3 ① ② ③ ④ ⑤ ⑥ ⑦ ⑧
に4点
16 自分が家族がらみで望んでいることと、仕事から要請されることとがうまく両立
できるキャリアをめざす。
17 ゼネラル・マネージャー(部門長)になるよりも、自分の専門職能分野で上級マ
ネージャーになる方が、より魅力的に感じられる。
18 何らかの組織でゼネラル・マネージャー(部門長)の立場で仕事をするときに
こそ、キャリアがうまくいきそうだと感じる。
19 完全な自律や自由を獲得したときにこそ、キャリアがうまくいきそうだと感じる。
20 将来が安定していて安心感のもてる会社での仕事を求めている。
21 自分自身のアイデアと努力だけによって何かを創り上げたときに、最も大きな充
実感を自分のキャリアに感じる。
22 マネージャーとして高い職位につくことよりも、自分の技能を生かして少しでも
世の中を住みやすく働きやすくする方が、もっと大切だと思う。
23 一見解決不可能と思われた問題を解決したり、どうにもならないような局面を打
開したとき、最も大きな充実感を自分のキャリアに感じる。
24 自分の個人的な要望、家族からの要望、キャリアに求められることをうまくバラ
ンスさせることができたときにこそ、キャリアがうまくいきそうだと感じる。
25 自分の専門領域からはずれてしまうような人事異動をローテーションとして受
入れるくらいなら、むしろその組織をやめる。
26 今の自分の専門職能領域で上級マネージャーになるよりも、ゼネラル・マネージ
ャー(部門長)として仕事をするほうが魅力的だと思う。
27 将来が保障された安心なことよりも、規則や規制にしばられず、自分のやりたい
ように仕事できるチャンスが大切だと思う。
28 収入面、雇用面で完全に保障されていると感じられるときに、もっとも大きな充
実感を仕事に感じる。
29 自分自身の生み出した製品やアイデアで何かを創り出し、軌道にのせたときこそ、
キャリアがうまくいきそうだと感じる。
30 人類や社会にほんとうの貢献ができるキャリアをめざす。
小計 2ページ目の小計 縦の和⇒
(参考)「キャリア・アンカー」エドガーH.シェイン著 金井嘉宏訳 白桃書房
キャリア指向自己チェック表(3/3)
*回答欄に数字を記入: 1(全く違う)、2(だいたい違う)、3(どちらかというと違う)、4(どちらかというとそう)、5(だいたいそう)、6(全くそう)
番号 質問 回答欄 上位3 ① ② ③ ④ ⑤ ⑥ ⑦ ⑧
に4点
31 自分の問題解決能力、競争に打ち勝つ能力をフルにいかせる挑戦機会を求めてい
る。
32 マネージャーとして高い地位につくことよりも、自分の個人的な生活と仕事生活
の両方をうまくバランスさせるほうが大切だと思う。
33 自分独特の技能や才能を活用できたときに、最も大きな充実感を仕事に感じる。
34 ゼネラル・マネージャー(部門長)になるコースから外れてしまいそうな仕事
をやらされるくらいなら、そんな組織はやめてしまう。
35 自律して自由に行動できないような仕事につくくらいなら、そんな組織はやめて
しまう。
36 将来が保障され安心感をもって仕事に取り組めるようなキャリアをめざす。
37 自分自身の事業を起こし、それを軌道にのせることをめざす。
38 他の人びとの役に立つために能力を発揮することができないような配属を拝受
するぐらいなら、その組織をやめたいと思う。
39 ほとんど解決できそうもない問題に挑戦できるということは、マネージャーとし
て高い地位につくことよりももっと大切である。
40 自分個人や家族の関心事にあまりマイナスの影響がないような仕事の機会をい
つも求めている。
作業 1)回答欄の点数を参考に、1~40番の項目から上位3位までを選び、点数を○で囲んで下さい。
2)点数を○で囲んだ項目の「上位3に4点」欄に数字4を記入してください。
3)回答欄の数字と「上位3に4点」欄の数字を足して、右側の白抜きの欄に記入してください。
4)①~⑧の列の数字を足して、各ページの小計を出してください。
3 ページ目の小計 縦の和 ⇒
5)1ページ目の小計を転記してください。 1 ページ目の小計(転記)⇒
6)2 ページ目の小計を転記してください。 2ページ目の小計(転記)⇒
7)1~3ページの合計を出してください。 合計(上の3行の和)⇒
8)合計を5で割ってください。これが得点です。 得点= 合計(上の行)÷5 ⇒
(参考)「キャリア・アンカー」エドガーH.シェイン著 金井嘉宏訳 白桃書房
キャリア・アンカー確認表 *自己チェック表で、もっとも点数の高かった列の番号(①~⑧)で、あなたのキャリア・アンカーを確認してください。
番号 重視する領域 どうしてもあきらめたくないこと 低収入でも幸せを感じる仕事 高収入でも避けたい仕事
① 専門・職能別コンピタンス その領域で自分の技能を活用し、そのような 専門領域で挑戦課題を課せら 複数の職能にまたがって全
(TF) Technical/Functional 技能をより高いレベルまで伸ばしていくこと れるような仕事 体を統括する仕事
のできる機会を手に入れること。
Competence
② 全般管理コンピタンス 組織の階段をできるだけ高いところまで上り ゼネラリストにつながる仕事 将来にわたり、職能分野が限
(GM General Managerial 詰めるチャンス。全体的な成果に責任を持て られる仕事
るようになること。
) Competence
③ 自律・独立 仕事の枠組みを自分で決め、仕事を自分のや いつどのように仕事をするか 規則や規制で厳格に縛られ
(AU) Autonomy/Independence り方で仕切っていくこと。 について自分の裁量で柔軟に ている仕事
決められる仕事
④ 保障・安定 会社の雇用保障、あるいはその職種や組織で 職務での終身雇用権が約束さ 不安定で将来の保障がない
(SE) Security/Stability の終身雇用権など。特に、退職年金プランなど れ、退職後の保障も充実してい 仕事
経済的な保障。 る仕事
⑤ 起業家的独創性 危険負担し、障害を乗り越える能力と意欲を 社会に 対 して事業を創造する 起業時にキャリアが役に立
(EC) Entrepreneurial Creativity もとに、自分自身の会社や事業を起こす機会。 仕事(創業者としての仕事) たないような仕事
⑥ 奉仕・社会貢献 環境保護や、平和活動、人類に貢献する製品の 社会に貢献していると実感で 環境汚染につながるなど、価
(SV) Service/Dedication to a Cause 開発など、何か価値のあることを成し遂げる きる仕事 値観に合わない仕事
仕事を追い求める機会。
⑦ 純粋な挑戦 困難な問題の解決に取り組んだり、手ごわい 目新しさや、変化、そして難し 簡単にできる仕事や、先の見
(CH) Pure Challenge 相手に打ち勝ったり、あるいは難しい障害を さを備えた仕事 える仕事
乗り越える、といった機会。
⑧ 生活様式 自分自身の個人としての欲求や家族の要望、 自分のトータルの人生を充実 人生全体のバランスを崩す
(LS) Lifestyle あるいは自分のキャリアの要件のバランスを させるような仕事 ような仕事
とり、それらの統合が図れる状態。
(参考)「キャリア・アンカー」エドガーH.シェイン著 金井嘉宏訳 白桃書
房
①(TF) 専門・職能別コンピタンス Technical/Functional Competence の特徴
概要 何事も専門的な立場を重視して判断し行動する。専門家タイプ
価値 観の形成 自分のキャリアが開花していくにつれ、特定の仕事に対する才能と高い意欲をもつに
至ったということを発見します。自分の専門分野をとことん追及できる場合に限れば、
職能担当のマネージャーになろうという気持ちがないわけではありませんが、自分と
しては専門分野に特化する道を志向し、ゼネラル・マネージャーになることに価値を
置いていません。
適した仕事 いかに才能を発揮できるかによって自尊心が左右されるので、才能の生かされる仕
事を好みます。また、このアンカー以外の人たちの関心が、どちらかといえば仕事をと
りまく脈絡(コンテキスト)に向かうのに対して、このアンカーの人たちは仕事の内容 (コ
ンテンツ)に向かいます。
組織に所属している場合は、目標設定に進んで参画し、いったん目標の合意が得ら
れ実行の段階になると、最大限の自律性を望みます。そして、実行に必要な設備、予算、
その他の資源の制約を嫌うのが普通です。
しかし、このアンカーの人たちにとって、やりがいのある仕事を見つけ続けること
は、個人、組織のどちら側にとっても意外と難しいものです。その場合は、教育する立
場になるとか、ゼネラリストとして職務を再設計することで対処します。
給与と福利厚生 自分の技能水準に見合った報酬を望みます。広く社外までみすえての公平性を指向
し、ボーナスやストック・オプションなどの一時的な誘引よりも、絶対的な給与水準
をはっきり決めることを求めます。福利厚生では個人に付帯して移動できるシステム
を望みます。彼らはg olden handcuffs(金の手錠/お金と引き換えに自分らしさ
や自由を束縛することのたとえ)につながれることを恐れます。それは、挑戦的でな
い仕事への罠かもしれないと感じるからです。
昇進制度 管理職の昇進経路と並行して、専門職の昇進経路があることを望みます。これは、研
究開発関係や、エンジニアリング関係のみならず、財務、マーケッティング、製造、販売
など、全ての職能専門分野で適用可能なはずですが、まだ、この要求に本当に応えられ
るキャリア・ラダー(昇進のはしご)を実現している組織は少数でしょう。
承認の仕方 プロの仲間からの高い評価に価値を置いているので、わけのわかっていないマネー
ジャー層から単に承認されても喜びません。
彼らが喜ばれる承認の方法は、自己啓発の充電期間(sabbatical)、専門職団体の
会合への出席、書物や設備の購入予算などです。自分が年をとるとともに陳腐化して
しまうことが、この人たちにとって致命傷なのです。
ここにアンカーのある人たちは、組織の管理のあり方がまずいと最もダメージを受
け易いのです。というのは、多くの社内キャリアが、全般管理コンピタンスにアンカー
を置く人によって作られる傾向にあり、社内での公正感、組織への忠誠心、協調性など
を重視しています。しかし、これらは、このアンカーのひとたちにとっては、どうでも
よいことのように思えるのです。もし、組織がこのひとたちの存在を重視するならば、
キャリア発達の仕組を設計し直すことも必要でしょう。