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03 鋳 物 第 63 巻 第 1 号

ガス型試料)と減少しているもの(球状黒鉛化処理鋳鉄
文 献
のガス型,シェル型試料)とがあった,
(8 ) 金型,砂型凝固試料のそれぞれ同一種類の鋳鉄 )1 鹿島,山崎:鋳物, 43 )2691( ,82
の酸素(最高値をのぞいた平均値)と水素の比を比較す )2 .JA!¥.IHSAK ,T.YAMAzAKI Report fo the -tsaC
ると,砂型凝固試料ではニレジスト,高ケイ索鋳鉄は減 sgni Resarch Laboratory Waseda .vinU ,
少し,クロムーモリブデン鋳鉄,球状黒鉛化処理鋳鉄は 21 )1691( ,12
増力日していた. )3 鹿島,山崎:分析化学, 21 )3691( ,743
)4 前川,中川,曾我,須藤:鋳物, 23 )0691( ,6
58
)5 加藤:日本金属学会誌, 42 )0691( ,7
03

UDC .966 31 :26 .1 87

鋳鉄の高周波焼入れによる硬化能に及ぼす
成 分 元 素 の 影 響T

一一マンガンおよび銅の影響,並びにその他各種鋳鉄,鋼材の比較一一一

中 村 ヲ
ム*

Efect of Alloying Elements on the Hardenability of Cast rI on


by Induction Hardening
--Effect fo Manganese and Coper ,and Comparison fo Various Cast rI ons and -letS 一

Hiroshi NAKAMURA

Synopsis:
Manganese si an importan elment same
as nocilis and phosphorus ot 巴tcef the seitrpo
fo tsac .nori As ti sevig hig ytilbanedrh ni lets ni convetial hardenig ,ti might be
consider ylareng tah manganese si osla an evitcefe elment rof inducto hardenig fo tsac
.nori But sa ni the tsal trope ,
nocilis was not an evitcefe elment rof inducto hardenig fo
tsac nori because fo sti roirefni ytilbanedrh ,etipsni fo sti retb tcefe ni ordinay lets
quenchig.
nI siht trope ,the author tlaed with eht detaluconi ekaif graphite nori specimens tsac
which contaied id 任tner amounts fo manganese ot examine the tcefe ti rof inducto fo
hardenig fo tsac .snori nI snoitda ot thes specimens , inoculated tsac snori contaig
coper ,cupola melt 邑d t sac snori ,Iadiorehps etihparg tsac nori ,SH nori and S 50C nialp carbon
Iets were osIa examined. These specimens were machined otni gnir type tset secip and case
hardened by .noitcudni After the treatment various stet were deirac out ni the same way as
ni the former repo .t
Sumarizing the stluser fo ht 巴 expriments ,ti can be noted as .swolof
( 1) The tendcy fo ecafrus hardnes llaf increasd with the esarcni fo manganese
conte .t
T 昭和 38 年 9 月 91 日原稿受理
昭和初年 0
1 月 日本鋳物協会関西支部講演会において発表
* 大阪府立工業奨励館鋳造部鋳造課

( 03 )
鋳鉄の高周波焼入れによる硬化能に及ぼす成分元素の影響 13

( 2) The manganese conte di not a 仔tce the noitacl fo the hardend .reyal
( 3) The high manganese conte increasd the amount fo laudiser etinsua ni the surface
reyal by overhating and rapid .gniloc
( 4) The hardnes fo the heating suface was desiar with the esarcni fo manganese .noc
tne by thgils inducto .gnitaeh
( 5) The thicknes fo the hardened reyal grew ylthgils thicker with the esarcni fo
manganese conten .t
( 6) Manganese lowered ylthgils the transformation temperatures ,which were measured
by quick response dilatome .r
(7)島 fanganes conte di not tcefa the maximum hardnes ni the hardened reyal ,ni
the range fo sti conte ni siht .noitagitsevni
(8) The t巴ndency fo gniater etinsua was not a 任ectd by coper ni range coper
conte ni siht .noitagitsevni
( 9) With increasg amount fo coper ,hardnes fo the surface layer became higer and
the thicknes fo the hardened layer became a til 1t e ekciht .r
)01( The coper conte somewhat lowers the transformation tempratues.
)1( The mechanism fo the formation fo coarse raluci erutcs ni eht super heated
surface layer was considerd and discued on the siab fo schematic T.T.T. diagrms.
)21( There si no noitaler betwen the hardenbilty fo tsac nori by inducto hardenig
and the hardenbilty fo ordinary lets quenchig.
)31( Manganese si not always an e任evitc element ot esiar ytilbanedrh fo tsac nori by
inducto hardenig.

まるかどうかは珪素に関する前報の実験結果から考えて
1.緒言 も容易に断定することはできない.そこで本報ではマン
前 報 1) に取り上げた珪素,燐と同様マンガンは鋳鉄の ガンおよび銅について,その成分量の影響およびその他
性質を決定する重要な元素である 鋼に普通焼入れを行 各種の鋳鉄,鋼材の比較を試みた.
なう場合マンガンがその硬化能を著しく増大させること
.2 供試材
は,後載第 12 図の合金元素量と焼入れ性倍数との関係
図から明らかである.しかしこのような鋼に対する普通 供試材の作成方法は前報と同様,ノヂュラー銑を基材
焼入れの場合の考え方がそのまま高周波焼入れにあては として,それに鋼材 25% を配合し, 6 番黒鉛士宮塙に約
第 1表 供 試 材 の 配 合 溶 解 条 件

i'lc メ
口ι 溶解温度 保持時間 珪化カノレシウ

ロ]寸

材|銑 日
力 金 属

C 分 ム接種量 %
鉄|添
M 25 75 金属 7 ンガン O 051 5 3.0
乱f 〆
ノ ノ
/ 1 7.0 λ
γ 1 〆

孔f 41 〆/ ノ
ノ λ
γ .1 4 1 ノ
ノ 〆/

M 2 1 ノ
/ λr 0.2 1 1/ 1

NC O ノ
ノ 〆
/ 岸R宰~ 解 銅 O 1 λ
γ 〆
f

NC 2 ノ
/ 1 1 2.0 ノ
ノ 1 1

NC 5 λ/ f〆 fノ 5.0 ノ
ノ ノ
/ ノ/

NC 01 1 ノ
ノ 1 .1 0 ノ/ 〆
ノ 1

NC 20 1 ノ
ノ 1 0.2 ノ
〆 ノ/ 〆/

01 R ,キュポラ鋳鉄
mASS

RIHC

FC 2:7,キュポラ鋳鉄
球状黒鉛鋳鉄,ソータ灰脱硫,珪化カノレシウム 52 ぢ稀土類酸化物 0.4% 球状化処理
現場製 SH 鋳鉄
Aリ
Fhu

圧延鋼材

( 13 )
23 鋳 物 第 63 巻 第 1 号

第2表供試材の各種試験成績

強制チ Jレ試験 抗 張 力 硬 度 七
イ す
みふ→

成 分 Fぢ

己 号 チノレ深さ
立1m kgjmm' .NHB C iS [I n
乱 P S

乱f O 5.0- 7.0 29 ,03 791 61.3 .1 56 0.3 0.12 0.35


M 7 I 1.1 0-13.0 72 ,82 ,32 102 3.10 .1 85 0.8 0.12 0.38
M 41 10.0-14.0 03 ,13 21 60.3 .1 62 .1 35 0.14 0.4
M 52 ,3 23 70.3 .1 72 2.04 0.13 0.47
NC o I 9.0-1 .1 0 92 19 3.1 .1 15 0.25 0.8 0.26 t.r
NC 2 4.0- 6.5 92 19 3.0 .1 5 0.25 0.8 0.24 0.23
NC 5 8.0-1.0 34 291 12.3 .1 16 0.34 0.9 0.24 0.56
NC 01 3.0- 5.0 53 591 23. .1 65 0.32 0.8 0.27 0.83
NC 02 .1 0- 2.0 52 ,82 102 20.3 .1 52 12.0 0.1 170. .1 54
01 R 21 ,31 291 3.8 .1 19 0.35
20 R 72 ,92 209 71.3 .1 84 0.73
A 1 14 ,4 71 14.3 92. 0.54
S H 62 791 97.3 14.2 .1 09
0.5 52.0 0.65 0.27 0.15

4.5kg 装入した 溶落ち直後金属マンガンあるいは銅


を所定量配合し,しかる後 051 0
C に 5 分間保持し,い
ずれも前報と同様 0.3% の珪化カルシウムで接種を行な
った.第 1 表は供試材の溶解ヲ配合ヲ処理条件を示す.
第 2 表は供試材について行なった各種試験成績を示
す これらのうちチルテストはマンガンー量に応じた変化
を示さず,マンガン 2.04% でチル深さが 4.5-7.0mm
と浅くなっている.またチル深さ 5-7mm の M O 試料
と同じ条件で溶かした NCO 試料は 9-11mm でかなり
相違している.しかしブリネル硬度はマンガン量の増加
に伴ない, 19 から 23 まで連続的に変化した.銅につい
ては 0.23% 銅 (NC )2 試料で,いくぶん浅いチル深さを 担~ 30
示しているほかは,銅量の増加と共にチルは浅くなって
いる.抗張カはいずれも約 30kgjmm 2
を示していたが, ft品l
含有元素と抗張力との間に関連性が認められなかった.
20
供試材の検鏡を行なったところ,黒鉛は A 型,地はパ
ー一会ー n
H%35.j
ーライトでマンガンおよび銅の鋳鉄組織に対する効果は
明らかではなかった.その他 SH 鋳鉄は微細共品型黒鉛 うM η
ー一仁トー ,? 04 も
にパーライトとわずかのフェライト,球状黒鉛鋳鉄は球 10
状黒鉛で地はフェライト約 50% のパーライト地である. 一一0 n
M一
%52.Q-
キュポラ鋳鉄の FC 41 01( R) は粗大片状黒鉛にパーラ
イト, FC 72 02( R) では E 型黒鉛にパーライト地であ 一一企3-3.01;'0 付

る. OO 2 3 4 5 6
.3 実験方法
表面力、らの距離 ,
mm
第 1 図 5,
500V ,3 秒処理におけるマンガン
上記供試材より前報と同様のリング状試片を加工し, 含有量と硬度分布との関係

( 32 )
鋳鉄の高周波焼入れによる硬化能に及ぼす成分元素の影響 3

次のような加熱条件で高周波焼入れを行なった.すなわ い.第 2 図も第 1 図とほとんど同様の傾向を示すが,繰


ち 5,
500Vx3 , 5,
秒 500V x 3 秒 x2 回繰返し, 5 ,
0 返し焼入れのため,マンガンの効果が特に著しく現わ
Vx4 , 5,
秒 OOOV x 3 秒 x2 回繰返しおよび 4 ,
500V れ,高マンガンの M 41 および M20 試料の表面硬度低
x5 秒で,銅量を変化させた試料ではさらに 4 ,
5 ∞V x 下が特に急激に起って U 、る.
5. 秒を附け加えた.処理後ロックウェ yレC スケー lレで 第 3 図は 5 ,
OOOVX 4 秒処理で加熱時間が長いので過
三方向の平均硬度分布曲線を求めた. 熱効果が現われ,マンガン量にほとんど関係なく,約 3
mm 深さまで硬化し,約 2mm 深さに最高硬度の位置
.4 実験結果および考察
がある. そして加熱表面にかけて硬度が低下している
1.4 マンガン含有量の影響 が,やはり高マンガンほどその傾向が大きい.第 4 図は
.4 .1 1 硬度分布に及ぼすマンガンの影響 5,
OOOV x 3 秒を 2 回繰返したものであるが 3 秒加熱
第 1 図および第 2 図は 5 ァ500V x 3 秒および 5 ,
500V のため第 3 図の場合よりも硬化深さは浅く,表面硬度は
x3 秒 x2 回繰返し処理後の硬度分布曲線である.通電 低下していない.またマンガン量の影響は母材の硬度差
時聞は短いが,電圧が高いため,このような小さい試験 を除いてほとんど認められない第 5 図は 4,
500Vx 5
片に対しては過熱気味の条件である.したがって硬化深 秒処理で,通電時間はかなり長いのであるが,電圧が低
さは深くラマンガン量に関係なく約 2mm 深さに最高硬 いため,いずれもごく表層だけが硬化し,マンガン量の
度の位置がある.それより表面にかけて著しい硬度低下 多いものほど表面硬度は高い.これは変態温度の高低の
が認められ,マンガン量の多いものほどその傾向は著し 影響がわずかながらも現われ,ごく短時間の加熱にもか

60

。04
Q 三
叫使

037 t
U



酔〈 2'->

02 02
.--.- 35.1 % Mn
一一
口.- 40.2 弘附
01 卜 10
畳 一-0- 52.0 う
ら門n .一一0- 20. 5%Mn

O
o 2 3 4 5 6 0 1 2 3 4 5 e
末面からの距離 ,
m 表面力、 b の 距 離 m ,
第 2 図 5,
500V ,3 秒処理 2 回線返しにおける 第 3 図 5,
OOOV ,4 秒処理における 7 ンガン
マンカ桶ン含有量と硬度分布との関係 含有量と使度分布との関係

( 3 )
34 鋳 物 第 36 巻 第 1 号

06

05
~ O.25%Mn


一ムー
-%3.0 何
日 I\~ -6- 33.0 骨h
J( 04

ご I,



・α--8 % nM 、. -一

-- 0.8% Mn

-ー

.-. !.53~品川口 刷
/r ー

企-35.! 1to1" n
制 03


ふ中〈


ミヨ〈

02 02

01 )0

O O
O 2 3 4 5 6 O 2 3 4 5 6
表面力、うの ~2 高佳 , m 表面かうの匝高佳, mm
第 4図 5,OOOV ,3 秒処理 2 回繰返しにおける 第 5 図 4,
500V ,5 秒処理における 7 ンガン
7 ンガン含有量と硬度分布との関係 含有量と硬度分布との関係

かわらず,オーステナイト化が低マンガン鋳鉄よりも進 いて大略マンガン量の増加と共に硬化深さがわずかなが
んだためとみられる. らも深くなっていることが認められる.
以上の各図のうち第 1-3 図において,高マンガンに 硬化深さに最も大きく影響する要因は,その材料の変
なるほど著しい表面硬度低下を示したが,このような現 態温度であることは前報で珪素の影響を論じた際に,考
象はマンガンを多く含む鋳鉄の著しい特長である.すな 察を試みたとおりである.また同時に供試材につき,急
わちマンガンは Ms 点を下げて,オーステナイトを安定 速熱膨脹計を用いて,変態温度の実測をも行ない,変態
化し,さらに Fe-C-Mn 三元系のオーステナイト領域を 温度と硬化深さとの聞に関係のあることも認めた.
高炭素側に著しく拡げるため,過熱によってオーステナ マンガンの影響は Fe-Mn 系状態図よりみて,マンガ
イト中へ多量の炭素が溶解し,急、冷の結果オーステナイ ンの増加と共に変態点が下降することがわかる.特にマ
トが残留しやすくなるためである.この点に関し後節に ンガン 30% になると,オーステナイト域は常温まで引
おいて論及する. き下げられる.そこで本報でも供試材の成分範囲内でど
.4 .1 2 硬化深さに及ぼすマンガンの影響 の程度変態点にひらきがあるかを確かめ,さらに硬化深
前報に述べた方法と同様にして硬化深さを決定した. さとの関係を明らかにする目的で変態点の実測を試み
第 6 図は硬化深さとマンガン量との関係を,種々の加熱 た.第 7 図はその結果を示しており,マンガン量の増加
条件ごとに図示したものである.高周波電圧,加熱時間, と共に変態温度の下降することが認められる.本供試材
繰返し:焼入れ回数によって,種々の硬化深さを示してい のマンガン量の範囲内で,マンガンが増えると,加熱、時
る.測定値のばらつきも相当大きく,三,三の例外を除 変態完了温度は約 8
05 0
C から 780 0
C に変化し,その差

( 34 )
鋳鉄の高周波焼入れによる硬化能に及ぼす成分元素の影響 35

一ー
ーー0 ー ーーー OF=1346+50. )iS(4 -45.0( 乱)
n1
一一一一.一一一一
一回ムーーーー
これを前報および本報の実験の供試材の成分範囲にあ
---A ーー一 てはめてみると,前報の珪素量を変化させた試料では,
一一-0一一一ー
一一

1--一
一一一 高珪素 (3.95% )iS で 928 0
C ,低珪素(1. 53% )iS で
一ー一回一ーー
-[圏一一-
67 0
C となり,その差は 6
3 0
C である.また本報の高マ
J r一
一一一
一一一
一一「 ンガン (2.04% Mn) で 827 0
C ,低マンガン 3.
0( 必
Mn) で 07 0
C となっており,その差は 24 0
C である.
また .E .C Bain の発表した第 8 図の各種合金元素量
と共析温度との関係曲線)3 に本報供試材の成分範囲をプ
ロットしてみると,珪素1. 6935 で約 07 0
C ,珪素 3.95
% で 約 058 0
C となれその差は約 08 0
C である.また
0
マンガン 0.33% で約 527 C
C ,2.04% で約 517 C で
あり,差は約 01 0
C となっている.
鋳鉄そのものについては佐川氏引の研究があり第 9 図
はその一部を引用したものである.第 9 図に本研究供試
材のtf 素およびマンガン量に相当する変態温度を求める
と,珪素については 537 0 _ E7 O O C (差約 54 0 C ),マン


31 0
第 6 図 硬化深さに及lます 7 ンガン量の影響 1,
02

0001 l
1,
01

仁J

‘1,
0


提 08

"' 08



0
06
ベグー¥¥
l 、
ト、 '1 、

05
O 2 4
6 8 01 21 41 61 81
合金元素,%
第 8 図 共析温度におよぼす諸元素の影響
)3niaB(
5

υ
ハU
n

52.
u

50 -1 5 2
v

司〉ガシ合有量,物
第7 図 マンガン含有量と変態温度との関係

は約 25 0
C となっている.なお前報の珪素量のひらきで
冷却時変態開始および完了温度の上下差はいずれも約
01 0
C を示した.
次に過去におけるこ,三の研究者の実験結果に対して

本研究供試材の成分範囲をあてはめ,変態温度にどの程 007
度の差違が現われるかを明らかにし,本報実演
J I値と比較
対照してみる.
123012301230123
.C O. Burgues わは鋳鉄において,変態温度は珪素お nN ,
弘 o/nM 1I n ,
弘 ;S ,

よびマンガンにより,次式に従って変化すると述べてい 第 9 図鋳鉄の変態温度に及ぼすマンガン
る. および珪素の影響(佐川 )4)

( 35 )
63 鋳 物 第 36 巻 第 1 号

第3表 二・三の研究者による変態温度の比絞

¥ぞ?温度とその 変態闘の計闘に
よる
l 第8 関合金元組と
共析温度の関係より
第 9 図 iS ,Mn 量と
変態温度の関係よ
り,ただしセメンタ
前報第 01 図および
本報第 7 図本研究の
¥C¥
本報供試材温囲、¥度%差¥ O ・ 実測値より,ただし
)seugrB.OC( I )niaB.CE( イト系の上限 初年 冷却時変態開始温度
の成分範 (佐川繁 )
珪 素 1 . 35 67 70 735 750
珪 素 59.3 928 850 780 058
温 度 zz 台ケ 63 80 45 01

7 ンガ、ン 0.3 07 527 765 157


マンヵーン 2.04 728 715 547 714
温 度 Zさd己z 42 01 20 73

ガンで 5
47 0
_765 0
C (差約 20 0
C) となる. 第 1 図は 5 ,
500V x 3 秒処理で,硬化深さも深く,
以上引用資料および本報の実演j値を比較するためにま 同時に表面硬度の低下がかなり認められるが,その程度
とめると第 3 表のとおりになる.研究者によって供試 は銅量と関係なく,いずれもほぼ同様である 同じ処理
材,測定方法が異なるため,数値に差違のあるのは当然 を 2 回繰返した第 21 図でも同じ傾向が強くなるだけで,
であるが,いずれについても高珪素と低珪素との聞の変 銅量の効果は現われなかった さらに第 31 図は 5 ,
0
態温度差は,マンガンの場合よりも相当大きいのは共通 Vx3 秒処理を 2 回繰返したものであるが,硬化深さ浅
した傾向である.したがって本研究において,高周波焼
入れによる硬化深さが,珪素量を変化させた場合かなり 06
大きく差違が現われているが,マンガンの場合ほとんど
変らないのは高周波焼入れによる硬化深さが変態温度に
影響されるためであることをここに改めて確認すること
ができる.
.4 .1 3 最高硬度とマンガン量との関係
前掲第 1,2 ,3,4 図のマンガン量の影響を示す各群
O
の硬度分布曲線によれば,第 4 図を除いて表面硬度の著 Qこ 40
しい低下があり,第 4 図の 5 ,
000V x 3 秒 x2 回繰返し
処理では表面に,その他の図では 2mm 深さの位置に最

高硬度の層がある.第 01 図は最高硬度とマンガン量との


U

υ

関係を示しているが, R
c 48-54.5 の範囲にあって, Mn
最の多少による影響はほとんど現われていない.一般に 四〈
Hデ

鋼の場合,合金元素は鋼の焼入れ性に顕著な効果を有す
一べ)- .rt
るが,その最大硬さにあまり影響しないといわれてい 02
る町・第 01 図は鋳鉄の場合でもそれが適用されること
を示している.
2.4 銅含有量の影響
06
01
にJ
Cど

也~ 05

"" 院予

00 1 2 3 4 5 6
5.1 2 25. 表面かb の 距 離 ,mm
.;::- :-ガ〉合有量 0,
/0 第11 図 5,
500V ,3 秒処理における銅含有量と
第01 図 最高硬度
ζi 及ぼすマンヵーン量の影響 硬度分布との関係

( 63 )
鋳鉄の高周波焼入れによる硬化能に及ぼす成分元素の影響 73

06

50 05

-;6- t.r

-4 0
・-一 32.0 01'ιC

-.A.:--- %65.0 uC
叫世

υ



U

-0- 38.0 % uC



品4
L ヲ
ζ
~O- .rt
02 02
-6- .rt

01


- -α23 弘C
u 01

O O
O 2 3 4 5 6 O 2 3 4 5 6
表面からのf le:喜佳, mm 表面力、うの距離 ,mm

第21 図 5 ,
500V ,3 秒処理 2 回線返しにおける 第31 図 5 ,
000V ,3 秒処理 2 回線返しにおける
銅含有量と硬度分布との関係 銅含有量と硬度分布との関係

く,表面硬度の低下もない.しかし硬化層の約 1mm 深 前報にも述べたように,変態点が低くなったために,急


さまでは,銅量と関係なく全く同じ硬さであるといって 熱時におけるオーステナイト化が早い時期に起ったこと
よい.第 41 図は 4 ,
500V x 5 秒で弱い処理のため,硬 がその理由である.同時にまた変態点は硬化深さに対し
化深さが非常に浅く,ごく表層だけに硬化層が限られて でも影響をおよぼし,それを示すのが第 51 図であるが,
いる.また表面硬度は銅が多いほど高くなっている. それでは銅量による硬化深さの変化はごくわずかであ
次に第 51 図は硬化深さと銅含有量との関係を示して る.それに対応する銅量の多少による変態点の高低がは
いる.ばらつきの多いものを除けば大略銅量の増加とと たしていかに変化するかを確認する目的で前項のマンガ
もに硬化深さはごくわずかながらも深くなっている. ンの場合と同様,急速熱膨張計を用いて変態点の測定を
以上の実験結果のうち,第 1 ,21 図の表層部の過熱 行なった.第 61 図はその結果を示す.それによれば変
による表面硬度低下の状態をみると,これでは銅量によ 態温度は銅量の増加と共に明らかに降下している.ここ
ってオーステナイトの残留化傾向が影響をうけないこと においても前の珪素およびマンガンの場合と同様,材料
がわかる.これは本実験に用いた試料の範囲では,銅が の変態温度が硬化深さあるいは表面硬度に影響すること
増加しても, Ms 点は変化しないことを意味している. がわかる.
事実沢村氏,上田氏の報告6) によると,黒心可鍛鋳鉄に 3.4 各種現場製鋳鉄および鋼材との比較
おいて,銅約1. 5% までは Ms 点は全然変わらないとさ 第 71 図,第 81 図は各種の工場現場で製造した鋳鉄,
れているが,これは本報の実験結果を裏書している.次 鋼材の硬度分布を示す.硬化深さにはほとんど差違はな
に第 41 図では銅が表面硬度を高くしているが,これは いが,表面硬度は 0.5% 炭素鋼,球状黒鉛鋳鉄, SH

( 37 )
83 鋳 物 第 6
3 巻第 1 号

60


一ーー 0-- ー 450 メ3
5
450 A'35

ーー -!s-- 450 ! 35 十450 x35.5
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50"/35
λ3S x 2 回

一ー一回一一 50 メ(
)83 2回
一ーム,- rt , 5

一・--- Q ,2
3%Cu

30 ~
i l -A:- 0 ,8
3% 白 j E
E

4

3
咽同ミ~ 山 _1 1 ヤj

~


fJ I
20!---WH Eぎ

01
。 O '6.1

O 第 51 図
O 2 43 5 if
表面からの距離 ,mm
第41 図 4 ,
500V ,5 秒処理における銅含有量と
硬度分布との関係

001
鋳鉄, FC 7
2 キュポラ鋳鉄の
[I)買に低くなり, FC 41 は著
しく軟かくなっている.鋼が著しく硬化しているのは黒
ハH v n H V
AHU
GunnuηI

鉛が存在しないためと,比較的高炭素であるため当然で

ohM

ある. FC 7
2 は比較的低珪素であるため,表面に向って
硬度が低下しているのが目立つ.球状黒鉛鋳鉄, SH 鋳
内け
vnHυ

鉄は微細黒鉛であるが,高珪素であるため,かえって過
煩制崩

熱J冒のオーステナイトの残留を抑えて,表面硬度をかな

HV

り高くしている.なお微細黒鉛では,表層過熱部にオー
ステナイトを残留しやすい傾向があるが,このことに関
しては後報で詳論する予定である. FC 41 の 01 R 試料 一一一+一一加熱賊制始温度
06 一一--6--- 加熱時宜態符 7 温度
2 一
一一ー 冷却時変態開始温度
が硬化していないのは,鋳造のままで抗張力 14kg/mm ------0
---0 一一一 冷却騎変態終 3 温度

という著しく低い強度を与えるような,黒鉛の量あるい
05
は形状分布を有していたのが焼入れ組織の硬さに影響し 4.0 8 白 . 12 . 18
たのである.ただし地組織は焼入れ前すべてパーライト jrt',令有量,%

であり,それがそのままマルテンサイトイとしている. 第 61 図 銅 含 有 j量と変態温度との関係

4 .4高周波焼入れ試料の顕微鏡組織
次に本実験の焼入れ試料のうちマンガンおよび銅を変

( 83 )
鋳鉄の高周波焼入れによる硬化能に及ぼす成分元素の影響 93

FC 41 o ROI
ムR
02
FC 27 • IA 06
企 50C
球状黒鉛鋳&~ 口 SH

炭素昔前

3H 鋳童文

O 一・一一球状黒鉛鋳古久
A斗 1

04
0NL

c(
ー,
tJ--. 炭素鋼 C05S


ハU


ν



?<-I

01

01
G

O
O 2 3: 4 5 6
表面力、らの~ê.寓注, mm
第81 図 各種現場製鋳鉄および鋼材の
4,
50V ,4 秒処理における硬
度分布

化させた試料の検鏡組織を示す.写真 1-3 はマンガン 5 は 0.5mm 深さで,高マンガンの過熱組織を示し,オ


0.3% 試料に 5 ,
50V x 3 秒処理を 2 回繰返したもの ーステナイトの残留多く, Rc 35-40 の硬さと思われ,
の焼入れ硬化層である.写真 1 は O ‘4mm 深さの表面過 写真 1 のような均質なマルテンサイトではない.写真 6
熱部であるが,低マンガンのためオーステナイトの残留 は 2mm 深さの高硬度の位置で,パーライトの層状組織
少なく,均質な硬いマノレテンサイトである.黒鉛は過熱 の痕跡方、鳴っている.写真 7 は 3.9mm 深さの境界都を
のため見掛上太くなったかのごとくみえ,また黒鉛の縁 示す.
から亀裂が発生している.写真 2 は同じ試料の 3.2mm 写真 8,9 ,01 はマンガン 2.04% 試料に 5 ,
500Vx
深さの位置で,硬度は充分に高いが,境界層に近いため, 3 秒処理を 2 回繰返した硬化層の組織である.写真 8 は
主として黒鉛の周辺にパーライトがみられる.写真 3 は 写真 5 と同じく, 0.5mm
深さの過熱部で,マンガン量
境界層附近を示し,白い部分が硬化したマルテンサイト が多いために,残留オーステナイト多く, .l 53% のも
である.写真 4 は同じく境界層を 05 倍に拡大したもの の(写真 )5 よりも粗い針状組織を示し,硬度は低い.
で黒鉛の周辺にパーライトが認められる. 主として黒鉛周辺にやや暗い針状組織を示さない均質
写真 5 ,6,7 はマンガン1. 53% 試料を上と同様 5 ,
05 な範域が認められるが,この部分は過熱により特に高炭
Vx3 秒処理を 2 回繰返したものである.そのうち写真 素となり,その上マンガンの影響が加わってほとんど残

( 93 )
04 鋳 物 第 63 巻 第 1 号

eP 時
f
艇 4


官予

写真 1 0.3% Mn (M )0 ,5,
500Vx3 秒 x2 回 写 真 4 0.3% Mn (M )0 ,5 ,
500Vx3 秒 x2 回
表面からの距離 0.4mm 表面からの距離 3.7mm ,境界部
02 倍
, ピクリン酸アノレコーノレ腐蝕 05 倍
, ピクリン酸アノレコーノレ腐蝕

ふ議ゑ立J
写真 2 0.3% Mn (M )0 ,5,
500Vx3 秒 x2 回 写 真 5 .1 53% Mn (M )41 ,5,
500Vx3 秒 x2 回
表面からの距離 3.2mm 表面からの距離 0.5mm
02 倍
, ピクリン酸アノレコー Jレ腐蝕 02 倍
, ピクリン酸アルコーノレ腐蝕


写 真 3 0.3% Mn (M )0 ,5 ,500Vx3 秒 x2 回 (M )41 ,5 ,
写真 6 .1;;35 ぢMn 500Vx3 秒 x2 回
表面からの距離 3.6mm ,境界部 表面からの距離 2mm
02 倍
, ピ ク リ ン 酸 ア Jレコーノレ腐蝕 02 倍
, ピクリン酸アノレコーノレ腐蝕

( 04 )
鋳鉄の高周波焼入れによる硬化能に及ぼす成分元素の影響 14

写真 7 .1 53% Mn (M )41 ,5,


500Vx3 秒 x2 回 写真01 40.2 6-'5 Mn (M )2 ,5 ,
500Vx3 秒 x2 回
表面からの距離 3.9mm ,境界部 表面からの距離 3.6mm ,境界都
02 倍, ピクリン酸アノレコーノレ府蝕 02 倍,ピクリン酸アルコール腐蝕

留オーステナイトとなっていると考えられる.この部分
の硬さを荷重 25g を用いて微少硬度計で実測したが 042
-265Vhn を示した.粗い針状組織の部分は 30-40
Vhn で,写真 5 の大部分あるいは写真 8 のところどこ
ろにみられる程度のやや微細な針状組織では 50-650
Vhn を示す.次に写真 9 は 2mm 深さの最も硬い部分
で,地は微細な針状組織のマルテンサイトである.硬度
は特に高く, 70-80 Vhn を示している.写真 01 は
非硬化部との境界であることがよくわかる.明るい部分
が硬化層に属し,日音い部分は急熱に際して変態を起さず,
./ーライトのまま残ったところである.硬化部のなかに
写真 8 2.04% Mn (M )2 ,5 ,
500Vx3 秒 x2 回 は層状のパーライトセメンタイトの一部を残している.
表面からの距離 0.5mm 写真 11 は M 41 (マンガン1. 53 ぢ)試料に 5,
000V
02 倍
, ピクリン酸アノレコール腐蝕 x3 秒処理を 2 回繰返した場合の 1mm 深さの組織を示
している.表面が最高硬度に達しているので(第 4図

)
地は lmm 深さでも過熱組織とはならず,微細な針状の
マノレテンサイトである.写真 21 は 2mm 深さの非硬化
部との境界である.
写真 31 ,41 ,51 ,61 ,71 は前掲写真 8 ,9,01 の試
料を高倍率で示す.写真 31 は 0 ,
3mm 深さのごく表層
附近で,一部の黒鉛周辺に均質なやや暗い部分があり,
これが残留オーステナイトであることは写真 8 の説明で
述べたとおりである.その他の明るい部分は粗い針状組
織で,写真 71 まで順次微細な組織へと移推して行くと
ころがよく観察される.特に写真 71 は層状組織の硬化
部とパーライトが非連続的に境を接しているのがよくわ
写真 9 2.04% Mn (M )2 ,5 ,
500Vx3 秒 x2 回 かる.
表面からの距離 2mm 写真 18-22 は鋼を最も多く含む NC 02 試料 (Cu
02 倍
, ピクリン酸アノレコー Jレ腐蝕 .1 54%) を 5,
500Vx3 秒 x2 回処理せるものの表面附

( 14 )
24 鋳 物 第 63 巻 第 1 号

写真11 .1 53% Mn (M )41 ,5 ,


000Vx3 秒 x2 回 写真41 2.04% Mn (M )2 ,5 ,
500Vx3 秒 x2 回
表面からの距離 lmm 表面からの距離 0.5mm
02 倍
, ピクリン酸アノレコー Jレ腐蝕 05 倍
, ピクリン酸アノレコーノレ腐蝕

写真21 .1 53% Mn (M )41 ,5 ,


OOOVx3 秒 x2 回 写真51 2.04% Mn (M )2 ,5 ,
500Vx3 秒 x2 回
表面からの距離 2mm ,境界都 表面からの距離1. 0mm
02 倍, ピクリン駿アノレコーノレ腐蝕 05 倍 , ピ ク リ ン 酸 ア ル コ ー Jレ腐蝕

~込

写真31 2.04% Mn (M )2 ,5,


500Vx3 秒 x2 回 写真61 2.04%
a
Mn (M )2 ,5 ,
500Vx3 秒 x2 田
表面からの距離 0.3mm 表面からの距離 2.0mm
05 倍
, ピクリン酸アノレコーノレ腐蝕 05 倍
, ピクリン酸アノレコーノレ腐蝕

( 42 )
鋳鉄の高周波焼入れによる硬化能に及ぼす成分元素の影響 34

写真71 40.2 労 Mn (M )2 ,5 ,
500Vx3 秒 x2 回 写真02 .1 54% Cu (NC )02 ,5 ,
500Vx3 秒 X2 回
表面からの距離 3.6mm ,境界部 表面からの距離 3.0mm
05 倍 , ピ ク リ ン 酸 ア ル コ ー J レ腐蝕 02 倍
, ピクリン酸アノレコーノレ腐蝕

写 真81 .1 54% Cu (NC )02 ,5 ,


500Vx3 秒 x2 回 写真12 .1 54% Cu (NC )02 ,5 ,
500Vx3 秒 x2 回
表面からの距離 0.5mm 表面からの距離 3.5mm ,境界部
02 倍
, ピクリン酸アルコーノレ腐蝕 02 倍
, ピクリン酸アノレコーノレ腐蝕

写 真91 .1 54% Cu (NC )02 ,5,


500Vx3 秒 x2 回 写真2 .1 54% Cu (NC )02 ,5,
50V x3 秒 x2 日
表面からの距離1. 3mm 表面からの距離 6.0mm
02 倍
, ピクリン酸アルコーノレ腐蝕 02 倍
, ピクリン酸アノレコール腐蝕

( 43 )
4 鋳 物 第 63 巻 第 1 号

近から, 6mm 深さの非硬化部にかけての組織変化を示


している.硬度分布からみても(第 9 図),表面の硬度
低下は少ないので,表面附近を示す写真 81 でもやや粗
い針状がみられる程度で,マンガンの多い試料程粗い組 阿

織ではない.
前掲の写真 1
3-7 をみると,試料の表面から内部に
かけて,粗大な針状組織が連続的に微細化して行くのが
*3

時 日! (対数日畳)
明らかに認められる.粗大な針状組織は表面の過熱され
第02 図 異 な っ た Ms 点をもっ鋳鉄地組織
た層に現われ,しかも特に高炭素とみられる残留オース
における冷却曲線と恒温変態曲線
テナイトに接し,硬度は低い.これが単に"?}レテンサイ との関係を示す説明図
トとみなしてよいものであるかどうかについては疑問が
ある (もっとも,かりにマルテンサイトであったとし くの硬化組織はこのような経過をたどって生じたもので
ても硬度が低いことから考えて残留オーステナイトとマ ある.第 02 図 b では, Ms 点が常温よりわずかに低い
ルテンサイトとが混在したものとみるのが妥当である. ) ため,冷却曲線は Ms 点を通過せず,マルテンサイト変
そこでこの問題について考察を試みたい. 態を起こさない しかも常温に保持されて長時間経過し
第 91 図)7 は Ms 点と炭素量の関係を示す図で,炭素 でも T.T.T 曲線に遭遇しないから,変態を起さず,
量が高くなると Ms 点が降下するところを示している. オーステナイトのまま残留する.次に Ms 点が常温より
鋳鉄を高周波焼入れした場合,短時間で、あっても表面の かなり低いような特に高炭素の部分では,第 2
0 図c に
過熱部においては,黒鉛は地へ溶解し,急激な炭素の濃 示すように急冷後常温にあるいは時間保持されて T.T.
度勾配を保ったまま急冷されるから,表層の地組織中に T 曲線に交わり,下部ベイナイトを析出することになる.
は,著しく高炭素の部分が生ずる.特に高炭素であれば, 以上のように考えると,表層の過熱層では,残留オース
第 91 図より推測されるように, Ms 点は常温附近ある テナイトラ"?}レテンサイトの外に,下部ベイナイトの析
いはそれ以下になることが考えられる.すなわち過熱の 出が充分に推測される.
程度あるいは炭素濃度の差違によって,種々の異なった 上述の残留オーステナイトあるいは粗大針状組織は鋳
Ms 点、をもっ部分を生ずることになる. 鉄の急熱急冷に際して,ごく容易に現われるもので,硬
度も低く,表面硬化を目的とした,高周波焼入れのよう
05 な処理にとっては,決して望ましいものではない.従っ
て後報においてあらためて実験を行ない本報の考察を裏
04 付けたい.

区 003
並 .5 鋳鉄の高周波焼入れによる硬化能と普通焼入れに
F耳 おける焼入れ性との関係
02 。


、 普通焼入れの場合の硬くなりやすいということを焼入
. 12 . 14 れ性,焼入れ感度あるいは硬化能という語で定義してい
る.これは冷却速度に関係した焼きの入りやすさを定量
第91 図 Ms 点 lとおよ lます炭素量の影響 的に現わしたものである.すなわち焼入性がよいという
)7)sneluB( ことは冷却速度がおそくとも,充分に焼きが入ることを
意味している.
そこでこれらの Ms 点の種々異なった部分についての ところが高周波焼入れによる硬くなりやすさすなわち
T.T.T 状態図を仮定し,それらの図上を同一条件で急 硬化能を考えてみると,これは質的な硬くなりやすさと,
冷した場合の組織の現われ方を考えてみる.第 20 図 a 量的な硬くなりやすさにわけで考えることができる.質
は炭素量低く, Ms 点が常温より高いような部分につい 的とは表面がどの程度まで硬くなり得るかということで
ての例で,かかる場合,冷却曲線は Ms 点を通過するか あり,量的には硬化深さであると考えてよい.高周波焼
ら,硬 u 、微細針状のマルテンサイト組織となる.最も多 入れの場合,急冷に際して,加熱表面からの冷却剤(主と

( 4 )
鋳鉄の高周波焼入れによる硬化能に及ぼす成分元素の影響 45

して水)による冷却と,品物の芯部,すなわち非加熱部 が,それらのほかにオーステナイト中の炭素の拡散速度
八の熱伝導による冷却が同時に行なわれる.そして表皮 およびオーステナイト化の遅滞の程度が急熱であるだけ
の加熱部分の熱容量は小さいから,この場合の冷却速度 に大きな因子となるはずであるが,本実験では明らかに
は著しく急速である.したがって極端な例外として,焼 することはできなかった.
入性れの著しく悪いもの,あるいは著しく加熱層が深い
.6 高周波焼入れ用鋳鉄に対するマンガン配合の意義
ために冷却速度の遅くなることが避けられないものを除
いてはラ必ず硬化は起るのであり,冷却速度が比較的小 緒言において述べたごとく,マンガンを適量配した鋳
さいからといって,高周波焼入れによる表皮の硬さある 鉄は高周波焼入れ用材料として好適であるとされてい
いは硬化深さが影響をうけることはまづないといってよ る.この理由は鋼にマンガンを多く含有させた場合,焼
い.すなわち冷却速度がおそくとも充分に焼きが入ると 入れ性が著しくよるなることから類推されたものと考え
いう意味の普通焼入れにおける焼入れ性はほとんど問題 られる.第 5 図の硬度分布曲線で高マンガンとなるほど
にならないのでで、ある 表面硬度は高くなっているが,これは試片寸法が同じ
第 12 図は焼入れ性倍数と各種合金元素量との関係)8 で,焼入れ条件が同じであれば,急冷による冷却速度も
で,鏑に対する普通焼入れの場合であるが,図中珪素, 全く同じであるから,冷却速度が遅くとも充分焼きが入
マンガンは焼入れ性を向上させる元素であることを示し るという意味の焼きの入りやすさが原因となったのでは
ており,特にマンガンは著しい.前報1)および本報の実 ない.それはマンガンが多くなれば,変態温度が下がっ
験の硬度分布曲線をみれば,これらの元素の焼入れ性に て,短時間の加熱にもかかわらず,オーステナイト化が
対ナる影響を介して,表面硬度,硬化深度に対してほと 進行するため表面硬度が高くなったのである.したがっ
んど効果を現わさなかったことがわかる. てマンガンについても前節に述べたように,高周波焼入

.3 8J 08.8 れに際しての硬くなりやすさ(硬化能)と普通焼れ入の
6.3
4.3
H:
.3 2
Mo Cr
iN H1 ヒ
方 8.
4 0
00.8
06.7
焼入れ性とは全く無関係であることがあてはまる.
次にマンガンを多く含む鋳鉄を故意に選んで高周波焼
彰 0.3 レ
/ 02.7 ぷ
8.2 08.6 ""

,04.6: : . 入れを行なった場合に起りやすい鋳鉄特有の現象につい
... 6.2
<: 4.2 Mn j 713 00.6 τ
長 02.2寸
室 -1 7 06.5 ;,:. l tをあげ,それについて考察を試みよう,この問
て,実伊
00.2 ト廿4 .502
題に関し調査の対象になった試料は旋盤のベッドで耐摩

. 108hflト-- 08.4
.106ι !ト
#- IA" IY Mn 04.4
耗性を与えるために摺動部分に対して高周波焼入れを行
1-]J

/
.1 04緋.--1 00.4
.1bf02 ゆ f
00.1 1ど に 41
o 4.0 唱00.0 021 06.1 002 042 082 023
の0
延fB長U刀旧

63.0
1日
72
1 日O 06.3
02.3 なったものである.供試材はキュポラ溶解の非接種鋳鉄
主者,% で,その化学成分は第 4 表に示すとおりである.マンガ
第12 図 添加元素の焼入れ性倍数 )8dyoB( ンは一般の鋳鉄よりもやや多く,本報供試材の M 7 試
ところで鋳鉄に高周波焼入れを行なう場合,その硬く ;;88.0(
料 ぢ Mn) にほぼ相当するマンガンを含んでいる.
なりやすさ,すなわち硬化能に対していかなる要因が作 顕微鏡組織はパーライト地に比較的大きい片状黒鉛をも
用するかということを考えてみると,今までの実験結果 っているが,その型は非接種鋳鉄であるため A ,E 型混
から,表面積度には組織中のノf ーライト以外の相,すな 在の黒鉛形態である.
わちフェライトおよび黒鉛の析出量,形状分布が影響
第 4 表高周波焼入れ供試品(旋盤ベッド)
し,それらが多くなる程表面硬度は低下する.またマン
の化学成分
ガンを多く含む鋳鉄の例のように,焼入れ後オーステナ
イトを多く残留するほど,表面硬度は低くなる.次に硬 F 分l と i S寸M;-IP|S
1

化深さに対しては,地組織の変態温度が大きく関係し,
変態点が低いほど硬化深さが深くなることは前項におい
-% 1 21.3 T26.1 01 判。川 oω9

て説明した通り明らかである.なお硬化深さのごく浅い M G 発振器で摺動面に対して高周波焼入れを行ない,
場合は変態温度が直接表面硬度を支配することは今まで 焼入れ面の一端より第 2 図に示す硬度測定,検鏡試片
の実験結果から知ることができる. をけずり出した.硬度分布測定はマイクロピッカース
以上述べたごとく高周波焼入れによる硬化能に対し 0g
硬度計,荷重 1, を用い,第 2 図の A ,B 2 線上
て,変態温度,素材の紙織などが大きな効果をおよぼナ に沿って 0.5mm 毎に行なった.

( 45 )
64 鋳 物 第 63 巻 第 1 号

マンガンがやや高いことがこのような現象を起した原因
8 線 A線
であることは明らかであり, マンガン 0.88% の M7

¥ム、/ ρ 且
一一一
」- 試料の高周波焼入れによる硬度分布曲線(第 1,2 ,3 図)

、 からも充分に推測できる.
以上本実験の製品の例にあるごとく,平坦部の表面を
特に最高硬度に遠せしめようとすれば,縁部あるいは溝,
孔,ノッチ部は急熱時に過熱を起し,マンガンを多く含
第2 図硬度分布測定位置
む鋳物では著しい表面硬度の低下が避けられない.従っ


8 て銅材に対する普通焼入れの場合,マンガンがその硬化
007 能を著しく向上させることを以って,直ちにそれを鋳鉄


¥' .
A 出
来 の高周波焼入れにあてはめることは非常に危険といわな
006
"'-
ければならない.
:> 005

ぺ .7 総 括

T
制 004

題003 本報告において,マンガンおよび銅の含有量を変えた

002 入 ~へこ . 接種せる片状黒鉛鋳鉄とそれに比較の目的でキユポラ鋳



ャ 鉄,球状黒鉛鋳鉄, SH 鋳鉄,炭素鏑を加えて,それら
001 を外径 30mmφ ,内径 16mmφ ,厚さ 8mm のリング状
o
5 面面

試片に加工し,種々の条件で高周波焼入れ実験を行なっ
l 航度
(離崎

RV
bA
表平

距上
か部

の線

た.その結果,高周波焼入れによる硬化能に関し次のよ
m
w分


a
nL

うなことがわかった.
( 1 ) 高周波加熱の程度が強い場合,マンガンを多く
008
含む鋳鉄ほど,焼入れ後表面の硬度に著しく低下し,最
007 高硬度の位置は内方部に移る.
006 (2 ) しかし,最高硬度の位置はマンガン量の影響を
R
""-
:> 005 ほとんど受けない.
3.( ) これはマンガンを多く含むほど,焼入に際して
(! 004

オーステナイトが残留しやすくなるためである.
,. . 配. 003 ( 4 ) 弱い高周波加熱の場合,マンガンの多くなるに
002 ともない,表面硬度は高くなる.
001 ( 5 ) マンガン量が増えるにつれ,硬化深さはわずか
に深くなる.
0
5 01 51 (6 ) 以上, (4) ,(5) の原因は変態点がマンガンは
表面かうの距離 ,
m
よって低くなったためで,本実験の供試材について,変
第42 図 縁 部 B 線上の硬度分布
態点を実測した結果,それを確認することができた.
第 32 ,24 図は硬度分布測定結果である.できるだけ ( 7 ) 最高硬度はマンガンによ勺て影響されない.
地組織のみの硬度を測ることに努めたが,黒鉛の影響が ( 8 ) 過熱による表面硬度の低下,すなわちオーステ
現われて,ばらつきを避けることはできなかった, A線 ナイトの残留傾向は銅によって影響をうけない,
上の硬度分布を示す第 32 図表面が最も高硬度を示して ( 9 ) 銅は弱い高周波加熱の場合,表面硬度を高くし,
いるが,第 42 図の B 線上の曲線は最高硬度が約 2mm また硬化深きをわずかに深くする.
深さの位置にあれ表面硬度は低くなっている.これは )01( 本報の供試材について変態点を実測したとこ
B 線の端が硬化層断面の隅角部に相当し,高周波加熱の ろ,わずかではあるが銅は変態点を低くし, (9) の理由
際過熱が起り,そのためオーステナイトの残留により, を裏付けることができた.
硬度が{尽くなった.これはこの製品の材質中に含まれる )1( 表層の過熱部に現われやすい粗大針状組織,残

( 64 )
鋳鉄の高周波焼入れによる硬化能に及ぼす成分元素の影響 74

留オーステナイトについて,想定した恒温変態曲線の説
文 献
明図を基にして考察を試みた.
)21( 鋳鉄の高周波焼入れによる硬化能(硬くなりや )1 中村:鋳物 5
3 )3691( ,7 ,3
すさ)と普通焼入れにおける焼入れ性との間に関係のな )2 .C .O Burgues : Foundry 82 )4591( ,4 ,41
いことを今まで著者の行なった実験結果から推論した. )3 .E .C Bain : Function fo the Aloying Elem.
)31( 高周波焼入れ用鋳鉄にマンガンを配合した場合 stn ni letS ,A.S.M. )9391( ,213
の実例をあげ,その方法が特に有効ではなく,却って危 )4 佐川い日本金属学会誌 15B )1591( ,5 ,6
12
険性のあることを説いた. )5 A. M. Shrager : Elemntary Metalurgy and
終りに本実験の遂行にあたり,全面的な御協力をたま Metalography
わった関西高周波工業株式会社の広瀬技師長および懇篤 )6 沢村,上回,山崎:水曜会誌 31 )8591( ,7 ,9
24
なる御指導を頂いた当館高瀬館長ならびに有力な御助言 )7 .D .K Bulens :letS and tI s Heat Treatment ,
を賜わった大阪大学茨木教授に深謝申し上げる. m )8491( ,03 ,John wiley & .snoS ,.cnI
)8 日本鉄鋼協会編:鋼の熱処理,丸善株式会社
)7591( その他に引用

2 月号掲載予定論文一覧表

随 想

研究論文

・.,.……・森 目
玉求状黒鉛鋳鋼の耐摩耗牲について・…・…・…………....・ ・
..・
H .. ・
..・
H .. H


部 正
署玉警

高力黄銅鋳物の機械的性質と合金元素との関係……・・…………・………・..,・ H ・

.河 野 幸 也
純 男
一高カ黄銅鋳物の製造に関する統計的研究一

鋳物砂による炭素鋼の摩耗過程について……....・ ・
..・
H . H ・-………..・ H ・.,・……・…久
.
橋 ↑

亘 建
中 次

自然乾燥鋳型の洗われ性について………・…-・…・・・・…・・・…・・・・ H ・
...・
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岡 和弘

鋳鉄の共品状黒鉛生成に関する二,三の実験・……・・・・………-…........・・ H ・・
H井
.. 川克也

技術資料

搬の強さと破壊機構こっし、て 市回川 隆
栄 次

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