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プ ラス チ ッ ク用 薬 液 疲 労 装 置 *
大 石 不 二 夫 ** 松 下 宏 ***
by
Fujio OHISHI
(Railway Technical Research Institute, J.N.R., Kokubunji)
and Hiroshi MATSUSHITA
(Tokyo Electrical EngineeringCollege, Tokyo)
1 緒 言 リア ミ ド) を取 り上 げ, 薬 液 と して は両 材料 に対 して
プ ラス チ ッ ク材 料 の動 的耐 久 性 の一 環 と して, 薬 液 強 い作 用 を及 ぼ す と され て い る塩 酸 を 用 い, 最 大 限 度
環 境 下 に お け る疲 労 を調 べ る装 置 の 開発 を試 み た. の た わ み振 幅 を与 え た.
プ ラス チ ッ クの空 気 中疲 労 に 関 して は, 最 近 か な り また 薬 液 疲 労 と並 行 して, 静 的 薬 液 浸 実 験 も行 な い,
1) 2)
研 究 も進 み, 島村, 黒 田 らの 報 告 は 設 計 デ ー タ と して 重 量 変 化 で 評 価 して, 繰 返 し変 形 の 下 で の 薬 液 劣 化 と
利 用 され て い る. しか しな が ら, 活 性 媒 質 と疲 労 を 引 の 相 違 を 調 べ てみ た.
3)
た 液 中 疲 労 装 置 を 発 表 した が, 今 回 は比 較 的 普 及 し て 振 幅 一 定 型 疲 労) に基 づ くプ ラ スチ ッ ク用 疲 労 試 験 機
い る プ ラス チ ック定 変 形 型 疲 労 試 験 機 (ASTM, D- を改 造 し, 薬 液 環 境 に おけ る疲 労 を調 べ る こ とを 試 み
671-63T, Method A準 拠) を 基 本 と して, 試 験 片 部 た も の で あ る.
分 に 薬 液 含 浸 させ なが ら疲 労 試 験 を 行 な うこ とを 試 み そ の外 観 を Fig. 1に, 試 験 片 形 状 を Fig. 2に, その
た. な お 同時 に, 従 来 疲 労 の判 定 は 主 と して破 断 回数 概 略 を Fig. 3に 示 す, この装 置 の原 理 は, 偏 心 クラ ン
に よ って い るが, これ に加 え てた わ み 振 幅 一 定 型 に お クに よ り片 持 の試 片 にた わ み振 幅 一 定 の繰 返 し変 形 を
け る荷 重 振 幅 の変 化 を 追 跡 し疲 労 挙 動 を調 べ た. 与 え る方 式 で, 破 断 回数 を計 数 して疲 労強 度 を 求 め る
本 法 の実 用 性 を調 べ る た め に, エ ンジ ニ ア リ ン グ プ も の で あ る, 基 本 とな っ たASTM試 験 法 は, 変形 ス
ラ ス チ ッ クの代 表 例 で あ り, 疲 労 強 度 もす ぐれ て い る ピー ドが1720c.p.m. と プ ラス チ ッ クの場 合, 高 速
ジ ュラ コ ン (ア セ タ ー ル コポ リマ ー) とナ イ ロ ン (ポ す ぎて 発 熱 を もた ら し, 試 験 機 の耐 久 性 の点 か ら も疑
問 視 され て い た. そ こで 今 回 は, 三 段 プー リー に 改造
*原稿受理 昭和45年5月4日 して, 1400c.p.m., 700c.p.m., 300c.p.m. と三 段
**正 会 員 鉄 道技術研究 所 国分寺市光町
***東京 電機大 学 東 京都千代田区神 田錦町 階 変 換 式 と した. また 当 初 装 置 の 撃 心 点 の 設 定 が 不 適
昭 和45年9月 (17)
792 大 石 不 二 夫, 松 下 宏
中 の 荷重 振 幅 変 化 の追 跡 を試 み た. す なわ ち, 固 定 端
チ ャ ッ クを モ ー メ ン トバ ー と して, ス トレイ ンゲ ー ジ
を張 り付 け て, 試 片 に働 く荷 重 を検 出 し, こ の振 幅 値
(動 的荷 重, S) を連 続 的 に記 録 させ た. Sの 変 化 か
ら, たわ み振 幅 一 定 型 疲 労 に お け る, 材 質 変 化 や 形 状
変 化 を含 め た み か け の剛 性 変 化 が追 跡 で き る.
3 実 験
Fig. 1. Photographic view of the apparatus.
本 装 置 の実 用 性 を調 べ るた め に, ジ ュラ コ ンと ナ イ
ロ ンの塩 酸 環 境 に おけ る疲 労 の実 験 を 行 な っ てみ た.
3.1 薬 液 含 浸 疲労
本 装 置 を用 い て, Table Iの 条 件 で, 実 験 した.
実 験 の結 果 を, Fig. 4か らFig. 8に 示 す.
Fig. 4と Fig. 5は, 疲 労 中 の荷 重 振 幅 変 化 の デ ー タ
チ ャー トで あ る. これ ら各 種 塩 酸 濃 度 に よ る デ ー タ を
整 理 す る と, Fig. 6と Fig. 7と な り, いず れ もジ ュ ラ
コ ンで は き裂 の拡 大 に よる破 断 で, ナ イ ロ ンで は膨 潤
溶 解 に よる ち ぎれ 破 壊 で あ った. な お, ナ イ ロ ンの場
Unit: mm
合, 破 壊 前 に荷 重 が逆 に増 大 す る とい う特 異 な現 象 が
Fig. 2. Dimensions of the specimen.
み られ た. この メカ ニ ズ ムは 明 らか で は な い が, 溶 解
に よる試 片 形 状 の変 化 に よる も の と推 定 さ
れ る.
両 材 料 と も, 疲 労 挙動 が塩 酸 濃 度 と関連
を もつ こ とを 示 して い た. こ の こ とは,
Fig. 8の 塩 酸 濃 度 に よる破 断 回 数 の変 化 に
A: Variable eccentric お い て も表 わ され て い る.
B: Connecting rod
3.2 静的薬液浸漬
C: Chuck
D: Moment bar with
薬 液 疲 労 に お い て, 材 質 に よ り異 な っ た
strain gauges
E: Specimen 疲 労 挙 動 を示 す こ とがわ か り, 薬 液 の作 用
F: Cotton cloth for keeping
reagents
が異 な る こ とが推 定 され た の で, 参 考 ま で
G: Dropping outlet of に静 的 浸漬 実験 を行 な っ て みた. 試 験 片 は
reagents
H: Tank of reagents 疲 労 試 片 か ら, 7×9×15mmの ブロック
Fig. 3. Schematic diagram of the I: Plastic box
を切 り出 し, 塩 酸 中 に浸 漬 し, 重 量 変 化 を
apparatus. J: Strain gauge
を改 良 して, 疲 労 試 験 機 と して の 実用 性 を高 め た.
しか る あ とに, 薬 液 環 境 の付 加 を計 画 した が, 構 造
上 液 中疲 労 化 は困 難 で あ り, 結 局 以下 の よ うな簡 便 的
方 法 を採 用 した. す なわ ち, 試 験 片 の くびれ 部 に ガ ー
ゼ を数 回軽 く巻 き付 け, 輪 ゴ ムで 留 め, タ ン クに 入 れ
た薬 液 を, ガ ラス配 管 で導 び き, ビ ュ レ ッ トを利 用 し
て, ガ ー ゼ の上 に滴 下 させ る. ガ ー ゼ に 含 浸 され た薬
液 の余 分 は下 の プ ラス チ ッ ク受 箱 に落 下 す る. ビ ュ レ
ッ トコ ッ クの設 定 に よ り, ほ ぼ定 常 的 滴 下 が可 能 で あ
り, 試 片 を薬 浸環 境 に保 つ こ とが で きた.
疲 労 の判 定 に は, 破 断 回 数 の計 数 に 加 わ え て, 疲 労
○ PAm
◎ ACC
●---6%〃
測 定 した. ◎----10%〃
◎--15%〃
Fig. 9と Fig. 10が そ の結 果 で あ る. ジ ュ ラ コ ンの
場 合, 浸 漬 に よっ て重 量 がわ ず か だが 低 下 して ゆ き,
塩 酸 濃度 に ほぼ 対 応 して重 量 変 化 量 は増 大 す る. これ
は材 料 の中 の あ る成 分 か モ ノ マ ーが 塩 酸 に溶 出す る た
め で あ る とも考 え られ るが 明 らか で は な い. た だ この
わ ず か な変 化 が, 繰 返 し変 形 を 受 け続 け る場 合 に は,
き裂 の も とに な る とい う重 要 な効 果 を もた らす こ とが
明 らか とな った.
ナ イ ロ ンの場 合 には, ジ ュラ コ ン と反 して浸 漬 に よ
り重 量 が 増 大 して ゆ く. これ は塩 酸 を吸 収 して膨 潤 す Fig. 10. Weight changes of PAm by immersing
るた め で あ り, さ らに 長 期 間 浸 漬 す る と, 膨 潤 か ら溶 in hydrochloric acid.
昭和45年9月 (19)
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解 に移 行 し, 重 量 は低 下 して 粉 粉 とな る. 裂 型, ナ イ ロ ンの疲 労 で は, 膨 潤 溶 解 型 で あ った.
な お 静 的 浸 漬 と薬 液 疲 労 とを 比 較 す る と, 劣 化 状 況 な お薬 液 疲 労 と静 的 薬 液 浸 漬 を比 べ る と, 今 回 の場
は類 似 で あ るが, 定 量 的 に薬 液 の 作用 を比 較 す る こ と 合, 定 性 的 に は 類似 の破 壊 の型 で あ った.
は 困難 で あ る. た だ, ジ ュ ラ コ ンの 場 合, た とえ ば10 (3) 本 法 の応 用 性 と して は, 鉄 道 軌 道 部 材, 建 設 材
な どが わ か った. 利 用 で きる.
4 総 括 終 わ りに, 試 験 材 料 の入 手 に 関 して, 東 レ, ポ リプ
ク用 薬 液 疲 労 装 置 を つ く り, 薬 液 環 境 下 で の 疲 労 試 験 につ い て上 島製 作 所, ひず み振 幅 計 につ い て東 京 測 器
剤 や 不 安 定 薬 液 以 外 の, 酸 ・アル カ リ ・油 類 な どに 適 室 長 の ご尽 力 を い た だ きま した.
用 で き る. な お 薬 液 中 に 浸 漬 しなが ら疲 労 させ る方 式
参 考 文 献
との比 較 は 今 回実 験 に至 らな か った.
1) 島村昭治, 古江治美, 強化 プ ラスチ ックス, 13, 20
(2) 薬 液 疲 労 の判 定 法 と して, 荷 重 振 幅 の変 化 を 連 (1967).
続 記 録 す る方 法 を 確 立 した. こ の方 法 に よ り得 られ た 2) 黒 田寿紀, 小牧和夫, 材料, 14, 172 (1965).
疲 労 挙 動 に よ り, 薬 液 疲 労 の型 を調 べ る こ とが で き る. 3) 奥 田 聡, 材料, 17, 697 (1968).
す なわ ち, 塩 酸 環 境 に お け る ジ ュラ コ ンの疲 労 は, き 4) 大石不二夫, 松下 宏, 材料, 19, 789 (1970).