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生活施設とボランティアの望ましい関係とは

A0321029 村田裕子

現在、日本には数多くの福祉施設が存在し、その多くの施設でボランティアを受け入れて
いる 1。しかし中には、利用者のプライバシーの問題や、施設の運営は職員が行うべきとい
う考え方などから、ボランティアの受け入れに否定的な態度をとる生活施設もある。だが、
生活施設の中にボランティアが介入することは意義深いことであり、ボランティアと望ま
しい関係を結ぶことが施設のよりよい発展につながると考えられる。そこで私は、現在の
日本における生活施設とボランティアの関係を考察し、そこからボランティアと生活施設
の望ましい関係について論じたい。
東京都の調査によると、生活施設が希望するボランティアの活動内容は、「専門技術」
53.4%、「環境整備」61.4%であり、通所施設が希望するボランティアの活動内容の「専門
技術」16.0%、「環境整備」14.0%と比べて非常に高い値になっている 2。このことから、生
活施設はボランティアに対し、利用者とのふれあいなどよりも、職員のサポートや人手不
足を補うという役割を求めていることがわかる。これをボランティア側から見ても同じこ
とがいえるだろう。安立は「グループ単位で施設等に出かける、という日本的なボランテ
ィア活動のパターン」が「入所者とふれ合う活動ではなく、施設スタッフの補助等の一般
的な活動になりがちである」と指摘する 3。だが、生活施設とボランティアのこのような関
係は、ボランティアの位置づけを職員より低くしてしまうおそれがある。ボランティアが
ボランティアにしかできない独自の役割を果たし、職員と対等であるということが生活施
設とボランティアの望ましい関係といえるのではないか。
では、ボランティアにしかできない役割とはどのような役割なのだろうか。例えば、児
童養護施設では体罰を「やむを得ない場合もある」と容認する職員が半数以上いる 4。これ
は世間一般の考えとはかなり違っているように思われるが、施設の中で体罰が行われてい
ても、それに地域の人々が気づくことは容易ではない。しかし、ボランティアが生活施設
に入れば、その施設内の問題点を見出すことができ、改善につながる可能性がある。この
ように、施設を外の目から見てチェックすることはボランティアにしかできない役割だろ
う。また、ボランティアには施設と地域社会のかけ橋になるという役割もある。施設の入
所者の代弁者となり、地域社会に理解者を作ることができるのは、ボランティア独自の重
要な役割のひとつであると思われる。
このように、ボランティアは既存の関係の中に新たな関係を作ることができる。原田に
よれば、ボランティアは「ほかの関係や役割と結びつきつつも、それとは異なる独自の関
係」をもち、ボランティアという関係が加わることで他の関係を相対化し、ひとつひとつ
の意味を改めて問うことができる 5。入所者と職員、入所者と地域社会の関係を改めて問い
直すことができることが、ボランティアが生活施設の中に入る意義であり、ボランティア
にしかできない役割といえるのではないか。
以上のように、現在の日本では生活施設の中でボランティアがボランティア独自の役割
を果たしているとはいいがたい。しかし、ボランティアが施設のチェックや地域社会との
かけ橋になるという、ボランティアにしかできない役割を施設の中で果たし、職員と対等
な地位を得ていくことが、施設とボランティアの望ましい関係といえるのではないだろう
か。そして、その関係が施設の新たな発展につながると考えられる。

1 東京都社会福祉協議会東京ボランティアセンター(1992) 『社会福祉施設におけるボランティ
ア受け入れ状況調査報告書』東京都社会福祉協議会東京ボランティアセンター, p. 6.
2 同書, p. 27.
3 安立清史(1998)「福祉社会におけるボランティア活動と NPO:病院ボランティア、老人ホ
ーム・ボランティアの日米比較調査から」青井和夫・高橋徹・庄治興吉編『福祉社会の家族と
共同意識』梓出版社, p. 149.
4 津田耕一(2001)『施設に問われる利用者支援』久美, p. 49.
5 原田隆司(2000)『ボランティアという人間関係』世界思想社, pp. 95-96.
福祉施設とボランティアとの望ましい関係

A0221054 藤井 佳子

ボランティアとは「自分の利益より他者の利益や弱者の利益、あるいは社会の利益を優先させる行
動である」1とされている。しかし、福祉施設においてボランティアが活動する場合、この精神のも
とに、ボランティア当事者、そして受け入れ側である利用者、施設の三者がそれぞれの意義を見出
し、またその調和が取れていることが必要である。そこで、それぞれの立場における意義とは何か
を考え、それをもとに今後の課題について考えてみたい。
第一にボランティアにとっての意義を考えると、そこには「自発的な行動に伴う他者との出会い
や公共のテーマ、社会的責任の発生」 2が挙げられる。ボランティアはそれらをさらに活性化させ、
利用者が直面する問題を自分自身や地域の問題として捉えるきっかけにしていくのである。そして、
その問題意識を相手のニーズにどう反映させていくかを考える時、そこに起こりうる摩擦を解消す
るために必要な「対話」は、ボランティア自身のコミュニケーション能力を向上させる意味で非常
に重要である。相手のニーズに応えることと、
「自分が役に立つ」という実感が両立することに、ボ
ランティアとして活動する意義と意欲が生まれると言える。
第二に、利用者にとっての意義とは、福祉サービスなどの「制度」として受けるものと違い、ボ
ランティアからは個別的な対応を受けることができるという点である。ボランティアの長所とは相
手の事情やペースに合わせ、暖かく心のこもった支援が提供される点であり、自発的な行動である
からこそ、個人の関心や能力に基づく焦点のはっきりした取り組みが対象に向けて行われる。施設
の職員とは違った立場からボランティアが自由に利用者と関わることは、利用者にとって刺激とな
り、さらには人間性の維持、向上に大きく貢献すると考えられる。
最後に、施設にとってもボランティアの受け入れは刺激となる。施設の職員は利用者に対して公
平で安定した生活を与えることを日々の義務としているが、ともすればそれは、地域に対しての閉
鎖性を増大し、利用者と地域とを分離させる行為につながる結果をうむこともある。昨今では福祉
施設がノーマライゼーションの要請を受け、利用者の援助を地域に向け、地域ニーズに施設の機能
を開き、運営はより開放的、透明にするなどが期待されてきている 3。だからこそボランティアと
いう第三者が施設と行き来することによって刺激され、福祉施設もまた地域によって生かされると
いうことを実感すること必要なのである。
しかしながら、ここで考慮すべき点として、ボランティアを受け入れることに対する施設の負担
という問題を忘れてはならない。この施設のネガティブな見解を払拭していくこともボランティア
の重要な役割なのである。そして、施設が与える安定した生活の上に、ボランティアによって与え
られる自由や楽しみを加えていくことが「利用者の自己実現」を援助することになるという共通意
識を持つことも、ボランティアのポジティブな受け入れにつながっていくと考えられる。
ボランティア活動とは問題をともに担うなかで学びあい、成長していく連帯活動である 4。福祉
施設とボランティアが良好な関係を築くためには、先に述べた三者それぞれの意義が十分に認めら
れ、調和が取れていることが前提となる。相手のニーズばかりが満たされるような自己犠牲ではな
く、互いに刺激し、尊重しながら調和を図り、共に成長していくことが必要とされるのである。こ
のような関係をさらに向上させていくためにも、今後は三者の調整を積極的に担うボランティアコ
ーディネーターの養成や、ボランティア教育による質の向上を図っていくことが大きな課題となる
に違いない。

1 園田恭一(1999)『地域福祉とコミュニティ』有信堂, p. 114 .
2 福永英彦(2000)「ボランティアの意味と原則」渡辺武男・相澤譲治・福永英彦編『ボランティアいきいきと
生きる』相川書房, p.24
3 同書, p.24.
4 井岡勉(1973)「地域福祉活動の現状」住谷磬・右田紀久恵編『現代の地域福祉』法律文化社, p. 48.

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