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技術論文 20144644

車載型排気熱回収スターリングエンジンの開発*

片山 正章 1) 吉松 昭夫 2) 立野 学 3) 小森 聡 4) 澤田 大作 5)

Development of Exhaust Heat Recovery Stirling Engine for Automobile

Masaaki Katayama Akio Yoshimatsu Manabu Tateno Satoshi Komori Daisaku Sawada

In this paper, we describe the design and evaluation of vehicle-mounted stirling engine. Output target is 1 kW net
power from the exhaust gas of driving at 100 km/h in a small hybrid car. The α-type four-cylinder stirling engine
arranged in tandem two units to aim compact and low vibration were designed. In addition, from the evaluation
results of the previous model(3), the new heater was designed. The net power output of 472W was obtained from the
equivalent load at the speed of 100 km/h. Recovery rate was 5.1%, and fuel consumption increased 3.4%. It was
shown that this stirling engine was effective means of waste heat recovery system. In order to achieve the target
power, it is necessary to reduce heat loss of stirling engine.

KEY WORDS:heat engine, Stirling engine, efficiency heat recovery, vehicle exhaust gas (A1)

1.ま え が き 図 1 に今回製作した SE の断面図,表 1,2 に SE と熱交換器


CO2 削減への社会的要請が高まるなか,エンジンを効率の の仕様と目標性能を示す.図表中,高温側熱交換器をヒータ
高い領域で運転するハイブリッド車の普及が急速に進んでい ー,低温側熱交換器をクーラーと記す.全体の構成として,
る. 低振動化,コンパクト化を狙って α 型 2 ユニットを直列配置
一方,自動車の排気熱エネルギー(排気熱損失)回収を目指し した 4 気筒構成とした.
(1)(2)
たシステムとして,ランキンエンジン ,スターリングエン 要求出力から求まる行程容積と車載性を考慮してボア径を
ジン(以後 SE と記し,自動車の動力源をエンジンと区別する) 68mm,ストロークを 43mm とした.フリクション低減の要で
等,これまで多くの研究が行われている. ある,近似直線リンクは実績のある試作機 (3)から流用し,気
それらの中から既報『排気熱回収スターリングエンジンの 体潤滑ピストンを踏襲した.
(3)
研究』 では,システムが簡素でコンパクト,高効率が期待で 圧縮比は試作機と同等を狙い,ヒーターは要求出力から求
きる SE を選定し,試作機の評価を行い,その有用性を確認し まる仕様と,試作機の課題解決を考慮して新たに設計した.
た. SE 重量は実験に必要な計測部や,分解調査のために必要な
本報では,この試作機での結果を踏まえ,ハイブリッド車 分割部を設けたため 60kg 弱となった.商品化に向けては,そ
の高速燃費向上を狙い,搭載スペースの小さい小型ハイブリ れらを除き,構成部品の最低重量を見積もった結果,20kg 程
ッド車のエンジンルームにも車載可能な SE の製作,性能評価 度まで軽量化できると考えている.
を行い,熱効率の高い(排気損失の少ない)ハイブリッド車にお
いても動力回収できることを確認し,車載型として有効な排
気熱回収システムであることを実証したので以下に述べる.

2.車載型スターリングエンジン(SE)の製作
2.1.狙いと SE 本体設計
小型乗用ハイブリッド車(1.8L エンジン)の 100km/h 走行時
の排気損失(10kW)から 1kW の出力回収を目標とした.

*2014 年 6 月 2 日受理.
2013 年 5 月 24 日自動車技術会春季学術講演会において発表.
1)・2)・3)・4)・5) トヨタ自動車(株) 東富士研究所(410-1193 Fig.1 Vehicle-mounted stirling engine (Cross section)
静岡県裾野市御宿 1200)

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車載型排気熱回収スターリングエンジンの開発

Table 1 Specification of stirling engine の時点における SE 出力の 1/5 以下に収まることを狙って排出


ガス流路断面積等を決定した.
そして,車両と干渉しない大きさの中で,ヒーター能力,
死容積は Shmidt の式での概算(4)を用いてバランスをとった.
この式には作動ガスの流動損が含まれていないため,試作機
の評価結果を参考にして計算した流動損を図示出力から差引
いて,目標を達成するヒーター仕様を決めた.
以上から,図 3 に示すヒーターを製作した.図 4 にフィン
の構成を示す.表 3 に詳細な仕様を示す.剛性の抑制を確か
めるために排出ガス流れ方向(図 3 中 A-B 方向)の引張り試験
を行い,バネ定数は試作機のものに対して 1/1000 であること
Table 2 Specification of heat exchangers を確認した.また,ヒーターから流出した作動ガス温度差は,
単体試験,100km/h 相当負荷において,ヒーター出口の同じ断
面 3 箇所で測定した結果,最大温度と最小温度の差が試作機
の 54℃から 14℃まで改善していることを確認した.

2.2.ヒーター設計 Fig.2 Heater of previous model


ヒーターの入熱量確保においては,ヒーター外側(排出ガス)
が制約となる(3).入熱量は,熱伝達率,熱交換表面積と温度差
の積で決まる.排出ガス温度はエンジンの運転状態で決まり
ながらも,SE では高い作動ガス温度を確保する必要があるた
め,ヒーターへの伝熱による温度低下の抑制がヒーター設計
では重要である.そこで,熱伝達率あるいは表面積で入熱量
を稼ぐ必要がある.ヒーター内側は作動ガスの圧力(密度),平 Fig.3 New heater
均流速ともに高く,熱交換能力は,外部の排出ガス側に律則
される.熱伝達率は排出ガス流速を増加させることで向上す
るが,背反として,排気系の圧損増加につながりエンジンの
効率低下を招く.そこで,圧損増加を抑制しつつ,外側表面
積を増加させる手段としてフィンが有効となる.
それらを考慮して設計した試作機のヒーター(図 2)では,板
状のフィン構造であったため剛性が高く,ヒーター部と SE 本 Fig.4 Fin
体部の温度差による変形歪が,ヒーターと本体の接合部に集
中し,高圧の作動ガスのシールのために強い締結力と細心の Table 3 Specification of heater
注意が必要であった.また,ヒーター外周と内周で排出ガス
の当たり方,作動ガスの流路長が異なるため,ヒーターから
流出した作動ガス温度に,場所により数十度の差があった.
そこで,今回のヒーターは V 形状に折り曲げた等長のチュ
ーブで構成することで剛性を抑え,排出ガスの当たり方を均
質にし,均質な温度の作動ガスの流出を狙う構造とした.
また,SE ヒーター部によるエンジン排気管の圧損は特に全
負荷域において,顕著な低下を伴うが,その出力低下が,そ

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車載型排気熱回収スターリングエンジンの開発

2.3.搭載検討 3.実験結果および考察
回収した動力はエンジン軸動力に足し合わせる,あるいは 3.1.実験方法
補機動力として使うことが望ましく,伝達機構簡素化のため 今回の評価は,軸トルク計を使用しての正味出力計測が困
に,エンジンとの平行配置が望ましいと考えた. 難であり,また負荷と回転数を任意に設定するために,エン
また,SE に供給される排出ガス温度は高いほど好ましく, ジンとの伝達を切り離した状態で行った.図 8 に計測系の構
エンジン排気出口に近接配置することが望ましい.ハイブリ 成を示す.SE の回収動力は,図 9 に示すように SE 出力軸に
ッド車では,エンジンの頻繁な再起動があるため,前置触媒 ベルトを介して繋いだ発電機に吸収させた.図 10 に実験装置
の暖機性を重視し,SE は前置触媒後に近接しての搭載を検討 の写真を示す.
した.また,後置触媒の浄化能力確保のために,SE 出口での 各部の圧力は ENDEVCO 製 8540-500-240 を使用し,SE の
排出ガス温度は 350℃以上となるように検討した.また,エン 作動ガス圧力は,上流側,下流側 SE それぞれの高温側気筒上
ジン出口から SE までの排気管長さが,排出ガス温度低下に及 部各 1 箇所,低温側気筒上部各 1 箇所,バッファ圧はクラン
ぼす影響が非常に大きいため,可能なだけ短くする設計を行 クケース 1 箇所で測定した.各部のガス温度は豊通テクノ製
い,エンジンから前置触媒までの排気管は図 5 に示すように K 型シース径 φ1.0 を使用し,計測部の熱的外乱を抑制するた
変更し,SE 本体は図 6 に示すように,クランクシャフトの位 めに,固定位置から計測部までシース径の 2 倍の孔径の中を
置がピストン位置よりも高くなるように配置(倒立搭載)した. 周囲に接触させずに通し,固定位置から計測部までの距離は
その結果,前置触媒出口から SE ヒーター部までの距離を 直径の 10 倍以上を確保した.高温側作動ガス温度は,ヒータ
70mm 以内に収めることができた. なお,この倒立搭載はピ ー両端部で各 2 箇所(Th1~Th4),低温側作動ガス温度は,クー
ストン摺動部に潤滑油を用いておらず,姿勢を問わないので, ラー直上各 1 箇所(Tc1,Tc2),低温側気筒上部各 1 箇所(Tc3,Tc4)
このような搭載が可能となる. を測定した.また,高温熱源である排出ガス温度は,上流側
SE ヒーター部の入口(Tin),上流,下流側 SE ヒーター部の中
間(Tmid),下流側 SE ヒーター部の出口(Tout),低温熱源である
冷却水温度は,クーラー入口(Twin)と出口(Twout)を測定した.
SE 回転数はオプトファイバ検出器で測定し,ピストン位置
を把握するために SE クランク位置はロータリーエンコーダ
(1pulse/deg.)により測定し,PV 線図を求めた.
また,ピストンを浮上させるために必要な空気(ピストン静
Fig.5 Modification of exhaust system 圧)はクランクケース内の一部の空気を圧縮することで,その
仕事を抑えることができる(数 W 程度と試算)が,今回の試験
ではピストン静圧を正確に計測するために,クランクケース
外部で大気の空気を圧縮したものを用いた.
クーラー冷却水は,安定した温度を得るために工業用水(約
18℃)を使用した.

Fig.6 Embarkation of stirling engine

2.4.車載検討
図 7 に小型ハイブリッド車へ車載検討した図を示す.大き
な変更を行わず,配線,排管の簡単な変更のみで車載できる
ことを確認した.

Fig.8 Measurement system (Cross section)


Fig.7 State of vehicle-mounted

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車載型排気熱回収スターリングエンジンの開発

Fig.9 Test component

Fig.12 Net power output

Fig.10 Overview of test bench (Engine exhaust side)

3.2.正味出力と回収効率
図 11 にエンジン出力に対する排気損失,図 12 に SE 正味出
力,図 13 に回収率(SE 正味出力 / 排気損失)を示す.正味出力
は,高温側(正の仕事),低温側(負の仕事)それぞれの作動ガス Fig.13 Recovery rate
空間の PV 線図(図 14)から求めた図示出力から,分解法で求め
た機械損失,バッファ損失(クランクケース内の流動損失)を差
し引いて求めた.
100km/h 相当負荷で正味出力 0.472kW,
回収率 5.1%を得た.
また,エンジン回転数 3000rpm,エンジン出力 36kW のとき最
大正味出力 1.235kW を得た.
なお,単体ベンチ評価時には,平均作動ガス圧 1MPa での
シール性を確認していたが,搭載状態では熱環境の変化によ
り確実なシール性が確保できなかったため,今回はデータの
安定性を優先し,シール性の確認できた平均作動ガス圧
0.75MPa で評価を行った. Fig.14 PV diagram at equivalent load of 100km/h

3.3.作動ガス温度差と図示トルクの関係
図 15 に,高温側と低温側作動ガスの温度差に対する,図示
トルクを示す.図示トルクは,熱交換器の違いの影響を除く
ために流動損を除き,行程容積の違いを補正している.試作
機と本機で,作動ガス温度差と図示トルクの関係がよく一致
しており,所望の図示トルクを得るために必要な,高温側と
低温側の作動ガス温度差が分かる.

Fig.11 Exhaust heat

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車載型排気熱回収スターリングエンジンの開発

有の熱の流れの解析を行い,熱損失を低減し,作動ガス温度
差を大きく取る必要がある.

Fig.15 Relationship between working gas temperature difference


and indicated torque
Fig.16 Difference between cooler radiation and compression work
3.4.ヒートバランス解析
今回の結果,図 16 に示すように,圧縮仕事とクーラー放熱
量に大きな差があることが分かった.その原因として,搭載
の際,高温の排気管を SE 本体のすぐ傍に設置しているため,
そこから受け取った熱を,クーラー冷却水に放熱している等,
複雑な熱の流れが考えられる.
そこで,サイクルで必要な放熱量と,熱損失を切り分ける
ために,試作機において,エンジンからの放熱を避けた状態
で行った単体評価の結果から,サイクルで必要な放熱量を推
測した.図 17 に試作機における,作動ガス温度差に対する,
圧縮仕事とクーラー放熱量の比を示す. Fig.17 Relationship between working gas temperature difference
この結果から,本機の設計点におけるサイクルに必要な放 and each ratio at proto
熱量を推測した.また,ヒーター入熱量はサイクルに必要な
放熱量と図示出力の和で推測した.
それらから求めたヒートバランスを図 18 に示す.排出ガス
が SE ヒーター部を通過する際に失う熱量⊿Q=3.8kW とヒー
ター入熱量 Qh=3.1kW の差 0.7kW が,大気への熱損失,また,
クーラー冷却水が受け取った熱量 3kW(図 16:design point)と,
サイクルに必要な放熱量 2.3kW の差 0.7kW が,作動ガス以外
からの熱損失であることが推測できる.SE では出力確保のた
めに,高温の排気管およびヒーターと,低温のクーラーをで
きるだけ近くに配置しなければならず,このような熱の流れ Fig.18 Heat balance at equivalent load of 100km/h
による熱損失が存在する.
解析の結果,設計点における図示効率(=図示出力 / ヒータ
ー入熱量)は 19.5%となった.図 19 に,作動ガス温度差に対す
る,カルノー効率および図示出力と膨張仕事の比で表される
内部変換効率を示す.内部変換効率は体格,平均作動ガス圧
の異なる試作機のデータも傾向がよく一致しており,本方式
において,作動ガス温度差に対する性能が推定できることが
分かる.また,図示効率 = 内部変換効率×対カルノー効率比
の関係にあり(4),図示効率低下の原因は,作動ガス温度差が小
さいためと考えられ,特に,後流側 SE(SE2)の影響が大きいこ
とが推測できる. Fig.19 Internal conversion efficiency
以上より,更なる熱効率向上には,このような搭載状態特

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車載型排気熱回収スターリングエンジンの開発

3.5.作動ガス温度差の拡大
これまで述べてきたように作動ガス温度差が出力,効率に
及ぼす影響は大きく,更なる出力向上のためには,作動ガス
温度差を大きく取る必要がある.
そこで,上流側 SE(図 8 中 SE1)と下流側 SE(図 8 中 SE2)を
切り分けて,高温側作動ガス温度がどのように決定されるか
を調査した.図 20 に SE 入口部排出ガス温度 Tin と SE1 出口
部排出ガス温度 Tmid(=SE2 入口部排出ガス温度)の平均温度,
SE2 入口部排出ガス温度 Tmid と SE2 出口部排出ガス温度 Tout
の平均温度と,高温側作動ガス温度 Th の関係を示す.
本 SE では高温側作動ガス温度 Th は,SE 前後の排出ガス平 Fig.22 Cole side working gas tempareture
均温度から約 150℃低い値であることが分かり,高温側作動ガ
ス温度向上のためには,ヒーターの効率向上および熱ロス低 4.ま と め
減により,この差を小さくする必要がある. 車載型 SE の製作,評価結果から,本システムは車載型の排
次に,低温側作動ガス温度と冷却水平均温度(図 21)および 気熱回収システムとして有効な手段と判断できた.
出入口温度差(図 22)の関係を調査したが,どちらも相関が取 (1) 熱歪対策,均質な温度の作動ガス流出を両立したコンパ
れなかった.このことからも,前節で述べたように,クーラ クトなヒーターにより,車載可能な SE を設計した.
ー冷却水には作動ガス以外からの伝熱があり,作動ガスを安 (2) 車載可能な排気熱回収 SE で,ハイブリッド車の排気損
定的に冷却できていないことが分かる.低温側作動ガス温度 失から動力回収可能なことを確認した.100km/h 走行時に正味
低下のためには,作動ガス以外からのクーラー冷却水への熱 出力 0.472kW,燃費 3.4%の向上が得られた.
の流れを抑制することが必須となる. (3) 気体潤滑ピストンの接触磨耗による不具合等なく,シス
テムとして成立することを確認した.
(4) 更なる熱効率向上には,熱損失低減が必要である.

参 考 文 献
(1) Raymond Freymann,Jorgen Ringler,Marco Seifert,Tilmann
Horst:The second generation turbosteamer,MTZ,Vol.73,
p.18-23(2012)
(2) 茨木茂,遠藤恒雄,小島洋一,高橋和也,馬場剛志,川尻
正吾:ランキンサイクルを用いた車載用廃熱回生システムの
研究,自動車技術会学術講演会前刷集,No.92-06,p.15-20(2006)
Fig.20 Hot side working gas temperature (3) 矢口寛,澤田大作,神山栄一,片山正章:排気熱回収スタ
ーリングエンジンの研究,自動車技術会論文集,Vol.42,No.2,
ーリングエンジンの研究,自動車技術会研究論文,Vol.42,
No.2,p.465-470 (2011)
p.465-470(2011)
(4) 山下巌,濱口和洋,香川澄,平田宏一,百瀬豊:スターリ
ングエンジンの理論と設計,山海堂(1999)

Fig.21 Cold side working gas temperature

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