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電子メディア論 ⑥

パソコン通信と
情報ボランティア
ARPANETとPLATO
• 1970年のアメリカでは大学を中心
に電子メール,BBS(電子掲示板)の
原形の利用が促進される
掲示板は一方的告知や連絡には適した手段。
議論に適するかどうかはわからない。
パソコン通信
• パーソナルコンピュータ同士が電話回線
などで結ばれて情報を交換し合う方式
インターネットとの違い
回線交換方式
• 回線交換方式とは,データを送受信する
機器どうしが,通信を行うたびに交換機
によって通信先相手を識別し,信号の流
れる物理的な経路を選択する方式のこ
とである
• 回線は接続が開放されるまで占有され
るため,一度の接続で大量のデータを
一括転送するのに適している(無手順)。
一般の固定電話によるダイヤルアップ
接続がこの方式に該当する
マイコンキッズ文化
85年の“通信自由化”以降,日本
的な草の根BBS,パソコン通信の
文化が,インターネットの普及ま
での間,独自の花を咲かせる(ア
メリカと約10年の時差)
BBS・パソ通文化とインター
ネット文化とはその後も「文化対
立」の様相を呈する
日米格差の原因
アメリカの電話会社の発祥(母体)は
コミュニティ企業なので,“市内”通
話料は「定額制」のケースがほとん
ど。どれだけ通信しても定額
日本は3分10円(1時間200円)の料金。
市内料金の“赤字”を市外通話の黒字
で内部補填する構造だった。パソコ
ン通信は「時間消費型メディア」な
ので,従量制は痛手
(参考)通話料金
1985年時点のNTTの通話料
市内―3分10円(割引制度なし)
320km超―3分400円*(夜間:240円)
2018年時点のNTTの通話料
市内―3分8.5円(フレッツなど定額制)
県内市外60km超―3分40円
県外市外100km超―3分80円

10円で4.5秒間通話できるという意味
テレホーダイ
• 1995年8月開始。23時~翌朝8
時,予め指定した二つまでの電
話番号に対し,通話時間にかか
わらず,その時間帯の通話料金
が定額制(月額1800円)に
• INSネット64(毎秒64kbps)で
もテレホーダイ(同2400円)
NTTの戦略ミス?
• 20世紀中のNTTは回線交換・帯
域専有型でネットサービスを構想
(INSネット含む)。パケット交換
やADSLには消極的な姿勢
• DoV(ADSL)など常時接続(フ
レッツ○○)サービスの提供に積
極的になったのは2001年ごろ。
ヤフーなどがADSLで競合サービ
スを開始したのが契機
BBS
Bulletin Board System
草の根(grass-roots)の冠詞も
電話回線を使用するため,電話
料金の遠近格差が原因で,遠方
との直接接続を想定しておらず,
地域コミュニティに住む人たち
を参加者として想定
地元の寄り合い?
Community Memory→1975年
にバークレーで開始されたBBS。
母体はHomebrew Computer Club。
◯コミュニティの生活や遊びの道具
◯共有の記憶庫
◯PCやBBSで,コミュニティが必要と
するサービス,技能,教育などの手助け
◯“二人のスティーブ”が中心的人物
スティーブ・ジョブズ,スティーブ・ウォズニ
アック
Great Good Place
社会学者,オルデンバーグの概念
住む場所(家庭),働く/学ぶ場所と並
ぶ第三の場所
陽気に楽しむ場所。溜まり場
遊び感覚にあふれていて,常連たち
により場所の性格が規定される
日本の草の根BBS
85年以降,10~15年間ほど隆
盛。大手のパソコン通信サービ
スが登場しても,地域性を武器
に生き残る
ホストもパソコンで動くプログ
ラム
掲示板だけでなく,バイナリ
ファイルのアーカイブ機能も
草の根BBSの意義
日本で「個人や有志でメディア
を持てる時代」のさきがけ
個人がホスト局を開設できた(た
だし電話1回線がふさがる)
地域の同好の士とつながれた
オフライン・ミーティング(オフ
会/オフミ)も,地域性がある草の
根BBSが事実上のルーツ
商用パソコン通信
アスキーネット:85年。開始直
後に5万人の会員
PC-VAN(NEC):86年4月
Nifty-Serve(富士通):87年4月。
米CompuServeと提携。専用通
信ソフトやメーラーが用意され

日経MIX,asahi-netなど新聞
社系列のサービスも
グレー公衆電話は,端末接続
ジャックを備えている。
ただ,2018年の現在では,
パソコンがアナログモデムを
搭載しなくなっているので,
「無用の長物」「歴史遺産」
になっている。
自己完結性
• メールを送受信し,チャットルー
ムに出入りできるのは,自分が
アカウント(ID)を登録したパソコン
通信サービスのみ。
• 連絡通路はほぼない。大手/
ローカルを含め,相互連絡性は
いっさい担保されていなかった
アマチュア無線
• 国家認定の免許制
• 無線機は最小限度のバッテリで稼働
(車載型無線機もある)
• 「災害・非常通信用」の周波数帯域
が国際的に決められている(その帯域
を定期的にクロールする人たちもい
る)
• 文字をやりとりする「電信機」もあ

• どれだけ地上のネットワークが発達
しても,最後の砦となるインフラの
一つと言える
大震災とアマチュア無線
阪神・淡路大震災
• 1995年1月17日の阪神・淡路大震災
では,パソコン通信の掲示板や電子会
議室が,被災者情報や救援情報などの
情報交換に役立った。利用者は相対的
に少なかったが,ヘビーユーザーがモ
バイル環境(公衆電話利用)を駆使して
情報ボランティアとして機能した。こ
のため,ネットの公共/商業/個人利用
が着目され,それがインターネット利
用に結びついた
PC通信ボランティアネット構想
• 郵政省が1月23日に発表。被災者の所在
(安否)情報をパソコン通信/インターネット
に集約して伝えるという構想
• 専用ハガキに記入・郵送→データを電子
化→ネットで検索できるようになる仕組み
• 広報周知の不徹底,情報収集の工夫が
不足していたことなどで,当初の目標通り
には情報登録数が得られなかった
神戸市外国語大学ボランティア
• NTTのコンピュータ通信技術者のボラン
ティアグループ(Nプロ)が活動拠点に
• パソコン通信やインターネットで被災者
のニーズに関する情報を収集し,一方で,
集まってくる救援物資(ゆうパックの集積
所だった)の情報をNPOやボランティアに
提供し,自前の情報流通システム作りを
試行した
神戸大学情報ボランティア
• 国際文化学部の大月一弘教員と大学院
生が,インターネット(WWW)を通じて,1月
19日から国内外に向けて神戸大学内の
状況報告や大学関係者・留学生の安否
確認を行った
• quake-vgML(情報流通を促進するメーリ
ングリスト)を1月30日に設置し,運営した
インターボランティアネットワーク
• 1995年2月4日に結成(IVN情報サービス
チーム)。情報の一元化・グループ間の
連携を図るために結成
– 情報ボランティアグループ
– 神戸市外国語大学ボランティア
– NIFTY-Serveを利用するNPO・NGO
– 兵庫県と神戸市の公聴課職員
– 神戸大学・神戸市外国語大学教職員
– 神戸電子専門学校(連絡所)
IVNの活動
• NIFTY-Serveの「震災ボランティアフォー
ラム」などにボランティア団体の情報を電
子化して掲載したり,生活情報の収集や
避難所への配布を行ったりする活動を
行った
• 紙ベースなどで流通する情報を誰かが
電子化しないと共有できない
• PC通信「あじさいネット」(後述)
ボランティア支援グループ(VAG)
• ボランティア団体の相互交流,情報収集,
情報利用の促進を目的に,NIFTY-Serveや
インターネットの利用者を中心に,1995年2
月21日に結成
• 活動内容は,コンピューター・ネットワーク
や新聞,テレビ,ラジオ,ミニコミ誌などから
収集した生活情報を編集してコンピュー
ター・ネットワーク上に掲載したり,パソコン
通信を利用したい避難所やボランティア団
体の支援を行うこと
PC通信「あじさいネット」
• もともとキャプテンでスタートしたシステム
で,FAXサービスも可能だった
• ライフライン,交通,住宅,罹災証明,義
援金など行政情報にボランティアが足で
集めた情報をデータベース化
• 2/22に第一回のファイル配布が実施
• それが「兵庫県震災ネット」に引き継がれ
ていった
インターVネット
• 1995年3月1日に発足し,被災者と支援者,
被災地のボランティアと後方支援ボラン
ティア,企業,マスコミ,行政機関などが,
互いに意見や情報を交換し,活動を調整
し合えるように,インターネット上のニュー
ズグループと(NIFTY-ServeやPC-VANな
どの)商用パソコン通信上の会議室の間
で記事を相互に自動的に転送し合うこと
のできるコンピュータ通信システムを構
築し,運用した
拠点情報ボランティア団体
• IVN情報サービスチームは,コンピュータ
ネットワーク上に掲載された情報を収集・
整理して利用しやすく加工して,約30の
拠点情報ボランティア団体(神戸市内の
区役所・保健所周辺などに拠点を置き,
区全体を活動範囲としたボランティア団
体の情報グループ)に配布していた
兵庫県震災ネット
• 行政機関と避難所を結ぶパソコン通信連
絡網。PC192台,電話回線,IDなどを政
府の現地対策本部と兵庫県が共同して,
被災各市町の災害対策本部,各避難所
に配布し,2月下旬から情報ボランティア
(IVN,CSKなど)が各避難所で設定・調
整・オペレータ養成などを行い運用開始
• 事務局はCSK震災復旧支援プロジェクト
チーム(2/1~4/30)によって運営
阪神大震災とネット
• 被災地外の人に状況を伝える点では一
定の役割を果たしたが,被災者を支援す
るための活動としては効果が上がらな
かったと総括されている
• コンピュータ,通信回線を用いる側の体
制構築,被災地の情報通信基盤と運用
方法・人員などの問題があった
情報ボランティアの役割
• 大規模災害時には,市民やボランティア
の協力なくしては効果的な情報流通が
できないことが明らかになった
• 避難所運営情報,緊急医療情報,安否
情報(避難者個人が特定個人に発信す
るもの),広報的情報,被災地内住民に
向けた情報,ボランティア間で交換され
る情報
教訓
• 日頃から使いこなしていない道具は,災
害時にも有効に使えない
• 日頃から“顔が見える”ような信頼関係
がないと,災害時には,迅速かつ効果
的な連携活動がとれない
パソコン通信の最期
90年代後半に,パソコン通信大
手が,ISPに転身し,サービスを
TCP/IPベースで展開したため,
インターネット文化に併合される
利用人口と層の広さのために,
インターネットにパソコン通信・
BBSのカルチャーが流れ込み,徐
々に融合(融合しきれない面も)
Internet service provider
カルチャー間のギャップ
ネット(研究者) BBS(一般人)
リプライ 返信 レス
プット/ゲット ファイル送 アップ/ダウン
受信 (ロード)
1バイト(英数 メールタイ 2バイト(漢字か
字) トル な)
全文 引用 必要箇所のみ
???????? 書き込み カキコ
:-) 顔文字 (^_^)(^^;)
BBS発のジャーゴン(隠語)
メアド (←→アカウント)
亀レス
塩漬け
ROM(←→Luker:ラーカー)
DOM
みかか
切り番
タコ

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