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日本語表現法⑩

文の構造的欠陥
[1]
(1) つまり (2) だから (3) そしてまた
(4) たとえば (5) ただし
私たちの日常的な推論は,抽象的で一般的な形式に沿っ
て行われるのではなく,領域固有性をもっている。[つま
り],それぞれの領域ごとの知識を使って,前提を解釈し
たり,推論を補ったりする。[だから],領域が違うと
形式上まったく異なる推論をすることがよくある。[そ
してまた],ある一定の推論様式を訓練したとしても,
なかなか他の領域でそれが使えるようにはならないので
ある。[たとえば],医者が病気を診断するのと,車の
修理工が故障を見つけるのは,形式上は同じ推論だと言
える。[ただし],医者が車の故障を調べるときには,
おかしな推論をしてしまったりする。
(1)~(3)は「領域固有性」という言葉の
解説。(2)は因果関係の説明。(3)も付加
的な説明。
(4)は「領域固有性」を医者と修理工の例
で,さらに具体的な説明を加えた。「(A)
推論という点で医者と修理工は形式的に
同じ」と「(B)医者が車の修理をする際は
おかしな推論をする」。主張の方向は変
化しておらず,言いたいことは(B)ではな
く(A)にある。ゆえに,(5)は「しかし」
ではなく「ただし」(「領域固有性」の本
線通りで,転換していない)
(6) たとえば (7) そして (8) にもかか
わらず (9)要するに
CD が立て続けに500 万枚前後のセールスを記録す
るようになった。[たとえば]GLAY のベストアル
バムが98 年に460 万枚を売り上げて以来,次々と
ベストアルバムがリリースされ,B‘z のそれは二枚
連続で500 万枚売れたという。[そして]その記録は
あっさりと新人の宇多田ヒカルが塗り替えた。[に
もかかわらず]そんなとてつもない大量現象が起き
たという熱気が社会にも広がっているという印象は
薄い。[要するに]一部の人たちだけで大量消費が
起きているのである。以前ならばメガヒットは広い
層に浸透しなければ起きなかっただけに,隔世の感
がある。
(6)は「CD の大ヒット」という指摘を
GLAY,B‘z,宇多田ヒカルで具体的に例
示。「まず」でもよい。(7)の接続関係は
付加。「そして」でもいいが「宇多田は
もっとすごい」という累加の意味もある
ので「しかも」が適切か。本筋に影響が
ない補足という意味で「ただし」でも構
わない。(8)は転換。「しかし」でもいい
が,落差の激しさを強調するには「にも
かかわらず」がベスト。(9)は解説。
転換の連続
⑦しかし,⑧にもかかわらず と「転換の
接続」を連続して用いるケースが多い
⑦しかしを用いて⑧で苦し紛れの接続表
現を選択する格好である
「大量現象が起きた」。しかし「その印
象は薄い」という接続なので⑧の転換は
外せない
⑦は同一方向(大量現象の具体例)の情報付
加なので「転換」ではありえない
第十・十一問
便利さ=ベネフィットと引き換えに,最低
限度の必要悪=リスクとして使用されてい
るのです。[つまり(裏を返すと)],ソルビ
ン酸の健康に対するリスクはそれほど大
きいものとはいえません。[ですから(それ
ゆえに)],リスク-ベネフィットのバラン
スを納得した上で,その便利さを享受す
るという選択はもちろん成立します。
第十二問
卵を買うと賞味期限が書かれている。こ
れが何を意味しているかご存じだろうか。
一般的には,賞味期限とは「おいしく食
べられる期限」であり,消費期限は「安
全に食べられる期限」である。
[ところが(常識からの転換)],卵の場合は
事情が異なっている。卵の賞味期限は,
おいしく食べられる期限ではなく,「生
で食べることができる期限」なのである。
第十三~十五問
その期限は,食中毒の原因となるサルモネラ
菌の急激な増殖が起こるまでの時間をもとに
定められている。
[とはいえ(転換)],サルモネラ菌は加熱によ
り死滅する。[だから(帰結)],賞味期限を一
週間程度過ぎた卵であっても,十分に加熱す
れば食べられる。[要するに(解説)],卵の場
合には,「食べられなくなるわけではないけ
れども,生では食べない方がよい」という意
味で,その期限は「消費期限」ではなく「賞
味期限」とされるのである。
逆茂木とは?
HEX
戦略SLGのマップの
HEX(六角形マス)
城の周りに防御のため
張り巡らせた逆茂木
騎馬隊・鉄砲隊は通過できない。足
軽隊はOKだが兵の損耗が激しい。
楽に超えるのは熟練の忍者隊のみ
前置詞がない日本語
○○,which ××,~~
後置される××(修飾語/節)は
前置の○○(被修飾語)の説明
修飾語→単語
修飾節→主部・述部を含む文
日本語は基本的に修飾語が前
置される構造が宿命
逆茂木が生まれる背景
頭の中に浮かんだ説明文を,
何も整理せずに,そのまま順
番に並べてしまう
句・節の長さに無頓着に,乱
雑に修飾句(節)を列挙する
書いた文は必ず読み返す。推
敲ではなく,点検作業を!
逆茂木退治法
一つ一つの文を短く
多くのことは多くの文に語ら
せる
一文一義主義
入れ子構造

主語-述語は基本的に「直結の
原則」(近接させる)。文中に複
数の主述が入り込む場合,「直
結の原則」を蔑ろにすると……
破格構造
一文が長いがゆえに,主語と述
語の照応関係が崩れているケー
スがほとんど
引用文(会話文)は必ず「」(括弧)
でくくること
文のねじれ①

主語と述語で同じような語句
を繰り返してしまう。
「本論文の課題は,世代間の
違いについて論及できなかっ
たのが今後の課題である。」
文のねじれ②
「××は△△(名詞述語)である」
と「○○は◆◆(それ以外)する」
を混ぜてしまう
「私の将来の夢は,世界で活躍し
たい。」→世界で活躍することで
ある。/私は将来,世界で活躍し
たい。
文のねじれ③
「~が~を~する」のような述語を
用いる表現と「~の~」のように名
詞にまとめる表現を混ぜてしまう。
「面接によって調査の内容について
論じる。」→。/面接による調査の
内容について論じる。/面接によっ
て調査した内容について論じる
文のねじれ④
「~が~を~する」の述語を用
いる表現と「~の~」の名詞で
まとめる表現を,「や」「と」
などで並立させてしまう。
「実験では,部屋の温度管理と
餌の回数を制限した。」→室温を
一定に保ち,餌の回数を制限し
た。/室温管理と餌の回数制限を
実施した。
ガーデンパス文
「この部分は何について書かれて
いるのか」という「意味が予測し
づらい文章」が続き,庭園の中で
迷子になってしまう
⇒一文を短くし,トピックセンテ
ンスで全体像(地図)を把握しても
らった後,細部の説明をする
文法的に言うと
庭の小径は行き止まりが多く,
行きつ戻りつしながら進む
主語―目的語―述語という要素
それぞれに修飾が加わる場合,
前から順に修飾すると,細かな
記述が連続して,行きつ戻りつ
が避けられない
ガーデンパス退治
文を短くして,文の骨格を先に
述べる
文の先頭から読んで頭に入りや
すい言葉の順番(対比・因果など)
情報提示の順序を工夫する(マク
ロからミクロへなど)
二義文
二つの意味にとれる文章
その多くの原因は,修飾語-
被修飾語の語順の問題(小さな
逆茂木問題→p.32の例文)
誰よりも君が好き!
君に言い寄る人は多い(だろう)
けど,その同性の中でもボクは
誰よりも君が好き(なことは負
けていないはず)
ボクは何人も付き合っている
(候補となる)人がいるけれど,
その異性の中でも君が最も好き
二義文の理由
修飾・被修飾の関係
市当局は,通行料金の値上げによって完
成した高速二号線の延伸を計画している。
名詞の多義性⇒助詞(「の」)
現政権のマスコミ批判が新聞紙上を賑わ
せている
現政権がマスコミを批判する
現政権をマスコミが批判する

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