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第3部 ニュースⅡ

ちょっとピンボケで,
ちょっと露出不足で,
構図は何といっても
芸術作品とは言えな
い代物だった
(ノルマンディー上陸作戦)
暗室の助手は興奮のあまり,ネガを乾かす際に加熱しすぎて
フィルムの溶剤を溶かしてしまい,写真を台なしにした…キャ
プションには〈キャパの手は激しくふるえていた〉とあった
けれどもそれらは,(略) 作戦
を描いた唯一の写真であり,海
上部隊の写真班が,海岸からな
んとか,発送の手配をつけたも
のより幾日か早いに違いないの
である(『ちょっとピンボケ』
p.101)
ニュースに対する「実践的関
心」。単に〈現実〉を写すので
はなく,伝えるべき〈なにか〉
があると信じているものを具体
化することがジャーナリストの
活動。
社会学者シュッツの概念。何が私たちの生きている社会を
動かしているのか,どのようにして社会的現実や日常世界
が構成され,理解されているのかを問う際の基本概念
ニュースの送り手と受け手が共
有して関心・注意を払う〈出来
事〉や〈主題〉。そしてそれら
を送り手が伝達し,受け手が受
容する〈動機付け〉。キャパは
第2次世界大戦というレリヴァン
スの中で戦場写真を撮り続けた。
“関心の共同性”が背景にある
現実の再現性。〈現実(オリジナ
ル)〉を写し取る段階で,本来の現実
から離れて,独立した一つの作品(コ
ピー)になる。ただし,現実世界とは
不即不離の関係にある。ニュースと
は常にストーリーで,現実を対象と
した物語(ニュース・ストーリー)を
つくり伝えることなのである
記録の最新性。ニュースとは〈い
まだ社会に周知されていない最新
情報である〉ということ(スクー
プ=速報合戦)。キャパは作品の出
来には満足していなくても,〈報
道写真〉としての唯一無二性を認
めた。
①社会にとって新しい出来事
(ニュースの情報価値)
②社会にとって優先すべき分野
(ニュースのジャンル),優先す
べき争点・事件や国家・人物
(ニュースの対象と焦点)
③社会の中の受け手の関心・欲
求(ニュースの訴求力)
④ニュース組織のルーティーン
との両立(ニュース素材の処
理・加工)
⑤ニュース組織やジャーナリス
トの支配的価値(ニュースの思
想性)
ニュースの生産過程(取材・作
成・編集・配信)において,情
報や記事原稿の(重要な)取捨選
択を行う人物のこと。彼らの行
為はゲートキーピングと呼ばれ

心理学者のレビンが提唱した概
念に基づき,ホワイトが日刊紙
の現場に密着し,記事の取捨選
択過程を実証的に研究した
周期性―出来事の発生がニュー
スメディアの報道期間に合致し
ているほど,ニュースになる確
率が高い
閾値―ある出来事がニュースに
なるには一定の“強度”を必要
とする
明瞭性―曖昧ではない単純な出
来事がニュースになりやすい
有意性―文化的近接性や関連性
が高い出来事がニュースになる
協和性―人々の期待(予測と願
望)に合致する出来事ほどニュー
スになる
意外性―予期せぬ出来事や稀な出来
事はニュースになる可能性が高い
継続性―一度ニュースに取り上げた
出来事は引き続きニュースになりや
すい
構成―ニュース内容の全体的バラン
スを保つのに必要な出来事はニュー
スになる
その日その日に人々に届く限られ
た数のメッセージを,無数の情報
から選り抜き,入念に作り上げる
過程。扱いやすいひとまとまりの
メッセージに変換する媒介者を
人々はあてにし,ニュースの内容
と性質までも規定する
送り手から受け手に届くすべて
の過程が,マスメディアを通し
てであれ,インターパーソナル
なチャンネルを通してであれ,
メッセージが伝達される際の選
択・処理・操作のあらゆる側面
を含んでいる
取材部門:取材記者が生の情報
や素材からニュース原稿にまと
める第一行為の段階
編集部門:ニュース編集者がそ
の原稿を修正・統一し,完成し
たニュース原稿にまとめ上げる
第二段階の行為
自らの組織と外部環境(他組織
など)の接点に位置し,両者を
結びつける「境界連結の役割」
を担う者とみなされる
1と2は通信社と新聞社/放送局
を当て嵌めることができる
「市場」を中心とした接点では,
広告主の商品に対して多くの受
け手を確保するために,受け手
が望むものを伝達しようとする
送り手の判断が働く場合もある
「PR」「政府」との接点におい
ては,情報を操作し,自らに好
ましいニュース記事に誘導しよ
うとする専門家とジャーナリス
トとの間で,バリュー判断,解
釈,枠組みをめぐって激しいせ
めぎ合いが起きる
受け手に伝えられるニュースの
テーマや内容が日々劇的に変化
するわけではない。選択に働く
諸力が常に変化しているとして
も,その諸力の付置や影響力に
大きな変化がないとすれば,そ
の過程はかなり定常的な傾向を
帯びる
社会の現実の忠実・正確な反映
物を映し出す「鏡」としての側
面。ニュース内容は,ほとんど
歪曲されないという考え方に立
つ。
1972年6月17日
ニュースは送り手の態度によっ
て作り上げられた社会的現実で
あるとする立場。送り手側に内
在する心理的要因が社会集団間
の合意としてニュース制作の一
つの規範になる。一種の職業的
フォークロア
型通りの日常業務の結果として
ニュースは生まれる。職務の上
で適切な実践として認められて
いる,習慣化・パターン化され
た手続きのこと
組織やジャーナリストを取り巻
く外在的要因(政治的・経済
的・文化的諸勢力や受け手)に
よって少なからず影響を受けて
いるという立場
社会の支配的勢力によって作り
上げられる社会的現実。彼らに
都合が良い「ヘゲモニー」に根
ざしたニュースが作られるとい
う立場。マスメディアは,彼ら
の利害関係と一致するイデオロ
ギーを伝えて,社会が現在の形
態で存続することを保障。
関連性:受け手に影響力があると受
け取られていたり,文化的・歴史的
によく知られていたりする集団や国
家に関する記事
重大性:大多数の人々に関わる点で,
潜在的インパクトをもつという点で,
十分に重要と考えられる記事や,行
き過ぎた行動や極端な出来事を含む
記事
対立:論争,議論,分裂,戦闘,暴動,
戦争など対立に関する記事
驚嘆:驚き,明暗,異常といった要素
を持つ記事
良いニュース:回復,躍進,治癒,勝
利,祝祭など肯定的意味を含む記事
悪いニュース:死亡,傷害,敗北,損
失など否定的意味を含む記事
パワーエリート:影響力がある個人,
組織,制度や法人に関する記事
有名性:すでに名高い人々に関する
記事
娯楽性:ショービジネス,スポーツ,
軽い人間的興味,動物に関するもの,
またはユーモアのある扱い,ウイッ
トに富む見出しや一覧の機会を提供
するもの
ドラマ性:避難,事故,捜索,包囲
攻撃,救助,戦闘,訴訟など展開
中のドラマに関する記事
オーディオビジュアル:人目を惹く
写真,ビデオ,音声を持つ記事
共有性:SNSを経由してシェアやコ
メントを生み出す可能性が高い記

フォローアップ:すでにニュー
スの主題になっている記事
独占性:インタビュー,書簡,
調査報告,世論調査などの結果
として,ニュース組織によって
生み出される記事やその組織が
最初に利用できる記事
ニュース組織のアジェンダ:商
業的であれ,キャンペーンであ
れ,ニュース組織自体が争点を
設定したり,そうした争点に適
合したりする記事

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