アクティベート ・ リーフ　No.

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「悔 いのない人 生」
　　じゃなくてもいいんだ！ 築紫　裕子

「悔
いのない人生」と聞くと、かっこいい響 　ところが、最近ある気づきがありました。ご主人を亡く
きがあります。「俺は悔いのない人生を したばかりの、心優しい年配の牧師婦人の話を聞いていた
生きてきたから、思い残すことは何もない！」ま 時のことです。婦人は皆の前で、愛するご主人のことを回
るで映画の中のセリフのようです。誰もがそんな 想しながら、こんなふうに語りました。
人生を望んでいることでしょう。 　
「私は長年、牧師をしていた夫に精一杯尽くしてきまし
　私も若い頃から、悔いのない人生を送りたいと、 た。ですから、主人が天に召される時にも悔いは残らない
必死で生きてきたような気がします。でも、振り だろうと思っていました。でも、いざ主人が亡くなってみ
返ってみると、実際の人生は悔いだらけなのです。 ると、自分が主人に尽くしてきたと思っていた以上に、自
あの時こうしていればよかった、あの時あんなこ 分の方がどれほど主人からしてもらっていたかに気づい
とを言わなければよかった・・・、もっと早くに て、自分の心の在り方を悔い改めさせられました・・・。
」
気づいていたら・・・と、考え始めればきりがあり
ません。 　その言葉を聞いた途端、何かピンときたのです。急に、
　でも、時は川のように流れ去り、今さらどうに 「そうだ、悔いのない人生なんてあり得ない！ だから、悔
かできるわけではありません。だから、失敗や後 いのある人生でもいいんだ！」と思え、不思議な解放感を
悔の念も、時の流れと共に流していけばいいので 覚えました。婦人の話と私の心の葛藤は、直接は関係して
しょうが、
「悔いのない人生」にこだわればこだわ おらず、婦人の話の意図は違うところにあったのですが、
るほど、悔いが貯まり、心の底に後悔の泥沼がで 「後悔」と「心の在り方」という言葉が触媒となって、私
きてしまう感じがします。 の心に何かを引き起こしたのです。
　そんな状態で、ずっと後悔しながら生きている 　
「悔いのない人生」
　それは、響きはいいですが、へたす
人を、私は沢山見聞きしてきました。だからこ ると「失敗のない人生」と取り違えてしまうのではないで
そ、自分は悔いのない毎日を送ろうと努めてきま しょうか。
「悔いのない人生」にこだわりすぎると、もし
した。ところが、どんなに頑張っても、後悔する かしたら、自己満足や自己正義がまぎれ込んでしまうこと
ような出来事は起こり、悔いが残ります。 もあるかもしれません。
　
「あー、あの一言・・・。なんであんな事しちゃっ 　そうなると私たちは、精一杯生きようとするだけではな
たんだろう・・・。あの時、これをしていたら・・・。
」 く、不完全であることや失敗することを恐れたり、時には、
　そんな思いが私を苦しめていました。たとえ小 不必要な罪悪感を持ったりするようになります。つまり、
さな悔いでも、毎日重なっていくと、心はどんど 行動においても、心の在り方についても、完璧主義になっ
ん重くなります。 てしまうのです。
　人が不完全である限り、行動も心も、完璧にな
ることはあり得ません。だから、悔いが残って当
たり前なのです。大切なのは、そのたびに悔い、
改め、再出発することなのではないでしょうか。
　小さな悔いが貯まって心が重くなっていたの
は、私が素直に自分の失敗や至らなさを認めて、
それを改め、過去として流すことをしていなかっ
たからだと気づきました。そう考えると、
「悔いの
ない人生」を追い求めるのではなく、
「悔い改めて
再出発する人生」を実践していくほうが、ずっと
現実的で、かつ、幸せに生きられるのだと分かっ
てきました。それに、もし人が失敗もせず、悔い
る必要もないなら、かなり傲慢な人間となってし
まうことでしょう。
「もし、罪がないと言うなら、
それは自分を欺くことであって、
真理はわたしたちのうちにない。」
－ 聖書　ヨハネによる第一の手紙 1 章 8 節
　ところで、聖書には、
「悔い改め」という言葉が
頻繁に出てきます。この言葉の素晴らしさは、
「悔
いる」でおしまいではなく、続きに「改める」が
ついていることです。それがあるとないとでは天
と地の差があります。悔いて悲しむだけなら何も
変わらず、沈んでいくだけですが、
「悔い」の後に
「改め」が加わると、神様からの恵みを受け取って、
再び新しく始めることができるのです。そのこと
について、こんなたとえがあります。
　ある人が、良くないと分かっていることをやっ
てしまいました。それが見つかり、気まずく思っ
たその人は、相手の人と神様に「すまなかった、
許してくれ」と謝りました。相手の人がどう反応
したかはわかりません。でも神様は憐れみ深い方
ですから、過ちを告白したその人をゆるしてくれ
ました。
　ところが、ゆるされたその人は、
「あー、神様は
なんて素晴らしい方なんだ。こんな失敗をした私
をゆるし、愛してくれるんだ。ありがとう！」と言っ
ただけで、そのまま同じ態度で、同じ方向に進み
続けました。
　これで物事は解決するでしょうか？　しばらく
すると、その人は、また同じ過ちを犯します。最
初の時に、悔い改めていなかったからです。悔い
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るだけで、方向転換をしないなら、いずれは似たような失
敗を繰り返す可能性が大きいのです。
　
「悔い」とは、自分が失敗してしまったことに対する悲
しみの感情であり、自分を憐れんでいるだけの場合も多々
ありますが、
「悔い改め」は、その気持ちをきっかけに、
新しい生き方を決意することです。
「改める」とは、変化
すること、方向を変えること、つまり、同じ過ちをしない
ように、生き方や態度や考え方を変えることです。それを
する時、神様は起きてしまった失敗や過ちをゆるし、新し
くやり直すための力と恵みを注いでくださいます。
　でも、ただ「あんなことして悪かったなぁ。あれは失敗
だった」と思うだけで、方向転換をする気もなく、生き方
を変えようともしないなら、神様はゆるしてはくれるもの
の、そこに祝福を注ぐのは難しくなってしまいます。
　だから、何か後悔するようなことをしたり、言ってしまっ
たり、またはそのような日々を過ごしてきたのなら、ただ
後悔し続ける代わりに、神様と、できることなら相手にも、
「ごめんなさい」の気持ちをしっかり伝え、さらに、同じ
ことを繰り返さないように態度や行動を改めましょう。そ
うすれば必ず、神様は私たちを過去の悲しみや泥沼から救
い出してくださいます。
「もし、わたしたちが自分の罪を告白するならば、
神は真実で正しいかたであるから、その罪をゆるし、
すべての不義からわたしたちをきよめて下さる。
」
－ 聖書　ヨハネによる第一の手紙 1 章 9 節
　だから、
「悔いのない人生」じゃなくていいんです！　
むしろ、日々、悔い改めながら成長する時、私たちは神様
が望んでおられるような人間に育っていくのではないで
しょうか。
「神の受けられるいけにえは砕けた魂です。
神よ、あなたは砕けた悔いた心を
かろしめられません（軽んじることはありません）。」
－ 聖書　詩篇 51 篇 17 節
「イエスは言われた、
『わたしもあなたを罰しない。お帰りなさい。
今後はもう罪を犯さないように』。」
－ 聖書　ヨハネによる福音書 8 章 11 節後半
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