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民医連スタディーツアーin トロント 佐藤メモ

木曜日:
会場:午前 Worker’s Action Centre, 720 Spadina Ave., Unit 223
アドボカシー団体や地域の団体への医療従事者の参加がテーマ: Jon Herriot & Alissa Tedesco/HPAP

8:45-9:45 カナダにおける医師のアドボカシー活動の紹介、歴史。

SMH アドボカシー・ツールキットの紹介 : Rami Shoucri, Katie Dorman 【セッション13】

*注:HPAP は Health Providers Against Poverty で Gary が中心メンバーの貧困に反対する医療従事者の会で、


街頭でのデモや州政府の医療費削減に反対の運動を展開。日本でいえば闘う運動団体。

Katie Doman:
先住民、依存症やトランスジェンダーのケアなどに関わっている家庭医。
SMH で研修を受けて、ハドソン湾近くの Moose factory ではたらき、またこちらに戻ってきた。
Moose では、主に先住民のケアをしていた。いま、ここでは貧困者のケアをしている。
アドボカシーについてはレジデントのうちはほとんど経験していなかったが、その後に学んだ。
Rami Shoucri:
医学の前は法律をやっていた。
アドボカシーに関心がむいたのは、いくつかの訴訟を経験する中でいろいろ。

日本側の自己紹介:
日本の民医連という医療者団体。
普段からアドボカシー活動はしているが、活動を研究としてまとめて発表するのが弱いので学びに来ました

COI

医療提供者として特権的な立場から発言する。人々や地域を代表してではなく、システム的に不利な立場に置か
れている人々の味方として発言する→今日の発表者は前任が必ずこれ同じこと言っていてよかった。自分の立場
を明確に言えるようになりたい

医療提供者 HCP のアドボカシーの理論的根拠を紹介


社会的正義のアドボカシー:人種や民族、経済的身分、国籍、性別・ジェンダー、年齢、性的傾向、宗教などで
不利な立場に置かれた人々に対する不公平を避けることができる、根本原因の解消への取り組み。
アドボカシーの3つのレベル=SDH の Micro Meso Macro(メソとしては、クリニックを貧困者居住地に移すこと
も該当する。Poverty keeps us Sick!という演説活動なども)
「健康は政治の問題」で、経済政策が不十分だと、生活保護や雇用基準や薬剤給付や医療に影響し、SDH の食糧
不足・ホームレス・薬剤が買えない、社会的排除、慢性ストレスとなり、糖尿病・高血圧・肥満や心臓病・脳卒
中になる・管理ができないとなる。

カナダにおける HCP の職業的責任


カナダ家庭医療協会では、奉仕するコミュニティーでアドボカシー、ヘルスプロモーション、疾病予防を行う機
会を見つけて対応すること
オンタリオの看護師協会でも、アドボカシーを定めている。
医師独特の貢献
・辺縁においやられた個人との接点がある
・エビデンスを理解し普及する訓練をされている
・尊敬されており、かつ(医者が政治的発言をするなんて
という)意外性の影響力
・比較的安定した職業(なので弱い立場の人のためにアドボ
カシー活動をする余裕がある)
・舵取りや資金調達能力がある
→日本の医師は全部はもっていないと思う。絶望_| ̄|○

参加者ディスカッション(3人グループで、2-3分)
この5つの条件がなくて、運動は上から、現場は忙しいし関心がない。お金や、研究・アドボカシー技術
現場の若手、最前線が関心を持てない、むしろ反発。
家庭医業界の中でいえば、自治体とのやり取りはしているひともいるが個別でおわり。つながっては行かない。
そもそも最初に計画していないので、場当たり的なので全体をまとめて大きな力にすることも難しい。

参加者意見発表
貧困地域で診療していて、生活保護患者が多い貧困地域では熱中症がとても多かった。クーラーの電気代を節約
するためにクーラーをつけない人がいる。他にも子供の学校の制服を買えない、孤立している人の頻繁な救急車
医療の問題もある。また日本はアルコールの問題が大き。先日の研究で薬物を安全に与える場所があったが、ア
ルコールでそういう取り組みがあるのかという疑問も戻った。背景に孤立もあるので、場を作れたらいいのかと
思う。
→トロントでも空調の問題を取り上げて戦ったことがある。エビデンスになる情報を集めて訴え、クーリングセ
ンターという涼める場所を作ったりした。教育に対するアクセスの問題も、自身(発表者)は経験していないが、
大きな問題で対応されてきている(大きな問題に対する問題意識は同じ、しかし成果に段違いの差がある。この
ギャップは果てしない…)

カナダにおける HCP アドボカシーの事例を紹介


医師によるアドボカシーの例
感染症医が、医療法改革に反対して街頭演説したときの写真の紹介
Medical reform group 医療改革グループ
1979年、万人に平等な医療への普遍的アクセスを支持する医師と医学生がオンタリオ州で設立
オンタリオ州医師会が、1980年台に、患者に対する利用費の導入を提案しストを計画したことに反対、カナ
ダの皆医療制度を守った(日本だと、医師会にたいして民医連が喧嘩売って勝った的な!?)

メディケアを求めるカナダ医師の会 Canadian doctors for Medicare(CDM MCRP)


富裕層しかハイレベルの医療を受けられなくするカナダの医療民営化傾向を懸念して、医師グループが2006
年に結成。講演、インタビュー、論説、報告書などによって医師・政府・国民に訴え教育している。

貧困と戦う医療提供車の会:Health providors against poverty


貧困者に対する公的支援充実を主張する医療提供者によって、2005年に設立
最初は「大量飢餓クリニック」というキャンペーン。屋外でデモンストレーションして、医師や看護師が、低所
得者支援用の政府医療支援申請用紙に書き込んで提出し、陳情書を提出した。

具体的な戦略リスト(充実、豊富!)
直接行動:集会、デモ、抗議行動(民医連の人たちがやってる)
政治的ロビーイング:政府への手紙、協議(これはないか、クソ下手)
大衆教育:論説、記者会見(これは、ないか、クソ下手)
医療提供者の教育:講演、臨床ツール開発、記事作成(ほぼない)
協力:地域組織や職能団体(立場や肩書の異なる専門職団体との折衝はないのでは)
→民医連だと教育やツール開発、ロビーイングなどが弱い印象。協力や記者会見も不十分。要するに騒ぐだけで
有効な手立てを戦略的に打っていくのははほとんどできてない(ように、少なくとも中堅の自分からは見える)

毎年1回、総会をしている。
会費は25$。
講演もしている。
最低賃金保障の戦いなどもした。

最近の活動:Overdose prevention sites(OPS)の支援


2016年には8000人以上が Overdose で死亡していたが、サイトが開設されてすっかりなくなった。これ
をエビデンスとしてまとめ、政府に得て維持した。
マスコミの注目を集めるのも必要で、後援会をつくったり、web に動画を上げたりした。
→街頭宣伝行動とかするとき、マスコミに連絡しているのか?
これらアドボカシー活動の成果
生活保護手当の若干の引き上げ、障害給付受給基準の引き下げ
コミュニティー組織と学術機関、実際の経験者と医療提供者、医師と労働に注目したグループの連携が生まれた

課題としては、安定した財源がない、時間がない、仕事へのネガティブな影響・政府からの支給停止の恐れ、ア
ドボカシーについての経験や知識不足。
→自分もこれらはわかるが、同じ条件でもできる人たちとの違いは?自力でクリアできそうなのは、アドボカシ
ーのスキルと経験値を積むことか。まずは研究の形でまとめる、学会発表等で頑張る、マスコミへの露出や自治
体への情報提供(のノウハウをベテラン世代に協力仰ぐ)などか。

SMH の DFCM サーベイ(Family and community なんとか)


システムレベルで、あどぼかしー参加を妨げているハードルはなんですか?

67% 知識やスキルがない
58% 時間がない
54% 何から始めればいいかわからない
25% 十分な保証がない
8% 上司や管理者の反応が心配
→これだけは民医連では大丈夫。

→この調査結果をふまえて、どうやってハードルを減らすかを考えた。
(現状把握→解決策模索→やってみる→見直すの基本的な流れができている。すごいなぁ…)

財政的な保証
CHC センターでは職員は給料制(アウトカムによって給与が変動しない)
、中核的な活動として勤務時間内に行う
学術的活動は、様々な形でお金を得る
プロボノ(ボランティア)
、それでも多くはボランティアや時間外で行われている。
SMH にファミリーヘルスケアチーム FHT を作って、6箇所のクリニックを開設(初日に学んだこと)

HCP 用に開発された Advocacy ツールキットの共有


SMH で行ってきたこと
数十年来の医師のアドボカシー活動
2016年に SDH 委員会にアドボカシー作業グループを結成
2017年に、医療提供者用のアドボカシーツールキットを開発
FHT 全体のアドボカシー枠組みのパイロット試験を開始した
ツールキット→スライド参照
機会的に埋めるだけでなく、考えながら取り組んでほしい

Step1.問題を同定する
問題を捕まえるだけでなく、政治的情勢を考え変化の窓が空いているかを確認する(2日目参照)

Step2.仲間を見つける
同じ考えのパートナーを特定し経験者から学ぶ(いきなり一人で手探りしていちから始めない)
コミュニティー組織が、この問題に主導的に取り組んでいる、もしくは取り組みたいと考えているか。
病院の他の部署の職員も取り組んでいるか?

Step3.目的と目標を決める
SMART な目的設定、変化を起こせるのは誰か(レバレッジポイント?スプレッダー?)、
どのような資源が利用できるか(計画をきちんと)

Step4.戦略とツールを選ぶ
活動の範囲、特定のメッセージの発信、アドボカシーのツールや行動を選ぶ
意見記事、ブログ、マスコミ発表、ソーシャルメディア、陳情や意見書、直接行動、訴訟、臨床ツールや研究

Step5.自分自身をどのように紹介するか決める
個人としてかグループの代表としてか、所属や肩書のどこを強調するか(肩書を作るか)
(でもこれ、ホント大事だと思う)

Step6.実行と評価
成功度をどう図るか、目指した結果はなにか、戦略・メッセージ・提携を評価する

→このツールキットで示されているプロセスが、民医連に決定的に欠けていることだし、意識すれば直ぐにでき
そうなことでもある。これが可視化されているのはほんとすごい。できそうな気が急にしてきて、1・2日
目に作られたモヤモヤがこの驚き・発見のために仕組まれていたのかと納得しそうなくらいの超絶インパク
トでした。
アドボカシーの枠組み
11ページの文書で SDH 委員会と SMH-FHT 執行委員会が正式に承認した
反応型アドボカシーと率先型アドボカシーの2つがある(Reactive と Proactive)
・反応型もしくは対話型アドボカシー
診療で見つけた、もしくは地域内のパートナーが特定したアドボカシーで取り上げるべき問題に対して、
アドボカシー委員会や SMH-FHT の支持を取り付ける(既存のものに乗っかる、認める形)

養成者と適切な資源を結びつけ、公式な組織の流れにもつなげていく。
・率先型アドボカシー
SMH-FTH が職場全体で取り組むべきアドボカシーキャンペーンを選び実践する。
自分たちの知識や経験を活用するため。

日本でのアドボカシーのためのアイデア創出と能力構築
質疑応答:
日本では、アドボカシーとは政治的なことなので医師の仕事ではないと考える人が多い。カナダでは、アドボカ
シーすべきと考える医師が大半なのか?
→カナダでも多くはないが、この20年でだいぶかわってきた。医学生教育で、Can meds role というのを教え
る中でアドボカシーが取り上げられるようになってきている。やって当たり前になってきている。
→医師が、自分のところの患者のエビデンスを発言・提案するのが当たり前になってきた。政治的なスタンスか
らではなく、臨床の視点から当たり前に(あくまで SMH の中での当たり前かもしれないが、日本よりは
広がってきている、広められている)のだろう。

Justice という言葉を使っていたが、日本だと Equity を使うことが多い。Justice をあえて使う意図は?


→そこまで厳密ではないかもしれないが、Equity は公平な機会を与えることだが、Justice はプロセスに注目し
ており公正なものを実現するための手順である(少し納得、同じジャンルで違う次元・範囲の言葉)

学童教育や医学生教育の違いが知りたい。なにか関わっているか?
→発表者自身は教育活動には関わっていない。選挙のときに市民に対してどういう政府・市議会を作るべきなの
かという呼びかけを中心にしている。不正義があるときに公正性実現のためにこうすべきだという呼びかけ。
自分自身が成長する過程でも学校の教師などからそういう議論は当たり前に感じてきたし、学生が LGBT の記
載について変えるべきだという該当行動をしたりブログで書いたりしている(医療者が学校教育に直接入って
いくのではなく、そもそもの教育や政治に対する態度・国民性が違う?)
→参加してる医学生から。医学生としてもアドボカシーに参加するところまではいかない。政治的な制度がまだ
わかっていないこともあって。しかし、SDH は学ぶべきことではないかと考えてはいる。
9:45-10:10グループ紹介:HPAP と Decent Work and Health Network (DWHN)

:Kate Hayman, Alissa Tedesco 【セッション14】

特別栄養手当キャンペーンをきっかけに2005年に結成

アドボカシー活動に、多くの団体が参加するようになってきた。
看護師団体や歯科医団体など。
そしてトロントから他の州にも広がった

ミッション・ステートメント
取り返しのつかない驚異ではなく、医療者の特権をもちいて権力にアクセスできる!

運営委員会を作り、少額の会費のみで毎月の会議参加歓迎、毎月ゲストスピーカーの講演と問題提起、進捗報告
などをしている。
コミュニケーションに力を入れ、一般向けのメーリングリスト、毎月のダイジェスト版、コミュニティーイベン
ト、web サイト、ソーシャルメディアなども活用
→ただ集まって会議するだけでなく、きちんと拡散する

戦略:
方向性を決めるために、様々な会員の関与、政治的な窓口・指示、味方や経験者からの要請などを取り入れる

2017年のキャンペーン:州の生活保護改善を目指すアドボカシーの取り組み
所得補償がどれだけ重要か、政府が関心うすかったので声を上げ、地元の新聞が取り上げてくれた。
いまでは、所得補償がいかに重要か、世間に広く知られるようになった。
結果、生活保護を毎年3%増額することや、ホームレスへの支援の増強を政府が発表した。
予算もふえて、より多くのマスコミ活動ができるようになった。
活動するときにはきちんと効果を測定し、数字で政府に提示し広報活動するよう意識している。

トロント市のホームレスの、冬期一時収容施設の劣悪な状況に関する報告書
トロントの冬は厳しく、夏から急に切り替わる。しかし今まであったシェルターの環境があまりに劣悪だったた
め関心を持った。ホームレスや収容施設をいくつか報告し、トイレやシャワー不足や床で寝ている事実をまとめ
たところマスコミの注目を集めた。医師が市議会に改善を求めたことを新聞が取り上げネットニュースにも乗っ
た。その結果、シェルターのベッドが3000個増え、予算も増えた!
(民医連の、意見をただ述べて終わりとは雲泥の違い。成果がちゃんとついてきている)

各政党が選挙で掲げる、SDH に関する基本政策評価を一覧表にして出したりしている。
(特定の政党の宣伝だけに終止するわけでなく、市民が判断する参考となる情報を出している)
→これも web に乗っている。

Decent work & health network:DWHN(Decent≒まともな≒正規雇用に劣らず健康に悪くない雇用条件)


SDH の視点での非正規労働
=非常識な勤務体系、不安定な収入、規制が不十分、保護措置が少ない、福利厚生が最低限

オンタリオ州では26%が非正規、時給15ドル以下の低賃金で、女性・人種別グループ・移民の比率が高い
雇用条件が、健康予後の公平性に強力な影響を及ぼすが、一方でその条件が良ければ財政的安全、社会的地位、
個人の発達、労使関係、自尊心、健康にとって重要な保護を提供する→改善・除去可能な社会的要因

DWHN では、雇用と健康についてあまり関心が払われていないことを問題ととらえ、作業グループを2015年に
結成した。
目標:
今まで疾病の有給がないことを7日にする、50名以下の小規模事業所でも個人緊急休暇を拡大、
医師の診断書提出義務付けを廃止することを目指した(明らかに病気の人は証明しなくても病欠できる)

関係者との話し合い:
厚労省の偉い人たちとの公式面談で、自分たちの活動の背景などを詳しく説明し、訴えが一定採用された。
街頭での啓発活動もした。最前線で働くサービス提供者(利用者の雇用・経済状況を見ていて問題意識はすでに
持っている)のワークショップで現場の人への教育も力を入れた。
成果:
10日間の病欠(うち2日が有給、残り8日も休業を理由に解雇されない)が認められた→子看休暇含め、
しっかり休めるようになった。 政府が変わっても変化しないように活動を続けている。

事例:
救急外来に怪我で受診した女性。有給で2日休めるよねと聞いたら Yes と答えた。歯科に来ていた女性じは、
非正規雇用なので休むのはかなり怖がっていたため権利を教えたら喜んでいた。その上司は最初休むことを
かなり怒っていたがなんとかなった。
→権利をもっと広げる必要がある。権利があっても行使しない、知られていないと効果が不十分。

DWHN キャンペーンの強さ
特定の政策やチャンスに焦点を当てて成果を出してきたことで多くの学びを得た。
たくさんの資金提供を得て有給コーディネーターを得られた、進歩的なメディアとの良い関係ができた、医学生
や医療提供者への呼びかけで参加する人が増えてきた。

課題
12-18 ヶ月ごとに財源確保し直し、会員の定着の課題(特に学生やコーディネーターの入れ替わりが激しい)

また特定の政策・チャンスに焦点を絞るのでチャンスの窓が閉じたときや政権が変わったときに成果をどう守る
かが次の課題(タイミングすら見えておらず、特定の政党にべったりの現状と比べれば次元の高い悩みではある)

質疑応答:
政府の姿勢が住民の健康に影響を与えるという視点は重要だとおもう。政府ごとの政策を示した表など、自分た
ちが実現したい内容に近い政策を掲げている政党を直接応援したりはしないのか?(ベテラン世代から)
→DWHN では、特別な政党と関係しているわけではないが、深い協力関係が強いのは Decent work for front
という団体(政党ではないが、政治団体の一つ)がある。そこと協力することで、医療関係者の声を市議会
で代表してもらえる。
(パイプはあるが、特定の政権との癒着はしていない)

→我々は無党派ということになっており、主張はつたえる。政策評価一覧表でも、どの政党もオール A ではなく
各政党の問題点が見えてくるので、交渉するときにポイントが見えてくる。保守的な政党、進歩的な政党で
温度差もあり、理解が得られるかも異なるが、どこか一つに絞らずそれぞれに働きかけるようにしている
(そりゃそうだよね)
→Good and Difficult question! 難しさは感じる。
政治家と会話をするようになって、いくつかの良い変化はあるが、全部に理解いただけているわけではない
(でも理解をしてもらえる努力はしている)
。それでも一度冷静になって(落胆したり怒ったりはするよう
だ)、粘り強く耳を傾けてもらう。政権が変わって立場の異なる党になったときも、今の州知事はトランプ
大統領に近いので聞いてもらうパイプにはなる。様々な意見の異なる政治団体から声を聞いてもらうことが
重要だと思う。
(政権は変わるし、日本ではそもそも共産党は政権握れないし、今の民医連のあり方はうまくアドボカシー
ができていない根本的な背景とおもう→共産党色のついている民医連にいながら政権与党と係る方法は
あるのか?民医連として活動して色が付きすぎる前に外に出てしまったほうがよいのか?という疑問が
でるのも当然だろう→自分的には、北大など通える範囲の道内大学の公衆衛生講座などに入り込めると
面白い気がする。そのための時間の確保や仕事の整理をどうするかが大きな課題)。
資金提供の受け方について。どうすれば受けられるか、その後も継続的に受けられるか?(若手から)
→発表者自身は財政係ではない(財政に関する専門家がいるということか。いいなぁ)。
資金提供を受ける対象はアドボカシーとリサーチの2つがある。資金を受けるために、活動履歴と成果など
をきちんと報告していく(変化の成果を証明するのは難しいが)

臨床医として忙しい中で、こういう活動を週に何時間くらいできているのか?
→DW や HW に関わっている医師の大半は救急医。勤務時間が柔軟だから(病棟で主治医してないので、臨時で外
部活動するときでも、空き時間を調整してすぐに行けることが多い)

それでも、大体は週1-2時間、多くても10時間以下。
→また、我々医師の多くは、お金はもらわずに社会的公平性についての活動している。
SMH 以外に勤務しており職場としての理解はないが、上司が理解あるためこういう活動への柔軟な参加がし
やすい。組織的なバックアップを医師にたいして行うのはなかなか難しい状況。
だからこそ、教育活動を組織に対して行い、組織に従事する人たちが参加しやすくなるようにすることも
重要。私個人は、こういう活動も臨床の一部だと認識している。

10:30-10:40 休憩
10:40-11:00 グループ紹介:Refugee Health Campaign :Meb Rashid
難民の健康と医師のアドボカシー:ケーススタディー

ベトナム戦争後に、ベトナム人が大量に難民が発生した。
このとき、カナダ政府は、カナダ市民として受け入れると公表し、4 万人のベトナム人がやってきたが、結局 10
万人まで増えた。最終的に 16 万人受け入れた。過去最大規模。
10 年以上移民に関わってきた医師は、長らく関わっていれば生活に馴染んでくるが、そのためには医療側での
関わりや努力はやはり必要だったと述べている。移民は、到着後すぐの時期はプライマリケアを必要としている。

当時は、すべての移民が医療保険の恩恵を受けられた。医師の診察、検査などのアクセスは、通常の健康保険と
一緒で、問題なかった。

しかし、2012 年 4 月の末に、健康保険制度がいきなり変わって、難民に対する補助サービス(基本的な医療以外
の、薬剤や歯科、検眼、人工装置へのアクセスなど)が失われた。ほぼすべての医療的ケアへのアクセスを失っ
た人もいた。

その理論的背景は?
一つは財政的な問題、予算がなく、この改革で大きな額が削れると言われていた(実際は医療費のごく一部にし
かなっておらずそこまで大きな問題ではない)。もう一つは、そもそも移民を減らすためという意図もあったか
(医療を受けられることを目的に、ホントの難民ではなく狙ってくる移民も一定いた)。しかし、こういう判断
は、けっきょく政府の移民に対する基本的スタンスとつながっている。公正性をどう考えるかという視点。

では、我々医療者の責任とはなにか?
昔から活動している医師のから「これひどくない?」というメールがきて、医師が大勢(90 人)集まって議会に
行って、直接抗議活動を行った(突然の発表すぎて、知らない人がほとんどだった。政府としても知られないう
ちに進めたかったらしい。が、この医師が気づいて、活動につながった)

移民で心臓病などが多いデータもしめし、医療制度の改悪をしたらどうするんだなど伝え、対応した人が上に伝
えてくれないなら直接上に交渉したいなど伝えたが、警備員がでてきてオフィス内での抗議は違法なので退去す
るように言われて、書類をおいていくことにした(という一部始終をユーチューブにあげている)。
移民のケアのための医師の会:Canadian doctors for Refugee care を結成した。
基本的心情:このポリシーに関して、カナダ国民を教育する手段として、メディアを参加させる。
普通のカナダ人にこの事実を伝えれば、必ず関心が得られると信じていた。弱い者いじめ的なニュースはもとも
と関心を集めやすいので、メディアを利用しようと考えた。

→今までカナダで医師が集まって声を上げること自体珍しかったので、英国の Guardian にも取り上げられた。


→助産師団体など様々な医療・健康関係の団体から連絡が来るようになって「医療界全体が声を上げている」と
いう体裁をとれるようになった(カナダの家庭医、内科、眼科、ソーシャルワーカー、歯科医師会・医師会・看
護師界や薬剤師会、助産師界、精神科、小児、感染症、公衆衛生など様々)
法律家にも連絡し、権利や手続きについて助言をもらった。
保守・進歩など様々な政党と話をしにいって、多くの政党が声を聞いてくれた。
うちわから出てきた批判としては、これまでも移民政策はいろいろ変わってきたのにどうして今回だけ声を上げ
るのかという疑問があった。それはそれで正しいが、あくまで一部の声であり、動くべきと考えていた。
ビラを作って該当で演説に加え、各戸のポストにも入れていった。

次のうごきとして、政府が「医師がこういう活動をすることは間違っているのでやめるように」という声明を出
してきた
→記者会見の場で「何を言われても医師は口をつぐまないよ。言うことを聞いてもらえないならストライキも考
えている」と反論した動画も web にあげている(シェアやコメントがそれぞれ 200 件近くずつ、閲覧数は 12 万
件あるし、マスコミの取材のカメラもかなりの数来ていた)
。対応した偉い人のプライベート暴露動画なども上
がってかなり批判された。
その後提訴がでて、判決としては「今回の政府の判断は、憲法違反である」という結論になった。
そしたら次の動きが政府からでた。妊婦ケアをよくするというプランが出たが、これも移民には適切な対応がさ
れていない。

こういう政府の動きが出た背景については、今のところは明確な説明がない。
政府に重大な欠陥があったのか、支援者からの意見か?
もっとも社会的に脆弱なもののケアについてどうするか、一部の医師(今回レクチャーをしてくれた医師たち)
のリーダーシップが大きな助けにはなったがまだまだ。移民を受け入れるならきちんと生活・医療の保障をすべ
きである。
連邦議会の移民大臣の写真→移民へのヘルスケア削減はなんとかすると公言し、まだいくつか不十分な点はある
が 6 ヶ月後には改善された。

うまく行った理由:
・ターゲットを絞った。
いろいろ問題はあるが、
「移民の医療を守る」という一点に絞った(ついでにあれこれ言わない。
話が広がると伝わりにくいし、内部の意見も割れやすくなる)
・広い連携の構築。
国民に広く伝わった(10 年前だったらむりだが、広い移民ネットワークがあった?おかげで全国的に
広げられた)
・主張に対する正確性の維持。

Elie Wiesel、ノーベル賞受賞者のことば
「昨日、今日と同様に、国家は難民に対する態度によって判断される」

質疑応答:
日本だとこういう政策変更活動は時間が掛かるが、今回はなぜ半年という短期間でできたのか。
→司法に詳しい人がいて、今回の政策が憲法違反という主張をするのを支援してくれた。提訴から判決がでるま
で 1 年半だったが、そこまでスピーディに持っていくまで専門家がやってくれたことと、めったにない大き
な話題だったので対応が早かったと考えられる(政治の窓が開いたタイミングを活かした)

ギャリーからの補足:
とても重要な活動だった。多くの人が繋がれたし、制度変更が成功できた。医師の役割を医師に伝える良いきっ
かけになる、象徴的な事例である。一方で、非常に大きなエネルギーを要した。政府の政策に No!というのはと
ても大変。他にも関わった問題はたくさんあり、ときにやる気が折れることもあるが、そういうときに成功事例
があると「やらねばならないことはやらなければならない」と思える。こういう健康を脅かす政策がでたときに
「社会問題だ」と提起し声を上げていくことが、私達の役割だと思う。

代表からの感想:
カナダの医師のアドボカシーは素晴らしいと思った。
日本では弱者支援をしようと思っても、世論も医療者も「自己責任」と考えてしまう傾向がある。
日本の保守的なところだけ批判していてもかわらないので、日本でどうしていくか考えて活動していきたい。

11:00-11:30 討論(時間取れず、上記 3 つだけでタイムアップ)


11:30-12:15 CFPC(カナダ家庭医協会)への移動、
2630 Skymark Ave., Mississauga, Ontario
医療従事者団体と社会的説明責任についてがテーマ:カナダ家庭医協会が運営 【セッション16】
トロントの隣の市で、かなり郊外
建物も会議室もすべてが立派!

今回あつまっているのは、カナダ家庭医学会の「社会的責任(Accountability)ワーキンググループ」の人たち
CFPC 側参加者の自己紹介(全員が超エリート・VIP 級)
健康政策の担当者
緩和ケア・在宅やホームレスケアをフルタイムで行っている家庭医。CFPC でなんかの作業部会を立ち上げてその
責任者になる。
家庭医療のレジデントを終了したて。ケベックの田舎で社会的脆弱者の医療をこれから担う予定。
トロントの家庭医。社会的脆弱者のケア、麻薬依存者、ホームレス、売春婦のケアをしている。Conmmunity centre
などでも働いており、CFPC でも働いている。
この地域で働いている家庭医。

日本民医連の参加者からの自己紹介
Best advice の日本語訳に関わりました。
貧困者への医療を日常的に行う中で問題意識を感じているが行動できていない。学会や組織を通じて、貧困の原
因の原因に関わる方法を学びに来ました。
普段から、上流に目を向けないとどうにもならない現状の中で働いている。
日本では LGBT ケアを医師がするという考えがない、こちらの実践に刺激を受けている。
カナダでは家庭医が多数派で驚いている。日本では少数派。カナダの家庭医が何をしているか学びたい。

12:15-1:00CFPC で昼食(12:45-13:25)
おいしかった。自動食洗機があってびっくりしたけど、医者が細々洗うことを考えるとリーズナブルですね。

1:00-1:15 導入
CFPC のリーダーCEO 紹介:フランシス レニーア氏。
小さな町で長年クリニックでの臨床をしてきた医師!(プライマリケア医が学会長)
家庭医の教育の基準を定めようとしている。家庭医療を専門にするすべての医師が 2 年間の研修が必要であり、
その研修内容・認定基準をきめるところ(このあとも一貫して、教育による質の均てん化・向上を重視した発言
が続き、かなり意識されていることが伝わってくる→そして後に深く納得した)
これまで、Advocate としての役割をしてきた。重要な仕事であり、エビデンスに基づいて行うことが重要(どこ
でも何度も強調されているので、たぶん少し前はエビデンスがなくて苦労してきた反省がありそう)
10 の支部や、これまでの視察でであった精力的な医師たちに支えられている。
1:15-1:45 健康格差に対する諸活動についての報告:民医連、山田医師
・民医連代表による要点プレゼンテーション
民医連は病院数は多いが病床数が少ない(中小病院が主体)
、診療所や介護関係が多い。

非営利共同組織は、加盟者が増えており、日本人口の3%を占める規模
民医連綱領の全文を提示、重要点の提示→患者中心の医療、健康の社会的決定要因、Health promoting hospital
の 3 つの概念が組み込まれている。

日本プライマリケア連合学会(JPCA)が、2018 年に SDH に対する見解と行動指針を出した。


学会の委員会・ワーキンググループにも民医連所属・出身医師が複数関わっている。

日本の医療制度の概説
・国民皆保険、フリーアクセス、医師不足、民間医療機関が 8 割
・皆保険→しかし自己負担が増え、実際は 16%が滞納せざるを得ない状況
・フリーアクセス→大病院受診制限を始めた(大病院初診料)
・医師数→OECD で下位
・病院数はカナダの 3 倍、民間がおおく、病院勤務医の医師労働が過酷(一病院あたりの医師が少ない)

日本の社会情勢のキーワード
・少子高齢化、格差と貧困、ワーキングプア、自己責任論
・高齢化は世界一かつ急速
・貧困率は OECD5 位、高齢者世帯では 25%前後で、増えつつある
・政府による所得再分配をすると日本だげが貧困率が悪化する(貧困者のほうが納税負担が大きい)

・ひとり親の貧困率は、OECD 最下位。
・働く貧困:年収 300 万円以下は多い。
・一方で、貧困に陥った人を国が救済すべきと思わない人の割合が、米国を超えてトップの 38%もいる
(米国で 28%、他の先進国は一桁台)

こういった情勢の中での、民医連の取り組み
Micro レベル
CFPC の Best advaice は全医師に配布し、診察室や多職種参加型カンファレンスに反映されている(ほんとか
…?)

電子カルテで、SDH 項目を入力できるようにカスタマイズしている病院もある(どこだ?)、
Social vial sign を把握するための全例調査をして調査済みの人の診察券にシールを貼っている(苫小牧だ)

Meso レベル:
地域へのアウトリーチに取り組む。他職種も医師も、共同組織の会合で健康後援会や健康チェック。
子ども食堂・フードバンク・無料学習塾なども取り組んでいる(これはうちも少しずつ)
全職種の新入職員による地域診断フィールド(地域診断。月 2 回程度で計 8 回のフィールドワークをおこない、
タクシー労働者の健康状態調査、空港の騒音と住民の健康、ホームレスの食事と栄養などを調査し報告する)
(う
ちでもやったらいいのに)
街頭相談会もしている。
熱中症予防のため行い、結果を手にしておおさかふにもうしいレシ、厚労省からクーラー購入非支給ができるよ
うになったりした。対象世帯に制限があるのでさらなる拡大を求めている(すごいな。どこでやってるんだ)
ホームレスの 6 割に精神障害があることも調査し、論文を載せたりしている(すごいな。こういうのが全国に共
有されてない?北海道だけ?)

Macro レベル
子どもの貧困を見逃さないように、脱貧困プロジェクトしたり
若年 2 型糖尿病の実態調査やマスコミへの会見をして、日本では貧困については民医連に取材を申し込むことが
増えてきている。

国連は SDGs(Sustainable development goals)を設定した

しかし、日本ではまだ進んでいない。(自分も SDGs しらなかった)


毎年 160 人の研修医と 1000 人の看護師が入植するが、全員がこの活動には関われていない。

質疑応答:カナダ側から
民医連以外で、貧困や格差に関心を持っている組織はあるか?
→個々の病院で取り組んでいるところはあるが、大きな団体で組織的に取り組んでいる団体はない。

政府の受け止めはどうか?
→貧困率の問題やワーキングプアについてはすでに社会問題化してきている。民医連の運動の結果動いたという
わけではなく、国民の声など色んな要素のうち一部。

教育について。医学部や家庭医療について、学部レベルでもやっているのか、院生のレベルなのか?
→SDH の概念は、日本の医学校ではまだ新しい。医学生教育のコアカリキュラムでは、昨年初めて SDH を取り入
れることが決まり、非常に大きな一歩である。しかし学部の教育者の理解が追いついていないのでこれからでは
あるが、厚労省が重要性を認識したのは大きい。

SDH が悪ければ健康指標が悪いのは当然わかるが(日本ではわかっていない人が多いんですけど、カナダの人た
ちにとっては常識であり前提条件のようだ)
、日本の新自由主義の中で SDH の教育が変わってきたのは何が影響
しているのか。LGBT や移民や無保険者の扱いがどうなっているかを知りたい。
→新自由主義の方針をとってから、日本の福祉は大きく後退している。生活保護費も年々削減されている。高齢
化が進めば医療費が増えるものだが、今の政権では毎年 6000 億円ずつ医療費を削るという方針になっており、
高齢者に限らず使える医療費は縮小してきている(日本の医療の無駄も大きいので一定は必要とはおもうが、削
減の目的や根拠がいまいちというところは同意)。その中で、民医連は差額ベッド料を取らずにやっている。
(こ
こまでは、質問の答えというより前提条件的な感じ)
→日本は排他的な文化もあり、移民は少なく問題となっていない(ほんとか?→あとで別の人から補足あり)
→LGBT については、日本で話題に出始めたのはこの 1-2 年。同性婚の話題は多少でてきたが、医師の業界の中
は閉鎖的なので、医師の中でカミングアウトしたり全面に出て取り組むのはとても難しい。性的指向と性自認と
いう言葉も多くの医師が知らない。医学教育のコアカリキュラムの中で LGBT を扱うことは示されたが、現状で
は多くの医学部で LGBT については教えていないし、そもそも現状のデータもない状態。全国にアンケート調査
を始めたところ。

ギャリーから。日本の不平等や貧困の状況はとても関心があったので面白かった。民医連は重要な役割を担って
いるが、日本の保険医療の中で締めている割合は小さい。日本の医療全体においてどう取り組むか・どう理解さ
れているかについてどうおもっているか。全国的な議論、ジャーナルへの掲載とか、民医連以外はどうですか?
(良い質問だ!その見解聞きたい)
→SDH・HPH は医師の仕事ではない!というのが、日本の多くの医師の意見であると感じる。したがって、Community
care については、民医連以外の医療機関で団体として取り組んでいるところはない。日本では家庭医もマイノリ
ティ。家庭医の学会である JPCA が SDH に取り組むべきという声明をようやく出したところ(んー・・・、物足り
ない。民医連だけ浮いてしまっている理由は?)
→学会・学術界でも、取り組んでいるのは JPCA くらいだろう。学会長は SDH に強い信念を持って取り組んでい
る。小児科医のなかで、研究グループを作っていて、子どもたちの貧困について声を上げ始めている。日本医師
会も、この議論に参加し始めている。マーモット医師を日本に読んで後援会を開催したことがある(へー)
。地域
で診療をしている医師たち(僻地の開業医のこと?自治医大関連医師のこと?)も関心を持っている。もっとこ
の動き・関心が広がってほしいが、今の時点では「まだ始まったばかり」という印象。
→医学生の教育については、Bio-medical が基盤となった医学教育に偏ったまま。社会問題の観点から教育され
る機会はほぼない。
→移民問題について他の人から補足:他国に比べて日本の医療のアウトカムがよい理由の一つとして移民が少な
かったとも言えるが、現在移民がふえてきていて全国民の2%にまでなってきていて今後対応が必要になってき
ている。しかし移民は医療扶助が受けられないため問題になってきている(だよね。札幌も多いけどどうなって
るかな。うちの病院でも産婦人科や小児科は取り組んでいるけど、内科は特別何かはしてない→移民の成人の内
科的相談はどこに行っているんだろうか?やっぱり英会話くらいは身につけるか)。社会的弱者の心理的背景と
しては、ホームレスは人間として扱われていない感覚、高齢者は「自分でなんとかしなければ」という意識があ
り、「働いていない、社会の役に立っていないのに政府の世話になるのは申し訳ない」と考えてしまうため、支
援が難しい(恥の文化?)
。所得格差も広がってきている(そうでもないという反論者のデータは 2000 年の頃の
もので、この数年の悪化してきているデータ=今の政権が活動した結果についてはあえて関心を持たないように
している)
。したがって、今後は日本の医療の状況は崩れてくると考える。
→Self-stigma は根深い。自殺してしまう人もいる、また医師の中でゲイの集団もあるが、彼らがことを荒げて
ほしくないという当事者のなかでも明るみに出したくない心理もある。
→貧困者の熱中症のクーラー問題。皆つけていないが、唯一つけるのはオフロに入ったあとだけ(電気代がかさ
むのでつけていられない)
。涼を取れるのは、週に 3 日のデイサービスのときだけ。
→HPH の元になる、オタワ憲章の Health promotion。そこで医療機関の方向転換をせよとあり、そのモデルを作
ろうとして HPH を欧州やカナダで作り、日本でもそれを実現したいと考え民医連を中心に加盟病院を増やし、数
年前に J-HPH ネットワークができた。その後ギャリーと出会い、Best advice を翻訳して、と活動を広め始めた
ところ。

感想:
聞いていて、すごいなぁと「他人事っぽく」感じたのと、どうにもイライラした。
ここに参加して初めて知った民医連の取り組みや日本の現状の情報が多い。全日本民医連でやっていることが北
海道にいると伝わってこないのはなんでなのか(うちの法人の問題か、全日本の問題か)。
全日本の全院所の単発の活動や、一部の部会?とかの活動を全部集めるとすごいが、全日本で全体をコントロー
ルしているのか?個々のばらつきや、できていない院所の調査や支援をするべきでは?
海外に目を向けたり高い目線をもつだけでなく、内部の人にきちんと伝えるのもしっかりしてほしい(自分もキ
ャッチアップすべきだが、どこでどんな活動をしているのかわからない)

民医連内への出向研修で学びに行ったほうがよいのか、法人内の責任者レベルにもっと活動してもらうか。

・ギャリーとのコラボレーション
・カナダ家庭協会のベストアドバイス SDH の活用
この辺はスライド使ったレクチャーなど特になく割愛だったと思う
1:45-2:20 社会的説明責任と CFPC:Sandy Buchman, Francine Lemire
・組織の社会的説明責任について:Sandy
民医連の話をきいて、とても先進的と思った。違いはあるがカナダも同じと思うところがある。
カナダもまだ学びの過程であり、少しずつわかってきたことがあるという段階。
カナダにも皆保険があると言いたいが制限もある。

過去に HIV が流行したとき、LGBT という言葉もないころにゲイの間で流行、何らかのウィルスと思っていたら


HIV が同定されてきた。女性の患者も見てきた。その経緯も経て、家庭医が HIV を見るようになってきた。

移民の人口は増え、移民の平均年齢も下がってきたおり、移民の中で HIV 感染者も増えてきている(麻薬の使用


もあるが、知識不足の影響が大きい)→ヘルスリテラシーを与えるのが重要だが、その前提に医師が知識を持っ
ていないといけない。自分も学ばなければ行けないし、他の医師に広めないといけない。

2009 年に社会的責任 Social accountability という概念を学会に提示したが、「何の話?」という反応のレベル


だった。ほとんどの人が関心をもっておらず、僅かな人だけが重要と捉えていた→関心のある人で集まってワー
キンググループを 2012 年に作った。

男性専用の 600 名規模のシェルターに、プライマリ・ケア医が出向いて現状を見たりケアをしてきた。


このシェルターはカナダの厳しい冬から耐えるためのものだが、ここは病気の温床であり、死亡者もでている。
ここで緩和ケアをしている。
シェルターの平均寿命は 30-40 代、カナダの平均は 70 代なので非常に短い。カナダの病気の 50%が SDH による
ものといういつものイラストは普段から痛感している。

英国での人権宣言。必要な医療や社会サービスを、人生のあらゆる時期において保証するということが明記され
ている。これを意識して、CFPC では「SDH は人権の問題」と捉えて活動している。
2012 年に Sandy が家庭医療協会雑誌に書いた記事。ギャリーの貧困ツールについての記事を書いている。医師は
もともとスクリーニングは得意(がんなど)だが、SDH のスクリーニングは誰もしていなかったので重要と考え
宣伝した。

医師の社会的責任とはなにか?
私はカナダに生まれてよかった。発言の自由があり、医療制度もよく、働きがいがある。だからこそ、医師に
なったからには社会貢献をしたい。医師としての立場で何をしたらいいのか?

上流から次々子供が溺れて流れてくる絵を書いた医師があらわれ、10 年経過し、ようやく少なからぬ医師が上流
に意識を向けねばならないと感じ始めた。日本では、医師の社会的責任について教えている・話題にしているか?
医療費を何のために使うべきかを社会に対して問うべき。若い頃から地域の人々に貢献したいと考えいろいろな
活動をしてきた。
社会的責任の原則。カナダの隣人の重要な健康ニーズに接する家庭医にとっては、社会的責任は必須の役割と考
える(Obligation)

カナダの先住民に対する健康問題についての社会的責任(Social accountability)のワーキンググループを作
った(Aboriginal health Working group:AHWG)。個々のメンバーが取り組んだことを、きちんと文書にまとめ
てジャーナルに載せていくことが重要。似たことに取り組んでいる人がいるということは、とても心強いと感じ
る。

レミーア会長から補足
社会的責任の戦略プラン 2017-2022 年
CFPC の中でも熱心な人が集まっているワーキンググループで活動している。

Patient-centered medical home のかんがえ方を応用する。


研修を立て直して、若い頃から SDH の視点を学び、実際に患者診療を始める時期からそういう視点を通して医療
に接してもらえるようにする。
医療機関と物理的に離れていて受診が難しい人たちに、どうすればアクセスが良くなるかも調べている。
「文化的安全」も重要。文化の異なる人にも公正に接することができるようにしていく。
なんとかセンター。亡くなった人の名前にちなんで名付けられたセンター。家庭医の中でも、思いはあっても資
金不足で活動できない医師は多く、そういう人への資金援助を行う。

質疑応答:
健康は基本的人権という考えは、我々と同じで感銘を受けた。
Social accountability と Health Advocate との関係性はどういうイメージか(どっちも住民の権利を代理で主
張するというイメージを持ってしまう)
→カナダ医師会が出している役割にあるのは、Advocacy は役割の一つであり活動形態の一つ、説明責任を実践す
る方法の一つ。
(ミクロレベルでケアへのアクセスを高めるためにどうするか、メゾレベルで地域に何が
必要か考えること(地域にホスピスが足りない、麻薬問題を患う若い住民が多いから資金提供やマスコミ利
用する、他の団体に理解してもらう)など)
。マクロでは移民問題で行動して政策を変えさせたことなど)

たとえば、薬代が基本的な皆保険の対象外→受診をしても薬を飲まず悪化して、ER を利用する→結局コスト
が高くなるから薬代もかからないように働きかけるとかもアドボカシー。
→会長からの補足(さすが教育重視の発言)
。今日ここにいる医師の話を聞いていると、家庭医は皆素晴らしい
と感じるかもしれないが、実際はそうでもない。すべての家庭医がこういうことに関心をもつように活動し
ていく必要がある。また他職種も参加しないと成立しない医療でもあり、医師以外も重要。看護師や SW など。
刑務所の囚人のケアも不十分。しかも、不適切な理由での逮捕者も多いので、全員が重犯罪者(で、自業自
得と言われても仕方ないような)人たちでもない。そういうことに CFPC 協会員が関心をもつようにしていく
のが私達(CFPC 中枢)の役割だとおもう。今後勉強できるような学習資料のリンク集をあとで提示しますとの
こと(ありがとうございます!)
→Social accountability 委員会の活動を紹介することで、説明の一つとしたい。この数年で社会的責任の言葉
が出るようになってきて、医師や学生でも関わって運動するようになってきた。人によって関心領域は異な
り、私が関心を持っているのはアドボカシー(Social accountability の中の一分野が Advocacy という説明。
上記と同じで、accountability の中身がわからん)
→レジデンシー卒業したての若手から。ここは大きな国で、医学校もたくさんあり、学校によって教え方が違う
のは課題だとおもう。よい考えを集めて、プログラムにまとめて、全国で同じように学べるようにしたい(そ
れは大事だけど、accountability はやっぱりわからん…)。医療倫理や、立場の違う人との話し方なども学ん
だ(それも accountability の分野の一つということか?)。在学中に LGBT や刑務所など色んな所をローテー
トし、関心がある人は特定の部門を長期にローテする。

感想:
学会レベルで国を動かす必要性を強く感じる。自分がその先頭に立つ必要はないとはおもうが、今の札病
で外来と管理で忙殺されたままあと何年も過ごしていても駄目だとも思う。きちんと学び、活動し、まとめ、発
言し、社会を変えていく時間を取るべきとおもう。そのコストや協力すら得られないなら出たほうが早いと感じ
てしまう(自分に限らず)

・社会的説明責任を戦略計画に落とし込む:Francine
このレクチャーは、たぶんやってない?

2:20-2:35 休憩(14:50-15:05)
雑談:
北海道のアイヌはどうなっている?ホームレスはどうなっている?→知らない
北海道も青森も、屋外にホームレスはいない。国の調査も、日中に該当を歩いてカウントしているだけだが、動
けるホームレスは日中仕事しているし、ネットカフェにいる人は捕まらない。ネットカフェ調査しても、本人が
調査を嫌がるかもしれないし、本人にホームレスの自覚がないかもしれない。そういえば、知人の軒先で生活し
ている人は北海道にも青森にもいる。
ホームレスの定義を決めて、客観的な調査をしたらたくさんいそう
アルコール依存症もたくさんいるが、まずはお酒やツマミを提供して人生を支えるところから始めてみては?ア
ルコール専門外来も AA も意識の高い優秀なアルコール依存症患者しか行けない矛盾で、大抵はそこに乗っかれ
る前に身体合併症で皆死んでいく現実がある。ビタミン B の豊富なつまみをだしたり、健康に良い飲み方を少し
ずつ知識提供したりできるだろう。アルコール濃度高いまずい酒が安いとか。

Besrour Centre for Global Health and Social Accountability(Katherine)


べスローセンター
CFPC の、公正と公平に共感して活動をしている。
Health equity の担い手としての家庭医連携の国際的連携や国内隙間埋めのハブとして活動している。
地域全体・世界の統合的な活動が進んでいけば、成果が出るし、費用の抑制にもつながるはず。
しかし、まだその恩恵に預かっていない地域があり、そういうところに支援している

もともとニーズに基づいて結成された。
カナダの家庭医の教訓をまとめる。
国内の 17 個の家庭医療関係の団体(家庭医療研修プログラム?)の経験をまとめて他の地域に伝える
世界で我々の教訓が足りないところには伝えるし、他の地域で良い取り組みがあれば教えてもらい広げる。
活動地域は 25 カ国にわたっている(日本は入っていない…)
3 つの活動分野
・教育と研修
・アドボカシー
・質改善、研究と QI
(アドボカシーが真ん中にある…。なんとなく 3 つ目、最後、ほかができたあとの最終目標というイメージだが、
そうでもない?まずメンバーの意識と知識を高め、その結果の意思表示をいろんな形でしつつ、その結果を
測定し改善していくという基本的な流れが奥底にちゃんとありそうな配列だと勝手に思いました。アドボカ
シーが先かぁ…。ちょっとずつ納得してきた)

世界の社会的説明責任へのコミットメント
チュニジアで 2017 年に開催された、World summit on social accountability に世界中の家庭医が集まった(日
本も?)。どうすれば組織化された家庭医による活動ができるのかを議論した。
・学会の改善
・専門医の研修の改善
・リサーチ
・専門家がコミュニティに関わっての医療の改善

参加要件:バイリンガルであること。英語とフランス語でもいいし、先住民言語でもよいが、自分の母国語以外
を話せることが必要。各地域のリーダークラスが参加している。

この活動は継続している(メールでのやり取りだけでなく、定期的に直接会う必要がある)。
2018 年は 10 月にトロントで開催予定。べスローフォーラム 2018。招待してくれるとのこと。カナダだけでなく
世界的に一緒に議論するべきと思っているから。アルマアタ宣言から 40 年経ってプライマリケアのあり方など
議論する。日本の民医連も招待するからぜひ来てねと力強く気軽なお誘いもあり。
こういった議論は、2 者の双方向だけでなく、三角形・四角形と多彩な議論のほうがよく、パートナーを増やし
ていくべき。ルワンダやチュニジアからも参加・報告してもらうことになっているし、各地とのコラボレーショ
ンを広げていきたい。
2:35-3:30 社会的な説明責任作業部会(実際は 15:33 から)
Artem Safarov, Eric Mang, Sandy Buchman, Ritika Goel

・Social Justice Lens :Artem

話してもわかってもらいにくく、コンセプトがわかってもらえても実際にどうすればいいか理解されにくいので、
伝えやすいツールが必要と思ってこのレンズ=アボカドを作った(この人が、こういう目的で作ったのね!)

別紙、当日配布の表裏印刷のカラー資料参照

このツール(裏に書き込めるところがある)をつかうことで、活動の意味付けがしやすくなりとても便利だと考
えている。
(日本でやってる SVS のアクションシートに通じるイメージが有るが、使い方や特徴の詳細説明がな
くもやっとする。後で読まねば)

Medical home の視点も重要。これに社会的責任をどう取り込んでいるのか説明する。


Medical home(PMH、Patient-centered?)は、カナダ家庭医療のイメージ。
我々医療チームをホームと思ってほしいというメッセージ。コミュニティの中でこまったらこの人達(Medical
home のメンバー、もしくはチームやクリニック)を頼っていいんだよということを伝える。
7 年前に提案。今までは理想・夢物語的に扱われることもあったが、最近は国からの援助も得られるようになっ
てきている。

今はこのビジョンの改定に取り組んでいる。2018 年版が発表予定。
コミュニティーのニーズに答えることを中心の義務と考え、患者や他の医療従事者への聞き取りをし始めた。
医師の視点でなく患者の立場で書くべきだという意見が出てきた。

また、こういう作業では、必ず SDH と関連付けて考えるようにしている。


どのような SDH の問題が大きいのかを評価する。それをもとにして医療を提供する場所はどこにするかや、メン
バー構成をどうするかにはかなり気を使っており、地域のニーズ(AIDS が多いか、麻薬が多いかなど)に応じて
合わせていく。
不利な状況に置かれている患者の役に立つことについて、医師の理解はある。
医師の役割がどうあるべきかについて、進歩的な見方(社会的説明責任に関わる医師)と保守的な見方があるが、
医療全体としては全体を包括的に見る(Holistic)方向性・流れがある。
それを行う上で扱いやすいツールはあったほうがよく、Best advice を作ったりした。

SDH に関する活動をするとき、医師だけでやらないことが重要(!)
医師は、SDH に関する一部しか見えていない。多くの視点を持つ様々な立場の者で一緒に議論することで多角的・
包括的に見え、その中で医師が何をすればいいかが見えてくる。医師だけでは考えつかなかったようなことが見
えてくることも多い
医師だけではやらない。皆でやる中で医師にしかできないことをやる。
自己満足でおわらず、集団の利益になる活動となるように、学習活動を進めている。そのために動機付けたり、
情報提供したり、ネットワークを作ったりしている。

質疑応答:
ギャリーから。
社会的責任という考え方は、
(ギャリーですら)最近聞くようになった。私達の医療を評価するときにどう見るの
かということにも関わる考え。診察室の中だけでなく、「社会の中で」どのように受け止められるのか。コミュ
ニティのなかでどう役にたっているのか(そもそも役に立てているのか)を考えることは重要(だができていな
い)。こういう活動をする中で SDH に関わる人たちの理解も更に深まっていくのかもしれない。
いままで、社会的責任という視点は全面的に押し出されてきたわけではない。社会的な面よりも、医学的な面が
前面に出てくるとはおもうが、地域と関わるときに社会的側面が役に立つと思う(医療者の中での啓発・教育は
医学的エビデンスは重要だが、友の会や住民とのやり取りでは accountability の視点が重要)

Artem から。
地域活動を行っているか?それは地域の役に立っているか?
→ここの患者対応のミクロということ?貧困とかのマクロの話?accountability と Advocacy の違いがまだわか
らない。
医師は地域でどんな活動をしているかという意味の質問
→日本の医療は自己完結型。それが連携型にかわってきて医療機関の機能分化はし始めている。その延長で患者
を地域に返した結果、地域で受け取る職種と連携して状況を捉えてきている。
→脆弱度の高い複雑な事例は、地域の色んな所から民医連に紹介されてきており、個々の事例の問題の解決は経
験値がある。しかし、コミュニティを診断して、コミュニティにどういう動きを起こしていくかというところは
まだできていないので、「地域活動、社会的責任、なにしてますか?」と言われるとだまってしまう。
→カナダの救急では、患者が病院に行られる時間は最大 24 時間。家に帰れる人は健康と扱われなにもない、病
気があって継続診療が必要となれば多くの専門家が手伝ってくれる(肺炎だったら酸素投与などするが、その他
にあるきかたがおかしければセラピストを呼んできて歩行の評価も ER でして、家族から家の評価を聞いたりし
て、返す前にきちんと評価する。病院にいる間は)→これをクリニックでやるにはここまで集中的にはやれない
ので時間が月単位でかかる(けどやれる)。

(ここで PC の充電がきれ、アイパッドでポチポチ入力したメモを継ぎ接ぎしました)
日本でのヘルスケアの提供方法。日本では治療のための医療保険と、長期治療のための介護保険の 2 種類がある
(そういえば別だ)。介護の方はだいぶ改善されてきている。介護を在宅で受けている人で、歯科治療が必要な
ら訪問歯科を読んだり、検査が必要なら病院の手配をするなどして在宅で見て行くことは個別にはできてきてい
る。コンセプトとしては。
一方で、これがコミュニティとしてできているかは別。政府としてはコミュニティの機能を活性化するような要
請がある(地域包括ケアシステムの話)。弱ってきた人の介護予防活動など(日本の今の高齢化社会対応、介護
サービスはかなり進んでいるという論調。んー、そうかなぁ)

家庭医は、こういう機能を中心になって担いたいと思うか
→得意領域だと思うが、家庭医は少なくて応え切れない。不在地域も多いので、現状では他科医師が対応してい
る。だから家庭医をもっと増やすためにどうしたらいいかという追加意見もあり(個人的には今の家庭医療専門
医を増やすよりも、既存の開業医・かかりつけ医などの質担保をどうしていくかのほうが優先課題という気もす
る)

国は、地域をケアする家庭医をたくさん作りたいと思っている。一方で日本の医療は専門医中心のケアが続いて
きたので医療政策のステークホルダーである各学会や医師会は家庭医療制度に強く反対している。
今年から始まった新専門医制度の総合診療志望者は 8000 人中の 100 人強。内科学会は、内科が総合診療を担う
と行って研修医が流れて行くことを阻害している。医師会は元の専門家にかかわらず地域で働いていれば家庭医
機能を発揮しているので家庭医制度は必要ないと主張している。時代のニーズと医療業界内の雰囲気がマッチし
ていない。
(その話をいましても…)
→カナダでも似たようなものだった。英国式の GP の制度を作ろうとしたが一度挫折した。しかし一部の熱意の
ある人が、地域の医師会などから独立して家庭医療学会を作った歴史もある。
教育のなかでの社会的説明?

(質疑応答しながら、唐突に新たな話が始まった?日本の社会的説明責任の話がまとまらないままに移った感じ
で、何の目的の話かわからない…頭がついていかなくなってきた。スライドの日本語版がないのと、喋りとスラ
イドが関連しなくなってきたのもあって頭がフリーズしてしまい、しばらくはメモ取りも困難に…)

演者自身も、問題を理解するために、当事者の話を聞く場に連れていかれた。居心地悪くて大変だった。
カナダでは女性医師が増えてきた。学会等で先頭に立つべきという風潮も出てきた。女性の方が変化に敏感で
色々感じ取って動けるかもしれない。
若手だけでなく、授業と普段の行動が一致していない指導者クラスも教育しなきゃと考えている。

カナダでは、すべての住民が家庭医を持つべきという意識があるため、家庭医の側にもそれを背負った上でどう
責任を果たすかを考えたくなる背景がある。日本ではまた別の考えが必要。
カナダでは国で統一管理はしておらず、州ごとで自主的にしている。日本も国に管理されず独自に動く民医連が
いるのは素晴らしい(んーそうかなぁ)

・患者のメディカルホームの一部として社会的説明責任を発揮する:Eric レポート担当
・Community representation :Artem レポート担当
・Article Series in CFP :Sandy
・Ongoing work of the Social Accountability Working Group in education :Ritika

3:30-4:30 討論:社会的な説明責任を通して進歩を図る
・家庭医の役割
・政府へのアドボカシー
・コミュニティーへの関り
・国による相違と考慮すべきこと~カナダと日本を比較して~
このへんは、スライドを用いたレクチャーはなかったかな?フリーディスカッションの中で出てきたかも。

フリーディスカッション:
日本で SDH に関する教育は何かしているか?
→現状では学生時代にはない。民医連では、就職後に他職種で地域の課題を学んでいる。
(北海道ではそういうの
を医師にはしてないなぁ。集団退職や、ニコニコ廃止などの反動が強すぎるのではないか。その環境でどうする
べきか。足元からは内科医師部会や医師研修委員会をどうにかしないと。でも、自分に経験と知識がなく引っ張
れない)

若手から。
学生時代には全く学んでいない。家庭医になりたいと言い出せないような環境だった。

難しい苦境でも患者は味方になるのでは?患者会はあるのか?
→難病ではあるが、民医連主体とは限らない。医療生協では、組合員の声を医療機関に反映させようという取り
組みは何十年も前からやっている。いずれにしても医療を受けている人の声が中心で、書かれていない生活者、
困窮者の声はもっと集めていかねばならないとは思う。

患者の力を活かし切れていない。日本ではながらく父権的だった。
しかし最近は患者の声を聴いていこうという流れがある(どれのことだろう)
医学教育で、医療面接の模擬患者がいて、医学生に良くなって欲しくて申し出てくれる人や、普通に医療を受け
た人から患者視点での意見を聞く仕組みもある(なんのことだろうか?)

「民医連版の Upstream lab 作ろうよ」案。


全日本でもそういう案は出ているが全国規模はむずかしい。またベテラン世代と中堅と若手でもニーズが異なる
→案が出てるなら言ってくれればいいのになぁ…

自分の感想:
①教育について
自分は SDH について全く学んでいない、教わったことはない。
政治活動と臨床のギャップがひどく、政治活動が嫌で離れて行った人が多い。その反動で過剰に教えなくなっ
た?CFPC でも全員が高い意識のわけでもなく教育で普遍化して行く活動が必要という話を聞いて、日本でもそ
うだなと感じた。
実際自分は独学で家庭医療学を学び、それを Community hospital で働く中で SDH への対応が必要と知り、自分
で WHO のウェブサイトなどで学んできた。そして、生物医学的素養しかない若手に対して、東京で学んだ知識
と現実の困窮者医療との違いを、世界のエビデンスや院内・地域のデータをしめしながら教えると反応を示して
くれる。実際の地域のエビデンスを出して行くことは、教育や啓蒙活動に必須と体で覚えた。民医連医療を若手
に教えるツールを作るべきだと思う。
先ほどの、
「教育して、アドボカシーして、リサーチと質改善」というながれを思い出して、既得権益者や学会同
士の喧嘩はどうでもよくて、やはりきちんと実践と教育をすることと、その前提として学会や専門医制度を置い
といて地域のニーズを適切に知って、声としてまとめ、活動につなげて行くときと思う。
→藤沼先生がじょうだんでいっていた、民医連専門医を作るのもありだなとおもった
→自分は病院家庭医を広めるのがライフワークだとおもっていたが、サブスペシャルとして社会医療専門
医になりたいとおもった。大学にもいきたい。出してくれるような現場の余裕や上からの支援は期待できるの
か?
②アドボカシーにすいて
医療機関と地域の諸機関との分断は強いと感じて、医師中心ではなくコミュニティと共同での活動、アドボカシ
ー活動の難しさを感じる。副院長・内科科長として諸団体と対話しようとしてもうまくいかない。
介護者団体、高齢者施設からは「これまでも今も期待に応えてくれていない」お叱りを受ける(自分が作った医
療でなく、先代たちや長老たちのせいじゃんとおもっても言える立場でもなく)

アルコール依存症ケアや被虐待者ケアのグループとのつながりもまだまだで(そういう団体があって活動してい
ることも最近見えてきてばかり)
、挨拶に出かけても温度感・距離感がうまく噛み合わない状態。相手側の熱意が
強く、それと対比して期待に応え切れていない自分側を強く痛感してしまうし、それをバネに頑張れるほど心身
の余裕が個人的にないくらい忙しすぎる日々になっている。
行政相手だと、お互いにお客様でよそよそしい話で終わり、それぞれ忙しいので新しいことはできないという印
象を受ける(まだこちら側の踏み込みが足りない気もするが)。今回、具体的なツール(午前中に聞いたアドボ
カシーのツールだっけ?)
、方法論を学んで少し光が見えてきている。
→その時間やお金や人手をつくるためにも、ちゃんとしたファイナンスも学びたいし、専門家に教わりたい。
→いまは院長がしょっちゅういなくなる穴を埋めるだけで限界を超えた大変さがあり、首が回らない。このうえ
副院長の自分まで院外活動を強化したらどうなるのか想像したくもない。。。(我ながら、現場の仕事に埋もれて
視野が狭くなっているなぁと、書いていて感じる)

4:30-5:00 これからの連帯と共同の取り組みを探る 4:55 から 10 分くらいで


今後 CFPC と民医連でどう連携して行くか。
Best advice のように資料提供もできるとの提案あり。いい人だ。

民医連は、他の医療機関と比べてより良い医療を受けているか?
→医療ケア内容は変わらないが、社会的サポートを含めて行なっているといういみでは付加的なサービスはして
いるだろう

財源をどうしているか?
→個室ベッドの差額ベッド料金を取っていないので大変。お金がない人の医療を絶対に断らない理念はかなり特
殊で、外部研修を受けた時はそのカルチャーギャップを感じた。殆どの医療機関では SDH や貧困の対応は
嫌がっている。潰れそうになると全国の基金で支える仕組みはあるが。外部から資金提供を受けてはいない。
市民から無利息で協力基金を集めている。もともと民医連の病院は市民が集めたお金でクリニックを作り、少
しずつ大きくしてきた。医療生協では、市民が理事会にも参加して運営に関与している。そういうのを共同の
営みと呼んでいる。(共同の営みってそういう意味だったんだへーと初めて今日知りました)

ギャリーから
2つ大きな教訓を学んだ。
1.民主的な団体だと感じた。カナダでは見せた中ではコミュニティヘルスセンターが一番近いが、所有権は自
治体。民医連は住民から作られた経過は教訓になる。
2.憲法の 9 条と 25 条を繰り返し唱えているのは、わたしにとっては非常に革命的。カナダではそういうこと
を言っていないし、そもそもカナダにはそういうことに言及した憲法がない。もしカナダでそういう憲法の記載
があれば盾にして活動に使いたいとおもった。憲法は、法律的な議論をする上での大きな基盤だと思った。(海
外の家庭医にいわれると、民医連のおっさん達のいつものセリフの見え方も少し変わってくるように感じた。い
う人への印象というレベルを超えて、単なる政治活動をしているだけに見えるおっさんと、コミュニティのニー
ズやエビデンスから活動した結果そこに到達した人かの違いかな)

「自治体など公的な窓口で、社会的に困窮した人がきたら民医連に行く用に提案するのが驚きです」という外部
者からの補足。

5:00-6:00 日本人参加者による 1 日の振り返り(5:15-6:10)


ギャリー側からの提案で時間を取ってもらえた。
これまで活動してきて、ミクロだけではダメと感じてメゾやマクロの活動をするようになった(むかしはそうい
う発想すらなかった)

いろんな話題、感情が出ただけでもよかった。

個人的には、全ページの①②を念頭に起きつつも、他の人の発言などの流れもあって研究支援やベテラン世代の
死ぬほど頑張る体質をどうにかしなきゃという話などを、割と被害者意識前面に出しながら喋ってしまい反省。
もすこし建設的な意見を冷静かつ的確に言うつもりでメモ取っていたんだけど、上の世代の外面と中にいる自分
の心象とのギャップがとにかくイライラ箚せられてしまった気がする→裏返せば期待しているということだと
おもうし、その領域でもっとうまく振る舞いたい・成果を出したいという自己意識があるということなんだろう
とも思うが、感情のコントロールは難しい。自分はこういうイライラ・攻撃心・ネガティブオーラを燃料にして
頑張ってきたパターンだと思うので、こういう心理的な動きは認識してエネルギーに変えつつ、外にそのまま出
さずに上手に燃費の良いエネルギー変換スキルを身につけたいと思った。
6:30-9:00 CFPC の招待によるディナー
イタリアンベースのいい感じのお店で、カプレーゼとペンネとワインを楽しみながら過ごしました。

個人的には、英語しかしゃべれないホスト側重鎮が右と右前、民医連の重鎮が左と左前にいる VIP 席にあえて飛


び込んだので気が気じゃなかったけど、意外と英語は聞き取れて(考えや思いを言葉にしてしゃべるのは結局ぜ
んぜんできなかったけど)
、相槌打ちながら話の輪には入れて頑張ったと思う(正面に通訳さんいてくれて、食べ
ながらなのに丁寧に細やかに補ってくれたのが大きいけど)

せっかく医療頑張るなら英語で海外の第一人者とコミュニケーション(の機会があるのに会話)ができないのは
すごくもったいないとおもった。書けて、読めて、そこそこ聞けるなら、あとはしゃべるだけだとも思うと行け
る気がしてきた。英会話教室に行けばいいのか?

9:00-9:30 バスでホテルに戻る
アルコールで気が大きくなってしまった部分もあるかもしれませんけど、いろいろと余計なことを喋ってしまっ
た気がします。明日の午後はフリーで、明後日の朝も出発遅めなので、明日の夜くらいは若手で集まって、好き
に飲みながら好き勝手にいろいろ喋り倒したいなぁと思いました。
今回はひたすら、英語についていくことや、病院を背負って学ばなきゃというプレッシャーで真面目にやってい
ましたけど、基本的には現状に対する反発心で好き勝手に暴れるほうが好きなんだなぁと再認識できたのが一番
の収穫だったかも。これ以上病院の事を最優先に考えて自分や総合診療の未来を押し殺して過ごすのは無理っす。

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