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3 『花びらのたび』で、たくましい心を育む (2年)

(浜田廣介作 昭和児童文学全集2 東西文明社)


《ねらい 自分たちの学校生活の中にあった、
「たくましさ」を見いだすことによって、今後の生活への意欲を持つ》
内容項目の関連的扱い 1 − ( 2) 1 − ( 3) 2 ー ( 3) 3 − ( 2)

( 1) 資料のあらすじ

ある春の日。桜の花びらが一枚、枝を離れて空に舞った。そこへ、三
羽の雀が飛んできた。花びらは食べられてしまうのではないかと怖くな
る。雀は、花びらをくわえて飛んでくれた。花びらは雀たちが好きにな
る。やがて雀たちは、町を前にして飛び去ってしまう。花びらは悲しく
なるが、町まで行ってひからびてしまうことを考えると、こうなること
がよいことだと気づく。そしてこれからのことに期待を抱く。川を流れ
だした花びらは、様々な出来事に出会っていく・・・。

(2) 指導のポイント
ポイント 1(主題のとらえ方)

たくましさは、負荷を感じる体験によって備えられていく。つらい思
いをしたこと、困ったこと、さらには、悔しい思いをしたこと。これら
の“たくましさの蓄積”は、本人には分かりにくく、不安ばかりが増幅
されていく。これまで行われてきた指導も、その不安を乗り越えて、強
くなりなさいといったものではなかったであろうか。
不安を乗り越えた後の楽しさや充実感に視点を当て、自分が日々の体
験によってたくましくなっているという自覚を持たせたい。そうするこ
と で 、“ 不 安 ” を “ 自 信 ” へ と 転 じ さ せ 、 た く ま し く な っ て き た 道 筋 に
気づかせることができると考える。

ポイント 2(活動の位置づけ)

活動 1 ・線路は続くよどこまでもを歌い、旅の楽しさを膨らま
せる (導入)
活動 2 ・成長アルバム(ポートフォリオ)の表紙に、今後どんな
旅 が 待 ち 受 け て い る か 想 像 さ せ 、 記 入 さ せ る 。( 終 末 )
総 合 単 元 名 『 タ イ ム マ シ ー ン に の っ て 』( 全 10 時 間 扱 い ) ①②・・は時間数

9 月 「 赤 ち ゃ ん と 遊 ぼ う 」( 生 活 科 ) ③

(言うことを聞いてくれなくて困ったけど、とっても楽しかった)

9 月 ∼ 10 月 「 自 分 の 小 さ か っ た 頃 の こ と を 調 べ て 発 表 し よ う 」( 生 活 科 ) ⑥

(お母さんに生まれた時のこと (保育園の先生には、年長時代
を話してもらいました) のことをうかがいました)

(詳しく調べて発表しました) 11 月 本 時
「 花 び ら の た び 」( 道 徳 ) ①
この授業は、生活科等との関連をはかり、総合単元的な取り扱いをした。子どもた
ちは、誕生から現在に至るまで、家族や周囲の人々の深い愛情を受けて育ってきた。
2年生にもなると、今までできなかったこともずい分できるようになり、心も体も大
きく成長している。この時期に、自分の成長を振り返ることは、過去の自分と現在の
自分を比較することになり、自分の生活や成長についての様々な気づきが生まれてく
る。また、自分への気づきについて詳しく調べたり、調べたことを表現したりする過
程で、周りにいる人々への感謝の気持ちや、思いやりの心を育てていくことができる
と考え、この総合単元を組んだ。
①赤ちゃんと遊ぼう(9月)
単 元 の 導 入 で は 、“ 赤 ち ゃ ん と 遊 ぼ う ! ”と 題 し て 、 校 区 に あ る 「 木 の 葉 保 育 園 」
の0∼2歳児のクラスを訪問した。子どもたちは、グループごとに考えた遊び(は
い は い レ ー ス ・ だ っ こ 遊 び ・ 砂 遊 び 等 )、 を 行 っ て ふ れ 合 っ た 。
「 と っ て も 楽 し か っ た 。」
「もう一度いきたい」
「わがままで困ったけど、可愛かった」等の感想が聞かれ、楽しい時間を過ごすこ
とができた。
②自分の小さかった頃のことを調べて発表しよう(10月)
園児との交流体験を終えて、自分の小さかった頃のことも調べてみようという思
いや願いが高まってきた。そこで、自分の興味のある年代から、家族や親戚に、取
材をしたりしながら、学習を積み重ねてきた。また、ファイル(ポートフォリオ)
を用いて、自分の学習の歩みを振り返ったり、今後の学習への見通しを持たせなが
ら、進めることにした。

(Nくんクイズ 幼稚園の巻き) (母子手帳を手に話されるお母さん)


本来、人の成長は個別的なものである。そこで、毎時間、一人の児童の成長をクイ
ズ風に紹介し、調べる視点を与えることにした。個にかかわる部分と全体の学習とを
つ な ぐ の に 役 立 つ と と も に 、子 ど も 同 士 が か か わ り な が ら 学 習 を 進 め る こ と が で き た 。
ま た 、 子 ど も た ち の 成 長 を 見 守 っ て く だ さ っ た 方 々 を お 招 き し ( 共 通 体 験 の 設 定 )、
お話を聞くことで、自分自身の心の成長にも気づかせたいと考えた。
(保育園の先生にお礼の手紙を出すと、返事が返ってきました)
一 連 の 学 習 を 終 え 、子 ど も た ち は 、自 分 の 成 長 を 支 え て く れ た 人 々 の 存 在 に 気 づ き 、
感謝の気持ちや思いやりの心を膨らましてきた。そこで、自分自身のたくましく成長
してきた道筋を振り返らせたいと考え、道徳の授業とつなげてみることにした。
( 3) 指 導 の 実 際
チ ャ イ ム と 同 時 に 、『 線 路 は 続 く よ ど こ ま で も 』 の 歌 詞 を 配 り 、 全 員 で 斉 唱 し た 。
過程 発問・指示 教師の支援と児童の反応 準 備
T 線路は続くよどこまでもを ○電車が旅をしていく歌詞を歌
歌ってみよう(活動1) わせることで、人生は旅でも
導 あるということへイメージを C D
♪線路は続くよどこまでも 広げさせたい
入 野をこえ山こえ谷こえて
遙かな町までぼくたちの
楽しい旅の夢・・・・♪

T 線路のないたびだったらど C どきどきする
うでしょう C 心配
C でも楽しそう
C 冒険みたい

旅 の 楽 し さ や 不 安 な 気 持 ち を 連 想 さ せ た 後 、「 花 び ら の た び 」 を 読 み き か せ た 。
T これまでのことを思い出し シート
てみよう
展 T 小学校でのたびの始まりは C 入学式
開 C 楽しみだった
後 C とっても緊張した
段 T それから、こんなこともあ ○これまでの行事等の写真を見
ったね せながら小学校入学後の生活
を想起させる
C イモほりがあった
たくさんとれたな∼
C 運動会
わくわくした
応援を頑張った
C 音楽会もあった
お母さんたちの前で、緊張
したけど楽しかった

こ れ ま で の 学 校 生 活 の 様 子 を 想 起 さ せ た 後 、フ ァ イ ル( ポ ー ト フ ォ リ オ )の 表 紙 に 、
今後、どんな旅が待ち受けているか想像させ、記入する活動を行った。

T ファイルの表紙に、これか 成長アル
らどんなことがあるか、考 バ ム
終 え て 書 い て み よ う( 活 動 2 ) (ポート
フ ォ リ
末 T みんなの旅は、これからも オ)
続くけど、不安になったと
きなど、このファイルを開
いてみてください

( 4) 考 察
大きく、たくましく成長してきた子どもたち。その道筋を振り返らせたい。そんな
思 い で 主 題 を 設 定 し た 。指 導 要 領 に 、「 た く ま し さ 」と い う 内 容 項 目 は な い 。そ こ で 、
複数の内容項目を関連させて主題をつくった。導入の活動で、人生を線路のない旅と
とらえた子どもたちは、意欲的に、自らの生い立ちを振り返ることができた。総合単
元を組んだことで、時間をかけて調べたり、多くの人々とのかかわり持つことができ
た。その中で、自分たちの成長を支えてくれた多くの人たちの存在への気づきが生ま
れ、感謝の心も芽生え始めた。

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