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Ⅵ 研究の成果と今後の課題

1 研究の成果
( 1) 道 徳 の 時 間 に つ い て
授業後、それぞれの学年にアンケートを実施した。
【道徳の時間は楽しいですか】という質問に、ほぼ8割の子どもたちが「楽しい」
と答えている。特徴的なのは、学年があがるごとに「楽しい」と感じた子の割合が増

えていることである。道徳の時間が楽しい理由としては、
・お話がおもしろい ・絵を描いたりするところ
・劇をしたりするところ ・俳句を作ったのが楽しかった
・いろんなことを考えることができるから
等、活動を通した学習に多くの子どもたちが、楽しさを感じていることが分かった。

特 に 、5 年 生 に 実 施 し た 俳 句 を 使 っ た 活 動 は 好 評 で 、ほ と ん ど の 子 が「 楽 し か っ た 」
と答えている。
(授業後の感想 5年)
( 2) 研究の仮説について

子どもたちの目線で主題を捉え直し、資料のねらいに沿った活動、体験等
を意図的に取り入れると、子どもたちは意欲的に価値を追求し、より効果的
に自らの生活を振り返ることができるのではないか

仮説を受けて、2つの指導のポイントを設定したことで、次のような成果を得た。
【ポイント1】 主題のとらえ方
【ポイント2】 活動の位置づけ
①教師にとってのよさ
主題を子どもの実態から見直していくことで、主題を広く、深くとらえることが
できた。また、資料の内容に沿った活動の開発にもつながった。
②子どもたちにとってのよさ
授業中に位置づけた「活動」は、学習意欲を高め、資料との必然的な出会いを生
み出した。また、実感を持って自らを振り返るのに有効だった。
( 3 )考 察
本実践を振り返って、全体としては次のような成果を得た。
①子どもの実態から、主題を見つめ直すことで、より子どもの側に立った授業づく
りを行うことができた。また、主題を生かす「活動」の開発につながった。
②どの学年でも、学習意欲が高まり、全員が楽しみながら学習を進めることができ
た。当初、低学年向けに研究していた「活動」が、高学年でも十分有効であるこ
とが検証できた。

2 今後の課題
残された課題としては、次のようなことがあげられる。
○ 子 ど も た ち の 実 態 に 即 し た 新 た な 主 題 の 開 発( 複 数 の 内 容 項 目 の 統 合 ・ 関 連 づ け )
○主題と資料を有機的に結びつける、さらなる「活動」の開発
お わ り に

[ 子 曰 く 、 人 よ く 道 を 弘 む 。 道 の 人 を 弘 む る に 非 ず ]( 論 語 )

道徳は与えられた存在
.と.し
.て.存
.在.す
.る.の
.で.は な い 。 人 間
.の.不
.断.の
.努.力
.に.
よって、拡充される。人間が道徳を拡充するのであり、道徳が人間を拡充
..
するのではない 。 (吉川浩二郎 著 )

こ の 、「 人 間 が 道 徳 を 拡 充 す る 」 と い う 見 方 を 大 切 に し た い 。 そ し て 、 授 業 と し て
具体化したい。その思いで、取り組んだのが本実践である。
都合上、紙面には載せられなかったが、5年生
とは、もう一時間学習をした。実際に、車イスを
用いての役割演技中、こんなつぶやきがあった。
【 心 が つ な が っ たみ た い 】
【 乗 る 人 と 、 押 す 人 の 心 が ま と ま っ た ね】
子どもたちの心が、道徳の内容項目を越えて、
広がった瞬間だった。拙いが、子どもたちの心が
内 容 項 目 と 一 体 化 し 、 広 が っ た と き の 言 葉 は 、“ 生
命力”を持つ。
(初めての車いす体験 5年)
今後も、子どもたちの口から、生き生きとした、すてきな言葉がたくさん生まれる
ような授業を模索していきたいと考えている。

今回の研究を実践していくに当たって、快く授業をさせていただいた同僚、そして
子どもたち、協力していただいた地域の方々に、心からお礼を申し上げたい。

平成14年1月16日 熊本市立託麻北小学校 教諭 田 中 恒 次

参 考 文 献

学習指導要領解説(道徳編) 文部科学省
未来を拓く∼輝く熊本市の心∼(熊本市郷土資料副読本) 熊本市教育委員会編
筑波大学附属小学校研究紀要 第56・57集 筑波大学附属小学校
道 徳 教 育 研 究 ( 202 号 ) 日本道徳基礎教育学会
心のかたちをつくる道徳の学習 不昧堂出版
道徳授業の基礎辞典 光文書院

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