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経済産業省 商務情報政策局

産業保安グループ 電力安全課 御中

平成29年度電気施設等の保安規制の合理化検討に係る調査
風力発電業界の構造調査
最終報告書

デロイト トーマツ コンサルティング合同会社


2018年3月16日
目次

はじめに 3 2 欧州と日本の比較 40

1 日本の課題抽出 7 2.1 欧州の風力発電市場の概況 40

1.1 風力発電市場の概況 7
2.2 欧州のメンテナンス体制 49

1.2 稼働率低下要因 18
2.3 欧州の風車メーカーとサードパーティ事業者の比較 59

1.3 メンテナンス体制の課題 27
3 まとめ及び提言 66

用語集 69

 本報告書に記載されている情報は、公開情報に加え、本調査の分析に利用する承諾を得た上で、ヒアリング等で第三者から提供を頂いたデータも含まれています。これら情報自体の
妥当性・正確性については、弊社では責任を負いません。
 本報告書における分析手法は、多様なものがありうる中でのひとつを採用したに過ぎず、その正確性や実現可能性に関して、弊社がいかなる保証を与えるものではありません。
 本報告書は、調査委託契約に従って貴省の政策決定の参考資料として作成されたものです。内容の採否や使用方法については、貴省自らの責任で判断を行うものとします。
はじめに

3 平成29年度電気施設等の保安規制の合理化検討に係る調査(風力発電業界の構造調査)
はじめに
本調査では 風力発電の業界構造の観点から
国内のメンテナンス体制に関する課題を分析し 改善策を検討した
本調査の背景
 風力発電は世界の再生可能エネルギーの中で最大規模の発電量を占めており、洋上での発電も可能なことから、今後、再生可能エネル
ギーの中で最も伸びていく可能性が高い。
 我が国の風力発電は欧米諸国に比して普及が進んでいなかったが、2004年頃から再生可能エネルギー技術の進展、2012年に開始され
たFIT(固定価格買取制度)等の新制度の支援により導入が進み、 2017年3月時点で2,203基、合計出力3,357MWの風力発電が稼働し
ている。
 国内の風力発電の約7割は海外風車メーカー製だが、我が国は欧米諸国に比べて平地が少なく地形が複雑な場所に建設されるうえ、台
風や落雷等の天災も多いため、海外風車メーカーの想定以上の故障が発生している。
 国内にはメンテナンスノウハウを持つ技術者が少なく、故障復旧のため海外から部品や技術者を調達する必要があり、修理に数ヶ月を要
するなど、発電事業者が自ら効率良く安価にメンテナンスを行う環境が整備されていない。

本調査の目的
 上記背景を踏まえ、風力発電に係る一層の安全確保の観点から、本調査ではプレーヤー(発電事業者、風車メーカー、独立系メンテナン
ス事業者*1等)における保安責任分担のあり方を明確化するために、我が国における風力発電業界の構造及び課題を把握する。
 併せて、事故や故障を未然に防ぐ、あるいは、事故や故障の程度を軽減するために発電事業者が必要としている情報について調査する。
 発電事業者が効率的なメンテナンスを行うことが可能な我が国のあるべき業界構造等を提言する。

本調査の実施方法
 上記目的を達成すべく、国内の風力発電業界の現状、稼働率低下要因等について文献調査を行う。
 併せて、我が国のプレーヤーや先進的な取り組みを行う欧州のプレーヤーへのヒアリングを通じて、発電事業者が適切かつ効率的にメン
テナンスを行うために求められる業界構造、メンテナンス体制及び必要となる情報について検討を行う。

*1:本報告書では以降、風力発電の独立系メンテナンス事業者を「サードパーティ事業者」と記す
4 平成29年度電気施設等の保安規制の合理化検討に係る調査(風力発電業界の構造調査)
はじめに
日欧の風力発電業界の構造を比較し
我が国のあるべきメンテナンス体制を提言した
本調査では、「1.日本の課題抽出」、「2.欧州と日本の比較」、「3.まとめ及び提言」の項目について、以下のアプローチで文
献調査・ヒアリングを実施した。ヒアリング先については次ページ参照。
本調査のアプローチ

(1)日本の課題抽出 (2)欧州と日本の比較 (3)まとめ及び提言

1-1 1-2 1-3 2-1 2-2 2-3 3


調 欧州の 欧州の風車
欧州の
査 風力発電市場 稼働率 メンテナンス メンテナンス メーカーとサー まとめ及び
風力発電市場 ドパーティ事業
項 の概況 低下要因 体制の課題 体制 提言
の概況 者の比較

 陸上・洋上風力  風力発電の稼  メンテナンスの  欧州の陸上・洋  大手と中小で発  欧州のメンテナ  本調査の結果を


発電の導入量、 働率を調 査し 、 責任分担を調査 上風力発電の 電事業者の分 ンス市場シェア まとめ、日欧の
導入地域、発電 設置年別の傾 し、類型化した 導入量、導入地 類を行いメンテ やサードパー 相違点を明らか
事業者の傾向を 向を把握した  メンテナンス構 域、発電事業者 ナンスの責任分 ティ事業者の出 にした
調査した  部品別の故障 造や取得可能 の傾向を調査し 担を調査した 自を調査した  我が国と欧州の
概  国内に設置され 統計からキーコ な情報を調査し た  メンテナンスに  メンテナンスに 風力発電の業
ている風車の ンポーネントを 発電事業者のメ  欧州の風車メー 大きく影響する 対する風車メー 界構造の違いを
要 メーカーシェア、 特定した ンテナンス実施 カーのシェア、 サプラシチェー カーとサード 踏まえ、我が国
風車サイズの経  キーコンポーネ 状況を明らかに 風車サイズを調 ン、部品交換、 パーティ事業者 のメンテナンス
年傾向、風車 ントのサプライ した 査し、日本と比 サードパーティ の取り組みを比 品質向上に向
メーカーのM&A チェーン及び部  我が国の業界 較した 事業者に関して 較した けた政策の提
の歴史を調査し 品ストックにつ 構造から メンテ 調査し、日本と 言を行った
た いて調査し稼働 ナンス体制・課 比較した
率の低下要因を 題を抽出した
明らかにした

5 平成29年度電気施設等の保安規制の合理化検討に係る調査(風力発電業界の構造調査)
はじめに
本調査では 日本・ドイツ・ベルギー・デンマーク・スウェーデンの5か国
合計25の企業・団体に徹底的なヒアリングを行った

本調査のヒアリング先

日本 日本 ベルギー

ナメ
ユーラスエナジーホールディングス ンン ユーラステクニカルサービス 団
Wind Europe ( Former EWEA )
ステ 体

発 電源開発
電 大手金融機関A社
事 金 デンマーク
業 融
者 日本風力開発
大手保険関連会社A社
風 Vestas Wind Systems A/S
エコ・パワー 車
大 東京大学 メ
学 ー

Vestas Wind Technology Japan ー GE Renewable Energy
ドイツ
Siemens Wind power Pty Ltd 日本支店 ナメ
風 事発 ン ン ALL NRG Holdings
車 業電 ス テ
Innogy
メ GE Renewable Energy 者

カ メ スウェーデン
ー ー風
日立製作所 カ車 Siemens Gamesa Renewable Energy
ー 事発
業電 E. ON Sweden
日立パワーソリューションズ(Enercon代理店) 者
メ Deutsche Windtechnik

ヤラ サ テ
ーイ プ Winergy ナ


Availon

ン 北拓




イオスエンジニアリング&サービス

6 平成29年度電気施設等の保安規制の合理化検討に係る調査(風力発電業界の構造調査)
1. 日本の課題抽出

1.1 風力発電市場の概況
1.2 稼働率低下要因
1.3 メンテナンス体制の課題

7 平成29年度電気施設等の保安規制の合理化検討に係る調査(風力発電業界の構造調査)
1 日本の課題抽出
日本
FIT導入以降 着実に風力発電導入量は増加しており 市場概況 稼働率 課題
欧州 提言

FIT認定量を考慮すると 今後も導入量増加が継続される見通しである
国内の太陽光発電の建設ラッシュが落ち着く一方、風力発電のFIT認定量は増加の一途を辿っており、今後は直近5年の
CAGR(年平均成長率)を超えるペースで風力発電導入量が増加していくと予想される。

風力発電導入量の推移(発電容量)*1
CAGR
陸上16.1%
洋上42.5%
MW
40,000

陸上風力
36,200 陸上 洋上
35,000 MW
洋上風力 導入量 CAGR 導入量 CAGR
陸上洋上の区分不明 CAGR
30,000 陸上7.6%
洋上19.5%
2012 2,592 49
6.1% 8.0%
(2012- (2012-
25,000
2016) 2016)
CAGR 2016 3,290 67
陸上6.1%
20,000 洋上8.0%
FIT認定量
2017年 6,970(陸・洋合計)
3月末時点
15,000
直近CAGR 2030年度
(2012-2016) 直近
陸上6.1% 10,000 CAGR 7,571 6.1% 200 8.0%
10,000 洋上8.0%
7,771 ペース
6,970
*2
2030年度 7.6% 19.5%
5,000 3,115 3,357 エネルギー 9,180 (2016- 820 (2016-
2,641 2,707 2,936 ミックス 2030) 2030)
*3
0 2030年度 16.1% 42.5%
2012 2013 2014 2015 2016 FIT認定量 2030年度 2030年度*
2
*3
2030年度 JWPA 26,600 (2016- 9,600 (2016-
(2017年 直近CAGR エネルギー JWPA ビジョン 2030) 2030)
3月末時点) ベース ミックス ビジョン

*1出所:NEDOデータベースより2017年3月末までの単機出力10kW以上かつ総出力20kW以上の風車で稼働中のものを集計
*2出所:資源エネルギー庁なっとく再生可能エネルギー、*3出所:JWPA
8 平成29年度電気施設等の保安規制の合理化検討に係る調査(風力発電業界の構造調査)
1 日本の課題抽出
日本
我が国の風力発電は 市場概況 稼働率 課題
欧州 提言

全国に分散して導入されている
当初は風況の良い沿岸部で風力発電の導入が進んだが、適地が限られてくるにつれ内陸部へも導入されていった。民間
の発電事業者以外に、地方自治体により導入された風車基数は199基であり日本全体の約1割を占めている。

風力発電導入実績(発電容量MW)*1

都道府県別の導入量 地域別の導入量(MW)

300MW以上400MW未満
北海道 353
200MW以上300MW未満
東北 1,035
100MW以上200MW未満

関東 193
50MW以上100MW未満

50MW未満 中部 417

関西 334

中国 349

四国 152

九州 524
MW
0 250 500 750 1,000

全国に分散して導入されている

*1出所:NEDOデータベースより2017年3月末までの単機出力10kW以上かつ総出力20kW以上の風車で稼働中のものを集計
9 平成29年度電気施設等の保安規制の合理化検討に係る調査(風力発電業界の構造調査)
1 日本の課題抽出
日本
都道府県別のFIT認定量に基づくと 市場概況 稼働率 課題
欧州 提言

今後は北東部へ集中して風力発電が導入される見込みである
今後はFIT認定による売電収益を目的とした風車が益々増えると予想され、一定の発電量が見込める風況の良い北海道
や東北地方へ集中して導入される見通しである。

地域別の風力発電新設見込み容量(発電容量MW)*1
将来の導入見込み 都道府県別の新規見込み容量(MW)

北海道 1,356 佐賀県 47


青森県 1,265 鹿児島県 40
1,000MW以上
2,000MW以下 岩手県 957 熊本県 37
500MW以上 秋田県 541 徳島県 35
1,000MW以下 福島県 467 福井県 29
100MW以上 長崎県 285 愛知県 23
500MW以下 愛媛県 133 宮城県 22
100MW以下 山形県 125
新潟県 18
石川県 113
福岡県 17
和歌山県 98
千葉県 16
宮崎県 92
静岡県 14
三重県 77
山口県 6
大分県 77
茨城県 富山県 2
66
高知県 53 島根県 2
岡山県 51 埼玉県 0.2
MW MW
0 500 1,000 1,500 0 500 1,000 1,500

北東部を中心に導入が進む
※認定量がない16県はグラフから除外

*1出所:資源エネルギー庁なっとく再生可能エネルギー
10 平成29年度電気施設等の保安規制の合理化検討に係る調査(風力発電業界の構造調査)
1 日本の課題抽出
日本
我が国の風力発電事業者は 市場概況 稼働率 課題
欧州 提言

発電事業を本業とする電力会社系列及び専業デベロッパー*1が7割以上を占める
風車は部品点数が多く、回転体が外部に露出しており自然環境の影響を受けやすい*2 。 そのため、発電事業者は機械
及び電力の知識・ノウハウを有するものが多い。

発電事業者の傾向*3

発電事業者の割合(MWベース) 発電事業者の割合(基数ベース)

その他 電力会社系列 及び 電力会社系列 及び


エンジ系列
69 専業デベロッパー*1が 専業デベロッパー*1が
都道府県市町村 2%
195 52 7割以上を占める エンジ系列 その他
7割以上を占める
6% 1%
49 48
2% 2%
重電系列
非電力の民間企業 147
226 7%
7% 非電力の民間企業
159
7%
重電系列
電力会社系列
235 電力会社系列
7% 1,468 都道府県市町村
199 892
3,357 44% 2,203
9% 41%
MW 基

専業デベロッパー*1 専業デベロッパー*1
1,111 700
33% 32%

*1:風力発電事業を専業とするデベロッパー
*2出所:経済産業省「平成27年度未利用エネルギー等活用調査(電力発電設備の維持及び管理の動向調査)」
*3出所: NEDOデータベースより2017年3月末までの単機出力10kW以上かつ総出力20kW以上の風車で稼働中のものを集計(複数出資やグループ会社の場合、メイン
出資者の属性で分類)
11 平成29年度電気施設等の保安規制の合理化検討に係る調査(風力発電業界の構造調査)
1 日本の課題抽出
日本
2000年代前半の地方自治体の導入シェアは 市場概況 稼働率 課題
欧州 提言

2割を超えていたが 2000年代後半以降シェアは低水準となっている
2010年代後半、非電力の民間企業が導入基数シェアを伸ばしていることを鑑みると、風力発電市場の参入機会が多くの
民間企業に広がっていると推測される。

風力発電導入基数と発電事業者内訳*1

基 地方自治体 電力会社系列 専業デベロッパー 非電力の民間企業 エンジ系列 重電系列 その他 系列8


250
196 197
200 172
167 169 163 165

133
入 150 127
114
129

数 100
64 66 70
51 42
50 36 27
23
9
0
1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016

100%

80%

電 60%

事 40%

者 20%

の 0%
内 1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016

地方自治体シェア 地方自治体シェア14%ダウン 地方自治体シェア
21%(1999-2003) 7%(2012-2016)

*1出所: NEDOデータベース(2017年3月末までの単機出力10kW以上かつ総出力20kW以上の風車で稼働中のものを集計)
12 平成29年度電気施設等の保安規制の合理化検討に係る調査(風力発電業界の構造調査)
1 日本の課題抽出
日本
2000年代前半まで小規模な風車が数多く導入されており 市場概況 稼働率 課題
欧州 提言

それらは200機種*1以上に及ぶ
2000年代後半以降、風車が大型化し、導入できる発電事業者が減少したため導入基数は減少した。しかし、2012年の
FIT導入以降、発電事業の収益改善により、導入基数は増加傾向にある。

風車導入フローチャート*2
FIT以前 FIT以後

250 基数が多い 基数が少ない
196 197
200 167 172 169 163 165
150 127 133 129
114
導入基数
100 66 70
42 36
50 27
0
2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016

kW
2,500 2,185 2,102
2,052 1,942 2,028 2,035
1,818 1,905
2,000 1,692
1,539 1,553
1,332
単機出力 1,500
948
1,220 1,230
(kW / 基) 1,000 734 大型化
500
0
2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016

FIT以前は小規模風車が多く導入されており FIT以後は風車の大型化が進み
導入傾向
多様な機種が存在する*1 導入基数は少ない

*1:風力発電業界ヒアリングより、我が国の風車は機種統一が図られておらず、200機種以上の風車が全国に分散して導入されているという指摘を得た
*2出所: NEDOデータベース(2017年3月末までの単機出力10kW以上かつ総出力20kW以上の風車で稼働中のものを集計)
13 平成29年度電気施設等の保安規制の合理化検討に係る調査(風力発電業界の構造調査)
1 日本の課題抽出
日本
大手発電事業者4社で 市場概況 稼働率 課題
欧州 提言

我が国の風車基数のうち43%(953基)を占めている
発電事業者の風車保有基数の差は大きく、合計基数が100以上の事業者を大手発電事業者(4事業者)、100未満を中小
発電事業者(218事業者)と定義すると、その両者の差は平均200基以上となる。

保有基数シェア*1
平均
順位 発電事業者 合計基数 総出力(kW) 属性 保有基数

1 ユーラスエナジー 407 662,760 電力会社系列


手 2 J-POWER 239 435,360 電力会社系列
発 238基

事 /社
業 3 エコ・パワー 161 213,200 専業デベロッパー

4 日本風力開発 146 221,150 専業デベロッパー

中小発電事業者 大手発電事業者
5 CEF 89 172,810 専業デベロッパー
218社 4社
57%(1250基) 43%(953基)
ガスアンドパワー(大
6 68 86,450 専業デベロッパー
阪ガス)

日立サステナブルエ
中 7 65 120,170 重電系列
ナジー

発 5.7基
電 8 シーテック 53 101,000 電力会社系列
事 /社


9 ミツウロコグループ 31 51,650 専業デベロッパー

10 SBエナジー 29 48,430 専業デベロッパー

・ ・ ・ ・
・ ・ ・ ・
・ ・ ・ ・
*1出所: NEDOデータベース(2017年3月末までの単機出力10kW以上かつ総出力20kW以上の風車で稼働中のものを集計し、複数出資やグループ会社の場合、メイン出
資者の属性で分類した)
14 平成29年度電気施設等の保安規制の合理化検討に係る調査(風力発電業界の構造調査)
1 日本の課題抽出
日本
我が国に導入されている風車は 市場概況 稼働率 課題
欧州 提言

海外風車メーカー製が約7割を占めている
国内風車メーカーは主に3社に限られており、うち三菱重工業は陸上風力事業から撤退したため、今後も海外風車メー
カーが高いシェアを維持すると考えられる。

風車メーカーのシェア*1

風車メーカーシェア(基数ベース) 風車メーカーシェア(MWベース)

その他(日本製) その他(日本製)
日本製鋼所 37 日本製鋼所 35
145 2% Vestas + NEG- 288 1% Vestas + NEG-
7% Micon 9% Micon
392 605
日立製作所 + 富
18% 日立製作所 + 富 18%
士重工業
187 士重工業
9% 344
10%
国内製 Enercon + 日立- Enercon + 日立-
国内製 Enercon
697 Enercon
298 500
三菱重工業 32% 1,073
14% 15%
328 32%
15% 三菱重工業
406
12% 海外製
海外製
その他(海外製) 1,497 2,283
68% その他(海外製)
47 68%
2% 40
1%
IHI + IHI-Nordex GE Wind Energy GE Wind Energy
IHI + IHI-Nordex
50 + TACKE + TACKE
67
2% 294 484
2%
ALSTOM + 13% 14%
Ecotecnia ALSTOM +
48 Lagerwey + Repower + Siemens + Ecotecnia Lagerwey + NKK- Repower + Siemens +
NKK-Lagerwey Gamesa Jacobs BONUS 79 Lagerwey Gamesa Jacobs BONUS
2%
117 55 69 127 2% 87 110 116 196
5% 2% 3% 6% 3% 3% 4% 6%

*1出所: NEDOデータベース(2017年3月末までの単機出力10kW以上かつ総出力20kW以上の風車で稼働中のものを集計)
15 平成29年度電気施設等の保安規制の合理化検討に係る調査(風力発電業界の構造調査)
1 日本の課題抽出
日本
1990年代は多くの風車メーカーが存在したが 風車の大型化に 市場概況 稼働率 課題
欧州 提言

伴い開発資金が必要となり 大手重電メーカーへ集約されている
風車メーカー乱立時代は風車の単品販売で収益を稼ぐモデルが主だったが、大手重電メーカーへの集約に伴い、風車と
長期O&Mサービス*1のパッケージ販売にシフトしている。

主な風車メーカーのM&A推移*2
風車メーカー乱立時代 大手重電メーカー集約時代
1990年代 2000年代 2010年代
1990 1991 1992 1993 1994 1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016 2017

Vestas
Vestas Micon

New Wind NEG Micon


洋上風力合弁会社設立
MHI Vestas
MHI Vestas
Offshore Wind 三菱重工業

風車製造休止

M&Aなし Enercon
Enercon

Zond Enron Wind GE Wind

GE Wind Tacke Scan Wind


統合
Ecotechnica Alston Ecotechnica

Bonus Siemens

買収
Siemens
Gamesa Eólica
統合

日立製作所

日立製作所 富士重工業
日立製作所と共同開発
事業譲渡

*1:風車メーカーの製品保証期間を超える期間(10年以上)において、提供されるオペレーションやメンテナンスのサービス
*2出所:松信 隆・千葉 登(2017)「日本風力エネルギー学会誌;風力エネルギー,41(3),549-552」を改変
16 平成29年度電気施設等の保安規制の合理化検討に係る調査(風力発電業界の構造調査)
1 日本の課題抽出
日本
1.1 風力発電市場の概況 市場概況 稼働率 課題
欧州 提言

セクションサマリー サマリー

風力発電の導入実績
 我が国では、 2017年3月時点で2,203基、合計出力3,357MWの風車が稼働しており、多数の風車メーカーの風車が200機種以上、全国
各地に分散して導入されていることが特徴である。
 FIT認定量を考慮すると導入量は継続的に増加し、今後は特にFITによる売電収入が期待できる北海道、東北地方に集中して導入される
見込みである。

風力発電事業者
 風力発電は高度なメンテナンススキルが要求されるため、機械及び電力の知識を有する電力会社系列もしくは風力発電事業を専業とす
るデベロッパーの発電事業者が7割を占める。その他は、発電事業以外を本業とする事業者がサイドビジネスとして行っているケースや地
方自治体などが多い。
 発電事業者の風車保有基数の差は大きく、合計基数が100以上の事業者を大手発電事業者(4事業者)、100未満を中小発電事業者
(218事業者)と定義すると、その両者の差は平均200基以上となり、大手発電事業者で953基(シェア43%)の風車を保有している。
 今後は、用地不足等の理由により太陽光発電所の開発が難化した太陽光発電事業者などが、風力発電に本格参入すると予想されるた
め、中小発電事業者の数は増加していくと予想される。

風車メーカー
 出力ベース・基数ベースともに、海外風車メーカーが約7割のシェアを占めている。国内主要風車メーカーは三菱重工業、日立製作所、日
本製鋼所の3社であるが、三菱重工業の陸上風力事業からの撤退により、今後も海外風車メーカーが高いシェアを維持すると考えられ
る。
 1990年代は多くの風車メーカーが存在していたが、風車の大型化に伴い多大な開発資金が必要となったことで、大手重電メーカーへの
集約が進んでおり、今後も風車のメーカー数は絞られていくと想定される。
 大手重電メーカーは収益向上のため、風車と長期O&Mサービスのパッケージ販売を追究しており、風車メーカーによるメンテナンスの囲
い込みが進む可能性がある。

17 平成29年度電気施設等の保安規制の合理化検討に係る調査(風力発電業界の構造調査)
1. 日本の課題抽出

1.1 風力発電市場の概況
1.2 稼働率低下要因
1.3 メンテナンス体制の課題

18 平成29年度電気施設等の保安規制の合理化検討に係る調査(風力発電業界の構造調査)
1 日本の課題抽出
日本
故障・事故の対策を行うこと すなわち保安を確保することは 市場概況 稼働率 課題
欧州 提言

稼働率を維持することと同義である
故障・事故の対策を行うことで、保安の確保だけでなく風車の停止時間を短縮することが可能であり、結果として稼働率が
向上する。

故障・事故の発生要因とその対策
故障・事故の発生要因(件数)*1 故障・事故の対策例 保安の確保
1
台風対策
自然
系統故障 現象
3
3%
雷対策
3 人的要因
15
17% 2
1 部品の
故障・事故の主な発生要因である
事前交換 自然現象・風車内故障・人的要因の
自然現象 風車内 対策を行うことで
87件 45 故障 風車の安定した運転が可能となり
52%
風車内故障 状態監視 稼働率の向上につながる
2 24
28%
3
日常・定期点検
人的
要因
ヒューマンエラー
の防止

*1出所:NEDO風力等自然エネルギー技術研究開発「平成27年度 風力発電故障・事故調査結果報告書」より平成27年に発生した故障・事故のうち原因不明・その他を除いた
計87件の故障・事故の発生要因の内訳(故障・事故とは、何らかのトラブルにより、3日(72時間)を超える停止時間となった故障・事故と定義している)
19 平成29年度電気施設等の保安規制の合理化検討に係る調査(風力発電業界の構造調査)
1 日本の課題抽出
日本
FIT導入前に設置された風車は 市場概況 稼働率 課題
欧州 提言

想定以上の故障・不具合が発生しており 稼働率が低い
FIT導入前の風車は、経年劣化による故障増加の影響もあるが、故障・事故の対策が十分でない可能性がある。一方、
FIT導入後は設備利用率向上のインセンティブが大きくなり、メンテナンス体制が整備されたと推察される。

設備利用率及び発電量低下の要因
設置年別の設備利用率*1*2(%) 発電量が計画値を下回った主な理由*3
30% 順位 割合 理由
高利用率

25% 23.9%
低利用率 1 86% 故障・不具合が想定以上に発生したから

20% 18.9%
17.4%
15.7% 2 49% 想定していた風況を得られなかったから
15%

台風や強風等により風車停止時間が
10% 3 11%
想定以上に長くなったから

5%
4 3% 定期点検に想定以上の日数を要したから

0%
2000年以前 2001-2005年 2006-2010年 2011年以降
FIT以前 FIT以後 5 12% その他
※設備利用率 =年間発電量(kWh) ÷ { 定格出力(kW) × 24(時間) × 365(日) }

*1出所:風力発電競争力強化協会「風力発電競争力強化研究会報告書(平成28年度10月)」
*2:稼働率と設備利用率は、算出方法が異なるが、故障・不具合の発生によりダウンタイムが長期化すれば両値とも低下するため相関関係があると考えられる
*3出所:METI「平成27年度新エネルギー等導入促進基礎調査(再生可能エネルギーの長期安定自立化に向けた調査)報告書」よりアンケートの回答者数に対する
当該選択肢を選んだ回答者数の割合を算出
20 平成29年度電気施設等の保安規制の合理化検討に係る調査(風力発電業界の構造調査)
1 日本の課題抽出
日本
故障・不具合発生のうち 市場概況 稼働率 課題
欧州 提言

約半数は部品調達が原因でダウンタイムが長期化している
故障・不具合発生件数あたりの平均ダウンタイムは約30日であるが、部品製造期間を考慮すると、部品調達には30日以
上要する場合が多いと考えられる。
ダウンタイムが長期化した要因とその内容*1

要因 説明

部品手配に時間を要した、部品の在庫が無かった、部品の納入待ち
部品
など

その他, 24%
調査 故障原因の究明、故障部位の特定に時間を要した

部品
平均ダウンタイム 45% 修理(人繰り) メンテナンス業者の手配、作業員の派遣に時間を要した
修理(重機), 2% 29.9日/回

修理(その他) 工事の手配、現場への対応、補修作業に時間を要した、悪天候など
修理(その他), 8%

修理(重機) 重機手配に時間を要した

修理(人繰り), 9%

調査, 13% その他 他の故障風車対応を優先した、休日を挟んだ等

*1出所:NEDO 「スマートメンテナンス技術研究開発(分析)(疲労予測等)平成27年度風力発電故障・事故調査結果報告書」より、平成27年度に実施された発電事業者
へのアンケート調査結果を集計(未回答を除く)
21 平成29年度電気施設等の保安規制の合理化検討に係る調査(風力発電業界の構造調査)
1 日本の課題抽出
日本
部品調達に100日以上必要な部品は 市場概況 稼働率 課題
欧州 提言

ベアリング、ギアボックス、ブレード、発電機である
日本仕様のベアリング、ギアボックス、ブレード、発電機は生産数が少なく製造に時間を要すること、また、サイズが大きく
海外から船便で輸送するため調達期間が長期に及ぶことから、これらをキーコンポーネントと特定した。

キーコンポ-ネントの特定*1
故障頻度 故障頻度*2
部品 平均ダウンタイム(日) ダウンタイム内訳 (件数) (割合)
2ヶ月以上 半年以上 1年以上
2年以上
半年未満 1年未満 2年未満

主軸/ベアリング 340 0% 60% 0% 20% 20% 5 2%


ギアボックス 167 11% 11% 33% 44% 0% 9 3%
ブレード 151 38% 9% 12% 35% 6%
0% 34 11%
油圧装置*3 126 60% 20% 0% 20% 0% 5* 2%
発電機 108 25% 25% 33% 14% 0%
3% 36 12%
ヨー駆動装置 83 56% 7% 26% 7% 0%
4% 27 9%
風向・風速計 58 64% 21% 0% 14%0% 14 5%
ピッチ制御装置 57 69% 13% 9% 7%0%
2% 45 15%
電力装置 51 63% 20% 14% 2%
2%
0% 51 17%
機械式ブレーキ 50 67% 0% 33% 0% 3 1%
センサ類 41 80% 7% 7% 7%
0% 15 5%
1ヶ月以上
1ヶ月未満
ハブ 15 100%
2ヶ月未満
0% 2 1%
全般 15 100%
2ヶ月以上
半年未満 0% 2 1%
空力ブレーキ 15 100% 0% 1 0%
その他 71 50% 22% 22% 4%
0%
2% 50 17%
*1出所:NEDO 「スマートメンテナンス技術研究開発(分析)(リスク解析等)平成26年度国内風力運用実態調査中間報告」
*2:H26年度に実施された発電事業者へのアンケート調査結果を集計 *1:全部品の故障件数のうち、該当部品が占める割合
*3:油圧装置は、故障時でも1ヶ月未満で復旧できるケースが大半であるため、キーコンポーネントから除外
22 平成29年度電気施設等の保安規制の合理化検討に係る調査(風力発電業界の構造調査)
1 日本の課題抽出
日本
風車メーカーの国籍に依らず 市場概況 稼働率 課題
欧州 提言

キーコンポーネントは主に欧州メーカー製が占めている
欧米風車メーカーはM&Aにより部品の内製化を進めているが、必ずしも系列化されてはおらず、サプライヤーは様々な風
車メーカーと取引している。また、同一機種であっても、複数のサプライヤーから部品調達することが一般的である。

風車メーカーのサプライチェーン
風車メーカー キーコンポーネントのサプライヤー
風車*1 ブレード*1 発電機*1 ギアボックス*1 ベアリング
内製 NGC
内製 Moventas
シェア Vestas TPI
「高」 ABB ZF 海外メーカー
Aeris Winergy

SKF*(スウェーデン)
欧 Enercon 内製 内製 — Schaeffler*(ドイツ)
米 (ダイレクトドライブ)
風 ROLLIX(フランス)
車 Koyo(オランダ)
メ 内製 内製 石橋製作所

LM(調達・資本関係あり) VEM
GE Power NGC Kaydon(米国)

GE Wind TPI Conversion
ZF
Tecsis Nanjing Turbine
ー MFG 日立製作所 Winergy

ZF 国内メーカー
Siemens 内製 内製 Winergy(調達・資本関係あり)

ジェイテクト
ABB NTN
シェア 石橋製作所
「低」
三菱重工業 LM Ingeteam 日本精工*
Bosch Rexroth
Hyundai

内 石橋製作所
風 LM 内製 *:SKF・Schaeffler・日本精工の3社が
日立製作所 RENK AG 風力発電向けベアリング市場のトップサプ
車 LZ Blade Ingeteam
メ 三井三池 ライヤーである。特に日本精工は、風車
メーカー世界トップ10社中9社へ部品を
ー 供給している。
カ ABB
ー 日本製鋼所 内製 明電舎 —
(ダイレクトドライブ)
富士電機
*1出所:松信 隆・松下崇俊(2017) 「日本風力エネルギー学会誌;風力エネルギー,41(3),553-555」を改変
23 平成29年度電気施設等の保安規制の合理化検討に係る調査(風力発電業界の構造調査)
1 日本の課題抽出
日本
ブレードを除く3つのキーコンポーネントについて 市場概況 稼働率 課題
欧州 提言

大手発電事業者は部品をストックしている
大手発電事業者は調達に時間を要するキーコンポーネントの部品を適切に保管し、故障発生時に迅速に交換できる体制
を築いている。なお、ブレードは故障の大半を補修で対応できるため、大手発電事業者でも部品をストックしていない。

キーコンポーネントの調達及び保管情報*1
キーコンポー 大手4事業者
ネント 主要製造国 調達期間 部品コスト*2 ストック有無 調達後の保管方法

 放置すると周囲の温度変化により内部で結露が生じ、金属が腐食
するため、温度・湿度管理がなされた室内での保管が必要である
ベアリング 約4,000万円  定期的に部品を稼働させ、潤滑させる必要がある
 大手発電事業者は、自社で部品をストックするか、サプライヤーと契
約を結びサプライヤーに部品をストックさせている

 放置すると周囲の温度変化により内部で結露が生じ、金属が腐食
するため、温度・湿度管理がなされた室内での保管が必要である
ギアボック
約3,500万円  定期的に部品を稼働させ、潤滑させる必要がある
ス 欧州  大手発電事業者は、自社で部品をストックするか、サプライヤーと契
1~3 約を結びサプライヤーに部品をストックさせている
ヶ月
中国
※船便輸送  精密機器であるため、温度・湿度管理がなされた室内で保管する必
発電機 (一部国内) 約3,000万円 要がある
 大手発電事業者は、自社で部品をストックするか、サプライヤーと契
約を結びサプライヤーに部品をストックさせている

 屋外の保管スペース確保が困難であるため、大手発電事業者4社
ブレード でも部品をストックをしていない
約5,000万円
 故障の大半は、部分補修で対応可能であり、部品をストックする合
理性は低い

*1出所:風力発電業界ヒアリングに基づきDeloitte分析
*2:部品コストは輸送費を含まない
24 平成29年度電気施設等の保安規制の合理化検討に係る調査(風力発電業界の構造調査)
1 日本の課題抽出
日本
保有基数の少ない発電事業者は ストックを持つ合理性が低く 市場概況 稼働率 課題
欧州 提言

故障時のダウンタイムが長期化し 稼働率が低くなる傾向にある
中小発電事業者は1事業者あたりの保有基数は5.7基と少なく故障数が少ない。また、1事業者が保有する同一メーカー
の基数が少ないため共通部品が少なく、部品の利用機会が限定的であるため部品をストックする合理性が低い。

保有基数と稼働率の関係*1*2
保有風車 部品ストックの有無 稼働率

1事業者あたりの 238基 保有基数が多いため


平均保有基数 /事業者 故障数も多い
部品ストックがあるため
大手 部品をストックする
部品交換による
発電事業者 合理性が高い
(4社) ダウンタイムが短い
同一メーカーの基数が多 (稼働率92-95%*2)
1メーカー・事業者 41基 いため
あたりの平均基数 / メーカー・事業者 共通部品が多い

1事業者あたりの 5.7基 保有基数が少ないため


平均保有基数 /事業者 故障数も少ない
中小 部品ストックがないため
部品をストックする
発電事業者 部品交換による
(218社) 合理性が低い
ダウンタイムが長い
同一メーカーの基数が少
1メーカー・事業者 4.7基 ないため
あたりの平均基数 / メーカー・事業者 共通部品が少ない

*1出所:NEDOデータベースより2017年3月末までの単機出力10kW以上かつ総出力20kW以上の風車で稼働中のものを集計し、複数出資やグループ会社の場合
メイン出資者の属性で分類
*2:風力発電業界ヒアリングに基づきDeloitte分析
25 平成29年度電気施設等の保安規制の合理化検討に係る調査(風力発電業界の構造調査)
日本
1.2 稼働率低下要因 市場概況 稼働率 課題
欧州 提言

セクションサマリー サマリー

稼働率の傾向

 風力発電の故障・事故の主たる要因は、自然現象、風車内故障、人的要因の3つであり、それらの対策を実施することで、保安を確保す
ることが可能である。また、保安確保により、故障・事故を防ぐことが可能となりダウンタイムが短縮し稼働率が向上する。
 設置年の古い風車ほど、メンテナンス体制が整備されていない可能性が高く、故障・不具合が想定以上に発生しており稼働率は低下傾
向にある。実際、FIT導入前に設置された風力発電の設備利用率は20%以下に落ち込んでいる。
 一方でFIT導入後は、収益改善により設備利用率向上のインセンティブが働き、メンテナンス体制の改善が進んだとみられ、設備利用率
は23.9%と大きく改善している。

ダウンタイム長期化の原因
 ダウンタイムが長期化する原因のうち約半数は部品調達が占めるが、なかでもベアリング、ギアボックス、ブレード、発電機は平均ダウン
タイムが100日以上に及んでおり、これら4部品をキーコンポーネントと特定した。
 海外・国内風車メーカーともにキーコンポーネントの多くを欧州サプライヤーから調達しており、それらは主に欧州・中国で製造されている
ため、 1~3ヶ月程度の船便輸送期間が必要である。
 日本仕様のキーコンポーネントは生産数が少なく、在庫が無ければ更なるダウンタイム長期化を招く。

稼働率の低下対策

 大手発電事業者は部品故障時のダウンタイム短縮を目的とし、ブレードを除いたキーコンポーネント3部品については、自社で部品をス
トックするか、サプライヤーと契約を結びサプライヤーに部品をストックさせている。なお、ブレードは故障の大半を補修で対応できるため、
ストックしていない。
 大手発電事業者は保有基数が多く、かつ風車メーカーを絞っており、キーコンポーネントのスペア部品の使用頻度が高くなるため予め部
品をストックする合理性はある。一方で、中小発電事業者は保有基数が少なく、風車メーカー統一が難しいため、故障に備えて使用頻度
の低い高価な部品をストックすることは非効率であり合理性は低い。
 結果、大手発電事業者は約95%の稼働率を維持しているが、中小発電事業者は大手より稼働率は低くなる傾向にある。

26 平成29年度電気施設等の保安規制の合理化検討に係る調査(風力発電業界の構造調査)
1. 日本の課題抽出

1.1 風力発電市場の概況
1.2 稼働率低下要因
1.3 メンテナンス体制の課題

27 平成29年度電気施設等の保安規制の合理化検討に係る調査(風力発電業界の構造調査)
1 日本の課題抽出
日本
我が国の発電事業者は 大手と中小で 市場概況 稼働率 課題
欧州 提言

資金調達方法や稼働率担保の主体者が大きく異なる
大手発電事業者はコーポレートファイナンスを使い、稼働率担保の主体者は自社である場合が多い。一方、中小発電事
業者はプロジェクトファイナンスを使い、稼働率担保の主体者は風車メーカーとなる場合が多い。

発電事業者の分類*1
発電事業者 資金調達(ファイナンス) 稼働率担保の主体者

1
コーポレートファイナンス 自社
大手
発電事業者
(4社)
プロジェクトファイナンス 自社
(以降プロファイ) ※初期の2~5年間は風車メーカー
1
中小発電事業者 大手発電事業者
2 1,250基(57%) 953基(43%) 2 自社
プロジェクトファイナンス
(以降プロファイ)
風車メーカー
中小
発電事業者 コーポレートファイナンス
出所:NEDOデータベース
(218社)
※2017年3月末までの単機出力10kW以上かつ 稼働率は
総出力20kW以上の風力発電で稼働中のものを集計
補助金
担保されていない
地方自治体予算

*1出所:風力発電業界ヒアリングに基づきDeloitte分析(上記分類は大まかなものであり、必ずしもすべての発電事業者が上記類型に分類されるものではない)
28 平成29年度電気施設等の保安規制の合理化検討に係る調査(風力発電業界の構造調査)
1 日本の課題抽出
日本
資金調達方法によらず 大手発電事業者は 自社のメンテナンス 市場概況 稼働率 課題
欧州 提言

部隊によるO&M実施が可能であり 自己責任で稼働率を高めている
資金調達方法以外において、4事業者の風車運営方法に大差はない。4事業者ともに自社のメンテナンス部隊でO&Mを
実施し、自己責任で稼働率を高めており、4事業者を併せてリスクテイク型と分類する。

大手発電事業者の分類*1
メンテナンス
発電事業者 資金調達(ファイナンス) 稼働率の担保主体 主体者 稼働率 O&M類型

コーポレートファイナンス 自社

A社

リスクテイク型
ファイナンスが安価であるため O&Mのケイパビリティを持っているため
B社 コーポレートファイナンスを使用する 自己責任で稼働率を高めている
 ファイナンスの違いによ
自 るメンテナンス手法への
社 高
影響はない

 4事業者ともに自社メン
C社 テナンス部隊を持ち自己
責任で稼働率を高めて
いる

プロファイ 自社

D社 親会社の意向*2を受け 大手であればプロファイであっても
レンダーから自社O&Mを認められている
プロファイを組成する
(短期間の風車メーカー稼働率保証は必須)

*1出所:風力発電業界ヒアリングに基づきDeloitte分析(上記分類は大まかなものであり、必ずしもすべての発電事業者が上記類型に分類されるものではない)
*2:親会社はリスク資産に対するエクスポージャーを縮小したい意向を持っており、風力発電関連の負債をバランスシートに載せたくないため、プロファイ組成を求める
29 平成29年度電気施設等の保安規制の合理化検討に係る調査(風力発電業界の構造調査)
1 日本の課題抽出
日本
中小発電事業者の多くは メーカー依存型・都度対応型の 市場概況 稼働率 課題
欧州 提言

どちらかに分類され 稼働率担保及びメンテナンスを自社で行うことが困難である
中小発電事業者は各々で差があり、プロファイを使用する場合はレンダーの要求から風車メーカーによる長期の稼働率保
証の担保が必要となる。その他は、稼働率が担保されていない事業者が多い。

中小発電事業者の分類*1
メンテナンス
発電事業者 資金調達(ファイナンス) 稼働率の担保主体 主体者 稼働率 O&M類型

メンテナンス事業者出身 プロファイ 自社
メーカー共存型
 風車メーカーとO&Mの協力体制を 本類型に属する事業者は
自 レンダーの要求が緩和されて
メンテナンス事業者が 資本力がないため 築き、自社でO&Mを行う 社 高 少数であるため
おり、自社とメーカーが協力し
発電事業を行うケース プロファイを組成する  高額な保険に入る必要があるため 本調査では省略する
てメンテナンスを行う
稼働率保証コストが高くなる

風力発電事業を
本業とする企業
プロファイ 風車メーカー 風 メーカー依存型

プロジェクト毎に採算性を メ レンダーの要求があるため
風力発電事業の収益性を 判断するため
ファイナンス期間中は
ー 高 自社でメンテナンスを行えず
レンダーから風車メーカーの カ 風車メーカー委託となる
重視している プロファイを組成する
稼働率保証を求められる ー

風力発電事業を コーポレートファイナンス 担保されていない 都度対応型


本業としない企業

他に本業があるため 他の本業で収益を確保しており
メンテナンス要員を定常的に配置し レンダーの要求はなく
風力発電事業の収益性を コーポレートファイナンスを使用する
ていない 故障が発生した場合は
重視していない 不
部品のストックがないため、部品が故 都度風車メーカーを呼ぶ必要が
障した場合は風車メーカーへの都度 明 低 ある
地方自治体 地方自治体予算 発注となる 確
発電事業のための十分な予算の確
年度ごとに予算を調達する必要があり 保が難しく、風車メーカーと稼働率保
地方自治体もしくは補助金を
突発的な故障に備えた 証を契約できない場合もある
活用する民間企業
計画的な予算確保が難しい

*1出所:風力発電業界ヒアリングに基づきDeloitte分析(上記分類は大まかなものであり、必ずしもすべての発電事業者が上記類型に分類されるものではない)
30 平成29年度電気施設等の保安規制の合理化検討に係る調査(風力発電業界の構造調査)
1 日本の課題抽出
日本
発電事業者は大きく3つに分類され 市場概況 稼働率 課題
欧州 提言

低稼働率となる傾向にある都度対応型への対応が我が国の課題である
都度対応型は稼働率担保主体者及びメンテナンス主体者が不在であり、故障が発生した場合は都度風車メーカーに対応
を要請する必要があるため、部品調達期間が長くなり稼働率が低くなる傾向にある。

発電事業者の分類*1 稼働率への影響
メンテナンス
類型 サマリー ファイナンス 稼働率担保主体者 主体者 稼働率

大 リ  ファイナンスは安価であるコーポ
手 ス コーポレート
レートファイナンスを使用する
発 ク ファイナンス
 もしくは親会社の意向を受けプロ
電 テ 自社 自社
ファイを組成する(1社のみ)
事 イ
業 ク  自社のメンテナンス部隊を持ち自
者 型 己責任で稼働率を高めている
プロファイ 自社もしくは風車
メーカーでメンテナン
高 スを実施し稼働率を
メ 高めている

カ 風車 風車
ー  風車メーカーにメンテナンスを委託
プロファイ
し稼働率を高めている メーカー メーカー

中 存
小 型



業 コーポレート
者 都
 稼働率の担保主体者及びメンテナ ファイナンス
度 不在 不在
ンス主体者は不在であり、故障が 都度対応となるため

応 発生した場合は都度風車メーカー 担保されていない
スポット 低 稼働率は低い
に対応を要請する必要がある メンテナンス
型 地方自治体
予算

*1出所:風力発電業界ヒアリングに基づきDeloitte分析(上記分類は大まかなものであり、必ずしもすべての発電事業者が上記類型に分類されるものではない)
31 平成29年度電気施設等の保安規制の合理化検討に係る調査(風力発電業界の構造調査)
1 日本の課題抽出
日本
保証期間中は風車メーカーがメンテナンスを実施し 市場概況 稼働率 課題
欧州 提言

保証期間満了後は発電事業者またはサードパーティ事業者等がメンテナンスを行う
風車メーカーの稼働率・製品保証期間中は、保証条件として風車メーカーによるメンテナンスが必須となる。なお、保証期
間終了後であっても、風車メーカーへメンテナンスを委託することは可能である。

類型ごとの責任分担*1
実施及び責任の主体者
補足
風力発電の事業期間(20年)

リ 稼働率
担保 自社
ス  自社で稼働率を担保するが、初期の2~5年間

テ の製品保証期間は風車メーカーに主要なメン
イ テナンスを任せる
ク メンテナンス 風車メーカー 自社  保証期間満了後は自社でメンテナンスを行う
型 主体者 (製品保証期間:2-5年) (簡易メンテナンスは外注)

稼働率 風車メーカー 担保主体者なし


メ (風車メーカー製品保証期間  レンダーの要求により長期の風車メーカーの稼
ー 担保 (長期稼働率保証:10年超) 満了後)
カ プロファイのレンダーから
働率保証を契約し、風車メーカーがメンテナン
ー 風車メーカーによる長期の スを行う
依 稼働率保証を要求される
存  保証期間満了後は自社でメンテナンスを行うも
メンテナンス 風車メーカー 自社もしくは外注 しくは外注する
型 主体者 (長期O&Mサービス:10年超)

稼働率 担保主体者なし  全事業期間で稼働率の担保主体者はいない


都 担保 (全事業期間)  初期の2~5年間の製品保証期間は風車メーカー
度 にメンテナンスを任せる

応  メンテナンスについて十分な予算を確保していな
型 メンテナンス 風車メーカー 自社もしくは外注 いため、メンテナンス要員を定常的に配置でき
主体者 (製品保証期間:2-5年) (必要最低限のメンテナンス体制) ず、故障部品は都度発注となる

*1出所:風力発電業界ヒアリングに基づきDeloitte分析
32 平成29年度電気施設等の保安規制の合理化検討に係る調査(風力発電業界の構造調査)
1 日本の課題抽出
日本
風車のO&Mを適切に実施するには 市場概況 稼働率 課題
欧州 提言

風車メーカーが保有するノウハウのほか 環境特性を適切に考慮する必要がある
近年の風車は単なる汎用品の組み合わせではなく、サプライヤーと共同開発された部品で構成され、複雑に電子制御さ
れている*1。そのため、O&Mを実施するためには高度なノウハウが必要となる。

O&M内容と風車メーカーのノウハウ領域*1
O&M構造 O&M内容 O&Mの難易度
O&M
難易度「高」
トラブル  機器の故障発生時に、原因究明及び修理対応を行う
シューティング
 難易度は高く、風車メーカーや専門企業への委託もし
くは支援がなければ、発電事業者でO&Mを実施する
サイト特有の高度な  設置場所の条件(立地・風況等)に合わせて風車のオ ことは困難である
オペレーション 風 ペレーションを実施する  IEC基準を超えるような立地・風速条件で設置されて
車 いる場合は、サイト別の運転マニュアルが必要であり、

ー O&M難易度は高い
 CMS及び診断ソフトウェアの導入により、稼働部の振

CBM ー 動解析をもとに数ヶ月前から部品故障の予知が可能と
の なる

ウ  SCADAデータから過去の故障に関するデータを集計・分析し、
予防保全 ハ 部品別の故障確率を算出する
ウ  故障確率の高い部品については、点検や交換頻度を高めたり
部品をストックする  難易度は中程度であり、風車メーカーや専門企業への
委託もしくは支援がない場合でも、ケイパビリティを持
つ発電事業者であればO&Mの実施が可能である
部品調達  故障発生時に風車メーカーやサプライヤーから交換す
る部品を調達する

 風車を安定稼働させるために定期的に点検を実施する  難易度は相対的に低く、風車メーカーが持つマニュア
定期点検  ボルト締めのような簡易なものから風車メーカーのOJT ルに従えば、保有するケイパビリティに関係なく発電事
が必要な難易度の高いものまである 業者はO&Mの実施が可能である

*1出所:風力発電業界ヒアリングに基づきDeloitte分析
33 平成29年度電気施設等の保安規制の合理化検討に係る調査(風力発電業界の構造調査)
1 日本の課題抽出
日本
リスクテイク型は 市場概況 稼働率 課題
欧州 提言

風車メーカーのノウハウ領域の多くを自社で実施している
メーカー依存型・都度対応型は保有基数が少なく、部品故障等のデータ保有数も少ないためCBM・予防保全の実施が困
難である。またリソース*1が限られており、海外サプライヤーを開拓できず独自に部品を調達することは難しい。

大手発電事業者及び中小発電事業者のO&M実施範囲*2
O&M実施範囲
O&M構造 リスクテイク型 メーカー依存型・都度対応型
O&M
難易度「高」 風車メーカーのブラックボックスであり 風車メーカーのブラックボックスであり
トラブル
シューティング 発電事業者の関与は難しい 発電事業者の関与は難しい

サイト特有の高度な サイト別の運転マニュアルが無くとも自社の サイト別の運転マニュアルがなければ高度な


オペレーション 風 O&M実績に基づき高度な運転を行う 運転は行えない


ー 保有基数が多いためCMS及び診断ソフト
カ 保有基数が少ないためCMS及び診断ソフト
CBM ー ウェアを導入することで状態基準保全の効果
ウェアを導入しても得られる効果は少ない
の を十分に得られる


ハ 保有基数が多いため、過去の部品故障の 保有基数が少ないため、過去の部品故障の
予防保全 ウ 統計から故障予測が可能である 統計からでは故障予測が困難である

海外サプライヤ―を開拓し 風車メーカー・国内サプライヤー経由で部品
部品調達 サプライヤーから直接部品を購入する を調達する

定期点検 風車メーカーの保守点検マニュアルに加え 風車メーカーの保守点検マニュアルをもとに点


自社のO&M実績に基づいた点検を行う 検を行う

O&M実施範囲を拡大すべく 保有基数が少なくリソース*1が限られるため
独自の取り組みを進めている 実施範囲を広げることが難しい
*1:当該事業の運営に必要な経営資源(本報告書では風車メンテナンスを行う人員やノウハウのことを指す) *2出所:風力発電業界ヒアリングに基づきDeloitte分析
34 平成29年度電気施設等の保安規制の合理化検討に係る調査(風力発電業界の構造調査)
1 日本の課題抽出
日本
発電事業者が適切に保安を確保するためには 市場概況 稼働率 課題
欧州 提言

現在の情報取得状況は十分とはいえない
O&M難易度が高く、風車メーカーのノウハウとなっている情報は取得しにくい。それらのうち、いくつかの情報については
取得できなければ重大事故を招く恐れや、事故発生時に迅速かつ適切な対応ができない状況に陥る可能性がある。

O&M実施に必要な情報*1 発電事業者にとって 情報整備の


分類 情報 情報取得の可否 情報が与える保安品質への影響 必要性

情報取得不可であるが重大事故の発生との
制御プログラム 取得不可能
トラブル 関連性は低いため影響は少ない
シューティング トラブルシューティング 風車メーカーとの交渉により 重大事故発生時、迅速かつ適切な対応を
マニュアル 取得可能だが極めて困難 実施するため、ある程度の情報取得が必要
風車メーカーによっては存在せず 基準風速Tクラス*3の地域や乱流の発生しやすい山岳地帯などは
運転マニュアル(サイト別) 専用のマニュアルがなければ重大事故を招く恐れがある
取得は困難
オペレーション
風車メーカーと契約中であれば 契約が切れた場合、更新情報を取得できず
運転マニュアル(標準版)
取得でき更新情報も取得可能 適切な保安の確保に影響がある
風車メーカー・CMSサプライ
予兆診断 ヤー・計測器メーカー等から診
CBM
(CMSデータ) 断ソフトウェアを導入すれば取得 情報が取得できなければ、故障率の高い部品を
可能だが高額 ストックしたり、故障時期を予測することにより
調達のリードタイムを考慮した部品手配が
取得可能だが予測精度を 困難である
過去の故障情報
予防保全 上げるためには多くの情報量と (ただし診断手法に依存する)
(SCADAデータ)
情報解析ノウハウが必要

図面を有償で購入するか、
図面*2 自社でリバースエンジを行えば取得可能
情報を取得できなければ風車メーカーの撤退・倒産により、
交換部品入手が困難となる場合がある
部品調達 部品更新により使用中部品との互換性が無くなる場合があり、
更新及び製造中止情報 風車メーカーと契約中であれば
レトロフィットなどの情報取得が必要
(部品・ソフトウェア) 取得可能

風車メーカーと契約中であれば 契約が切れた場合、更新情報を取得できず
定期点検 保守点検マニュアル
取得でき更新情報も取得可能 適切な保安の確保に影響がある

*1出所:風力発電業界ヒアリングに基づきDeloitte分析
*2:風車メーカーの倒産対策として事業者によっては倒産時の図面譲渡契約を結ぶ *3:Tクラスは57m/s(10分平均基準風速)以上の地域を表す
35 平成29年度電気施設等の保安規制の合理化検討に係る調査(風力発電業界の構造調査)
1 日本の課題抽出
日本
風車メーカーは自社メンテナンスだけでなく 市場概況 稼働率 課題
欧州 提言

サードパーティ事業者や地元の電気工事会社へメンテナンスを委託している
リスクテイク型は自社でメンテナンスノウハウを蓄積するが、メーカー依存型・都度対応型は風車メーカーがサードパーティ
事業者を活用しており、風車メーカーとサードパーティ事業者にノウハウが蓄積される構図となっている。

メンテナンス委託フロー及びノウハウ蓄積*1
リスクテイク型のメンテナンス委託フロー メーカー依存型・都度対応型のメンテナンス委託フロー
:委託があるかつノウハウが蓄積される
メーカー依存型
:委託はあるが
ノウハウは蓄積されない 都度対応型
リスクテイク型
:委託は限られる
委託

風車メーカー

自社 ノウハウ流出 簡易 自社 簡易
を避けるため 委託
メンテナンス メンテナンス メンテナンス メンテナンス
委託しない

自社の サードパーティ 地元の 風車メーカーの サードパーティ 地元の


メンテナンス部隊 事業者 電気工事会社 メンテナンス部隊 事業者 電気工事会社

内製型 サードパーティ活用型
 自社のメンテナンス部隊を持っており、外注をする場合はノウハウ流出  風車メーカーへメンテナンスを委託し、風車メーカーは自社のメンテナン
を避けるため、サードパーティ事業者以外のメンテナンス事業者へ簡 ス部隊以外にも、サードパーティ事業者や地元の電気工事会社にメン
易メンテナンスのみ委託する テナンスを再委託している
 よって風車基数が増えたとしても発電事業者にメンテナンスノウハウが  地元の電気工事会社へは簡易メンテナンスの委託であるため、ノウハ
蓄積される構造となっている ウの蓄積は困難である

*1出所:風力発電業界ヒアリングに基づきDeloitte分析
36 平成29年度電気施設等の保安規制の合理化検討に係る調査(風力発電業界の構造調査)
1 日本の課題抽出
日本
メーカー依存型や都度対応型では 市場概況 稼働率 課題
欧州 提言

発電事業者として責任のとれるメンテナンス体制構築や情報取得が難しい
風車メーカーに依存した体制では風車メーカーの事業撤退や倒産が生じた場合、発電事業者にてメンテナンスが不可能と
なるリスクがある。また、都度対応では故障・事故発生後に迅速な対応ができず、安全が確保されないリスクが生じる。

事業者の分類と課題*1*2 メンテナンス 今後の課題


類型 主体者 取得可能な情報 (リスク)

1
 今後さらに基数
制御・トラブルシュー が増え交渉力
リスク 自社でメンテナン
ティングマニュアル が増すため情
テイク型 ス行う 以外は取得可能 報の取得も容
易になる

3 1
 風車メーカーの事
FIT以前*1
2 業撤退や倒産に
大手発電事業者 より発電事業者が
中小発電事業者 風車メーカーへメ
983基(45%)
953基(43%) メーカー 保守点検マニュアル メンテナンスを行う
ンテナンス委託す 運転マニュアル ことができない
依存型 る  風車メーカーのブ
ラックボックスが更
に広がる
FIT以後*1
中小発電事業者
3
267基(12%)  事故が起こる可
能性が高い
都度 自社または他社 保守点検マニュアル
 発生後、未対応
2 発注型 (必要最低限) 運転マニュアル
となることが予
想される

*1出所:NEDOデータベースより2017年3月末までの単機出力10kW以上かつ総出力20kW以上の風車で稼働中のものを集計
*2:風力発電業界ヒアリングに基づきDeloitte分析(2012年7月以降に稼働開始された風車はFIT認定されていると仮定し、FIT以前・FIT以後の風車基数を算出)
37 平成29年度電気施設等の保安規制の合理化検討に係る調査(風力発電業界の構造調査)
1 日本の課題抽出
日本
我が国のメンテナンス技術者は不足傾向にあり 市場概況 稼働率 課題
欧州 提言

特に風車メーカーのメンテナンス委託先の人員数不足は課題である
風力発電の導入増加に伴いメンテナンス業務の需要は増加していくが、現状では人材不足のため供給サイドに限りがあ
り、保安品質が低下すること、競争環境が形成されないことが懸念される。

メンテナンス事業の不足人員数*1 必要な 不足する


発電事業者の分類別メンテナンス人員数 人員数 現在の人員数 人員数
(人員数)
大手発電事業者
190人程度不足 大手 自社メンテナン 300人
(中小発電事業者) 発電事業者 ス部隊
不足無し
不足無し (190)
(大手発電事業者)
300人
(保有:953基) 地元
電気工事会社
少数
(0)
70
風車メーカー
自社メンテナン 130人
ス部隊
130 中小 190人程度
発電事業者 不足
サードパー
500 690
ティ事業者
70人
390人
(保有:1250基)
300
地元
電気工事会社
少数

大手 風車 サード 現在のメンテ 大手 中小 必要なメンテナ


発電事業者 メーカー パーティ ナンス人員数 発電事業者 発電事業者 ンス人員数 合計690人*2 合計500+少数 合計190人
必要なメンテナンス 現在のメンテナンス 不足するメンテナンス
中小発電事業者 不足する人員数 人員数 人員数 人員数

*1:風力発電業界アンケート及びヒアリングに基づきDeloitte推計
*2:メンテナンス技術者1人あたりのメンテナンス可能風車基数は3.2基程度/人と言われているため、国内の風車基数2,203基に対して最適なメンテナンス人員数を
690人程度と計算した。(スマートメンテナンスシステム技術研究開発(リスク分析)調査に対するヒアリング(東京大学飯田誠特任准教授より))
38 平成29年度電気施設等の保安規制の合理化検討に係る調査(風力発電業界の構造調査)
日本
1.3 メンテナンス体制の課題 市場概況 稼働率 課題
欧州 提言

セクションサマリー サマリー

発電事業者の分類
 ファイナンス形態と稼働率担保主体により、リスクテイク型、都度対応型、メーカー依存型に発電事業者は分類される。
 リスクテイク型の発電事業者はコーポレートファイナンスを使用し、自社系列のメンテナンス部隊により稼働率を高めることが可能である
が、都度対応型はメンテナンスに十分な予算を確保することが難しく、稼働率が担保されず稼働率が低くなる傾向にある。
 メーカー依存型はプロジェクトファイナンスを使用するため、レンダーから融資期間を超える長期の風車メーカー保証を求められることが多
く、風車メーカーにメンテナンスを委託する。

メンテナンスの実態
 メンテナンスの責任分担は発電事業者の分類ごとに明確に異なる。なお、風車メーカーの稼働率・製品保証期間中は保証条件として風車
メーカーによるメンテナンスが必須となる。
 リスクテイク型は、自社責任でメンテナンスを自ら実施する。
 メーカー依存型は、長期O&Mサービス契約を締結し、風車メーカーにメンテナンスを全委託する。
 都度対応型は、メンテナンス要員を定常的に配置しておらず、メンテナンス期間ごとにメンテナンス主体者が変わる傾向があるため、責任
分担が曖昧となるケースが多い。
 風力発電のメンテナンスには、風車メーカーが保有する高度なノウハウや情報取得が必要だが、風車メーカーの開示情報は限られてお
り、それら情報を取得するには、部品調達のために海外サプライヤーを開拓するリソースや、状態基準保全や予防保全を行うに値する風
車基数の保有が必要となり、リソースが少なく保有基数の少ない都度対応型やメーカー依存型にとってハードルが高い。
 また、発電事業者が保安品質を確保するうえで、重大事故発生時の対処方法が記されたトラブルシューティングや、基準風速の大きい地
域や乱流の発生しやすい山岳地帯など標準的なサイトではない専用運転マニュアルが必要であるが、それらの取得状況は十分でない。

メンテナンス体制に関する課題

 国内市場において適切かつ効率的にメンテナンスを実施可能であるのは、自社で主体的にメンテナンスを実施し、メンテナンスに必要な
情報を取得できるリスクテイク型に限られている。メーカー依存型・都度対応型はメンテナンスを風車メーカーに依存する構造となってお
り、風車メーカ-が撤退・倒産した場合、メンテナンスが不可能となり安全性が担保されないリスクがある。
 今後は、風力発電の導入増加に伴いメンテナンス業務の需要は増加していくが、現状では人材不足のため供給サイドに限りがあり、保安
品質が低下すること、競争環境が形成されないことが懸念される。

39 平成29年度電気施設等の保安規制の合理化検討に係る調査(風力発電業界の構造調査)
2. 欧州と日本の比較

2.1 欧州の風力発電市場の概況
2.2 欧州のメンテナンス体制
2.3 欧州の風車メーカーとサードパーティ事業者の比較

40 平成29年度電気施設等の保安規制の合理化検討に係る調査(風力発電業界の構造調査)
2 欧州と日本の比較
欧州
欧州の風力発電導入量は我が国の約50倍であり 日本
市場概況 メンテ体制 サードパーティ
提言

2030年に向けて導入数は増加し 合計出力323GW程度になる見込みである
2030年のCentral Scenarioにおける風力導入量が達成されると見込む場合、合計出力323GWであり、我が国の導入想
定量(2030年度エネルギーベストミックス:10GW)の約30倍に相当する。

風力発電導入量の推移(発電容量)*1

GW
CAGR 陸上 洋上
陸上5.5%
陸上風力 洋上15.6% GW
CAGR
陸上4.3% 導入量 CAGR 導入量 CAGR
洋上風力 洋上12.8% 397
400
2011 91 4
CAGR
陸上2.8% 9.2% 27.9%
洋上10.0% 98
323 (2011- (2011-
2016) 2016)
300 2016 141 13
70
256

49 2030 2.8% 10.0%


207 (2016- 49 (2016-
200
直近CAGR Low
(2011-2016) 2030) 2030)
陸上9.2%
洋上27.9% 154
142
CAGR 129 13 299
2030
4.3% 12.8%
(2006-2011) 118 11 253 (2016- 70 (2016-
陸上14.1% 106 8 253 Central
洋上36.6% 95 7 2030) 2030)
100 85 5 207
75 4
66 3
57 2 141
48 2 121 131
2030 5.5% 15.6%
41 1 101 111
1
1 82 91 299 (2016- 98 (2016-
64 73 High
47 56 2030) 2030)
40
0
2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016 2030 2030 2030
Low Central High
Scenario Scenario Scenario

*1出所:Wind Europe「2016 European Statistics」、 「Wind energy in Europe: Scenarios for 2030」
41 平成29年度電気施設等の保安規制の合理化検討に係る調査(風力発電業界の構造調査)
2 欧州と日本の比較
欧州
ドイツを筆頭に西欧で風力発電が多く導入されており 日本
市場概況 メンテ体制 サードパーティ
提言

続いて北欧近辺での導入が多い
上位の国々は隣接しており、風車メーカーやサードパーティ事業者は国を跨って活動している。また、洋上風力の導入量
は、UK、ドイツ、デンマーク、オランダの4国が1GW以上であり、今後も増加する見込みである。

国別の風力発電導入実績(発電容量GW)*1

現在の導入量 国別の導入量(GW)
50GW以上100GW未満 順位 国 導入*2 順位 国 導入*2
10GW以上50GW未満
1 Germany 50 (4.1) 15 Greece 2 (0)
5GW以上10GW未満
2 Spain 23 (0) 16 Finland 2 (0)
1GW以上5GW未満 17 Bulgaria 1 (0)
3 UK 15 (5.2)
4 France 12 (0) 18 Lithuania 0

5 Italy 9 (0) 19 Croatia 0

6 Sweden 7 (0.2) 20 Hungary 0

7 Poland 6 (0) 21 Estonia 0


Czech
8 Portugal 5 (0) 22 0
Republic
9 Denmark 5 (1.3) 23 Cyprus 0
10 Netherlands 4 (1.1) 24 Lativa 0
11 Romania 3 (0) 25 Luxembourg 0
12 Ireland 3 (0) 26 Slovakia 0
13 Austria 3 (0) 27 Slovenia 0
14 Belgium 2 (0.7) 28 Malta 0
*1出所:Wind Europe「2016 European Statistics」 「Wind energy in Europe: Scenarios for 2030」「The European offshore wind industry: Key trends and stastics
2016」 *2:( )内の数値は導入量のうち洋上風力発電を示す
42 平成29年度電気施設等の保安規制の合理化検討に係る調査(風力発電業界の構造調査)
2 欧州と日本の比較
欧州
中小発電事業者は主に陸上風車を導入し 日本
市場概況 メンテ体制 サードパーティ
提言

大手発電事業者は洋上風車の導入を進める傾向が強まってきている
陸上風車と洋上風車のファイナンス組成方法は大きく異なっており、大手と中小の参入度合が明確である。コーポレート
ファイナンスを使用できない中小は洋上風車の導入が困難であり大手による導入が中心となっている。

欧州のファイナンス組成の推移*1
傾向
100%
90% コーポレート
ファイナンス
80%
70%
60% コーポレートファイナンスを使
50% 用できない中小発電事業者
陸上風車 プロファイ
40% が多いため、プロファイによ
30% り導入された風車が全体の
20% 70%を占める
10%
0%
2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016 2017H1

100%
90% コーポレート
ファイナンス
80%
70%
60% 資本力の大きい発電事業者
50% の参入が多いためコーポ
洋上風車
40% レートファイナンスにより導入
30% された風車が全体の65%を
20% プロファイ 占める
10%
0%
2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016 2017H1

*1出所:Wind Europe「The value of hedging」


43 平成29年度電気施設等の保安規制の合理化検討に係る調査(風力発電業界の構造調査)
2 欧州と日本の比較
欧州
風力発電市場の投資主体者は機関投資家に移りつつあり 日本
市場概況 メンテ体制 サードパーティ
提言

大手電力会社等は案件開発に注力している
風車運転を引き継ぐ事業者の多くは、発電事業及びO&M実績がなく自社でO&Mを実施できないため、サードパーティ事
業者へO&M委託する。今後同事例の増加に伴い、サードパーティ事業者のO&M市場も拡大すると推定される。

投資家の参入ステージ*1
参入ステージ毎のプロジェクト数(件) 投資傾向

案件開発から参入 1

1 大手電力会社 ファイナンスコストの安い
コーポレートファイナンスを使用して案件組成

開発した案件の一部の 大
独立系 シェアダウンや売却を行う 手
発電事業者 電


社 入札制度への移行に伴い売電収益が低下したことから
保険・証券等の シェアダウンやプロジェクト売却を行うことにより
金融系企業 投資回収期間の短縮を図っている
(デベロッパー化している)
機関投資家は大手電力会
社等の案件を買取り
2 インフラファンド 施工もしくは運転から参入
するケースが多い 2
機 大手電力会社の開発案件を引き継ぎ

年金基金 案件開発 投 風力発電事業を行う
ファンド 施工 資 ※ただしO&Mの実績・スキルが乏しいため
運転 家 O&Mを外部委託する場合が多い

0 500 1,000 1,500 2,000 2,500

*1出所:Wind Europe「The value of hedging」


44 平成29年度電気施設等の保安規制の合理化検討に係る調査(風力発電業界の構造調査)
2 欧州と日本の比較
欧州
上位4風車メーカーで約8割の販売シェアを占めており 日本
市場概況 メンテ体制 サードパーティ
提言

日本と比較すると 風車メーカーの絞り込みが進んでいる
上位4風車メーカーの日本市場における合計シェアは約5割であることから、欧州市場では風車メーカーの絞り込みが進
んでおり、1風車メーカーあたりの風車基数が多いと考えられる。

欧州風車メーカーの販売シェア*1
欧州風車メーカーの販売シェア(GWベース) 風車メーカー別シェア及び発電容量(GW)

順位 風車メーカー シェア 容量*1(GW)


Alstom Wind, 0.4% Others, 1.9%

Acciona, 0.4% 1 Enercon 26.8% 3.4


Gamesa, 2.0%
Enercon 2 Vestas 24.6% 3.1
,
Areva 4.0% 26.8%
GE Wind 3 Siemens 15.7% 2.0
4.5%
4 Senvion 11.4% 1.5
Nordex
8.3% 12.7 5 Nordex 8.3% 1.1
GW
Senvion 6 GE Wind 4.5% 0.6
11.4%
7 Areva 4.0% 0.5

8 Gamesa 2.0% 0.3

Vestas 9 Acciona 0.4% 0.1


Siemens
24.6%
15.7% 10 Alstom Wind 0.4% 0.1

11 Others 1.9% 0.2

*1出所:Global Wind Market Update FTI Consulting, Inc. (2014年の販売シェア)


45 平成29年度電気施設等の保安規制の合理化検討に係る調査(風力発電業界の構造調査)
2 欧州と日本の比較
欧州
我が国と比して 欧州の風車は大型化がより一層進んでおり 日本
市場概況 メンテ体制 サードパーティ
提言

今後も洋上風車導入の拡大に伴い この傾向は続くと考えられる
欧州ではFIT価格の低下に伴い、発電単価を下げるため風車の大型化が進んでおり、欧州の平均単機出力は陸上風車
が2.7MW、洋上風車が5.5MWである。 一方、我が国は陸上風車が2.1MW、洋上風車が3.5MWである。

欧州風車の単機出力(2017年)*1

MW / 基
4.0 日欧の単機出力差
3.4 3.4
0.6MW 3.1 3.1
3.0 2.9
3.0 2.7 2.6 2.7
2.4 2.4 2.4
2.1
2.0 日本平均
陸上 (2016)
2.1MW
風車 1.0

0.0
EU(平均) Germany UK France Ireland Finland Greece Belugium Denmark Sweden Austria Croatia Czech
Republic

MW / 基
7.0
6.0
6.0 5.5 5.6
日欧の単機出力差
5.0 2.0MW
4.0 3.3 3.5
日本平均
洋上 3.0 (2016)
2.0
風車 2.0 3.5MW

1.0
0.0
EU(平均) UK Germany Belgium Finland France

*1出所:Wind Europe「Wind in power 2017」


46 平成29年度電気施設等の保安規制の合理化検討に係る調査(風力発電業界の構造調査)
2 欧州と日本の比較
欧州
欧州のFIT価格の低下により 発電事業者・風車メーカーともに 日本 市場概況 メンテ体制 サードパーティ
提言

減収となるため O&Mサービスを中心に事業を多角化させている
FIT価格の低下による減収を補完するため、発電事業者・風車メーカーは自社の経験やノウハウを他社へ展開しO&Mな
どのサービス多角化により、新たな収益源を生み出そうとしている。

FIT価格低下やFIP移行が与える影響*1
FIT価格低下やFIP移行が与える影響 事業の多角化

案件開発し落札後に
デベロッパーサービス
プロジェクトを売却する

発 売電収入が低下し、売上を確保するた EPC 風力発電所のターンキー契約を提供する


電 め電気事業で培ったノウハウを活かし、

業 新たな事業を展開する必要に迫られて
者 いる O&Mサービス 風力発電所のO&Mサービスを提供する

卸市場の電力販売に関する
電力取引サービス
アドバイザリー業務を提供する
・FIT価格低下
・FIP移行
他社製風車の
他社製風車のO&Mサービスを提供する
O&Mサービス

車 機器価格の値下げ圧力が強まり風車の
メ 機器売りでは収益が見込めないため 発電量保証 一定期間の発電量を保証する

カ 長期O&Mサービスに注力している

風況等のデータを基に発電量を予測し
電力取引サービス
卸市場価格の変動を分析するサービスを提供する

*1出所:風力発電業界ヒアリングに基づきDeloitte分析
47 平成29年度電気施設等の保安規制の合理化検討に係る調査(風力発電業界の構造調査)
欧州
2.1 欧州の風力発電市場の概況 日本
市場概況 メンテ体制 サードパーティ
提言

セクションサマリー サマリー

風力発電の導入実績
 欧州では、 2017年3月時点で154GWの風車が稼働しており、国別ではドイツやスペインなどの西欧諸国、続いてスウェーデンなどの北
欧諸国に多く導入されている。
 Wind EuropeのCentral Scenarioによると、2030年には現在の導入量の約2倍に当たる323GWの風車導入が見込まれており、特に洋上
風車の導入が増加していく。

風力発電事業者
 欧州では陸上風車と洋上風車で投資主体が異なり、陸上風車は主に中小発電事業者や機関投資家により投資されている。この結果、陸
上風車の70%がプロファイを活用して導入されている。
 一方、洋上風車はプロジェクトの規模が大きく複雑であるため、資本力のある電力会社などの大手発電事業者が多く、コーポレートファイ
ナンスにより導入された風力発電が全体の65%を占める。

風車メーカー
 欧州では、上位4風車メーカー(Enercon、Vestas、Siemens、Senvion)で販売シェアのおよそ8割を占めており、我が国と比して風車メー
カーの絞り込みが進んでいる。また風車の大型化が進んでおり、平均の単機出力は、陸上風車2.7MW、洋上風車5.5MWであり、いずれ
も日本より規模が大きい。

欧州風力市場の動向

 FIT価格低下の影響により、大手電力会社は開発した案件の一部を運転開始後に機関投資家へシェアダウンする傾向が強まっている。
大手電力会社のデベロッパー化に伴い、風力発電市場の投資主体者は機関投資家に移りつつある。
 また収益源を多様化するため、発電事業者はデベロッパー事業だけでなく他社へのO&Mサービス提供などに事業の多角化を進めてお
り、風車メーカーも機器売りから長期O&Mサービスのパッケージ販売を拡大するなどビジネスモデルを転換している。
 機関投資家は一般的に風車のO&Mノウハウが乏しく、O&Mを外注する傾向が強いため、サードパーティ事業者などへのO&Mの外部委
託ビジネスの機会が増加すると考えられる。

48 平成29年度電気施設等の保安規制の合理化検討に係る調査(風力発電業界の構造調査)
2. 欧州と日本の比較

2.1 欧州の風力発電市場の概況
2.2 欧州のメンテナンス体制
2.3 欧州の風車メーカーとサードパーティ事業者の比較

49 平成29年度電気施設等の保安規制の合理化検討に係る調査(風力発電業界の構造調査)
2 欧州と日本の比較
欧州
風車メーカーだけでなくサードパーティ事業者へ 日本
市場概況 メンテ体制 サードパーティ
提言

メンテナンスを委託できることが日欧の大きな相違点である
欧州においても、我が国と同様に都度対応型が存在するが、欧州域内でサプライチェーンが完結しており部品調達期間
が短いため、我が国ほど稼働率は低下していない。

発電事業者の分類*1 稼働率への影響
メンテナンス
類型 サマリー ファイナンス 稼働率担保主体者 主体者 稼働率 日欧の相違点

大 リ
手 ス  ファイナンスは安価であるコーポ
発 ク コーポレート

レートファイナンスを使用する 日欧に
電 自社 自社
事 イ  自社のメンテナンス部隊を持ち自 ファイナンス 違いはない
業 ク 己責任で稼働率を高めている
者 型


 ファイナンスの違いによるメンテナ コーポレート 風車メーカー 風車メーカー

者 ンス手法への影響は小さい ファイナンス 欧州では、風車メー
or or カーだけでなくサード
依  他者(風車メーカー・サードパーティ
存 事業者)にメンテナンスを委託し稼
or パーティ事業者へメン
サードパー サードパー
中 型 働率を高めている テナンスを委託できる
プロファイ ティ事業者 ティ事業者




業  稼働率は担保されていないが、定期点
者 コーポレート
都 検や部品交換等のメンテナンスを必要
度 に応じ都度、サードパーティ事業者等 ファイナンス 不在 欧州域内でサプライ
不在


へ委託している
 欧州域内でサプライチェーンが完結し or 担保されていない
スポット 中 チェーンが完結しており
メンテナンス 部品調達期間が短い
型 ており、部品調達期間が短いため、我
が国ほど稼働率は低下しない プロファイ

*1出所:風力発電業界ヒアリングに基づきDeloitte分析(上記分類は大まかなものであり、必ずしもすべての発電事業者が上記類型に分類されるものではない)
50 平成29年度電気施設等の保安規制の合理化検討に係る調査(風力発電業界の構造調査)
2 欧州と日本の比較
欧州
我が国と異なり 欧州の他者依存型は 一定期間ごとに 日本
市場概況 メンテ体制 サードパーティ
提言

入札を繰り返し風車メーカーとサードパーティ事業者を競争させている
サードパーティ事業者が稼働率担保及びメンテナンスの主体者となれることを除けば、日欧の類型ごとの責任分担は大き
な違いがない。

類型ごとの責任分担*1
実施及び責任の主体者
補足
風力発電の事業期間(20年)



稼働率
担保 自社 日欧で相違点はない

テ  自社で稼働率を担保するが、初期の2~5年間の製
イ 品保証期間は風車メーカーに主要なメンテナンスを
ク 自社

メンテナンス 風車メーカー 任せる
主体者 (製品保証期間:2-5年) (簡易メンテナンスは外注)  保証期間満了後は自社でメンテナンスを行う

稼働率 風車メーカー 入
風車メーカー

風車メーカー

風車メーカー 欧州は入札で風車メーカー・サー
or or or


担保 (2-5年) 札
サードパーティ A

サードパーティ B

サードパーティ C ドパーティ事業者を活用する
依  初期の2~5年間の製品保証期間は風車メーカーにメンテ
存 風車メーカー 風車メーカー 風車メーカー ナンスを任せる
型 メンテナンス 風車メーカー 入 入 入  ファイナンスに関係なく稼働率担保及びメンテナンスの主
or or or
主体者 (製品保証期間:2-5年) 札 札 札 体者を自由に選択できるため、入札を繰り返し風車メー
サードパーティ A サードパーティ B サードパーティ C カーとサードパーティ事業者を競争させる

稼働率 担保主体者なし 稼働率の担保主体者はいないが




担保 (全事業期間) 稼働率への影響は小さい
対  全事業期間で稼働率の担保主体者はいない
応  初期の2~5年間の製品保証期間は風車メーカーにメンテ
型 メンテナンス 風車メーカー 自社もしくは外注 ナンスを任せる
主体者 (製品保証期間:2-5年) (必要最低限のメンテナンス体制)  メンテナンス要員を定常的に配置しないが、故障部品は
都度発注した場合でもダウンタイムが短い

*1出所:風力発電業界ヒアリングに基づきDeloitte分析
51 平成29年度電気施設等の保安規制の合理化検討に係る調査(風力発電業界の構造調査)
2 欧州と日本の比較
欧州
レンダーがO&M実績を評価するため 日本
市場概況 メンテ体制 サードパーティ
提言

サードパーティ事業者が稼働率保証を提供することが可能である
一方、日本のプロファイ基準は稼働率保証提供者の与信のみであり、O&M実績を評価しないため、サードパーティ事業者
は稼働率保証の提供が不可能である。

O&M事業者のレンダー評価実態(日欧比較)*1
欧州 日本

稼働率保証
提供者 風車メーカー サードパーティ事業者 風車メーカー

プロファイ 稼働率保証提供者 稼働率保証提供者


基準
O&M実績
の与信 の与信

O&M実績 稼働率保証提供者の
評価方法 評価方法なし
トラックレコード・認証取得の有無を基に評価を実施する

 風車メーカーが稼働率保証を提供する場合であっ
ても、サードパーティ事業者が風車メーカーからの
 レンダーがサードパーティ事業者のO&M実績を評
委託によりメンテナンスを実施している
実態 価するため、与信が低いサードパーティ事業者でも
 サードパーティ事業者は与信がないため、レンダー
稼働率保証の提供が可能である
から稼働率保証提供者として評価されず、風車
メーカーによる稼働率保証提供のみとなっている

*1出所:風力発電業界ヒアリングに基づきDeloitte分析
52 平成29年度電気施設等の保安規制の合理化検討に係る調査(風力発電業界の構造調査)
2 欧州と日本の比較
欧州
欧州のO&M事業者は トラックレコードとしてO&M実績を 日本
市場概況 メンテ体制
提言 サードパーティ

公開され また認証制度によりO&M品質の客観的な評価を受けることが可能である
欧州のレンダーはトラックレコードや認証制度から、O&M事業者のO&M実績及び品質を客観的かつ総合的に評価するこ
とが可能である。結果として、サードパーティ事業者はレンダーから稼働率保証の担保主体者として認められている。

O&M実績及び品質の評価方法*1
トラックレコード O&M事業者の認証制度

多数の民間企業が
民間企業 認 DNV・GL(ノルウェーの第三者認証機関)が
デ 発電所毎のデータを
ー (欧州) 証 O&M事業者の認証を実施している
タ 集積し有償で販売している




開 デンマークではデンマーク工科大学が 認
状 国際規格(IEC・ISO)を参照しつつ
デンマーク 国からを委託を受けて 証
況 DNV・GLが独自に作った基準により
工科大学 発電所毎のデータを管理し 基
準 O&Mサービスを総合評価する
無償で一般公開している
2
取 取* O&Mサービスメニュー・ガイドライン
得 得
可 可 故障・事故の報告体制及び対策
発電所毎の風車基数・容量・発電量・
能 能 部品ストックのリスト
な 稼働率・設置者など な
技術者の教育メニュー
情 情
報 報 メンテナンス契約書の内容など

レンダーがサードパーティ事業者の
結 レンダーがサードパーティ事業者の 結
果 果 O&Mケイパビリティ・組織体制などを
トラックレコードを確認できる
客観的かつ総合的に評価できる

*1出所:風力発電業界ヒアリングに基づきDeloitte分析
*2:情報の取得には、認証取得事業者もしくはDNV・GLへ直接依頼する必要がある
53 平成29年度電気施設等の保安規制の合理化検討に係る調査(風力発電業界の構造調査)
2 欧州と日本の比較
欧州
日欧ともに風車メーカーは情報開示に非積極的であるが 日本
市場概況 メンテ体制 サードパーティ
提言

欧州ではサードパーティ事業者から情報を入手できる
欧州と異なり、我が国のサードパーティ事業者は数が少なく、また風車メーカーからメンテナンスを委託される場合が多
い。このため、我が国ではサードパーティ事業者から保安に関する情報を取得するチャネルが細い。

O&M情報(日欧比較)*1

O&M事業者 情報開示の姿勢・現状 日欧比較 示唆

欧州 非積極的
標準ではない運転マニュアルやトラブルシューティングマ
風 日欧に違いはない
ニュアルなどは一般的には開示しない



日欧ともに風車メーカーは


ー 日本 非積極的 情報開示に非積極的である
標準ではない運転マニュアルやトラブルシューティングマ
ニュアルなどは一般的には開示しない

サ 欧州 積極的 サードパーティ事業者を
ー ヒアリングによると、風車メーカーとの差異化要因として 育成すれば発電事業者
ド 例えばトラブルシューティングの際に原因や対策などの 欧州の発電事業者は
パ 情報を開示するサードパーティ事業者も存在する が情報にアクセスしやすく
ー サードパーティ事業者を
テ なると考えられる

使用することで
事 日本 欧州ほど開示は進んでいない 情報の取得が可能である 多数のサードパーティ事業者が参入する
業 風車メーカーの下請けとしてメンテナンスを実施しているサード ことにより競争環境が整備され、サード
者 パーティ事業者が多く、独立したサードパーティ事業者が少ないた パーティ事業者が差異化要因として情報
め、欧州ほど開示インセンティブがないと考えられる 開示を積極的に行う可能性が高い

*1出所:風力発電業界ヒアリングに基づきDeloitte分析
54 平成29年度電気施設等の保安規制の合理化検討に係る調査(風力発電業界の構造調査)
2 欧州と日本の比較
欧州
欧州は域内でサプライチェーンが完結しており 日本
市場概況 メンテ体制 サードパーティ
提言

部品調達期間が短いため 稼働率を高く保つことが可能である
一方、我が国のプレーヤーは海外からの部品調達が必要であり1~3ヶ月を要するため、ダウンタイムが長期化し稼働率低
下の要因となっている。

サプライチェーンの欧州比較*1
欧州 日本

発電事業者及び風車メーカーは 欧州から調達
指定期日内に部品を供給させる 2~3ヶ月
契約をサプライヤーと結ぶ場合も
ある

欧州域内で完結
数日~1ヶ月

中国から調達
1~2ヶ月

発電事業者が指定期日内に部品
を供給させる契約をサプライヤー
と結ぶことは稀である

欧州域内でサプライチェーンが完結しており 欧州や中国等の海外から部品を調達する必要があり
数日~1ヶ月で部品調達が可能である 船便で1~3ヶ月の期間を要する

*1出所:風力発電業界ヒアリングに基づきDeloitte分析
55 平成29年度電気施設等の保安規制の合理化検討に係る調査(風力発電業界の構造調査)
2 欧州と日本の比較
欧州
欧州はサプライチェーンの上流側で部品ストックを 日本
市場概況 メンテ体制 サードパーティ
提言

多く確保しているため下流側の発電事業者は部品をストックする必要がない
一方、我が国はサプライヤーや風車メーカーの部品ストックが少ないため、発電事業者自ら部品をストックせざるをえない
構造となっており、中小発電事業者にとって部品ストックを確保するのが難しい。

部品ストックの保管先(日欧比較)*1
サプライチェーン
サプライヤー 風車メーカー 物流 発電事業者(ユーザー) 評価
部 上流側で部品をストックしている




欧 ク 数日~1ヶ月
州 所

1 2 3 4 多数のユーザーが部
特 部品供給契約を結んでいる 短期間 少ない 品を使用できる
上流側で部品をストックしており、物
徴 発電事業者は風車メーカーまたはサードパーティ事業者を通じて サプライチェーンが域内で
流期間も短いためユーザーが部品
サプライヤーと指定期日内に部品を供給させる契約を結んでいる 完結している
をストックする必要性が低い

部 下流側で部品をストックしている


ト 1~3ヶ月

日 ク
本 所

1 2 3 4 ユーザー間で部品を融
通できないため、業界
部品供給契約を結ぶことは稀である 長期間 多い 全体としてのストック効

サプライチェーンが国内で 上流側で部品をストックしておらず物 率化ができない
徴 発電事業者が風車メーカーまたはサードパーティ事業者を通じて
完結しておらず 流期間も長いためユーザーが部品
指定期日内に部品を供給させる契約を結ぶことは稀である
海外から部品調達が必要である ストックしなければならない

*1出所:風力発電業界ヒアリングに基づきDeloitte分析
56 平成29年度電気施設等の保安規制の合理化検討に係る調査(風力発電業界の構造調査)
2 欧州と日本の比較
欧州
ダウンタイムの長期化要因は複数あり 日本
市場概況 メンテ体制
提言 サードパーティ

発電事業者や風車メーカーの自社努力だけでは 本質的な解決が難しいものが多い
我が国のダウンタイムが長期化しやすい要因は、サプライチェーンの脆弱さ・許認可取得時間・重機数の少なさ・中古市場
がないことなど複数の要因が存在し、その多くは発電事業者や風車メーカー独自では解決が困難である。

ダウンタイムの長期化要因(日欧比較)*1

ダウンタイム サプライチェーン リペア


故障時期の予測
長期化要因 輸送 許認可 重機手配 (部品修理・再利用)

 中古市場が存在し部
品交換で取り出した部
欧州 日本と比して欧州は規 品をリペアし再利用す
サプライチェーンが域
制緩和が進んでおり 多数の重機が市場に ることが可能である
内で完結しているため
許認可も短期間で下り 存在する
輸送時間は短い  部品交換費用が安い
 風車メーカーはCMS る
に基づき、高い精度で ため、故障前に予防的
故障時期の予測が可 に部品を交換しやすい
能である

 その他事業者は過去
の故障統計に基づき、  中古市場がないためリ
部品交換サイクルを決 ペアしても販売するこ
定している 大型クレーン・輸送ト とができない
日本 海外から部品を調達す 信号機の移設や農地
レーラーの数が少なく
る必要があるため 転用などの許認可の取
発電事業者ごとの 手配に時間とコストを要  部品交換費用が高い
輸送時間は長い 得に時間を要する*2 ため、予防的な部品交
予測精度差異は大きい する*2
換を高頻度で行うこと
は難しい

*1出所:風力発電業界ヒアリングに基づきDeloitte分析
*2突発的な工事などは事前に許認可や重機手配の手続きが難しい
57 平成29年度電気施設等の保安規制の合理化検討に係る調査(風力発電業界の構造調査)
欧州
2.2 欧州のメンテナンス体制 日本
市場概況 メンテ体制 サードパーティ
提言

セクションサマリー サマリー

発電事業者の分類
 欧州においても我が国と同様に、発電事業者はリスクテイク型、他者依存型、都度対応型の3種に分類される。
 我が国との大きな違いは、欧州では自社でメンテナンスができない発電事業者は、風車メーカーだけでなくサードパーティ事業者へメンテ
ナンスを委託するという選択肢を持っている点である。(他者依存型)
 また、欧州においても都度対応型が存在するが、部品の調達期間が短く我が国ほど稼働率は低下しない。

サードパーティ事業者の普及背景
 我が国では、与信の問題から、レンダーがサードパーティ事業者による稼働率保証提供を認めていないが、欧州では与信だけでなくO&M
実績及び品質を評価する仕組みがあり、サードパーティ事業者による稼働率保証提供が認められている。その結果、サードパーティ事業
者の参入が促進され、O&M市場の競争環境が整備されている。
 O&M実績評価方法として、欧州では発電所ごとの稼働実績が管理・公開されており、第三者がメンテナンス事業者のO&M実績を確認す
ることができる。さらに、メンテナンス事業者の認証制度が存在し、メンテナンス事業者のO&Mケイパビリティや組織体制を評価することが
可能である。これらを組み合わせることで、レンダーがメンテナンス事業者のO&M実績及び品質を評価できる仕組みが整っている。
 日欧ともに風車メーカーが積極的に情報を開示しない点は同様である。そのような状況のなか、欧州のサードパーティ事業者は風車メー
カーと競争するうえでの差異化要因として、トラブルシューティングの原因究明や対策に関する情報開示を積極的に行う姿勢をとってお
り、これにより発電事業者が保安に関する情報を取得しやすくなっている。

ダウンタイムの短縮

 欧州はサプライチェーンが域内で完結しており、風車メーカーや発電事業者がサプライヤーと調達期間を指定したうえで部品供給契約を
結ぶことが可能であり、サプライヤーに部品をストックさせることで、短期間で部品を調達できる体制を整えている。
 一方我が国では、サプライヤーが国内に多く存在しないことから、発電事業者が部品をストックする必要がある。この場合、ユーザー間で
部品を融通できないため、業界全体で見るとストック効率が悪い。
 サプライチェーンの他にも、許認可取得や重機手配に時間がかかること、及び中古市場が存在しないため予防的な部品交換を高頻度で
行えないことなどが、我が国の風車のダウンタイムが長期化する要因となっている。

58 平成29年度電気施設等の保安規制の合理化検討に係る調査(風力発電業界の構造調査)
2. 欧州と日本の比較

2.1 欧州の風力発電市場の概況
2.2 欧州のメンテナンス体制
2.3 欧州の風車メーカーとサードパーティ事業者の比較

59 平成29年度電気施設等の保安規制の合理化検討に係る調査(風力発電業界の構造調査)
2 欧州と日本の比較
欧州
欧州では 多数のサードパーティ事業者が存在しており 日本
市場概況 メンテ体制 サードパーティ
提言

最大手の事業者は日本市場の3倍程度の風車へO&Mサービスを提供している
我が国と比して欧州は、風車の導入基数が多く、ルートメンテナンスなどの効率的なO&M実施が可能である。その結果、
技術者1人当たりのO&M可能基数は10基程度と高水準である。

欧州のO&M市場シェア*1
O&M市場シェア サードパーティ最大手のO&M契約量
GW
イメージ サードパーティ事業者 180
O&M可能基数
160 154
Deutche 最大手 10基/作業員
Windtechnik
140
導入基数が多い
Connected
Wind Services 120

100 欧州シェア
サードパー 6.6%
Total Wind O&M可能基数
ティ事業者
80
3基/作業員
風車メーカー Ingeteam 準大手 60
導入基数が少ない
自社O&M 40
など Availon
20 10.2
3.3
All NRG 0
欧州 サードパーティの 日本
O&M契約量(最大手)
Others その他 Deutche
Windtechnik

多数のサードパーティ事業者が存在し サードパーティ事業者1社で
発電事業者の選択肢は豊富にある 日本市場の3倍以上の風車へO&Mサービスを提供している

*1出所:風力発電業界ヒアリングに基づきDeloitte分析(欧州サードパーティ事業者よりO&M市場シェア及びO&M作業員一人当たりのメンテナンス基数をヒアリング)
60 平成29年度電気施設等の保安規制の合理化検討に係る調査(風力発電業界の構造調査)
2 欧州と日本の比較
欧州
サードパーティ事業者は風車メーカーから 日本
市場概況 メンテ体制 サードパーティ
提言

メンテナンス技術者を引き抜き サービスラインを拡大している
欧州ではM&Aや転職が盛んであり、メンテナンス技術者の流動性が高いため、意図的に技術者を引き抜くだけでなく、偶
発的に技術者を受け入れることにより規模を拡大できる土壌がある。

サードパーティ事業者A社の出自(O&Mケイパビリティの蓄積経緯)*1

2000~ 2005~ 2010~ 2015~

VestasのM&Aにより Siemensの事務所移転 今後も他風車メーカー


他社風車の
NEG Micon の技術者 により、地元に残った技 から技術者を獲得し
メンテナンス開始
を獲得 術者を獲得 規模を拡大させていく
出自
(技術者獲得)

*2
フルメンテナ
ンス
フルメンテナンス*2

トラブル
ー シューティン トラブルシューティング
ビ グ

ラ 部品修理 部品修理


定期点検 定期点検

 Siemensの事務所移転により、地元
 もともと自社で発電事業を行い  Vestasに統合されたNEG Miconの  技術者の引き抜きや受け入れを継続
に残った技術者を受け入れ
自社のメンテナンス部隊を 技術者を引き抜き、Vestas製風車の 的に行い、技術者の増員やメンテナ
Siemens製風車のメンテナンスノウ
解 抱えていた メンテナンスノウハウを獲得した
ハウを獲得した
ンスサービスを拡大させている

 そのケイパビリティを活かして他社へ  定期点検のみではなく部品修理サー  フルメンテナンスサービスの
 トラブルシューティングの
O&Mサービスの提供を開始した ビスの提供を開始した 提供を開始している
提供を開始した

*1出所:風力発電業界ヒアリングに基づきDeloitte分析
*2:定期点検・部品修理・トラブルシューティングに加えて稼働率保証や発電量保証などすべてを含めたメンテナンスサービス
61 平成29年度電気施設等の保安規制の合理化検討に係る調査(風力発電業界の構造調査)
2 欧州と日本の比較
欧州
風車メーカー・サードパーティ事業者は 日本
市場概況 メンテ体制 サードパーティ
提言

それぞれのケイパビリティを活用しO&Mの効率化を図っている
風車メーカーは精度の高い故障予測技術を持ち、また風況予測から発電量への影響が少ない時期を予測し部品交換を
行っている。一方でサードパーティ事業者は固定されたルートメンテナンスを持ち効率的に巡回を行っている。

部品交換方法の違いによる提供価格への影響*1
部品交換スケジュール(同一期間) 交換時期と工夫

オンデマンド型 SCADAデータだけでなく部品状態に関する

CBMを用いて :発電事業 換 150~200点のデータを取得し
故障発生時期を予測するため :故障 時
(未発生)
CBMで故障時期を予測するため
部品寿命のギリギリまで 期 部品寿命の直前まで部品使用が可能である
部品を使用できる
風車
メーカー 運開 交換 (故障) 交換 (故障)


換 サイト毎の風況を予測し
の 交換作業が発電量に与える影響を
工 最小化するべくメンテナンス対象の風車を決定する
部品交換期間が長い 夫

ルートメンテナンス型
交 SCADAデータに含まれる5~6点の振動データや

ルートメンテナンスで 時 技術者の経験から故障の発生時期を予測して部品交換を行う
早期に部品交換する
期 (予測の精度は風車メーカーに劣る)
サード
パーティ
事業者 運開 交換 (故障) 交換 (故障) 交換

換 移動時間が最短となるようなメンテナンスルートを設計し
の 効率良く風車を巡回して部品交換を行う
工 (ルートメンテナンス)
部品交換期間が短い 夫

*1出所:風力発電業界ヒアリングに基づきDeloitte分析
62 平成29年度電気施設等の保安規制の合理化検討に係る調査(風力発電業界の構造調査)
2 欧州と日本の比較
欧州
風車メーカーは CBMを差別化要因として 日本
市場概況 メンテ体制 サードパーティ
提言

精度の高い故障予測技術を用いて 効率的に稼働率を高めることができる
交換費用の高いキーコンポーネントは自社で部品をストックするのではなくサプライヤーと契約を結び代理で保管させるこ
とが多いため、CBMで故障時期を特定し早期に部品調達を行うことが重要である。

メンテナンスの基本概念と実施状況*1 実施状況
メンテナンスの基本概念 類型 部品例 メンテナンス方針 風車メーカー サードパーティ


Condition 発電量への影響が大きく 取得できる 取得できる
キーコンポー データ量が多 データ量が少
Based 交換費用も高いため
ネント いため予測精 なく、経験に
Maintenance 状態基準保全が最適である
度が高い 頼っている


Ⅱ Ⅰ Condition Ⅱ
Preventive Based 発電量への影響は大きいが
発 Maintenance Preventive オイルや 交換費用が安いため
電 Maintenance
量 Maintenance グリスなど 事前保守が最適であり
へ 高頻度で部品を交換する
の 相違なし
影 Ⅳ Ⅲ
響 Corrective Periodical
Maintenance Maintenance Ⅲ
小 発電量への影響が小さいため特別な
Periodical 電力機器 対策はしないが、交換費用が高いた
低 交換費用 高 Maintenance など*2 め不具合等を早期発見できるよう定
期点検を行う
相違なし


電気スイッチ 発電量への影響が小さく
Corrective
など 交換費用も安いため
Maintenance
の簡易部品 事後保守で良い
相違なし

*1出所:風力発電業界ヒアリングに基づきDeloitte分析
*2:欧州では通常、電力機器に予備回路を設けており、特定回路が故障しても運転が可能である。
63 平成29年度電気施設等の保安規制の合理化検討に係る調査(風力発電業界の構造調査)
2 欧州と日本の比較
欧州
多数のサードパーティ事業者が存在する欧州では長期O&M 日本
市場概況 メンテ体制 サードパーティ
提言

サービスの競争環境が整備されており 市場全体の保安レベルが向上している
我が国と同じく、欧州の風車メーカーもO&Mコストは高く、情報開示に非積極的であったが、サードパーティ事業者の増加
によりO&Mコストはおよそ30%減額*1され、情報開示も促進されつつある。

競争によるO&Mサービスレベルの変化*2
価格 品質 情報の開示

高い 高い 非積極的
風車
メーカー  データ量を多く保有しているため  故障情報の流出リスクを懸念している
 風力発電市場のプライスリーダーである CBMを用いた故障時期の予測精度が高い  部品や制御方法の変更ごとに
 発電量への影響を最小化した部品交換作業を行う マニュアルの更新が必要となる

中程度 積極的
サード 安い
パーティ  コスト削減のため修理部品を多く使い
 風車メーカー出身の技術者などから情報を引き抜き
事業者  風車メーカーより安く入札される
品質が低下する場合もある
自社で独自にドキュメントを作成し発電事業者に開
 サードパーティ事業者によってノウハウのばらつき
示している
がある

O&Mコストは
2年間で30%以上減額*1
競争の O&Mサービスラインが多様化しており サードパーティ事業者は差別化ポイントとして
結果 発電事業者の選択肢が広がっている 情報をより積極的に開示しようとしている

競争前 競争後

*1:ヒアリングによれば、サードパーティ事業者がO&M委託の入札に参加した場合、3割以上コストが削減されたとのことである
*2出所:風力発電業界ヒアリングに基づきDeloitte分析
64 平成29年度電気施設等の保安規制の合理化検討に係る調査(風力発電業界の構造調査)
欧州
2.3 欧州の風車メーカーとサードパーティ事業者の比較 日本
市場概況 メンテ体制 サードパーティ
提言

セクションサマリー サマリー

サードパーティ事業者の提供サービスの拡大

 メンテナンス技術者の流動性が高い欧州では、風車メーカーの技術者の引き抜きや風車メーカーの事業所移転により地元に残った技術
者を受け入れるなどして、多数のサードパーティ事業者が市場に参入しており、発電事業者のO&M委託の選択肢は豊富にある。
 欧州では自社でO&Mを実施する事業者は少なく、風車メーカーまたはサードパーティ事業者へO&M委託する場合が多い。例えば、最大
手のサードパーティ事業者は、日本の風力発電総導入量の3倍以上の風車を対象にO&Mサービスを提供している。
 サードパーティ事業者は、風車メーカーの技術者や自社の事業経験を通じてO&Mケイパビリティを蓄積し、稼働率保証や発電量保証など
を含めたフルメンテナンスサービスを提供するまでサービスラインを拡大している。

風車メーカーとサードパーティ事業者の違い
 風車メーカーは世界中に納入した風車の振動データ等を収集・比較することで、CBMを実現している。精度の高い故障時期の予測が可
能であるため、メンテナンス人員の適正配置や早期に部品を調達するなどしてO&Mの効率を高めている。
 一方サードパーティ事業者は、SCADAデータや技術者の経験から故障時期を予測しており、その精度は風車メーカーには劣る。しかし、
ルートメンテナンスやリペア部品の積極的な活用により、メンテナンスコストを低く抑えO&Mの効率を高めている。

競争環境整備による効果

 ヒアリングによれば、 欧州ではO&M委託の入札にサードパーティ事業者が参加した場合、風車メーカーとサードパーティ事業者の競争に
より、O&Mコストが3割以上削減されたとのことである。
 またサードパーティ事業者は、風車メーカーとの競争における差異化要因として、トラブルシューティングの原因究明や対策などの情報を
開示している。その結果、市場全体の情報の透明性が高まるなど保安レベルが向上しているとの指摘もあった。
 このように欧州では、サードパーティ事業者の参入により、O&Mに関する情報の透明性やO&Mの効率の向上が図られている。

65 平成29年度電気施設等の保安規制の合理化検討に係る調査(風力発電業界の構造調査)
3. まとめ及び提言

66 平成29年度電気施設等の保安規制の合理化検討に係る調査(風力発電業界の構造調査)
3 まとめ及び提言
日本 欧州 提言

本調査の目的に対する調査結果

我が国の風力発電業界の構造及び課題
 我が国の風車の約7割は海外製であり、ベアリング、ギアボックス、ブレード、発電機といった発電に大きな影響を与えるキーコンポーネン
トは主に欧州・中国で製造されているため、部品調達に1~3ヵ月の期間が必要である。
 ダウンタイムの長期化要因のうち約半数は部品が占めており、故障・事故発生後の速やかな部品調達・交換が難しいことを示している。
 大手発電事業者は保有基数が多いことから自社で部品をストックしており、自社でO&Mを実施することで高い稼働率を維持している。
 一方、中小発電事業者は保有基数が少なく部品をストックする合理性が低く、FIT以前に設置された風車の多くはメンテナンス要員を定常
的に配置しておらず、故障・事故発生時に都度風車メーカーへ対応を要請している。
 我が国の風力発電業界の課題は、FIT以前に設置された風車を中心に、中小発電事業者が適切なメンテナンスを実施できないケースが
存在することである。
 また、自社でメンテナンスノウハウを蓄積することが困難な中小発電事業者にとって、メンテナンスの外注先が風車メーカーしか無く、選択
肢が限られていることが課題である。

事故や故障の防止または程度軽減のために必要な情報

 重大事故発生時の対処方法が記されたトラブルシューティングマニュアルは、通常は風車メーカーから開示されず、ヒアリングより事故発
生時に迅速な対応ができないケースが生じることが確認された。
 また我が国は、欧州より基準風速の大きい地域や乱流の発生しやすい山岳地帯など標準的ではないサイトが多く、専用運転マニュアル
が必要であるが、それらの取得状況は十分でなく、現状は発電事業者のノウハウに依存している。
 風力発電のメンテナンスには、風車メーカーが保有する高度なノウハウや情報取得が必要だが、風車メーカーの開示情報は限られてお
り、それら情報を取得するには、部品調達のために海外サプライヤーを開拓するリソースや、状態基準保全や予防保全を行うに値する風
車基数の保有が必要となり、リソースや保有基数が少ない中小発電事業者にとってはハードルが高い。

67 平成29年度電気施設等の保安規制の合理化検討に係る調査(風力発電業界の構造調査)
3 まとめ及び提言
日本 欧州 提言

課題解決のための提言
長期O&Mサービスの競争環境の整備
 風車メーカーはかつて売り切り型のビジネスモデルであったが、2012年頃より長期O&Mサービスをパッケージ化したビジネスモデルに転
換している。長期O&Mサービスが一般化すればメンテナンスノウハウに乏しい中小発電事業者の保安レベルが向上すると考えられる。
 欧州では風車メーカー以外にも、サードパーティ事業者が長期稼働率保証サービスを提供しており、風車メーカーとサードパーティ事業者
の間で価格競争が起きていることに着目すべきである。また、ヒアリングによれば、風車メーカーがトラブルシューティング等のノウハウの
開示に積極的ではない点を日欧双方のユーザーが指摘しているが、サードパーティ事業者が参入することで情報開示が進みやすくなっ
ているとの指摘もある。
 我が国の中小発電事業者が自社で高度なメンテナンスを実施することが困難である実態を踏まえると、長期O&Mサービスへの加入を促
すことが望ましいと考えられるが、その際のサービスの提供主体として、風車メーカーに加えて、サードパーティ事業者を育成し、競争環
境を整備すべきである。競争環境を整備することで、トラブルシューティングなどの情報開示を進め、より安全で効率的なO&Mの実現に資
すると考えられる。

競争環境整備のために①~O&M実績及び品質の評価手法の確立~

 我が国でサードパーティ事業者の長期稼働率保証が実現できていない一因として、レンダーが与信の観点でサードパーティ事業者による
稼働率保証を認めていないことが挙げられる。
 欧州では、発電所ごとの稼働実績のデータベース整備が進んでおり、サードパーティ事業者のO&M実績を適切に評価できる環境が整え
られている。また第三者認証機関が、優れたO&Mケイパビリティ・組織体制を有するメンテナンス事業者に対して認証を付与しており、そ
の認証取得状況からレンダーがサードパーティ事業者のO&M品質を考慮した融資の判断を行うことが可能である。
 我が国においても、サードパーティ事業者のO&M実績及び品質を第三者が評価できる仕組みを構築できれば、サードパーティ事業者の
育成や保安レベルの向上に資すると考えられる。

競争環境整備のために②~ O&M効率化のための機種統一~

 我が国では約2,000本の風車に対し200機種以上が導入されており、機種統一が図れていないことがO&Mの効率を落とす一因になって
いる。これは2000年代前半までに、地方自治体などにより多くの小規模風車が全国に分散して導入された経緯による。
 これらの風車が2020年頃から建て替え時期に入るが、効率的にO&Mを実施するためには、隣接する地域で同一機種が導入されやすい
仕組みを導入することが望ましい。

68 平成29年度電気施設等の保安規制の合理化検討に係る調査(風力発電業界の構造調査)
用語集

69 平成29年度電気施設等の保安規制の合理化検討に係る調査(風力発電業界の構造調査)
用語集(1/2)

頁 用語 説明

固定価格買取制度。再生可能エネルギ―の普及を図るため、発電された再生可能エネルギー電
4 FIT(Feed-in Tariff) 気を一定期間、電力会社に固定価格で買い取ることを義務付けた制度。我が国では2012年7月に
適用を開始した。

メンテナンスを実施する第三者企業。当事者(発電事業者・風車メーカー)から独立しており、当事
4 独立系メンテナンス事業者 者とメンテナンス契約を結び、メンテナンスサービスを提供する。本報告書では、独立系メンテナン
ス事業者を「サードパーティ事業者」と記す。

8 CAGR(Compound Annual Growth Rate) 年平均成長率。指定した期間に亘る成長率から算出した1年あたりの成長率。


8 JWPA(Japan Wind Power Association) 一般社団法人日本風力発電協会。
11 専業デベロッパー 風力発電事業を専業とする開発業者(デベロッパー)。
風車メーカーの製品保証期間を超える期間(10年以上)において、提供されるオペレーションやメン
16 長期O&Mサービス
テナンスのサービス。
21 ダウンタイム 故障から復旧までに要する時間。

風車の構成部品の中で、故障や事故の発生によるダウンタイム長期化への影響が特に大きい部
22 キーコンポーネント
品。
23 M&A(Merger And Acquisition) 企業の合併や買収の総称。

風車の回転力を、ギアボックスを介さずに直接発電機に伝達する方式であり、ギアボックスは不要
23 ダイレクトドライブ
である。
28 コーポレートファイナンス 事業者の信用力や担保をもとに必要な資金を金融機関や金融市場から調達する方法。
28 プロジェクトファイナンス 事業自体から生じるキャッシュフローをもとに資金を調達する方法。

70 平成29年度電気施設等の保安規制の合理化検討に係る調査(風力発電業界の構造調査)
用語集(2/2)

頁 用語 説明
29 ケイパビリティ 企業が全体としてもつ組織的な能力、あるいはその企業に固有の組織的な強み。
30 レンダー 融資を行う金融機関。
状態基準保全または状態監視保全と呼ばれる。機器の状態を監視し、その劣化状況から適切なタ
33 CBM(Condition Based Maintenance)
イミングで保守を実施する。
33 CMS(Condition Monitoring System) 振動や温度などから部品の状態や劣化度合などを早期に検出するシステム。
SCADA(Supervisory Control And Data
33 産業制御システムの一種であり、風車の回転数・ナセル角・発電量等のデータを集計する。
Acquisition)
IEC(International Electrotechnical
33 国際電気標準会議。電気および電気技術分野の規格標準化団体。
Comission)
当該事業の運営に必要な経営資源。本報告書では風車メンテナンスを行う人員やノウハウのこと
34 リソース
を指す。
35 レトロフィット 既設のシステム・製品の延命や機能向上のため、構成部品の一部を更新すること。
再生可能エネルギー電気を卸電力市場に直接販売し、卸電力価格に市場プレミアムを上乗せする
47 FIP(Feed-in Premium)
方式。
過去の実績や履歴。例えば、発電量実績・稼働率実績・故障履歴・メンテナンス実施内容などの
52 トラックレコード
データが該当し、金融機関の融資審査時に必要書類として要求される場合がある。
53 DNV・GL ノルウェー・オスロに本部を置く自主独立財団・第三者認証機関。
定期点検・部品修理・トラブルシューティングに加えて稼働率保証や発電量保証などすべてを含め
61 フルメンテナンス
たメンテナンスサービス。
メンテナンス契約を交わした顧客の風車について、移動時間が最短となるようなメンテナンスルート
62 ルートメンテナンス
を設計し、効率良く風車を巡回して部品交換等のメンテナンスを実施すること。

71 平成29年度電気施設等の保安規制の合理化検討に係る調査(風力発電業界の構造調査)
本件に関するお問い合わせ先

デロイト トーマツ コンサルティング合同会社


Energy and Resources ユニット

マネジャー
榎本

Email : teenomoto@tohmatsu.co.jp

〒100-6390 東京都千代田区丸の内 2-4-1 丸の内ビルディング


www.deloitte.com/jp/dtc

72 平成29年度電気施設等の保安規制の合理化検討に係る調査(風力発電業界の構造調査)
デロイト トーマツ グループは日本におけるデロイト トウシュ トーマツ リミテッド(英国の法令に基づく保証有限責任会社)のメンバーファーム及びそのグループ法人(有限責
任監査法人トーマツ、デロイト トーマツ コンサルティング合同会社、デロイト トーマツ ファイナンシャルアドバイザリー合同会社、デロイト トーマツ税理士法人及びDT弁護
士法人を含む)の総称です。デロイト トーマツ グループは日本で最大級のビジネスプロフェッショナルグループのひとつであり、各法人がそれぞれの適用法令に従い、監査、
税務、法務、コンサルティング、ファイナンシャルアドバイザリー等を提供しています。また、国内約40都市に約8,700名の専門家(公認会計士、税理士、弁護士、コンサルタ
ントなど)を擁し、多国籍企業や主要な日本企業をクライアントとしています。詳細はデロイト トーマツ グループWebサイト(www.deloitte.com/jp)をご覧ください。

Deloitte(デロイト)は、監査、コンサルティング、ファイナンシャルアドバイザリーサービス、リスクマネジメント、税務及びこれらに関連するサービスを、さまざまな業種にわた
る上場・非上場のクライアントに提供しています。全世界150を超える国・地域のメンバーファームのネットワークを通じ、デロイトは、高度に複合化されたビジネスに取り組
むクライアントに向けて、深い洞察に基づき、世界最高水準の陣容をもって高品質なサービスをFortune Global 500® の8割の企業に提供しています。“Making an
impact that matters”を自らの使命とするデロイトの約225,000名の専門家については、Facebook、LinkedIn、Twitterもご覧ください。

Deloitte(デロイト)とは、英国の法令に基づく保証有限責任会社であるデロイト トウシュ トーマツ リミテッド(“DTTL”)ならびにそのネットワーク組織を構成するメンバー


ファーム及びその関係会社のひとつまたは複数を指します。DTTL及び各メンバーファームはそれぞれ法的に独立した別個の組織体です。DTTL(または“Deloitte
Global”)はクライアントへのサービス提供を行いません。Deloitteのメンバーファームによるグローバルネットワークの詳細は www.deloitte.com/jp/about をご覧ください。

本資料は皆様への情報提供として一般的な情報を掲載するのみであり、その性質上、特定の個人や事業体に具体的に適用される個別の事情に対応するものではありま
せん。また、本資料の作成または発行後に、関連する制度その他の適用の前提となる状況について、変動を生じる可能性もあります。個別の事案に適用するためには、当
該時点で有効とされる内容により結論等を異にする可能性があることをご留意いただき、本資料の記載のみに依拠して意思決定・行動をされることなく、適用に関する具体
的事案をもとに適切な専門家にご相談ください。
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For information, contact Deloitte Tohmatsu Consulting LLC. Deloitte Touche Tohmatsu Limited
二次利用不可リスト

報告書の題名 風力発電業界の構造調査

平成29年度電気施設等の保安規制の合理化検討に係る調査
委託事業名 風力発電業界の構造調査

受注事業者名 デロイト トーマツ コンサルティング合同会社

頁 図表番号 タイトル
8 図1 風力発電導入量の推移(発電容量)
9 図2 都道府県別の導入量
9 図3 地域別の導入量(MW)
10 図4 将来の導入見込み
10 図5 都道府県別の新規見込み容量(MW)
11 図6 発電事業者の割合(MWベース)
11 図7 発電事業者の割合(基数ベース)
12 図8 風力発電導入基数と発電事業者内訳
13 図9 風車導入フローチャート(導入基数)
13 図10 風車導入フローチャート(単機出力)
14 図11 保有基数シェア
15 図12 風車メーカーシェア(基数ベース)
15 図13 風車メーカーシェア(MWベース)
16 図14 主な風車メーカーのM&A推移
19 図15 故障・事故の発生要因(件数)
20 図16 設置年別の設備利用率
21 図17 ダウンタイムが長期化した要因とその内容
22 図18 キーコンポーネントの特定
23 図19 風車メーカーのサプライチェーン
24 図20 キーコンポーネントの調達及び保管情報
25 図21 保有基数と稼働率の関係
28 図22 発電事業者の分類
37 図23 事業者の分類と課題
38 図24 発電事業者の分類別のメンテナンス人員数

74 平成29年度電気施設等の保安規制の合理化検討に係る調査(風力発電業界の構造調査)
二次利用不可リスト

報告書の題名 風力発電業界の構造調査

平成29年度電気施設等の保安規制の合理化検討に係る調査
委託事業名 風力発電業界の構造調査

受注事業者名 デロイト トーマツ コンサルティング合同会社

頁 図表番号 タイトル
41 図25 風力発電導入量の推移(発電容量)
42 図26 国別の風力発電導入実績(発電容量GW)
43 図27 欧州のファイナンス組成の推移(陸上風車)
43 図28 欧州のファイナンス組成の推移(洋上風車)
44 図29 参入ステージ毎のプロジェクト数(件)
45 図30 欧州風車メーカーの販売シェア(GWベース)
46 図31 欧州風車の短期出力(2017年・陸上風車)
46 図32 欧州風車の短期出力(2017年・洋上風車)
60 図33 サードパーティ最大手のO&M契約量

75 平成29年度電気施設等の保安規制の合理化検討に係る調査(風力発電業界の構造調査)

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