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福島FACE 第39回 2019/06/08 大学実習とは異次元の 学生時代の学び方

あらゆるセッティングで 基礎医学

縦横無尽に活躍するための 臨床推論学 臨床現場で役立つ


解剖学、組織学、生理学、生化学
微生物、免疫学、病理学、薬理学

主訴以外の設定が変わると何がおきるのか!? 臨床医学
診断推論とは? 内科学、外科学、専門医学
勤医協札幌病院 副院⾧
内科・総合診療科 科⾧ 臨床実習
佐藤 健太 主に大学の各科をローテート
dr.kenta.sato@gmail.com
総合内科専門医、家庭医療専門医、リハビリ認定医、産業医
北海道勤医協 総合診療・家庭医療・医学教育センター (GPMEC)

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大病院の臨床実習 研修医 実際の臨床現場 今日の目的

病気が完成してから入院 漠然とした症状で受診し、何科の病気か不明 ①大学医療とは異なる、


複数医療機関を経て、外来で検査もして
該当科の疾患に絞れたら入院 ヒントなしでイチから診察 現場の診断推論を理解する
検査結果が揃う前に治療開始
学生の学習は、後追い・答え合わせ
病気は完成しており、外来で診断もついている 一発目の検査や治療を間違えても
②病気以外の勉強も必要なことを痛感する
・患者の年齢・性別
残りの精密検査までの間に答え合わせ 「やりなおし」はきかない! ・診療する場所の地域性や医療資源
・患者の都合や価値観の影響

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ケースA ケースA
急性右季肋部痛 × 中年女性 急性右季肋部痛 × 中年女性
①右季肋部痛 × 年齢  55歳女性  バイタルサイン
 高脂血症・肥満・肝障害の既往 JCS0、BP120/80、HR100
 深夜3時間前に発症し、 RR22、SpO2 97、 BT37.3
②肺炎患者 × 地域性 増悪し続ける、
心窩部~右季肋部の、
 苦悶様表情、お腹をかかえ、じっと痛がっている
非移動性の持続痛
③虫垂炎患者 × 患者の価値観  頭頸部・胸部に異常所見なし
 鑑別診断は?  心窩部に圧痛あるが、腹膜刺激症状なし
 右季肋部圧痛あり、Murphy’s sign陽性

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ケースB
急性右季肋部痛 × 若年女性 グループディスカッション Take Home Message
 24歳 女性 • 24歳女性×右季肋部痛の鑑別診断は? 鑑別診断の覚え方は
 内科基礎疾患なし、腹部手術歴なし 主訴×部位別で覚えておくのはまだ非効率
 5日前発症 年齢層別、キー所見別で分けておくとベター
• 55歳女性と同じ?
徐々に増悪し続ける、 さらに頻度順に並べておくとベスト
心窩部~右季肋部の
非移動性の持続痛 • 違うならなに?なぜ? 疾患一つ一つの典型像を丸暗記ではまずい
紛らわしい疾患をまとめておく
 鑑別は? それらを区別できる
「フローチャートを分岐させる所見」が重要

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ケースC 呼吸不全 @大病院


①右季肋部痛 × 年齢 総合診療医は
Common disease診療のエキスパート • 84歳 男性
論理的思考に基づいた効率的診断学 既往歴:高血圧、心臓病、肺気腫
②肺炎患者 エビデンスに基づいた標準的治療法 主訴 :5日前から咳や痰がでて、
個別性・複雑性を考慮した柔軟性 息苦しくなってきたため受診
× 地域性・医療資源 • 鑑別診断を考えてみてください
かつ
※病歴聴取「前」が重要!
③虫垂炎患者 × 患者の価値観 与えられたセッティングに応じて
役割や考え方を柔軟に切り替えられるのも特徴

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患者の身体所見 大病院ERなので 肺炎!


よろよろと歩いて入室、なんとか座位とれているが • 大勢のスタッフで同時並行対応 • 循環器当番コンサルト
じっとりと汗を浮かべこわそうな表情 • ACS・心不全は否定
JCS0、BP134/50mmHg、HR108bpm・整、 • 迅速にバイタル測定 • 呼吸器当番コンサルト
RR28、SpO2 86%(room air)、BT 37.4度 • 酸素投与・モニター装着・ルート確保 • 肺炎+COPD急性増悪!
頭頸:結膜・甲状腺・頸静脈に異常所見なし
胸部:心音・心雑音正常、
両側肺胞呼吸音減弱
•絨毯爆撃検査 • 臨時入院し、確定診断後に治療開始
採血、検尿、胸腹部CT • 到着1時間で悪化し、NPPV導入
Wheeze2度・Cracklesなし
心電図、心エコー、トロポニン • ステロイド点滴・SABA吸入
四肢:下腿浮腫なし、末梢動脈触知良好、冷感なし。
• CTRX点滴
• ⾧期臥床+ステロイドで廃用進行…

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②肺炎患者 • セッティング:黒松内町 有床家庭医療診療所 ケースD 呼吸不全 @僻地


家庭医療指導医・専門医・後期研修医の3人体制
検血・検尿・ECG・Xpあり
× 地域性・医療資源 生化学は外注、エコーは医師実施、CTなし • 84歳 男性
既往歴:高血圧、心臓病、肺気腫
病棟19床あるが、挿管・人工呼吸やNPPV不能。 主訴 :5日前から咳や痰がでて、
紹介先は救急車で1時間半かかるが、総合医が全部受ける!
息苦しくなってきたため受診
地域を変えます! • 患者の事情:遠方搬送はこまる
• 鑑別診断はだいたい同じ
価値観…妻を残して先には死ねない。遠くまで搬送されても
妻は帰れないし生活できない。ここでやってくれ! • 下気道感染症 +α
医者の心情…初期治療はずしたら、今より悪い状態で搬送…

呼吸不全が完成してからの⾧時間搬送は危険!

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患者の身体所見 臨床のジレンマ Take Home Message


慢性心不全急性増悪 COPD急性増悪
よろよろと歩いて入室、なんとか座位とれているが 治療方針を180度変える所見は超重要!
じっとりと汗を浮かべこわそうな表情 Wheeze 多い 必発 • 疾患ごとの暗記でなく、
Crackle あり あり
JCS0、BP134/50mmHg、HR108bpm・整、 よくある鑑別セットで対比して理解すると実践的
頸静脈圧 あり あり
• エコーは、目的を明確にして学ぶとすごい
RR28、SpO2 86%(room air)、BT 37.4度 下腿浮腫
Xp / CT 全体に白くなる 部分的に白くなる

頭頸:結膜・甲状腺・頸静脈に異常所見なし 心エコー 症状の原因かの判断困難 症状の原因かの判断困難


僻地にいくなら、
(心臓基礎疾患の有無はわかる) (右心負荷所見はわかる) ドクヘリ・ドクターカーの勉強だけでなく
胸部:心音・心雑音正常、
治療 利尿やニトロで改善! SABA+PSLで改善! 中小病院・診療所でできる検査と治療も詳しく学ぼう
両側肺胞呼吸音減弱 SABAやPSLで 利尿やニトロで
Wheeze2度・Cracklesなし 心負荷・体液貯留の危険 ショック・心房細動の危険
四肢:下腿浮腫なし、末梢動脈触知良好、冷感なし。

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診断推論の手順 ベイズの定理に基づく除外・確定
①右季肋部痛 × 年齢
1.予診票などの事前情報
尤度比
②肺炎患者 × 地域性 -45% ← LR 0.1 LR 10 → +45%
(主訴、年齢・性別、背景、バイタルなど)を元に、 -30% ← LR 0.2 LR 5 → +30%
「診察前確率」を考える -15% ← LR 0.5 LR 2 → +15%

③虫垂炎患者 2.患者から得た臨床情報(病歴聴取・身体診察)から

× 患者の都合・価値観 「検査前確率」を推定する 除外 事前確率 確定


3.医師が選択した検査所見から、診断を確定する
検査閾値 治療閾値
– 確率の高い疾患を、治療閾値以上に押し上げる 危険な疾患は 侵襲・費用が高いほど
– 確率の低い疾患を、検査閾値以下に追い出す 厳しく設定 そのセッティング 厳しく設定
での疾患頻度?

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検査閾値 「価値」が閾値を左右する
これ以上検査しなくても「除外していい」という域値
重大な疾患(心筋梗塞) →1%以下
軽症疾患(風邪) →20%ぐらいで十分
NBM: Narrative based medicine
「様子見て悪くなったら来てね」で大丈夫。 患者の価値観・事情をしっかり考慮

EBM: Evidence based medicine


治療域値 臨床研究のエビデンスもきちんと考慮
もっと検査しないと「治療するわけに行かない」という域値
害の強い治療(抗がん剤) →99%以上
どうでもいい治療(風邪薬) →80%あれば十分 VBM: Value based medicine
「薬飲んで調子悪くなったら来てね」でも大丈夫? 生命予後×QOL(QOLYs)
Value = ×価値観
コスト(価格、侵襲)
重大か否か、副作用や値段の影響は誰が決めるのか?

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ケースE 右下腹部痛 患者の身体所見 ケースF


虫垂炎疑い × 今日は困る…
地方小病院に来た32歳女性 下腹部を押さえながら入室、脂汗流してつらそう • 地方小病院に来た32歳女性
現病歴…今朝からの右下腹部痛が改善せず
現病歴…今朝からの右下腹部痛が改善せず
徐々に悪化してきたため我慢できず受診
バイタル…JCS0, BP104/58, HR98・Reg, JCS0、BP104/58mmHg、HR98bpm・整、 徐々に悪化してきたため我慢できず受診
RR20、SpO2 97%(room air)、BT 37.4度 バイタル…JCS0, BP104/58, HR98・Reg,
RR 20, SpO2 97%, BT37.4
RR 20, SpO2 97%, BT37.4
General …つらそうでベッドにうずくまっている
General …つらそうだが、イライラしている
頭頸:結膜・甲状腺・頸静脈に異常所見なし
主な鑑別は 胸部:心音・呼吸音正常 • 病歴詳細と身体所見は同じ
虫垂炎・憩室炎、細菌性腸炎・炎症性腸疾患 腹部:右下腹部で打診痛あり、筋強直あり
尿管結石、鼠径ヘルニア
McBerney点圧痛あり、反跳痛は省略
卵巣腫瘍茎捻転、PID、etc. • 主な鑑別は
四肢:下腿浮腫なし、末梢動脈触知良好、冷感なし。 虫垂炎…

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病院機能は
• 一般内科のみ。総合的になんでもみます。
抗菌薬内服 Take Home Message
• 外来は時間外含めて対応可能
• 手術症例は、車で10分の近隣基幹病院が 特性…全治療失敗率(1年以内再発)27% RCTで最も優秀な治療方法の知識 だけ
いつでも快く受けてくれる 早期治療失敗(24~48h後) 7% ではうまくいかないことがある。
合併症(腹腔内膿瘍など) 10%
患者の意向 再発時期中央値 4~7ヶ月後 第2・第3選択など、引き出しは多いほうが良い
• 今日の入院は困る 副作用やコスト、患者の基礎疾患や意向次第では
再発時も単純性なのは 83% 第2選択のほうが良いこともけっこうある
• 明後日、社運をかけた重要なプレゼンが!
再発時に複雑性なのは 10% • 軽症うつ病ではSSRI有意差なし
• 死にたくはないが、今日は帰らねばならない ※単純性限定(若年、糞石・穿孔・免疫不全・妊娠なし) • 重症うつ病では有意差あるが、プラセボでも4割改善する
• あとで再発していいから「散らして」
ただし、治療失敗・重症化・合併症が出た場合
費用…オグ・サワ7日間 (36+12)×3 ×7 =1008円 ケツを拭うのは高次医療機関の専門医
• 医者の心情 LVFX+MNZ7日間(170+71×3)×7=2681円 ワリを食うのは患者本人
• 散らして悪化したら、外科医に殺される 何も考えずにやってると、地域医療機関内で浮いてしまう
急性虫垂炎の治療と予後の違いについて(2015年の新知見)
• 近隣の基幹病院との連携がギクシャクするのでは… http://rokushin.blog.so-net.ne.jp/2015-06-24

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福島FACE 第39回 2019/06/08 Wiliam Oslar 米国の内科研修医の時間配分

臨床力が身につく!
カルテ記載業務は 43
%・10時間

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カルテの書き方
直接的患者ケアは %・3時間

佐藤 健太
dr.kenta.sato@gmail.com 3時間机で勉強するよりも
総合内科専門医 + 家庭医療専門医
勤医協札幌病院 内科・総合診療科 科⾧ ベッドサイドの15分が勝る

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カルテの書き方のポイント 最初は 型通り繰り返そう


① 時間をかけすぎない

② ベッドサイドの診察とリンクさせる
守・破・離 ①反復練習により速く書けるようになる

②情報取り忘れや計画漏れに気づきやすい

③指導医や他職種が読み慣れた様式が身につく
③ 臨床推論や治療方針決定、
チーム医療に役立たせる 型ができてない者が芝居をすると形なしになる。メチャクチャだ。

型がしっかりした奴がオリジナリティを押し出せば型破りになれる。

結論を云えば型をつくるには稽古しかないんだ

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自己紹介、前振り 15分 人間の生理は、超複雑系


分解してしまうと、本質が見えなくなる
メリハリのある 人間の診断でもゲシュタルトは重要
「全体性、まとまりのある構造」
「型通り」のS&O 35分 まずは 全体像を理解する 世界はパーツの寄せ集めでなく、
説得力のある 「論理的」なA 25分 意味のあるまとまった全体像として認識される

チームを動かす「具体的」なP 10分 全体が見えれば


診断推論研究でも 全体と部分を重視
おまけ 10分 細部の意味も見えてくる システム1(直観的→全体の俯瞰)
システム2(分析的→部分の統合)

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Sの全体像 Sの全体像 Sの詳細 症状解析(OPQRSTなど)


そもそもの 主訴・受診理由 病前を含めた 時系列の臨床経過
その人らしさ 年齢・性別

Sの枝葉 Review of Systems


既往歴・家族歴・生活歴

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Oの詳細
検査結果は全部コピーしない Oの全体像
Head to Toeの ルーチン診察
必要なところだけ抽出! 全身状態・外観 General appearance
ABCDをまとめた First impression
血・尿・ECG等の 基本検査
デジタルな結果はデジタルに表示
Oの詳細 Oの枝葉
認める・認めない
あり ・ なし
具体的数値の Vital signs 疾患特異的な 追加診察・検査
(+)・(ー)

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自己紹介、前振り 15分 AとPには、医師が行った意見・判断を書く

情報でなく意見を述べる
• 主語・視点は医師(というか自分)
メリハリのある 「型通り」のS&O 35分 • 時制は現在形・能動態
◯・・・と診断する・考える。・・・の治療を行う。
×・・・病と考えられた。・・・を行うこととなった。
説得力のある ×・・・と指導医・専門医が言っていた。

「論理的」なA
チームを動かす「具体的」なP
25分
10分
意見には 論拠を添える SとOには、患者に起きた事実・情報を書く
主語・視点は患者
時制は過去形・受動態

結論から書く
おまけ 10分 ◯・・・を受診した。・・・と前医に診断された。

論理的に ×・・・を処方した。・・・の診断となり、入院となる。

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論理の三要素 Data・Warrantのある主張

情報でなく意見を述べる
この患者では咳・痰に加え、PCT上昇がある(Data)
学会誌に「PCTは肺炎を示唆する」という報告もある(Warrant)
だから、この患者ではXp陰性でも肺炎として治療すべきだ(Claim)

Data・Warrantに対して、“議論”可能

意見には 論拠を添える 「その論文の方法と結果をみると、その解釈には無理があるよ」


「呼吸困難感の有無や基礎疾患の重症度も踏まえて判断したいな」

Data・Warrantが欠けた主張は、指導対象外

論理的に 結論から書く
「いいからCTとれや!」と主張そのものを否定か
「よくわからないけど、いいんじゃない」と曖昧な肯定(放置)

出典サイト:トゥールミンの三角ロジック https://kogolearn.wordpress.com/studyskill/chap4/sec2/
参考文献 :高校生のための論理思考トレーニング

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Aの構文も 結論から書く
情報でなく意見を述べる
指導医に伝わる 英文法はわかりやすいが
I think [Claim], because … [Data & Warrant] 日本人医療者には違和感も

【英語構文例】
急性心筋梗塞と診断する[Claim] 枕詞をいれよう!

論拠を添える
典型的狭心痛にST上昇・Trop T陽性を伴っており[Data]

意見には Brief summary


日循STEMI診療ガイドラインの基準を満たす[Warrant]

【日本語構文例】
一般的に胸痛の鑑別診断としては、Killer 4 painとして有名な
心筋梗塞、大動脈解離、肺血栓塞栓症、緊張性気胸を考える。
本症例では造影CTでは・・・・、これは否定的。

論理的に 結論から書く
さらに・・・の結果からこれも否定的。
これも否定しきれないが、あれこれの理由からこれも捨てがたい・・・。
判断が難しく、循環器内科の意見を聞きたい。

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自己紹介、前振り 15分 カルテ記載の基本は


方針は、全体の方向性を示す指針
メリハリのある 「型通り」のS&O 35分 「今度飲みに行こーぜ」

説得力のある 「論理的」なA 25分 みんなの進む方向が見えればよい 全体→部分


チームを動かす「具体的」なP 10分
おまけ 10分 計画は、詳細で具体的な行動計画(Plan) カルテのPも
「5月23日の19時から、風雲児で、予算は○○円。

方針→計画
参加者は誰で、幹事◎◎の名前で予約してます」

各自が取るべき行動が読めばわかる

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自己紹介、前振り 15分 RIMEモデル 学習者の発達段階 経験:とにかく書く


書かない研修医には指導できない
メリハリのある 「型通り」のS&O 35分 • Reporter(情報) 理論の三角形を自分なりに埋めること
– 先生、吐血してます!!
説得力のある 「論理的」なA 25分 – S・Oをそのまま記載できる 省察:ガンガンフィードバックを貰いに行く
チームを動かす「具体的」なP 10分 • Interpreter(思考) カルテ指導に意欲を燃やす指導医はかなりレア
医局で、病棟で、メールで、飲み会で、執拗に求めるべし
– 食道静脈瘤破裂かもしれないですよね…
– S・Oを元にAを考え、根拠とともに記載できる

おまけ 10分 • Manager(行動)


理論:最低限は自分で勉強しておく
子供ではないので手取り足取り教われることは少ない
– よし、ルートとりつつ消化器呼ぼう!
カルテの学び方・教え方 – Aを元にPを考え、具体的に記載できる また、自分で勉強したほうが早い

• Educater(教育) 実験:言われたことは実直に実践してみる
– こういうときはね…
それでうまくいかなくても、それを踏まえてより適切な指導ができる
– 研修医のカルテ記載に的確なダメ出しができる
いきなり応用されたり完全に無視されると次の指導ができない

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① フィードバック(お返し) ② ロールモデリング(模倣) ③ リフレクション(省察)


「自分のふりを見て」我がふりを直させる 「私ならこう書く」という具体例を提示 研修開始時の面談
本人の記載を抜粋し、その後に改善案を並べる きちんと目標設定を行い
フィードバックはFASTに その上で一般原則などを説明すると理解しやすい カルテ記載の到達目標も組み込んでおく
Frequent:毎日声かけ、毎週添削
Accurate:正確に、研修医の記載を引用しながら
Specific :具体的に、直し方を明示 指導医も定期的にカルテを書く 成長の軌跡を実感させる
Timely :ポジティブはすぐ、ネガティブは少し間をおいて 「その患者のこのタイミングでこう書く」という超具体例 研修開始時から現在までの記録を一緒に見る
Weekly summeryは全体像を示せて、研修医の邪魔もしない 何が改善したかを自分で振り返らせる
指導医が診療に責任を持ちやすい
多職種も安心する、医療事故対策にも

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Kenta
WiliamSato
Oslar 参考文献
「型」が身につくカルテの書き方
医学書院、2015年4月
http://www.igaku-shoin.co.jp/paperDetail.do?id=PA02985_05

雑誌『治療』 南山堂、2016年2月号

「総合診療専門医らしいカルテの書き方」
http://www.nanzando.com/journals/chiryo/
本を読まず
カルテを書かず
して医学を学ぶことは
して臨床を行うことは
海図を持たずして航海に出るに等しく、 日本内科学会誌 2017年12月号
「Multimorbidity時代の
患者を診ずして医学を学ぼうとするは
してカルテを書こうとするは プロブレムリストの作り方」
全く航海に出ないに等しい
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福島FACE 第39回 2019/6/9


肺炎は多い! ちゃんと診れれば楽しい

高齢者肺炎の診かた考え方 総合病棟にも、どこの病棟にも
ちゃんと良くなれば嬉しい
総合内科×リハビリの視点から深める
できれば関わりたくない
ちょっとだけ視点が変わる
勤医協札幌病院 副院⾧
内科・総合診療科 科⾧ 治らない、再発する、泥仕合感
佐藤 健太 退院調整大変、在院日数が… お話をします
dr.kenta.sato@gmail.com
総合内科専門医、家庭医療専門医、リハビリ認定医、産業医
北海道勤医協 総合診療・家庭医療・医学教育センター(GPMEC)

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①肺炎の診断
②誤嚥の診断
人工呼吸器関連肺炎 誤嚥性肺炎 びまん性嚥下性
(通常型) 細気管支炎
③栄養療法
メンデルソン症候群

誤嚥目撃 嚥下障害あり! 嚥下障害の疑い

④全体を診る
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実際のエビデンスは?

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呼吸器内科における嚥下性肺炎 熊本大学医学部附属病院呼吸器内科
http://www2.kuh.kumamoto-u.ac.jp/jibiinkoka/enge/data/mt03/03b/20140702b.pdf

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誤嚥性肺炎を直接疑うCT所見 びまん性嚥下性細気管支炎
気管・気管支内痰貯留+食道拡張・唾液ニボー
DAB:Diffuse Aspiration Bronchiolitis DABとDPBは、呼吸器専門医でも区別困難
1978年、似た疾患として提唱
不顕性かつ慢性の経過
明らかな誤嚥エピソードなし 1989年、和文誌に登場
咳・痰、発熱・CRP上昇、SpO2低下はまれ 2011年、NH-CAPガイドラインにも採用
単純レントゲンではわからない
Fever work-up陰性

高分解能CTで以下の所見
小葉中心性小粒状影(結核注意)
気管支壁肥厚・拡張(慢性気管支炎様)でDPB様

治療は口腔ケア・誤嚥予防と抗菌薬はおまけ
呼吸器内科医 pulmonary.exblog.jp
https://pulmonary.exblog.jp/11457549/

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総合病棟の「嚥下障害」だと、とたんに ショックも、嚥下障害も、
①肺炎の診断 命に関わる重大な病態の一つ。
迅速な絶食+最適な抗菌薬
だけで、原因同定がないままのお茶濁し (救急のABCのうち、A+Bに関わる)
②誤嚥の診断
呼吸器!、いればリハ医!! しかも超Commonな主訴!
になり、総合医は感染症以外関与せず 総合病棟は、嚥下障害でいっぱい
③栄養療法
全例もれなく回リハ・療養・施設へ!
原因の重症度や専門性にかかわらず、
④全体を診る なんでも受けてくれるあの病院へ丸投げ

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Commonな嚥下障害(全体) 頻度の高いCommonな原因
嚥下障害も 3段階で詰めていく 廃用(肺炎・骨折)>脳卒中>変性・悪性
①廃用性嚥下障害
頻度の高いCommonな原因 肺炎、骨折、悪性腫瘍
老嚥presbyphagia
解剖学的に分ける ②脳卒中

病態生理で詰める ③神経変性疾患
≒パーキンソン症候群
メディファイン http://www.medifine.jp/column/medifine/2.html

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嚥下障害も 3段階で詰めていく 解剖学的分類


嚥下障害の 機能 該当病態
先行期 食べ物と認識し 意識障害、せん妄、

頻度の高いCommonな原因
(認知期) 集中力を維持 認知症、眼・耳疾患
①脳
準備期 咀嚼による 歯・歯肉疾患
(咀嚼期) 食塊形成 唾液疾患
②歯 ④咽頭
解剖学的に分ける
口腔期 口腔から咽頭へ 舌・口蓋・咽頭疾患
送り込む
咽頭期 咽頭から食道へ 脳卒中
③舌 ⑤食道 送る複雑な反射 神経変性疾患

病態生理で詰める 食道期 器質的・機能的 食道癌、強皮症


な通過障害

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先行期は自分で診る 準備期は歯科医師・歯科衛生士 口腔ケアの肺炎予防効果


肺炎発生率%
• 原因は認知症・せん妄・意識障害など 口腔ケアなし 口腔ケアあり
意識障害の原因精査と対応 25
薬剤調整が重要
20
• STでも嚥下予後を悪く見積もりやすい 15
先行期障害
入院後早期 10
卒後年数3年以下
5
医師とのコミュニケーション不足
0
97 98 99

OHAT Oral Health Assessment Tool


咽頭期は様々な方法で
リスク聴取 ≒病歴聴取

スクリーニング ≒バイタル測定

ST評価 ≒身体診察

VF・VT ≒画像検査
岐阜県歯科医師会在宅歯科医療連携室 http://renkei.gifukenshi.or.jp/ohat.html

100 101 102

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咽頭期の嚥下機能スクリーニング 甲状軟骨の上下動を触知する 改訂水飲みテスト


喉頭挙上検査 手技
RSST ・冷水3mlを口腔底に注ぐ
・嚥下を命じる
・反復嚥下を2回行わせる
改訂水飲みテスト
フードテスト
看護roo!

看護roo!
評価基準
陰性 陽性 1. 嚥下なし、むせるまたは呼吸切迫
喉頭挙上検査 …1回で2cm以上 2. 嚥下あり、呼吸切迫あり
3. 嚥下あり、呼吸良好だが、むせか湿性嗄声
直接嚥下訓練 間接嚥下訓練(食べない) 反復唾液嚥下テスト(RSST)…30秒間で2回以上 4. 嚥下あり、呼吸良好、むせも湿性嗄声もなし
(食べる) VE・VFの検討 5. 4に加え、反復嚥下が30秒以内に2回以上可能

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嚥下障害の 病態生理分類 嚥下障害の 病態生理分類


神経障害 筋障害 筋障害

器質性 廃用性 廃用性 しゃべる、飲み込む


(脳卒中) (絶食)

低栄養性 経腸・経静脈栄養
機能性 低栄養性
(パーキンソン) (絶食、病前生活) 慢性消耗性疾患
疾患性 侵襲性 →治療 ・悪性腫瘍

疾患性 悪液質 →治療・運動 ・慢性感染症


・慢性炎症性疾患
(侵襲、悪液質、神経筋疾患) 神経筋疾患 →進行抑制 ・慢性臓器障害

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①肺炎の診断 死亡率 急変率 3:緑線 : 栄養良好 在院日数・自宅退院率


2:赤線 : At risk
1:黒線 : 低栄養

②誤嚥の診断 1.0

0.8
MNA.SF.score
1
2
3
1.0

0.8
MNA.SF.score
1
2
3
MNA-SF 栄養良好 At risk 低栄養 p値

在院日数
0.6 0.6
9.1 16.1 24.8 <0.0001
(日)

Probability

Probability
③栄養療法
0.4

Welch検定
0.4

0.2 0.2

0.0

MNA-SF 栄養良好1 At risk2 低栄養3 p値


0.0

0 10 20 30 40 50 0 10 20 30 40 50
survival.duration survival.duration

3-2間=0.00018

④全体を診る
生存期間の比較(Log-rank) 生存期間の比較(Log-rank) 自宅退院率
p=0.102 p=0.00246 98.8 81.6 57.8 3-1間=0.00355
(%) 2-1間=1.00000
生存期間の傾向(Log-rank trend) 単変量解析(Cox比例ハザードモデル)
p=0.049 ハザード比0.4
95%CI=0.23-0.70、p=0.001 Fisher正確確率検定、bonferroni補正

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嚥下訓練は2種類ある 間接訓練① シャキア法 間接訓練② 開口訓練

直接訓練は、実践
間接訓練は、素振り
低栄養でもできる低負荷、誤嚥リスクもゼロ

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間接訓練③ アイスマッサージ 間接訓練④ 歌会 間接訓練⑤ 座位保持訓練


間接嚥下訓練
座位のほうが臥位よりも咳をしやすい
横隔膜が下がり肺活量が増える
口頭挙上筋を含む頚部筋群が鍛えられる
身体の筋トレ
移乗のたびに立位の訓練になる
上肢や下肢の運動がしやすい
認知刺激
病室から離れて気分転換になる
冷凍庫で凍らせた綿棒で刺激し嚥下を誘発する方法
視界が天井だけではなくなる
嚥下の知覚・反射の刺激に。ジュースを凍らせても 注 頭を支えられないときはヘッドレスト付きまたはリクライニング車椅子
足底接地により座位が安定する。 嚥下にも好都合
https://ameblo.jp/adental-toothbrush-stor/entry-12356391767.html

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適正栄養 対 過少栄養
①急性期 一般的 適正栄養 院内死亡率 42% ≒ 30%
エ 90-100%
ネ 適正栄養 対 微量栄養
無理はしないで ル
許容的 過少栄養 院内死亡率 22% ≒ 19%
ギ 経腸栄養・人工呼吸器・ICU非在室日数 有意差なし
ー 50-70% 下痢・胃内残量増加

飢餓戦略 足

過少栄養 対 微量栄養
消極的 微量栄養 すべてのアウトカムで 有意差なし!
10-20%
EARLの医学ノート敗血症と栄養管理(2) 投与カロリー,静脈栄養併用
Be early for enteral, no rush for calories! ICM. 2016.

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超急性期の、積極的な適正栄養は 超急性期でも 早期 経腸栄養は有益

有害無益 ×


栄養療法として
高用量投与や栄養点滴併用は予後悪化

腸管免疫維持による感染症合併予防
腸は急げ!
量は落ち着け!!

○ 粘膜萎縮予防によるストレス潰瘍予防

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Mooreの急性相反応 日:急性期 の 微量栄養


②見極めて! ①障害期:1~4日
高カテコラミン・高ステロイド・急性相蛋白合成
体重×2-4kcal(20×10-20%)=100-200kcal
=ソリタT1かT3を数本

②転換期:4~7日
週:亜急性期 の 過少栄養
糖が身につく 神経体液性因子の過剰興奮沈静化
BUN(蛋白異化)やCRP(急性相蛋白)の合成低下 体重×10-15kcal(20×50-70%)=500-800kcal
=フィジオ2本かビーフリード
③同化期:1~2週間

タイミング
蛋白合成が活性化し,筋力回復 月:回復期 の 適正栄養
体重×20kcal×活動係数=1000~2500kcal
④蓄積期:数週~数月 フルカリック1~2本か、ご飯半量+栄養剤
脂肪が蓄積し、体重増加
加齢とエネルギー代謝 | e-ヘルスネット https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/exercise/s-02-004.html

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嚥下食ピラミッド
重度認知症患者 歩行障害:FAST 7c + 感染・体重減少
嚥下障害:MWST → S-SPT

③知らないの?

入ればみなぎる

経口栄養剤 慎重な
経口摂取

重度認知症
・経静脈と経腸と「注意深い経口摂取」で生存期間は同等
・経腸で誤嚥性肺炎が多い
・食べて歩ければ、FAST7cでも予後半年より延⾧する
食べられなくなった 認知症患者との 向きあい方 https://www.amc1.jp/departments/diagnosis/naika/jhn/cq_151116.pdf

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アレンジド ラコール ミルクティー、ホットジンジャーミルク


ゼリー、葛餅、アイス、シャーベット

ダークモカ 抹茶ミルク
ビターチョコレート 2かけ(10g) 抹茶粉末 小さじ2杯

カレースープ ヨーグルトシェイク
牛乳30ml + カレールー 1かけ ヨーグルト + 冷凍フルーツ

カフェ・オ・レ コーンスープ
ポーションコーヒー(無糖)1個 牛乳50ml + コーンスープのもと1袋

Ayamu地域介護 地域包括ケア応援サイト 食/栄養管理 https://chiiki-kaigo.casio.jp/info_articles/434


もっと知ってほしいがんと生活のこと http://www.cancernet.jp/seikatsu/eiyou/recipe/

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①肺炎の診断 高齢者診療は、肺炎に限らず大変 多併存疾患:Multimorbidity


• 7つの問題点
身体機能低下、精神的不安定、QOL低下
体力、臓器機能が落ちており、予後が悪い
過剰治療負担、多剤服用、不必要な入院の増加
②誤嚥の診断 通常の治療でも、副作用が出やすい
治療が分断される(連携不十分)

• 対応策

③栄養療法 気を抜くとすぐに廃用・せん妄になる 全体像をつかむ。病名・薬剤、関係者などすべて


主治医を決めて、患者・家族と優先順位を決める
基礎疾患が多く、 機能に注目しリハ・栄養、老年ケア

④全体を診る 主病名以外が連鎖して悪化する ガイドライン通りに「しない」


参考:Managing patients with multimorbidity in primary care. BMJ. 2015。
地域医療ジャーナル(http://cmj.publishers.fm/)

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誤嚥性肺炎診療は総合医の真髄
「高齢者診療で身体診察を
は呼吸器疾患じゃない! Wiliam Oslar 強力な武器にするためのエビデンス」上田剛士

病院総合医が担当する、最もCommonな疾患 Gノート増刊
=最も深く診られるようになるべき疾患 「これが総合診療流!
患者中心のリハビリテーション」佐藤健太
誤嚥性肺炎はMultimorbidity
嚥下だけでも精神・神内・歯科・耳鼻・消化器・呼吸器
さらに併存症のケア(心不全、糖尿病、せん妄など) 治療「病院×家庭医療」森川暢(佐藤健太)

非常に高度で、専門性の高い疾患
的確な感染症治療、リハ栄養や老年・緩和ケア、
専門科連携や多職種連携、臨床倫理的判断、 「高齢者リハビリテーション栄養」
これらを短期間で同時並行で行う必要がありとてもハード
↓ 「リハビリテーション栄養ケーススタディ」
高次医療機関で「もう終末期」と言われてても 重要なのは、 若林 秀隆
「総合医が担当すれば」予後が改善する疾患 どのような病を患者が持っているかではなく
どのような菌が肺炎を起こしているかではなく 摂食・嚥下障害の評価(簡易版)
日本摂食・嚥下リハビリテーション学会医療検討委員会案
どのような患者が病んでいるかである
が肺炎を起こしたかである https://www.jsdr.or.jp/wp-content/uploads/file/doc/VF15-1-p96-101.pdf

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