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釧路レジデントデイ 抄読会 2011.2.

5 担当 Y野

【文献】A Randomized, Controlled Trial of Early versus Late Initiation of Dialysis


N Engl J Med. 2010 Aug 12;363(7):609-19.

【この論文を選んだ背景】
最近のカンファレンスで透析導入についての話題があり、ガイドラインの基準を見直したが、透析
導入はできるだけ先延ばしにしたいという患者さんの気持ちがある中、導入の早さが利益になるよう
な明確な記載がなく、導入時期と予後の関連に関心を持った。
【PECO の定式化】
P:慢性腎不全(stageⅣ,Ⅴ)の患者
E:透析導入を早期に行うと
C:遅くに導入する場合と比べて
O:慢性腎不全に伴う合併症や死亡率が少ないのか
【検索方法と採択基準】
検索エンジン:NEJM online
キーワード:dialysis, initiation (duration を加えても同様の結果であった)
【歩きながら読む法】
○研究方法の妥当性
・論文の PECO
P:18 歳以上の eGFR 10.0-15.0ml/分/1.73m2 の進行性慢性腎臓病患者(stageⅤ)
オーストラリアとニュージーランドの 32 施設で 828 名
E:早期(eGFR 10.0-14.0ml/分/1.73m2 に下がった時点)に透析を開始すると
C:後期開始群(eGFR 5.0-7.0ml/分/1.73m2 に下がった時点)と比べて
O:全死亡率が低いのか
・ランダム化かどうか
表題、Abstract と本文の Methods にランダム化と記載されている
・ ITT 解析かどうか
本文の Methods に「全患者が死亡あるいはトライアルの最後まで追跡された」、
「全ての生存率分析は ITT 解析による」と記載あり
○結果
早期開始群と後期開始群を比較して、死亡率、有害事象(心血管イベント、感染症、透析関連合併
症の発生頻度)の間に有意差はなかった。
【結論・考察】
stageⅤの慢性腎臓病患者において、維持透析の早期開始は生存率や臨床転帰と関連しなかった。
これまで、透析開始について各国で GFR を指標としたガイドラインが作られているが、この研究に
より、GFR が 7.0ml/分/1.73m2 以下になるまで、あるいは臨床症状が出現するまで透析開始時期を延長
できる可能性が示された。さらに、GFR 値だけで判断するのではなく、臨床症状も考慮する必要がある
と考えられた。
【要約】
≪背景≫
早期導入が生存率や QOL を改善し、
stageⅤの慢性腎臓病患者に対する維持透析の開始時期については、
合併症を減少させるとしたこれまでの研究結果をふまえ、世界的に早期開始の傾向があるものの、その
是非について議論もあり、臨床現場では開始時期に相当なばらつきがある。これまで、透析導入の明確
な時期を示したランダム化比較対象試験はなく、この研究がデザインされた (The Initiating Dialysis
Early and Late study: IDEAL study)。
≪方法≫
[対象]
オーストラリアとニュージーランドの 32 施設における推定糸球体濾過量 eGFR が 10.0-15.0ml/分
/1.73m2 体表面積(Cockcroft-Gault 式を用いて算出)の進行性慢性腎臓病患者。
①18 歳未満、②eGFR が 10.0-15.0ml/分/1.73m2 未満、③12 カ月以内に腎移植予定、④生死に影響する
ような悪性腫瘍と診断された例は除外した。
[割り付け]:Figure 1, Table 1
2000 年 7 月から 2008 年 11 月の間に、計 828 例(平均年齢 60.4 歳;男性 542 例、女性 286 例;糖尿病
合併 355 例)を早期開始群 404 例(eGFR が 10.0-14.0ml/分/1.73m2 に下がった時点で透析開始)と後期開始
群 424 例(通常の治療を継続し、eGFR が 5.0-7.0ml/分/1.73m2 に下がった時点で透析開始)とにランダム
に割り付けた。ただし、eGFR が 7.0ml/分/1.73m2 まで低下しないまでも、症状発現等により透析開始が
必要と判断された例はその時点で透析を開始し、後期開始群に含めた。
[アウトカム]
主要アウトカムは全死因死亡、第 2 のアウトカムは心血管イベント、感染症、透析関連合併症
[統計手法]
連続型変数はスチューデント t 検定あるいはマンホイットニー検定とカイ 2 乗検定、生存率推定と生
存率曲線にはカプランマイヤー法を用いた。基礎となる共変量に適したコックスモデルが、アウトカム
を生む要因を決定するために作られた。全ての統計的検定は両側検定で、 P 値<0.05 は有意差があるこ
とを意味した。
≪結果≫:Figure 2, Table 2,3
追跡期間の中央値は 3.59 年、透析開始までの期間の中央値と開始時の平均 eGFR は、早期開始群で 1.80
カ月(95%信頼区間 1.60-2.23)、12.0ml/分/1.73m2、後期開始群で 7.40 カ月(95%信頼区間 6.23-8.27)、
9.8ml/分/1.73m2 であった。早期開始群のうち eGFR 10ml/分/1.73m2 未満で透析を開始した例は 18.6%、
後期開始群のうち、eGFR が指標の 7.0ml/分/1.73m2 より高くても症状が発現したため透析を開始した例
は 75.9%を占めた。
死亡率は早期開始群 37.6%、後期開始群 36.6%で、早期開始のハザード比 1.04、95%信頼区間 0.83-1.30、
P=0.75 で有意差は認められなかった。心血管イベント、感染症、透析関連合併症といった有害事象の発
生頻度や QOL についても両群間で有意差は認められなかった。
≪結論≫
stageⅤの慢性腎臓病患者における維持透析の早期開始は、生存率や臨床転帰の改善に関連しなかった。

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