Neuroscience: The Science of the Brian

This is the Japanese language translation of the public education booklet. This translation was
made for IBRO by:
Kyoji Morita, Department of Pharmacology, Tokushima University School of Medicine,
Japan
The British Neuroscience Association (BNA) commissioned the booklet for the purposes of
teaching young people in the UK about their Brain and Neuroscience the science of the brain.
The booklet contains short explanatory chapters on different subjects written by experts in
each topic. The original booklet was published in 2004.
In 2005 the International Brain Research Organisation (IBRO) purchased the copyright of the
booklet. We have commissioned members of our organisation to translate the booklet in
multiple languages. In addition to the Japanese version that you are now reading the booklet is
available in a further sixteen languages also contained on this CDROM.

We hope that you will use these translations for the purpose of improving public understanding
and awareness of the brain and the importance of brain research. IBRO and the BNA are happy
for you to make printed copies or clone theses PDFfiles. However this should not be done for
profit. For more information please read the additional information that is appended at the end
of the booklet.

Contents
Pages 2-59: Neuroscience The Science of the Brain (Japanese version)
Page 60-71: Additional information (Japanese).
An introduction to IBRO and the CDROM:

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神 経 科 学

脳 の 科 学
若手学生のための入門書

英国神経科学協会
欧 州 ダ ナ 脳 アライアンス

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この小冊子の“英語”原版は、英国神経科学協会および欧州ダナ脳同盟のために、リチャード・モーリス(エディン
バラ大学)とマリアン・フィレンツ(オックスフォード大学)によって作成・編集されたものです。あなたは、国際
脳研究機構(IBRO)の公共教育委員会によって委託作成された25ヶ国語の翻訳版の一つを読んでいます。これらの翻
訳は、公共の脳の理解を向上させることを目的とする世界的な試みの一部分として、IBROの会員によって行われたも
のであり、IBROは、これらの翻訳を可能にした奉仕者に深く感謝します。この日本語への翻訳は、森田恭二(徳島大
学大学院ヘルスバイオサイエンス研究部)によって行われたものです。
小冊子原版のグラフィックデザインは、ジェーン・グレインジャー(グレインジャー・ダンスモア デザインスタジ
オ、エディンバラ)による。私たちは、神経科学部門の同僚、特にヴィクトリア・ギル、そしてエディンバラ神経科
学界の人々の貢献に深く感謝します。また、私たちは、オックスフォードの生理学大学講座の構成員、特にコリン・
ブレイクモアおよび他の研究機関の援助者に対しても感謝します。彼らの氏名は、後ろのページに記載する。
英国神経科学協会(BNA)は、神経科学者を代表すると共に、健康および病的状態における神経系のより良い理解に尽
力する英国における知的職業者の団体である。その構成員は、大学および研究機関に在籍する確立された科学者から
大学院生にまで亘っている。BNAの年会は、通常は春に開催されるが、最新の研究を発表する場を提供している。全国
にある多数の地方グループが、頻繁にセミナーを開催しており、また一般の人々と共に、学校訪問や地方の博物館に
おける展示会などの活動を頻繁に行っている。詳しい情報は、http://www.bna.org.uk/ を参照。
欧州ダナ脳同盟(EDAB)の目標は、一般の人々および裁定を下す人々に脳研究の重要性に関する情報を提供すること
です。EDABは、神経科学の私的および公的な恩恵に関する知識を向上させること、健康および病的状態での脳に関す
る情報を、入手し易く適切な方法で普及させることを目的としている。神経学的および精神病学的な疾患は、全年齢
層に亘って多数の人々に影響を及ぼし、国家経済にも深刻な打撃を与えている。これらの問題の克服を助けるために、
1997年、欧州の主要な神経科学者70人が、「達成可能研究目標の宣言」に署名し、脳疾患に関する理解と神経科学の
重要性に関する認識を高めて行くことを盟約した。それ以来、多くの人々が選出され、欧州24カ国を代表することに
なった。EDABは、125カ国以上の構成国を有している。詳しい情報は、http://www.edab.net/ を参照。
国際脳研究機構は、世界中全ての国における神経科学の発展と脳研究者間の情報交換の促進に尽力する独立した国際
的な組織である。現在、私たちは、111カ国約51,000人の神経科学者の権益を代表している。1960年の設立以来、私た
ちは、脳研究における国際的な交流を促進するために数多くの積極的なプログラムを実施している。私たちは、世界
的規模で、討論会や研修会、神経科学学校などを後援している。私たちは、恵まれない国の学生に対して、博士号取
得後奨学金や旅行助成金の授与を行っている。私たちは、また、雑誌“神経科学”を発行している。詳しい情報は
http://www.ibro.info/ を参照。

神経科学:脳の科学(Neuroscience: The science of the Brain)は、英国神経科学協会によって出版されたものです。
シェリングトン・ビルディング(The Sherrington Buildings)
アシュトン通(Ashton Street)
リパプール L69 3GE (Liverpool L69 3GE)
英国(UK)
著作権 英国神経科学協会2003
この本は著作権を有し、法で定める特例および正当な総体的許可同意条項が適用される。これらの翻訳の複製は、非営利的な場合のみ
許可される。
初版2003
ISBN: 0-9545204--0-8
翻訳版発行2007
ISBN:
on this page are of neuron

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神 経 科 学: 脳 の 科 学
1

2

ニューロンと活動電位 P4

3

化学伝達物質

P7

4

薬物と脳

P9

5

接触と痛み

P11

6

P14

7

P19

8

神経系の発達

P2

9

10

神経可塑性

P22
P25

P27

11

学習と記憶

P30

12

ストレス

P35

13

P37

14

15

脳の画像化

P41

16

人工頭脳 と 神経路網

P44

17

異常の時

P47

18

19

訓練と職業

P54

20

参考図書と謝辞

P56

P39

P52

私たちの頭の内部には、重量約1.5キログラム、膨大な数の小さな細胞から成る
驚くべき臓器がある。それは、私たちが周囲の世界を感じたり、考えたり話した
りすることを可能にしている。人間の脳は、身体で最も複雑な臓器であり、恐ら
く地球上で最も複雑な物体である。この小冊子は若い学生のための入門書である。
この小冊子では、私たちは脳の働きについて何を知っているのか、どれほど学ぶ
べきことがあるのかについて記述する。その研究は、解剖学、生理学や薬理学の
分野のみならず、分子生物学から実験心理学にわたる多くの学問分野の科学者や
医学者を必要とする。彼らが共有している興味が、神経科学 ― 脳の化学 ― と
呼ばれる新しい学問分野に導き出すこととなった。
私たちの小冊子に記載されている脳は、全てでは無いが多くのことを行なうこと
ができる。それは神経細胞 ― それらで構築されたブロック ― を有し、そして、
これらはネットワークとして互いに結びついている。これらのネットワーは、電
気的および化学的活動ニオイテ定常状態にある。私たちが述べる脳は見ることや
感じることができる。それは痛みを感知でき、その化学的な仕掛けは痛みの不快
な影響を制御するのに役立っている。それは、高度で緻密な活動を行うため、私
たちの動きを同調させることに専ら働いている複数の領域を有している。これら
の事や他の多くの事を成し得る脳は、完全に形成された状態ではない。それは
徐々に発達しており、私たちは、それに関与している重要な遺伝子の幾つかにつ
いて記述する。これらの遺伝子の一つまたはそれ以上が方向を誤る時、失読症の
ような種々の状態が発現する。どのように脳が発育するかという機構と神経細胞
の連結の変化 ― 神経形成と呼ばれる過程 ― に関与する機構 との間に類似性が
存在する。神経形成は、学習や記憶の基になっていると考えられている。私たち
の手帳である脳は、電話番号や昨年のクリスマスにした事を記憶している。殊に
家族の祝日を憶えているような脳にとっては残念なことには、それは食べること
も飲むことも出来ない。そういうわけで、それが出来ることは、少しは限定され
ている。しかしながら、それは、私たちの全てが受けると同様のに刺激を受ける。
さらに、私たちの多くが試験の準備中に感じるような ― 極度の不安 を引き起こ
すことができる内分泌学的機構および分子機構についても言及しょう。そのよう
な時が、睡眠が重要となる時であり、私たちがは脳に必要な休息を取らせる時で
ある。悲しいことに、それが、病気に罹ったり怪我をすることがあり得る時でも
ある。
新しい技法、すなわち細胞表面に接触させることが可能な特殊電極や光学画像処
理、人間の脳断層撮影装置、そして人口脳神経回路を内蔵したシリコーンチップ
などが、近代神経科学の様相を全面的に変えつつある。私たちは、これらの物を
紹介すると共に、脳研究から現われて来た倫理的問題や社会的影響の幾つかの点
について言及する。

追加部数注文: オンライン注文: www.bna.org.uk/publications
郵便: The British Neuroscience Association, c/o: The Sherrington Buildings, Ashton Street, Liverpool L68 3GE

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Telephone: 44 (0) 151 794 4943/5449 Fax: 44 (0) 794 5516/5517

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ニューロンは、細胞体と’ 突起’ と呼ばれる二組の追加部分
からなる構造を有している。これら二組の一方は軸策と呼
ばれ、それらの役割は、ニューロンから連結している他の
ニューロンへ情報を伝達することである。他方は樹状突起
と呼ばれ、それらの役割は、他のニューロンの軸策から伝
えられる情報を受け取ることである。これらの突起はいず
れも、シナップス (第2章および第3章、活動電位と化学
伝達物質、参照)と呼ばれる特殊化された接触部位に関与
している。ニューロンは、神経系において情報が伝達され
る経路として複雑な鎖状および網状の構造に編成されてい
る。

脳および脊髄は、抹消神経を形成している長い軸策を
介して知覚受容体や筋肉と結ばれている。脊髄は二つ
の機能を有している:それは、膝蓋腱反射や熱い物に
触れたり突き刺された時に手足を素早く引っ込めるよ
うな単純な反射やさらに複雑な反射機能の存在部位で
あり、脳と身体との間での情報伝播のための両方向性
の主要経路を形成している。

脳および脊髄からなるヒト中枢神経

基本構造
神経系は、脳、脊髄、そして抹消神経から構成される。
それは、ニューロンと呼ばれる神経細胞とグリア細胞と
呼ばれる支持細胞から成る。
三種類の主要なニューロンが存在する。知覚ニューロン
は、体内および体外環境の異なる状況を感知し応答する
ために特殊化した受容体と結びついている。光および音
の変化や機械的および化学的刺激に対して感受性の受容
体は、視覚、聴覚、触覚、嗅覚および味覚の知覚様式に
おいて役立っている。皮膚に対する機械的、熱的、ある
いは化学的刺激がある強度を超えた時、それらは組織損
傷を起こし、そして侵害受容体と呼ばれる特別な集団の
受容体が活性化される;これらは保護的な反射および痛
みの感覚を引き起こす(第5章、接触と痛み、参照)。
運動ニューロンは、それは筋肉の活動を調節するもので
あるが、言語を含む全ての形態の行動に寄与している。
知覚ニューロンと運動ニューロンの間に存在するのが介
在ニューロンであり、遥かに最大多数である(ヒト脳に
おいて)。介在ニューロンは、脳の高次機能に寄与して
いるのみならず、単純な反射機能をも仲介している。グ
リア細胞は、単にニューロンを支える機能を有している
と長期に亘って考えられて来たが、現在では神経系の発
育や成人の脳におけるその機能に重要な貢献をしている
ことが知られている。これらの細胞は、より多数を占め
ているにも拘わらず、ニューロンのような様式で情報を
伝達することはない。.

2

これらの神経系の基本構造は、全ての脊椎動物において
同じである。何がヒトの脳を特徴づけているか、それは
体の割りには大きな脳のサイズである。これは、進化の
過程における介在ニューロンの数の膨大な増加によるも
のであり、それがヒトに対して、周囲の状況に対する反
応の計り知れないほど広汎な選択能力を供給している。

脳の解剖
脳は、脳幹部と大脳半球よって構成される。
脳幹部は、菱脳と中脳および間脳と呼ばれる ’その間の
脳’ に分けられる。菱脳は、脊髄の延長部分のようなも
のである。それは、呼吸や血圧のような生命機能の調節
中枢を構成するニューロンのネットワークを収容してい
る。内部には、その活動がこれらの機能を調節している
ようなニューロンの網状構造が存在する。菱脳の蓋の部
分から上に伸びるのが小脳であり、それは運動の調節と
時間調整において絶対的に中心的な役割を果たしている
(運動と失読症の章、参照)。
中脳は、各々が特有な型の化学伝達物質を主として使用
しているようであるが全てが大脳半球に投射していない
ような複数のニューロン集団を収容している。これらは、
睡眠、注意力あるいは報奨行動のような機能を仲介する
ために、脳の高位中枢におけるニューロンの活動を変調
することができると考えられている。

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上面、下面および側面から見たヒト脳
大脳半球と脳幹部と
その延長部分である
小脳との区分を示す
脳の側面図

間脳は、視床および視床下部と呼ばれる二つの大きく異
なった領域に分けられる。視床は、全ての知覚系からの
刺激興奮を大脳皮質に中継し、大脳皮質は交替に情報を
視床に送り返す。この脳における接合の両方向性は興味
深い ― 情報は単に一方向に移動して行くのではない。
視床下部は、食べたり飲んだりするような機能を制御し
ている。そして、それは性的な機能に関与するホルモン
の分泌をも調節している。

大脳半球は、中心部と基底核、および大脳皮質の灰白質
を作り上げているニューロンから成る幅広くて薄い周囲
のシートから構成されている。基底核は、運動の開始や
制御に中心的な役割を果たしている。(第7章、運動、
参照)。大脳皮質は、ニューロンのシートを他の方法で
可能なよりも遥かに大きな表面積にするために襞状に折
りたたんで、頭蓋骨の限られた空間に詰め込まれている。
この皮質組織は、ヒトの脳において最も高度に発達した
領域で ― ゴリラより4倍も大である。それは多数の個
別の領域に分割されており、各々は、その層と接続の点
から識別できるものである。これらの多くの領域の機能
は良く知られている ― 例えば、視覚、聴覚、および嗅
覚の領域や皮膚(体性感覚領域と呼ばれている)や種々
の運動領域から情報を受け取る知覚領域のように。知覚
受容体から皮質そして皮質から筋肉への経路は、一方の
側から他方へ交差している。従って、身体の右側の運動
は皮質の左側によって(そして、その逆に)制御されて
いる。同様に、身体の左半分は、例えば、左耳に入った
音は主として右の皮質に到達するように、右の半球に知
覚信号を送り込む。しかしながら、二つの脳の半分は、
分離された状態では働かない ― そのために、左および
右の大脳皮質は、脳梁と呼ばれる大きな線維路によって
結ばれている。

大脳皮質は、随意行動、言語、会話、および思考や記憶
のような高度の機能に必要である。これらの機能の多く
は、両側の脳によって実行されるが、しかしながら、幾
つかのものは、一方もしくは他方の大脳半球に大部分が
片寄っている。これらの高次機能の幾つか、例えば会話
のような(殆んどの人々では左半球に片寄っている)に
関与している領域は、これまでに特定されている。しか
しながら、まだ知るべき多くの事が残されている、特に
意識のように魅惑的な問題が、それ故に、大脳皮質の機
能に関する研究は、神経科学における最も刺激的で活発
な研究領域の一つとされている。

大脳半球
小脳
脳幹部

視床および視床下部を
示す脳の断面図

視床
視床下部

基底核および脳梁を示す
脳の断面図
大脳半球
脳梁
基底核

顕微鏡の前の近代神経科学
の父、ラモン y カハル、
1890年

ニューロンと樹状突
起を撮影したカハル
の最初の写真

カハルの精巧な
ニューロンの描写 −
これらは小脳のもの

.
インターネットリンク: http://science.howstuffworks.com/brain.htm
http://faculty.washington.edu/chudler/neurok.html http://psych.hanover.edu/Krantz/neurotut.html

3

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ニューロンと活動
電位
ニューロンは、知覚系か運動系か、大きいか小さいか、ど
ちらであるかに関わらず、その全てに活動が電気的および
化学的の両方であるという共通点がある。ニューロンは、
神経系の全般的な状態の調節において、むしろ社会におけ
る個人が意思決定の過程において協同と競合するのと同様
の様式で、互いに協同および競合する。接合している軸策
から樹状突起において受容された化学的信号は、電気的信
号に変換され、全ての他のシナップスからの電気的信号と
足し合わせたり差し引いたりされ、かくして信号を他の部
位に伝達するかどうか判定される。そして、電位は、次の
ニューロンの樹状突起上の受容体に向かって軸策を伝わっ
て進み、この過程が繰り返される。

脊髄運動神経

錐体細胞

小脳プルキンエ細胞

細胞体
細胞体
細胞体
軸策

軸策

軸策

動的ニューロン
私たちが先の章で記述したように、ニューロンは、樹状
突起、細胞体、軸策およびシナップス終末から成る。 こ
の構造は、受容、統合、そして伝達の区画に再分割され
た機能的な区分を反映している。概略的には、樹状突起
は情報を受容し、細胞体は統合し、そして軸策は伝達す
る ― それらが処理する情報が、一方向にのみ伝わるこ
とから想定された分極化と呼ばれる概念で。
樹状突起

受容

細胞体

統合

軸策

シナップス

伝達

ニューロンの中には、多くの内部区画が存在する。これ
らは、ほとんどが細胞体で産生されて細胞骨格に沿って
輸送された蛋白質で構成されている。樹状突起から突き
出ている小さな突起物は、樹状突起棘と呼ばれている。
これらは、入ってくる軸策の殆んどが接合部を形成する
部位である。棘突起に輸送される蛋白質は、ニューロン
の接合性を作り出し維持するために重要である。これら
の蛋白質は、常に代謝回転しており、それらが役割を果
たし終わった時には新しいものによって取って代わられ
る。この全ての活動は燃料を必要とし、そして細部内に
はそれを働かせ続けるためのエネルギー工場(ミトコン
ドリア)が存在する。また軸策の終末は、成長因子と呼
ばれる分子に反応する。これらの因子は内部に取り込ま
れ、そして、それらがニューロンの遺伝子発現に影響を
与え、その結果として新しい蛋白質を作り出す場所であ
る細胞体に輸送される。これらは、ニューロンがより長
い樹状突起に成長することを可能にするか、その形や機
能に他の動的な変化を作り出す。情報、栄養素、そして
伝達物質は、常に細胞体に向かって流れ、そして細胞体
から流れ出ている。

ニューロンの重要な概念
いかなる構造と同様に、それは全部を一緒にして保持
しなければならない。脂質性の物質で構成されている
ニューロンの外膜は、樹状突起や軸策の中にまで同じ
ように伸びている管状および線維状の蛋白質の棒によ
って形成された細胞骨格で覆われている。その構造は、
フレームテントの管状の骨格の上に張り付けた帆布に
少し似ている。ニューロンの特別な部分は、それ自身
の活動や隣接細胞の活動を反映した再配列の過程とし
て、絶え間なく動いている。樹状突起は、新しい接合
部を伸ばしたり他を引っ込めたり形を変えていて、そ
して軸策は、あたかもニューロンが、もう少し大声で、
あるいは少し柔らかく他と話そうと骨を折っているか
のように新しい終末を成長させる。

4

樹状突起棘は、ニューロンの緑の樹状突起から突き出た小さ
な緑の突起物である。これが、シナップスが局在する部位で
ある。

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受容と判定

活動電位

細胞の情報受容側では、樹状突起は他の細胞から入って
くる軸策に密着しており、その各々は、約2000億分の1
メートルの非常に小さい隙間によって分離されている。
樹状突起は、一つの、二・三の、あるいは何千という他
のニューロンからの接触を受けているであろう。これら
の接合箇所は、古典的なギリシャ語の“一緒に握る”と
いう意味の単語からシナップスと呼ばれている。大脳皮
質細胞のシナップスの殆んどは、微かな信号を捜し出す

一つのニューロンから他のニューロンへ通信するた
めには、ニューロンの信号は、まず最初に軸策に沿
って移動しなければならない。どの様にニューロン
は、これを行うのか?

小さなマイクロフォンのように突き出している樹状突
起棘に局在している。これらの接触点における神経細
胞間の交信は、シナップス伝達と言われ、そして私た
ちが次の章で述べようとしている化学的な過程が関与
している。樹上突起が、それと送信側の軸策とを隔て
ている間隙を横切って放出された化学的な伝達物質の
一つを受容した時、受容側の樹状突起棘の内部に微小
電流が引き起こされる。これらは、通常は細胞に流入
してくる電流、興奮と呼ばれる、または細胞から流出
しているであろう電流、抑制と呼ばれる、である。こ
れらの陽性および陰性の電気の波は、樹状突起に集積
し、そして細胞体に拡散して行く。もしそれらが加算
されて非常に大きな活性にならないのなら、電流は即
座に減衰し、それ以上は何にも起こらない。しかしな
がら、もし電流が合計されて閾値を越える値になるな
らば、ニューロンは、他のニューロンに通信を送り伝
えることになる。

これらの神経線維に沿った移動は、むしろ波が飛び縄
を移動して行くようなものである。これは、軸策膜が
荷電イオンを通すために開閉できるイオンチャンネル
を有していることにより作動する。あるチャンネルは
ナトリウムイオン (Na+) を通過させ、一方、他のもの
はカリウムイオン (K+) を通過させる。チャンネルが
開いている時、Na+またはK+イオンは、膜の電気的な
脱分極に応答し、化学的および電気的勾配に逆らって
細胞の内外へ流れる。

この答えは、物理的および化学的勾配に閉じ込められてい
るエネルギーを利用すること、これらの力を効率的な方式
によって連結することによって決まる。ニューロンの軸策
は、活動電位と呼ばれる電気的なパルスを伝える。

そのように、ニューロンは、微小な計算機のようなも
のであり ― 絶えず足したり引いたりしている。それが
足したり引いたりしている物は、他のニューロンから
受け取った通信である。あるシナップスは興奮を起こ
し、他のものは抑制を起こす。これらの信号が、どの
様に感覚や思考、動作の基礎を成しているかは、その
ニューロンが埋め込まれているネットワークに大きく
依存している。

活動電位

5

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細胞体に活動電位が発生する時、最初に開くチャンネル
はNa+チャンネルである。ナトリウムイオンのパルスが
細胞内に瞬間的に流入し、そして新しい平衡状態が千分
の1秒以内に確立される。瞬く間に、膜内外の電位が約
100 mV に切り替わる。それは、陰性 (約 -70 mV) の内
部膜電位が陽性 (約 +30 mV) の電位に弾ね上がる。この
スイッチは K+チャンネルを開き、Na+イオンの流入と殆
んど同じくらい急速に、カリウムイオンの細胞外への流
出を引き起こし、これが、交替に、本来の内部が負の値
に膜電位の揺り戻しを引き起こす。活動電位は、家庭の
電灯のスイッチをパチンと点けて、そして即座に再び消
すよりも短い時間の中に終わってしまう。非常に少ない
数のイオンが、膜を横切って移動することによってこれ
を行い、そして細胞質内の Na+ および K+ の濃度は、活
動電位発生の間は有意に変化しない。しかしながら、長
期的には、過剰なナトリウムイオンを汲み出すことが役
割であるイオンポンプによって、これらのイオンの均衡
が保たれている。これは、船を浮かべている水の圧力に
抵抗する船体の全般的な性能を損なうことなく、バケツ
で水を汲み出すことによって帆船の船体の小さな水漏れ
を上手く処理することが出来るのと同様の様式で起こる。

活動電位は、複雑ではあるものの、電気的な出来事であ
る。神経線維は、電気の伝導体のように振舞う(それら
は、絶縁された電線よりは、遥かに低効率的ではある
が)。それ故に、一点で作り出された活動電位は、活動
的な膜とそれに隣接した静止的な膜との間にもう一つの
電位の勾配を作り出す。この様式で、活動電位は、神経
線維の一方の端から他方の端まで、拡散する脱分極の波
を積極的に押し広げる。

活動電位の伝導について考える上で助けとなるであろう
類似は、片方の端に点火された後の花火を伝わるエネル
ギーの移動である。最初の点火は、非常に素早い局所的
な活動の局所的な火花を引き起こす(活動電位の局在部
位における軸策へのイオンの流入出に相当)が、しかし
ながら、火花を散らす波の総体的な進行は、ずっと遅く
拡がる。神経線維の驚異的な特性は、使用済みの膜がそ
の爆発的な能力を回復し、次の活動電位に対して軸策膜
の準備をする非常に短い沈黙の期間(不応期)である。

これらの多くは、ある海洋生物の巨大なニューロン
とその軸策を使用して行われた素晴らしい実験に基
づいて、50年も以前から知られている。これらの
ニューロンの大きなサイズは、科学者たちが、変化
する電位を測定するために、その内部に微小な電極
を配置することを可能にする。今日では、神経科学
者が、全ての種類のニューロンにおいて個々のイオ
ンチャンネルを通過するイオンの動きを研究し、そ
の結果、脳内のこれらの流れの非常に正確な測定を
行うことを、パッチクランピングと呼ばれる近代的
な電気的記録技法が可能にしている。

研究の最先端

上の写真に示された神経線維(紫色は軸策を示している)
は、その周囲のものから神経の電気的な伝導を絶縁してい
るシュワン細胞(赤色)に包まれている。色は新しく発見
された蛋白質複合体を示す蛍光性の化学物質である。この
蛋白質複合体の崩壊は、筋肉の消耗を来たす遺伝的疾患を
引き起こす。

新しい研究は、このミエリン鞘を作り上げている蛋白質
について語っている。この覆いは、時にはグリア細胞が
役に立つように小さな隙間を残しているが、それを除く
不適切な部位からイオンの流れが漏れ出すのを防止して
いる。軸策は、そのNa+とK+イオンチャンネルをここに
集中させている。これらのイオンチャンネルの集りは、
活動電位が文字通り神経に沿って跳びはねる際に、それ
を押し上げて維持する増幅装置として機能している。こ
れは非常に速い。事実、ミエリン化されたニューロンに
おいては、活動電位は1秒間に100メートル!も疾走す
ることができる。
活動電位は、全てか − 無かであるという特徴的な性質を
有している。それらは、その大きさが異なるようなことは
無く、どれだけ頻繁に起きるかにおいてのみ異なる。この
様に、刺激の強さや持続が一個の細胞において信号化され
る唯一の方式は、活動電位の周波数の変化として信号化す
るものである。最も効率の良い軸策は、1秒間に1000回
までの周波数の活動電位を伝えることが可能である。

アラン ホジキンとアンドリュー
ハックスレイは、神経刺激の伝
達機構の解明によりノーベル賞
を受賞した。彼らは、プリムス
海洋生物学研究所においてイカ
の“巨大神経軸策”を研究に使
用した。

軸 策 の 絶 縁
大多数の軸策においては、活動電位は、かなりの速さで
移動するが、しかしながら、それは非常に速くはない。
その他の軸策では、活動電位は、実際に神経に沿って本
当に飛び跳ねる。これは、長く伸びた軸策が、その周囲
をミエリン鞘と呼ばれる、伸び出したグリア細胞の膜で
形成された脂肪に富んだ絶縁性の覆いで包まれているた
めに起こる。

6

インターネットリンク: http://psych.hanover.edu/Krantz/neurotut.html
http://www.neuro.wustl.edu/neuromuscular/

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化学伝達物質

活動電位は、軸策が他のニューロンの樹状突起と接触し
ているシナップスと呼ばれる特殊化された領域へ、軸策
に沿って伝達される。これらは、多くの場合は樹状突起
棘に局在している後シナップス構成要素から小さな隙間
で隔てられているシナップス前神経終末から成る。軸策
に沿った活動電位の伝播に寄与している電流は、このシ
ナップスの隙間を渡って行くことはできない。この隙間
をこえる伝達は、神経伝達物質と呼ばれる化学的な伝達
物質によって成し遂げられる。

しているトランスポーターと呼ばれる微小な真空掃除
機を、何時でも使用できる状態で保持している。これ
が、次の活動電位が来る前に、邪魔にならないように
化学伝達物質を片付ける。しかしながら、何も無駄に
はならない ― これらのグリア細胞が、伝達物質を処
理し、そして将来の使用に備えて、神経終末にある貯
蔵小胞に蓄えるために送り返す。グリア細胞による処
理のみが、シナップスから神経伝達物質を片付ける単
なる手段ではない。時には神経細胞自身が、伝達物質
分子をその神経終末に直接に汲みもどす。他の場合に
は、伝達物質が、シナップス間隙において他の化学物
によって壊される。

イオンチャンネルを開く伝達物質
球形の袋に詰め込まれている
化学伝達物質はシナプス接合部を
横切る遊離に使用される。

貯蔵と遊離
神経伝達物質は、軸策の末端部でシナプス小胞と呼ばれ
る小さな球形の袋に貯蔵されている。そこには、貯蔵の
ための小胞と遊離される準備が整った神経終末に近い小
胞とがある。活動電位の到達が、カルシウム(Ca++) を流
入させるイオンチャンネルを開放に導く。これが、”スネ
ア” ”タグミン” や “ブレビン” の様な ― 最近の科学冒険
物語の登場人物にとっては本当に良い名である ― 風変
わりな名前 を与えられた前シナップス蛋白質に作用する
酵素を活性化する。神経科学者は、これらの前シナップ
ス蛋白質が走り回って他のものに付きまとったり捕まえ
たり、そして遊離可能なシナップス小胞と細胞膜との融
合を起こし、張り裂けるように開き、そして化学伝達物
質を神経終末の外に遊離させることを、まさに、発見し
たところである。

神経伝達物質と受容体との相互作用は、鍵と錠の関係
に似ている。伝達物質 (鍵) の受容体 (錠) への付着は、
通常はイオンチャンネルの開口を引き起こす;これら
の受容体は、イオン透過性受容体と呼ばれている(図
参照)。 もし、イオンチャンネルが陽性イオン ( Na+
あるいは Ca++) の進入を許すならば、陽性電流の流入
が興奮を引き起こす。これが、興奮性シナップス後電
位 (epsp)と呼ばれる膜電位の変動を生み出す。典型的
な場合では、多くのシナップスがニューロン上に集ま
り、いかなる時でも、あるものは活動的であり、ある
ものは活動的ではない。もし、これらのepspの合計が
刺激を発火するための閾値に到達した時、新しい活動
電位が引き起こされ、そして、信号は、前の章で説明
したように、受信ニューロンの軸策を進んで行く。

受容体
伝達物質
(結合子)

伝達物質
受容体

G-タンパク

細胞外
細胞膜
細胞内

この伝達物質は、それから、シナップス間隙と呼ばれる
20 ナノメーターの隙間を横切って拡散する。継続的な再
利用過程における次の逆流過程として、その膜が、神経
伝達物質の再充填が行われる場所である神経終末に飲み
込まれた時に、シナップス小胞は再形成される。伝達物
資手が一旦反対側に到達すると、それは驚くべきほど素
早く ― 千分の1秒よりも短いが ― 次のニューロンの
膜に存在する、受容体と呼ばれている特殊化された分子
構造物と相互に作用する。グリア細胞は、また常にシナ
プス間隙の周辺に潜んでいる。これらの中の幾つかは、
シナップス間隙から伝達物質を吸い上げることを役割と

二次的
伝達物質
効果器

イオン透過性受容体 (左) は、イオンが通過するチャンネルを有して
いる ( Na+ や K+のような ) 。チャンネルは、輪状に配置された五つ
のサブユニットで作られている。代謝刺激性受容体 (右) は、チャン
ネルを有していないが、しかしながら細胞膜の中でメッサージを伝
えることが出来る G-タンパクに結びついている。

7

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脳の主要な興奮性神経伝達物質は、グルタメートである。
神経活動の卓越した正確さは、あるニューロンの興奮が
他のニューロンによる制御を伴うことを必要としている。
これは、抑制によって成されている。抑制性のシナップ
スでは、受容体の活性化は、抑制性シナップス後電位
(ipsp) と呼ばれる膜電位の変化を起こす陰性荷電イオン
の流入を許すようなイオンチャンネルの開口を引き起こ
す(図、参照)。 これが、膜の脱分極、そして、その結
果としての受信ニューロンの細胞体における活動電位の
開始に対抗する。二種類の抑制性神経伝達物質 ― GABA
と glycine がある。
シナップス伝達は、非常に速い過程である:シナップス
に活動電位が到着してから次のニューロンに epsp が発
生するまでに要する時間は− 1/1000 秒と非常に速い。
もし受信ニューロンにおいて epsp が新しい刺激を起こ
すために積算されて行くなら、異なるニューロンは、短
い機会の枠内に、他にグルタメートを届けられるように
時間を設定しなければならない;そして、その出来事を
停止するのに有効であるためには、また抑制も同じ時間
間隔で作動しなければならない。

興奮性シナップス電位 (epsp) は、-70 mV から 0 mV
に近い値への膜電位の変位である。抑制性シナップス
電位 (ipsp) は、反対の効果を持っている。

携わっている(図、参照)。そして、ニューロンの代
謝エンジンは、その回転を増して動き出す。神経変調
の影響としては、イオンチャンネル、受容体、輸送担
体、そして遺伝子発現の変化なども含まれる。これら
の変化は、興奮性および抑制性の伝達物質によって引
き起こされる変化に比べて、その開始は遅く、さらに
長時間持続的であり、そして、その影響はシナップス
を超えて拡がる。それらは、活動電位を誘発しないが、
神経ネットワークを通る刺激興奮の往来には重大な影
響を及ぼす。

伝達物質の同定
G-タンパクに共役している受容体に作用する多くの伝達
物質には、アセチルコリン、ドーパミンおよびノルアドレ
ナリンがある。 これらの伝達物質を遊離するニューロン
は、細胞に対する様々の影響を有するのみならず、それら
は数においては比較的少ないが、その軸策が脳内に広く投
射されていることから、それらの解剖学的な組織構造も注
目すべきものである(図、参照)。ヒトの脳には僅かに
1600個のノルアドレナリン・ニューロンが存在するだけ
であるが、それらは、脳および脊髄の全ての部分に軸策を
送っている。これらの神経変調性の伝達物質は、正確な感
覚情報を送り出さないが、分散されているニューロン集合
体に、その働きを最適化するために細かく調子を整える。
ノルアドレナリンは、種々の新規体験やストレスに反応
して遊離され、この外来刺激に対する個別のニューロン
の複雑な反応を組織化するのを助ける。数多くのネット
ワークは、その有機体がストレスの下にあることを“知
る”ことが必要であろう。ドーパミンは、陽性の感情的
特徴に関連した脳中枢に働きかけることによって、動物
に対する報奨となるような、ある種の状態を作り出して
いる(第4章、参照)。それに対して、アセチルコリン
は、その両方の作用様式を有しているようであり、イオ
ン透過性および代謝刺激性の両方の受容体に作用を及ぼ
す。それは、最初に発見された神経伝達物質であり、運
動ニューロンから横紋筋線維へ神経筋接合部を横切って
信号を伝えるためにイオン機構を使用している。それは、
また神経変調因子として機能することも出来る。例えば、
あなたが、何かある物に注意を絞り込みたいと望む時に
― それは、 関連する情報だけを留めて置く役割のため
の脳内の微調整ニューロンとして ― これを執り行って
いる。

変調性伝達物質
興奮性および抑制性神経伝達物質の正体の探求は、また
ニューロンから遊離される多くの他の化学物質の存在を
示した。これらの多くは、代謝刺激性受容体と呼ばれる
ニューロンの膜の非常に異なった一群の蛋白質との相互
作用を介して、ニューロンの機能に影響を与える。これ
らの受容体は、イオンチャンネルを含んでおらず、常に
シナップスの領域に局在しているわけでも無く、そして
最も重要なことには、活動電位の開始に導かないことで
ある。私たちは今、これらの受容体は、ニューロンの内
部で進行しつつある夥しい化学的過程の数々を調節した
り変調したりするものと考えている。それ故に、代謝刺
激性受容体の作用は、神経変調と呼ばれている。
代謝刺激性受容体は、通常は、細胞の外と細胞の代謝に
影響を与える細胞内の酵素とを連結している複合体粒子
に見出される。神経伝達物質が代謝刺激受容体によって
認識され、そして結合した時、G-タンパクと呼ばれてい
る橋渡しをする分子や他の膜結合酵素が、集合的に起動
される。伝達物質の代謝刺激認識部位への結合は、自動
車のエンジンキーに例えられる。それはイオン透過性受
容体が行うように、イオンのために膜の扉を開けたりは
しない。しかし、その代わり、細胞内の二次伝達物質を
作動させることによって、一連の生化学的な出来事に

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ノルアドレナリン細胞は、青斑核 (LC) に局在する。これ
らの細胞からの軸策は、例えば、視床下部 (Hyp) 、小脳
(C) および大脳皮質などの、中脳の至るところに分布して
いる。

シナップスに関する優れたウェッブサイトは: http://synapses.mcg.edu/index.asp

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薬物と脳

多くの人々は、薬物を使用して彼らの意識状態を変えた
いと願う絶え間ない望みを持っているように思われる。
彼らは、一晩中、眠らないで踊り明かすために、興奮剤
を使用する。他の者は、彼らの神経を静めるために鎮静
剤を用いる。あるいは、彼らに新しい様態の意識を体験
させたり、日々の暮らしの苦労を忘れさせたりすること
が出来る物質さえも。これらの薬物の全ては、脳内にお
いて、神経伝達物質や他の化学伝達物質のシステムと異
なった様式で相互作用する。多くの場合、薬物は、喜び
と報いを伴って働くべき自然の脳の仕組み ― 食べるこ
とや飲むこと、性交、そして学習や記憶にさえも重要な
精神的過程 ― を乗っ取ってしまう。

脳は、反復する薬物の存在に対し、ゆっくりと順応し
て行くが、しかしながら、どんな変化が脳内で進行し
ているかは、理解し難いこととして残っている。ヘロ
イン、アンフェタミン、ニコチン、コカイン、大麻の
一次作用部位は全て異なっているが、これらの薬物は、
脳のある領域において化学伝達美質ドーパミンの遊離
を促進する能力を共有している。これは“快楽”機構
を起動することと、必ずしも密接に関連しているわけ
ではないが、薬物によって引き起こされるドーパミン
の遊離は、脳における“快楽”の重要な最終的に共通
の経路であろうと思われている。それは、人を促して
薬物使用を続けさせる代表的なものである。

嗜癖と依存への道筋

個々の薬物 − どの様に作用するか
と摂取の危険性について

脳または脳の血液供給に作用する薬物は ― 痛みを緩和
するものの様に ― 計り知れない価値がある。娯楽のた
めの薬物使用は、非常に異なる目的を持っており、その
問題点は、それが乱用に繋がり得ることである。使用者
の全てが、余りにも容易に、依存あるいは嗜癖にさえな
る。彼または彼女は、それから、彼らが薬物習慣を中断
する時、非常に不快な身体的および精神的な禁断症状に
苦しむことになる。この依存の状態が、そうすることで
彼らの仕事や健康、そして家族が損なわれることが明ら
かであるとしても、使用者を薬物の渇望に導くことにな
る。極端な場合、使用者は、薬物の代金を支払うために
犯罪に引き込まれることにもなるだろう。
幸運にも、娯楽的薬物を使用している全ての者が、その
依存になるわけではない。これらの薬物は ― コカイン
やヘロイン、ニコチンの場合のように高い危険性のもの
から、アルコール、大麻、エクスタシーのような危険性
の低いものまで範囲があって、それらの依存になり易さ
が異なっている。薬物依存の発達進展の間に、体および

76%
92%
46%
13%
16%
2%
薬物を使用した者のパーセンテージ

アルコール
アルコールは、脳の神経伝達物質のシステムに作用して
興奮性伝達物質を低下させ、そして神経活動の抑制を促
進する。アルコールの作用は、飲酒の後、緊張緩和と上
機嫌の段階を、そして眠さと意識消失を経て進行する。
なぜ警察が飲酒運転に対して非常に厳しく、この厳しい
姿勢に非常に多くの公的な指示があるのか、これがその
理由である。ある人は、飲酒した時に、非常に攻撃的そ
して暴力的にさえなり、およそ通常の飲酒者10人中で
1人は、アルコールに依存的になるだろう。長期間のア
ルコール使用は、身体、特に肝臓を損ない、そして脳に
恒久的な損傷を生じることがある。飲酒をしている妊婦
は、損傷のある脳と低いIQを持った赤ん坊を持つ危険
を冒している。英国では、毎年、アルコールに関連した
病気で30,000人以上が死亡している。

タバコ

32%

アルコール

15%

マリファナ

9%

鎮静剤 および
処方薬

9%

コカイン

17%

ヘロイン

23%
薬物使用者の中で依存になったパーセンテージ

9

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場合、タバコと共に喫煙される)。大麻喫煙者は、肺疾
患を発症し易い傾向があり、そして、肺癌発病の危険
を冒してい ― これは未だ証明されてはいないけれど。
この薬物を販売する人たちが良く知っているように、
10人の使用者につき約1人が、薬物に依存するよう
になる。反復大量使用は、運転の技術や知的に厳しい
仕事とは相容れない;実験では、大麻の中毒になった
人は、複雑な精神的作業を実行することが出来ないこ
とが確立されている。未だ証明されていないけれど、
若い人による大量使用によって、感受性の高い個人で
は、精神の疾患である精神分裂病(p.51 参照)が誘発
されることを示す幾つかの証拠がある。

アンフェタミン類

“火の点いたタバコを咥える頭蓋骨”
ヴィンセント ヴァン ゴッホ 作 1885 年

ニコチン
ニコチンは、全てのタバコ製品に含まれる活性な成分で
ある。ニコチンは、神経伝達物質であるアセチルコリン
を通常は認識する脳内の受容体に作用する;それは脳の
本来の警戒警告機構を作動させる傾向がある。これがあ
れば、喫煙者が、タバコは集中するのを助けて気持ちを
安らげる効果があると言うのは驚くような事ではない。
厄介なことは、ニコチンが高度に嗜壁性であり、そして
多くの常習的な喫煙者が、禁煙した時に出る不快な兆候
を避けるということ以上に良い理由も無く喫煙を続ける
ことである。快楽は遠く去る。そして、脳に対する有害
な作用も無くなったかのような時、タバコの煙は、肺に
対して極度に有害であり、長期間にわたる暴露は、肺癌
を、そしてまた肺や心臓の他の疾患を誘発する。英国で
は、毎年、100,000 人以上が、喫煙に関連した病気で死
亡している。

大麻
大麻は、私たちに難題を与える。それは、大麻と化学的に
非常に似ている神経伝達物質を使用する脳の重要な本来の
システムに作用するからである。このシステムは、筋肉の
制御や痛みに対する感受性の調節に関係している。賢い使
用や、そして医学的状況下では、大麻は非常に有用な薬物
で有り得る。大麻は、人を楽しませたり、寛がせたり、陶
酔させるものである。そして、それは、人の音や色、時間
の感覚が微妙に変わる、夢の中のような状態を引き起こす
ことが出来る。
いくらかの使用者が、大量を摂取した後に不快なパニック
発作を経験することもあるけれども、過量によって死亡し
た人は全く無いように思われる。大麻は、少なくとも一時
は、英国の30歳以下の人口の約半分に使用されていた。
ある人々は、それは合法化されるべきであり ― そうする
ことにより、この薬物の供給と他の更に危険な薬物の供給
との間の連結を断ち切ることが出来ると信じている。不運
にも、ニコチンの様に、喫煙が、大麻の成分を体内に届け
る最も効果的な方法である。大麻の煙は、紙巻たばこと同
じ複数の有毒成分の混合物を含んでいる(そして、多くの

10

アンフェタミン類は“デキセドリン”“スピード”そし
て“エクスタシー”と呼ばれるメタンフェタミン誘導体
を含めた人造の化学物質である。これらの薬物は、脳内
では、二種類の本来から存在する神経伝達物質の遊離を
引き起こすことによって作用する。その一つはドーパミ
ン ― それは、多分、アンフェタミン類の強力な覚醒作用
と陶酔作用を説明している。もう一つはセロトニン ― そ
れは、幸福感や幻覚をも含めた夢の様な状態を引き起こ
す薬物の能力を説明するものと思われる。デキセドリン
やスピードは、主にドーパミンの遊離を促進し、エクス
タシーは、もっとセロトニンを遊離させる。さらに強力
な幻覚剤であるd-LSDも、また脳のセロトニン機構に働
く。アンフェタミン類は、強力な精神刺激薬であり、そ
れらは危険である ― 特に過量では。動物実験は、エクス
タシーが、持続的な、多分、永久的なセロトニン細胞の
減少を引き起こすことを示している。これが、多分、週
末にエクスタシーを使用した者が苦しむ“週半ばの憂う
つ”を説明している。毎年、何十人もの若い人たちが、
それを服用した後で死亡している。 恐ろしい精神分裂病
様の精神異常が、デキセドリンやスピードの使用後に起
こり得る。あなたは、 スピードが、試験の時に助けにな
るという考えに誘惑されるが ― しかし、そうではない。
それは、あり得ない。

ヘロイン
ヘロインは、植物性産物であるモルヒネの人造的な化学
誘導体である。大麻と同じ様に、ヘロインは、エンドル
フィンとして知られている本来から存在する神経伝達物
質を用いる脳内のシステムを乗っ取る。これらは、痛み
の制御において重要である ― それだから、その作用を
模倣するような薬物は、医薬品の中で非常に価値がある
ものである。ヘロインは、注射もしくは喫煙されるが、
摂取すると直ぐに、即効性の快楽的な感覚を生じる ―
おそらく報奨機構に対するエンドルフィンの作用による
ものと思われる。それは、高度に習慣的であり、依存性
が現れるに伴って、これらの快楽的感覚は急速に鎮まり、
絶え間の無い薬物渇望に取って代わられる。中等度の過
剰量でさえも人を殺すことが出来るほど、非常に危険な
薬物である(それは、呼吸反射を抑制する)。ヘロイン
は、多くの人々の生命を破滅させる。

コカイン
コカインは、強力な精神刺激薬として作用するのみなら
ず、激しい快楽感覚を引き起こすことが出来る今一つの
植物由来の化学部質である。アンフェタミン類と同じ様
に、コカインは、脳において、より多くのドーパミンや
セロトニンの利用を可能にする。しかしながら、ヘロイ
ンと同様、コカインは、非常に危険な薬物である。その
中毒、特に“クラック”と呼ばれる喫煙型薬物の中毒に
なった人々は、容易に暴力的および攻撃的になり、そし
て、過量では生命を脅かす危険がある。依存になる傾向
が強く、コカインの常習を続けるための経費は、多くの
使用者を犯罪に引き込むことになる。

関連インターネットサイト: www.knowthescore.info, www.nida.nih.gov/Infofax/ecstasy.html,
www.nida.nih.gov/MarijBroch/Marijteens.html

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触覚 と 痛覚

触覚は特別である ― 握手、キス、洗礼。それは、この
世界との私たちの最初の接触を与える。私たちの身体中
に配列されている受容体は、痛みの感覚に対する他のも
のと共に、体制感覚の分野の異なる側面 ― 感触、温度
そして体位 ― に対して調整されている。識別の能力は、
体表面の至るところで異なっており、指先のような所で
は緻密な感覚を示す。また、運動系との重要な相互作用
を示すような活発な研究も重要である。痛みは、私たち
の身体に対する損傷の報告や警告に役立っている。それ
は、強い感情的な影響を有しており、身体と脳の中で強
力な制御を受けている。

マイスナー
小体

の受容体が、急速に変化する圧入に素早く適応し、それに
よって最適な応答が出来ることを知っている(振動や動揺
の感覚)。メルケル触盤は、皮膚の持続的な圧入に良く応
答し、(圧迫の感覚)、ルフィーニ終末器は、ゆっくりと
変化する圧入に応答する。
体性感覚受容体に関する重要な概念は、受容領域の概念で
ある。これは、各々、個々の受容体が応答する皮膚の領域
のことである。パチーニ小体は、マイスナー小体より長い
受容領域を有している。これらの受容体および他の受容体
は、共に集まって、あなたが体表面全体で物を感じること
が確実に出来るようにしている。一旦、それらが刺激を感
知したならば、受容体は、交替で、脊髄後根に入って行く
感覚神経に沿って刺激を送る。触覚受容体と脊髄を結ぶ軸
策は、抹消から大脳皮質に向かって、極めて急速に情報を
運んでいる大きなミエリン化された線維である。冷たさや
暖かさ、そして痛みは、もっと緩やかに伝道する“剥き出
し”の終末を持つ細い軸策によって検知される。温度受容
体も、また適応を示す(実験箱、参照)。体性感覚皮質と
呼ばれている大脳皮質の一次感覚野に投射する前に、延髄
と視床には、触覚の中継局が存在する。神経は、中央線を
横切っており、その為に、身体の右側は左の、左側は右の
大脳半球によって代わって表されている。

軸策
メルケル
触盤
温度適応に関する実験

汗腺
ルフィーニ終末器

パチーニ小体
種々の非常に小さい
知覚受容体は、皮膚
の表面に埋め込まれ
ている小体である。

それは、皮膚で始まる
数種類の小さな受容体が、体表面の下、皮膚の真皮層に
埋め込まれており、それらは、最初に顕微鏡で同定した
科学者の名前に因んで命名されている、パチーニおよび
マイスナー小体、メルケル触盤、そしてルフィーニ終末
器は、異なる様態の感触を感じ取る。これらの受容体は
全て、機械的な変形に応答して開くイオンチャンネルを
持っており、実験的に微小電極で記録できる活動電位を
誘発する。単一の感覚神経からの記録を行うため、自身
の皮膚に電極を挿入し、自分たちを実験材料とする科学
者たちによって、いくつかの驚くべき実験が、数年前に
行われた。これらの実験および麻酔した動物を用いて実
施された同様の実験から、私たちは、今、最初の二種類

この実験は、非常に単純なものである。あなた
には、タオル掛けのような、約1メートル位の
長さの金属棒と2杯の水の入ったバケツが必要
である。一つのバケツには、かなり熱い熱水を
入れ、もう一つには、出来る限り冷たい冷水を
入れておく。あなたの左手を片方のバケツに入
れ、右手を他のバケツに入れ、そして、少なく
とも1分間位はその状態を保つ。さて、あなた
の手を抜き出して急速に乾かし、そして金属棒
を握ると、棒の両端は、あたかも異なる温度で
あるかのように感じられる。何故?

身体からの入力は、体性感覚皮質上に体系的に“地図化”
され、体表面の代理のようなものを形成している。身体
のある部分は、あなたの指先や口の様に、高密度の受容体
とそれに対応して多数の感覚神経を有している。私たちの
背中の様な領域は、より少ない受容体と神経を持っている。
しかしながら、体性感覚皮質では、ニューロンの充填密度
は、均一である。その結果として、皮質における体表面の

11

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.
“ 地図 ”は、非常に歪曲されたものとなる。時には、それ
は感覚のホムンクルスとも呼ばれる。それが、もし、体表面
全体に均一な密度で広がっている触覚受容体を補足するもの
として実際に存在するならば、全く奇妙に歪曲されたもので
あろう。

そして、体制感覚系の全てのレベルで続けられる。一次
的な感覚皮質および運動皮質は、脳内では互いに近傍に
存在している。

あなたは、二点識別試験法によって、この身体中の異なった
感受性を、容易に試験することが出来る。紙クリップをU字
型に曲げて、あるものは先端を2−3 cm 離し、他はもっと近
いものを作る。そして、目隠しをした友人に紙クリップの先
で、身体のいろいろな部分を触らせる。あなたは、片方の先
端あるいは両方を感じますか?実際には両方で触れられてい
るのに、時々は、片方の先端を感じることがありますか?何
故?

積極的な実地調査は、接触の感覚にとって極めて重要で
ある。あなたが、異なる織物や異なる等級の紙やすりの
間のように、手触りの微妙な差を区別しようとしている
と想像してみて下さい。次の条件のどれが、最も繊細な
識別力を生み出すと思いますか?
• 検体の表面に指先を置く?
• 検体の表面に指先を走らせる?
• 指先の上で検体に機械を走らせる?
そのような行動実験の結果は、脳の何処で適切な感覚情
報が分析されるかという疑問に導く。脳機能的画像解析
は、触れることによる手触りや物体の同定には、皮質の
異なる領域が関与していることを示唆している。脳画像
解析は、また、体制感覚野における身体の地図が、経験
によって変化し得ることを示すことにより、皮質の形成
性の洞察を生み出そうとしている。例えば、盲目の点字
読者は、読字に使用する人差し指に対応する皮質を代表
する部位の増加を、そして弦楽器奏者は、左手の指に対
応する皮質の代表部位の拡大を示す。

痛み

ホムンクルス。人の姿は、身体の各部位から入って
くる受容体の数に比例して、体制感覚皮質の表面に
描かれている。それらは、最も歪められた形をして
いる。

鋭敏な識別力
細かい部分を感知する能力は、身体の異なる部分によって
大きく違っており、そして、指先や唇では最も高度に発達
している。皮膚は、高さ1/100ミリメートル以下の盛り上が
った点を感知できるほど十分な感受性を有する ― 目の見え
ない人が点字を読むように、それを撫でる備えをさせてい
るかのように。ある活発な領域の研究が、異なる型の受容
体が、例えば手触りの違いの区別や物体の形の特定などの
ような異なる仕事に、どの様に貢献しているかという問い
を発した。
触覚は、それが受容したものだけに応答するような、ただ
単に受動的な感覚ではない。それはまた、運動の積極的な
制御に関与している。あなたの指を動かす腕の筋肉を制御
している運動皮質のニューロンは、指先の触覚受容体から
感覚性の入力を得ている。あなたの手から滑り落ちそうに
なる物を、感覚系と運動系の間の迅速な伝達を介するより
も良く検知することが、どの様にして出来るのか? 感覚系
と運動系の間の交信は、脊髄にある1番目の中継局で始ま
り、運動ニューロンへの固有フィードバック機構をも含み、

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しばしば、別の皮膚感覚の一つとして触覚と同類と見做
されるけれど、痛みは、実際には非常に異なった機能を
持ったシステムであり、そして非常に異なる解剖学的機
構を有する。その主な特質は、不快であること、個人に
よって極めて大きな違いがあること、そして驚くべきこ
とに、痛覚受容体によって運ばれる情報は、その刺激の
性質については殆んど情報を提供してくれないこと(擦
り傷による痛みとイラクサに刺された痛みの間に殆んど
違いが無い)である。古代ギリシャ人は、感覚ではなく
て感情だと見做していた。

動物の知覚神経単一線維からの記録は、組織損傷を来た
すか、あるいは単にその恐れがあるような刺激 ― 強度
の機械的刺激(例えば、抓ること)、強い熱、そして種々
の化学的刺激など、に対する反応を示している。しかし
ながら、そのような実験は、この主観的な経験について
は、私たちに何にも教えてくれない。

分子生物学的手法は、今や数多くの侵害受容体の構造や
性質を明らかにしている。それらは、約46℃以上の熱
や組織の酸性化、そして ― 再び驚き ― チリ唐辛子の活
性成分に対して反応する受容体をも含んでいる。強度の
機械的刺激に反応する受容体の遺伝子は、まだ同定され
てはいないが、しかしながら、それらは、そこに存在す
るに違いない。二種類の末梢求心性線維が、有害な刺激
に反応する:Aδ線維と呼ばれる比較的高速のミエリン化
線維および非常に細くて低速の非ミエリン化 C線維であ
る。両方の神経群は脊髄に入り、そこで大脳皮質に投射
する一連のニューロンとシナップスを形成する。それら
は、平衡する上昇経路、一方は痛みの局在を取り扱う経
路(触覚の経路と同様)、他方は痛みの感情的な面に対
応しているもの、を介して働いている。

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モルヒネ

Met-エンケファリン

Met-エンケファリンのような内因性オピオイドを含む多く
の化学伝達物質が関与している。鎮痛薬モルヒネは、幾つか
の内因性オピオイドが作用するのと同じ受容体に作用する。

脊髄(最下部)の領域から、ACC(腹側帯状束)
および島を含む脳幹と皮質における複数の領野に
至る痛みの上行路。

この第2の経路は、体制感覚皮質とは全く異なる、腹
側帯状束皮質および島皮質を含む領野に投射している。
催眠を用いた脳の画像解析実験では、痛みの ’不快さ’
から単なる痛みの感覚を分離することが可能である。
被験者は、痛いくらいに熱い湯に手を浸し、それから痛
みの強度あるいは不快さが増加もしくは減少するという
催眠暗示を受けさせる。陽電子射出断層撮影装置 (PET)
を用いて、経験的な痛みの強度が変化する時に体制感覚
皮質の活性化が起こり、他方、痛みの不快さの体験が腹
側帯状束皮質の活性化を伴うことが見出されている。

痛みが増強される逆転現象は、痛覚過敏と呼ばれて
いる。痛覚閾値の低下、痛みの強度の増加、そして
時には、痛みを感じる領域の拡大あるいは侵害刺激
の無いときの痛みさえもある。これは、重大な臨床
上の問題であろう。痛覚過敏は、上降性痛覚経路の
種々の段階での複雑な出来事ばかりでなく、末梢の
受容体の感受性発現も必要とする。これらは、化学
的に仲介される興奮と抑制の間の相互作用を含んで
いる。慢性的痛みの状態に見られる痛覚過敏は、興
奮性の増進および抑制性の減退の結果である。この
多くは、感覚情報を処理するニューロンの反応性の
変化に因る。重要な変化が、関係する神経伝達物質
の作用を仲介する受容体分子に起こる。痛覚過敏の
細胞内機構に関する理解の大きな進歩にもかかわら
ず、慢性的な痛みの臨床的な治療は、まだ悲しいこと
には不十分である。

研究の最先端

痛みの無い人生?
例えば歯科治療のような、痛みの原因を避けたいと言う
私たちの願望を考慮すると、あなたは、痛みの無い人生
が良いものであろうと想像するでしょう。そうではあり
ません。と言うのは、痛みの重要な機能の一つは、痛み
を生じるような刺激を避けることを、私たちに学ばせる
ことだからです。脊髄に入る侵害神経に生じた活動電位
は、屈筋反射のような自動的保護反射を惹起する。それ
らはまた、危険あるいは脅威のある状況を避けることを
学ぶための手引きとなる、まさにその情報を供給する。

痛みのもう一つの重要な機能は、活動の抑制 ― 組織の
損傷後、その治癒を起こさせる休息である。ある状況
では、勿論、活動や避難反応は阻害されないことが重
要である。この様な状況での対処を助けるため、痛み
を抑制あるいは増進することが出来るような生理的な
機構が発達している。発見されている最初のそのよう
な変調機構は、内因性鎮痛物質の遊離である。戦闘中
の兵士のように負傷し易い条件下、痛みの感覚は、驚
くべき程度まで抑制されているが ― おそらく、これら
の物質が遊離されるからであろう。動物実験は、水管
灰白質のような脳の領域を電気的に刺激することによ
って、痛覚閾値の著しい上昇が見られること、これが
中脳から脊髄に至る下降路により仲介されていること
を示している。

伝統的な中国医療では、痛みの軽減のために“刺鍼法”と
呼ばれる手法を用いる。これは、細い針を必要とし、この
針を、子午線と呼ばれるものに沿って身体の特定の位置で
皮膚に刺し、そして患者を治療する人は、これを回したり
振動させる。彼らは、確かに痛みを軽減させるが、しかし
最近まで、その理由を確信しているものは誰もいない。
40年前、それがどの様に働くかを見い出すため、中国に
研究室が設置された。その発見は、ある振動周波数での電
気的刺激が、エンドルフィンと呼ばれる、met-エンケファ
リンのような、内因性オピオイドの遊離を惹起すること、
一方、他の周波数での刺激が、ダイノルフィンに感受性の
システムを活性化することを示した。この仕事が、薬物の
代わりに痛みの軽減に使用できる低価格の電気刺鍼機(左
図)の開発を導き出した。一対の電極を手の上の“ヘク”
点に置いて(右図)、もう一方の電極を痛みの部位に置く。

もっと刺鍼法について読みたいと望むなら?
このウェッブサイトを試して下さい . . . http://acupuncture.com/Acup/AcuInd.htm

13

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視覚

人間は、周囲の出来事に関する決定を下すために、常に
目を使用している高度に視覚的な動物である。他の霊長
類と同様に前方を向いた目によって、私たちは、身体か
ら離れた多くの周囲の様相を知覚するために視覚を使用
する。光は、それが網膜の光受容体に作用する場である
目に入ってくる電磁エネルギーである。これが、神経興
奮を発生させ、そ野興奮が視覚脳の経路やネットワーク
を通じて移動して行く過程を起動する。中脳および大脳
皮質への個別の経路が、異なる視覚機能を仲介し ― 動
き、形、色、そして視覚世界の違いを示す他の特徴を感
知して表示している。その中の全てでは無いが、幾らか
は、意識に到達できる。皮質においては、数多くの識別
的な視覚領野のニューロンが、異なる種類の視覚的決定
をするために特殊化されている。

あったとして、“見ること”としては、この次の像は、
他の誰か ― 脳の中にいる誰か ― に見られることが必
要である。限りない逆行を避けるため、実際にその道筋
に沿った説明も無しで、私たちは、視覚の世界について
解釈して決定を下すために、どの様に目から来る暗号化
された情報を利用するか ― という視覚脳が解決しなけ
ればならない本当に大きな問題 に直面する。
一度、網膜上に焦点を結んだら、1億2千5百万個の光
受容体が、あたった光に反応して微小な電位を発生する
ことにより、網膜の表面上に並べられる。これらの信号
は、シナップスを経由して網膜における細胞のネットワ
ークを通じて進み、次に、その軸策が集合して視神経を
形成している網膜神経節細胞を活性化する。これらは脳
に入り、そして、明瞭に区別された機能を有する、異な
る視覚領野に活動電位を伝える。

目に当った光
光は、瞳孔を通って目に入り、そして、角膜と水晶体
によって目の後方にある網膜の上に焦点を結ぶ。瞳孔
は、光の強さの変化に応じて拡大あるいは縮小するた
め、拡張したり収縮したり出来る色素を持った虹彩に
よってその周りを囲まれている。目がカメラのように
働き、周囲の世界の像を作ると想像することは当然で
はあるが、しかし、これは、幾つかの点で誤解を招き
易い喩えである。第1点は、目は常に動いていること
から、決して静止した像は存在しない。第2点として
は、もし、網膜上の像が、脳に像を送るためのもので

神経節細胞
双極細胞
水平細胞
杆状体
網膜錐体

瞳孔
虹彩

角膜
網膜

水晶対

網膜

盲点

視神経

人間の目。目に入った光は、後部に存在する網膜
上に、水晶体によって焦点を結ぶ。そこにある受
容体は、エネルギーを検出し、そして伝導過程に
よって、視神経を伝わって行く活動電位を発生さ
せる.

14

視神経
アマクリン細胞

網膜。光は、視神経の線維および細胞の網状組織( 例
えば、双極細胞)を通じて、網膜の後部にある杆状体
や網膜錐体の領域に進む。

この視覚処理の最も初期の段階については、多くのことが
知られている。最も数の多い光受容体は、杆状体と呼ばれ
ているが、それは、他のもの、網膜錐体と呼ばれる少数の
部類のもの、に比べて約1000倍も光に対して感受性で
ある。大雑把に言うと、あなたは、夜間は杆状体によって
見て、昼間は網膜錐体で見ている。異なる波長の光に対し
て感受性の違う、三種類の網膜錐体が存在する。網膜錐体
は、単純に色彩視覚を生み出すと言うのは、過度の単純化
ではあるが ― しかし、それらは色彩に対して活発である。
もし、一つの色に過剰暴露したならば、網膜錐体の色素は
順応して、その後しばらくは、私たちの色彩認識に対する
寄与が少なくなる(実験箱、参照)。

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過去25年の間に、光変換(杆状体および網膜錐体にお
ける光の電気信号への変換)の過程に関する重要な発見
が成された、ある種の視覚色素の欠損による色盲の遺伝
的な基盤、網膜の網状構造の機能や二種類の異なる型の
神経節細胞の存在。これらの細胞の約90%は非常に小
さく、一方、他の5%の細胞は、は大きなM型もしくは
大型細胞である。私たちは、後ほど、M型細胞における
異常が失読症のある症例の基になっていることを知るで
あろう(第9章)。

色彩順応の実験

二つの大きな円の間にある小さな十字記号( + )
に、少なくとも30秒間、焦点を合わせなさい。
そして、あなたの凝視を、下の十字記号に移しな
さい。二つの“黄色い”円は、今、異なった色に
見えるでしょう。あなたは、何故これが起こった
のか考え出すことができますか?

The pathways fro eye to brain.

視覚皮質は、多くの領野から成り、形、色、動き、距離
などのような、視覚世界の種々の側面に対処している。
これらの細部は、柱状に配列されている。視覚応答細胞
に関する重要な概念は、受容体視野 ― 優先的な種類の
像に応答する細胞が分布する網膜の領域 ― である。V1
において、皮質での処理の最初の段階では、ニューロン
は、特定の方向の線や縁に対して最も良く応答する。重
要な発見は、どの細胞の柱においても、全てのニューロ
ンが同一の方位を持った線や縁に対して興奮することで
あり、隣接する細胞の柱は、ほんの少し異なる方位に最
も良く応答し、そのようにしてV1の表面全体に分布して
いることである。これは、皮質の視覚細胞が世界を解釈
するための本来備わっている機構を有していることを意
味するが、しかしながら、それは、変えることの出来な
い機構ではない。個々の細胞が左あるいは右の目の活動
によって駆動される程度は、経験によって変更を加えら
れる。全ての感覚系に見られるように、視覚皮質は、私
たちが可塑性と呼ぶ現象を表わす。
デビッド
ヒュベル
トーステン
ウィーゼル

視覚処理の次の段階
各々の目の視神経は、脳に投射している。各神経の線維は、
視交差と呼ばれる構造で出会い;その半分は、もう一方の
視神経の“交差しない”半分と結びつく場所である反体側
へ“交差”する。これらの線維の束は、合わさって 視索
を形成し、今や、両眼からの線維を収容して(外側膝状核
と呼ばれる構造におけるシナップス中継を経て)大脳皮質
に投射する。ここで、私たちの周りにある視覚空間の体内
“描写”が創出される。触覚と同じ様式で(前章)、視覚
世界の左側は右半球に、右側は左半球になる。この神経的
な描写は、各々の目からの入力を受けており、そのことか
ら、脳の後部にある視覚領野(視覚野 V1, V2 などと呼ば
れている)に存在する細胞は、どちらかの目における像に
応答して興奮することができる。これは、双眼性と呼ばれ
ている。

デビッド・ヒュベルとトーステン・
ウィーゼルによって視覚皮質の細胞
(左)から作られた電気的記録は、幾つ
かの驚くべき性質を明らかにした。これ
らは、方位選択性、その細胞の美しい円
柱状の構成(下)、システムの可塑性を
含んでいる。これらの発見は、ノーベル
賞の受賞に導いた。

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研究の最先端
もしあなたが盲目なら、見ることが出来ますか?確か
に出来ません。しかしながら、脳の多様な視覚領域の
発見は、ある種の視覚能力が、意識できる感覚なしで
も起こることを示している。一次視覚皮質(V1)に持
続的な損傷を持つ人たちは、彼らの視野において物体
を見る事が出来ないと報告しているが、しかし、彼ら
が見ることが出来ないと言っている物体に到達するよ
うに依頼した時、彼らは、注目すべき正確さでそれを
行う。この奇妙な、しかし魅惑的な現象は“盲目の視
覚”として知られている。これは、多分、目から皮質
の他の部分への平行する連絡によって仲介されている。
見たものに気付いていないことは、正常な人々におい
ても、またの日常的な現象である。もし、あなたが自
動車を運転中に同乗者とお喋りするならば,あなたの
鋭敏な意識は、すっかり会話の方へ向けられているで
あろう ― それでも、あなたは、信号で停止したり、
障害物を避けたり、効率的に運転している。この能力
は、ある種の機能的な盲目の視覚を反映している。

単に黒と白の点?始め
は、その像の縁あるい
は表面を特定すること
は難しい。しかしなが
ら、一度 、それがダル
メシアン犬と知ったな
ら、その像が“跳び出
てくる”視覚脳は、感
覚的な情景を解釈する
のに内部の知識を使用
する。

で機械的なものであり得る。例え最も単純な決定で
さえも、感覚的な入力と存在する知識との間の相互
的な影響を必要とする。

意思決定の神経的基盤を理解しょうとする試みの一方法
は、個人に通常の日々の活動を行わせ、彼らが様々な事
を行う時のニューロンの活動を記録することであろう。
私たちは、脳の1,011個のニューロンの各々1個づつの
活動を、1/1000秒の精密さで、記録することが出来る
視覚皮質の複雑な回路は、神経科学者の関心を奪う重大な
ことを想像するであろう。そして、私たちは、数多くの
難問の一つである。異なった型のニューロンが、皮質6層
データのみならず、それを全て処理するという極めて困
にわたって並べられており、私たちが今になって理解し始
めた非常に精密な局所的ネットワークで共に繋がっている。 難な仕事を手にすることになる。私たちは、その解釈に
おいて、さらに大きな問題さえも手に入れることになる
それらの繋がりのあるものは興奮性であり、あるものは抑
であろう。何故かを理解するため、人々が物事を成す異
制性である。ある神経科学者は、基準にかなった皮質微小
なった理由について、しばらく考えなさい。私たちが見
回路 ― コンピューターのチップのような ― があること
を示唆しているが、全ての人が同意しているわけではない。 た鉄道の駅に向かって歩いている人は、おそらく列車を
捉まえるため、誰かを見送るために、あるいは、機関車
私たちは、今、一つの視覚領野における回路は、他の領野
のナンバープレート集めに行くことさえもある。彼らの
のものと多くの類似点を持っていると思っているが、しか
意図を知らないでは、脳の活性化パターンと行動の相関
しながら、視覚脳の各々の小片が有している視覚世界の異
を解釈することは非常に困難であることを証明している。
なる様相を解釈するための異なった方法を反映するような
微妙な相違があるに違いない。また、視覚の錯覚に関する
実験神経科学者は、それ故に、行動の条件を綿密な実験
研究は、視覚情報の解析の異なる段階で進行している処理
統制の下に置くことを好む。これは、特別な課題を設定
過程の種類についての洞察を与えてくれる。
し、被験者が、幅広い練習の後に力の及ぶ限り、それを
実行することを確実にし、そしてそれから、彼らの実行
ぶりを観察することによって達成される。最も良い種類
の課題は、興味を持たれるくらい十分に複雑で、その上
に何が起こっているかを分析することが出来る機会を提
供するほど十分に単純であるような課題である。良い例
は、刺激 ― 多くの場合は二つより多くない ― の発現に
対して、単純な選択(例えば、どちらの光の点が大きい
か、あるいは明るいか?)を反応として、視覚的な決断
を行うような過程である。その様な課題は単純であるけ
れども、意思決定の完全な周期を組み入れている。感覚
ブリストルにある有名な喫茶店の壁のタイル(左)
の情報は入手されて、そして分析される;成された決断
は、実際は長方形であるが―しかし、その様には見
には、正しい答と正しくないものがあり;そして、その
えない。そのタイル面の配置が、線や縁を処理する
実行が正しいか否かに従って、賞罰が割り当てられるこ
ニューロンの複雑な興奮性および抑制性の相互作用
とがある。この類の研究は、一種の“視覚の物理学”で
によって生じる幻覚を創り出している。カニッツァ
ある。
の三角形(右)は、実際には存在しない ― しかし
ながら、あなたが、それを見るのを止めさせられな
い!あなたの 視覚系は、その情景の中で白い三角形
動きと色の決定
が他の対象物の表面上にあると“決定”している。
重大な最近の興味ある主題は、どのようにニューロンが
視覚的な動きに関する決断に関与しているかである。対
決断と不断
象が動いているか否か、そして、どちらの方向に、とい
うことが、人間や他の動物にとって極めて重要な判断で
大脳皮質の主要な機能は、多くの情報源から受取った感覚
ある。相対的な動きとは、一般には、対象が他の近くの
情報を形にし、それに従って行動する能力である。意思決
ものと異なることを指し示している。動きの情報の処理
定は、この能力の決定的に重要な部分である。これは、過
に関与する視覚脳の領域は、ヒト脳画像処理技術(第14
程の思考、知識に基づいた、あるいは“認知”の部分であ
章)を用いて脳領域間の連結のパターンについて検討す
る。利用可能な感覚的証拠は重視されるべきであり、そし
ると共に、ヒトでは無い動物において個々のニューロン
て、選択(例えば、行動するか行動を控えるかなど)は、
の活性を記録することにより、別個の解剖学的領域とし
その時に入手可能な最良の証拠に基づいて作られる。ある
て同定することが出来る。
種の決定は、複雑で長い思考を必要とし、一方、他は単純

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A

B

C

D

動きの感受性。A. 左側の一次視覚皮質 (V1) および運動−感受性ニューロンが見い出されるMTと呼ばれる (時にはV5とも呼ば
れる) 領域を含むサル脳の側面図。B. 運動−感受性ニューロンにおいて、北西方向の運動に応答して活動電位(縦の赤線)が
頻繁に起こるが、反対方向では稀である。MT (あるいはV5) の異なる縦列の細胞が、異なる方向の運動を信号化している。C.
任意の方向(一貫性 0%)あるいは全て一方向(一貫性 100%)に動く点を映す、運動感受性に関する実験に使われる円形の
TVスクリーン。D. その点が動きそうな方向を示すサルの指標は、それらの一貫性が増大するに伴って増加する(黄色の線)。
異なる方向性の縦列の電気的な微小刺激は、望ましい方向の概算を変化させる(青色の線)。

移動する点のパターンについて単純な視覚決定が成され
る間、これらの領野、MTあるいはV5、の一つに存在する
ニューロンが、サルにおいて記録されている。殆んどの
点は異なった方向に任意に動くが、しかしながら、その
中の小部分は、上、下、左、あるいは右と、単一の方向
に一貫して動く。観察者は、パターンの動きの全般的な
方向を判定しなければならない。その務めは、大きな割
合の点が一方向に一貫して動くように整えることにより
簡単に成し得るが、あるいは、任意とは対照的に一貫し
て動く点の割合が減少したりすることによって、さらに
困難になる。V5における細胞の活性が、正確に運動信号
の強さを反映していることが分かる。このニューロンが
特定方向に運動に選択的に応答し、そして、好ましい運
動方向に動いている点の割合が増加している時、それら
の活性は整然とそして正確に増加している。
驚くべきことには、サルであろうとヒトであろうと、行
動の判断を行う時には、幾つかの個々のニューロンは、
観察者であるかのように、点の動きを良く検知している
かのごとく機能する。その様なニューロンの記録用電極
を介する微小刺激は、サルが行おうとしている相対的な
行動の判断を偏らせることさえも出来る。非常に多くの
数のニューロンが視覚的な動きに感受性であり、その決
定が、たった二・三ではなくて多くのニューロンの活動
に基づいているはずと仮定すると、これは注目に値する
ことである。色に関する決定は、同様の方法で続けて行
われる(研究の最先端 ― 上記、参照)。

ネッカーの立方体は、絶えず知覚的に一変する。網膜の像は
変化しないが、しかしながら、私たちは、最初に、私たちに
近い左上に角を持った立方体を見て、そして、あたかも後ろ
へ引いて行くように見える。稀に、それは、平らな表面上に
交差する線の組のようにさえ見える。多くの型の逆転可能な
図形があり、その幾つかは、視覚脳が、ある時点でどの配置
が支配的であるかを決定する時に関与している神経信号の探
求に使用される。

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研究の最先端
色彩感受性細胞。ある種のニューロンは、光の異なる波長に対して異なった活動のパターンを示す。あるものは長い
波長に、他のものは短い波長に。あなたは、これで色彩を感知するには十分であろうと思うでしょう、しかし、これ
は、多分、そうではない。 左側の発火している細胞と右側のそれを比較してみましょう。あなたは、その違いが分か
りますか?

左側。(芸術家ピエット・モンドリアンに因んで)モン
ドリアンと呼ばれる巧みなデザインの彩色パッチワーク。
これは、長い、中くらい、そして短い波長の光の異なる
組み合わせによって彩色されており、そのために各々の
パネルは、周囲のパッチの存在のために、例え、私たち
には常にそれらが異なる色と感知されるとしても、実際
には全く同じ混合の光を反射している。左側の細胞は、
V1において記録される、全ての場合に殆んど同じ程度
に発火している。それは、色彩を“感知”していない、
それは、各々のパッチから反射される同じ混合波長に対
して、単に応答しているだけである。

右側。V4における真の色彩−感受性細胞は、私たち
が赤として見るモンドダリアンの区分に対して発火
するが、他の区分に対しては、ずっと少ない。この
異なった応答は、同じ三つの波長エネルギーの組み合
わせが各々の区分から反射されたとしても起こる。そ
れ故に、ある神経科学者は関与する領域はそれだけで
はないと疑いを抱いているものの、おそらく、V4 は、
私たちに色彩の感知を可能にしている脳の領域であろ
う。

信じることは見ること

私たちの視覚の世界は、驚くべき所である。目に入った
光は、最も単純な物体から目を眩ませたり欺いたりする
V5 領域は、単に視覚刺激の動きを記録する以上のことを
ような芸術作品に至るまでの周りの世界を、私たちに認
行っている、それは感知された運動を記録していることで
識させることが出来る。光の小さな点に反応する網膜の
ある。もし、点の領域が周囲の点の動きのために一方向あ
光受容体の働きから、視覚の世界において何かが動いて
るいは他方向への動きとして知覚される、即ち動きの錯覚、 いるか否かを決定するV5領域のニューロンまで、何百万
のような視覚的なトリックが行われたなら、錯覚の領域に
というニューロンが関与している。この全てが、明らか
対応するニューロンは、感知される動きの左方向あるいは
に楽々と、私たちの脳の中で起こっている。私たちは、
右方向にたいして異なって発火するだろう。もし、動きが
その全てを理解してはいないが、しかし、神経科学者た
完全に任意ならば、普通は右方向への動きを好むニューロ
ちは、偉大な歩みを進めつつある。
ンは、観察者が任意の運動信号が“右方向”に動いている
と報告した時には僅かに多く発火する(そして、その逆も
同じ)。 ニューロンによる“右方向”か“左方向”かの
コリン・ブラックモアは、どの様に視
決定の違いは、観察者が運動の様子を何と判断するかを反
覚系が進化して来たかを理解するため
映しており、動きの刺激の絶対的な性質によるものではな
に貢献した。これは、胎児脳の異なる
い。
部分の間の相互作用を調べるための細
視覚的な決断および不断の他の例として、例えば、いわ
ゆるネッカーの四方体(図)のように、純粋に曖昧な知
覚目標に対する反応がある。この様な型の刺激に関して
は、観察者は、常に一つの解釈から別の解釈に揺れ動い
ている不断の状態に置かれる。同様の競合が、もし左目
が縦線のパターンを、一方、右目が横線のパターンを見
た場合に体験される。結果として得られる知覚は、視野
競合と名づけられ、観察者が、最初に縦線が支配的であ
り、次に横線が支配的になり、また縦線に戻ると報告す
るようなものである。もう一度、観察者の知覚が横から
縦に切り替わる時には、視覚皮質の多くの異なる領域の
ニューロンが反映している。

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胞培養を用いた先駆的な研究を含んで
いる(左) 。右では、私たちは、皮質に
成長する前の、“握手”を行おうとし
て他の繊維(オレンジ色に染色)に出
会うために発育中の皮質から成長して
行く軸策(緑色に染色)を見ることが
出来る。

インターネットリンク:faculty.washington.edu/chudler/chvision.html
http://www.ncl.ac.uk/biol/research/psychology/nsg

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運動

ボールを捕球することを考えてみましょう。簡単?その
様に見えるが、しかし、この簡単な運動でさえ行うため
には、あなたの脳は、ある注目すべきことを行わなけれ
ばならない。私たちは、それを全て当然の事と思ってい
るが、まだ、その上に計画がある:ボールは軽いか重い
か?どの方角から来るのか、そして、どれくらい速く飛
んでくるのか?同調がある;どのようにして、捕球のた
めに四肢を自動的に同調させるのか、そして、どんな方
法が最良なのか? そして、実行がある:あなたの腕は正
しい場所に達しているか、そして、あなたの指は、適切
な時期に閉じるか?神経科学者は、今や、それらに関与
する多くの脳の領域があることを知っている。これらの
領域における神経活性は、大脳皮質および基底核から小
脳や脊髄に至る緩い命令の連鎖 ― 運動支配体制 ― を形
成するために組み合わさっている。

神経筋接合部
運動支配体制の最も低位の末端部、脊髄において、運動
ニューロンと呼ばれる何百もの特殊化された神経細胞が、
その発火の速さを増している。これらのニューロンの軸
策は、収縮性の筋線維を活性化しょうとする筋肉に投射
している。各々の運動神経の終末枝は、一つの筋肉内で
限られた数の筋線維と特殊化された神経筋接合部を形成
する(下図、参照)。運動神経の各々の活動電位は、神
経終末からの神経伝達物質の遊離を引き起こし、筋線維
において対応する活動電位を発生させる。これは、各々
の筋線維内部の細胞内貯蔵部位からCa2+イオンを遊離さ
せ、その結果、筋線維の収縮を惹起して張力および運動
を生み出す。

筋肉と接触するのために、神経は、神経筋接合部に
おいて、個々の筋線維と特殊化された接触を形成す
る。それらの発達に伴って、多数の神経線維が各々
の筋線維に向かうが、しかし、ニューロン間の競合
により、一本を除いて全ての神経が除去される。そ
して、最終的に成功した神経だけが、その神経伝達
物質であるアセチルコリンを、運動終盤(赤色に染
色)にある特殊化された分子検出器に向って遊離す
るために残される。この画像は、共焦点顕微鏡を用
いて作られた。

筋肉に関連した電気的活動の記録(電気的筋運動活
性)。

腕の筋肉における電気的な現象は、皮膚を通しても、増
幅器を用いて記録することが可能であり、そして、これ
らの電気的筋運動記録法 (EMGs) は、各々の筋の活動の
水準を測定するのに用いられている(上図、参照)。
脊髄は、幾つかの異なる反射経路を介して、筋肉の制御
において重要な役割を演じている。これらの中で、あな
たを鋭い物や熱い物から保護している屈筋反射、および
姿勢に関わっている伸展反射がある。一般に良く知られ
ている‘膝蓋腱反射’は、たった二種の神経細胞 ― 動
きを起こす運動ニューロンと、シナップスを介して繋が
り筋の長さの信号を送る知覚ニューロン ― が関与して
いるに過ぎないところから、むしろ特別であると言える
伸展反射の一例である。これらの反射は、歩く時あるい
は走る時の四肢の律動的な動きのように、多かれ少なか
れ完全な行動を組織している脊髄回路において、一緒に
組み合わさって、さらに複雑なものとなる。これらは、
運動ニューロンの同調した興奮および抑制に関与してい
る。
運動ニューロンは、あなたの骨を動かす筋肉への最終
共通経路である。しかしながら、脳は、これらの細胞
の活性を制御することにおいては重大な問題を抱えて
いる。ある特定の行動を遂行するためには、どの筋肉
を、どのくらい、そしてどの順番で動かすべきか?

支配組織の頂点 − 運動皮質
運動支配組織の反対側の端では。大脳皮質において、動
きの個々の要素に対し、極めて多数の細胞により途方も
無い数の計算が行われなければ成らない。これらの計算
は、動きが円滑に巧みに行われることを確かにするもの
である。大脳皮質および脊髄の運動ニューロンとの間に

19

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動きの実験

誰が私を動かすのか?友人と一緒に、この実験を
試してみて下さい。あなたの右手の掌に、かなり
重い本を載せて下さい。さて、左手を使って右手
から本を持ち上げて下さい。あなたの仕事は、右
手を静止状態に保つことです。あなたは、これが
容易であることを見出すでしょう。では、もう一
度、試してみよう。あなたの友人が手から本を持
ち上げる間、あなたの手を完全に静止した状態に
保って下さい。これが出来る人は僅かしか居ない。
ご心配無く;あなた自身が行う時には容易である
ことを知っている動作に近づくことが出来るよう
になるまで、多くの回数の試技が必要です。

動作の制御に関与する脳の幾つかの領域
おいて、脳幹部の重要な領域が、脊髄から上行してくる
四肢および筋肉に関する情報と大脳皮質から下行する情
報とを結合する。

この実験は、他人が行動のきっかけを与えて
くれるのを見ている時よりも、あなた自身で
全てを行うことによって、あなたの脳の知覚
運動領野が、より多くの知識を得られること
を示す。

運動皮質は、体制感覚皮質(12ページ、参照)の直前に
存在する、脳の表面を横切って走る薄くて細長い組織片
である。ここに、体の完全な地図がある:(脊髄運動神
経との結合を介して)異なる四肢の動きを起こす神経細
胞は、局所解剖学的に配置されている。記録電極を使用
することによって、ニューロンは、おそらく、この地図
のいかなる部分でも見出され、それらは、適当な筋肉に
おける活動の約 100 ミリ秒前に活性化される。運動皮質
において正確に何が暗号化されているかについては、長
期に渡る議論がある ― 皮質にある細胞は、人が行いたい
と望む活動、あるいは、それを行うために収縮しなけれ
ばならない個々の筋肉を暗号化している。この疑問に対
する答えは、少々、異なる ― 個々のニューロンは、いず
れをも暗号化していない。その代わり、活動がニューロ
ンの総体の発火によって規定されている集団暗号が、使
用される。
運動皮質の直ぐ前に、動作の計画や動くための脊髄回路の
準備、および、動作を見ることと身振りを理解することの
間の結び付きを確立する過程に関与している重要な前−運
動領野が在る。目覚しい新知見には、サルが手の動きを見
た時、および、動物がそれと同じ動作を行った時、の両方
に応答する鏡ニューロンのサルにおける発見がある。鏡
ニューロンは、行動の模倣および理解において重要なよう
である。運動皮質の後、頭頂皮質においては、多数の異な
る皮質領域が、私たちの身体や周囲の視覚的および聴覚的
な対象物の空間的な描写に関わっている。それらは、私た
ちの四肢がある所や私たちにとって興味のある対象物があ
る場所の地図を持っているように思われる。この領域の損
傷は、例えば脳卒中後などの、対象物に達することに失敗

したり、私たちの周りの世界のも部分的な無視や拒絶さ
えも引き起こす。いわゆる頭頂性無視の患者は、対象物
(しばしば、彼らの左側のものに対して)に気付くこと
に失敗し、あるものは彼ら自身の体の左側さえも無視す
ることがある。

基底核
基底核は、大脳半球の深部、皮質の下に局在する相互
連結領域の集まりである。どの様にして働いているか
と言うことは全く解明からは程遠い状態であるが、それ

“…鏡ニューロンは、DNAが生物学に対して行ったことを、心理学に対して行うで
あろう:それらは、 統一的な枠組みを提供し、そして、これまでは実験にとって
は神秘的で近づき難いものとして残されていた精神的な能力の主人役を説明する
助けとなるであろう。それらは、霊長類の脳の発達に向っての偉大な跳躍である”.
V.S. ラマチャンドラン

20

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らは、行動の開始には極めて重要である。基底核は、
むしろ、複雑なフィルターのように働いているようで
あり、皮質の前半分(知覚、運動、前前頭および辺縁
系領域)から受け取る莫大な量の様々な入力の中から
情報を選択している。基底核の出力は、運動皮質領域
にフィードバックされる。

いるということが分かる。全ての段階において、あな
たは、筋肉に導かれる信号の流れの中に、知覚情報を
統合することが必要であろう。

一般的なヒト運動異常、パーキンソン病、は、振戦と
運動開始困難を特徴とする。それは、あたかも基底核
にある選択フィルターが塞がれたようなものである。
問題は、黒質と呼ばれる(いわゆる、外見が黒いこと
から)脳の領域において、長く投射される軸策が神経
伝達物質であるドーパミンを基底核に向って遊離して
いるニューロンの退縮である(下の研究の最先端領域
箱、参照)。基底核におけるドーパミン軸策の標的ニ
ューロンに対する正確は配列は、非常に込み入ったも
のであり、異なる神経伝達物質の間の重要な相互作用
を示唆している。脳内でドーパミンに変換される薬物
L-ドーパを用いた治療は、ドーパミンの含量を回復さ
せ、そして運動を回復させる(第16章、参照)。
基底核は、また、報酬に導く行動の選
択を可能にする学習において、重要で
あると思われている。
樹状突起の広範囲の‘枝分かれ’を示す小脳のプルキンエ細
胞。これは、私たちが学習する熟練した動きの正確なタイミ
ングに必要な無数の入力を受け取ることに役立っている。

小脳
小脳は、上手な滑らかな動きには極
めて重要である。それは、その複雑
な細胞構造が極めて詳細に地図にで
表されている美しいニューロンの機
構である。基底核と同様に、それは、
運動制御に関連して皮質領域と、そ
して、脳幹の構造とも広範囲にわた
って相互に連結している。小脳の損
傷は、同調性の乏しい運動、平衡の
消失、不明瞭な言語および数々の認
識困難に導く。良く知っていること
のように聞こえる。アルコールは、
小脳に対する強力な作用を有してい
る。
小脳は、また、運動の学習や順応に
とって不可欠である。ほとんど全ての自発的な行動は、
運動回路の細かい制御を頼みにしており、そして、小
脳は、― 例えば、タイミングに関してなど ― それら
の最適の調節に重要である。それは、非常に規則的な
皮質の配列を有しており、知覚系、皮質運動領域、脊
髄そして脳幹からの膨大な量の情報を統合するために
進化したように思われる。熟練した動きの獲得は、あ
る種のシナップス結合の強さを減弱さあせる長期抑制
(LTD) と呼ばれる細胞の学習機構に依存している(可
塑性の章、参照)。小脳の機能に関する幾つかの説が
ある;その多くは、それが、あなたの頭の中に、どの
様にして運動系が働いているかという“モデル”―
あなた自身の体の仮想現実模擬装置のようなもの ―
を作り出すという考えを含んでいる。それは、複雑な
ネットワークに組み込まれたシナップスの可塑性を用
いて、このモデルを構築する。では、もう一度、その
ボールを補給してみよう、そして、動いている視覚的
目標に関連した動作の計画、あなたの四肢の動きのプ
ログラミング、および、あなたの腕の姿勢反射の調整
から ― 殆んど全てのレベルの運動の階層が関与して
ting appropriately

研究の最先端領域
基底核
皮質求心路
10,000個の
皮質終末

尾状核

樹状突起棘の
1000個の
ドーパミン
シナップス

被殻

ドーパミン
求心路

黒質 (SN)

線条体ニューロン

ドーパミンの予期せぬ話。
動作や習慣の基となっている化学は、それが代謝刺激性受容
体(第3章)に作用する場である基底核において、ニューロ
ンに向って遊離される神経伝達物質ドーパミンを意味してい
る。そこでは、それは、活動を誘引するものとして、そして
適切な活動に対する報奨の信号として両方の働きをしている。
興味ある新発見は、報奨が期待されていない時にドーパミン
の遊離が最も高くなることである。それは、正しい出力を引
き起こすために運動系の強化を本当に促がそうとする時、学
習段階において、ドーパミンニューロンは最も強く発火する
ということである。そして、行動は、ドーパミンの連続爆発
的な遊離を介して、順々に繋ぎ合わせられる。その後、もし
複雑な動きが習慣的になるならば、そのシステムは、ドーパ
ミンの報奨なしで自由活動を行う。この時点で、特に、もし
動きが正確に時間で規定されなければならないなら、小脳は
役割を果たし始める。
a role.

ex movements become habitual, the system free-runs without

どの様に神経科学者が行動の制御を見出したかという歴史について、次のサイトで少し学習しよう:
http://www.pbs.org/wgbh/aso/tryit/brain/

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発達中の神経系

脳の基本的な設計は、人それぞれにおいて、実際上、同一
であり、そして。全ての哺乳動物を通して、はっきりと分
かるほど同様である。それは、大部分は遺伝的に決定され
ているが、しかしながら、ネットワークの細かい部分につ
いては、脳の電気的活動によって、特に若い頃に影響され
ている。その様な複雑さは、私たちが、どの様に脳が発達
するのか完全に理解することからは未だに程遠いが、しか
し、最近になって。遺伝学革命のお陰で、明瞭な考え方が
現われてきた。

A

B

一個の受精卵を取って、そして指示
に従え。
ヒトの体および脳は、単一の細胞 ― 受精卵 ― から発達
してくる。しかし、どの様に?発達生物学の支配的な原理
は、ゲノムは、体の器官を作り出すための一組の指示であ
り、青写真ではない、ということである。ゲノムは、それ
らの工程が入念に準備されている40,000 ばかりの遺伝子
である。これらの指示を実行することは、― 青写真を描
くには多くの設計図を要するような構造を、折る、曲げる、
拡げる、などのような限られたセットで作り出す ― 中国
の折紙技法のようである。胎児期の始めには、比較的小さ
いセットの遺伝的指示が、発達する間に、脳の細胞やその
連結の巨大な多様性を生み出すことが出来る。
驚くことに、私たちの遺伝子の多くは、ショウジョウバエ、
Drosophila と共有されている。全く、ショウジョウバエ
の研究のお陰で、ヒト神経系の発達において重要であるこ
とが知られている遺伝子の大多数は、最初に同定された。
脳の発達を研究している神経科学者は、それぞれが特定の
分子または細胞内の出来事を調べるのに利点を持っている
幅広い多様な動物 ― ゼブラフィッシュ、カエル、ヒヨコ、
マウス ― などを用いて検討している。ゼブラフィッシュ
の胎児は透明であり ― 発達に伴って各々の細胞を顕微鏡
下で観察することを可能にしている。マウスは急速に繁殖
し ― そのゲノムは地図が作られており、殆んど完全に塩
基配列が決められている。ヒヨコとカエルは遺伝子研究へ
の適用性は少ないが、それらの大きな胎児は、細胞が異常
な位置に動かした時に何が起こるかなどのような ― 顕微
手術操作を可能にする。

C
D
E
F

第一歩…
脳の発達における第一歩は、細胞分裂である。もう一つ
の重要な段階は、分裂を停止して、そして個々の細胞が
ニューロンやグリア細胞の特徴のような ― 特異的な性
質を獲得する細胞分化である。分化は、物事を空間的に
配列する。異なる種類のニューロンは、パターン形成と
呼ばれる過程において、いろいろな位置へ移動する。
パターン形成の最初の主要な出来事は、ヒトの妊娠から
三週目の胎児が分裂細胞の二枚の結合したシートに過ぎ
ない時に起こる。

22

神経板は、神経管の中に折込まれている。A. 受精
後3日目のヒト胎児。B. 胎児の上(背側)表面に形
成される神経板。C. 二・三日後、胎児は、前面(腹
側)の末端に折りたたまれた大きくなった頭を発達
させる。神経板は、頭と尾の両端に開いたままでの
こるが、D, E, Fの間で閉じる。神経管閉鎖における
様々の時機を示している頭から尾までの異なる段階
の脊髄。

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二重層の上面にある細胞の小片は、脳および脊髄の全体
を形成するように指示を与えられている。これらの細胞
は、神経板と呼ばれ、その前部が脳を形成し、後部が脊
髄になるべく運命づけられているテニスラケット型の構
造物を形成する。これらの細胞の運命を指図する信号は、
胎児の正中骨格や筋肉を続けて形成する下の層から出て
来る。初期神経系の種々の領域は、異なる集団の遺伝子
を発現し、― 前脳、中脳および後脳など ― 別個の細胞
構造と機能を持った脳の領域の出現の前兆になる。

Rolling around
一週間後、神経板は丸くなり、閉じて管になり、そして胎
児の中に沈み込み、そこで将来の表皮によって包み込まれ
たようになる。細胞の形の変化、分裂、移動、そして細胞
間の接着を含む更に重大な変化が、次の二・三週間で起こ
る。例えば、頭の部分のような神経管の弯曲は、体幹部位
に向かって適切な角度で曲がる。この型の形成は、さらに

A

26 日

神経溝
神経堤

B

B

28 日

D
C
35 日

E

F

D

49 日

受胎後 (A) 4週目から (D) 7週目のヒト脳の形態発生。異な
る領域が拡大し、そして、頭−尾軸線にそって様々な弯曲が
存在する。

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もっと精密な分解能のレベルに進行し、究極的には、若い
ニューロンに対して個々の独自性を与える。事態が誤って
進行することもある。神経管の閉鎖の不全は、通常は脊髄
下部に限られる状況であるが、脊椎披裂を来たす。それは
悲惨ではあるが、生命を脅かすようなものではない。それ
に対して、 頭部末端部の閉鎖不全は、組織化された脳の
完全な欠損、無脳症として知られている状況を来たす。

あなたの生涯における位置を知れ。
基本型形成の基になる原理は、前から後ろまで、そして
頭の天辺から足の爪先まで ― 細胞が、神経系の主要な
軸に相対して位置を知ることである。実際には、各々の
細胞は、地図を読む人が、定められた地点からの距離を
測定することによって彼または彼女の位置を割り出すよ
うに、これらの直交する座標に関して、その位置を測定
する。この働きの分子レベルでの様式は、胎児は、神経
管において、信号分子を分泌する数多くの限られた分極
した領域を設ける。各々の場合において、分子は、その
源から拡散し、距離に伴って濃度勾配を形成する。この
位置検知機構の例としては、脊髄の上部から底部までの
軸(背腹方向の)がある。神経管の底部は、素晴らしい
名前 ― 音速のハリネズミ ― を持った分泌性の蛋白質を
発現する。音速のハリネズミは、底板から拡散し、その
距離に従って背腹方向の軸にある細胞に作用する。近く
に存在する時は、音速のハリネズミは、特定の型の介在
ニューロンを作る遺伝子の発現を誘発する。遠く離れて
は、今や低濃度の音速のハリネズミは、運動ニューロン
を作る別の遺伝子の発現を誘導する。

動かない、または何処へ行くか知る。
一旦、ニューロンが、その個々の独自性を獲得し、分裂
を停止したなら、成長円錐として知られている拡大した
先端部を持った軸策を伸ばす。敏捷なや山岳案内人の様
に、成長円錐は、都合のいい進路を選択する技能を用い
て組織を通過して移動するために特殊化されている。そ
れが移動するに連れて、むしろ伸びた引き綱に繋がれた
犬のように、その後ろに軸策を伸ばす。一旦、その目標
に到達したら、成長円錐は、その運動能力を失い、そし
てシナップスを形成する。軸策誘導は、最高の航海術で
あり、短距離でも長距離であっても正確である。それは
また、高度の精密さで標的細胞を選択するためだけでは
なく、そこに到達するために、成長円錐は、異なる部位
に向かっている他の成長円錐と交差しなければならない
大変ひたむきな過程である。その経路に沿って、成長円
錐を引き付ける(+)または反発(−)する案内キュー
が、道筋の発見を助けるが、これらの案内キューの発現
調節に対応する分子機構は、不十分な理解のままで残さ
れている。

電気的活動による彫刻
最初から、ニューロンの空間的配列および結合性の両方
において高度の正確さが達成されるが、神経系のある部
分の配線は、後ほど、軸策の刈り込みやニューロンの死
のような活動依存性の改良を受けさせられる。これらの
喪失は、おそらく無駄のように思われるだろうが、完成
した完全な脳を構築段階のみで作り上げることは、常に
可能あるいは望ましいわけではない。発達は、“下手な
職人”であると言われているが―それは、また彫刻家で
もある。例えば、明瞭な視覚を得るために絶対的に必要

24

軸策および成長円錐(全部先端のスパイク)の伸展に伴って、
ニューロン(青色)が出会う種々の型の案内キュー。局部およ
び遠隔部の両方のキューは、成長円錐と引き合う(+)あるい
は反発し合う(−)ものである。特異的な分子案内キューの幾
つかの例を挙げる。

な目と脳との間におけるニューロンの部位−対−部位の
地図の作製は、網膜におけるパターン化された電気的活
動の影響を介して達成される。また、結合の最初の一揃
いは、サルでは約8週令、ヒトでは多分1歳位で、その
後で視覚系の基本パターンが完結する臨界期の間に刻み
込まれる。興味ある疑問は、そのような早期の発達プロ
グラムが、病的なニューロンの喪失(例えば、アルツハ
イマーやパーキンソン病)の場合や麻痺を来たす脊髄損
傷の場合に再活性されることはあるか否かである。後者
では、軸策は、傷害に続く再成長を促されるが、しかし
ながら、それらが適切に再結合できるか否かは、熱心な
研究の領域として残されている。

ゲノム革命
私たちは、脳を造り上げるのに必要な遺伝子の完全なカタ
ログを、急速に獲得しつつある。分子生物学的手法の驚異
的な力のお蔭で、発達の間に、私たちが望む如何なる場所
および時にも、発現の調子を変えることによって遺伝子の
機能を試験することが出来る。現在、主な仕事は、細胞の
シートを働く脳に変換する遺伝子調節の支配性を理解する
ことである。それは、神経科学者の壮大な挑戦である。

研究の最先端領域
幹細胞は、全ての部類の異なる種類の他の細胞に変化する
潜在力を持った体の細胞である。あるものは、胎児幹細胞
と呼ばれており、発達の非常に早い時期に増殖する。他の
ものは、骨髄および母親と新生児とを結んでいる臍帯にお
おいて見られる。神経科学者たちは、成人の脳において、
損傷したニューロンの修復に利用可能であるかどうかを見
い出そうと試みている。
現在のところでは、殆んどの
仕事は、動物で行われている
が、希望は、私たちが、最終
的にパーキンソン病のような
疾病で損傷された脳の領域を
修復できることである。

発達のある段階では、毎分250,000 個の細胞が、あなたの脳に加えられている。
それについて、もっと読みましょう:http://faculty.washington.edu/chudler/dev.html

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失読症

あなたは、読むことの学習が、どれほど困難であったか
覚えていますか?その進化の起源が非常に古い話すこと
とは違って、 読むことと書くことは、比較的最近の人間
の発明である。世界中に点在する地域の集団が、何千と
いう話言葉が少ない数の区分された音(英語では44の音
韻)で作られていること、そして、これらが、さらに少
ない数の視覚的な記号で表されることを悟った。これら
の記号を学ぶことは時間を要し、ある子供たちは、異常
な困難を体験する。これは、いかなる知能の欠如による
ものではなく、その訳は、彼らの脳が、読むことに必要
な特別な用件をマスターするのが困難であることを見出
したからである。私たちは、十人に一人の割合で、今は
その神経学的名称、発達性失読症により知られているこ
の状態を有している。
失読症は、非常に一般的である。その障害を持つ子供た
ちは、容易に読める友だちと同じくらい知的であること
を知った時に、なぜ自分たちには読む事がそれ程に困難
なのか理解できないことから、失語症は、悲惨さの真の
原因となる。多くの子供たちは自信を失い、これが彼ら
を、焦燥、反抗、攻撃性、非行さえも含む下向きの螺旋
状進行に導くことになる。それでも、もし彼らの幼少年
期の読む事に関する問題が、彼らの全ての希望や自尊心
を失わせていないならば。多くの失語症患者は、他の領
域 ― スポーツ、科学、コンピューター、商業、芸術 ―
において偉大な才能を現わすことができる。従って、失
読症の生物学的基礎を理解することは、それ自身が重要
であるばかりでなく、悲惨さの重荷を阻止することにも
貢献することになる。より上手に読む過程を理解するこ
とは、おそらく私たちを、この問題に打ち勝つ、あるい
は問題を処理する道に導くであろう。
読むことは、アルファベットの視覚記号を正しい順番に
認識できること ― 子供が学ぶどの様な言語の正字法 ―
そして、単語の中の切り離された音を正しい順番で聴く
ことが出来ることに依存している。これは、音素構造と
呼ばれているものを引き出すことを意味しており、それ
によって、記号は正しい音に変換されることができる。
不運にも、殆んどの失読症は、正字法的および音韻論的
な単語の両方の特徴を分析することでは、遅くて不正確
である。

文字や音を正確に順番づける能力は、視覚および聴覚
の両方の機構に依存している。良く知らない単語、そ
して読むことの初心者には全てが良く知らないもので
あるが、に対しては、各々の文字は特定され、そして
正しい順序に並べられなければならないが、この過程
は、思ったほど容易ではない。何故なら、目は、一つ
の文字から次の文字へ素早く動く小さな運動をしなけ
ればならない。文字は、目が固定する間毎に特定され
なければならないが、それらの順番は、各々の文字が
見えた時に、目が何処に向けられているかによって定
められる。目が見たものは、眼球運動システムからの
運動信号によって統合されなければならないが、多く
の失読症患者が持っている問題は、この視覚運動統合
に関するものである。

読んでいる間の目の動き。 ペン記録計の上下の動きは、左右
の動きに対応している。

眼球運動システムの視覚調節は、大型細胞系として知られ
ている大きなニューロンのネットワークよって支配されて
いる。この名称は、そのニューロン (細胞) が非常に大型(
(magno) であることによる。このネットワークは、網膜か
ら、大脳皮質および小脳への通り道を経て、眼の筋肉の運
動ニューロンまで辿ることができる。それは、動きの刺激
に特に良く応答するように特殊化されており、それ故、移
動する目標を追いかけるのに重要である。このシステムの
重要な特性は、目が固定されなければならない文字を離れ
た時、読んでいる間、運動信号を発生することである。こ
の誤動作信号は、目を目標に引き戻すために眼球運動シス
テムにフィードバックされる。大型細胞系は、堅実に目を
各々の文字に順に向けるのを助けること、それ故に、それ
らの順番を決定することにおいて、極めて重要な役割を演
じている。

小細胞層

大型細胞層

コントロール

100 µm

失語症

正常人における良く組織化された小細胞と大型細胞および
ある種の失読症患者における組織混乱を示す外側膝状核の
組織化学染色。

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神経科学者は、視覚大型細胞系が、多くの失読症におい
て、僅かに障害されていることを見出している。直接的
に脳組織を見ることは、これ(図)を示す一方法である
が、しかし、さらに失読症患者の視覚運動に対する感受
性は、正常な読み手より劣っており、運動刺激に応答す
る彼らの脳波は異常である。脳の画像解析は、また、視
覚運動に対して感受性である領域において、機能的活性
化の様式が変化していることを示している(第15章、脳
の画像解析、参照)。失読症における目の調節は、安定
性が少ない;それ故、彼らは、しばしば、読もうとする
時に、文字が動き回って位置を変えるように思われると
訴える。これらの視覚的混乱は、多分、視覚大型細胞系
が、良い読み手で行われているのと同じくらい上手に目
を安定化することに失敗した結果である。

音を正しい順番に
多くの失読症患者には、また、単語の音を正しい順番に
並べられないことから、単語を誤って発音する傾向があ
り(例えば、ロリィポップをポリィロップのように発音
する)、彼らは、早口言葉は非常に下手である。彼らが
読む時は、彼らは、言い表わそうとする文字を音へ変換
するのは、さらに遅くて不正確である。彼らの視覚の問
題の様に、この音韻の欠陥は、多分、基本的な聴覚技能
の軽い欠陥に根ざしている。
私たちは、音素と呼ばれている文字の音を、それを特徴
付けている周波数や強度変化の微妙な違いを検出するこ
とによって識別している。これらの音調の変化を検出す
ることは、音の周波数や強度の変化を辿ることのできる
大きな聴覚ニューロンのシステムによって実行されてい
る。これらのニューロンが失読症患者においては上手な
読み手ほどに良く発達していないこと、そして、“b”
と”d”のようにカテゴリーの境界にあるものは、さらに彼
らにとっては聞き取りが難しいこと(図、参照)などの
証拠が増えつつある。
多くの失読症患者は、彼らが読む事に関して持っている
視覚および聴覚の問題を越えて拡大している脳の発育障
害の証拠を示している。これらは、一時的な変化の跡を
辿るために特殊化されていると思われる脳全体を通して
ネットワークを形成しているニューロンに問題がある。
細胞は、全て、互いに認識し接触するための同一の表面
分子を持っているが、しかし、それが、抗体の攻撃に対
して、これらの細胞を脆弱にしている。
大型細胞系は、小脳に対して、殊に大きな入力を供給して
いる(第7章、運動、参照)。興味あることに、ある失読症
患者は著しく不器用であり、そして彼らの手書きは、非常
に拙いものであることがしばしばである。小脳の神経

26

画像解析( p. 41、参照)および代謝的研究は、その
機能が失読症において損傷されていること、そして
恐らく、これが、彼らの手書きに伴う困難の根本で
あるだろう。ある神経科学者は、小脳が、書いたり
話したりする様な動作の実行に、認知計画の側面を
含めてさえも、もっと多く関与していると信じてい
る。もし、これが正しければ、小脳の機能障害は、
読むこと、書くこと、そして、綴ることを学習する
上でも問題を生じるであろう。

何を為し得るか?
失読症に対する幾つかの治療法があるが、各々は、その
下に存在する原因についての異なる仮説によって示され
る。総体的には大型細胞仮説が注目されているが、他の
説明としては、異なる種類の治療を要するであろう、表
面的および深在的失読症として知られている後天的状態
の異なった形を区別するというものがある。全ての治療
は、本当に早期の診断に依存している。
科学者は、この事に常に賛同しているわけではなく、そ
して失読症に対する最良の治療法は、その様な不一致の
領域の一つにある。最近、音処理過程の問題は、脳の正
常な可塑性の機構を用いて、ある種の失読症患者に音の
学習にとって誤った道筋を下らせるような結果を引き起
こすことが示唆されている。アイディアは、もし、子供
たちが、音韻の境界がもっと明解になる時点にまで遅く
された音を聴くようなコンピューターゲームで遊ぶこと
を促されるならば、 彼らは、‘ 一直線で狭い ’ 道に立ち
戻ることが出来るだろうというものである。そして、音
は、徐々に加速されて行く。これは、非常に良好に作用
すると言われているが、しかしながら、未だ別個の試験
が行われている。このアイディアに関して何が化学的に
興味あるかというと、完全に正常な脳の過程が、誇張さ
れた効果を生み出すために、初期の遺伝的異常と相互作
用することである。それは、どの様に遺伝子と環境とが
相互作用し得るかという衆目を集める一例である。
失読症患者は、ある種の知覚判断、例えば色の区別や局
部的よりも総体的な形状識別などにおいて、むしろ上手
な読み手よりも僅かに良いことを強調することが重要で
ある。これは、多くの失読症患者が、一般に長期の連想
や予期しない連想、そして ’ 全体論的な ’ 思考において
何故優れているかという可能な説明にヒントを与える。
レオナルド・ダ・ヴィンチ、ハンス・クリスチャン・ア
ンデルセン、エディソンやアインシュタイン、そして他
の多くの創造的な芸術家や発明者が失読症であったこと
を思い出そう。

失読症および学習障害に関連するインターネット・サイト:
http://www.sfn.org/content/Publications/BrainBriefings/dyslexia.html
http://www.learningdisabilities.com/programs.shtml

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可塑性
生涯を通して、脳は、絶えず変化し続けている。この変
化する能力は ― 内部の構成成分が絶えず再形成される
粘土モデルからの類推によって ― 可塑性と呼ばれてい
る。脳全体としてのみならず、個々のニューロンも、異
なる理由 ― 私たちが若い時の発育の間に、脳の傷害に
対応して、そして、学習の間に修正される。可塑性には
種々の機構が存在し、その最も重要なものがシナップス
可塑性 ― ニューロンが、他のニューロンと通信する能
力を改変する方法の科学 ― である。

全ての働き方の風味

前章で分かったように、幼児期におけるニューロン間の
通信は、細かい調子合わせが必要である。私たちが周囲
と相互作用する時、これらのシナップス連結は ― 新し
いものが作られたり、有用な連結は強化されたり、そし
て、稀に使用されるだけの連結は弱体化されるか、ある
いは永久に失われる―などの変化を開始する。活動的な
シナップスや活発に変化しつつあるシナップスは保持さ
れ、一方、残りは取り除かれる。これは、私たちが脳の
将来を形成するための、ある種の使わなければ失う原則
である。

グルタメートは、蛋白質を作り上げるために私たちの全
身で使用されている一般的なアミノ酸である。あなたは、
それをグルタミン酸一ナトリウムと呼ばれる風味増強剤
として頭に浮かべるであろう。それは、私たちの脳の最
も可塑性のシナップス ― LTP や LTD を現わす― におい
て働いている神経伝達物質である。主にシナップスの受
信側に存在するグルタメート受容体には、四つの異種が
ある:AMPAやNMDAおよびカイネートと名付けられた
イオン透過性受容体がある。四番目の型は、代謝刺激性
で mGluRと呼ばれる。全ての型のグルタメート受容体は、
同じ神経伝達物質に応答するが、それらは非常に異なっ
た機能を果たしている。イオン透過性のグルタメート受
容体は、それらのイオンチャンネルを使用して興奮性後
シナップス電位 (epsp) を発生させる、一方、代謝刺激型
の受容体は、私たちが以前に記述した神経変調作用(8ペ
ージ)の様に、この反応の大きさや性質を変化させる。
全ての型がシナップス可塑性にとって重要であるが、し
かしながら、私たちが、最も多いことや、しばしば、記
憶分子と考えられていることを知っているのがAMPA お
よび NMDA 受容体である。この知識の多くは、これらの
受容体に作用して活性を修飾する新しい薬物を開発した
先駆的な仕事に起因している(29ページ、箱、参照)。

シナップス伝達とは、次いで受容体と呼ばれる特異的な
蛋白分子を活性化するような、化学伝達物質の遊離を意
味するシナップス。神経伝達物質の遊離に対する正常な
電気的反応は、シナップス強度の 尺度である。これは変
化することが可能であり、その変化は2・3秒間持続する。
神経科学者は、短時間のニューロン活動によって生み出
されるシナップス強度の長く持続する変化、特にそれら
の強度を増強する長期増強 (LTP) と減弱する長期抑制
(LTD) の二つの変化に、特に興味を抱いている。

AMPA 受容体は、その活動を始めるのが最も速い。一旦
グルタメートが受容体に結合すると、それらは、一過性
の興奮性後シナップス電位(epsp については、第3章に
記載)を発生させるために、急速にイオンチャンネルを
開く。グルタメートだけが、一秒以内にAMPA 受容体に
結合できて、そして、一旦離れてシナップスから除去さ
れると、イオンチャンネルは閉じられ、電位は静止状態
に復帰する。これが、ニューロンが、脳内で素早く互い
に情報を送り合う時に起こっていることである。

私たちの将来の形成

グルタメートは
シナップス終末
部から遊離され、
シナップス間隙
を横切って異な
る種類のグルタ
メート受容体―
AMPA, NMDA
および mGLUR
― に結合する。
ある種のグルタ
メートシナップ
スは、またカイ
ネート受容体を
持っている。

27

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NMDA 受容体 (赤色) は、学習の分子機構である。伝達
物質は、基準線の活性および LTP 誘導の間の両方で遊
離される(上、左)。Mg2+(小さい黒丸、上、右)が
Ca2+ チャンネルを封鎖する部位は細胞膜の内部であり、
それは強度の脱分極で除去される (次の図、下) 。これ
は、ニューロンが、他のニューロンとの結合性を変え
ることを必要とする時に起こる。LTP は、より多くの
AMPA 受容体 (黄色の受容体、最下部、左) 、あるいは、
さらに効率の良いAMPA 受容体 (最下部、右) の、その
何れかとして発現する。

28

NMDA受容体:可塑性を引き起こす
分子機構。
グルタメートはまた、シナップス後ニューロンにおいて
NMDA受容体と結合する。これらは、シナップス可塑性
を惹起する最も重要な分子機構である。もしシナップス
がゆっくりと活性化されたなら、NMDA受容体は、殆ん
ど、あるいは、全く役割を果たさない。これは、NMDA
受容体がそのイオンチャンネルを開いたなら、これらの
チャンネルは、シナップスに存在する他のイオン ― マ
グネシウム(Mg2+)― によって、可及的速やかに塞が
れる。しかし、シナップスが、ニューロンへの一組の入
力に対する非常に素早い数個のパルスによって活性化さ
れる時、NMDA受容体は、この興奮を即座に感知する。
この大きなシナップス活動が、シナップス後ニューロン
に大きな脱分極を起こし、これが、電気的な反発作用に
よって Mg2+ をNMDAイオンチャンネルから追い払う。
そして、NMDA受容体は、即座にシナップス通信に参加

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する。それらは、これを二つの方法で行う:その第一は、
丁度AMPA受容体の様に、それらは、脱分極に加えるNa+
および K+ を伝道する;第二番目は、それらは、カルシウ
ム(Ca2+) のニューロンへの流入を可能にする。言い換えれ
ば、NMDA受容体は、強いニューロン活動を検知し、そ
して、Ca2+ の大波としての形で、信号をニューロンに送
る。この Ca2+ の大波は短時間であって、グルタメートが
NMDA受容体に結合する間、およそ1秒以上持続するこ
とはない。しかしながら、Ca2+ は、NMDA受容体が活性
化された時、ニューロンに信号を送る極めて重要な分子
である。

脳を訓練する
AMPA 受容体が機能するときの変化は、話の全てでは
ない。記憶がもっと永久的になる時には、脳に構造的
な改造が起こる。LTP の誘導に続いて挿入された多く
のAMPA 受容体を有するシナップスが、それらの形を
変え、より大きく成長する、あるいは、樹状突起から
新しいシナップスが芽生え、その結果として、一つの
シナップスの仕事を、今や二つのシナップスで行うこ
とが出来るようになる。反対に、LTDの誘導に次いで
AMPA 受容体を失ったシナップスは、衰えて死滅する
であろう。私たちの脳の身体的な物質は、脳の活性に
応じて改変される。脳は、訓練 ― 勿論、精神的訓練!
― が好きである。まさに、私たちが肉体的訓練に励む
時に筋肉が強く成長する様に、私たちのシナップス連
結は、それを大いに使用する時、もっと数多く、さら
に良く組織化された状態になる。

記憶を支配する心

シナップスに発生する微小電位の観察に用いられる
装置。
一旦ニューロン内に流入すれば、Ca2+ は、NMDA受容体
が活性化されているシナップスに極端に近いところに局
在する蛋白質に結合する。これらの蛋白質の多くは、分
子機構を構成しているNMDA受容体と物理的に連結して
いる。幾つかのものは、Ca2+ によって活性化され、そし
て、この活性化が、シナップス内あるいは近傍の他の蛋
白質のを化学的な修飾を導くような酵素である。これら
の化学的修飾は、記憶形成の第一段階である。

AMPA受容体: 記憶蓄積の分子機構。
もしNMDA受容体の活性化が、ニューロンの結合性にお
ける可塑的な変化を惹起するならば、何が強度の変化を
表現しているのだろうか?それは、おそらく、さらに多
くの 化学伝達物質の遊離であろう。これは起こり得るこ
とであり、私たちは、この一組の機構が後シナップス側
にあるNMDA受容体を含んでいることを、相当に確信し
ている。これを実施するための種々の方法がある。その
一つは、活性化による多くの電流のニューロンへの通過
のように、さらに効率よくAMPA受容体を働かせること
である。第二の方法は、さらに多くのAMPA受容体をシ
ナップスに挿入することであろう。何れの場合も、これ
は、大きなepsp ― LTPの現象を導き出す。反対の変化、
AMPA受容体の効率あるいは数の低下は、その結果とし
てLTDを起こす。LTP あるいは LTD を誘導するこの機
構の美しさは、その手際の良さと、その上、比較的簡素
である ― それは全て単一の樹上突起棘で起こり、その
結果として、高度に限局された様式でシナップス強度を
変化させることである。それは、記憶が実際に作られる
であろう材料である ― これは、私たちが次の章で、再
び取り上げる問題である。

どれほど上手に学習できるかは、私たちの情動の状態
によって影響され ― 私たちは、特に幸せな、悲しい、
あるいは痛ましい体験に関連した出来事は、よく記憶
している傾向がある。私たちは、また、注意を払った
時には、さらに良く学習する!これらの心の状態は、
アセチルコリン(注意力が昂揚している時)、ドーパ
ミン、ノルアドレナリン、そして、コルチゾールのよ
うなステロイドホルモン(新奇さ、ストレスや不安の
時)などの神経変調因子の遊離と関連している。変調
因子は、ニューロンに対して多様な作用を有し、その
幾つかは、NMDA受容体の機能性の変化を介して作用
する。他の作用は、特異的に学習に関連している特別
な遺伝子の活性化を含んでいる。それらが作る蛋白質
は、LTPの安定化を助け、さらに長く持続させる。

内なる医師
シナップス可塑性は、私たちの脳において、もう一つの重
要な機能を演じている ― 脳が、その傷害から回復するの
を助けることが出来る。例えば、脳の発作あるいは重篤な
頭の傷害の時に起こるように、もし特定の運動を制御して
いるニューロンが破壊されたとすると、全てが必ずしも失
われる訳ではない。ほとんどの状況において、ニューロン
自身が、成長して元に戻ることはない。その代わり、他の
ニューロンが適応し、そして。時には失われたものと同様
の機能的役割を果たし、もう一つの同じ様なネットワーク
を形成する。それは再学習の過程であり、脳の回復能力に
注目させるものである。

ジェフリー・ワトキンス
特異的グルタメート受容体に作用する
AP5 (下) のような薬物の開発により、
脳における興奮性伝達の研究を変容さ
せた薬化学者。

関連インターネットサイト:http://www.cf.ac.uk/plasticity/index.html
http://www.bris.ac.uk/synaptic/public/brainbasic.html

29

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他の記憶システム
脳の外の場所の障害は、他の記憶システムに影響を与え
る。例えばある型の意味論的痴呆(アルツハイマー病)
のような退縮条件は、極めて興味深いパターンの意味論
的記憶の崩壊を起こす。早い時機では、患者は、彼らが
実験で示された絵が、 ネコかイヌか自動車か汽車である
かを告げることが可能である。疾患の後期では、彼らは
絵に描かれたネズミをネズミと呼ぶのを躊躇し、その代
わりに、それはイヌであるという。これによって確認さ
れることは、事実の情報は、動画化されていない情報か
ら遠く離れた一箇所に、一緒に貯蔵されている動画化さ
れた情報と共に無条件に組織化される。

記憶の神経生物学
神経学的な患者を注意深く研究することは、記憶機能が
脳の何処にあるかを発見するには助けとなるが、しかし
ながら、ニューロンや神経伝達物質の見地から、それら
の機能がどの様に働いているかを見出すことは、実験動
物を用いて周囲深く実施した研究を必要とする。
神経科学者は、現在、発育中の脳における細かい調律の
多くの側面が、初期の学習において用いられているもの
と信じている。幼児と母親の間に発達する愛着は、若い
ニワトリにおいて、刷り込みと呼ばれる過程として研究
されている。今や、私たちは、この学習の過程が、若い

海馬核
このゴルジ染色では
ニューロンの集合体は
黒く示される。

ニワトリの脳の何処で起こっているか、そして、母親
のある種の“像”を貯蔵することに関与している受容
体に作用するために遊離される化学伝達物質を知って
いる。この像は、若いニワトリが、母親に後に続くが
他のものには着いて行かないほど、全く精密なもので
ある。若い動物は、また、一度に少しずつ味わうこと
により、どの食物が安全かを知り、そして、味の悪い
ものを学ぶことが必要である。これは、遺伝的な素質
のみに委ねられたものではなく ― 調律された学習機
構は、発達過程の仕事である。刷り込みあるいは食物
の味見の間に活性化される受容体の下流では、二次的
伝達化学物質のカスケードが、文字通り、記憶を固定
する特別なタンパクを造るための遺伝子が活性化され
る脳細胞の核に信号を送る。
場所細胞は、もう一つの重要な発見である。これらは、動
物が良く知っている場所を探っている時のみ、活動電位を
発火する海馬核のニューロンである。異なる細胞が、周囲
の異なる場所を符号化しており、そのような細胞集団が、
全領域の地図化に関与している。近傍の脳領域にある他の
細胞は、動物が動いている方向を符号化している。共に働
いている二つの領域―空間の地図および方向の感覚は、動
物が周囲の世界を動き回る道を見つけ出すことを学習する
のを助けている。これは、明らかに動物にとっては非常に
重要である。何故ならば、食物と水を見つけ出し、それか
ら、巣穴、巣、あるいは外の住まいに戻ることは、彼らの
生き残りにとって極めて重要なことである。この航法学習
システムは、意味論的および散発的記憶の両方に関連して
いる。動物は ― 丁度、私たちが、世界について事実に基
づく知識を習得するように ― 彼らの縄張りの中で、何処
に物があるかを示す安定した表示法を形成している。そし
て、この空間地図は ― 例えば、何処で捕食者を最後に見
たかのような ― 出来事を憶えておくような記憶の枠組み
を提供している。場所細胞は、単に場所以上のももを符号
化しているだろう ―それらは、恐らく動物が、その出来
事が何処で起こったかを記憶するのを助けている。

海馬近傍の四本の記録線は、特定の部位(円形の囲みの中の
赤い部分)で発火しているニューロンを表す二本の線(1お
よび2、時には4)の神経の衝撃を示している。

これらの地図や他の記憶の痕跡は、どの様に形成される
のか? 明らかになった一つの見方は、NMDA受容体に基
づくシナップス可塑性が関与していることである。先の
章において、私たちは、活性化されているシナップス可
塑性が、どの様にしてニューロンネットワークの連結の
強さを変えるか、そして、これが情報を貯蔵する方法で
あることを記述した。NMDA受容体を遮断する薬物を海
馬核に与えた時に、場所を学習することは障碍される。

33

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例えば、ラットやマウスは、水槽の中で泳がせ、水面
下の一箇所に隠されている避難用のプラットホームを
発見するように訓練することが出来る。 彼らは、場所
細胞と方向細胞を道筋を見出す助けとして用い、そし
て、NMDA受容体によって引き起こされる可塑性を使
用してプラットホームの正しい存在場所を記憶の中に
符号化する。また、海馬からNMDA受容体を取り除い
た遺伝子ノックアウトマウスが作製されている。これ
らの動物は学習能力が悪く、彼らは、非常に不正確な
場所細胞を有している。前章において、私たちは、シ
ナップスの重量が、興奮性AMPA受容体の変化を介し
て現われることを説明した。私たちは、未だ、それが
真実の記憶かどうか知らない。 ― それは、今まさに、
激しい研究の課題となっている。

ラットは、今立っている、隠されていたプラットホームに
向ってプールの中を泳いだ。

Research Frontiers

私たちは記憶を改善できるか?
私たちは、皆、記憶の容量あるいは持続性を改善する
ことは良いことであろうと思う。高齢者は、しばしば
彼らの記憶について不平を言う。しかしながら、記憶
の改善は、ほぼ確実に高い値になるだろう。これは、
良い記憶と言うのは、憶えることと忘れることの釣合
であるからです。もし私たちが、それを改善した私た
ちであったならば、その日に起こった、記憶しておく
必要もない、全ての取るに足らない事を忘れることが
困難になる。 良い記憶の ’陰と陽’ は、脳の中に適当な
物事を記憶して組織かすると共に、それ程重要では無
いと思われることは忘れることである。私たちが、魔
法の弾のように、少なくとも正常な人々において記憶
を改善する働きをする錠剤を入手することは在り得な
いと思われる。進化が、システムの最適な釣を保証し
ている。
NMDAまたはAMPA受容体の働きを良くする薬、ある
いは、若い動物における学習研究がら同定された二次
伝達信号のカスケードを刺激する薬物により、本当に
深刻な物忘れは軽減されると言われて来た。それはま
た、早い時期に記憶に影響を与えるアルツハイマー病
のような神経変性疾患の進行を食い止める方法を見出
すことは、大いに役立つことになるであろう。大学や
研究所、製薬会社の科学者にとって、今日の神経科学
における刺激的な一つの冒険は、この種のプロジェク
トで働くことである。高齢者数が大きく優勢な方向に
変わりつつある、殆んど全ての先進国の人口統計学に
より、彼らに、より長く独立した生活をさせることを
助けることが出来るような治療法、大いに価値のある
ものであろう。

ロンドンのタクシー運転手は、彼らが市内で営業することを
許される前に、市内を非常に良く知らねばならない。研究者
が経験豊富なタクシー運転手を脳スキャナーに入れ、マーブ
ルアーチからエレファント・アンド・キャスルへの運行を想
像するように頼んだ時、彼らは、右の海馬傍皮質において強
大な活性化を見せた(赤色流域)。タクシー運転手の構造的
MRIスキャンは、彼らの海馬の異なる部分において、他の
因子も存在するかも知れないけれど、どれくらい多く彼らが
町を憶えているかに関連していると思われる相対的な大きさ
の変化を示している。

いからではない。アイディアは、どの様に情報が符号化
され、貯蔵され、統合され(‘固定’過程)そして想起
されるかについて、何が学習されたかを利用することで
ある。注意を払い、学習時間の間隔を取り、そして、’ 固
定 ’ 過程を促進するために頻繁に思い出させることなど
が、全てその例である。記憶に問題の持った高齢の患者
は、“ニューロページ”と呼ばれる呼び出しシステムが
本当に湯様であることを見出している―それは、彼らが
次に何をするべきかを思い出させ、そして、さもなけれ
ば、実行するのを忘れるような様式で、彼らの一日を組
織立てるのを手助けする。散発的記憶と技術学習の異な
る作動原理を認識することは、不可欠である ― この作
業は散発的記憶にとって具合の良いものだけれど、それ
について単に聞くだけでは、決して技術を学ぶことは出
来ないだろう。 技術を学ぼうと試みる人は誰もが、いか
なる音楽教師の生徒も常に注意されているように、頻繁
に練習しなければならない。
アラン・バッドリー
多くの異なる相互作
用系から構成される作
業記憶の考えを展開し
た。

音韻論的貯蔵、視覚空間の写生帳と中央実行系は、脳の様々
の部分に局在する。

しかしながら、ある科学者たちは、認知工学が薬物と
共に必要であるだろうと信じている。 あなたは、認知
工学については、新しい薬物として、あまり新聞でも
多くを聞かないが、しかしながら、それは重要性が低

34

もう少し記憶実験を望みますか? 試してみよう
http://www.exploratorium.edu/brain_explorer/memory.html

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記憶減退および脳における散発的記
憶の局在

驚くべきことに、健忘症患者は、彼らが意識的に記憶
することが出来ないような事を学ぶことが出来る!
彼らは、運転技術あるいは非常に速く逆方向に読むことを

脳の記憶システムの最後の型は、散発的記憶と呼ばれて
いる。それは、あなたが個人的な体験の痕跡を保持する
ために使用しているものである。出来事を記憶すること
は、一つの非常に重要な点 ― 出来事は唯一度しか起こ
らないという点において、事実を知ることとは異なって
いる。もし、あなたが、今日の朝食に何を食べたか忘れ
たなら(有り得ない)あるいは、この前のクリスマスに
何が起こったか忘れたなら(可能かも)または、学校で
最初の日に起こった全ての出来事を忘れたとならば(恐
らく)、あなたは、これらの如何なるものをも、クラス
での追加授業のように再上演することは出来ない。この
システムは素早く学習する、何故なら、そうしなければ
ならないから。

教えられることが出来る。

私たちは、散発的記憶とは何かについて、脳発作に次い
で、脳腫瘍、あるいは、ヘルペス脳炎のようなウィルス
感染、時には、この型の記憶に特異的に欠陥のある疾患
を持った神経病患者について研究することにより多くの
ことを学習した。その様な患者を注意深く研究すること
は、この記憶そして他の記憶システムの解剖学的組織を
理解する主要な道である。

逆方向に素早く読む練習は、時間を要する。これは、少な
くとも私たちを下回ることもないくらい、健忘症患者にと
って真実である、しかし一方、私たちは、それを行うこと
を教えられたことを記憶しているが、彼らは、記憶してい
ない。これは、彼らの意識的自覚において、魅惑的な解離
である。健忘症か患者は、彼らが学習している時は確かに
意識的であるが、後で学習したことには気付かない。彼ら
は、過去から意識的自覚を回復できない。この悲惨な状態
を起こす損傷は、数多くの脳回路において起こり得る。乳
頭体および視床と呼ばれる中脳の領域は、海馬と呼ばれる
中央側頭葉の構造と同じ様に、正常な記憶にとって極めて
重要である。これらの部位の損傷は、特に散発的および意
味論的な記憶の形成に影響する。

“傷害あるいは疾病を通して、どの様に正常機能
が明るみに出されるかと言うことで、私たちの
注意を捕らえる傷害は、それほど多くはない”
(ヘンリー・ヘッド卿―20世紀の神経学者)。
健忘症として知られている状態の影響を受けている人々
は、たった30分前に人に出会ったことを憶えていない。
彼らは、最近、食事を摂ったかあるいは摂らねばならな
いか、そして、家の周りに、最近、物を置いたかどうか
のような単純な生活に必要なことさえも憶えることが出
来ない。複雑な図 ― 例えば挿し込みページのような ―
を示された時、彼らは、それを正確に複写することは出
来るが、私たちの大半が、ほんの30分くらい後に記憶に
基づいて書き出すことが出来るほど、彼らは上手く描く
ことが出来ない。しばしば、彼らは、病気になる前に起
こった事を記憶していることが出来ない。これは、逆行
性健忘症と呼ばれている。
その様な人生は、時間と場所の全ての仕組みを欠いてい
て、そして、広範囲にわたって研究された一人の健忘症
患者によって、継続的に“夢から覚めつつある”ようだ
と描写されている。まだ、この人は、言語と言葉の意味
を駆使する能力、そして、分別ある会話を行うのに十分
な作業記憶を保持してい
る。誰かが彼と二・三
NC
複写

遅延性想起

分後に全く同じ会話をする
までは、彼の存在の破壊的
な孤立が現われることはな
い。

A

二つの構造 ― 過去についての熟知の感覚を仲介する臭周囲
健忘症患者 (A) は、上手く見ることが出来て、そして、
この様に複雑な描写を全く正確に複写できるが、しかし
ながら、対照の正常人 (NC) に比べ、彼らは、長い時間
それらを記憶しておくことが出来ない。

32

皮質 (PRH) 、および出来事や場所を符号化する海馬 (HIPPO)
が、散発的記憶には極めて重要である

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他の記憶システム
脳の外の場所の障害は、他の記憶システムに影響を与え
る。例えばある型の意味論的痴呆(アルツハイマー病)
のような退縮条件は、極めて興味深いパターンの意味論
的記憶の崩壊を起こす。早い時機では、患者は、彼らが
実験で示された絵が、 ネコかイヌか自動車か汽車である
かを告げることが可能である。疾患の後期では、彼らは
絵に描かれたネズミをネズミと呼ぶのを躊躇し、その代
わりに、それはイヌであるという。これによって確認さ
れることは、事実の情報は、動画化されていない情報か
ら遠く離れた一箇所に、一緒に貯蔵されている動画化さ
れた情報と共に無条件に組織化される。

記憶の神経生物学
神経学的な患者を注意深く研究することは、記憶機能が
脳の何処にあるかを発見するには助けとなるが、しかし
ながら、ニューロンや神経伝達物質の見地から、それら
の機能がどの様に働いているかを見出すことは、実験動
物を用いて周囲深く実施した研究を必要とする。
神経科学者は、現在、発育中の脳における細かい調律の
多くの側面が、初期の学習において用いられているもの
と信じている。幼児と母親の間に発達する愛着は、若い
ニワトリにおいて、刷り込みと呼ばれる過程として研究
されている。今や、私たちは、この学習の過程が、若い

海馬核
このゴルジ染色では
ニューロンの集合体は
黒く示される。

ニワトリの脳の何処で起こっているか、そして、母親
のある種の“像”を貯蔵することに関与している受容
体に作用するために遊離される化学伝達物質を知って
いる。この像は、若いニワトリが、母親に後に続くが
他のものには着いて行かないほど、全く精密なもので
ある。若い動物は、また、一度に少しずつ味わうこと
により、どの食物が安全かを知り、そして、味の悪い
ものを学ぶことが必要である。これは、遺伝的な素質
のみに委ねられたものではなく ― 調律された学習機
構は、発達過程の仕事である。刷り込みあるいは食物
の味見の間に活性化される受容体の下流では、二次的
伝達化学物質のカスケードが、文字通り、記憶を固定
する特別なタンパクを造るための遺伝子が活性化され
る脳細胞の核に信号を送る。
場所細胞は、もう一つの重要な発見である。これらは、動
物が良く知っている場所を探っている時のみ、活動電位を
発火する海馬核のニューロンである。異なる細胞が、周囲
の異なる場所を符号化しており、そのような細胞集団が、
全領域の地図化に関与している。近傍の脳領域にある他の
細胞は、動物が動いている方向を符号化している。共に働
いている二つの領域―空間の地図および方向の感覚は、動
物が周囲の世界を動き回る道を見つけ出すことを学習する
のを助けている。これは、明らかに動物にとっては非常に
重要である。何故ならば、食物と水を見つけ出し、それか
ら、巣穴、巣、あるいは外の住まいに戻ることは、彼らの
生き残りにとって極めて重要なことである。この航法学習
システムは、意味論的および散発的記憶の両方に関連して
いる。動物は ― 丁度、私たちが、世界について事実に基
づく知識を習得するように ― 彼らの縄張りの中で、何処
に物があるかを示す安定した表示法を形成している。そし
て、この空間地図は ― 例えば、何処で捕食者を最後に見
たかのような ― 出来事を憶えておくような記憶の枠組み
を提供している。場所細胞は、単に場所以上のももを符号
化しているだろう ―それらは、恐らく動物が、その出来
事が何処で起こったかを記憶するのを助けている。

海馬近傍の四本の記録線は、特定の部位(円形の囲みの中の
赤い部分)で発火しているニューロンを表す二本の線(1お
よび2、時には4)の神経の衝撃を示している。

これらの地図や他の記憶の痕跡は、どの様に形成される
のか? 明らかになった一つの見方は、NMDA受容体に基
づくシナップス可塑性が関与していることである。先の
章において、私たちは、活性化されているシナップス可
塑性が、どの様にしてニューロンネットワークの連結の
強さを変えるか、そして、これが情報を貯蔵する方法で
あることを記述した。NMDA受容体を遮断する薬物を海
馬核に与えた時に、場所を学習することは障碍される。

33

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例えば、ラットやマウスは、水槽の中で泳がせ、水面
下の一箇所に隠されている避難用のプラットホームを
発見するように訓練することが出来る。 彼らは、場所
細胞と方向細胞を道筋を見出す助けとして用い、そし
て、NMDA受容体によって引き起こされる可塑性を使
用してプラットホームの正しい存在場所を記憶の中に
符号化する。また、海馬からNMDA受容体を取り除い
た遺伝子ノックアウトマウスが作製されている。これ
らの動物は学習能力が悪く、彼らは、非常に不正確な
場所細胞を有している。前章において、私たちは、シ
ナップスの重量が、興奮性AMPA受容体の変化を介し
て現われることを説明した。私たちは、未だ、それが
真実の記憶かどうか知らない。 ― それは、今まさに、
激しい研究の課題となっている。

ラットは、今立っている、隠されていたプラットホームに
向ってプールの中を泳いだ。

Research Frontiers

私たちは記憶を改善できるか?
私たちは、皆、記憶の容量あるいは持続性を改善する
ことは良いことであろうと思う。高齢者は、しばしば
彼らの記憶について不平を言う。しかしながら、記憶
の改善は、ほぼ確実に高い値になるだろう。これは、
良い記憶と言うのは、憶えることと忘れることの釣合
であるからです。もし私たちが、それを改善した私た
ちであったならば、その日に起こった、記憶しておく
必要もない、全ての取るに足らない事を忘れることが
困難になる。 良い記憶の ’陰と陽’ は、脳の中に適当な
物事を記憶して組織かすると共に、それ程重要では無
いと思われることは忘れることである。私たちが、魔
法の弾のように、少なくとも正常な人々において記憶
を改善する働きをする錠剤を入手することは在り得な
いと思われる。進化が、システムの最適な釣を保証し
ている。
NMDAまたはAMPA受容体の働きを良くする薬、ある
いは、若い動物における学習研究がら同定された二次
伝達信号のカスケードを刺激する薬物により、本当に
深刻な物忘れは軽減されると言われて来た。それはま
た、早い時期に記憶に影響を与えるアルツハイマー病
のような神経変性疾患の進行を食い止める方法を見出
すことは、大いに役立つことになるであろう。大学や
研究所、製薬会社の科学者にとって、今日の神経科学
における刺激的な一つの冒険は、この種のプロジェク
トで働くことである。高齢者数が大きく優勢な方向に
変わりつつある、殆んど全ての先進国の人口統計学に
より、彼らに、より長く独立した生活をさせることを
助けることが出来るような治療法、大いに価値のある
ものであろう。

ロンドンのタクシー運転手は、彼らが市内で営業することを
許される前に、市内を非常に良く知らねばならない。研究者
が経験豊富なタクシー運転手を脳スキャナーに入れ、マーブ
ルアーチからエレファント・アンド・キャスルへの運行を想
像するように頼んだ時、彼らは、右の海馬傍皮質において強
大な活性化を見せた(赤色流域)。タクシー運転手の構造的
MRIスキャンは、彼らの海馬の異なる部分において、他の
因子も存在するかも知れないけれど、どれくらい多く彼らが
町を憶えているかに関連していると思われる相対的な大きさ
の変化を示している。

いからではない。アイディアは、どの様に情報が符号化
され、貯蔵され、統合され(‘固定’過程)そして想起
されるかについて、何が学習されたかを利用することで
ある。注意を払い、学習時間の間隔を取り、そして、’ 固
定 ’ 過程を促進するために頻繁に思い出させることなど
が、全てその例である。記憶に問題の持った高齢の患者
は、“ニューロページ”と呼ばれる呼び出しシステムが
本当に湯様であることを見出している―それは、彼らが
次に何をするべきかを思い出させ、そして、さもなけれ
ば、実行するのを忘れるような様式で、彼らの一日を組
織立てるのを手助けする。散発的記憶と技術学習の異な
る作動原理を認識することは、不可欠である ― この作
業は散発的記憶にとって具合の良いものだけれど、それ
について単に聞くだけでは、決して技術を学ぶことは出
来ないだろう。 技術を学ぼうと試みる人は誰もが、いか
なる音楽教師の生徒も常に注意されているように、頻繁
に練習しなければならない。
アラン・バッドリー
多くの異なる相互作
用系から構成される作
業記憶の考えを展開し
た。

音韻論的貯蔵、視覚空間の写生帳と中央実行系は、脳の様々
の部分に局在する。

しかしながら、ある科学者たちは、認知工学が薬物と
共に必要であるだろうと信じている。 あなたは、認知
工学については、新しい薬物として、あまり新聞でも
多くを聞かないが、しかしながら、それは重要性が低

34

もう少し記憶実験を望みますか? 試してみよう
http://www.exploratorium.edu/brain_explorer/memory.html

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ストレス

ストレスは、最も外見上は静かな生活にさえも影響を与
える。私たちは、皆 ― 試験の間、スポーツで競い合う、
あるいは、友人や対立者と同じ様に口喧嘩をする時など
に、それを体験している。何故それは起こるのか、そし
て何がその不快さを起こすのか?それは何に対して良い
のか?それが方向を誤った時に何が起こるのか?神経科
学者は、どの様に脳がストレスに対して同調した化学的
応答を生じるかを理解しようとし始めている。

ストレスとは何か、何故それが必要か?
ストレスは、突き止めるには扱い難いものである。それ
は、単に、圧力をかけられていることではなくて ― と
言うのは、これは、必ずしもストレスを起こすものでは
ない ― 体と脳が予期しているものと実際に私たちが体
験もしくは感じた難問との間にある種の不適合である。
私たちが直面する多くの難問は、心理的であり―学問的
な成功のためにどりょくすること、学校のティームでの
定位置争い、あるいは、後の人生では仕事のため、など
のように、他の人々と相互に関係する困難さを反映して
いる。その他のストレスは、急性の病気や自動車事故に
よる足の骨折のように物理的である。ほとんどのストレ
ス原因は入り混じっている:病気による痛みや他の身体
的苦痛は、心配や懸念と繋がっている。
ストレスは、基礎的な過程である。それは、最も簡単な
細菌や原虫から哺乳類のような複雑な真核生物まで、全
ての生物に影響を与える。単細胞生物や私たちの体の
個々の細胞において、予期しない外部からの挑戦やその
内部での結末から、重要な細胞の機能を保護する一連の
緊急システムを備えつけるような分子が進化した。例え
ば、熱ショック蛋白と呼ばれる特別な分子は、損傷され
た蛋白質を修理あるいは害を与えずに分解する場所に先
導し、こうして毒性あるいは機能障害から細胞を保護す
る。私たち自身のように複雑な生物においては、ストレ
ス系は、私たちを大いに悩ます様な並外れた難問の処理
を助ける目的で、高度に洗練された過程として進化した。
これらは、ストレス防御の大きなネットワークにおける
積み木のような細胞保護機構を使用する。

戦闘 あるいは 逃避?
最も簡単な認知に対する応答は、人懐っこく ― 交感神
経系と呼ばれているものの即座の活性化である。ストレ
ス性の刺激を受け、そして適正な応答を計算した後に、
脳は、急速に、脳幹の制御中心を起源とする神経を活性
化する。これらは、様々の組織からノルアドレナリンの
遊離を、副腎(腎臓の丁度上に位置する)からはアドレ
ナリンの遊離を引き起こす。それらの遊離は、戦闘ある
いは逃避の反応 ― 危険に対応して為さねばならない古
典的な即時反応 ― を支える。私たちは、皆、ストレス
性の刺激の直ぐ後の瞬間に感じる最初の疼く様な感覚、
発汗、自覚意識の高揚、早い心拍数、高い血圧、そして
漠然とした恐怖感を認識する。これらの変化は、血管に
分布して、それを収縮させ、そして血圧を急上昇させる
受容体、そして、心臓にあって、その動きを加速し、動
悸として知られている胸の感覚を生み出す受容体のため
に起こる。また、皮膚には毛を逆立てる(鳥肌)受容体
があり、そして、腸には、私たちが、皆、ストレスとし
て感じる当惑するような腹部の感覚を起す受容体が存在
する。これらの変化は、その場面で、私たちに戦うか、
あるいは逃げる準備をさせる―そして、血流を生命に関
わる器官、筋肉および脳に集中させる。

視床下部‐下垂体‐副腎 (HPA) 軸

ストレスと脳
ストレスは感知され、そして応答は、脳によって同調さ
れている。脳における状況認知の評価は、血流中の身体
の信号、例えばホルモン、栄養素、そして、炎症性分子
など、および生命維持に欠かせない諸器官や感覚を監視
する抹消神経からの情報と相互作用する。脳は、一連の
特異的そして段階的な応答を生み出すために、これらを
統合する。これを行う方法に関する私たちの理解は、神
経内分泌学の研究に由来する。血中を循環するホルモン
は、身体をストレスに対処できるようにするため、脳に
よって監視されている。

HPA 軸。副腎に作用するホルモンの下垂体からの遊離を制御
する中心である視床下部。ホルモン遊離の負のフィードバック
は、この軸の様々のレベルに備わっている。

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ストレスに対する二番目の主な神経内分泌応答は、HPA
軸と呼ばれる身体と脳を結ぶ回路の活性化である。これ
は、視床下部、下垂体と副腎皮質を一緒に、特殊化され
たホルモンを運搬する血流の道で結ばれている。
視床下部は、私たちのホルモンの多くを制御している重
要な脳の領域である。それは、扁桃核を含む情動の情報
を処理する脳の領域や交感神経応答を制御している脳幹
部位からの強い入力を受けている。それは、回路の次の
部分 ― 下垂体を刺激する調和したホルモン出力を生み
出すために、これらを統合する。替わって、これが、副
腎皮質刺激ホルモン(ACTH) と呼ばれるホルモンを血中
に遊離する。そして、ACTH は、副腎の一部分を刺激し
てコルチゾールを分泌させる。
コルチゾールは、ストレス応答の次の段階を理解するた
めの鍵となるステロイドホルモンである。それは、血糖
や脂肪酸のような他の代謝燃料を増加させる。しばしば、
これは ― 筋肉や脳にとっての緊急の ’チョコレートバー’
のような ― 即座に必要な燃料に分解されるタンパク質
を犠牲として起こる。コルチゾールは、また、アドレナ
リンの血圧を上げる作用を補助したり、短時間ではある
が、あなたの気分を良くしたりする。学校のコンサート
での独唱の挑戦に直面した時、あなたが望む最後のこと
は、くよくよと心配事を考えることである。ただ、あな
たは、それを可能な限り少ない自意識をもって、立派に
成し遂げたいと望む。コルチゾールは、また、成長、消
化、炎症、損傷治癒 ― 明らかに、後ほど、さらに上手
く処理される事 ― さえも停止させる。それは、また、
性的欲求をも停止させる。回路の最終段階は、脳に対す
るコルチゾールのフィードバックである。最も高い密度
のコルチゾール受容体が、学習および記憶の鍵となる構
造である海馬に存在するが、しかしながら、コルチゾー
ルは、また、恐怖や不安を処理する扁桃核に対しても作
用する。正味の作用は、扁桃核のスイッチを入れる ―
恐怖に関連した情報を学ばせ、そして、海馬のスイッチ
を切る ― エネルギー源が、もっと複雑だが不必要な学
習の側面に、間違いなく浪費されないようにすることで
ある。コルチゾールは中心的な体液成分である。

ストレスは避けられない。あるものは、私たち全てが体験
している。それは、おそらく、生理的、身体的、あるいは
(通常は) 両方である。

二つのコルチゾール受容体と縮んで
ゆく海馬の物語
海馬核は、高水準の二つのコルチゾール受容体を持って
いるが ― それらを、低MRと高GR 受容体と呼ぼう。低
MR受容体は、HPA軸の血流の道において正常に循環し
ているレベルのコルチゾールによって活性化される。こ
れが、私たちの一般的な代謝および脳のプロセッシング
を、具合良く動かし続ける。しかし、コルチゾールの濃
度が上がり始めた時、特に朝に、高GR受容体は、だん
だんと、もっと多く占有される様になる。私たちがスト
レスを受けるようになった時、コルチゾールレベルは、
実に非常に高くなり、この受容体の活性化は持続し、そ
して、海馬核は、遺伝的に制御されているプログラムに
よって遮断される。これを全て寄せ集めると、そうすれ
ば、いわゆるベル型曲線が得られる。これは、ストレス
を脳の機能と関連付ける古典的な曲線である ― 少しは、
あなたにとって良く;もう少し多くは更に良く、しかし
多すぎは悪い!

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ストレスに対するベル型曲線。ほんの少しのストレスは、事
態を改善することが出来るが、多すぎると事態を悪化させる。

うつ病と活動を支配するスト
レス-システム
ある慢性的な脳の疾患では、血中に過剰のコルチゾールが
認められる。特に、幾つかのうつ病では、コルチゾールは
過剰生産され、そして最近の研究は、この条件下では海馬
も縮んでいることを示唆している。その様な発見は、重症
うつ病を強度の長期ストレスと見做すように、精神科医を
導く。増加したコルチゾールが、単に重度の心理的動揺と
それに付随するストレスの結果であるよりは、むしろこの
病気の主要な原因であることは全く確かではない。しかし
ながら、コルチゾールの産生あるいは作用を遮断すること
によって、患者、特に古典的な抗うつ薬治療が有効でない
患者は、大いに助けられる。抗うつ薬は、しばしば、過剰
に活動するHPA軸の正常化を助ける。一つの考えは、それ
らは、部分的には、脳、特に海馬核のMRおよびGR受容体
の密度を調整することによって、それを行うことである。
これを研究している神経科学者は、フィードバック制御を
設定し直し、そして過剰のホルモン性ストレス応答を減弱
させることによって働く、ストレス疾患に対する有効な治
療法を開発することを望んでいる。

ストレスと老化
脳の老化は、一般的な機能低下を伴うが、しかし、その
低下は、個人によって大きな違いがある。ある個人は、
年齢と共に良好な認知能力を維持しており(サクセスフ
ル・エイジング)、一方、他は、それほど上手く行かな
い(アンサクセスフル・エイジング)。私たちは、その
分子レベルでの理解が出来るであろうか?コルチゾール
レベルは、サクセスフル・エイジング例におけるよりも
アンサクセスフル・エイジング例の方が高い。この上昇
は、精神的能力の低下や脳スキャンで見られる関連した
海馬の大きさの減少に先立って認められる。ラットやマ
ウスでの実験は、生まれた時から、あるいは、中年以降
でさえも、ストレスホルモンレベルを低く保つことは、
さもなければ無処置群に見られる様な、記憶欠損の発現
を阻止する。ストレスに対する過剰なホルモン応答を示
す固体は、― 必ずしも最もストレスを受けた固体では無
く、ストレス原因に対して最も大きな応答を示すもの ―
が、年が経つにつれて、より多くの記憶消失と他の認知
異常を起こす固体である。もし、これが人間でも真実な
らば、私たちは、おそらく、HPAストレスシステムを制
御下に置くような抗うつ薬を開発することにより、その
様な作用の負担を減らすことが出来るであろう。ストレ
スは、近代生活の主要な特徴であり ― そして、この話に
対しては、もっと多くのことがある。しかしながら、こ
れを記述するには、私たちは、免疫系を持ち込まなけれ
ばならない。

関連するインターネットサイト:http://www.brainsource.com/stress_&_health.htm

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免疫系

丁度、数年前までは、脳は、“免疫特権の器官”と思わ
れてきた。何故ならば、それは、免疫反応あるいは炎症
に影響を受けないからである。それは、確かに、“血液
脳関門”によって、ある程度は外部の出来事からは防護
されている。これは、本当の障壁ではなく、血液から脳
への大きな分子や免疫細胞の通過に対し比較的抵抗性の、
脳血管に存在する特殊化された内皮細胞である。しかし
ながら、脳を特権化されたものとする見方は、脳-免疫
系相互作用に関する研究の結果、この10年間にわたって
劇的に変化した。神経免疫学は、今や、非常に活発な研
究領域である。

は、免疫系の活性化は、白血球およびマクロファージ

身体防御

脳と防御反応

免疫系は、悪意のある侵入者に対する私たちの最初の
防衛線である。これらの侵入者たち、ウィルス、細菌
そして酵母などは、誰もが良く知り過ぎているくらい
の風邪のような普通で穏やかなものから、激しく生命
を脅かすような、例えばHIV、髄膜炎、あるいは結核
のようなものまで及んでいる。

脳を免疫的に特権化された器官とする見方は、その免疫
系との関係に関する非常に異なった概念に取って代わら
れた。これは、何故ならば、脳が、免疫系や損傷された
組織からの信号に応答できること、そして応答すること
が、今や良く知られているからである。古い因習的な考
えは引っくり返される。実験は、脳が、ずらりと並んだ
局所的な免疫および炎症反応を表すこと、そして、実は
免疫系および急性期応答の重要な制御器であることを示
している。発熱(体温)や睡眠、食欲のような、病気に
対する多くの応答は、一義的には視床下部で調節されて
いる。

私たちの防御は、多くの方式で働いている。最初のも
のは、感染した、傷ついた、あるいは炎症を起こして
いる組織内で局所的に働き、腫脹、痛み、血流の変化
や局所的炎症性分子の遊離を起こす。もっと一般的に
ストレス、社会的要因

視床下部

CRP

内分泌的および
神経的流入

交感神経系

感染
傷害
炎症

と呼ばれる細胞、そして、攻撃部位に移動して侵入
した病原物質を同定し、殺し、そして除去する急性
期タンパク質の誘導を惹起する。加えて、急性期応
答は、私たち皆が感じる症状(発熱、発痛、眠気、
食欲不振、無関心)を生じる。これらの各々の応答
は、感染との戦い、エネルギーの保存、そして修復
補助を助けるが、しかしながら、活性化の程度が過
ぎたり、持続が長過ぎたりする時は、非常に有害で
ある。それだから、それらは、注意深く制御される
ことが必要である。

脳は、傷害された、若しくは感染した組織から、元来は
神経性(知覚神経を介する)あるいは体液性(循環中の
分子を介する)であると思われる信号を受け取っている。
神経性信号は、C-線維(これは、また痛みを伝達する ―
第5章、参照)および肝臓 ― 急性期タンパク質産生の重
要部位 ― からの迷走神経を介していると思われる。主要
な循環中の信号の性質は、完全には理解されてはいないが、
しかし、プロスタグランディン(それは、アスピリンで阻
害される)や補体タンパク質(侵入細胞の殺滅において重
要なカスケードのタンパク質)が含まれていると信じられ
ている。しかし、おそらく最も重要な信号は、僅か最近の
20年間に明るみに出て来た ― サイトカインとして知られ
ている一群のタンパク質である。

下垂体

防御分子としてのサイトカイン
ACTH

副腎

糖質皮質ホルモン
局所的流出

免免疫系および
内内分泌系

サイトカインは、身体の報復者である。それらは、現在の
ところ100以上も存在し ― そして、もっと多くのものが、
今もずっと発見されている。これらのタンパク質は、通常
は、体内では非常に低い水準で産生されているが、疾病や
傷害に応答して、速やかに産生のスイッチが入る。それら
は、インターフェロン、インターロイキン、腫瘍壊死因子
そしてケモカインを含んでいる。多くは、損傷を受けた組
織内で局所的に産生され、そして近くに存在する細胞に作
用するが、あるものは、脳を含む遠く離れた器官に信号を
送るための血流に入って行く。疾病および感染に対する応
答の大部分は、サイトカインである。

多くの脳の機構が、脳と免疫系との同調させるため
に、一緒に集まってくる。

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サイトカイン産生の引き金は、細菌あるいはウィルスの
産物、細胞損傷、あるいは毒素や低酸素のように細胞の
生存に対する脅威などを含んでいる。サイトカイン産生
の他の重要な調節因子は、組織に対する神経性信号(主
として交感神経系を介する)あるいはホルモン(副腎か
らのコルチゾールのような)を介して、サイトカインの
スイッチを入れたり切ったりする脳である。
サイトカインは、多くの作用、特に免疫系に対する作用
を有するタンパク分子である。その大半は、免疫系およ
び腫脹、血流の局所的変化や炎症性分子の第二波の遊離
などの炎症の重要な構成要素を刺激する。それらは、急
性期タンパク質を刺激する部位である肝臓を含め、ほと
んど全ての生理的システムに作用する。しかしながら、
サイトカインは多くの作用を共有しているけれども、そ
れらは、また、有意に異なっている。あるものは、抗炎
症性であり、前炎症過程を阻害する;大半は、それらが
産生された部位に近い細胞に対して局所的に作用するが、
他のものは、ホルモンの様に循環中に遊離される。

ようなもの、例えば過重な労働や大きな悲劇など、に対処
できないことは、一種のストレスである。ステレスと免疫
系の連結に対応する細かな機構は、完全には解明されてい
ないが、私たちは、重要な特徴は視床下部‐下垂体‐副腎
軸の活性化であることを知っている。脳内でのストレスに
対する主要な応答の一つは、視床下部における副腎皮質刺
激ホルモン遊離因子(CRF) と呼ばれるタンパク質の産生増
加である. CRFは、視床下部から下垂体までの短い距離を
移動して、もう一つのホルモン、副腎皮質刺激ホルモン
(ACTH) を遊離させる。このホルモンは、循環を介して副
腎に移動し、免疫機能および炎症の最も強力な抑制物質で
あるステロイドホルモン(ヒトではコルチゾール)を遊離
させる。しかしながら、話は、これよりも、さらに複雑で
ある。何故なら、他のホルモンおよび神経性の要素が介在
すること、そして、ある種の形の緩やかなストレスが積極
的に免疫機能を増進することを、私たちは知っているから
である。

脳内の免疫および炎症反応
ストレスと免疫系
私たちは、皆、ストレスや心配が、私たちの防御力を低
下させ、病気を起こすことがあると聞いている。私たち
は、今、ストレスが直接的にHPA軸を活性化することに
よって、どの様に脳に影響を与えるかのみならず、驚く
べきことではないが ― 脳を介する間接的な経路によって
免疫系にどの様に影響することが出来るかをも理解し始
めている。ストレスは、免疫系および疾病に対する感受
性に影響するが、しかし、それは、ストレスの型と私た
ちの応答の仕方 ― ある人たちは、それによって元気が
出る ― に依存している。私たちの防御反応を阻害する

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細菌の研究は、サイトカインの様な多くの防御分子もま
た、多発性硬化症、脳卒中やアルツハイマー病のような
脳疾患への積極的な貢献物質であることを示している。
そのような分子の脳内での過剰生産は ― 特に、ある種
のサイトカインは、それ自体がニューロンを損傷する。
脳疾患に対する種々の新しい治療戦略が、現在も、免疫
および炎症分子の阻害と言う着想を持って開発されつつ
ある。そのように、神経免疫学 ― 神経科学領域の新参
者は、主要な脳疾患に対する解明の糸口や治療の可能性
を提供することが出来るかも知れない。

関連インターネットサイト:http://science.howstuffworks.com/immune-system.htm

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睡眠

Z Z Zz

毎夜、私たちは、寝室に引き下がり、ベッドによじ登り、
そして睡眠の無意識状態のなかにへ漂って行く。私たち
の大半は、およそ8時間眠る、これは即ち、私たちの人
生のおおよそ三分の一を無意識 ― 部分的には夢を見て
いるが ― で使っていることを意味する。もし、あなた
が、この貴重な時間を、例えば深夜のパーティーあるい
は夜中まで試験のための詰め込み勉強をするなど、他の
活動に使うために睡眠を避けようとするなら、あなたの
身体と脳は、直ぐに、そうしてはいけないと、あなたに
告げるでしょう。私たちは、しばらくは、それを免れる
ことが出来るが、決して長い期間ではない。睡眠/覚醒
サイクルは、身体や脳の周期的な活動の一つである。何
故、それらは存在するのか、どの部分の脳が関与してい
るのか、それらは、どの様に作動しているのか?

人生の周期
睡眠‐覚醒サイクルは、人生の最初の一年間を通して、
徐々に昼‐夜サイクルに固定されて行く内因性の周期で
ある。それは、ラテン語で ‘circa’ は回転を、‘dies’ は日
を意味するところから、circadian rhythm(日内変動)
と呼ばれるものである。それは、一生を通して重要であ
る:乳児は、昼と夜の両方の間に短時間の眠りを、小児
は、しばしば、昼食後に午睡を取るが、一方、成人は、
一般に夜間だけ眠る。睡眠は、あなたにとって良いこと
であると ― ウィンストン・チャーチル、第二次世界大
戦中の首相 ― は、5分間ばかりの短い居眠り ― 時には
閣議中の ― が好きで言われた。
昼‐夜サイクルに固定された睡眠と覚醒の正常パターン
は、視床下部において、視交叉上核と呼ばれる視交叉の
直ぐ上部にある小さな細胞群によって、部分的に制御さ
れている。ここのニューロンは、それらの発火を同調さ
せるために樹上突起間に多数のシナップスを持っている
点で普通ではないが、脳の生物時計の一部である。人間
では、それは、一日よりも少し遅い速度で時を刻んでい
るが、しかし、通常は、昼間か夜間かを告げてくれる目
からの入力によって、いつも登録され続けている。私た
ちは、このことを知っている。何故ならば、一日の真の
時間を知る一切の糸口から離れて、長期間にわたって深
い洞窟に暮らすことで睡眠実験に関与している人が、約
25時間の睡眠‐覚醒サイクルを自由継続するような活動
のパターンを採り入れることを知っている。

睡眠の段階
睡眠は、その見かけ程、受動的な過程では全く無い。もし、
人が、睡眠実験室(実験台ではなく、ベッドがある)の中
で、その頭に装着した電極によって繋がれたなら、その脳
波(EEG)は、幾つかの区別される段階を経過する。覚醒
している時、私たちの脳は、低振幅の電気的活動を示す。
私たちが眠りに落ちている時、EEGは、最初には平坦にな
るが、しかし、それから徐々に、私たちが一連の個別の段
階を通過して行くに連れて、振幅の増大と周波数の減少を
示す。これらの段階は、徐波睡眠 (SWS).と呼ばれる。電
気的活動のこれらの変化の理由は、まだ完全に理解されて
いない。しかしながら、脳のニューロンが正常の入力に対
して応答しなくなるに連れて、それらは、徐々に、互いに
同調する様になる。骨格筋の運動を制御しているニューロ
ンが積極的に阻害されるが、しかし、感謝すべきことには、
呼吸と心拍数を制御しているものは、正常に作動し続けて
いる時、あなたは、筋肉の緊張を失う。
夜の間を通して、私たちは、これらの睡眠の異なる段階
を周回し続ける。それらの一段階において、EEGは、再び
覚醒状態の様になり、そして、私たちの目は、閉じた瞼
の下で、後ろへ引き戻される。これが、私たちが夢を見
やすいとされる、いわゆる睡眠の急速眼球運動(REM)
段階である。もし、人々がREM睡眠の間に覚醒させられ
たなら、彼らは、ほとんど、いつも決まって夢を見たと
報告する ― 習慣的に、決して夢を見ないと言っている
人でさえも(あなたの家族で実験してみなさい)。実際
には、私たちの大半は、毎晩、約4から6回のREM睡眠の
エピソードを起している。乳児は、もう少し多くのREM
睡眠を示し、そして、動物さえも、REM睡眠を示す。

覚醒
REM睡眠
第1相
第2相
第3相
第4相

0

1

2

3

4

5

6

7

8

睡眠時間

8時間の正常の夜間睡眠は、毎夜およそ4回くらい起こる
REM睡眠(赤い領域)の短い破裂を伴う、異なる睡眠段階
のパターンを構成している。

睡眠剥奪
昼間のSCN活動状態

夜間のSCN静止状態

視交叉上核は、脳自身の個人的時計である。

数年前に、ランディ・ガードナーと呼ばれるアメリカ人の
十台の若者が、かつて記録された最も長い時間以上に睡眠
を取らないことを試してみることを決心し、そして、記録
のギネスブックに彼の場所を勝ち取った。彼の望みは、睡
眠なしで264時間の持続であったが、彼は、それを成し遂
げた。それは、アメリカ海軍の医師の指導の下に注意深く

39

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制御された実験である ― あなたが繰り返すことは進め
られない! 驚いたことには、彼は非常に良い状態で生
き抜いた。彼の主要な困難(非常に眠いと感じること以
外)は、会話困難、集中不能、記憶の減衰と幻覚の様な
白日夢であった。しかし、彼の体は、素晴らしい身体状
況であり、決して精神異常あるいは現実との接触喪失に
はならなかった。実験が終わった後に、彼は小さな反撥
を示し、最初の夜は、およそ15時間も、次の夜は短時間
過剰に眠った。この実験と多くの他の同様の実験は、睡
眠から本当に何かを得るのは、一義的には身体ではなく
て脳であることを、睡眠研究者たちに納得させた。同様
の結論は、注意深く制御された動物実験を含む他の研究
からも得られている。

何故、私たちは眠るのか?
神経科学においては、多くの課題が謎として残されてお
り、睡眠もその一つである。ある人たちは、睡眠は、動
かないでいることで、それによって危険の外に身を置く
ための、単に手軽な方法であると主張している。しかし
ながら、それ以上の理由があるはずである。睡眠剥奪実
験は、私たちに、REM睡眠やある段階のSWSが脳を回
復させることが出来ると考えさせる。私たちは、この種
の睡眠を、夜間の最初の4時間の間に摂る。多分、それ
は、脳内での事物を再び設定するのを手助けするもので
あり、そして、この必要な仕事を行うために適した良い
時間は、ドックに入っている船との類似から、脳が知覚
情報を処理していない、あるいは、油断無く注意深い状
態で無い、または、私たちの行動を制御していない時で
ある。また、研究は、睡眠が前の日に学習したことを固
定化する― 記憶に不可欠な過程 ― を行う時間であるこ
とを示唆している。

様々の睡眠段階を通過させる一種の分子連鎖反応に関与し
ていることを示している。同時性機構は、ネットワークを
一つの睡眠段階から他の段階へ通過させることが出来る。
大きな飛躍的前進が、神経遺伝学から生じている。時計の
歯車や脱進機の様に、律動的ペースメーカーの分子構成部品
である種々の遺伝子が、同定されている。この仕事の多く
は、それら自身の合成を調節するために相互作用するよう
なタンパク質を産生する二つの遺伝子 ― perとtim ― が
見出された Drosophila (ショウジョウバエ)において行
われた。mRNAおよびタンパクの合成は、一日の早い時間
に始まり、タンパク質は蓄積され、互いに連結し、そして、
この連結が、それら自身の合成を停止させる。昼の光は、
結果的に、PERやTIMのタンパクを合成する遺伝子が再び
働き始める点にまで低下させるために、タンパク質の分解
を手助けする。この周期は、何度も繰り返され、もしニュ
ーロンが培養皿の中で生かされているとしても、まだ続け
られるだろう。例えば私たちのような哺乳動物の時計は、
ハエの時計と非常に類似した様式で作動している。日内変
動は、進化の期間において非常に古いことから、同じ様な
型の分子が、異なる生物において時計を動かしているとし
ても、多分、驚くようなことではない。

どの様に律動は働くのか?
異なる睡眠段階の移行の間に、様々な脳の領域において
ニューロンの活動を記録することにより、睡眠のような
律動的な活動の神経機構について多くのことを知ること
が出来る。これらは、脳幹賦活系が、アデノシンと呼ば
れるものを含む種々の神経変調性伝達物質が、私たちに

研究の最先端領域
暗期

明期

暗期

10

Days

明期

明期

暗期

明期

暗期

20
30
40

正常マウスは、時差ボケ”を示す。

変異マウスは、即座に"時計変更" する。

時差ボケを示さないマウス!
日内変動の分子機構をさらに良く理解しょうとする試みのために、神経科学者は、視交叉上核に発現している遺伝子を“ノック
アウト”したマウスを遺伝的に作り出した。これらのVIPR2マウスは、元気に生きており、正常マウスと全く同じ様に、昼夜の
活動パターンの変化を示す。上記のパターンの黒い点は、夜間(灰色の領域)の活動性を伴う日々の律動 ― マウスが活動的で
ある時を示す。しかし、突然、消灯する時間を8時間だけ前に移す(およそ25日)と、正常マウスは、彼らの活動パターンを変
えるために2・3日を要することにより、それまでは“時差ボケ”を示す。ノックアウト・マウスは、直ちに変化させる。この様
な研究は、光が日内変動のペースメーカー遺伝子を軌道に乗せる分子機構について知る助けとなる。

40

関連インターネットサイト:http://www.hhmi.org/lectures/2000/
http://www.cbt.virginia.edu, http://science.howstuffworks.com/sleep.htm

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脳画像化
骨相学者は、彼らは、頭蓋骨の表面の凹凸を調べること
によって脳を理解できると考えた。もし、これが、現在
では荒唐無稽の様に思われるなら、頭蓋骨の外から眺め
ることによって脳を理解しょうとする彼らの望みは、時
代を通して多くの人々を魅惑してきた。現在では、私た
ちは、― 近代的な脳画像化の技術を用いて ― これを行
うことが出来る。近代的なスキャナーは、種々の手段を
用いて、ニューロンや線維経路の構造、脳の血流やエネ
ルギー代謝、および、私たちが異なる事をする時に起こ
る神経活動の変化などの素晴らしい画像を、私たちに与
えてくれる。

近代的技法への散歩道
構造を機能に関連付けようとする企てにおいて、非常に
多くの事が、心あるいは行動の奇妙な点を死後の脳構造
の計測と関連付けようとした神経学者や神経心理学者に
よって知られるようになった。ブロッカにより脳の言語
領域が同定されたのも、この技法によってである。この
研究法は、多くの成功を収めたが、しかしながら、それ
には限界もある。誰も、脳のある領域の損傷による機能
の喪失が、その領域の正常な機能を表わしていると言う
単純な仮定をすることが出来ない。例えば、欠損は、そ
の領域が切り離されるか、通常は情報を伝え合っている
他の領域との連絡を遮断されることによって起こるだろ
う。また、損傷を受けていない脳の領域が、正常な状況
の下では、損傷された領域によって行われていた機能を
代行することが可能であり;これは可塑性として知られ
ている。最終的に、非常に稀な二・三の病変が、精密な
機能領域を限定できる。そして、生存している時の患者
の研究と彼らの脳の後日の解析との間には長い時間的な
遅れがある。
構造的脳画像化技法は、およそ30年前に開発が開始され
た。医療物理学者による機能的脳画像化法の最近の開発
は、特別の注意を惹きつける。これらは、文字通り―私
たちに頭蓋骨の中を見ること、そして、私たちが、ヒト
の脳を ― それが考え、学び、夢見ている時に ― 覗き見
ることを可能にする。

どの様に、それは働くのか?
ニューロンの電気的な活性を観察する電気生理学的手法は、
活性化されたニューロンにおける膜電位の変化に基づいて
いる。脳スキャン法は、活動的なニューロンによって必要
とされるエネルギー代謝により作動する。

荷電イオンをニューロン内外の間で移動させる電気化学的
勾配(シナップスおよび活動電位の基である)は、その働
きにエネルギーを必要とする。このエネルギー源は、ブド
ウ糖の酸化である。ブドウ糖と酸素は、大脳循環によって
届けられる。神経循環連結の働きによって、活動的な領域
では大脳血流の局所的な増加が起こる。これは、非常に素
早く起こる。近代的な神経画像化装置は、局所的な大脳血
流の変化を計測し、それを神経活動の指標として用いる。

開発された最初の機能的な画像化技法は、陽電子放射断層
撮影法 (PET) と呼ばれた。この手順は、生物学的に興味
の対象となる化合物(例えば、神経伝達物質の受容体に結
合する薬物など)に固着させた放射性トレーサーの被験者
への注入を」伴う。被験者の頭の周りの検出器の輪が、脳
を横断し、分解して行くに伴って核同位元素から放射され
るガンマ粒子の時期と位置を記録する。PETは局所的な大
脳血流の変化に関する地図の作成に使用し得る。その様な
測定は、知覚、運動、そして認知の脳機能のヒト脳におけ
る局在を導き出す。PETには、幾つかの不利な点があり、
その主なものの一つは、放射活性を持ったトレーサーを注
入しなければならないことである。これは、子供や妊娠の
可能性がある年代の婦人など、多くの人々がPETスキャン
を受けることが出来ないこと、そしてスキャン中に行える
測定の回数が制限されることを意味している。
核磁気共鳴画像化法 (MRI) と呼ばれる異なる技法が開発
されており、それは、非侵襲性であり、そして放射性物質
を必要としない。 これは、いかなる年代の人もスキャン

左:

ビートルズのレコードの販売でE,M,I,によって作られた利益が、最初の脳スキャナーの開発費用の支払いを助けた。これ
らおよび後期の機械は、神経科学者が、新しい方法で脳の内部を覗き見ることを可能にした。

右:

近代的MRIスキャナー。被験者は、およそ30 分から1 時間くらいのスキャンのため、磁石の輪に入って行くテーブルの上
に横たわる。

41

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することを可能にする。MRIは、脳の構造の非常に微細
な粒子の画像を与える目的にで使用でき、そして、最近
に開発された拡散テンサー画像解析法 (DTI) は、脳の領
域を結んでいる線維の白質経路の詳細な画像化を可能に
する。

脳血管の画像。血流の変化が検出され、そして、神経活動の
指標として提供される。

MRI技法の最も興奮させられる適用の一つは、脳機能の画像
を提供することであり;これは、機能的核磁気共鳴画像化法
(fMRI) と呼ばれている。この技法は、血液中の酸素化およ
び脱酸素化されたヘモグロビンの磁気的性質の相違に基づい
ている(それ故、fMRIの信号は、血中酸素濃度依存信号 ―
BOLDと呼ばれる)。ニューロン活動の増加が、エネルギー
要求性イオンポンプを活性化するイオンの移動を引き起こす
に伴ってエネルギー代謝および酸素消費の増加が引き起こさ
れる。これが、脱酸素化ヘモグロビンの増加を来たし、そし
て磁気信号の減少を引き起こす。しかしながら、酸素消費の
増加は、数秒以内に起こる局所的な大脳血流の増加を伴う。
大脳血流の増加は、増加してた酸素消費を超過する;それ故
に、酸素化ヘモグロビンおよび信号の大きさの相対的な増加
が見られる。大脳血流増加の正確な機構は、まだ明らかでは
ないが、現在のところ、神経伝達物質に関連した情報伝達が
役目を負っていると考えられている。

その利用
あなたは、おそらく、数を差し引くことでは、相当に優れた
人であろう。しかし、あなたは、かつて、脳を差し引くこと
を試みたことはありませんか? 少年が混乱したのは不思議
ではありません(漫画)。2と3の脳の画像を差し引くこと
には ― その範囲が、データ解析にとって極めて重要な要素
となる。ほとんどのfMRI研究は、人々が注意深く制御され
た作業に従事している間のBOLD信号の計測を意味している。
スキャンの間、被験者は、磁石の穴の中に横たわり、刺激に
対する彼らの行動の応答が記録される。被験者が見るように
スクリーンに投影される視覚的なもの、ヘッドホーンを介す
る聴覚分野のものなど、広い範囲の刺激が存在し得る。例え
ば、知覚、学習、記憶、思考、計画などの内面的な現象に関
する検討も可能である。しばしば、非常に類似している二つ
コンピュータ技術を用いて、PETやMRIスキャナーによって
得られた画像は、脳内での血流の変化が起こっている正確な
部位を示すことが出来る。

42

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の作業が、その一つが終了したら直ちに次のことを行な
うように設計されている。そのアイディアは、第一の作
業は、実験者が興味を持っている脳の過程を意味するも
のであり、もう一方は、そうでは無いものであることで
ある。それから、どんな活動の変化が、特異的に、極め
て重要な脳の過程の働きに関連しているかを示す画素化
された2D画像を得るために、得られた連続的な脳画像は
互いに差し引きされる。これらの画像は、コンピュータ
によって積み重ねられて、三次元での画像の効果的な差
し引きを与える(前頁の漫画、参照)。最近の発達した
ものは、例え非常に短い思考あるいは脳の出来事(その
持続時間が1秒あるいは2秒の様に短くとも)でさえも計
測出が可能である。これは、出来事関連fMRIとして知ら
れている。洗練されたデータ解析法が、仕事を実行して
いる間の信号の変化が統計的に信頼できるものかどうか
をテストするために用いられる。画像データを処理する

スキャナーの中の人は、様々の視覚像を示されたであろう。
これら全ては、視覚皮質の最初の部位V1およびV2を‘点灯す
る’であろう。賢い差し引き手法の使用は、領域V4における
色彩処理を示している(左)、一方、運動処理(スクリーン
上の任意の点の動き ― 右)はV5を活性化する。

領域V5の活性化は、動きの感知を反映している。この領域の
入力は、皮質のV2および脳のさらに奥深くにある視床枕 (Pul)
から来る。後頭頂葉 (PPC) が、情報の流れを制御している。
有効結合性解析は、これらの相対的な貢献度を割りだすこと
を可能にする。

作業において、内側頭葉が型どおりに明かりがついていること
を見出すことに、予期せぬ失敗をしたことである。しかしなが
ら、より新しい実験例 ― あるものは仮想現実も含む ― は、前
頭葉皮質や楔前部などの他の領域に沿った記憶処理の活性を示
しつつある。新しい神経心理学的および他の画像化の知見を組
み合わせることにより、この関与する脳領域の多様性は、私た
ちを脳の記憶系に関する理解を修正する方向に導く。新しい数
学的手法もまた、異なる脳領域の神経活性が、複雑な作業の間
に、どの様に相互作用し、そして相関しているか(有効結合性
として知られる)を見ることを目的として開発されつつある。
この計測は、脳の領域が、単に別個の機能的な活動部位として
ではなく、どの様にチームとして働いているかということを、
私たちが評価することを可能にする。望みは、これらの新しい
技法が、さらに精密な画像を供給することが出来る高い磁場強
度を持った磁石と共に、知覚、思考、行動の継ぎ目の無い制御
において、互いに話し合うニューロン・ネットワークの動的状
況について私たちに語ってくれることである。

研究の最先端領域

ために標準化されて幅広く使用されている解析ソフトは、
統計的パラメーター写像 (SPM) と呼ばれている。SPM
の図は、しばしば、活動の“最も熱い”領域に対する燃
えるような黄色から‘より冷たい“領域を示す青や黒に
至る色を使って表示される。
脳画像化科学者は、ある機能が実行されている時を言う
のに‘明かりを点ける’という表現を用いる。もし、人
が常に変わり続けるチェッカーボード模様を眺めるなら
ば、持続的な活性化が第一次視覚皮質に見られる。動く
色彩化されたパターンおよび視覚系の異なる領域を活性
化するように設計された賢い刺激は、ヒトの視覚系の構
成に関する大量の新しい情報を与えてくれた。同様の研
究が、他の知覚様式に対しても行なわれた。この思考の
局地化の方法は、読むことの別々の要素 ― 例えば、視
覚的言葉を音韻的な暗号に変えること、音韻を全体の言
葉にグループ化すること、言葉の意味を抽出する過程な
ど ― に関与する脳の領域を同定することを手助けする。
痛みを予期したり感じたりすることに関与する脳の領域
と切り離された仕事を含む学習の作業も、また研究され
ている。
しかしながら、研究が進行するにつれて、様々の驚くべ
き事が現われて来た。初期の一つの例は、長期間の記憶

ニコス・ロゴテティスは、脳内でのニューロンの活性
と脳画像化実験での信号との関連を理解することに主
要な貢献を行なった若手研究者である。
電気的記録とfMRIとを組み合わせた最近の実験法は、
シナップスの活性と活動電位発火よりもBOLD信号と
の更に密接な相関を示している。それ故に、BOLD 信
号は、その活動電位の出力よりも、より信頼できる脳
領域内のシナップス過程の指標である。これは、機能
の局在化という意味で、BOLD 信号の解釈にとって重
要な意味を持っている。

関連インターネットサイト:http://www.dcn.ed.ac.uk/bic/
http://www.fil.ion.ucl.ac.uk/

43

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神経ネットワークと
人口頭脳
本当の脳は、柔らかい物体である。そのニューロン、血
管、そして液で満たされた脳室も、全て脂質膜とンパク
質と大量の水から作られている。あなたは、指で脳を突
き刺すことも、ミクロトームで切ることも、ニューロン
に電極を差し込むことも、また血液の拍動を監視するこ
とも出来る。脳の研究は、しっかりと生物学および医学
の研究に定着しているように思われる。しかしながら、
数学者、物理学者、機械技師やコンピュータ科学者の注
意を引き付けている、それに対する別の考え方がある。
彼らは、計算式を書き、コンピュータモデルや私たちの
頭の中にある本当のニューロンを真似る機械装置までを
作製することにより、脳について考える。
本当の脳は、高度に適応性である。それらは、完全に知
らない人の話を理解するようなことが出来る。そして、
それらは、誤ったことも我慢することが出来る。それら
は、例え細胞が死滅して行くとしても、生涯にわたって
適度に良好に機能する。そして、老年期においてさえも、
脳は、新しい芸当を学ぶことが出来る。今日のロボット
は、自動車の部分を組み立てるような、彼らが設計され
た目的である限られた範囲の作業を行なうには非常に良
いが、しかし、物事が誤って進むときには。それに対す
る許容性は、さらに少なくなる。
本当の脳は、それら全てが高度に相互結合したニューロ
ン・ネットワークから成り立っている。そのニューロン
は、エネルギーを必要とし、そしてネットワークは空間
を必要としている。私たちの脳は、大まかに言って1000
億個の神経細胞、320万キロメーターの‘線維、1000万
億個の接合部を有し、全てが1.5リットルの容量に詰め込
まれているが、その重さは、たった1.5キログラムで、僅
か10ワットのエネルギーを消費するだけである。もし私
たちが、その様な脳をシリコーンチップを使って作ろう
とすれば、それは、およそ10メガワット、即ち一つの町
に動力を供給するのに十分な電力を消費する。もっと悪
いことには、そのようなシリコーン脳によって発生する
熱が、それを溶かしてしまうだろう!挑戦は、どの様に
して脳は、それほど効率よく、そして経済的に運転され
るのかを発見し、そして。脳の様な機械を作り出すため
に、同様の原理を用いることである。

あなたの脳は、100,000,000,000 個の細胞と
3,200,000 kmの線維, 1,000,000,000,000,000
個のシナップス接合から成り、全てが、1.5 Lの
体積に詰め込まれ、重さ1.5 kgである。 それに
も拘わらず、それは、僅かに夜間の電灯と同じ
量の電力を消費するだけである!

44

脳の回路をシリコーンで作製する
一つのニューロンから他ヘ ― 情報伝達のエネルギー原
価は、おそらく脳の進化における主要な要素であっただ
ろう。脳の総エネルギー消費の約50-80% が、神経線維
に沿った活動電位およびシナップス伝達において消費さ
れる。残りは、製造および維持に使われる。これは、私
たちと同様にミツバチの脳においても真実である。しか
しながら、神経刺激の速度は、デジタルコンピュータの
速度と比較して非常に遅く ― 1 秒間に、わずかに 2・3
メートルである。デジタルコンピュータのような連続処
理装置においては、この遅い速度は、その存在を不可能
にする。生物学的な脳は、しかしながら、高度に平行化
されたネットワ−クで造り上げられている。ほとんどの
ニューロンは、何千と言う他のニューロンと直接に繋が
っている。これを行なうために、脳は、全てを詰め込む
ために ― 細胞をシート状にして折りたたみ、接合部を
密着させて束に織り込むこと ― その三次元の容積を利
用した。それに対して、それほども大きくない数のシリ
コーン・ニューロンの結合でさえも、チップと回路板の
二次元的な性状によって限定される。そのように、脳と
は異なり、シリコーン・ニューロンの直接的な接合は、
厳しく制限される。しかしながら、非常に高速の通常型
電子部品を開発することによって、多くのシリコーン・
ニューロンからの刺激を‘倍化’することが出来る ―
同じ線に沿って多くの異なる情報を運ぶ過程。この方法
によって、シリコーン技術者は、生物学的ネットワーク
の接合性と見習うことを始めることが出来る。
電力を減らして速度を上げるため、神経に触発された技
術者は、デジタル暗号化よりもアナログ式を用いる生物
学的な戦略を採用した。カーヴァー・ミード、カリフォ
ルニアのシリコーンヴァレーの“指導者”の一人、は、
神経生物学の技術工学への移し変えについて記述するた
めに、ニューロモルフィックを案出した。0と1によって
デジタルに暗号化する代わりに、ニューロンが閾値下の
状態で行っている(第3章)ように、アナログ回路が、電
位の連続的な変化として暗号化する。シリコーン装置の
基礎的な物理学が開発されたことで、計算は、より少な
い段階で行なわれる。アナログ・コンピュータ使用は、
微積分学の基本:その全てがデジタル機器では複雑な操
作である、加算、減算、指数計算および積分など、を容
易に提供する。ニューロン ― 生物的あるいはシリコーン
の何れであろうと ― が、計算し、そして‘決定’を下す
時は、それらは、標的ニューロンに答えを伝えるために、
軸策に刺激を伝達する。スパイク波形による暗号化はエ
ネルギー的に高価になることから、効率的な暗号化は、
冗長性と呼ばれるものを減らすことによって、スパイク
波形のパターンによって表わされていた情報の量を最大
化する。エネルギー効率も、また、可能な限り少ない数
のニューロンを使用することによって増加する。これは、
希薄暗号化と呼ばれ、それは、人口神経ネットワークを
造り上げようとする技術者に対して、もう一つの重要な
設計原理を与えるものである。

3
1
2

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シリコーン網膜

人工神経ネットワーク

生物学的ネットワークの一つの単純な人工版は、光を補
足して、そして自動的に全体的な証明状態を変えるため
に、それを出力に適応させるシリコーン網膜から成るも
のとして作製された。それは、視覚皮質における本当の
ニューロンのように、網膜像の線の角度や境界の対照な
どの情報を引き出す仕事を持った二本のシリコーン・ニ
ューロンに繋がっている。

人工神経ネットワーク(ANNs) は、しばしば、学習や記
憶の研究に用いられる。通常は、それらは、在来型デジ
タルコンピュータのソフトウェアを用い、ネットワーク
によって高度に相互結合している多数の単純な処理ユニ
ットで構成されている。最も簡単な形のANN は、相互
結合した入力と出力のユニットの層を持ったフィードフ
ォーワード・アソシエーターである。適合記憶は、各
層間の結合の強さを変えることによって暗号化される、
そのため入力パターンが与えられる時、それに適合する
貯蔵されていたパターンが検索される(次ページの数学
的パズル箱、参照)。もっと複雑なANN は、リカレン
ト・ニューラル・ネットワークである。これは、単層
で、その全てのユニットは相互結合され、入力および出
力として作動する。それは、少々、奇妙に聞こえるが、
しかし、この設計は、むしろ単に一対の事項ではなくて、
ネットにパターンを貯蔵させることが出来る。この種類
のオートアソシエート・ネットワークの暗号解読は、貯
蔵されたパターンの反復検索によって成される。1000
ユニットのネットワークでは、呼び出されるパターンが
大きくなり過ぎてエラーが生じる前に、約150パターン
を呼び出すことが可能である。

この原型モデルのニューロンは、統合−発火型ニューロ
ンと呼ばれ、ニューロモルフィック技術者は、それを多
く使用している。彼らは、シナップスに達する電位とし
て暗号化したウエイトされた入力を合計し、そして、も
し電位が設定した閾値に達したなら、活動電位を発火さ
せることから、この名前を得ている。シリコーン・ニュ
ーロンそれ自体は、トランジスターで造られているが、
しかしながら、トランジスターを、在来型のデジタル系
の場合と同様にスイッチおよび電位を飽和させることに
用いる代わりに、トランジスターは、閾値下の範囲で作
動させられる。この範囲では、それらは、もっと更に本
物のニューロンの細胞膜のように挙動する。追加のトラ
ンジスターが、本物のイオンチャンネルの電位および時
間依存性の電流の流れを熱心に見習うために、活動的な
電気伝導力を供給する。この小さな視覚システムは、そ
れが非常に騒々しい現実世界の入力を、簡単な決定を生
み出すために、どれほど迅速に処理できるかを示したと
しても、もっと更に念入りに造られる現在開発中の人工
視覚システムの原型である。それは、その場にある線の
方向を告げることのように ― 行なうように設計された
ことが出来る。そして、神経科学者は、装置のテストや
学生の訓練のために、既に、この簡単なシリコーン視覚
システムを使用している。人工ネットワークに関して最
も重要なことは、それらが現実の世界で、現実の時間に
おいて作動し、そして、非常に少ない動力を使用するこ
とである。

ANNs の脳との類似性は、情報の貯蔵と処理の方法にあ
る。それらが処理する‘知識’は、ネットワークそれ自
体に存在する。それらは、演算子と記憶アドレスとが切
り離されているデジタルコンピュータの様に、分離され
た記憶場所を持っていない。その代わりに、それらは、
コンテント‐アドレッシヴ ストーレーを持っている。
ANN において, 情報は、学習の間にシナップスが強さを
変えるのと同じ方法である、接合のウエイトに貯蔵され
る。どのANNs も、与えられた手順を実施するようにプ
ログラムされているものはない。各々の‘ニューロン’
内部は‘無口’で、単純にそのウエイトされた入力の合
計に従って応答する。さらに、それらは、賢いものに訓
練できる。ネットワークを訓練する学習ルールは、ニュ
ーロン間の接合の強さを変化させることにより、それを
行う、ネットワークの出力を与えられた入力パターンに
馴染ませ、そして、それを望ましいパターンと比較する
ルールである共通のもの。如何なる比較の‘エラー’も、
望ましいものに近似した出力を達成するために接合のウ
エイトを調節するために使用される。ネットワークは、
徐々に誤った信号を減らし、最少にする。これは上手く
行く ― しかし、ゆっくりと。
過ちは、結果的には重要になる ― もし、ネットワークが
過ちを犯すことが出来ないならば、学習が全く可能では
無くなる。これは、見過ごすことが出来ない学習の特徴
である。エラーを犯さない過剰訓練のネットワークは、
最終的には、たった一つの型の入力に応答するようにな
る。その様なネットワークは、― 誰かの祖母が視野に入
って来て、それを決して見誤らない時にのみ応答するよ
うな、ヒト脳内の架空の‘祖母細胞’との関連から ― 比
喩的に祖母化と呼ばれる。これは、私たちが学習しなけ
ればならないこと全てが、切り離されたネットワークを
必要とするであろうから、現実世界での適用では、それ
ほど有用ではない。それに反して、ANNs に関して整然
とした事は、それらが、訓練において決して触れられた
ことのない入力パターンに一般化する能力にある。それ
らは、パターンにおいて、関連性、捕捉の連合、発見の
規則性を理解する。そして、それらは欠点であり ― 丁度、
本当の脳の様に寛大でもある。それらは、入力パターン
が雑音が多いか、あるいは、不完全である時でも、貯蔵
しているパターンを呼び起こすことが出来る。生物学的
な脳にとって、これらは非常に重要な特性であり、そし
てANNsも、また、これらのことが出来る。

カメラレンズは、シリコーン網膜の前に配置されている。

45

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近代的コンピュータ技術の逆説
今日の ANNs のパラドックスは、数学的に、それらがデジタル
コンピュータを模倣することである。このことは、現実世界の
状況では、それらの使用を更に制限することになる。何故なら
ば、模倣は時間を要し、従って ANNs は、即時的に作動出来な
い。ANNs は、自動車を運転したり、航空機を飛ばしたりする
ことに、良く適合しているように思われる。何故なら、それら
は、雑音に直面して強固であり、ネットワークのあるユニット
が作動を停止した時でも働き続ける。しかしながら、自動航空
機操縦装置に一般に使用されている専門化システムは、在来型
の決定論的なソフトウエアによってプログラムされたデジタル
コンピュータであり、これは、安全のために、常に予備を必要
とする。もし、事態が、かつて無い程に、ひどく誤った方向に
進んだならば、そのような専門家システムは、対処することが
出来ない。操縦士が引き継がれねばならない。ANNs に対する
今日の訓練の段階的手続きでは、その様な緊急事態に対しては
遅過ぎる。もし、現在のところでは出来ないが、シリコーン・
ニューロンが学習することが出来るならば、これらの多くの問
題は消えて無くなるだろう。私たちが、脳が働く様式について
多くを学んだように、私たちは、もっと本物の脳のような働き
をするような、さらに洗練された神経ネットワークを造り上げ
ることが出来るであろう。

46

NOMAD は、未だに落着かない 思慮深い来るべき思考機械
の元祖である。それは、円筒形の胴体のような形を持った
高さ2フィートのものである。それは、“目”、“耳”、掴む
“腕” そして、操縦を助ける他のセンサーを装着している。
NOMAD を他のロボットとは異ならしめるものは、暗号化
された指示あるいは規則無しで運転されることであろう。
その代わり、それは、周囲の状況を感知し応答するために、
10,000 個の模擬脳細胞とそれらの間の百万個を越える接合
を有するコンピュータ化模擬脳を持っている。それは、小さ
な立方体が描かれた囲いの中を動き回りながら、新しい状況
を処理し、そして、その失敗から学習することが出来る。
立方体の幾つかは、剥き出しで電気伝導性があり、それらを
“味わい深い” ものにしている。他の立方体はに、斑点が
着けられており、それほど良く電気を通さず、それらを味わ
い薄いものにしている。 その掴み手に装着されたる電気的
センサーによって立方体を探し、それらを“味わう”ことに
より 、NOMAD は、斑点のある立方体を通過して、味わい
のある剥き出しのものに向うことを学習する。

数学的パズル箱

内容アドレス可能分配メモリー
水平に走っているワイヤー4本と、それと交叉する縦方向
に走る4本のワイヤー、そして、交叉部に“スイッチ”を
持つ組み合わせを想像しなさい(パネル A)。このマト
リックスは、メモリーである。情報は、2元の数字の形
で、例えば0011や1010のように、その中に存在し、そし
て、私たちは、1 と1 が 交わる時には常に点じるように
スイッチを配置する(B に青で示す)。これらは、この
一対の二つの数字を貯蔵する。マトリックスは、最初の
一対に上に他の数字を、例えば 1010 や 0110、も貯蔵す
ることが出来る。最終状態のマトリックスは、C に示す
様に、7 個のスイッチを持っている。もし、あなたが、
再び最初の数字 ― 0011 ― を、最終状態のマトリックス
に与えるなら、そして、スイッチがONになっている全て
の部位で、縦のワイヤーに電流が流れるように設定した
とすると(D)、あなたは、数字2120に見合った、底辺
に縦のワイヤーから出てきた電流で終了する。これは、
0011 を最初の一対とする数字ではない。しかしながら、
もしあなたが、思い出す糸口をして用いた数字における1
の合計数(0+0+1+1=2) よって、整数部( 残りの部分
を忘れた型)を使用して、2120 を割るならば、10101で
終わる。マトリックスは、例え他の情報が、最初のもの
の上に貯蔵されたとしても、0011 が 1010 になったこと
を“記憶”している。 あなたも、二番目の数字の対を用
いて、この作業を検査することが出来る。

A

B

C

D

これは、PC における様に ― 特異的な局在の ― 記憶の
一種である。情報は、ネットワークを横切って分配され、
シナップスのウェイトとして貯蔵され、そして、内容に
関連して呼び戻される。問題は、この種の記憶は、特に
4 本のワイヤーしかない様な場合には、非常に速やかに
飽和されることである。しかし、1000 対のワイヤーが
あれば、マトリックスは、過剰な干渉を受けることも
なく、多くの重なった情報を貯蔵することが出来る。

関連インターネットサイト: www.artificialbrains.com
http://www.ini.unizh.ch/

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具合が悪い時
脳は、繊細な器官である。事故は、頭の傷害を起し、脳は
病気になり、そして、正常な働きを停止する。脳の疾患は、
驚くべきほどの範囲の症状を引き起こし、それらの理解は
極めて困難である。脳の異常の判定には、洗練された生物
医学的測定法や脳画像化法に加え、ベッドサイドでの神経
科医あるいは精神科医の臨床的技法が必要である。脳の異
常に関する研究は、さらに広範囲にわたる専門的知識を必
要とする。テンカンやうつ病のような、ある種の疾患は、
子供や十代の青少年においてさえも ― 全く一般的に見ら
れるものである。他は、例えば精神分裂病や老年期におい
てのみ一般的であるアルツハイマー病などは、それほども
一般的ではないが、しかしながら、これらは、役に立たな
くなる度合いが少ない訳ではない。あるものは、強い遺伝
的要素を持っており、私たちの各々が、その様な状態に陥
り易くなることに関係のある変異を持っているか否かを知
りたがると言う難しい疑問を提起する。

神経科学の研究は、テンカンを持った人の生活の改
善に、二つの主要な貢献をしている。第一は、興奮
性伝達の理解の進歩によって、私たちは、今では、
正常な脳の活性を低下させることなく、異常な痙攣
活性を低くする薬物を開発することが出来る。古い
薬物は一般的な鎮静薬として働く傾向があり、一方、
近代的な薬は、もっと更に選択的である。第二は、激

混乱した情報伝達 − テンカン

頭痛と偏頭痛

痙攣(テンカン発作)の間、人は、意識を失い、そして
地面に倒れ、硬直して震えるようになる。彼らは、回復
した時に、舌を噛んでいること、あるいは、彼ら自身を
濡らしていることを発見するだろう。彼らは、おそらく
は、その後で混乱しているか眠いと感じるだろう。多く
の子供たちが影響を受けているが、後の人生において、
彼らは、非常に少ない発作を起すようになる。あるもの
にとっては、不運にも、これらは毎週、あるいは、毎日
でさえも起こり得る。何が悪くなっているのか?痙攣の
間に、ニューロンによる活動電位の発火の増加、それに
続く興奮性低下の期間がある。この周期的な過程は、抑
制性 (GABA) および興奮性 (グルタメート)の神経伝達物
質により変調される。興奮性の減少が不完全である時、
痙攣は、多分、近傍のニューロンの無制御の補強によっ
て惹起される。この補強は、おそらく局在するか(部分
痙攣を起こす)あるいは皮質全体に拡散している(全身
痙攣)。全身発作の間、脳波 (EEG) の正常なアルファ・
リズムが、両方の大脳半球における大きな、緩やかな、
そして同調した波形の電気的活動によって置き換えられ
る(背景、参照)。単独の痙攣は、かなり普通に見られる
が、しかし、反復する痙攣 ― テンカン ― は、より頻度
が少なくて、もっと扱い難いものである。その直接原因
は、まだ不明である。テンカンの人々においては、発作
は、疲労、食事不摂取、低血糖、アルコール、あるいは
チラチラするテレビジョン画面によって誘発される。こ
れらの苦痛の種には、注意しなければならない。

しい動けなくするような痙攣のある人々にとって、その
痙攣の源を極めて正確に局限することが可能であること
を意味する脳画像化の質的な改善である。それは、神経
外科医にとって、痙攣頻度の減少や未だ影響を受けてい
ない脳領域への拡散の危険性の減少を結果として来たす
病的な脳組織の切除を時には可能にする。テンカンの外
科的な取り扱いは、時には少し激烈であるが、しかし、
それが効果を挙げる回数は注目に値する。

ほとんどの人が、時々、頭痛を体験している。普通は、
これは、筋肉の緊張によって起こり、そして、心配し
なければならないような重大なことは何にもない。極
めて稀に ― 特に、もし頭痛が非常に素早く起こった
り、皮膚の発疹あるいは嘔吐を合併する場合 ― 重大
な隠れた原因がある可能性がある。これらの状況では、
痛みは、脳自体から来るのではなくて、脳の内張り―
髄膜の刺激あるいは緊張
から来る。さらに共通の
頭痛の原因は、偏頭痛で
ある。ずきずきと痛む頭
(多くは片側)のみなら
ず、人は、調子が悪いと
感じ、明るい光や大きな
騒音が不快であることを
見い出したり、点滅する
光やギザギザした線から
なる偏頭痛の前兆を体験
する。前兆は、一般には、
頭痛に先行する。今では、
偏頭痛は、大脳の血管か
ら来る痛みの感覚を処理
する脳の部分において始
まると思われている。脳の画像化は、偏頭痛の開始時に、
これらの 領域における活性の増加を示している。それに
応えて、局所的な血液供給の短時間の増加が起こる(それ
が、点滅する光のような症状をもたらす)、次いで、血流
量の減少が、直ちに起こる(一時的な脱力として反映され
る)。最近の十年間に、セロトニン (5-HT) 受容体の理解
における進歩に続き、偏頭痛発作の治療において革命的な

背景は、テンカン発作の間のEEGを示している。

47

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進歩が見られた。セロトニン受容体の特定のサブグ
ループを活性化する新しいクラスの薬物薬が発見さ
れた。これらの薬物 ― トリプタン類 ― は、極めて
有効で、その場で偏頭痛を止める。これは、神経科
学の研究が、世界中の何百万という人々の生活の改
善に極めて大きな貢献をした数々の道筋の一つであ
る。

燃料不足 ― 脳卒中
突然、身体の片側に脱力を生じた時に、これは、通常は
脳の反体側に影響を与える卒中による。平衡、感覚、あ
るいは言語と会話も、おそらく影響を受けるであろう。
時には、これらの異常は、外見上の正常性という点から
でさえも、時間の経過と共に良くなることがあるが、脳
卒中は、未だに死亡や機能障害の非常に一般的な原因で
ある。脳卒中は、異なった形や大きさで起こり、その結
果は、影響を受ける脳の部分に、非常に大きく依存して
いる。
何が悪くなったかは、脳が機能するために必要なエネ
ルギー供給の妨害と関係がある。ニューロンやグリア
は、仕事をするためや生き残るために燃料を必要とし
ている。その燃料は、脳に血液を供給している四本の
主要な血管を介して送り届けられる。最も重要な燃料
は、酸素であり、そして、ブドウ糖の形で利用される
炭水化物であって;これらは、共にATP ― 細胞のエネ
ルギー通過 ― を作るための素材を供給する。このエネ
ルギー(第2,3章、参照)は、ニューロンの電気的活動
の基となっている荷電イオンの流れを動かすために必
要である。ニューロンのエネルギーの約3分の2は、活
動電位が生じた後のナトリウムとカリウムのイオン勾
配を再充填するための、ナトリウム/カリウム依存性
ATP加水分解酵素と呼ばれる酵素の燃料として用いら
れる。

一過性虚血発作 (TIA) と呼ばれるものでは、脳の部分へ
の血液供給が欠乏し、そして、ATPの供給も妨害される。
ニューロンは、イオン勾配を再充填出来なくて、そのた
め、それ以上は、活動電位を伝えることが出来なくなる。
例えば、もし左半球の運動皮質への血液救急が切断され
たとしたら、右側の腕や脚は、麻痺するようになるだろ
う。もし傷害が素早く過ぎ去ってしまえば、ニューロン
は、再びATPを作り、その細胞膜を再充填し、そして正
常な機能を再開することが出来るだろう。幸運なことに
は、永久的な損傷は、TIAでは全く残らない。
脳卒中は、もっと深刻である。もしも、血流が、かなり
長く持続して遮断されたとすると、非可逆的な損傷が起
こる。ATP非存在下では、細胞は、恒常性を維持出来な
くて、膨張して破裂する。ニューロンは、また自然に脱
分極を起こし、グルタメートの様な潜在的に毒性のある
神経伝達物質を遊離するであろう。そして、グリア細胞
は、正常な状態ではATP依存性のポンプによって過剰な
グルタメートを吸いとっているが、また、その働きを停
止する。エネルギーの欠乏している状態では、脳細胞の
命は、非常に危うくなる。
脳卒中の間に何が起こるかについての注意深い研究によ
って、神経科学者は、新しい治療法を開発することが出
来た。ほとんどの脳卒中は、血餅で血管が詰まることに
よって起こり、組織プラスミノーゲン活性化剤(TPA)
と呼ばれる“血餅破壊”薬による治療が、血餅を壊し、
血流を回復する。投与後、十分に素早く、TPAは、劇的
な作用を現わす。不運にも、その様な薬物を卒中患者が
素早く摂取することは、犠牲者の家族には何が起こった
か明白でないことから、容易なことではない。
もう一つの新しい治療法は、卒中の間にグルタメートを
含む神経伝達物質が毒性を発揮するレベルまで蓄積する
のを阻止する部類の薬物である。これらの薬物は、グル
タメート受容体自体あるいはグルタメートによって開始
される細胞内情報伝達経路の何れかを遮断する。多くの
そのような薬物が開発中である。悲しいことに、脳卒中
に対して強い効果を有するものは、未だに皆無である。

遺伝的疾患
医師は、長い間、影響を受けた領域に従って脳の疾患を
識別し、診断を下して来た。多くの疾患に対して、その
病名は、“parietal(頭頂葉の)apraxia(失行)”の様
に、ラテン語またはギリシャ語で飾り立てた、悪いと思
われる事や関与している脳の部分の記載である。最近10
年間における遺伝情報の噴出は、それらの事を完全に変
えてしまった。多くの遺伝性疾患にとっては、問題は別
の所にある。
ある人々は、年月が経つにつれて、益々、立っているこ
とを不安定にするような、運動の細かい制御に対する問
題を遺伝によって受け継いでいる。脊髄小脳性運動失調
症 ― 病名の古典的な歴史を反映したような名前 ― と呼
ばれる疾患について、私たちは、現在では、それを引き
起こす正確な遺伝子の欠損について知っている。多くの
他の病態も、今や、それらの原因に従って分類すること
が出来て、脊髄小脳性運動失調症あるいは他の遺伝的病
態が疑われる患者に対して、診断的遺伝子検査が、今や
決まりきった手順となっている。診断は、以前と比較し
て、さらに素早く、もっと大きな確実性を持って行なう
ことが出来るようになった。
卒中時の脳損傷および損傷される危険性があるその
周辺の領域を示す挿画。

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学習障害
精神分裂病

炎症−多発性硬化症
多発性硬化症は、主に若年成人に多い疾患である。それ
は、脱力、無感覚、複視および平行失調などの症状の反
復を、快復 ― 見かけ上は正常に戻る ― まで、二・三週
間にわたって持続することを特徴としている。発病期間
とその軽減期間のサイクルは、この疾患の特徴である。

学習障害や精神分裂病の傾向がある家族の世代を示す家計図。
これらの不幸な疾患が、時には世代を飛び越えることが出来
るその様式に注意。

ハンチントン病は、身体の不随意的な動きに関係する神
経変性疾患で ― この症例の場合は、その状態について
初めて記載した医師に因んで命名された。それは、ハン
チングチンと呼ばれるヒト・ゲノムにおいて最も大きな
遺伝子の一つに反復して起こった変異に、全面的に起因
している。パーキンソン病(動きの鈍磨、筋固縮、振戦
および体位不安定などを引き起こす疾患)の早期発症型
は、パーキンを暗号化している遺伝子の問題に起因して
いる。診断を助けると共に、遺伝子検査は、病気発症の
危険性あるいは子供への伝達について、他の家族に忠告
することに使用できる。
しかしながら、遺伝子革命が、医師が神経系の疾患を処
置する方法を変えたことは多くあるが、それは、発見の
長い航海の出発に過ぎない。同じ遺伝子の欠陥が、異な
る人々において異なった疾患を起こし、そして、異なる
遺伝子の欠陥が、非常に類似した疾患を引き起こすこと
が出来る。これらの相違を明確にしているのは何か、そ
して、遺伝子構成が、あなたの住んでいる、あなたが周
りに作り上げている世界と、どの様に相互作用している
か、を理解することは、私たちが暮らしている遺伝子時
代に対する次の偉大な挑戦の一つである。

多発性硬化症は、発火そして再沈静化する神経に
おける炎症によって引き起こされる。私たちの免
疫系は、細菌あるいはウィルスによって引き起こ
される感染と戦うように設計されている。時には、
それは、混乱し、そして、代わりに私たちの一部
を攻撃し始める。私たちは、その様な状態を自己
免疫疾患と呼び、それらは、ほとんど全ての組織
に影響を与え得る。もし、免疫系がニューロンを
覆っているミエリンを攻撃した時、髄鞘脱落を起
こす局所的な炎症が見られる。やがて、通常、炎
症は沈静化し、ミエリンは修復され、そして事態
は正常に復帰する。最初に何が炎症の切っ掛けに
なるかは不明であり、そして、髄鞘脱落を有する
多くの人々は、たった一回の短いエピソードを示
すだけである。しかしながら、ある人々は、脳の
異なる部分に影響を与えるような繰り返しの発症
を示す傾向がある。
私たちは、未だ、多発性硬化症において、何が炎症を
惹起しているのか知らないことから、それを完全には
阻止することが出来ない。しかし、私たちは、現在で
は、その攻撃は、免疫系を低下させるステロイドの様
な薬物の短期使用によって作り出されることを知って
いる。ある医師は、重篤な MS の患者にとって、アザ
チオプリンや ß‐インターフェロンの様な薬物による
免疫系のある部分を永久的に低下させることは有益で
あると信じている。それらの使用に関しては、かなり
不確定なものがある。
免疫系は、また、神経と筋肉と繋がる接合部を攻撃し
て重症筋無力症と呼ばれる疾患を起こしたり、あるい
は脊髄から出ている神経を攻撃してギラン・バレー症
候群と呼ばれる状態を引き起こす。
ジャクリーヌ・デュ・プ
レ ― 多発性硬化症に苦し
んだ有名な音楽家。

討論のポイント
もし、あなたが、遺伝的な疾患を発症する危険性があること
を知ったならば、あなたは、それが確実であることを知りた
いと思うだろうか?誕生の前に遺伝子を同定し、疾患を発病
する可能性のあるものは中絶することは、正しいことであろ
うか?その疾患に苦しんでいる人が、疾患の発症前に有用で
生産的な年月を送ることが出来ることは、どうであろうか?

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神経変性 ―
アルツハイマー病

これらの動物に関する研究は、非常に注意深く解釈さ
れなければならない、そして、過大解釈してはならな
いが、しかし、それらは、この疾患の経過の生物学を
理解する上で大いに助けとなる。

私たちが誰であるか:どの様に異なる状況下で反応する
か、誰と恋に落ちるか、何を恐れ、何を覚えているかを
私たちに知らしめるのは脳である。この人間の本性に関
する基本的な側面は、私たちの脳が、アルツハイマー病
として知られている進行性の疾患に陥った時に露わにな
る。アルツハイマー病は、痴呆の一つの型 ― 65歳では
約5%、85歳またはそれ以上では約25%の割合で影響を
与える機能の全般的な喪失 ― である。これは、胸が張
り裂けるような疾病であり:その状態は、通常、記憶の
減退で始まり、正常な人格の喪失と最終的には死に進行
する。この様式で愛する者が自分自身を失って行くのを
見守ることは、近親者にとっては並外れて困難な体験で
ある。最終的には、この患者は、彼らにとって最も親し
い人々を認知することが出来ないで、日常行動、例えば
着替え、食事、入浴、用便など、に援助が必要となる。
その結果、彼らの介護者の生活も、また、劇的に変化す
ることになる。

アルツハイマー病の進行を止める治療法は、それらが熱心
に探し求められているにも関わらず、未だに存在していな
い ― そして、これが、実験動物による研究が非常に重要
であるとする所である。アセチルコリンを化学伝達物質と
して利用する神経細胞は、その状況下では攻撃に極めて脆
弱であることが知られている。この神経伝達物質を通常で
は分解している酵素の作用を阻止することによって、残存
するアセチルコリンの働きを押し上げるような薬物は、動
物モデルとある種の臨床例の両方において、中等度の治療
効果を有している。しかしながら、これらの薬物は、この
未だに不治の疾患の進行を遅くすることには、何にも作用
しない。遺伝的な糸口、脳化学と精神的機能との関連性の
理解、そして細胞が損傷を受ける機構の学習などを同時に
引き出すことが、この疾患に最終的に打ち勝つことに導く
方法と思われる。

“父は、最近、私が誰であるか知らない。彼は、最早、私を
認知できるように思われない。彼は、極めて小さなことに
怒り、脅かされる ― 私は、彼が身の周りで何が起きてい
るのかを理解しているとは思わない。最初は、彼は、単に
忘れっぽく、いつも物を無くしているように見えた。その
後、それは悪化した。彼は、寝室に行かず、何時かも知ら
ない、何処にいるかさえも知っているようには思われなか
った。今、彼は、彼自身のお腹の制御を失い、食事にも着
替えにも助けが必要となっている。私には対処出来ない”

うつ病と神経変性とは仲間であり得ると知ることは、驚く
べきことであろう ― しかし、私たちは、今、重篤なうつ
状態の患者は脳細胞を失っていることを知っている。

何が悪くなっているのか?アルツハイマー病が発症する
時、脳の細胞は死んでいる:皮質は薄くなり、脳室( 脳
内で液で満たされている空間)は拡大する。診断は、通
常、生前は特徴的な臨床的性質に基づいて成され、最終
的には、死後、細胞の消失、分散する小さな変性アミロ
イドプラーク、および脳細胞の正常な構成成分である桿
状のタンパク質の縺れ合った物 ― 線維性縺れの広範囲
にわたる異常蓄積が、脳の顕微鏡検査によって示された
時に確認される。最近の研究計画では、 アルツハイマー
病の初期段階で見られる精神的変化と他の疾患、例えば
うつ病、における変化との識別に焦点を絞った新しい神
経精神学的試験を用いて、生前の診断法を改善する試み
が成されている。
脳の染色は、アミロイド・
プラーク(例えば長方形の
中)および黒く染まった縺
れ(矢印)を示す。

再度、遺伝学は、私たちが病気を理解するための手掛り
を与え ― アミロイド前駆体タンパク質(それからアミ
ロイドが作られる)を暗号化している遺伝子やプレセニ
リン(前駆体タンパク質を分解する酵素を暗号化してい
る)の変異を指し示している。apoE-4 と名付けられて
いるアポタンパク E (apoE) 遺伝子の特定の変異種の遺
伝は、また、この疾患の主要な危険因子である。しかし
ながら、遺伝子因子は、全体の話を語るものではない:
毒素などの環境因子および外傷性脳障害などの他の傷害
も、重要な役割を果たしているだろう。しかし、遺伝的
な因子は、繁殖させられた遺伝的に変異させた実験動物
が、疾患の特徴を現すのに十分に重要である。

50

抑うつ性疾患

うつ性の疾患は、私たちの
全てが、時々体験する低調
な感情とは大きく異なる。
落ち込んだ気分が、何週間
も何ヶ月も持続するように
なる時、私たちは、それを
本当に深刻な医学的状況と
して取り扱う。そして、そ
れは ― 患者が、死を望み、
そして彼ら自身を殺すかも
知れない限界まで、全てを
支配し始める。患者は、他
の特徴的な症状を表わす:
睡眠障害、食欲不振、集中力および記憶の欠如、そして生
に対する興味の消失など。幸運にも、特に、それは、治療
可能である。セロトニンやノルアドレナリンの様な神経変
調性の伝達物質の作用を増強するような抗うつ薬は、急速
に(数週間以内に)疾患を治療することが出来る。特殊化
された会話療法も、有効で
あり、そして、化学的およ
び心理学的な療法の組合わ
せは、特に有用であり得る。
状況は、驚くほど共通であ
り―五人に一人が、彼らの
人生のある時期に、ある度
合いの抑うつ病態に苦しむ
ことがある。
重篤で慢性的な抑うつ状態
は、ストレスホルモン、例
えば、ストレスの多い状況
で有益に、急速に遊離され
るコルチゾール(第12章)
の制御に対する不均衡な影
響を有している。
ヴィンセント・ヴァン・
ゴッホ - 印象派画家 ―
重篤なうつ病に苦しんで
いた。

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しかしながら、 慢性的に活性化された時、ストレスホル
モンは、特に脳の前頭葉および側頭葉において、実際に
脳細胞を損傷するであろう。抗うつ薬が、脳細胞の統一
性を促進し、そして、海馬において、新しいニューロン
が形成される速さを増加させることが、最近、見出され
ている。この様式で、それらは、脳に対するストレスの
毒性から保護し、それを反転させることさえも行うこと
が出来る。

精神分裂病
脳の化学と構造の異常を同時に引き起こす他の精神疾患
は、精神分裂病である。これは、進行性であり、そして
百人中の一人に影響を与えるような潜在的に非常に無能
化された状態である。病態は、しばしば、成人期初期に
始まり、そして、癌よりも更に生活を破滅させると言わ
れている。

精神分裂病の中心的な症状は、妄想(異常な確信―通例
は、本来、迫害的な異様な考え)や幻覚(例えば、誰も
居ないのに声が聞こえるという様な、患者が異常な感覚
を体験する知覚の異常)である。認知能力、社会的相互
作用や作業能力の進行性の低下が、しばしば、認められ
る。

その病態は、大きく誤解されている:それは、しばしば、
混同される“人格の分裂”については何も起こさないし、
一般に、患者は、決して凶暴ではない。実際、精神分裂
病を有する人の大半は、危険であるよりは、むしろ脅え
ている。疾患の発生においては、明らかに遺伝的要因が
働いているが、しかし、他の条件としては、環境および
ストレスも、また重要である。それにもかかわらず、全
ての明白な精神的変化にとって、病態は、第一義的には
脳の疾患である。その病態においては脳室が拡張してい
ること、前頭葉の活動が損なわれていることが、長い期
間にわたって知られている。

“初めは、私たちは、娘のスーに何事が起こっているのか知
らなかった。彼女は、上手く大学生活を始め、そして、最初
の年度は、容易に試験にも対処した。そして、彼女は変わり
始めた ― 彼女は静かになり、そして、家に居る時は、以前
の人付き合い良い彼女とは全く異なり、すっかり引き籠って
しまうようになった。彼女は、友達にも会わなくなり ― 後
には、学校へも行かないで、終日、ベッドに横たわっている
ようになった。そして、ある日、彼女は、彼女が特別な力を
持っており、衛星がテレパシーによって彼女の思考を制御し
ていると言う特別なメッセージをテレビジョンから受け取っ
たと私たちに話した。彼女は、理由も無く笑い、そして泣い
た。明らかに、何か非常に誤っている。彼女は、彼女が行っ
たことの全てを話し合っている周囲全体の声を聞くことが出
来ると言った。彼女は、精神分裂病に罹っていた。
彼女は、最初、およそ2ヶ月の間入院した。今は、彼女は、
通常の薬物治療を受けている。彼女は、最近は、大いに良く
なっている ― 彼女は、最早、衛星についての奇妙な考えを
持たなくなっている ― が、彼女は、物事に対してそれ程の
興味を未だに抱かない。彼女は、大学での勉学を中止しなけ
ればならなかった。そして、彼女は、しばらくは地元の店で
働いたが、二・三週間くらい入院しなければならなくて、仕
事を失くした。彼女は、まさに同一の人物ではない“

ドーパミン受容体を遮断する薬物は、症状の頻度や
影響を減少させるのに役立つが、しかし、それらは
病状を快復させるものではない。最新の研究は、ア
ンフェタミンの様な薬物を用いて実験的に活性化す
る時、精神分裂病の人においてドーパミン遊離の異
常を検出することが出来ることを示唆している。こ
の疾患について、もっと多くの発見がある:死後の
研究は、おそらく発育の過程においてニューロンを
結合する方式が異常であり、さらに、グルタメート
の様な他の神経伝達物質の系が、おそらく正常に作
動していないことを示唆している。
精神性疾患の特性を理解しようとする私たちの努力は、医
学的神経科学に対する最後の偉大な最前線を表わしている。
例えば、医療審議会やウェルカム・トラストなどの組織は、
次の10年間の研究に対する彼らの会議事項において、精神
衛生を高く位置付けている。重要な最新の研究課題の一つ
は、遺伝学的知識および脳走査装置の両方を、将来を見通
した疾病の研究 ― 危険性のある家族における(ボックス、
参照)― に利用することである。“ 分子から枕元 ” への隔
たりの橋渡しは、最も挑戦的な研究努力の一つとして残さ
れている。

研究の最先端領域
結果

研究者

精神科医

GPs
被験者
高危険度
家族

精神分裂病の推定研究
神経学的および精神医学的疾患に関する大半の研究は、
その病状を既に保有している人において行われている。
スコットランドの研究者は、病態を発現する危険性の
ある家族の構成員に関する研究に、遺伝学情報を利用
しようとしている。脳の走査および精神機能や身体的
特徴の注意深い検査が、疾患の発症初期の目印が同定
出来るかどうか知るために、一定の期間で行われてい
る。この情報は、新しい治療法を開発する上で、非常
に有用であることが証明されている。

関連インターネットサイト: 脳および脊髄基金: http://www.bbsf.org.uk
英国テンカン協会: http://www.epilepsy.org.uk 脳卒中: http://www.strokecenter.org
国立神経病および脳卒中研究所: http://www.ninds.nih.gov

51

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神経倫理

昔々、ずっと大昔に(お伽話が、しばしば、そのように
始まる)、科学と技術の間には、はっきりとした区別が
あった。科学者は、真実を求めて、“発見の喜び”以外に
は何の見返りのためでもなく、何処へ導くものであろう
と拘束されない道を追い求める。技術者や工学者は、科
学的努力の成果を、私たちが暮らしている世界を変える
ために応用する。しかしながら、この魅惑的な鋭い区別
は、お伽話であったし、また今もお伽話である様に思わ
れる。近頃は、科学者は、彼らが働いている社会的背景
に、そして、その背景がどの様に彼らが研究しているこ
とに影響を与えるかについて、もっと目覚めている。
神経科学者の社会に対する影響に関連した問題は、神経
科学と哲学および倫理学の交叉点である ― 神経倫理と
いう一般的な表題の下に集められている。これは、脳に
関する発見が、人間としての私たち自身に関する私たち
の感覚に、どの様に影響するかという問題(例えば、道
徳性の神経基盤など)を含んでいる。それは、社会的な
考え方(例えば、子供の教育的潜在能力など)や研究自
体の進め方(例えば、動物実験の倫理あるいは被験者に
ついての欺瞞の使用など)を意味することである。そし
て、神経科学者は、一般大衆との彼らが行っていること
についての対話や彼らが何をするべきかと言う考えの共
有に、どの様に最も良く勤めるかと言うことである。

社会的背景
ある神経科学者が、彼らの概念が社会的現実から完全
に離れていると信じているが、これは、本当にそうで
ある。17世紀、デカルトは、脳の“ 液”が、どの様に
して筋肉を動かすかを説明するため、水力メタファー
―彼がフランスの館の庭で見た水力工学技術から借用
したメタファーを用いた。20世紀になって、工業化時
代を反映して、神経生理学者は、脳の込み入った配線
を、“魅惑の機織”あるいは後に、巨大な“電話交換
機”と描写した。現在、21世紀の始めでは、例えば、
“大脳皮質は個人的な世界規模ネットワークのように
作動する”と言う意外な推論のように、コンピュータ
使用のメタファーが豊富である。これらは、複雑な考
えであるが、しかし、実際に洗練された脳理論に組み
込まれた概念を伝えることを容易にするため、部分的
に簡略化される。

神経科学者は、日常の世界から解離した科学的問題に
ついて考えることに携わることが出来ると共に、それ
を行っている。しばしば、この逃避は、真実に対する
本当に修道院的な探求に極めて近い様なことが進行中
であるような抽象的で門用語で満たされた世界へ入り
込む。活動電位の伝播の基となっているイオンの流れ
について解決できるか否か、どの様に化学伝達物質は
遊離されて作用するのか、あるいは、どの様に視覚皮
質の細胞の発火が視覚世界の側面を表わしているのか
― 神経科学における多くの問題点が、独立した、しか
し扱い易い様式で投げ掛けられている。

しかし、現実の世界は、決して遠くではない。一旦、
私たちが、どの様に化学伝達物質が作用するか知った
ならば、より良く記憶するのを助けることが出来るよ
うな賢い薬について考えるのは自然のことであろう。
あるものは、例えば、生物戦争の薬品からは一歩離れ
た酵素阻害剤などの、重要な過程を乱す神経毒(神経
薬)を設計することを考えるであろう。

“ 脳について考えることは、私たちの全てに触れることで
ある。それは、文字通り頭に来る事である ”
ザック・ホール、カリフォルニア大学

52

もし、あなたが試験に合格するのを助けることが出来
る薬物が利用可能ならば、あなたは、それを使用しま
すか? このことと、運動選手が彼らの技量を向上させ
るためにステロイドを使用すること、あるいは、人が
抗うつ薬を使用することとの間に、いかなる相違があ
るだろうか?
より少ない意外な倫理的ジレンマが、脳画像化の将来
を取り囲んでいる。例えば、脳画像化技法は、間も無
く、適切な試験手順によって、人の真実の記憶と偽の
記憶を識別することに、それを利用出来るようにする
だろう。

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反応の可変性は、現在のところでは大き過ぎるが、しか
しながら、いつの日か、裁判所は、証言の真実性を確立
する助けとなることが出来る一種の大脳指紋のようなも
のとして ― 随意に使用できる脳画像化技法を保有するで
あろう。これは、おそらく、人が認識プライヴァシーと
呼ぶようなものについて、興味ある問題を引き起こすで
あろう。
脳に関する新発見は、いつも、私たちの自己の意味を修
正する。脳の進化に関する有力な考えは、社会的認知に
関連する多くのことを含んでいる。道徳と道義心は、報
酬と懲罰の信号を処理する感情的な脳に密接に連繋して
いること ― あるものは、進化論的倫理の題名の下で論じ
られている可能性 ― に対する自覚の表われが存在する。
もっと、これらのことについて学ぶことは、計り知れな
い力であり、互いの感情について、もっと知ることを手
助けする。私たちの神経可塑性についての目下の未熟な
概念にこれらの考えを組み込むことは、それほど頻繁に
討論の唯一の焦点となっている目前の学問的目標を超え
た教育に対する強い影響を有している。
また、神経科学者が、彼らの課題の将来の方向について
同意しないことを理解することは重要である。ある分子
神経生物学者にとっては、究極の真実は、神経系の分子
構成成分に埋め込まれて存在する ― 他の神経科学者が
直面している問題に余裕で対応する(フィネッスする)
ような脳の十二分の解釈を約束する新しいDNAおよびタ
ンパク質研究技法と共に。これは、還元論者的命題であ
り、その哲学的および技術的全盛期は、頻繁に報道記事
で賛美された。しかしながら、その様な還元論者的確信
は正当化されるであろうか? あるいは、この様な方式で
は還元されない更に高水準の脳や心の解釈があるだろう
か? 脳の構造から生じる新しい特性があるだろうか?相
互作用 論者の神経科学者は、異なる命題を固く信じてい
る。彼らは、もっと折衷的な近代的神経科学に対する取
り組み方 ― その社会科学との相互作用を探るような取り
組み方をも主張している。これらは、公開の場で簡単に
討論するような問題ではないが、しかし、どの様な種類
の研究が行われるべきかと言う疑問は、社会に意見を問
うべき事項である。結局は、人々の税金が、それに対す
る支払いを手助けすることになる。

神経倫理 − ある具体的な例
ある神経倫理の問題は、ほとんど常識以上のものは生み
出さない。ある実験での検査志願者の脳走査が、予期に
反して大脳の異常―例えば、脳腫瘍などを示したと仮定
してみよう。あるいは、ヒトの神経遺伝学的検査におい
て、被験者が、神経変性疾患に対する彼らの感受性を高
めるような遺伝的変異を持っていることが発見されたと
想像してみよう。これらの各々の場合において ― 被験
者は、事実を告げられるべきでしょうか?常識的には、
全ての責任は、走査中に発見された関わりのある如何な
る医学的情報も伝えることについて、前もって同意を与
えるか辞退するか尋ねられている志願者自身に渡される
べきであると示唆される。
しかしながら、説明に基づく同意は、奇妙な用件でもあ
る。脳研究者が、盲検法によって薬物もしくは偽薬を卒
中後の数時間以内に与えるという、脳卒中の新しい治療
法の試験を実施していたと仮定しなさい。その様な任意
化したプロトコールには科学的根拠の響きがある。しか
しながら、私たちは、誰が脳卒中を発症するかを予期で
きないし、また、罹患した人に対して、説明に基づく同
意を与えることは不可能であろう。もし、このことが、
その様な研究事業への患者の参画を妨げているならば

それは、彼らの長期的な損失であり、将来の患者の損失で
あろう。その身内の者も、また、利用出来る時間内に同意
の判断を下すことが容易であるような心理的状態ではない
であろう。敢えて、私たちは、より大きい有用性のために、
説明による同意を断念し、そして、権利放棄を導入するべ
きか?あるいは、それは、深みに嵌まる危うい状態であろ
うか?
もう一つの神経倫理の重要な側面は、動物実験に関連する
ことである。動物は、彼らの脳に対して実施される侵略的
な実験に対して同意を与えられるような立場にはない。あ
る人に対して、そのような仕事の見込みは、不安にさせる
だけである。他の人に対しては、健康な時あるいは病気の
時の神経系の理解を進歩させるために、それが与えてくれ
る機会は、それを追求しないことは不合理である様なもの
である。これらは、感情的にならずに討議することが容易
ではない問題ではあるが、しかし、私たちが討議すること
― 謹んで討議すること ― が重要である。
ほとんどのヨーロッパの国々では、動物実験は、非常に厳
密な様式で制約を受けている。研究者は、その学習課程に
出席し、 法律に関する知識および不必要な動物の苦痛が
起こらないことを保証する能力を検定する試験に合格しな
ければならない。三つのR ― 減少、改良、代替 ― が、生
物医学の科学者にとって、それに従うための良い原則であ
ることは、広範囲にわたって受け入れられている。彼らは、
法律の枠内で、自ら進んで実施し、そして全体的合意によ
る公的な受認が無い場合には、広範囲にわたって要求する。
神経科学における多くの新発見が、組織培養やコンピュー
タ・モデルのような代替手段から現われている。しかしな
がら、これらは、神経学的および精神医学的な疾患に対す
る新しい発見や治療法を産み出した、生きた脳における全
ての研究を代替することは出来ない。例えば、パーキンソ
ン病を治療するための L-DOPA の使用は、生の脳に対す
るノーベル賞受賞研究から現われたものである。新しい技
法は、病める人および病める動物を助ける新しい機会を提
供する。

ただ、伝えるだけ…
科学者が一般大衆と最も意志の疎通を行っている国が、科
学者に対する信頼の低い国であるという、当惑するような
真実がある。しかしながら、その相関性は、原因において
同じではなく、社会に対する科学の影響について、公衆と
の討論に勤める責任のある努力 ― そして、そうすること
の義務感 ― が、大きくなりつつある不信感の原因となる
ことはありそうもない。むしろ、興味を抱いた公衆は、さ
らに洗練され、新しい“奇跡の薬”に対しては、もっと懐
疑的になり、そして、緩やかな、時には不確実な科学の進
歩に対して、もっと気付くようになる。不信感を減らすこ
とは、盲目的な無知への回帰を支援する理由ではない。
若い人々や興味を抱いた大衆と神経科学について議論する
一つの理由は、神経科学者が、未だ、彼らの領域の中心的
な信条の多くに不一致であるからである。個々の発見に焦
点を合わせる代りに、報道メディアは、過程としての科学
をもっと良く考えるであろう。その過程は、不確実性と論
争で謎めいている。
神経倫理は、新しい領域である。そこには、奇妙な皮肉が
あり、それは、リチャード・ファインマン、科学を行なう
理由を“発見の喜び”と記述した理論物理学者、である。
皮肉な―何故ならば、それは、アメリカのスペースシャト
ルの一機チャレンジャーが、何故、離陸直後に爆発したか
を解き明かすことに、自分自身を頭から投入したファイン
マンであった。科学の社会に対する影響は、私たち全てに
忍び寄って来る。

関連インターネットサイト: http://www.stanford.edu/dept/news/report/news/may22/neuroethics.html
http://www.dana.org/books/press/neuroethics/

53

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教育と専門職

希望的には、この小冊子が、神経科学に対する多くの異
なる観点が存在することや脳の研究が多方面から人々の
生活に触れることが出来ることを示すような方向に導く
であろう。もし、あなたが読んだ事柄に興奮させられる
ようなことがあれば、単科大学また総合大学で神経科学
を学ぶことを考えてもよい。この学問の道は、あなたを
幅広く多様な刺激的な専門職に導くことが出来る。最も
一般的な印象は実験室あるいは病院での白衣姿であるけ
れど、神経科学者は、他の多くの職業に従事する将来を
有している。

大学の神経科学コース
現在では、多くの大学が、神経科学の学士号を授与して
いる。しばしば、この科目は、生物学、生理学、薬理学
および心理学などの早期の教育期間の後に、専門分野と
して履修される。また更に、遺伝学や分子生物学の知識
も役に立つであろう。
しかしながら、あなたは、これらのコースに入学する
ために、シックス・フォーム(最終学年期間)に、必
ずしも自然科学の科目だけを学習しなければならない
ことはありません。神経科学コースやその入学必要事
項については、インターネットのUCASページを見るこ
とで知ることができる。あなたは、科目名あるいは志
願したいと思う大学との関連によって検索することが
出来る。

ロザムンド・ラングストン,
エディンバラ大学
神経科学博士課程学生

私は、科学と英語をA-レベルで学習し、
そして、エディンバラで生物化学を学ん
でいます。私は、最終学年で神経科学を
専攻し、そして、本当に自分に適した分
野を見出しました。エディンバラ大学の
認知神経化学部門において研究助手に職
を与えられたことは、私にとって十分に
幸運なことでした。そして、このこと
は、最終的には博士号の取得に導いてく
れます。

医学
英国における医学は、学士号である。多くの大学は医学
校を有しており、最近では、いくつかの新しい医学校の
創設によって教育を受けている学生数の増加が認められ
る。神経学、神経外科学、精神科学や放射線学のような
科目分野の専攻は、教育期間の後半に行なうことになる
が、しかしながら、夏季休業中や挿入年に神経科学研究
室で働く機会も頻繁にある。医学コースに入学するため
の競合は相当のものであるが、しかし、医学領域におけ
る専門職の報酬も相当のものである。

54

IBRO は教育と訓練に携わっている。
私たちの一般教育プログラムは、小学生、学生および一般人にま
で及んでいる。私たちの訪問講演チームは、世界第一級の科学を
遠く離れた地域にもたらし、そして、私たちの学校は、前途有望
な学生に対して、脳研究や近代的な実際的科学技術の特定の分野
について学ぶ機会を提供している。IBRO 奨学金は、若い科学者
たちが海外の優れた研究室で働くことにより、あるいは国際神経
科学学会に参加することにより、彼らの神経科学における訓練の
幅を広げることを可能にしている。私たちは、学生が受けた訓練
を彼ら自身の国の人々の利益に用いることを奨励している。この
ことについて、もっと多くを知りたい場合は、www.IBRO.org に
アクセスして下さい。

トーマス・ペティ,
エディンバラ大学
医学生

私は、大学の時から医学を自分の職業に
しようと決めていました。そして、評判
が良いことから、エディバラを志望しま
した。私は、三回生の時、挿入年のBSc
(理科学士)を履修する機会を与えられ、
神経科学の勉強を選びました。その一年
は、医学の背景となっている核心的な研
究について学習する機会をくれました。
私は、そこから多くのものを得て、本当
に、それを楽しむことが出来ました。

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産業(製薬産業)
脳の機能異常を治療するためには、新しい医薬品が必要
であり、そして、製薬産業は、それらを見出すことにお
いて鍵となる重要な役割を担っている。企業は、経済的
援助を行っている学術研究機関と同様に、それら自身の
研究を行っている。多くの会社が、実験手技や経験の発
展を手助けするために産業界に長い年月を捧げている大
学と提携している。神経科学を含む種々の科学的背景を
持った卒業生が、特に彼らが関連する実験経験を有する
場合には、望ましい従業員となる。

神経科学研究
その研究における機会には、極めて大きな多様性がある。
その領域は、脳画像化や行動研究から神経生理学や分子
遺伝学的研究にわたる多くの要素を有している。大学に
在籍する研究者たちは、熱心な学生が彼らに適合した学
問の進路を見出すのを奨励することを常に幸福と感じて
いる。

コンピュータ産業
もしコンピュータ操作あるいは情報処理技術に関連する
専門職に興味がある場合には、神経科学は、大学で学ぶ
科目として心に飛び上がって来るものではないだろう。
しかしながら、私たちが小冊子で見て来たように、’脳型’
コンピューティングに対する興味が発展拡大を続けてお
り、これは、ワールドワイド・ウェッブの発達を伴って
成長している。脳科学の非医学的な適用に対する興味が
増大しつつある。

学校教育
神経科学は、学校において教育される科目とは考えられ
ていない。しかしながら、神経科学の学位を有する卒業
生たちは、生物学を教えることに最良であり、教育職に
計り知れないほど価値のある数的な技術を含む多くの他
の技能をも有するであろう。

科学と報道
新聞雑誌からラジオやテレビジョンまで、報道関係の職業
は、競合的で厳しいものであるが、しかしながら、科学的
報道の分野に携わる多くの機会は、手に入れることが可能
である。科学は継続的に進歩し続けるものであり、新しい
発見は、教育および社会的利益を目的として、報道される
必要がある。脳研究における仕事も、決してその例外では
ない。報道によって十分に認められた巨大な社会的利益が
あり、そして、最新の発見は、かなりの社会的な影響を及
ぼす潜在的可能性を持っている。大学での学位取得過程で
得られた十分な科学的背景と研究に対する理解を以ってす
れば、複雑な発見を正確かつ効率良く他の研究者や大衆に
伝えることは、もっと容易であろう。

科学と芸術
科学と芸術とは、互いに相容れないものではない。想像
を捕らえるようなデザインは、より幅広い聴衆に対する
科学の公開発表において極めて重要である。博物館や美
術館、報道機関および他の団体が、創造的で実験的な科
学者と芸術家との共同制作を奨励し、資金助成を行って
いる。

関連するインターネットサイト: http://www.abpi-careers.org.uk/
www.gsk.com www.sciart.org

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謝辞
私たちは、この小冊子に収載した文章および図表を、親切にも提供して下さった多くの人々に感謝します。私たちは、下記
の一覧表が全てを包括するものであることを希望すると共に、私たちに助力して頂いたが、しかしその寄与が網から滑り出
てしまった人にお詫びします。小冊子全般の漫画:Maddelena Miele および Robert Filipkowski. 表紙挿絵:Peter Brophy,
Beverley Clark, Michael Hausser, David Linden, Richard Ribchester. 内表紙:Peter Somogyi, Elaine Snell, Lisa
Cokayne-Naylor. Ch 1 (神経系):Marina Bentivoglio, Nobel Forum. Ch 2 (活動電位):Tobias Bonhoeffer, Peter Brophy,
Eric Kandel, Nobel Forum. Ch 3 (化学伝達物質):Marianne Fillenz, Ch 4 (薬 物と脳):Leslie Iversen. Ch 5 (接触と痛み) :
Susan Fleetwood-Walker, Han Jiesheng, Donald Price. Ch 6 (視覚):Colin Blakemore, Andy Doherty, Bill Newsome,
Andrew Parker. Ch 7 (運動):Beverley Clark, Tom Gillingwater, Michael Hausser, Chris Miall, Richard Ribchester,
Wolfram Schultz. Ch 8 (神経系の発達):Andrew Lumsden. Ch 9 (失読症):John Stein. Ch 10 (神経可塑性):Graham
Collingridge, Andrew Doherty; Kathy Sykes. Ch 11 (学習と記憶):Ted Berger, Livia de Hoz, Graham Hitch, Eleanor
Maguire, Andrew Doherty, Leslie Ungerleider, Fareneh Vargha-Khadem. Ch 12 (ストレス):Jonathan Seckl. Ch 13 (脳
と免疫系):Nancy Rothwell. Ch 14 (睡眠とリズム):Anthony Harmar. Ch 15 (脳画像化):Mark Bastin, Richard
Frackowiak, Nikos Logothetis, Eleanor Maguire, Lindsay Murray, Elisabeth Rounis, Semir Zeki. Ch 16 (神経路網と人工
知能):Rodney Douglas, Gerry Edelman, Jeff Krichmar, Kevan Martin. Ch 17 (いつ誤るか):Malcolm Macleod, Eve
Johnstone, Walter Muir, David Porteous, Ian Reid. Ch 18 (神経倫理):Colin Blakemore, Kenneth Boyd, Stephen Rose,
William Saffire. Ch 19 (経歴):Yvonne Allen (BNA), Victoria Gill.
内裏表紙挿絵: Eric Kandel (for Hippocrates Quotation), Richard Morris.
裏表紙挿絵および言葉: Jennifer Altman, David Concar; Spike Gerrell.
英国神経科学協会は、非営利組織であり、慈善団体 No. 264450 に登録されている。
国際翻訳コーディネーター Dr Duncan Banks (d.banks@open.ac.uk), The Open University, UK (BNA ウェッブサイト管理
者).

参考図書
科学および神経科学に関して更に続けて読むために、多くの魅力的な書物が存在する。その中の二・三冊のリストである。

V.S. Ramachandran, (Sandra Blakeslee) Phantoms in the Brain: Human Nature and the Architecture of the Mind
Fourth Dimension Publications
(Paperback - 6 May, 1999) ISBN: 1857028953
A fascinating account of phantom-limb pain and related disorders of the nervous system.

Oliver Sacks, The Man Who Mistook His Wife for a Hat (Picador)
Picador
(Paperback - 7 November, 1986) ISBN: 0330294911
An amusing and well-written account of the effects of brain damage on the mind.

Jean-Dominique Bauby, The Diving-bell and the Butterfly
Fourth Estate
(Paperback - 7 May, 2002) ISBN: 0007139845
A very personal and moving account of the consequences of a stroke.

Richard P. Feynman, Surely You’re Joking, Mr Feynman: Adventures of a Curious Character
Paperback
19 November, 1992 ISBN: 009917331X
Physicist, bongo-drum man, and all round polymath. A hero for all young scientists.

Nancy Rothwell, Who Wants to Be a Scientist?: Choosing Science as a Career
Smudge (Illustrator) Cambridge University Press
(Paperback - 19 September, 2002) ISBN: 0521520924
Sound practical advice on choosing science as a career.

56

追加注文: オンライン注文: www.bna.org.uk/publications
Postal: The British Neuroscience Association, c/o: The Sherrington Buildings, Ashton Street, Liverpool L68 3GE
Telephone: 44 (0) 151 794 4943/5449 Fax: 44 (0) 794 5516/5517

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“人は、脳から、唯一、脳だけから、私たちの
悲しみ、痛み、嘆きや恐れのみならず、私たち
の楽しみ、喜び、笑い、冗談などが引き起こさ
れることを知るべきである。それを、考えなさ
い。特に、私たちは、見たり、聞いたり、そし
て美と醜を、前と悪を、快感と不快感とを識別
したりすることを考える”
ヒポクラテス ― 5世紀 B.C.

経済的支援
この事業は、英国神経科学協会、優れた薬品開発に対する神経学およびGIセンター、グラクソ-スミスクライン、そして
エディンバラ大学神経科学せんたーによって支援されている。著者に対しては、その寛大な支援に感謝する。

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Cartoon by Spike Gerrell; words by Jennifer Altman and David Concar

IBRO および CDROM“神経科学:脳の科学”の案内

IBRO:私たちは誰そして何をしているのか?
IBRO, 国際脳研究機構, は、世界中で神経科学の教育および研究の促進
と支援を行なうことを目的とする神経科学会の国際的なネットワークであ
る。私たちのメンバーは、脳に関する共通の興味を有している。ある者は、
脳がどの様に働いているかを知ろうと試みている学術機関あるいは企業研
究所の科学者たちである。時には、私たちは、新しい治療法や処置法の発
見を望んで、脳が異常に活動した時に起こる変化について研究する。他の
者は、精神科疾患や脳の異常に苦しんでいる患者を治療する臨床医や開業
医である。私たちの多くは、教師や学生である。

IBRO は、世界中において活動的である。私たちのメンバーは、6
つの地域グループに分割されている。私たち全体に架かっている
目的は、脳研究の専門職に踏み入りたい、あるいは、精神科疾患
を治療する臨床医になりたいと希望する若い人々を支援すること
である。世界の6分割地域は:










アフリカ地域委員会 (ARC)
アジア‐太平洋地域委員会 (APRC)
中央および東ヨーロッパ地域委員会 (CEERC)
ラテンアメリカ地域委員会 (LARC)
北アメリカ地域委員会 (NARC)
西ヨーロッパ地域委員会 (WERC)

アフリカ地域委員会 (ARC)
アジア‐太平洋地域委員会 (APRC)
中央および東ヨーロッパ地域委員会 (CEERC)
ラテンアメリカ地域委員会 (LARC)
合衆国/カナダ地域委員会 (NARC)
西ヨーロッパ地域委員会 (WERC)

世界中で、私たちは、若い科学者たちに脳(神経科学)を教えるためや彼らに実際の研究技法を学ぶ
機会を与えるために研修会や教室を開催している。私たちは、学生奨学金や博士号取得後奨学金を給
付し、それによって開発途上国の神経科学者が、世界で最も権威ある研究室に行って働くことが可能
になることを熱望している。私たちは、世界的に名声の高い神経科学者によって教育された若い人々
が、彼らの母国に帰り、彼らと彼らの社会にとって重要な脳疾患の研究を行なうための研究室を立ち
上げることを援助している。私たちは、これらの帰国科学者に、私たちの実験装置交換プログラム
(IBRO-Equip) や知識データベース IBRO-Edu の閲覧利用を許すことにより、彼らが彼ら自身の国で
専門的職暦を発展させることを援助している。私たちは、また、若い人々が、彼ら自身の研究知見を
討論のために発表するためや彼らの分野における最新の進歩を学ぶことが出来る国際学会に参加する
旅行を援助している。IBRO のメンバーは、これらの活動が、世界中からの才能あふれる若者たちが
神経科学者としての彼らの潜在能力を発揮することを奨励するであろうと希望している。
これは、非常に重要な望みである。人間の脳は、私たちが感じ、考え、そして動作する全てのことを
調節する神経系として、私たちの身体の根本的な部分である。健全な脳無くしては、個人は、世界の
信頼し得る情報に触れることも、そして、適切な身体的および感情的な反応を取ることも出来ない。
脳は、私たちの身体の最も理解が乏しい部分の一つとして残されており、さらに、脳に関連した病気
は、ほとんど全ての家族に影響を与えるものである。少なくとも四人に一人は、彼らの人生のある時
点で、短期もしくは長期の脳疾患に苦しむであろう。脳の異常は、私たちが互いに関係する方法や私
たちの社会や家族が活動する様式に影響する。しばしば、結果的に、長期療養を必要としたり、社会
的および経済的に家族に貢献していた患者に支障を来たすような精神機能の低下を起すことがある。

1

私たちの限られた脳の理解は、現在のところ、多くの脳疾患が治療不能であり、しばしば患者は汚名
を着せられる。脳に関する公共教育は、個人、その家族や地域社会が脳疾患に対処することや援助を
求めるのを支援することが出来る。学童と共に活動することによって、私たちは、将来非常に必要で
ある脳科学者になってくれる気持ちを、少数の若者にでも起させることを望んでいる。
CDROM “神経科学:脳の科学” は、IBRO が行なう公共教育の努力の一つである。それは、脳の様態
に関する短い論説で構成された小冊子を掲載している。元々、英国神経科学協会(BNA)および欧州
ダナ脳同盟 (EDAB)が、この小冊子作成を依頼し、そして、論説は主だった神経科学者によって書
かれた。IBRO は、この小冊子の20以上の言語への翻訳を依頼した。私たちは、より良い脳の一般
的理解を、あなた方に促すことが出来ることを望んでいる。あなた方が、これらのファイルをダウン
ロードし、何らかの脳啓蒙行事の一部として、その内容の部分または全部を印刷して配布することは
歓迎されることである。また、この CDROM のコピーを作成してもよろしい。あなた方は、この物
品を個人の利得のために用いてはならない。
公的教育を目的とした翻訳事業は、2005 年に開始された。試験
的な活動として、小冊子は、中国北京語およびスペイン語に翻訳
された。残りの他の翻訳版の奉仕翻訳者が、2006 年、この事業
のために募集された。この事業は、K・エスター・ビンス、IBRO
公共教育委員会議長、によって組織され、そして運営されている。
エスターは、BNA および英国公開大学のダンカン・バンクスに
対し、彼の重要な援助と助言について個人的な謝意を表したいと
願うものである。ダンカンを除いては、これら翻訳版は、作成さ
れなかったであろう。

2

あなたの地域の IBRO : 地域委員会の職務

アフリカ地域委員会 (ARC)
ARC は、アフリカで働く神経科学者や臨床医によって設立されたものである。私たちのメンバーの
一部は、また、欧州やアメリカで働いているが、しかし、彼らは、アフリカ出身であり、非常に高い
関心を持って、この地域を支えている。アフリカは、IBRO の中でも最も貧しい地域である。多くの
市民は、大学に進学して脳について学ぶ機会は言うまでもなく、未だに正規の教育さえも全く受けて
いない。
けれども、アフリカには、極めて有能な多くの若者がいます。また、医科学や生物学の分野で評判の
良い大学も幾つか在ります。若いアフリカ人が学ぶ機会を与えられた時、彼らは、この潜在能力を限
度一杯まで利用するでしょう。これらの学生は、この大陸の人々に影響を与えている脳疾患を研究す
ることによって、この地域での神経科学の進歩を委ねる最良の者である。
1970 年代に、IRRO は、アフリカにおける神経科学の研究と教育を発展させることを始めた。一連
の研修会は、問題点を特定し、発展の道筋を計画する助けとなった。この進取の精神は、今も ARC
の下で存続している。私たちの主な業績の一つは、アフリカ神経科学会(SONA)の設立であり、そ
れは、1993 年以来、2 年毎に国際神経科学会議を催している。その会議は、アフリア全土:ケニア
のナイロビ;モロッコのマラケシュ;南アフリカのケープタウン;セネガルのダカール、そしてナイ
ジェリアのアブジャなどで開催されている。学術会議は、アフリカ以外の国の神経科学者との相互交
流ばかりでなく、彼らの仕事を発表するために国際的な神経科学会議に出席する機会もほとんど持た
ないアフリカの神経科学者に公開討論の場を与えている。
2001 年以来、ARC は、若手教員や大学院生に対して神経科学の教え方や研究の研修を実施するため
IBRO アフリカン神経科学教室を開催している。このプログラムは、大いに成功している。現在まで
に、14 の教室が催され、約 250 人の学生が参加している。学生たちは、イタリア、オーストラリア
および英国の研究室を訪れるのみならず合衆国、カナダやスウェーデンにおいて神経化学の PhD を
取得するために国外に出て行く。
また、ARC は、地域の神経科学会の設立を推進するため、アフリカにおいて地域の神経科学会議を
支援している。今日まで、IBRO 運営委員会に代表を送っている六つのアフリカ神経科学会が設立さ
れている。(モロッコ神経科学協会、ケニヤ神経科学会、神経科学推進協会(コンゴ民主共和国)、
南アフリカ神経科学会、ナイジェリア神経科学会、アフリカ神経科学者学会)それに加えて、多くの
アフリカ人神経科学者が、IBRO 委員会の代表となっている。
ARC は、また、アフリカの神経科学者に対して、彼らが国際学会において研究発表を行なうための
旅行に支援を与えている。マリナ・ベンチボヴォグリオの主導で、アフリカ女性が、アフリカまたは
海外において、さらに高い学位の取得を求めて行くことに支援を与えるレヴィ‐モンタルシニ奨学金
もある。また、US/カナダ地域委員会の支援により、アフリカの学生は、ウッヅホールの海洋生物学
研究所やコールドスプリングハーバー研究室において夏季コースに参加している。
ラジ・カラリアが、アフリカ地域委員会の議長を務めている。この CDROM の小冊子は、私たちの
アフリカ人メンバーの要請に基づき、アラビア語、ペルシャ語、フランス語およびスワヒリ語に翻訳
されている。
アジア‐太平洋地域委員会(APRC)
この委員会は、地理的および文化的に、IBRO の最も様々の地域を包み込んでいる。メンバーである
学会は、日本からオーストラリアやニュージランドまで、そして、ヨルダンからフィリピンまでの広

3

大な地域を範囲としている。それは、神経科学研究の機会などは豊かな外国にした存在しないような
貧しい国のみならず、充実した神経科学集団を有する日本やオーストラリアのような裕福な国、中国
やインドのような経済成長を示しつつある国、あるいは、イランやマレーシア、シンガポール、タイ
およびアラブ首長国連邦のような小さい集団を有している国などのメンバーを包含している。この地
域では、教育には多くの言語が用いられている。この CDROM は、アラビア語、ベンガル語、ペル
シャ語、ヒンドゥー語、日本語、北京語、マラティー語、パンジャブ語およびタミール語のこの教材
小冊子の翻訳版を収蔵している。
IBRO は、香港、インド、タイに在る教室において、これらの地域の学生に最新の神経科学の知識と
手技を教え、そして、中国、インド、タイ、イランおよびシンガポールで教室に関与している。もう
二つが、カラチ(2006 年 11 月中旬)とドバイ(2006 年 12 月中旬)に開かれた。地方の支援は、教
室プログラム、例えば、シンガポールの教室と共催される国際神経化学会などに、見合った資金援助
を与えている。APRC によって組織された教育プログラムからは、400 人以上の卒業生が輩出されて
いる。
IBRO は、若い神経科学者に対し、APRC 地域内の受入れ研究室において 6 ヶ月間の研究を実施する
ことが出来る交換奨学金を給付している。この給付は、彼または彼女が交換後には母国に帰ることを
強く証明できる申請者のみに行われる。IBRO は、アジア・オセアニア神経科学会連合(FAONS)に
よって 4 年ごとに開催される学術集会に参加するだけではなく、他の国での研修課程に参加すること
や会議で論文を発表することに対しても、若い人々に旅行奨学金を与えている。第 4 回 FAONS 学術
集会は、2006 年 11 月 30 日から 12 月 2 日まで、中国の香港で開催され、これには、IBRO 同窓会の
ミニシンポジウムも含まれている。
アジア‐太平洋地域および世界中の他の地域の研究室からの脳に関する新しい発見は、2007 年 7 月
にオーストラリアのメルボルンで開催され第 7 回 IBRO 神経科学世界会議において、注視の的となる
であろう。アジア‐太平洋地域における世界的な脳研究は、日本の和光市にある理研脳研究所、上海
の神経科学研究所、北京の生物物理学研究所、デリ近郊の国立脳研究センター、バンガロールの国立
精神医学および神経病科学研究所、シドニーのプリンス・オブ・ウェールズ医学研究所、メルボルン
のハワード・フローリー研究所、そしてシンガポールの新しい国立神経科学研究所だけでなく、大き
な大学(例えば東京、大阪、福岡、北京、上海、香港、ソウル、メルボルン、キャンベラやシドニー
など)において実施されている。
2002 年から、香港のイン・シン・チャンが、アジア‐太平洋地域委員会の議長である。1999 年に委
員会が設置された時、エルスぺス・マクラケラン(シドニー)が、創設議長であった。
中央および東ヨーロッパ地域委員会(CEERC)
歴史的には、CEERC は、全ての前東ヨーロッパ社会主義国および以前のソビエト連邦であって現在
は独立国の脳研究を支援している。したがって、太平洋にまで延びている東ヨーロッパ諸国やロシア
に加えて、CEERC は、アルメニア、グルジア、アゼルバイジャン、そして東アジアの国々(カザフ
スタン、ウズベキスタン、トルクメニア、タジキスタン、キルギス)も支援している。
20 世紀末に、この地域全体に、大きな政治的変化が起こった。多くの幾世紀にもわたる欧州各国は、
今やヨーロッパ連合として統一され、教育政治、学生移動、科学研究において革命的変化が起こった。
多くの点で、今や西ヨーロッパと東ヨーロッパの間には、脳研究の進展や達成に関しては、ほとんど
差は無い。この変化を認めて、IBRO は、最近、西および東ヨーロッパの神経科学講習プログラムを
統合して、PENS(ヨーロッパ神経科学講習プログラム)を作り上げた。
CEERC は、戦略的な問題や申し込みなどについて討論するために、毎年、会合を開いている。2006
年には、私たちは、FENS 討論会への参加を目的として、地域内の 12 カ国の代表に 19 件の奨学金を
授与した。地域内の研究奨励金は、2006 年には、ロシア(モスクワ)で研究することを目的として
R・アヴァキン(ウクライナ)に、そして、ウクライナ(キエフ)を短期訪問するための費用として
M・バルセルジーク(ポーランド)に与えられた。新しい CEERC 主導の地域訪問‘IBRO 講演’は、
結果として、H・アトウッド(カナダ)のカザン(ロシア)訪問に対する賞(最高額 1,500 ユーロま
で)と 2006 年には、八つの学会が支援された。

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かくして、IBRO は、東ヨーロッパの若者を、彼ら自身の国で開拓者的な脳研究者に教育研修するこ
とを援助している。IBRO からの教育研修や援助を受けた学者には、現在、オランダのブリク・アム
ステルダム大学、神経遺伝学および認識研究センターにおいて、脳に対するカンナビス様化学物質の
作用について研究しているナタリア・ロゾヴァヴァ(ウクライナ)が含まれる。
パベル・バラバンは、中央および東ヨーロッパ地域委員会の委員長である。東ヨーロッパ中で、この
翻訳プロジェクトには大きな興味が持たれており、そして、私たちは、次のような翻訳を行うことが
出来る:アルメニア語、クロアチア語、チェコ語、グルジア語、ギリシャ語、ハンガリア語、ポーラ
ンド語、ルーマニア語、ロシア語、ウクライナ語。ペルシャ語やアラビア語への翻訳も、また有用で
ある。
ラテンアメリカ地域委員会(LARC)
LARC は、中央アメリカ、カリブ海地域および南アメリカの全域で活動中である。それは、この地域
内の 14 の神経科学会から構成されている。最も北部はメキシコ、最も南部はチリである。この地域
の多くの人々は、ポルトガル語もしくはスペイン語を話し、この小冊子も、両方の言語が利用できる。
あるカリブ海地域では、フランス語が、おそらく有用であろう。
IBRO 教習所は、この地域の聡明な若い科学者の多数の教育研修を補助している。2006 年だけでも、
5 つの教習所が、アルゼンチン、ブラジル、チリ、そしてベネズエラに開講された。LARC とスペイ
ン神経科学会の強い協力の結果として、ラテンアメリカの学生に対する通常のヨーロッパ式の教習所
が、セヴィルやスペインにおいて実施された。
私たちは、幅広い旅行および研究奨学金の給付を通して、IBRO 教習所の卒業生の継続的な教育や職
業研修を支援する活動を行っている。例えば、アルゼンチン、ブエノスアイレスにある遺伝子工学お
よび分子生物学研究所のルシア・フェランシニは、アメリカのイリノイ州、シカゴにあるシカゴ大学、
人間遺伝学教習所のブルース・ラーン博士の研究室で 1 年間過ごす。彼女の研究は、言語や学習のよ
うな認識能力に関連する遺伝子や統合失調症、失読症、自閉症、注意欠陥/多動性障害(ADHD)の
ような問題を誘発する遺伝子の同定に関連したものである。私たちは、この期間が終了した後、ルシ
アと他の者が、彼らの母国で働くために帰国することを望んでいる。
教育研修後の帰国に対する援助が、帰国プログラムによって可能になり、この地域の二人の若い研究
者に助成金が授与されたことが、最近、発表されている。イタリアとカナダにおける各々の研修期間
の後、ブラジル、クリシューマ、エクストレモ・スル・カタリネンス大学のエレイン・ガヴィオリと
アルゼンチン、ブエノスアイレス大学医学校生理学教習所のヴァレリア・デラ‐マギオレは、彼らの
母国で働くために帰国する。
マルタ・ハラックは、ラテンアメリカ地域委員会の委員長である。
合衆国/カナダ地域委員会(IAC-USNC/IBRO)および 西ヨーロッパ地域委員会(WERC)
最も大きくて最も活動的な脳研究集団は、アメリカ神経科学会(SfN)およびヨーロッパ神経科学会
連合(FENS)によって良く支援されている北アメリカあるいは西ヨーロッパに基盤を置いていて、
IBRO は、これらの組織と密接に仕事をしているが、その資産の多くを、それほど良好に神経科学が
支援されていない 4 つの地域に充当している。合衆国/カナダ RC および WERC は、世界一流の脳
研究者と共に第一級の研究を体験できるように、世界中から学生を一流の研究部門や所在地に集める
ような教習所を催している。
私たちは、北アメリカや西ヨーロッパの研究室において、外国人学生のための奨学金や研究奨励金の
支援を行うと共に、世界で最も権威ある脳科学の学会に学生が出席できるように、旅行奨学金を給付
している。
生物学は、これらの地域の教習所において幅広く教えられており、そして、神経科学の学位が、多く
の大学で取得できる。この CDROM の小冊子は、公的な教育や高等学校の生徒(14‐18 歳)にとっ
て有用であり、そして、英語と幾つかの他のヨーロッパ言語(ポルトガル語、スペイン語、フランス

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語およびギリシャ語)の版が使用できる。北アメリカおよび西ヨーロッパは、様々の多文化民族を包
含しており、その地域集団のあるものは、彼らの国の第一言語よりも自分たちの起源国の言語を使用
している。これらの人々は、彼らの第一言語を用いて科学の教育が実施されていない学校や地域社会
においては、教育的に不利である。この小冊子の非ヨーロッパ言語への翻訳は、そのようなグループ
の人々には大いに利用できるものであろう。使用できる言語の全リストは、この文書の末尾に見つけ
出すことができる。

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IBRO は、教育および研修を
実施している。

研修会と教室
各々の IBRO 地域は、地域の将来性のある学生が脳研究の特定領域や実際の研究手法の教育研修が与
えられるように教室や研修会を開催している。毎年、地域委員会は、全部で約 20 回の教室を開いて
いる。IBRO 教育委員会は、個々の教室の編成や教育プログラムに助言を与えることにより、これら
の教室を支援し、互いに結びつけている:教室間の教育用物品の共有や普及を整えることや、同等の
教育と学習の機会を与えるために他の国内および国際組織と共同で努力することなど。私たちの目的
は、資金提供者や新しい協力関係を引きつけてプログラムを強化拡大すること、メンバーおよび一般
大衆へのプログラムの広告と説明を補助することである。IBRO 教室の全ての参加者は、IBRO 教室
同窓生になる資格を有し、それによって、彼らの将来の脳研究における職を通じて、他の学生や指導
者との相互支援による利益を得ることになる。
IBRO は、脳研究の全ての領域において最善の実習を促進することを委託されているが、それ故に、
上記の教室に加えて、私たちは、研究における動物の使用と役割に集中した研修会も行っている。
訪問講演チーム
IBRO は、世界中の学生に、神経科学の最高の学術教育をもたらすために働いている。私たちの訪問
講演チームは、開発途上国おいて、招聘者の施設で基礎神経科学の実験を重点とした講演のコースを
提供できる国際的に認められている 5 人の研究者で構成されている。通常、このコースは、刺激伝導
とシナップス伝達;膜受容体およびチャンネルの構造、機能と薬理;知覚系における情報処理;行動
パターンの調節;そして神経発達などを担当している。教育は、9 日間にわたる 35 回の講演により
行われる。1994 年以来、訪問講演チームプログラム(VLTP)は、20 カ国で 31 回のコースを実施し
ている。これらは、開発途上国の学生が、彼らの専門領域における世界の指導者によって教育される
ことなど予期さえもできなかったような驚くべき機会である。
奨学金
訪問講演チームのコースあるいは IBRO 教室に参加した学生は、おそらく脳研究を専門の職としよう
と決意するだろう。IRRO は、幅広い地理的および科学的な領域からの最も将来性のある若い神経科
学者の職歴を育むことを望んでいる。私たちは、研究に対する資金提供が限られている発展が遅れて
いる国の学生に、私たちの支援の焦点を絞っている。奨学金が支給され、それによって、若い科学者
は、国外の良い研究室で働くことによって、あるいは国際学会に出席することによって、神経科学に
おける研修の領域を拡大することができる。
帰国プログラム
VLT 教室や奨学金によって最高の研修機会に恵まれた学生は、優れた神経科学者になることができる
潜在能力を有している。それだから、彼らが、世界中で学術的および産業的な研究施設での職を捜し
求めており、しばしば、母国を離れて西ヨーロッパやアメリカで仕事を得ようとすることを知ったと
しても驚くべきことではない。IBRO は、この慣例が発展途上国の学術社会を弱体化しているものと
信じており、それ故に、私たちは、学生が彼らの本来の国において職歴を作りあげることを奨励する
ように努めている。帰国プログラムは、本来の国に帰国した学生の職暦を支援するために、助成金や
奨学金、旅行援助金を給付している。

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同窓生の成功物語

ケニアおよび南アフリカの IBRO アフリカ教室の同窓生である
オリバー・マゾーヅは、グラクソ・スミスクラインのハーロウ
研究施設の神経生理学研究室において、客員科学者として6週
間を過ごすために英国に行った。
オリバーは、ジンバブエのビンドゥラ科学教育大学生物科学講
座の在職権を有するメンバーである。英国滞在中、彼は、神経
活動を研究するための生体外電気生理学的手法を習得した。彼
は、幅広く使用されているアフリカの薬用植物からの抽出物の
潜在的な神経生理学的作用を研究するために、これらの手法を
使用するつもりである。GSK での研修は、2004 年にナイロビ
で開かれた IBRO アフリカ教室において、初めて彼が指導力を
見出した二人の科学者、ジョン・スペンサー博士とアンディ・
ランダル教授の指導の下で行われた。

ウェル・モハメド・ユーセフは、マリおよびケニアでの
IBRO 教室に参加し、現在は、エジプトのメノウフィア大学
医学部で、神経薬理学の助講師として働いている。
ウェルは、アメリカのペンシルヴァニア州立大学、行動衛生
および薬理学のバイロン・C・ジョーンズ教授の下で、神経
薬理学博士号取得のための研究を行うために、エジプト政府
から奨学資金を授与された。アメリカでの5年間で、ウェル
は、神経科学の先進的な技法を学び、神経学的疾患に苦しむ
多くの患者にとって必要な新薬の開発に従事している。その
後は、彼は、エジプトに帰国して働くことを希望している。

中国山東省の小さな島の出身であるビン・リューは、この地域で博士号
を取得した三人の中の一人である。彼女は、2004 年に中国の青島大学で
生理学の Ph.D.を取得し、それから山東大学薬学校の新薬評価センター
の助教授である。
2005 年、彼女は、ノースイースタン・オハイオ大学医学校の解剖学講座
において働くための IBRO 研究奨学金を得た。アメリカでの彼女の研究
は、ネズミ黒質線条体ドーパミン神経系を標的とする神経毒に対する性
ステロイドホルモンの作用の観察に焦点を合わせたものである。
この奨学金は、ビンが優れた研究室で研修を受けられたことに意義があ
り、今では中国の神経科学に良く貢献している状態である。

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ディミター・プロダノフは、ブル
ガリア出身で、1998 年にブルガ
リアのソフィアで開かれた IBRO
VLTP コースに参加した。彼は、
最近、2006 年のジョン・G・ニコ
ラス奨学金を授与された。彼は、
ベルギーのブラッセル、リューベ
ン市にあるカトリック大学の神経
リハビリテーション工学研究所の
生理および薬理学講座、ジャン・
デルベケの下で一年間を過ごした。
ジョン・G・ニコラス IBRO 奨学
金は、1994 年から 2002 年まで、
IBRO の訪問講演チームプログラ
ム (VLTP) の長を務めたジョン・
G・ニコラスの功績を記念して創
設された。この奨学金の目的は、
毎年、外国の有名な研究室で一年
間の神経科学の研修を望む将来性のある若い研究者一人を助成することを目的とする。その合格者は、
研修後は帰国し、神経科学の新しい知識や技法を母国に持ち帰ることを期待されている。

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脳に関する IBRO および公的教育

脳疾患が個人、家族、そして彼らの社会に与える影響とこれらの疾病の高度の世界的な広がりを考え
れば、私たちは、各人が脳について、そして、どのように私たちの身体のこの部分が健康に保たれて
いるかについて理解が必要であると信じている。そこで、私たちは、脳研究を支援している他の国際
組織と共に、中枢神経系の公衆の一般的理解を向上させるために活動している。
脳キャンペーンは、世界的規模で、その研究に関係している組織が公衆と関わり、そして彼らの知識
と発見の共有を奨励することを、多くの同様の組織によって率先するものである。関わっている多く
の組織が、彼らの努力を彼ら自身の世界地域に集中させているのに対して、IBRO は、発展途上国に
おける神経科学の公的教育を委ねられている。私たちは、発展途上国において、大学人によって組織
される遠隔地での活動や行事を行動的および財政的に支援している。私たちは、世界の隅々の全ての
人々が脳についての公的教育に接することを希望する。私たちは、全ての政府および健康プログラム
が脳および精神病を深刻に受け止めることを望んでいる。
2003 年以来、IBRO は、およそ 15 カ国で 25 回の公的教育行事について、その資金調達を援助する
ことによって、この熱心な要望を支持してきた。 多種多様な行事が、支援を受けてきた。ある活動
は、遠く離れた僻地の村の教室で、農業品評会を催すことで他のものが大勢の聴衆を惹きつけている
一方で、あるいは、列車の駅の教室で行われた。ある時には、この行事は、脳の機能と疾患の多くの
側面を包括しているが、別の時には、焦点が、その地方の地域社会に適合した単一の疾患あるいは問
題(例えば、薬物、頭部外傷、テンカンなど)であることもある。
過去に私たちが支援した多くの行事は、三月に一週間の期間で
実施されてきた。この一週間は、「脳を知る週間」と呼んで
いる。IBRO を含む「脳を知る週間」を支援する団体は、この
行事を、研究に関与する者が、脳機能の理解や脳疾患の治療に
おける最新の進歩について、全世界の一般的な人々に説明する
世界的な脳の祭典にしたいと望んでいる。「2006 年脳を知る
週間」の間に、数百の行事が、62 カ国において行われた。

「脳を知る週間」の一部としての行事を含む脳教育行事は、脳に関する知識を、多くの異なる言語を
話す幅広い聴衆に拡げる企てである。しばしば、何らかの文献によって行事を後押しすることは、そ
れにとって有用である。不運にも、適切な著作物は、多くの場合、局地的な言語では入手できない。
IBRO は、この問題を認識し、そして、多言語教材を供給することによって、この難問に取り組むこ
とに努めてきた。この CDROM の小冊子は、次の 27 ヶ国語で使用することができる:アラビア語、
アルメニア語、ベンガル語、クロアチア語、英語、ペルシャ語、フランス語、ギリシャ語、ヒンド
ゥー語、日本語、北京語、マラティー語、ポーランド語、ポルトガル語、パンジャブ語、ルーマニ
ア語、ロシア語、セルビア語、スペイン語、スワヒリ語、タミール語、ウクライナ語。
私たちは、これらの翻訳が、より良い脳の一般的理解を推進するために有用であることを希望してい
ます。もし、あなたが、これらの著作物を他の言語で利用しようと望むならば、あるいは、私たちの
ために、別の言語への翻訳を進んで行ってくれるならば、私たちは、喜んであなたに連絡します。

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神経科学:脳の科学
この小冊子の“英語”原版は、英国神経科学協会および欧州ダナ脳同盟のために、リチャード・
モーリス(エディンバラ大学)およびマリアン・フィレンツ(オックスフォード大学)によって
作成・編集されたものです。あなたは、国際脳研究機構(IBRO)の公共教育委員会によって委託
作成された26カ国語の翻訳版の一つを読んでいます。これらの翻訳は、公共の脳の理解を向上さ
せることを目的とする世界的な試みの一部分として、IBROの会員によって行われたものであり、
IBROは、これらの翻訳を可能にした奉仕者に深く感謝します。この日本語への翻訳は、森田恭二
(徳島大学大学院ヘルスバイオサイエンス研究部)によって行われたものです。この事業計画に参
画した翻訳者は、下記のリストを参照。

小冊子原版のグラフィックデザインは、ジェーン・グレインジャー(グレインジャー・ダンスモ
ア デザインスタジオ、エディンバラ)による。私たちは、神経科学部門の同僚、特にヴィクト
リア・ギル、そしてエディンバラ神経科学界の人々の貢献に深く感謝します。また、私たちは、
オックスフォードの生理学大学講座の構成員、特にコリン・ブレイクモアおよび他の研究機関の
援助者に対しても感謝します。彼らの氏名は、下に表記する。

英国神経科学協会(BNA)は、神経科学者を代表すると共に、健康および病的状態における神経
系のより良い理解に尽力する英国における知的職業者の団体である。その構成員は、大学および
研究機関に在籍する確立された科学者から大学院生にまで亘っている。BNAの年会は、通常は春
に開催されるが、最新の研究を発表する場を提供している。全国にある多数の地方グループが、
頻繁にセミナーを開催しており、また一般の人々と共に、学校訪問や地方の博物館における展示
会などの活動を頻繁に行っている。詳しい情報は、http://www.bna.org.uk/ を参照。

欧州ダナ脳同盟(EDAB)の目標は、一般の人々および裁定を下す人々に脳研究の重要性に関す
る情報を提供することです。EDABは、神経科学の私的および公的な恩恵に関する知識を向上さ
せること、健康および病的状態での脳に関する情報を、入手し易く適切な方法で普及させること
を目的としている。神経学的および精神病学的な疾患は、全年齢層に亘って多数の人々に影響を
及ぼし、国家経済にも深刻な打撃を与えている。これらの問題の克服を助けるために、1997年、
欧州の主要な神経科学者70人が、「達成可能研究目標の宣言」に署名し、脳疾患に関する理解と
神経科学の重要性に関する認識を高めて行くことを盟約した。それ以来、多くの人々が選出され、
欧州24カ国を代表することになった。EDABは、125カ国以上の構成国を有している。詳しい情報
は、http://www.edab.net/ を参照。

国際脳研究機構は、世界中全ての国における神経科学の発展と脳研究者間の情報交換の促進に尽
力する独立した国際的な組織である。現在、私たちは、111カ国約51,000人の神経科学者の権益
を代表している。1960年の設立以来、私たちは、脳研究における国際的な交流を促進するために
数多くの積極的なプログラムを実施している。私たちは、世界的規模で、討論会や研修会、神経
科学学校などを後援している。私たちは、恵まれない国の学生に対して、博士号取得後奨学金や
旅行助成金の授与を行っている。私たちは、また、雑誌“神経科学”を発行している。詳しい情
報は、http://www.ibro.info/ を参照。

この小冊子を翻訳する事業は、2005年、IBRO一般教育委員会の委員長である私自身によって始め
られたものである。英国神経科学協会および公開大学のダンカン・バンクス、そして、多くの翻
訳版を技術的に可能にしてCDROMを作製した英国のミルトン・キーネスに対して、特別な謝意を表
するものである。

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原本各章の著者

著 者

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Maria Bentivogelio, Nobel Forum
Tobias Bohoffer, Peter Brophy, Eric Kandel, Nobel Forum
Marianne Fillenz
Leslie Iversen
Susan Fleetwood-Walker, Han Jiesheng, Donald Price
Andrew Parker
Beveley Clark, Tom Gillingwater, Michael Hausser, Chris Miall, Richard Ribchester, Wolfram Schultz,
Andrew Lumsden
John Stein
Graham Collingridge, Andre Doherty, Kathy Sykes
Ted Berger, Livia dev Hoz, Graham Hitch, Eleanor Maguire, Andrew Doherty, Leslie Underleider,
Fareneh Vargha-Khadem
Jonathan Seckl
Nancy Rothwell
Anthony Harmar
Mark Bastin, Richard Frackowiak, Nikos Logothetis, Elanor Maguire, Lindsay Murray, Elisabeth
Rounis, Semir Zeki.
Rodney Douglas, Gerry Eldelman, Jeff Krichmar, Kevan Martin
Malcolm Macleod, Eva Johnstone, Walter Muir, David Porteous, Ian Reid.
Colin Blakemore, Kenneth Boyd, Stephen Rose, William Saffire
Yvonne Allen (BNA), LARC, ARC, APRC, CEERC

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